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霊長類の生体防御と疾病(2) | 野生ニホンザル地域個体群の管理手法 |
オランウ−タンの現状と研究の進め方|日本産哺乳類相の成立と変遷|

動物園の生物学:動物園動物を研究対象にするためには|
熱帯林における同所的霊長類の種間関係の多様性をさぐる|第31回ホミニゼーション研究会




VI 共同利用研究会

霊長類の生体防御と疾病(2):Bウイルスおよび関連ヘルペスウイルス

日 時 : 2001年9月22日(土) 9:30〜17:00
場 所 : 犬山国際観光センター・フロイデ・3階第1会議室
参加者 : 約30名


セッションI:  座長:清水慶子(京都大・霊長研)
山内一也(日本生物科学研究所)
  「Bウイルス・関連ヘルペスウイルス概説」
長 文昭(感染研・TPC)
  「Bウイルスフリーカニクイザル作出のための室内繁殖の概要とその成績」

セッションII:  座長:佐藤 浩(長崎大・医)
藤本浩二(予防衛生協会)
  「SA-8(アフリカミドリザル由来αヘルペスウイルス)を利用したBウイルス抗体代替検査法」
光永総子・他(京都大・霊長研)
  「改良HVP2 ELISA法:マカクサルBウイルスの感染モニタリングへの応用」
平野 真・他(京都大・霊長研)
  「BウイルスのDNA 診断:Bウイルス特異的PCR法の確立」

セッションIII:  座長:松林清明(京都大・霊長研)
大沢一貴(長崎大・医)
  「ニホンザルのBウイルス:マカクでの系統比較」
吉川哲史(名古屋大・医)
  「単純ヘルペスウイルスの潜伏感染機構」

セッションIV:  座長:景山 節(京都大・霊長研)
中村 伸・他(京都大・霊長研)
  「Bウイルスに対するDNAワクチンの開発」
木村 宏(名古屋大・医)
  「ヒトサイトメガロウイルスの感染防御とDNAワクチン」
総合討論       座長:藤本浩二・中村 伸

(世話人:中村 伸・藤本浩二・清水慶子・松林清明・景山節)

  サルBウイルスに関する上記プログラムのワークショップを開催し, up-to-dateな研究成果の紹介と活発な討論がなされた。今回の研究会では,国内のBウイルス研究者が初めて一堂に会し,関連研究の発表・討論・情報交換が出来たことは非常に有意義であった。さらに,本研究会を契機に2002国際霊長類学会(8月,北京)での国際Bウイルスシンポジウム(オーガナイザー:中村 伸・向井鐐三郎)が企画され,関連研究のさらなる発展に繋がっている。
(文責:中村 伸)

野生ニホンザル地域個体群の管理手法

日 時: 2001年9月29〜30日(土・日)
場 所: 京都大学霊長類研究所大会議室


9月29日(土)13:00〜17:00  座長:三戸幸久
渡邊邦夫(京都大・霊長研)
  「野生ニホンザル保全をめぐるいくつかの新しい問題点」
鈴木克哉(北海道大・文)
  「下北半島佐井村における電気柵設置域の拡大と個体群の遊動」
赤座久明(富山県立新川女子高校)
  「黒部川流域に生息するニホンザル地域個体群の動態−ダム建設に伴う遊動域の変動」

休憩

                座長:杉浦秀樹

和田一雄(野生生物保護学会)
  「白神山地西目屋村の猿害について」
半谷吾郎(京都大・理)
  「森林伐採が屋久島のニホンザルの密度に与える影響」

懇親会

9月30日 9:00〜2:00   座長:渡邊邦夫
蒲谷 肇(東京大・農・千葉演習林)
  「千葉県のニホンザル保護管理:現在の問題点と課題」
高木直樹(獣害総合研)
  「滋賀県のニホンザルと保護管理の問題点」
中澤憲昭(長野県森林保全課)
  「長野県のニホンザル鳥獣保護管理計画:中間報告」
総合討論

