ENGLISH トップ 所長挨拶 概要 教員一覧 研究分野・施設 共同利用・共同研究 大型プロジェクト 国際集会 教育,入試 広報,公開行事,年報 新着論文,出版 教員,職員公募 国際共同事業 霊長類研究基金 リンク アクセス HANDBOOK FOR INTERNATIONAL RESEARCHERS Map of Inuyama サイトマップ
トピックス
コラム・連載 質疑応答コーナー ボノボ チンパンジー「アイ」 頭蓋骨画像データベース 霊長類学文献データベース サル類の飼育管理及び使用に関する指針 Study material catalogue/database 野生霊長類研究ガイドライン 霊長類ゲノムデータベース 写真アーカイヴ ビデオアーカイヴ

京都大学霊長類研究所
郵便番号484-8506
愛知県犬山市官林
TEL. 0568-63-0567(大代表)
FAX. 0568-63-0085

本ホーム・ページの内容の
無断転写を禁止します。
Copyright (c)
Primate Research Institute,
Kyoto University All rights reserved.


お問い合わせ

計画5-1

サルのストレス関与酵素系に関する基礎的研究

手塚修文(名古屋大・人間情報学)

  サルは他の動物と同様,生活環境などの違いにより,行動・体調・病的症状などに変化が見られる.これらの変化は一種のストレス応答に関連する酵素活性の変動・遺伝子の発現機構に関与していると思われる. 2002年度は,ニホンザルの肝臓からの酵素のなかで有機ゲルマニウム[(GeCH2CH2COOH)2O3]が1μMの低濃度で活性酸素種のうち[O2-]を生成するNAD(P)H酸化酵素ならびにキサンチン酸化酵素の活性を(非競争阻害的モジュレーターとして) 50〜80%抑制し,[O2-]の分解と同時に[H2O2]を生成するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),並びに[H2O2]を分解するカタラーゼ活性を80〜90 %以上もの著しく促進することを明らかにした.
因みに,この有機ゲルマニウムは,医学領域においてガン・ウイルス感染・白内障・老人性アミロイドーシス形成高血圧・骨粗しょう症・脳障害・などの進行抑制,インターフェロン・インターロイキン産生促進などの効果を示すことが知られている.特に免疫細胞に対する活性化作用は著しい.また,有機ゲルマニウムには抗酸化作用・臓器保護作用などの生理的効果が知られていることから,この化学物質をエサに添加して摂取させれば,例えサルは不良環境における生活を余儀なくされた状況下でも抗ストレス,つまりストレスを軽減する酵素系の調節機構が有効に働いて,体調不良・感染症などの病状に陥る確率は低くなるかもしれない.


計画5-2

T細胞分化過程におけるレトロウイルス感染と分化異常の解析

速水正憲, 伊吹謙太郎, 大倉定之,
元原麻貴子(京都大・ウイルス研・感染病態)

  今年度は,供与していただいた正常アカゲザル胸腺(6歳令 1頭)を用いて,xenogenic monkey-mouse fetal thymus organ culture (FTOC) systemでimmature thymocyte(CD3-/4-/8-)をmature thymocyte (CD3+/4+/8+)に分化させることが可能かどうか検討を行った.まず,胸腺細胞からsortingによりimmature thymocyteのポピュレーションを採取した.それをdeoxyguanosine 処理し上皮ネットワーク様構造のみにしたマウス胎仔胸腺に加えて高酸素浸漬培養(HOS培養)を行ったところ,培養8日目ではimmature thymocyteのままであったが,13日目になると細胞増殖が認められ,27%がmature thymocyte に分化していた.さらに16日目では69%がmature thymocyte に分化・増殖する事が明らかになった.以上のことから,この系を用いることによりin vitroで胸腺細胞の増殖・分化過程をよりinvivoに近い状態で観察することが可能になった.今後さらに例数を増やすことによりこの系の評価を行っていくと共に,この系を用いてウイルス感染による胸腺細胞の分化過程への影響を検討していきたい.


計画5-3

ニホンザルのBウイルス感染の血清学的レトロスペクティブ検査

佐藤浩,大沢一貴(長崎大・先導生命研センター・比較動物医学),
景山節(京都大・霊長研)

