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W 土埋木について

A 土埋木とは
 屋久島の自然休養林を散策すれば、巨木のそこかしこに、苔に覆われ草木の生い茂った古い切り株をみることができる。これらの切り株や捨てられた倒木は、直射日光をさえぎられて多湿な原生林の自然環境に守られ、表面が腐っても樹脂分の多い内部は朽ちることなく、むしろはるかな時の流れによって色合いも美しく、熟成させながら後世への贈り物として残された。これが屋久島の土埋木である。

B 土埋木を知ったきっかけ
 私達は廃村調査を行うために石塚集落跡地でキャンプをおこなった。その場所で、人が10人は入れるほどの大きさの杉の切り株を見つけた。私たちはその切り株の中に屋根がわりの大きな空間を見つけ、雨にぬれないようにと荷物をその中に置いた。それほどの大きさの切り株であった。切り株の上やまわりには何本もの新しい木が生えており、生えた木々がすでに大きく育って見上げるほどの大きさになっている。集落全体を把握するために、トロッコの軌道に沿って奥へと跡地を進んでいくと、ヘリポートや膨大な量の新しいワイヤーの束があった。それらは切り出した土埋木を運ぶためのものだと聞いた。さっき見たあの立派な切り株も伐られるかもしれない。あれが伐られ掘り出されたら、森林に大きな穴があくだろうと想像できた。私達はとてもショックを受けた。このことから、土埋木について知りたいと考えるようになった。

C 土埋木の今と昔
 土埋木は生立木と同様に、伐採地点と集材地点を結んだ空中ケーブル(索道)で一ヵ所に集められ、出荷されてきた。しかし最近は手近なところの資源が減り、索道では採算の合わない険しい奥地まで入りこまなければならなくなった。これがヘリコプター導入の背景である。奥地へ、奥地へ、探しながら進まざるをえない土埋木の生産量はジワジワと減少しており、先細り現象はこれから先も避けられそうにない。生産減に加えて、材質の低下も目立ってきている。これまで伐採した場所での二次集材が増えてきたのが大きな原因である。石塚や小杉谷に集落があった当時は高級品だけを根株を残して出していたが、今は根こそぎ全部抜かれている。また現在の特徴としては、森の中にポツンポツンとあるのをヘリコプターで行ってその土埋木のみを抜くので、植林の必要がないことがあげられる。

D 土埋木のこれから――保続こそが林業
 お話をうかがった柴鐵生さんの言葉に、「林業は保続」というものがあった。木を植える、育てる、伐る、植える……このサイクルこそが林業であるということだ。しかし、土埋木は成長するはずのない資源で、保続することはできない。つまり、いつかは終わっていく資源である。いかに長く細く利用していけるかが重要になる。その工夫として工芸品はテーブルなど大きいものではなく、箸やキーホルダーといった小さいものにし、加工品を屋久杉よりも育ちやすい広葉樹に切り替えていくことが検討されている。

E 人と自然のかかわりの歴史を語る土埋木
 フィールドワーク講座最終日の研究発表会で、「土埋木はどこにあるべきなのか、あなたたちにとって土埋木の価値は何か」と会場から尋ねられた。そのとき私は、自分の目で見て、触ったあの立派な切り株が切られてしまうかもしれないことが嫌で、土埋木は森にあるべきだと強く思った。けれど、屋久杉が保護されているなかで土埋木を加工するしかない人もいること、人が生活するということを考えると、私の感情論はとても薄っぺらなものに感じた。しかしその中で班員の一人が、「森の中にあるべきだ。土埋木は伐採の歴史を物語るものだから。」と語った言葉にはっとした。土埋木は屋久島での人と自然の関わり合いの歴史を物語っている歴史的資源でもあるのだ。あの切り株は存在することで、屋久島を訪れた人々にも私達が一週間学んだことを訴え続けてくれるのだろうと思う。
(納谷直子)

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