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京都大学霊長類研究所
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ニホンザル野外観察施設

大澤秀行(施設長・兼)・東 滋1)・

渡邊邦夫・足澤貞成2)

 本施設の運営は上記3教官のほか、鈴木晃・山極壽一によって進められた。平成9年度の各ステ−ションの状況は次の通りである。

1. 幸島観察所

 幸島の群れは昭和23年以来の蓄積された資料をもとに、野外観察施設の中では独自の位置を占めている。主群のボス、ノソは30才になったが、今年も健在でその地位を保っている。記録的に出産の多かった昨年の反動もあったのだろうが、今年は出産が5頭(オス3,メス2)のみであり、死亡個体もわずかに2頭だったため、安定した1年であった。また近年は島との間にできた船だまりの方に砂がたまるようになったせいか、島が地続きになることも、やや少なくなってきている。ただ今年もツグミなどの冬鳥が少なく、全島的に春先まで木の実が豊富であったので、このままいけばまた来年度には多数の出産が見込まれている。平成10年3月の時点での島内の個体数は、マキグル−プ約10頭を含め93頭である。

 文化庁の指導の下「幸島猿生息地保護対策検討委員会」が定期的に集まりをもち、幸島の保全策や整備、今後の研究所施設予算削減をにらんだ対応などが議論されている。今後の検討を経て、文化庁などに改善策をはたらきかけることになろう。今年度は、森によるマキグループのグルーピングのあり方や栄養条件とメスの性皮腫脹の関係、栗田博之による子供の性による死亡率の違いなどについての研究が行われた。また例年夏に学生実習が行われてきたが、大学院の制度変更等により学生増が見込まれているため、実習方法の再検討が必要になってきている。

2.下北研究林

 1997年12月の一斉調査は、足澤が1973年に下北に常駐するようになって以来初めて、全く積雪のない条件下で行われた。そのため足跡を利用しての追跡が行えなかった。しかし一方で目撃情報が多く、Z2群が南下して牛滝まで行き、再び北上して福浦まで戻ってくるのが確認された。つまり、ここ数年牛滝集落近辺にサルの群れが出現するようになっていたが、それが下北半島北西部の個体群に由来するのか、それとも南西部の個体群に由来するのかが不明であった。それが今回の調査によって、北西部の群れが南へ行動域を広げたのだということが確認されたわけで、20年前には18kmほど離れていた二つの個体群が、一つの分布域に融合したことになる。

 その他にも、下北野生生物研究所の森・和田らが下北半島北部を中心に、松岡らが南西部を中心に継続的な調査を続けており、下北の個体群がその生息域を大きく拡大している様子が、全体として追跡されている。その他に、今年度は北海道大学の中山が南西部の群れを対象にして、採食生態の研究を行った。

なお25年の間、下北に常駐して北限のサルを観察し続けてきた足澤は、今年度限りで犬山に移り、本部業務をこなしながら、逐次犬山から訪れて調査を継続することになった。

3.上信越研究林

 平成10年2月に冬季オリンピックが開催された。当研究林周辺にも数多くの観光客が訪れ、かつ多くのイベントがあった。それを含めて周辺地域ではさまざまな環境改変がおこっており、ニホンザルの生息環境悪化が懸念されている。ただ今年も人手不足から不十分な調査しか行えなかった。周辺に生息する数多くのニホンザル群の中でも、特にこれまで追跡されてきた横湯川流域の群れの動向が気遣われるところである。周辺地域で相次いでいる猿害問題や、地獄谷野猿公園がかかえる個体数増加の問題等、この研究林地域のニホンザルは数多くの問題を抱えており、今後の調査が待たれる。なおオリンピック終了を待つかのように、長年当研究林の維持に尽力された山本教雄氏がご逝去された。ご冥福を祈りたい。

4. 木曽研究林

木曽研究林内のニホンザルの現状については、今年度も人手不足から詳細な調査ができなかった。研究林内の群れはいずれも猿害をおこしており、継続的な捕獲対象となっている。しかし今年は山の実りがよく、例年に比べて被害が少なかったという。

 長野県では全県的なニホンザル分布調査が進められており、中央アルプスをこえた伊那谷側の調査が和田らによって行われた。なお、木曽研究林のプレハブ小屋は老朽化が著しく使用上の問題がでてきたこと、泊まり込みを必要とするような長期調査が少なくなったこと、予算上の制約があって改修も思うに任せないことなどから、今年度いっぱいで撤収した。当研究林は犬山から近いこともあり、今後は本部から直接赴いて調査することになる。

5. 屋久島研究林

 懸案となっていた県道永田−屋久線(西部林道)の改良工事計画が中止となり、ひとまずは西部林道地域での調査継続が保証された。しかし夏の台風で大きな崖崩れがあり、一時西部林道が通行不可能になるなどの被害があった。今年度も研究活動は活発で、松原幹(霊長研)がメスの交尾期における採食行動を、早川祥子(霊長研)がメスの繁殖戦略について、半谷吾郎(京大人類進化論)が採食生態の年齢差についての調査を長期間行った。その他にも、好広真一(龍谷大)大竹勝(日本モンキーセンター)を中心とする屋久島の高地山岳部での集中調査や、古市(明治学院大)他の調査が続いている他に、J.M.Soltisによる配偶者選択の研究や、D.Hillらによるコウモリ類の調査も断続的に継続されている。

