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「大型類人猿の研究・飼育・自然保護−現状と未来−」

日 時:2000年11月9日(木)- 10日(金)
場 所:犬山国際観光センター「フロイデ」

協 賛:文部科学省COE形成基礎研究費/後援:犬山市
参加者:約500

  この共同利用研究会は、大型類人猿の研究と保護という点で共通課題をもつ2つの企画が合併して採択され実施された。以下の報告は、11月に開催した研究会の記録である。なお、姉妹編としておこなわれた3月の研究会「ビリヤ(ボノボ)研究の現状と未来」については、本年報の「研究集会」の項で別途報告するので参照していただきたい。11月におこなわれた研究会のプログラムと主な内容は以下のとおりだった。

 
1日目 2000119日(木
10:00 開場・受付開始

1部        3つの分科会
10:3012:00まで、以下の3つの分科会を設定し、ラウンドテーブル形式で出席者が自由に意見を述べ合った。3つの分科会は同時進行である。分科会1「飼育と繁殖」、座長:松林清明、吉原耕一郎。分科会2「生息と保全」、座長:五百部 裕、山極寿一。分科会3「福祉と倫理」、座長:友永雅己、上野吉一。

 2部 13:0515:50 セッション1
「大型類人猿の新しい飼育施設と繁殖」座長:松林清明

吉原耕一郎(多摩動物公園)「多摩動物公園の新しい類人猿舎の紹介」

北村健一(円山動物園)「円山動物園の新しいチンパンジー舎の紹介」

小林久雄・上坂博介・早坂郁夫(三和化学研・熊本霊長類パーク)「三和熊本霊長類パークの新しいチンパンジー研究飼育施設の紹介」

道家千聡・松林清明(京都大・霊長研)「霊長類研究所で本年出産した三組のチンパンジーにおける周産期の概要」

黒鳥英俊(上野動物園)「上野動物園のローランド・ゴリラの出産」

篠田謙一(佐賀医大)「ミトコンドリアDNAの塩基配列を用いたチンパンジーの亜種判定」

米本昌平(三菱生命研)「生殖細胞/胚利用における社会的制約システム」

伊勢田哲治(名古屋大・情報文化)「ヒトとヒト以外の動物の扱いの質的な違いに関する哲学的考察」

指定討論者:竹中 修(京都大・霊長研)

3部 16:0017:50 ポスター発表
   合計、57件のポスター発表があった。その内訳として、フィールド研究4件、動物園等での研究9件、実験室での行動・遺伝・生理・形態の研究8件があった。また、霊長類研究所の「チンパンジー発達研究プロジェクト」から、遺伝・生理・繁殖関係が3件、形態が3件、行動・認知が19件あった。生命倫理・動物福祉・環境エンリッチメントおよび飼育・展示については9件あり、自然保護関係については3件の発表があった。

4部 18:0019:00 一般講演
ジェーン・グドール「野生チンパンジーの親と子の絆」
同時通訳により講演がおこなわれた。

2日目 20001110日(金)
5部 9:3012:00 セッション2
「類人猿の生息現況と21世紀の保護計画へ向けて−戦争とブッシュミート−
                                                                                     (座長:五百部 裕)

加納隆至(京都大・霊長研)「謎の多いアフリカ南限のチンパンジー」

山越 言(京都大・アフリカ研)「チンパンジーの「緑の回廊」:ギニア・ニンバ・ボッソウ地域における生息地コリドーづくり報告」

古市剛史(明治学院大)ボノボの現況と保護対策

山極寿一(京都大・人類進化論)「コンゴの内戦とゴリラの危機:最新のゴリラ生息数調査から」

ジェフ・デュパン  (京都大・霊長研COEThe effect of logging on bush-meat hunting in the Democratic Republic of Congo: a case report

マーク・アットウォーター  (京都大・霊長研COEDo primate sanctuaries in Africa have a conservation role?

指定討論者:橋本千絵(京都大・霊長研)

 613:0015:00 セッション3
「生命倫理・動物福祉」(座長:上野吉一・友永雅己)

板倉昭二(京都大・文)「自己・他者に関する認識能力に対する福祉的配慮」

中道正之(大阪大・人科)「大型類人猿の社会的能力とその発現の重要性」

マイク・ハフマン(京都大・霊長研)「病と死にたいするチンパンジーの予見能力」

濱田 穣(京都大・霊長研)「成長パターン比較から展望する霊長類の発達・加齢」

川端裕人(フリーランス)「ニムをめぐって:類人猿と付きあうことの「責任」」

 715:1017:00 セッション4
「研究−最近のトピックス−」(座長:竹中 修

斎藤成也(遺伝研)「類人猿ゲノム計画“Silver”