9月30日 13:00〜14:30 討論者:渡邊義雄・福田史夫・松岡史郎・加藤満・千々岩哲

(世話人:渡邊邦夫・後藤俊二・室山泰之・杉浦秀樹)

  本研究会は,「野生ニホンザル地域個体群の動態と保護管理」と題した計画研究3年度目のまとめとして開催された。しかし鳥獣保護法改正の流れの中で,ニホンザル地域個体群の科学的保護管理が現在,行政上の重要課題になっている。そこで2日目は各県の保護管理計画を具体的に担っている人たちからの発表をうけ,問題点を検討し,今後こうしたニホンザル保護管理のための研究がどのような方向で行われるべきなのかを模索する場としても企画された。
  まず渡邊が今回の研究会の趣旨説明の中で,最近の鳥獣保護行政の中で何が問題になっているのかを紹介した。その中には,特定計画以降の流れだけではなく,捕獲個体の実験利用問題や生命倫理をめぐる最近の議論なども含まれている。鈴木は1997年以降の下北Y群の遊動の変化を中心に紹介し,この群れが他群との関係の中で新しい地域に押し出されてきた過程や,その後急速に被害が広がってきた様相,それに対して設けられた電気柵とその管理状態などが議論された。赤座は長期間のデータを基に黒部川渓谷のニホンザルの生態を紹介しつつ,宇奈月ダムが建設されることによって,3群が急速に行動域を下流側に変えていった経過を報告した。詳細な経過報告は,ダム建設が果たすニホンザル群への多面的な影響を余すところ無く伝えており,今後の同様な問題に対してたいへん参考になるものであった。和田は西目屋村のリンゴ農家の被害と収益との関係から,どれほどの被害があると耕作放棄にいたるのかという点についての言及を行った。半谷は,屋久島の種々の植生域,特に針葉樹の人工林と天然林との間での,サルの生息密度の違いを論じた。それによると伐採された地域でも,あまりサルの発見率に差がみられず,伐採率が高い植林地でのみ低くなり,伐採後あまり時間のたっていないところでは逆に高くなることなどが報告された。伐採地といっても程度の差があって,食物を供給する林分がそれなりに残されていることが,植林地であってもあまり生息密度に差が見られないことと結びついているのだろうという説明があった。他の発表でも,全体としてニホンザルの生活にとって草本類の採食が大きな役割を果たしていることが示唆された。
  翌日は,中沢が長野県のニホンザル保護管理計画の中間的なまとめを報告し,いくつかの問題点を指摘している。それは今後ニホンザルの保護管理計画が各地で作成されるときには,特に留意されるべきであろう事柄が多く含まれており,示唆に富むものであった。駆除数がかなり増加しているにもかかわらず,捕獲の効果測定ができず,また被害も軽減されていないという点は,現在の各地の有害駆除が抱えている問題がそのまま持ち越されているわけで,なんらかの改善が期待されることであった。高木は,滋賀県全県で132群ほど生息するであろう群れの,そのほとんどに電波発信器を取り付けて調査している。その上で被害マップをつくり,群れ毎に対応した対策のありかたを論じた。その中では群れの全頭捕獲も必要であろうが,その方が全体として捕獲頭数が少なくても被害の軽減につながるであろうという見通しを述べた。蒲谷は千葉県の保護管理計画の経過を述べながら,コアエリア98平方キロを確保しつつも,1972年当時の1500〜2000頭にまで押さえ込む努力をしていることを紹介した。どの県の発表も,これまで以上に具体的な保護管理策遂行上の問題点が明らかになってきており,今回の研究会はニホンザル保護管理の現実についての,より具体策につっこんだ話ができた点でエッポクメィキングなものであった。なお下北のサルに関する提言を作成した下北のサル調査会の松岡が,地元住民が積極的に被害防除にかかわることの重要性についてコメントした。今回の研究会には約40名の参加者があり,その中は研究者だけでなく県のニホンザル保護管理の担当者,現地でその業務を行っている人たち,猿害軽減のために働いている地方の研究機関職員等が多数含まれていた。ニホンザルの保護管理問題は,問題の性格上どうしても現場で働く人々との連携,共同利用研究が欠かせない。そうした意味では,今後研究者がどのような役割を担い,どのような研究課題が必要なのかという点でも示唆に富んだ研究会であった。
(文責:渡邊邦夫)

