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「野生ニホンザル地域個体群の管理手法

時:20001027日(金28日(土)
所:京都大学霊長類研究所大会議室
参加者:47

ログラム  
20001027日(金)

                    座長 後藤俊二(京都大・霊長研)
趣旨説明 渡邊邦夫(京都大・霊長研)

蒲谷 肇(東京大・農学部附属演習林)「千葉県房総半島での経験から」     

井上雅央(奈良県果樹振興センター)「奈良県における猿害防除の試み」    

千々岩 哲(景生保全研究所)「高人工林率地における野猿群の遊動」

                       座長 室山泰之(京都大・霊長研)
渡邊義雄(美作女子大)「岡山県のニホンザル分布」       

林 勝治(広島県立大)「中国地方のニホンザルと集団捕獲の影響」   

森光由樹(野生動物保護管理事務所)「中部山岳地域のニホンザルとその遺伝的特徴」 


20001028日(土)  
                                     座長 室山泰之(京都大・霊長研)
高木直樹(獣害総合研究所)「四国のニホンザル分布」 

鈴木克哉(北海道大・文学部)「下北半島における野生ニホンザルの土地利用と季節変化」  

                  座長 渡邊邦夫(京都大・霊長研)  
岡野美佐夫(野生動物保護管理事務所)「箱根のサルと被害管理のための試み」 

前川慎吾(和歌山県海南市)・白井 啓(野生動物保護管理事務所)
                          
「和歌山県のタイワンザル問題」   
 

総合討論                座長 渡邊邦夫(京都大・霊長研)

 (世話人:渡邊邦夫・室山泰之)

  野生ニホンザルの保護管理問題は、この数年の間に急展開してきている。まず1990年度以降連続して行われてきた「ニホンザルの現況」研究会があり、3度に及ぶ「ニホンザル・フォーラム」開催があり、また各種学会等での、研究者や行政関係者、NGO等を交えた度重なる議論があった。その結果は、19992000年に行われた環境庁によるニホンザル保護管理マニュアル作成の内容に、大きく反映されている。2000年夏には、こうして作成された保護管理マニュアルを如何にして日本社会に根付かせていくかという問題を話し合うワークショップが東京で開催されている。

  こうした急速な野生ニホンザル保護管理問題の社会的な進展があった反面で、その基礎となるべきニホンザルの保護管理学、あるいは保全生物学の分野での研究は、非常に遅れたままである。あるいは資料があったとしても、ニホンザル地域個体群保全のために使用するためには、まだまだ未整理の状態にある。こうした状況の下で、もう一度ニホンザル地域個体群管理のための基礎的な研究をじっくり検討しようではないかというのが、この研究会の趣旨である。

  蒲谷は長年千葉県房総丘陵で行ってきた個体群管理の例、特に捕獲による個体数調整と電気柵による被害管理の方法について報告した。1972年当時と比較すると3倍程度の分布域、個体数になっている現状と、かつての分布域をコア・エリアとして今後も個体群管理を進めていくこと、その上での問題点が述べられた。井上は農生産システムに入り込む支障としてのサル被害問題について触れ、現在の農業生産システムと被害対策に当てられるであろう経費、労力などの問題を具体的かつ論理的に論じた。また自ら開発したサル防止用ネット”猿落君”や圃場整備の方法などについても紹介した。

  千々岩は高人工林地に棲む2群の遊動を分析し、それぞれの広葉樹林、植林地、松林、農耕地などの利用頻度を論じた。渡邊は最近行った岡山県東部のニホンザル分布調査結果や被害地域拡大について触れ、自然植生との関係について論じた。それを受けて林が、中国地方各地で行われている集団捕獲の影響について報告した。群れ数、個体数が極端に減少して、絶滅に瀕している地域がある反面で、かなりの数を捕獲してもまだ被害がなくならない地域、集団捕獲がなくともダム建設等、生息地破壊によって群れが消滅した例なども紹介され、ニホンザルの個体群調整の困難さが議論された。

  森光は長野県の捕獲個体から得られた資料を用いたmDNA分析の結果から、長野県内の個体群が山系毎のいくつかの集団に分かれること、同じ山系の反対側斜面では違う変異が見られることがあること、北アルプスから中央アルプスにかけては同じタイプが連続していること、オスはこれらの集団をこえてかなり動き回っていることを示唆する事例が得られたことなどを報告した。高木は現在行っている四国全域の分布調査の途中結果を報告したが、1978年の分布と比較すると断片的な分布だったのがかなり連続した状態になっている。四国地域の被害状況や対策の現状等についても紹介した。

  鈴木は下北半島佐井村に生息するY群を追跡した結果から、夏農耕地を利用することが多く、冬は牧草地、秋は山地林を広く遊動するということを報告し、農作物被害との関係を考察した。岡野は神奈川県箱根地域の個体群の長年に渡る管理計画の内容を紹介し、”野猿の郷”事業による植樹や、追い上げ事業の効果等について報告した。前川・白井が近年問題になった和歌山県のタイワンザル問題を紹介し、2群約200頭と思われる雑種個体群の除去についての見通しと、今後の計画を議論した。

  現場での問題がどうしても社会の動向や行政サイドでの判断によって左右されること、また発表者個々人の個体群管理にかかわる姿勢の違いなどがあって、必ずしもすべての発表が”野生ニホンザルの個体群管理”という点から考えて、同じ方向を指向しているわけではない。だがこうしたバラエティは、野生鳥獣の保護管理のようなその折々の局面によってどのようにでも変わりうる問題を議論する時は、むしろ含まれていた方が多面的な検討ができてより有効であろう。野生ニホンザル地域個体群の保護管理ということを論ずる上での問題点はほぼ出尽くしていたと思われるが、今後はこうした問題点を如何に深化させていくのか、共通の理解に基づいた定式化されたものにして積み上げていくかが問われることになろう。

  なお総合討論に先立ち、鹿児島県大隅半島の自然とニホンザル生息状況について、現地在住の市来よし子さんから紹介があった。                                (文責:渡邊邦夫)


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