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IV COEとしての活動

1. COE形成基礎研究費 「類人猿の進化と人類の成立」

   霊長類研究所及び京都大学動物学教室の類人猿研究グループは、表記の課題で平成10年度から文部省科学研究費の交付を受けることになった。今回は研究目的、申請の経緯等について記しておきたい。

研究概要

   本研究課題は、人類の起源を考察するために、系統発生学的に最も近縁の類人猿を学際的に研究することを目指している。

   「人間とは何か」という命題は、科学技術の急速に進展する現代社会の中でひときわ重要性を増してきている。近年の霊長類学は、霊長類の一員としてのヒトを、他の霊長類との相違点および類似点から明らかにしてきたが、人類進化の過程が解明されたとは言いがたい。むしろヒトと他の動物群との類似度が強調されるにつれ、ヒトという種の特性は何か、なにがヒトを他の動物から隔ててヒトならしめたのかという問題はより重要性を増してきている。

   現代社会は、科学技術の進展による強力な大量殺戮兵器や大量輸送手段の開発、効率の良い情報伝達手段の開発により、人類の意図したところとは逆に地域紛争の激化、人種差別、ジェノサイド、富の局在化、等の問題を抱えている。しかしながら、これらは人類が類人猿とは分かれ人類への進化の過程で、環境や自らの社会構造の特質に対する適応の結果、招来したものとして認識されねばならないのであろう。人類の生物としての原理に基づく特質とその理論的思考、科学的な考察なしには根本的な解決はないと考えられる。

   チンパンジーを初めとする類人猿は、進化史上この系統からヒト科を萌出させたという点で、霊長類の中でも特別な地位にあり、人類進化考察の鍵を握っている。本研究拠点では、この類人猿を動物社会・生態、形態、脳科学、遺伝子までを含めた広範囲の学問分野、さらにそれらの相互の連携を計り、人類進化の過程を解明する。そして出来得れば生物界の一員としての人類の将来像を洞察する。この計画で得られる成果は直ちに他の霊長類を初め生物学諸分野の研究に波及させ得るものである。

   研究方法としては霊長類研究所の各部門・分野において類人猿を主たる研究対象とする研究者を、1) 行動、生態、社会学、2) 形態、古生物学、3) 脳科学、4) 遺伝学、分子生物学の四班にまとめ研究を進め、拠点形成を図りたい。中でもキーワードはDNAと脳である。DNA研究を各班の接点とするべく努力する。また脳科学の先端的な研究方法とコンセプトをもう一つのキーワードと考えている。これらは1970年代を通じて新たに生物学の諸分野に強烈なインパクトを与え、21世紀初頭には生物学の中心課題の一つになると考えるからである。

   本研究計画による長期の共同研究プロジェクトは、霊長類研究者が等しく興味を持つ類人猿に関する研究を格段に進めるものである。霊長類研究の他の諸分野への波及効果は計り知れないものがある。20世紀が原子と宇宙、ミクロとマクロの物理学の時代であったのに対して、20世紀後半からはまさに生物学の時代の幕開けと言えるのではなかろうか。生物学では、特に生物の生命原理の統一性を追求した初期の生化学、分子生物学の時代に加え、20世紀末には生物の多様性が注目を集めるようになった。21世紀初頭は、生物の多様性とヒトの脳の理解が生物学の最先端課題となると考えられる。本類人猿研究グループが、上記のような構想のもとに研究の展開を計ることで、来世紀の生物学をリードする研究拠点となることを目指す。

   「後記」として私見を述べさせていただきたい。文部省は平成7年度から表記のCOE形成基礎研究費という科学研究費制度を発足させている。霊長類研究所は日本で唯一の霊長類学の研究所であり、応募すべきではないかとの意見が出され、研究代表者、竹中が平成7年秋に申請書をまとめた。しかしながら数十件に一課題という採択率であり、正直言って採択されるとは思っても見なかった。採択されたからには鋭意研究の伸展を図りたいと考えている。

 この研究申請の立ち上げと申請の継続、大部の申請書作成については川本、濱田助教授、そして、宮田、水谷、菅原の諸氏、採択されたあとの実際の運営では、加えて内川氏の多大な助力に負うところが大きい事を申し添えたい。

(文責: 竹中 修)