松沢哲郎・友永雅己・田中正之(京都大・霊長研) 「チンパンジー新生児の認知研究プロジェクト」

8部 17:0518:30 3つの分科会
1日目と同様に、3つの分科会を同時並行して進めた。

(世話人:松沢哲郎・松林清明・上野吉一・上原重男・マイク・ハフマン・友永雅己・田中正之)

  この研究会は、共同利用研究会であると同時に、「第3回サガ・シンポジウム」として開催された。サガ (SAGA)とは、「アジア・アフリカの大型類人猿を支援する集い (Support for African/Asian Great Apes)」の英文略称である。大型類人猿の研究・飼育・自然保護に関する集いで、研究者だけでなく、動物園関係者や一般の方々の参加をえて、動物福祉と野生保全に関する討議をおこなってきた。

  1日目のセッション1では、大型類人猿の飼育にかかわる問題などを考察した。とくにチンパンジーの屋外運動場における環境エンリッチメントの具体例の紹介があった。この分野では、2000年に、大きな進展があった。新しいチンパンジー飼育施設が、東京の多摩動物公園、札幌の円山動物園、熊本の三和化学霊長類パーク、の3施設でオープンしたからである。いずれも、本研究所での試みを嚆矢として、高さ15mの塔を備えており、植樹もなされ、広い屋外運動場をもっている。さらにもうひとつ、4件目の新施設建設が、林原自然科学博物館で現在計画されている。従来の施設を「景観重視型」展示と呼ぶならば、今回の一連の試みは、「機能重視型」展示という思想を取り入れた施設だと言える。また今年は、ゴリラやチンパンジーの出産・繁殖をめぐる話題提供があった。

ポスター発表では、57件の発表について、研究・飼育・自然保護の広範なトピックスについて発表と討議がおこなわれた。また、第1日目の夕べには、一般の方に向けた、ジェーン・グドール博士による、野生チンパンジーの母と子の絆の深さについての講演がおこなわれた。同時通訳をつけたこともあり、一般の方も多数来場され、約500人収容の会場はほぼ満員の盛況であった。

  第2日目のセッション2では、野生の大型類人猿の現状について考察した。野生大型類人猿は現在、かつてない危機に陥っている。その最大の原因は生息地周辺の政治状況の悪化によって、大規模な森林破壊や密猟が頻発している。とくに、アフリカの類人猿の現況は深刻で、このままでは近い将来、野生のポピュレーションが絶滅の危機に頻することも予想される。一方で、トランスロケーションなどの試みもある。その際、類人猿の地域個体群としての遺伝的な固有性、生態学、社会学的特性をどう考えていったらよいのか。研究者の間では種や亜種の分類基準をめぐって未だに論争が続いている。新しい発見や地域的な絶滅によって類人猿の分布地図も刻々と塗り替えられている。こうした状況を再確認し、野生の類人猿を保護するためにいかなる方策が可能か。今、私たちがなし得ることは何かについて討論した。

セッション3では、動物福祉、について考察した。ヒト以外の動物にかんする理解が進み、また彼らに対する社会的な関心も高まり、いわゆる「実験動物」や「展示動物」に対しても福祉的配慮を向けることは必要不可欠なものとなった。しかしそれは、動物の実験や展示を全面的に否定するものではない。ヒト以外の動物を研究や教育に用いることを肯定すると同時に、彼らのくらしに最大限の配慮をするという意識・態度を持たなければならないと言える。いわゆる動物実験で言えば、用いる動物の数を減らすということから始まり、実験動物の飼育方法、研究上の動物の取扱い、さらには実験後の動物の処遇について、十分に目を向けていかなければならない。しかし、動物種によりそれぞれ異なる特性を持っているため、それを無視した、包括的・一般論的な配慮だけでは足りないと思われる。それぞれの種の特性に関する知識にもとづき、どの範囲に対して何をどのように配慮すべきか、具体的な方策についての検討をおこなった。

  セッション4では、大型類人猿を対象とした研究の中から、遺伝子研究(シルバー計画)と認知研究(チンパンジー認知発達研究プロジェクト)について、最近の研究の進展について報告があった。

  最後に、次回第4回サガ・シンポジウム開催を担当する林原自然科学博物館・大型類人猿研究センター (GARI) の伊谷原一氏から挨拶があり、無事閉幕した。次回開催は、2001111517日に岡山で予定されている。今後も回を重ねていくことで、大型類人猿の多様な研究を推進するとともに、そうした研究を通じて得られた理解が、ヒト以外の生命に対して敬意と配慮をもつ契機となることを目指している。              (文責:松沢哲郎)

 


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