今井啓雄ら 『霊長類種間での苦味受容体TAS2R16の機能多様性』 Biology Letters, Published online before print March 7, 2012, doi: 10.1098/rsbl.2011.1251
菅原亨ら 『ニシチンパンジーにおける苦味受容体遺伝子の多様性解析』 Mol. Biol. Evol., 2011 Feb;28(2):921-31. Epub 2010 Oct 20.

今井啓雄ら 『霊長類種間での苦味受容体TAS2R16の機能多様性』 Biology Letters, Published online before print March 7, 2012, doi: 10.1098/rsbl.2011.1251
菅原亨ら 『ニシチンパンジーにおける苦味受容体遺伝子の多様性解析』 Mol. Biol. Evol., 2011 Feb;28(2):921-31. Epub 2010 Oct 20.
2001年にヒト、2005年にチンパンジー、2007年にアカゲザルのゲノム配列解析が終了した。 ゲノムとは遺伝子(gene)と染色体(chromosome)の合成語で、下の図に示されるように、染色体組1セット(一倍体:n)のことをいい、そのなかに納まっているDNA情報のすべてという意味である (配偶子に含まれる染色体あるいは遺伝子の全体といえる)。 ヒトの場合1細胞当り46本の染色体を持っているので、一倍体はその半分のn = 23本の1組が1ゲノムとなる。 ヒトの1ゲノムは約30億DNA塩基対からなり、すべての染色体のDNAをつなげるとその長さは約1メートルになるらしい。 すなわち、ゲノムは生物の個体を形成する因子を制御する全ての遺伝情報のことである。 ゲノム配列の研究が進んだ今日では、細胞内の全染色体から蛋白質までのすべてを総合してゲノムと言い表すことが多い。 ゲノムは各生物の35億年の進化の歴史をしたためた台帳といえる。

そのゲノム情報を通して霊長類(ヒトも含まれる)とは何かをひもとくのが我々の研究である。
ゲノム情報はすでに研究者だけのもではなくなった。
誰でも、どこからでも、コンピューターを通してwebでデーターベースに登録された情報を覗くことができる。
調べたいことがらや各生物の特性を、現在わかっているゲノム情報として知ることができる。
我々研究者もゲノム情報を基に、自身で見つけたデータの解釈を考察したり、新しい研究計画を練ったりすることに利用している。
現在研究室では、ゲノムを基盤とした次のような研究を進めている。
(1)ゲノムプローブを用いた染色体の進化と霊長類の進化。
(2)霊長類の感覚に対する分子・細胞・個体・生態レベルの研究
(3)霊長類ゲノムデータをもとにした網羅的遺伝子変異発見と新規生理的意義の探索。
これらの現在進行中の研究は、ゲノム情報をどう利用するのかというポストゲノム時代を見据えた内容ではあるが、ゲノム情報を基盤としたヒトを含めた霊長類の進化・多様化の解明のためには、さらに新しい視点に立った遺伝子・非遺伝子領域の機能解明が必須である。 ゲノムが明らかにされたことで、霊長類の分子を基盤とした学際的研究が日進月歩で進展しつつある。 その一つが最も霊長類らしさを醸成している感覚系の機能と多様性であろう。 これは「ヒト化」の解明にも最も重要な課題である。 これまでの専門領域や出身大学の枠にとらわれない大学院生・ポスドクなどの若手研究者の研究参加を期待している。 ポストゲノム霊長類学は今まさに黎明期である。
当研究所では、様々なポスドク制度や大学院生支援制度を用意している。 特に、平成19年度から5年間の予定で発足したグローバルCOEプログラム(京都大学理学研究科生物科学専攻、生態学研究センターとの共同プログラム)では、ゲノムを基盤とした生物進化・多様化解明のための新しい研究を展開すべく、ポスドク雇用や大学院生支援を始めている。 ゲノム情報を基にしたヒトや類人猿・その他霊長類の進化・多様化の軌跡を明らかにする、これまでは夢物語であったテーマも実現できる時代に来ていることを強調したい。