思考言語分野について
チンパンジーなどの大型類人猿を主な対象として思考や言語などヒトを特徴づける高次認知機能の進化を 比較認知科学的視点から研究し、その脳内機構を非侵襲的な手法で研究しています。
研究概要 (2010年度霊長類研究所年報より転載)
A) チンパンジーの比較認知発達研究
1群14個体のチンパンジーのうち、特に9-10歳になる子ども3個体を対象として、比較発達研究を総合的におこなった。 認知機能の解析として、コンピュータ課題や対象操作課題など各種認知課題においてチンパンジーのおとな個体や、ヒト幼児との 比較検討をおこなった。また、定期的に脳や身体各部の計測もおこなっている。
B) チンパンジーの知覚・認知能力の比較認知科学的研究
チンパンジーとヒトを対象に、認知・言語機能の比較研究を継続しておこなった。主として、1個体のテスト場面で、 数系列学習、色と文字の対応、視線の認識、顔の知覚、注意、パターン認識、視覚検索、カテゴリー認識、物理的事象の認識、 視聴覚統合、情動認知、運動知覚などの研究をおこなった。
C) チンパンジーにおけるアイトラッカーを用いた視線計測
チンパンジーとヒトを対象に、非拘束型のアイトラッカーを用いて、各種の視覚刺激提示時や課題遂行時の視線の計測をおこなった。
D) 野生チンパンジーの道具使用と文化的変異と森林再生
西アフリカ・ギニアのボッソウと、東隣のニンバ山とコートジボワール領内、西隣のディエケの森、南隣のリベリア領内で、 野生チンパンジーの行動と生態を調査し、記録の解析をおこなった。また、「緑の回廊」と呼ぶ森林再生研究を試み、苗木を覆う 東屋を設置する活動を継続した。
E) 飼育霊長類の環境エンリッチメント
動物福祉の立場から環境エンリッチメントに関する研究をおこなった。3次元構築物の導入や植樹の効果の評価、視覚刺激の提示によるストレスの低減、 個別飼育個体に対する動画刺激提示の効果、認知実験がチンパンジーの行動に及ぼす影響の評価、木の枝や草などを使った異常行動の低減、 エンリッチメント用の遊具の導入などの研究をおこなった。
F) 各種霊長類の認知発達
アジルテナガザルの幼児、マカクザルの幼児、および新世界ザル各種成体を対象に、種々の認知能力とその発達について検討をおこなった。 さらに、高知県のいち動物公園において二卵性双生児のチンパンジーの行動発達を縦断的に観察している。
G) ヒトの子どもの認知発達
犬山市の心身障害児デイサービスセンター「こすもす園」で、自閉症、ダウン症、広汎性発達障害など非定型発達児のコミュニケーション行動の発達について、 参与観察研究をおこなった。
H) 動物園のチンパンジーの知性の研究
名古屋市の東山動物園のチンパンジー1群6個体を対象に、新設された屋外運動場での社会行動を観察記録した。また、「パンラボ」と名づけられた ブースにおいて、道具使用とコンピュータ課題の2つの側面から知性の研究をおこなった。
I) チンパンジー2個体場面における社会性知性の研究
チンパンジー2個体を対象とし、チンパンジーの行動が他者に影響されるかどうかを検討した。2つのモニターを通じて2個体に一連の課題をおこなわせると、 チンパンジーは相手の行動を見て自分の行動を調節した。これらの実験から、チンパンジーにおける他者理解の一面が示された。
J) 鯨類と大型類人猿の比較認知研究
名古屋港水族館との共同研究として、鯨類の認知研究を進めている。とくに、鯨類における視覚認知、サインの理解、視覚的個体識別、 気質の特性論的評価とゲノム的基盤などを大型類人猿との比較研究として進めている。
K) 大型類人猿の比較認知研究
マレーシアのサバ州で野生オランウータンの生態と行動の調査をおこなった。 また、マレー半島の飼育オランウータンの環境エンリッチメントと、オランウータンを野生復帰させる試みをおこなっている。
研究テーマ
研究テーマは、下のように多岐にわたっています。
視覚性人工言語の習得と使用
数の処理
短期記憶
概念形成
等価関係の形成
表情認知
錯視
視覚探索
テクスチャ弁別
視覚的注意
視聴覚モダール間あわせ
選択行動
トークンの獲得と使用
物体の一体性の知覚
嗅覚認知
描画行動
粘土造形
利き手
大脳半球優位性
道具使用
遅延模倣
社会的認知およびコミュニケーション
発達
