ENGLISH 京都大学
125周年
所長挨拶 概要 教員一覧 研究分野・施設 共同利用・共同研究 大型プロジェクト 国際集会 教育,入試 広報,公開行事,年報 新着論文,出版 教員,職員公募 国際共同事業 霊長類研究基金 リンク アクセス HANDBOOK FOR INTERNATIONAL RESEARCHERS Map of Inuyama サイトマップ
トピックス
お薦めの図書 質疑応答コーナー ボノボ チンパンジー「アイ」 頭蓋骨画像データベース 霊長類学文献データベース サル類の飼育管理及び使用に関する指針 Study material catalogue/database 野生霊長類研究ガイドライン 霊長類ゲノムデータベース 写真アーカイヴ ビデオアーカイヴ

京都大学霊長類研究所
郵便番号484-8506
愛知県犬山市官林
TEL. 0568-63-0567(大代表)
FAX. 0568-63-0085

本ホーム・ページの内容の
無断転写を禁止します。
Copyright (c)
Primate Research Institute,
Kyoto University All rights reserved.


お問い合わせ

自由21

MRIによる霊長類の頭頸部画像データベース構築

竹本浩典(ATR: 国際電気通信基礎技術研)

本年度は以下の表に示す霊長類9種とツパイの頭頸部をATRの高解像度MRI装置を用いて計測し,DICOM形式のファイルとしてデータベースに登録した。

種名 解像度 枚数
Ateles geoffroyi 0.50 x 0.50 x 0.50 148
Erythrocebus patas 0.50 x 0.50 x 0.60 148
Galago crassicaudatus 0.25 x 0.25 x 0.30 200
Nycticebus coucang 0.50 x 0.50 x 0.50 144
Pan troglodytes 0.50 x 0.50 x 1.00 116
Papio hamadryas 0.50 x 0.50 x 0.60 148
Presbytis cristatus 0.50 x 0.50 x 0.50 148
Saguinus labiatus 0.50 x 0.50 x 0.50 144
Saimiri sciureus 0.25 x 0.25 x 0.25 210
Tupaia glis 0.38 x 0.38 x 0.50 100

表中の解像度を示す3つの数字の単位はmmであり,それぞれ,x方向のピクセルサイズ,y方向のピクセルサイズ,スライス厚である。全ての画像は矢状断面で撮像され,サイズは512ピクセル×512ピクセルである。また,スライス厚とスライス間隔は等しい。
画質はいずれも良好で,全ての撮像データで喉頭軟骨を鮮明に観察可能である。また,小型の標本(Glago crassicaudatus, Saimiri sciureus, Tupaia glis)では,質量が小さいためにMR信号が弱く,画像のコントラストが弱まり,筋の同定は不可能であったが,それ以外の標本では舌筋,喉頭周辺の筋を同定することが可能であった。今後,更にデータを蓄積し,口腔形状と舌骨の位置に関する形態計測を実施する予定である。


自由22

霊長類MHCクラスI遺伝子群の重複および機能分化の過程の解明

颯田葉子(総研大学院大・先導科学)

新世界猿のクラスI 遺伝子のゲノム塩基配列をヨザル,ケナガクモザル,フサオマキザルについて決定し,ヒトのクラスI 遺伝子座の配列と比較した。従来マーモセット科のタマリンを材料に欧米諸国で行われてきた研究結果から,広鼻猿類にはヒトの古典的クラスI 遺伝子座(HLA-A, B, C)にオーソログな遺伝子座は存在しないといわれてきた。しかし本研究で,ゲノム上の霊長類特異的な転移因子であるAlu因子をマーカーとしてオーソログ遺伝子座の探索と同定を行ったところ,ヨザル,ケナガクモザル,フサオマキザルのいずれにもHLA-B様の遺伝子座が複数存在していることがわかった。更に,これらの新世界猿から非古典的クラスI 遺伝子座であるHLA-EおよびHLA-Gのオーソログを単離し,新世界猿古典的クラスIオーソログ,ヒトの古典的・非古典的クラスI 遺伝子座の塩基配列とともに系統解析を行った。その結果,霊長類(真猿類)が現在有している多くの古典的・非古典的クラスI 遺伝子座は広鼻猿類と狭鼻猿類・類人猿の分岐以前に既に分化していたことが明らかなった。(この結果に関しては現在投稿準備中)。さらにこれら新世界猿とヒトの5'上流域の転写制御因子の塩基配列を比較してみると,ヒトのHLA-G遺伝子座は広鼻猿類と狭鼻猿類・類人猿の分岐以後に特異的な変化を蓄積していることが明らかになった。