年報目次

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COEとしての活動(外国人研究員/非常勤研究員)


2. 国際シンポジウム報告

犬山シンポジウム「アフリカ産霊長類オナガザル科の適応と進化」

Inuyama Symposium “Adaptation and Evolution of Cercopithecidae in Africa”

   1999年1月6日から9日まで4日間、犬山市の国際観光センター「フロイデ」において犬山シンポジウム「アフリカ産霊長類オナガザル科の適応と進化」を開催した。今年は京都大学の霊長類研究グループがアフリカで野外調査を開始してから40年になる。類人猿の調査が主流と見なされているがヒヒを主体にしてオナガザル科のサルの調査研究も遺伝学、形態学、生理学などを組み込み学際的に継続されてきている。そこで、ここではまとめの意味を込め、類人猿と原猿類を除くオナガザル科に焦点を当てた。アフリカの野外調査のパイオニアの一人である河合雅雄氏に特別講演を依頼し、続いて5つのセッションで32本(うち外国人招待者18人)の講演が行われた。発表者と演題は以下の通り。

Plenary Lecture: Masao Kawai

「Ecological and Sociological Study of Gelada Baboons in Ethiopian Highland」

Session 1: Genetics and Speciation of Baboons

Clifford Jolly: The evolution and taxonomy of baboons: New approaches to old problems.

Gerald Eck: The systematics of Theropithecus and Papio : Neontological and paleontological perspectives.

Jane E. Phillips-Conroy and Clifford J. Jolly: Multidisciplinary study in the Anubis-Hamadryas baboon hybrid zone in the Awash National Park, Ethiopia.

Todd Disotell: Molecular Systematics of the Old World Monkeys.

Antoinette C. van der Kuyl, Rui Mang, John T. Dekker, Jolanda Maas, and Jaap Goudsmit: Endogenous retrovirus evolution and the Cercopithecoid genome.

Wolfgang Scheffrahn and Sylvain Biquand: Variation of proteins in East African and Saudiarabian baboons.

R.L. Hammond, S. Biquand, W. Macasero, B.Flores, A. Boug, W. Scheffrahn and M.W. Bruford: Patterns of relatedness and population structure in Saudi Arabian hamadryas baboons.

Osamu Hishida, Takayoshi Shotake and Ahmed I.Y. Boug: Genetic differentiation between Arabian and Ethiopian hamadryas baboons.

Michael W. Bruford, Michelle Bayes, David Cheesman, Susan Alberts and Jeanne Altmann: Testing the efficiency and reliability of microsatellite genotyping for examining paternity and population structure from baboon feces.

Takayoshi Shotake: Species history of gelada baboon inferred from genetic variability and distribution.

Jeffrey Rogers: Genetic linkage mapping in baboons: Evolutionary and biomedical applications.

Session 2: Morphology, Reproduction and Physiology in Cercopithecidae

Solomon Yirga: Cercopithecid long bones from the Pliocene-Pleistocene strata of the Middle Awash, Ethiopia.

Pius A. Adoyo: Comparative evaluation of semen characteristics of Gray Mangabey and De Brazza's Monkeys.

Kiyoaki Matsubayashi and Takayoshi Shotake: Hematological values and plasma erythropoietin levels of wild gelada baboons(Theropithecus gelada).

Hirohisa Hirai, Yoshi Kawamoto, Jason M. Mwenda and Mbaruk A. Suleman: Cytogenetic and molecular differentiation within three subspecies of the Kenyan Sykes monkey, Cercopithecus mitis.

Session 3: Evolution and Virus in Cercopithecidae

Preston A. Marx: The evolution of SIV in African primates.

Masahiro Yamashita, Kentaro Ibuki, Tomoyuki Miura, Masanori Hayami: Molecular phylogeny of simian T-cell leukemia virus type I (STLV-I) and its human counterpart (HTLV-I).

Tomoyuki Miura: Molecular genetics of primate lentiviruses.

Yuichi Murayama: Immune system of the African green monkeys.

Session 4: Socioecology of Baboons

Ahmed I.Y. Boug: Germination of seeds extracted from baboon faeces in Al Hada, Taif, Saudi Arabia.

Hiroko Kudo-Hirotani: Vocal communication of hamadryas baboons and mandrills in relation to their social structure.