オランウ−タンの現状と研究の進め方

日 時 : 2002年1月11日(金)〜12日(土)
場 所 : 京都大学霊長類研究所大会議室
参加者: 約20名


プログラム

2002年1月11日(金)
鈴木 晃(京都大・霊長研)
 「オランウ−タンのリハビリテ−ションの現状」
コメンテ−タ−:三好康子

2002年1月12日(土)
山口鈴夫奈(早稲田大)
 「東カリマンタンにおけるオランウ−タンの保全」
特手理奈(京都大・理)・久世濃子(東京工大)
 「オランウ−タンのコミュニケ−ション」
鈴木晃(京都大・霊長研)
 「野生オランウ−タンの分布と研究の現状」
コメンテ−ター:乗越 皓司
(世話人:鈴木 晃・足澤貞成)

  オランウ−タンの研究者は,日本の霊長類研究の中で少数派であるばかりでなく,その成果についても認識が少ない。大学院クラスのオランウ−タンの課題を追う三名の人に話してもらった。鈴木はすでに調査も19年に入り,血縁関係・性周期・出産周期等,その他のフィ−ルド以上に詳細な資料が集まっている。
  特にキヤンプ・カカップとなづけた調査基地は,周辺の開発と森林火災の荒廃過程の中で,地域の自然保護活動の拠点となり,国立公園の存続の上でも要の役割を果たしている。
(文責:鈴木 晃)

日本産哺乳類相の成立と変遷

日 時 : 平成14年1月24日(木)〜25日(金)
場 所 : 京都大学霊長類研究所1階大会議室
参加者 : 約50名

プログラム
1月24日(木)       座長:上原重男(京都大)
相見 滿(京都大)
 「哺乳類相研究の視点」
前田喜四雄(奈良教育大)
 「日本産コウモリ類数種の分布への疑問点」
               座長:茂原信生(京都大)
松井章・藤田正勝(奈良文化財研究所)
 「考古遺跡から見た主要哺乳類の分布とその変遷」
河村善也(愛知教育大)
 「日本の第四紀哺乳類相-最近の研究から」

1月25日(金)       座長:平井啓久(京都大)
川田伸一郎(名古屋大)
 「モグラ科食虫類の核学的類縁関係」
原田正史(大阪市大)
 「本州中部を境とする動物種における2型性の成立特にヒミズとアカネズミについて」
                座長:庄武孝義(京都大)
鈴木 仁(北海道大)
 「日本産小型哺乳類の種分化の偶然と必然」
増田隆一(北海道大)
 「ヒグマおよびツキノワグマの遺伝的変異と日本列島の古環境」
玉手英利(石巻専修大)
 「ニホンジカの分子生態学―個体群構造から行動まで」
川本 芳(京都大)
 「遺伝子変異からみたニホンザルの成立と分布域の展開」
総合討論 
座長:相見 滿(京都大)・川本 芳(京都大)
指名討論者:子安和弘(愛知学院大)・本郷一美(京都大)・成田裕一(京都大)
(世話人:相見 滿・上原重男・平井啓久・川本 芳)