自由23

霊長類におけるプリン代謝関連酵素の欠損の生理学的意義と欠損機構の解明

尾田真子(総研大学院大・先導科学・生命体科学)

プリン代謝系の尿酸酸化酵素 (Uox) は,ヒトを含む類人猿で不活性化している。また,この遺伝子は重複を経ずに偽遺伝子化し,希有な進化過程を経たといえる。本研究では,霊長類の進化においてUoxが欠損した過程と,欠損を許容した生理生化学的機構について解明することを目的とした。
本年度は,Uoxの欠損過程を塩基配列決定及び比較解析により明らかにした。ヒトを含む 9 種の霊長類 (humans, chimpanzees, gorillas, orangutans, gibbons, baboons, rhesus, crab-eating 及び owl monkeys) について,Uox の coding (915 bp),promoter (1.4 kb) 及び intron の一部 (1.4 kb) を調べ,次のような結果を得た。1) 霊長類で二度独立に起きた偽遺伝子化の機構は,CGA -> TGA の nonsense mutation であった。これは,Uox の CGA コドンの使用頻度が,霊長類では高いことと関連していた。2) 観察された塩基置換から,偽遺伝子化の時期は,great apeは約1500万年前,gibbonは約1000万年前と推定された。3) ラットと霊長類の promoter 領域の塩基配列の比較から,霊長類では転写活性の低下が示唆された。以上から,霊長類における Uox 遺伝子の不活性化は,段階的に起こったと考えられた。


自由24

ヒトにユニークな塩基配列の網羅的探索

大西啓介・植田信太郎(東京大・院理・生物科学)

ここ数十年間になされてきた研究により,大型類人猿のうち,ヒトに遺伝的に最も近縁な現生生物はチンパンジーであることが確実とされている。しかし,これはヒトや大型類人猿間の『相同』な遺伝子領域間の比較から得られたものであり,『相違』,つまりある類人猿のみに存在する遺伝子についてはほとんど分かっていない。そこで我々は,ヒトのみに存在する遺伝子領域がヒトの特異性に何らかの貢献を果たしているのではないかという考えの下,ヒトに特異的な遺伝子領域を探索することを目的とし,ヒトとチンパンジーの全ゲノム間でsubtractive hybridizationを行った。この実験により得られたクローンの塩基配列を問い合わせ配列として,データベース上のヒトのドラフトシークエンスに対し,BLASTを用いて相同性検索を行った。そこで得られた,配列が完全に一致するBACクローンの塩基配列を用いて元のクローンの配列を両側から挟む形でプライマーをデザインし,ヒトと,チンパンジーを含む類人猿のgenomic DNAを鋳型としてPCR法で増幅し,塩基配列を決定した。その結果,subtractive hybridizationで得られた3つのクローンに相当する遺伝子領域において種間で『相違』が見られ,うち1つが,イントロン内のエキソンのすぐ近傍において,ヒトや類人猿の中で塩基配列が多様性に富む遺伝子領域であることを発見した。


自由25

移入タイワンザルの拡散過程と雑種化の研究

前川慎吾(開知中学校高等学校)

