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京都大学霊長類研究所
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III 退官にあたって  杉山幸丸

「楽しい研究生活でした」

   私が霊長研に赴任したのは1970年でしたが、1964-5年頃から霊長研設立のための概算要求作成の下働きをしたり、準備委員会の書記として陪席したり等の関わりを持ってから、霊長研とは足かけ34-5年のつき合いでした。

   京都での12年間におよぶ大学院と助手生活のあと犬山で、それまでとは違った分野の違った経歴を持った新しい同僚たちと、時には衝突もし迷惑もかけましたが、いろんな分野の人たちと共同研究ができ、あのまま京都にいたと仮定したときに考えられるよりも有益な研究生活だったと思っています。生涯一書生のつもりで研究を精一杯楽しんできましたが、最後の3年と2ヶ月半を研究所全体のために全力で働く機会を与えていただき、その分、研究面でのペースは落ちたものの、自分自身で満足できるものでした。

   所長になって改めて感じたことは、近藤初代所長が「ホミニゼーションの解明」を共通目標に設定されたことは卓見だった、ということでした。それぞれ自由な研究を進めながらも共通目標を持っていることは、研究所の運営にとって大変な利点でした。歴代所長のような力量のない私は、入手した情報をできるだけお伝えして、所員の皆さんに示唆していただいた通りに誠心誠意、関係各位にお願いしてまわったわけですが、幸い、退任前に新しい研究センターの設立が形となって現れて良かったと思います。

   文部省でくり返し念を押されたことは、「人類進化モデル研究センターは単なる動物実験施設の改組充実ではなく、研究所全体の将来構想に基づいたものなのですね」ということでした。私はその通りだと答えてきました。飼育と実験における倫理の確立を科学にするという、霊長類学が避けて通れない課題を世界に先駆けて切り開こうとするものであり、新しいセンターの設立は霊長類学の目標の一角を実現するものです。しかし、組織が大きくなることを手放しで喜んで良いとは思いません。これをバネにして新しい領域を切り開いてこそ、有効だったと評価できるのだと思います。あとは研究所に残った皆さんに推進していただかなければなりません。

   霊長類学が取り組まなければならないもう一つの課題、霊長類学は栄えたが霊長類が次々に滅んでいったということのないように、地球上の霊長類をふくむ生態系の保全、サルと人の共存への取り組みも、ぜひ皆さんにお願いします。

   いわゆる動物愛護派への対応は、隠すよりもオープンにしようと努めてきました。口で言っても分からない人たちだと心配する所員もいましたが、私たちの基本的な姿勢は多くの人たちの支持を得るはずだとの信念でやってきました。これからも、研究成果も飼育実験環境も、ますます社会に開かれたものにし、社会に理解を求める努力を怠らずに進めていって下さい。

   霊長類研究所は大変恵まれた研究機関です。学部・研究科の人たちより研究成果が上がって当然だと思います。しかし、大学本部から離れた隔地の研究所というマイナス面を持っています。視野を狭めないためにも、独りよがりにならないためにも、この問題は相互に批判し合いながら乗り越える必要があると思います。このための一方策を任期制導入が話題になったときに提案しましたが、未だに真剣に取り組まれていないのが心残りです。運営委員会や21世紀委員会でも指摘されたことですが、外部から見た場合、恵まれていると同時に厳しく切磋琢磨していることが見えるようであって欲しいと思います。また、転出の機会は少ないにしても、各教官は人事の流動化を自分の問題として受け止めていただきたいと思います。

   私自身、まだまだ研究を続けたいと思っていますが、自分の持っている方法や方法論が古くなってきたことを痛感します。これからは、蓄えたものをまとめる作業が中心になるでしょう。そして、それを元手に新しい分野を開拓してゆきたいと考えています。

   どうぞ皆さん、フィールドでの病気や事故、実験中の事故、盗難や火災などにも十分気をつけてますます優れた成果を上げ、霊長類学にとどまらず魅力のある科学の創造に力を尽くして下さい。

1999年4月8日


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