  この研究会では,日本産哺乳類を対象に生態,形態,遺伝の諸領域で全国的規模の調査を進めている研究者を招集し,日本列島における各種哺乳類の成立と分布地域の変遷に関する研究の現状を紹介しあい,分布や諸形質の変化を支配する原因について比較検討することを目的とした。
  相見は日本産哺乳類の生物地理を考えるときの4つの視点を提唱した。1) 分類の重要性。2) 地上性の哺乳類は海を渡れない。3) 地史。4) 気候である。
前田はコウモリ類について,日本から約36種が知られているが,分類がまだ不安定であること,食性がほとんど分かっていないことを指摘した。人の進出により森が消え,樹洞が消え,コウモリの分布に影響を与えていることを示唆した。
  松井・藤田は遺跡のデータベースを紹介し,イノシシが縄文時代の草創期から各地で出土すること,中期になるとイノシシの分布しない北海道からも出土することを明らかにし,人が運ぶ場合があることを示唆した。
  河村は,第四紀の哺乳類化石をもとに,どのような動物相の変遷があったのか,現在の動物相の起源,日本と大陸の動物相の関係,大陸動物相の日本への移入,移入が陸橋か氷橋か,個々の種の進化,固有種の起源と多岐にわたる問題を論じた。ゾウ化石をもとに,更新世にはシガゾウ(約百万年前),トウヨウゾウ(50万年前),そしてナウマンゾウ(30万年前)が本州に渡ってきたと推定した。そして,その後,陸橋は形成されなかったと考えている。
  川田は,ヒミズ・ヒメヒミズとモグラ類の類縁関係を染色体に認められる変異を用いて論じた。ヒミズが北米にいるモグラ型のトウブモグラ類と近縁であることを指摘した。2n=36のものを共通の祖先にして,デスマン類,アジアモグラ類,ヨーロッパモグラ類,ヒミズ・アメリカモグラ類,アメリカヒミズ類の5系統に分岐したと推測している。
  原田は,ヒミズおよびアカネズミは本州中部地方で核型の異なる集団が東西に分布を接している現状を紹介し,核型からアカネズミでは西,ヒミズでは東に分布するものが新しい型と推測されることを指摘した。分布の境界地域でアカネズミにハイブリッド個体が認められ,2n=47である。雌では繁殖能力が確かめられたが,雄は不明。
  鈴木は分布と分化,環境の変遷が相互に作用し,現在の哺乳類相が成り立っていると考える。アカネズミ類の起源と種分化は,チトクロームbの比較から,中国雲南地方が進化のセンターとも単なる集積地とも推測できる。また,日本産アカネズミの核型東西分化に対応したミトコンドリアDNA分化はみつからない。さらに,ウサギ類とモグラ類などの哺乳類相では,気候変動と連動する種分化が認められ,日本列島で古系統を温存する傾向や,古い層,中間の層,新しい層といった,階層性が認められることを指摘した。
  増田はクマ類の遺伝的変異を取り上げた。ミトコンドリアDNAの非コード領域の配列から,ヒグマは道南部,道東部,道央部の集団に3分でき,大陸との比較から,これらの遺伝的分化は30万年以上前に大陸で生じたと推定できる。道南部の集団は第一波として本州から移入し,第二波が道東部,最終氷期に第三波として道央部の集団がツンドラの消滅後に北から侵入したと推測した。礼文島の香深井A遺跡から出土した骨を分析し,「クマ送り」の祭祀のため持ち込まれたクマに,道南産の飼育型と道央産の狩猟型の違いがあることを明らかにした。ツキノワグマではミトコンドリアDNAの地理的遺伝的分化が小さく,最終氷期以後に本州にはいってから分化したと考えられる。東西の分化が認められ,その境界は伊吹,関ヶ原付近にある。
玉手はミトコンドリアDNA分析からニホンジカに兵庫付近で分布を分ける南北2集団があることを指摘した。南の集団は,遺伝的変異が大きく,2n=66,葉食性,集団がcrashする。一方,北の集団は,遺伝的変異が小さく,2n=67,68,草食性,crashがない。南の集団は,今から30-50万年前に朝鮮半島経由で進入し,北のグループは後期更新世後期にサハリン経由で氷橋をわたり進入したと推測した。
  川本はミトコンドリアDNAのD-loopに認められる変異を用い,ニホンザルが紀伊半島から日光・東北に分布する東日本グループと屋久島から兵庫,奥多摩・秩父に分布する西日本グループに分けられ,西のものが古く,東のものが新しいことを示した。また,東北のニホンザルは均一であるという。最終氷期最盛期には東日本からニホンザルが消失したと考える。その後,氷期が終わり,温暖化が始まった。落葉広葉樹林の拡大とともにニホンザルが急速に北へ分布を広げたと推測した。