 屋久島ステーションの浄化漕工事が行われ、また環境整備が行われた。さらに気象観測装置も据え付けられたが、屋久島研究林には常駐するスタッフがいないため、今後の管理が重要になっている。またステーションの使用、運営について、屋久島長期滞在研究者との話し合いがもたれ、今後協議して決めていくことが了解された。

〈研究概要〉

A) ニホンザルの社会生態学的、とくに自然群の環境利用と個体群の構造

東 滋1)・足澤貞成2)

 ニホンザルの群れの連続した分布をゆるす環境で、遊動する群れが示す生活と社会環境をとらえ、生存に必要な条件をあきらかにするため、屋久島と下北半島西部の地域個体群について継続的な調査を行っている。

B) 野生ニホンザルの保護および全国のニホンザル個体群に関するデータベースの作成

東 滋1)・渡邊邦夫

 「ニホンザルの現況」研究会参加者らと協力して、野生ニホンザル保護のための方策を模索している。その一環として全国の野生ニホンザルに関するデーターベースの作成、古分布の復元、ニホンザルに関する文献目録の作成などを行っている。

C) 幸島のサルの生態学的社会学的研究

渡邊邦夫・山口直嗣3)・冠地富士男3)

 従来からの継続として、ポピュレーション動態に関する資料を収集し、各月毎にほぼ全個体の体重を測定している。また集団内でおこったトピカルな出来事や通年の変化について分析を進めている。

D) 熱帯林における種多様性保存に関する研究

渡邊邦夫

 熱帯林の保護と持続的な利用、また未知の有用資源を探る目的で、インドネシアでの現地調査を行った。

E) 下北半島に生息するニホンザル群の分裂と生息域の変動に関する研究

足澤貞成2)・東 滋1)・渡邊邦夫

 現在下北半島に生息するニホンザル群は、次々と分裂し、生息域も拡大し続けている。その経過を追跡すると共に、どのような形で再び安定した状況に落ち着くのかを研究している。

〈研究業績〉

論文

―英文―

1) Fujita, K., K. Watanabe, T. H. Widarto, & B. Suryobroto (1997) Discrimination of macaques by macaques; The case of Sulawesi species. Primates 38: 233-245.

2) Mori, A., N. Yamaguchi, K. Watanabe, & K. Shimizu (1997) Sexual maturation of female Japanese macaques under poor nutritional conditions and food-enhanced perineal swelling in the Koshima troop. Intn. J. Primatol. 18: 553-579.

―和文―

1) 毛利俊雄、渡邊邦夫、渡邊毅 (1997) スラウェシマカクの頭蓋サイズの性差. 霊長類研究13: 29-39.

報告・その他

―和文―

1) 渡邊邦夫 (1997) 幸島を訪れた人とその研究:その1、順位と血縁、「リーダー」あるいは「ボス」. みやざきの自然 14: 44-53.

2) 大井徹、森治、足澤貞成、松岡史朗、揚妻直樹、中村民彦、遠藤純二、岩月広太郎、大槻晃太、伊沢紘生 (1997) 東北地方の野生ニホンザルの分布と保全の問題点.「東北地方のニホンザル・ステータスレポート(1996年版)」、東北ニホンザルの会・ニホンザル保護管理のためのワーキンググループ編. pp. 1-17.

3) 大井徹、森治、足澤貞成、松岡史朗、揚妻直樹、中村民彦、遠藤純二、岩月広太郎、大槻晃太、伊沢紘生 (1997) 東北地方の野生ニホンザルの分布と保全の問題点. Wildlife Forum 3 (1): 5-22.

4) 足澤貞成 (1997)列島自然史の生き証人−下北のサルの混血問題. 東北ニホンザルの会ニュースレター第2号.

学会発表

―英文―

1) Watanabe, K. (1997) Group size variation in some species of Macaca: implications of evolutionary processes. Inuyama Symposium "Recent Trends in Primate Socioecology" (Jan.5-8,1998, Inuyama). Abstract, p.2.

―和文―

1) 東滋 (1997) ニホンザルの戦後史−拡大造林政策が残したもの.第3回野生生物保護学会大会シンポジューム (1997年 9月、静岡). 講演要旨集 p.4.

2) 渡邊邦夫、船越美穂、三戸幸久、和田一雄 (1997) 新聞報道にみるニホンザル。第3回野生生物保護学会大会 (1997年9月、静岡). 講演要旨集 p.47.

3) 榎本知郎、中野まゆみ、松林清明、後藤俊二、濱田穣、川本芳、竹中修、渡邊邦夫、B. スリョブロト(1997) トンケアンモンキー・ヘックモンキー種間雑種個体の精巣の組織学的特徴。 第13回日本霊長類学会大会 (1997年 7月、札幌). 霊長類研究 13: 280.

4) 森明雄、山口直嗣、渡邊邦夫、清水慶子 (1997) ニホンザルメスの性皮の腫脹。第13回日本霊長類学会大会 (1997年 7月、札幌). 霊長類研究 13: 256.

5) 渡邊邦夫、三戸幸久 (1997) 新聞報道にみるニホンザル. 第13回日本霊長類学会大会 (1997年 7月、札幌). 霊長類研究 13: 262.

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