  近年,Bウイルス(BV, Cercopithecine herpesvirus 1)には,マカク種固有の亜型が存在するという証拠が蓄積されつつある(Smith et al, JV, 1998; Thompson et al, Comp Med, 2000; Ohsawa et al, Comp Med, 2002).われわれは,これをさらに発展させて「マカク種の系統進化および大陸移動とともにBVが共進化して現在に至った」という仮説を提唱しているものの,これを直接的に証明するには多大な困難を伴うと思われる.そこで,この傍証のひとつとして,ニホンザルの血清をレトロスペクティブに検査し,抗BV抗体の存在をIgG-ELISA法を用いて確認することとした.今回は,京都大学霊長類研究所の開設当初の1976年にまで遡ることができたので報告する.
【材料と方法】
 検査材料 1976〜1982年に採血され,-80℃で凍結保存されていたニホンザル血清221検体.
抗原 Vero細胞にHVP-2 (strain OU1-76),SA8 (B-264),HSV-1 (KOS)を各々感染させ,36-48時間後に感染細胞を回収し,可溶化後,遠心上清をウイルス抗原液とした.
反応と発色 96穴プレートに200倍希釈ウイルス抗原をコートし,抗原プレートとした.発色にはビオチン化抗ヒトIgG,アビジン・ビオチン化ペルオキシダーゼによる増幅を介し,OPDを基質として発色させ,硫酸にて停止後,波長492nmにおける吸光度を測定した.
【結果と考察】
  血清中の抗BV抗体検出用の代替ウイルス抗原として,HVP-2を用いた.陽性: 97,陰性: 117 ,不定: 7で,陽性率は44% (97/221)であった.HSV-1とHVP-2抗原のOD値を比較したところ,明確に HSV-1 > HVP-2 の血清は存在しなかった.これらの値は1996-1997年に採取されたニホンザル血清を用いたSatoらの報告 (EA, 1998) にほぼ一致していた.以上の結果は,1976年から少なくとも20年の間,導入されたニホンザルがHSV-1およびSA8よりもBVないしHVP-2に近縁のウイルス,おそらくニホンザル固有のBV (BVjp)に感染し,これらの導入元である野生コロニー内で継続的にウイルスが維持されていたことを示唆していると考えられる.このBVjpの分離は,未だに成功しておらず,ヒトでの病原性解析とあわせて今後の大きな課題である.


計画5-4

アカゲザルにおける抗酸菌症の病理

柳井徳磨(岐阜大・農学部),後藤俊二(京都大・霊長研)

  マカク属において抗酸菌症は依然として重要である.アカゲザルに発生した牛型結核症および非定型抗酸菌症(鳥型結核菌症)の病理学的特徴について比較検討した.
  結核症では,1970年代に発生したアカゲザルの集団結核症13例を検索した.臨床的に高度な削痩,元気消失,食欲廃絶,持続的な下痢症状を示して,瀕死状態に陥った.また,肺にラッセル音,頻回の咳があり,後躯の脱力を示す例も認められた.ツベルクリン反応に対して,全例で陽性を示し,1例の肺と脾臓から牛型結核菌M. bovisが分離された.肉眼的には,全例とも肺でうっ血が高度で,境界明瞭な小型黄白色結節あるいは境界不明瞭な大型の硬結巣が多発性に認められた.また,肺リンパ節は高度に腫大し,しばしば壊死に陥っていた.胸壁や横隔膜にも小型黄白色腫瘤が多発性に認められた.脾臓では小型黄白色結節が密在し,肝臓には粟粒大白色結節が多発性に認められた.腎臓皮質に米粒大結節が散見された.組織学的には,肺および付属リンパ節,肝臓および脾臓に多発性の乾酪壊死巣からなる結節性病変と大食細胞・類上皮細胞の巣状および瀰漫性浸潤からなる滲出性病変が混在していた.結節状病巣では,中心部は高度に乾酪壊死し,これを取り囲んで類上皮細胞,まれにランゲルハンス型巨細胞,さらにリンパ球の浸潤が種々の程度に認められた.抗酸菌染色では,一部の例で肺リンパ節の乾酪壊死巣内に少数の陽性桿菌が認められたのみで,症例の多くは陰性であった.
  次いでSIV感染下のアカゲザル2例における非定型抗酸菌M.avium/intercellulare 感染の病理学的特徴を調べた.臨床的には高度に削痩し,慢性の下痢を示した.剖検では,小腸および大腸の粘膜は肥厚し趨壁が乏しく,表面は顆粒状であった.腸間膜リンパ節は著しく腫大していた.組織学的には,2例とも小腸に明調で豊富な細胞質を有する泡沫細胞(大食細胞)が粘膜固有層で高度な浸潤を示し,そのため粘膜は著しく肥厚していた.抗酸菌染色では,大食細胞の細胞質に多数の抗酸菌染色陽性の桿菌が詰まっていた.腸間膜および膵リンパ節では,抗酸菌を多数容れた同様な泡沫細胞(大食細胞)が,リンパ洞を中心に高度な浸潤を示し,しばしばリンパ節の正常構造は失われていた.脾臓,肝臓および腎臓にも軽度から中等度の肉芽腫性病変が多発性に認められた.非定型抗酸菌では大食細胞の細胞質に極めて多く分布したのに対し,牛型結核菌M. bovisでは主として乾酪壊死巣内に少数認められるのみで,両者の組織像は極めて対照的であった.