総合討論
  本郷は生物相を考える上で,何がいつどこからはいってきたかを解明する必要があること,また人間活動による影響も考える必要があることを強調した。
  子安は現在,信じられているモデルを一つ一つ検証する必要性があることを主張した。ヒミズとヒメヒミズは棲み分けているといわれてきたが,白山では混在している。アズマモグラとコウベモグラも愛知では混在している。更新世に何度か大陸から入って日本の哺乳類相が成立したといわれているが,それ以前に入ったものがずっと居座り続けているのかもしれない。
成田はトガリネズミについて分子系統が明らかになってきていることにふれ,これからは古環境と関連づけた研究が重要との意見を述べた。
最後に,今後の課題として,
(1) 最終氷期最盛期の古環境がどうであったか?植生はどうだったか?
(2) 哺乳類相の階層性
(3 大陸の哺乳類相との関連
(4) 哺乳類相の成立はいつか?今から30万年前以降に本州には陸橋はなかったか?
(5) 本州ではいくつかの種が東西の2集団に分かれ,どうやら東の集団が新しいもののようである。
(6) DNAのサイズとか部位を変えると系統関係が変わることがある。
分岐にはpolytomyがあるように思える。
などがあげられた。
(文責:相見滿・川本 芳)

動物園の生物学:動物園動物を研究対象にするためには

日 時 : 2002年2月8日(金)〜9日(土)
場 所 : 霊長類研究所大会議室
参加者 : 約100名


プログラム

2002年2月8日(金)13:00〜17:00
<研究者からの視点>
                            司会:上野吉一(京都大)
上野吉一(京都大)
  「動物園の役割:現状と将来」
武田庄平(東京農工大)
  「行動研究の場としての日本の動物園:類人猿研究を中心として」
村山 司(東海大)
  「イルカ類の感覚と行動に関する研究:飼育下でできること・できないこと,わかったこと・わからな   かったこと」
幸島司郎(東工大)
  「動物園・水族館での動物行動研究:サル,イルカ,サイ,マメジカの事例から」
佐藤衆介(東北大)
  「飼育動物の環境エンリッチメント研究における動物園の役割」

2002年2月9日(土)9:30〜17:00
<現場(飼育員/研究員)の視点>

                           司会:鈴木樹理(京都大)
森村成樹(林原自然科学博物館)
  「博物館における研究・教育活動と動物福祉を基盤とした動物飼育」
原田勉(天王寺動植物公園)
  「動物園における研究の受け入れと,その問題点について」
椎原春一(長崎鼻パーキングガーデン)
  「地方の民営小動物園で行う研究活動」
<管理者の視点>
                           司会:友永雅己(京都大)
福本幸夫(広島安佐動物園)
  「日本動物園水族館協会種保存委員会技術部会としての要望」
権藤眞禎(王子動物園動物科学資料館)
  「動物園における共同研究に問題はあるか」
北村健一(札幌円山動物園)
  「研究施設としての可能性と問題点:円山動物園の場合」
内田至(名古屋港水族館)
  「研究の場としての日本の水族館−外部の機関または研究者の受け入れ。その問題点と解決策   試案。−名古屋港水族館の場合」
総合討論
指定討論者:浅川満彦(酪農学園大)