和歌山県下の移入タイワンザルの拡散過程を明らかにするため,県下全域に情報網を張り,適宜現地聞き込み調査を行った。以下に今年度に得たタイワンザル関係の情報の概要を記す。1.日高郡龍神村においてタイワンザルらしきコザルの礫死体の目撃情報,現地調査実施。2.,有田郡金屋町にて混血雄成獣の射殺死体を回収(遺伝学的に混血の確認)。3.東牟婁郡本宮町にて聞き込み調査。ニホンザル,タイワンザル,交雑個体の混在する群れの情報。また同郡熊野川町においても尾の長いサルの情報。4.北山村にて,混血個体の目撃情報。5日高郡龍神村よりタイワンザルの目撃情報,現地調査を行う。6.有田郡清水町にて尾の長い個体の情報。
これまでに前川が得た情報を合わせて見ると,どうやら本拠地から高野山,奈良県への移動経路が概略明らかになった。付加する問題点として,これまで情報の無かった「アカゲザル」を見たという情報がある。もう1点の問題点は,環境庁の聞き取り調査では海草郡野上町,同美里町で複数個体のサルが目撃されていることである。この2点を早急に確認すべきである。


自由26

種の保存を目的としたチンパンジー精子の凍結保存技術の確立

楠 比呂志(神戸大・農)

希少動物の種の保存において,生殖子の凍結保存技術は有力な補助手段であるが,ウシなどの一部の家畜を除けば再現性のある方法が確立しているとは言い難いのが現状である。そこで本研究では,再現性の高いチンパンジー精子の凍結保存技術を確立する目的で,京都大学霊長類研究所で飼育されている2頭の成熟雄から電気射精法で採取した精液を材料に用いて実験を行った。
細菌検査の結果,チンパンジーの精液中には,グラム陽性球菌,同双球菌,同桿菌などが常在することが判明したので,精子保存用希釈液に添加する抗生物質としては,アンピシリン系やカルベニシリン系のものが有効と考えられた。また,家畜や実験用のサルなどで使用されているTEST,HYG,モデナ,TTE,HFおよびHamF10の6種類の精子保存用希釈液についてスクリーニングテストを行った結果,TTEに凍害防止剤として2.5%v/vのグリセリンを添加したものが,チンパンジー精子に最適であることが知られた。また家畜では,凍結前の精子の冷却過程は,通常緩慢に行うが,チンパンジーでは急速に行った方が融解後の精子の性状の回復は良好であった。さらに,精子の凍結・融解後の性状は,保存容器や凍結用冷媒に家畜で常用されているストローや液体窒素蒸気を用いた場合よりも,バイアルや粉末ドライアイスを用いた場合のほうが,良好であった。


自由27

アフリカ産霊長類の多様化過程に関する集団遺伝学的研究

嶋田 誠(国立遺伝研)

ゲラダヒヒのABO血液型に関する研究
Theropithecus属は化石資料によると過去にはアジア・アフリカに広く分布していたと考えられているが,現在はゲラダヒヒ(Theropithecus gelada)1属1種がエチオピアの高原地帯に分布しているのみである。これまで,ゲラダヒヒのABO血液型は充分には研究されておらず,飼育個体約20頭において,すべてO型と記載されていた。この記載は,他の旧世界ザルではO型は稀であることを考慮すると,疑問であり,進化の過程で集団に固定したのか,限られた飼育個体の検査結果によるためであるのか,不明のままであった。そこで,京都大学霊長類研究所集団遺伝分野に保存されている,エチオピア3地点由来の血液標本をもちいて,ABO遺伝子のエクソン6および7領域の塩基配列と,血清学的表現型を比較することによって,この疑問に迫る計画をした。現在までのところ,ABO遺伝子の配列を決定したところ,O型以外の表現型を示唆している。今後検体数を増やし,血清学的表現型の検査を加えて総合的に考察したい。
ミトコンドリアDNA配列によるサバンナモンキー亜種分化の研究
2001年度は,C.a.aethiops亜種内のhaplogroup間の多様度は,亜種間の多様度に匹敵するのという結果を論文にまとめ,現在印刷中である。


自由28

サルのストレス関与酵素系に関する基礎的研究

手塚修文(名古屋大・院・人間情報)

