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(COE形成基礎研究費)によるプロジェクト
「類人猿の進化と人類の成立」
1. 13年度研究全般について
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本研究課題を1) 社会・生態,2) 形態・古生物,3) 認知・脳科学,4) 分子・遺伝の4班構成で,最終年度に向けての準備も考慮して研究を進めた。
社会生態では,前年度に続いてウガンダ国カリンズの調査地としての整備を進めた。現地のスタッフの連日に及ぶ観察によりチンパンジーのいわゆる「人なれ」が急速に進み観察が容易となった。固体識別をベースとしたDNA分析のための糞や尿などの収集が急速に進み,最終年度における分析が期待される。他方35年を超える調査歴史をもつタンザニア国マハレではチンパンジーの文化的行動パターンの発達に焦点を当てた研究が進展した。例えば11歳のワカモノオスが「落ち葉かき」をした直後3歳の弟が同じ行動を示したように,幼児期に年長者の行動を模倣する例が多く観察され,それらのいわば文化的行動の伝承が明かとなった。ゴリラの研究では,カメルーンとガボンで現地調査を行い,集団のサイズと構成についての試料を収集した。低地熱帯林に生息するゴリラでは平均集団サイズが10頭前後で,山地林のゴリラ集団に比べ若干小さいことが明となった。これは山地群が葉食傾向であるのに対し,低地では果実食で採食競合のあることによると考えた。またチンパンジーと同じく離合集散社会を持つクモザルについての調査を行い,大きいパーティーサイズ,小さい遊動域等,チンパンジーと比較し,その生態学的要因を考察した。
形態古生物では,研究所で誕生を見たテナガザル2頭,チンパンジー3頭の身体や運動機能の成長発達研究が進展している。例えばチンパンジー幼児の場合,二足歩行時に両上肢を高くあげたままの歩行,雑巾掛け型四足歩行が多く見られ,マカクではほとんど観察されない行動発達が観察されている。テナガザルの発達では,身体成長はニホンザル等マカクとほぼ等しいが,行動の発達はマカクより遅く,マカクとチンパンジーの中間であることが明かとなっている。古生物研究では昨年度においてタイ北部のChiang
Muan累層における東南アジアとしては初めての大型類人猿化石(歯)の発見に続き今年度もさらに歯の化石が発見された。同時に複数の哺乳類化石も発見され生物の多様性が明らかになると共に古地磁気測定による絶対年代の推定を行いつつある。この調査とは別に,ミャンマー国中央部で中期始新世末期のボンダウン層から初期真猿類の化石を多く発見することが出来た。5属6種になることが確実となり,真猿類のアジア起源説を示唆する結果が得られた。
認知脳科学では3頭のチンパンジー幼児脳の形態発達を定期的にMRIにより測定しておりヒトの場合と詳細な比較を行っている。また研究所に保存されている約300個体分のテナガザルからチンパンジーに至る類人猿DNAの遺伝分析から,いわゆる色弱のチンパンジー1頭を発見し,網膜電図測定により赤緑色盲であることが明らかになった。現在色課題による行動実験の準備中であり,チンパンジーひいてはヒトの,色を手掛かりとする認知機能についての研究も可能となった。他方飼育下チンパンジーの認知機能研究では「概念」の獲得という観点での検査を継続した。チンパンジーは「花」という概念を持ち,見たことのない花を花であると認識することが可能であるが,刺激として写真の代わりに,正確に描写した絵,カット画,白黒の線画を用いたところ個体により成績が異なり,全てのチンパンジーがヒトが使用している絵画的表象を認識できるわけではないことが明かとなった。
分子遺伝では,ウガンダのカリンズ国のチンパンジー,ザイール国カフジのゴリラ,ガボン国ムカラバのゴリラとチンパンジーさらにタンザニア国タンガニーカ湖東側のチンパンジー分布域東端および南限等において糞,尿,体毛等の試料を収集し,地域遺伝分化,血縁判定等の遺伝分析を鋭意進めている。
(文責:竹中 修)
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