  動物を研究する場としては,まず野外と研究室(実験室)があり,動物園や水族館(以下,動物園)はその中間的な位置にあるといえる。 ところが,日本において,これまでは動物園が研究の場として十分に活用されてこなかった。その理由は,研究者側と動物園側の双方に問題があったと考えられる。近年の急激な社会変化にともない動物園の存在意義が問い直され,新たに「種の保存」「自然・環境教育」の場としての機能が求められるようになってきた。 これらを確かなものとしていくためにも,動物園は研究の場としての働きを充実させることが必要に違いない。そこで,本研究会では,動物園を研究の場と考えた際の3つの立場,つまり「外部からの研究者」,「動物園の現場」「動物園管理者」から見た,研究の場としての実状や問題点について意見交換をおこない,より積極的に動物園を研究へ利用するための方策について検討した。
  研究者からの視点として,5名の報告があった。上野は,近代的動物園の成り立ちの比較から,日本の動物園は欧米と異なり,早い時期から研究というものとは分離する方向で進んできたことを指摘した。武田は,オランウータンの行動研究をもとに,動物園という飼育下環境を用いることでより詳細な分析が可能になることを報告した。村山は,イルカ類を用いた実験的研究に関する事例をもとに,動物園による研究への理解や協力の重要性を示し,そのためにも研究者の責任は大きいことを指摘した。幸島は,多様な種を用いた研究事例から,いかに動物園は多様な研究の可能性を秘めている所であるかを指摘した。佐藤は,家畜の飼育環境の事例などをもとに,より"適切"な飼育を実現するための行動学的視点からの研究の必要性を報告した。
  飼育の現場からの視点として,3名の報告があった。森村は,動物園の教育機能を高めるための1つとして,環境エンリッチメントなどに基づく行動の展示の必要性を報告した。原田は,自身の体験をもとに,飼育の現場に対する研究者側からの説明が不適切ないし不十分な場合が少なくないこと,また公立動物園の就業時間上の制約における不自由さなどを指摘した。椎原は,地方の施設として,地域活動と結び付くことで成功している研究活動の事例や,動物種の行動特性を積極的に取り入れた展示の工夫を報告した。
  管理者の視点として,4名の報告があった。福本は,繁殖や種保存に関する研究事例をもとに,動物園と外部研究者で進められ成功している共同研究について報告した。権藤は,博物館法など動物園に関連する法規制について動物園が研究施設として位置付けられていないことを指摘し,そうした中での動物園における研究可能性を検討した。北村は,公立動物園の例をもとに,飼育担当の職員が「現業職」として採用されることでの制約など,研究を実施する組織的な問題点を報告した。内田は,動物園における研究活動の分析をもとに,研究活動と観客動員数に相関がある,すなわち研究は観客にとっても有用なものであることを指摘した。
  さらに,指定討論者の浅川は,野生動物獣医学の教育施設としての,動物園の有用性を指摘した
動物園は自らの存在意義として,「娯楽施設」,「種保存施設」,「教育施設」,「研究施設」という機能を掲げている。本研究会でさまざまな事例が報告されたように,研究はいずれの機能を充実させるためにも不可欠であり,また研究者にとっても,動物園動物は有用な研究資源だと言える。つまり,より良い展示施設にすることと,より良い研究の場にすることは,車の両輪の関係である。それはまた,より良い飼育すなわち動物への福祉的配慮に根差した飼育をおこなうことにも結び付く。一方,研究を進める際の,研究者と飼育の現場との間の齟齬という指摘も,忘れてはならない問題である。さらに,制度的,組織的な問題なども解決していかなければならない。今回の研究会が,異なる立場の人々が同じテーブルに着くということで,こうした問題を解決する契機となるためには,今後も同様の研究会を持続していくことが必要だろう。
(文責:上野吉一)