Isabelle Lackman-Ancrenaz: Socioecology of a commensal troop of hamadryas baboons (Papio hamadryas hamadryas) in Saudi Arabia.

Kazuyoshi Sugawara: Social behavior and group organization of anubis-hamadryas hybrid baboons.

Shimelis Byene: Female mate choice in the Awash baboon hybrid zone.

Jiro Hoshino: Social relationships of male gelada baboons at the Simen Mountain National Park in Ethiopia: Rethinking about one- male unit and herd of the gelada baboons.

Hideyuki Ohsawa: Strategy of male patas monkeys during group leadership changes.

Toshitaka Iwamoto and Akio Mori: A hypothesis on the distribution and adaptation of Theropithecus gelada, based on ecological comparisons among three populations.

Akio Mori and Toshitaka Iwamoto: The characteristics of the gelada "band."

Session 5: Conservation of Cercopithecidae

Mbaruk A. Suleman and K. Mugambi: A critical review of the de Brazza monkey (Cercopithecus neglectus) survival in Kenya: ecological and conservation nightmare.

Paula Kahumb: The conservation of the Angolan Colobus monkey in Kenya.

Robert M. Eley: Man and monkeys conflicts in Kenya - Can GIS assist in the decision-making processes?

   第1セッションでは、ヒヒ類の分類が従来の形態学に基づくものと近年になって遺伝学に基づくものとの間で大きく異なり、この十数年論争になっているので、この問題を議論する予定でセッションを組んだが形態学者が少なく充分問題解決には至らなかった。アメリカの研究者(遺伝学を志向する人が多い)らはヒヒの分類に関してはすでに遺伝学に基づいたものに従って仕事をしていて学名 Papio hamadryas はマントヒヒ以外のサバンナヒヒ全てを指していて、従来の種名は亜種に過ぎないとしている。またヒヒ類の分類でDNA塩基配列での結果はドリル、マンドリルはパピオから最も離れると言う結果を出していた。また幾つかの演題でサウジアラビアのマントヒヒの血液蛋白やDNA分析に基づく遺伝学的研究が出されていて、マントヒヒの種分化の地がアフリカ北東部の乾燥地帯に出来た島と言う説とアラビア半島と言う説が議論されたが決定的なものは出なかった。細かい仕事であるがマントヒヒの遺伝子地図がヒトのそれと比較されながら紹介された。またウイルスのDNA塩基配列から見たヒヒを含むオナガザル科の分類やゲラダヒヒの種の由来を遺伝学的に推論した研究も発表された。

   第2セッションでは形態、生理、染色体の研究で、中でも興味深かかったのはゲラダヒヒの高地適応が遺伝的ではなく、ヒトと同じように生理的に赤血球を増加させて適応しているという結果と、ケニアのサイクスモンキーの3亜種の染色体とDNA解析により明確な遺伝的差異が検出されたという発表である。

   第3セッションでは各種霊長類のSIV(ヒトのHIVに相当する)の研究発表で、最初の発表はこのSIVはいろいろな種の間を伝播感染してきた進化史を持つ、つぎの演題はこのSIVとヒトのHIVとの関連性、最後にグリーンモンキーにはSIV陽性個体が多数存在するのでその免疫のメカニズムの研究発表がされた。

   第4セッションはヒヒ類を主体にした社会生態学的研究で、新しくエチオピア南高原で発見されたゲラダヒヒの研究で、社会構造も採食生態も北高原のものと著しく異なるという発表。これは第1セッションでも遺伝的に大きな差が有るとされているので興味深い。さらにアワシュ国立公園近郊のマントヒヒとアヌビスヒヒの自然雑種集団の長期観察による社会行動の研究、パタスモンキーの社会行動の研究などが発表された。

   第5セッションではケニアのブラザモンキーやアンゴラコロブスの保護対策の問題や、サルとヒトがいかにうまく共存できるかと言う問題が提示された。

   なお犬山シンポジウム開催にあたっては、文部省COE国際シンポジウム開催経費の他、犬山市の援助を受けた。

実行委員(50音順)

大澤秀行、國松 豊、庄武孝義 (委員長)、マイケル・ハフマン、濱田 穣、平井啓久、松林清明 (事務局長)、森 明雄

(文責:庄武孝義)


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COE(Center Of Excellence)における研究活動