サルは生活環境・生活状況の違いにより,行動や精神的・肉体的体調に変化が見られる。これらの変化はストレス応答に関する酵素活性の制御・遺伝子の発現機構に直接・間接に関与していると思われる。2001年度は,ニホンザルの肝臓に局在する活性酸素(O2ー)生成酵素の一つであるNAD(P)H酸化酵素の活性制御機構を有機ゲルマニウム[(GeCH2CH2COOH)2O3]と関連させて解析した。この有機ゲルマニウムは,抗酸化・癌抑制・免疫調整・骨代謝調節・鎮痛抑制・抗炎症・血圧調節などの生理作用を持つことが知られている。我々はこの有機ゲルマニウムがNAD(P)H酸化酵素の活性を抑制するモジュレーターとして作用することをこれまで明らかにしていることから,この酵素活性への有機ゲルマニウムの抑制作用のメカニズムを明らかにすべくカイネテイックス解析(Lineweaver-Burk, double-reciprocal plot)を行ったところ,NAD(P)H酸化酵素に対して有機ゲルマニウムは非競争阻害的モジュレーターとして作用した。換言すれば,NADPH濃度に対するNADPH酸化酵素のKm,VmaxおよびKiの値は,それぞれ8.0 μM,210.5 μmol/min/mg proteinおよびμM,一方NADHの濃度に対するNADH酸化酵素のKm,VmaxおよびKiの値はそれぞれ9.5 μM,200.0 μmol/min/mg proteinおよび4.0 μMであった。不良生活環境のサルにはエサへの有機ゲルマニウム添加は有効かもしれない。


自由29

チンパンジーおよびニホンザル乳幼児におけるカテゴリ化能力の発達研究

村井千寿子(京都大・院・文)

チンパンジー乳児3個体(アユム・クレオ・パル)を対象として,対象物の「形態」という知覚的情報に基づいたカテゴリ弁別に関する実験的調査を行った。実験は,「動物」・「家具」・「乗り物」の3カテゴリの模型を刺激とし,被験児の刺激対象物に対する注視を伴う接触時間を指標とした既知−新奇弁別課題を用いた。慣化段階ではひとつのカテゴリ(例:動物)からの刺激がひとつずつ4回連続呈示され,直後のテスト段階においては慣化カテゴリの新奇刺激(動物)と新奇カテゴリの刺激(例:乗り物)が1回対呈示された。被験児が対象物をカテゴリに基づいて知覚したならば,(1)慣化段階の進行に伴う反応の減少(2)テスト段階における新奇カテゴリ対象物への選好が予想される。結果,被験児全体として(1)で示した反応は見られなかったものの,(2)を示唆する結果が統計的に有意であった。この結果は,少なくとも被験児が既知カテゴリの対象物と新奇カテゴリの対象物とを弁別していたことを示唆する。このことはチンパンジー乳児が,発達初期に対象物の知覚的な情報に基づいてカテゴリ弁別を行う可能性を示すものである。


自由30

ニホンザル胸腰部固有背筋の筋線維タイプ構成の出生後の変化

小島龍平(埼玉医大短大・理学療法)

免疫組織化学的手法を用いることにより,ホルマリン固定・同長期保存標本においても筋線維タイプの同定が可能なことが報告されている(Jouffroy and Medina, 1996; Kojima et al. 2002)。本研究では,この手法を用いてニホンザル胎仔〜乳仔の胸腰部固有背筋について筋束構成および筋構築の記載および測定を行った同一の筋について筋線維タイプ構成の検索を行うことを目的とする。そのための基本的知見として胸部の腸肋筋と最長筋について筋束構成を検索した結果を報告する。対象は体重405gの胎仔であった。胸部の腸肋筋は第7頚椎の横突起および全肋骨に停止筋束を送るとともに,第4肋骨を除く第3肋骨以下の全肋骨から起始筋束を受けていた。胸部の最長筋においては,第2頚椎以下の全頚椎の横突起,第1肋骨以下の全肋骨に停止筋束を送っていた。また第2胸椎以下の高さでは同一の高さの肋骨(外側筋束)とともに胸椎横突起にも停止筋束を送っていた(内側筋束)。これらの筋束はこの筋の表層をおおう腱膜を介して腰・仙椎より起こっていた。以上の所見はすでに記載を行っていたニホンザル成体の筋束構成の所見と同様であった。