熱帯林における同所的霊長類の種間関係の多様性をさぐる

日 時: 2002年2月15日(金)〜16日(土)
場 所: 京都大学霊長類研究所大会議室
参加者: 約50名

プログラム
2002年2月15日(金)    座長:鈴木滋(京都大)
湯本貴和(京都大)
  「地域間比較の基盤としての熱帯林の多様性」
橋本千絵(京都大)
  「アフリカ熱帯林における果実生産と霊長類−
   チンパンジーの離合集散性からみた地域変異」
丸橋珠樹(武蔵大)
  「アジアの季節熱帯林-タイのブタオザルと
シロテテナガザル」
西邨顕達(同志社大)
  「新世界ザル・クモザル亜科の種間関係」
総合討論

2月16日(土)       座長:竹ノ下祐二(京都大)
中川尚史(神戸市看護大)
  「パタスモンキーとタンタルスモンキーの資源利用分割?サバンナ性霊長類における種間競合の   例として」
五百部裕(椙山女学園大)
  「霊長類に見られる食う-食われるの関係」
鈴木滋(京都大)
  「アフリカ熱帯林における類人猿の種間関係−ゾウと植生の影響」
座長:古市剛史(明治学院大)
中務真人(京都大)
  「形態学からみた霊長類の種間関係」
松田裕之(東京大)
  「間接効果による種間関係の『理論』『実例』」
総合討論
コメンテータ:稲葉あぐみ(神戸学院大)・大澤秀行(京都大・霊長研)・黒田末寿(滋賀県大)
         ・竹元博幸(京都大)・田代靖子(京都大)・中島美冬(東京大)
(世話人:大沢秀行・丸橋珠樹)


  最初に本研究会企画者の一人古市より趣旨説明が行われた。近年,熱帯林には多くのバラエティが存在することが注目され,多方面から研究者がその点について認識を新たに議論をすすめることが痛感されているという。まず植物生態学者の湯本から,熱帯林の基本的構造等について説明があった。熱帯多雨林の特徴として,大喬木の種数は他の森林と大差がないが,その下部の層の種数が大きいことが多雨林の植物種数を増大させているなどの解説があった。次いで橋本は,アフリカの4カ所のチンパンジーのパーティサイズと果実現存量との関係を調べた。各調査地内では果実現存量とパーテイサイズとの関係にはどこも相関が得られなかったが,4カ所全てについて同時に相関を求めると,有意差が現れたという。丸橋はブタオザルの群れの遊動域の追跡調査を行った結果,群れの遊動域は大きく移動していることを示した。また比較的大きな群れを形成するが,離合集散などは見られないことも示した。西邨は,ウーリーモンキー,ホエザル,クモザルの三者の同所的種間関係について発表,アフリカ産霊長類の混群と異なり,半敵対的でかつ行動を共にするウーリーモンキーとクモザルの関係を示した。
  中川は,同所的に生息するパタスモンキーとタンタルスモンキーの採食と行動圏の違いについて述べた。前者は乾期にアカシアの種子を多く食べ,多くのカロリー,蛋白を摂取し,その時期に出産する。後者はウッドランドに偏在し,雨期に多い果実等を採食,雨期に出産する。これが,近縁の二種の生殖隔離,種分化の機構であろうとした。五百部は,チンパンジーとアカコロブスの補食被食関係を話題提供。マハレではアカコロブス個体群の増殖を妨げるほどの強度でチンパンジーの補食があった。アカコロブスはチンパンジーに補食される他の種の霊長類と異なり,補食に対する対抗戦略が成功しなかったといえる。補食が始まった歴史があたらしいのかもしれないと結論した。鈴木は,ゴリラとチンパンジーの共存について話題提供。両種が共存する地域で両種の間に生息密度に相関は見られない。反対に両種が干渉し合うような逆相関の傾向も見られず,ランダムな関係にあった。両種の関係は, 混群をつくる他の霊長類とは全く異なり,同所的に存在するだけであった。このほか,類人猿の存在に影響すると思われるものに,ゾウの存在が指摘された。
  中務は,中新世降の真猿化石および現世種の歯牙形態分析により化石真猿類の種間関係を果実食と葉食の観点から考察した。オナガザル上科とヒト上科についての多様化と単純化の過程について検討したが,現段階では種間関係の検討には資料が不足しているという。 松田は,理論生物学の立場から種間関係についてコメント。種間関係だけに関わらず,今回の研究会の各発表を氏の考えに基づき理論的考察を加えて論評した。
  総合討論では,稲葉,竹元,中島,大沢が討論者として発言,熱帯林と他の森林との差異,熱帯多雨林と熱帯季節林の間の霊長類ファウナの差異について質疑が交わされた。最後に橋本から,アフリカの中でも地域によって熱帯林の様相は大きく異なることを知り,それから始まったこの研究会は今後も続行したい旨の表明があった。
(文責:大澤秀行)

