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III 退官にあたって



鈴木 晃(社会構造分野)

  早いもので,まだ本棟の一期工事の細高い建築物が出来上ったときに霊長類研究所に入ったのは,最近の事であったように覚えている。宿舎は,出来たばかりで, 行ってみると,テラスは池を見下せる北西側に面していて, 朝陽は当たらない方向に出来ていた。二号棟はそれと池の間の三角の狭い空間に建つのだという。土地を探して, 一人で東大まで出掛けて話をつけてきた。「助手」が出る幕ではないと後でしかられた。その助手のままで定年を迎える事になるなどとは思ってもいなかった。私の研究所での前半は, いかに共同利用研としての体制をつくるかにあったといえる。

  研究所に居た全期間を私は大型類人猿の研究にすごした。アフリカのチンパンジーと東南アジアのオランウ−タンとを比較する事が私の研究目標であった。1974年にウガンダで, アミン大統領が経済戦争を起すまで, すでに私はチンパンジ−の研究を10年間つづけていた。私の研究方法は, 餌づけによらないで, 野生そのままを追う事である。タンザニア東部のサバンナのチンパンジーとウガンダの森林棲のそれとを比較する事が,両者の違いを明確にし面白かった。

  オランウータンは,アフリカの類人猿の集団生活と異なり単独生活者であるとされてきた。大型類人猿社会の進化の脈路をたどろうとする我々日本人霊長類研究者にとって, 集団生活者と単独生活者という対比の構図ではその脈路をたどる事は出来ない。そこで, 自ら東南アジアの熱帯林の深い森に分け入る事にした。それが実現したのは1983年であって, その年の人類史上初めてという熱帯林の森林火災によって, オランウ−タンの住む森は深い森ではなくなっていた。

  私の大型類人猿研究の方法は, 拠点主義・長期継続・非餌づけによるものであった。単独生活といわれる彼らも, 私の調査地約50平方キロの地域には, 約50頭の個体が確認され, 時々森の中で彼らは互いに出会うのだったデ−トスポットとでも呼びたいような彼らの出会う地点は割合限られていて, 隣接個体同志で共有するそのような空間は森の中各所の点在していた。

  血縁関係, 性周期,出産周期等, この19年の調査の中で基本的な事は大部分ってきた。2002年2月サンフランシスコで, オランウ−タン研究者の集まりがあったのだが, 私のフィ−ルドは, 今では, そのような脈路が, 最も良く解っているフィ−ルドに成長していると私は自負している。
  私の研究の中で,最も重要な概念は,社会を成り立たせている個体の中にある「内的社会イメ−ジ」の概念であろうと考えている。個々バラバラでいるオランウ−タンが,何故社会性を持ちうるかの考察から, 私はこの概念に到達したといえる。類人猿やサル達が,森の中をめぐり歩き, 食樹にめぐり会えるのも, このような似たような高度な知能のメカニズムの為せるわざなのだと思っている。

  群れてさわがしい他の霊長類と異なり, オランウ−タンは, 森の中で余り鳴く事もなくひっそりとくらしている。そのような相手とつき会うのには長い年月を必要とする。私はこれからもまだ, 長い年月を彼らと森の中でくらす事になるであろう。



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