第31回ホミニゼーション研究会
『知性の進化』

日 時 : 2002年3月14日(木)〜3月15日(金)
場 所 : 京都大学霊長類研究所 第1会議室
参加者 : 約40名


プログラム

3月14日(木)
平石 界(東京大・社情研)
  「ヒトの知性の普遍性と個人差を考える─"自然淘汰"と性淘汰の視点から─」
山田しょう(東北福祉大)
  「考古資料に見る初期人類の認知能力」
村山美穂(岐阜大・農)
  「脳内物質関連遺伝子と霊長類の行動特性」
小川秀司(中京大・教養)
  「各進化段階における霊長類の知性の進化の生態仮説及び社会仮説」
黒田末寿(滋賀県大・人間文化)
  「社会的知性の進化における情動の役割」

3月15日(金)
乾 敏郎(京都大・情報)
  「運動学習と言語発達」
浅田 稔(大阪大・基礎工)
  「ロボットの模倣発達」
子安増生(京都大・教育)
  「『心の理論』と知性の進化・発達」
渡辺 茂(慶応大・文)
  「認知的柔軟性の進化」
総合討論
討論者:山越 言(京都大・アジア・アフリカ地域研)・古市剛史(明治学院大・教養)

  ホミニゼーション研究会は,毎年異なるテーマを掲げて, 広い視野からの学際的な討論の場を提供してきた。今回は,ここ最近取り上げられていなかった「知性」の問題を取り上げた。「知性の進化」と銘打ったが,その背景となる「知性」の研究の現状を,進化心理学,考古学,遺伝学,認知神経科学,ロボティクス,発達心理学,比較認知科学,そして霊長類学という幅広い領域の研究者によって概説していただき,討論を行った。講演者の幅広さと,「知性の進化」という,それ自体を直接のテーマとしている研究者の少なさからか,研究会全体を包括するような活発な議論にいたらなかったのは少々残念ではある。ただし,それぞれの研究者から提案されたいくつかの興味深い考え─たとえば知性の進化における性淘汰の役割,知性を考える上での情動の重要性,知性における身体の役割など─,については分野を超えて傾聴に値すべきものであったと思う。知性とは一体何者で,それはどのように発達し,発現するのか?そしてその進化はいかにしておこったのか?このような問いに答えるためには,特定の研究分野だけでなく, 従来は想像もつかなかった研究領域とのコラボレーションが必要であり,かつ可能であることが,この研究会は強く物語っていたといえる。
  ホミニゼーション研究会も30回を超え, その方向性についての真摯な自己評価が必要な時期に来ているように思う。しかし,ふだんはあまり接することのない異分野の研究者が,それぞれの視点から知見をもちよって討論する「場」としての重要性は30年を経た今も失われてはいない。
(世話人:上原重男・友永雅己・Michael. A. Huffman・本郷一美・田中正之)
(文責:友永雅己)


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