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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2003年度 > X 共同利用研究 2. 研究成果−計画研究5 「野生霊長類の保全生物学」

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.34 2003年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 計画研究5 「野生霊長類の保全生物学」

5-1 ウマヤザル信仰に伴う頭蓋骨の調査による口承と生息分布域の相関関係

中村民彦

ウマヤザル信仰とは厩に猿の頭蓋骨や手を祀り牛馬の健康や安産を祈願したものである.当信仰は東北全域に流布していたが,近代から現代における残留形態や口承の全容は充分に解明されていない.更に,これに関係するニホンザルの捕獲や捕殺の方法も不明である.今年度も当風習を知る古老からの口承を求め,聞き取りにより記録し,ニホンザルの生息分布との関係を明らかにしようと岩手県を中心に予備的な調査を行った.調査の結果,従来発見されている事例も加えると山形村6,久慈市1,野田村1,玉山村1,雫石町2,新里村2,沢内村1,東和町1,北上市2,江刺市1,肝沢町1,大東町1,前沢町2,平泉町1,藤沢町1の計24の事例を記録する事が出来た.保存形態の内訳は頭蓋骨21,手3である.頭蓋骨では牛馬の守護神,薬用,安産,火災防止などの口承事例を得た.手については種まき時に使用すると豊作との口承事例を得た.頭蓋骨には無病息災や家内安全を,手には五穀豊穣をと,祈願の内容に使い分けが認められる.一方,捕獲や捕殺の方法を詳細に知るインフォーマントは発見できなかった.当信仰が広く流布し,こうしたサルの需要にサルマタギのような供給者が関与していたなら県下のサル生息地の消失を招いた狩猟圧の原因になった可能性も考えられる.厩猿の風習とニホンザル分布空白地域との関係について,次年度以降の調査で更に検討を重ねていきたい.

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5-2 伊豆大島の外来マカク種に関する遺伝学的研究

佐伯真美(上智大・院・理工)

伊豆大島には戦前,動物園から脱走し野生化したサルが生息しており,現在,島のほぼ全域で群れの生息が確認されている.しかし,脱走したサルの種については諸説あって定かにはされてこなかった.そこで,島内に生息するサルの種を遺伝学的に同定することを主な目的に,野外で採取した24のサルの糞試料が分析された.糞表面に付着する腸管上皮細胞から抽出されたミトコンドリアDNAのD-loop領域から202塩基配列が解読された結果,24試料は全てタイワンザルタイプと判定され,これら24試料は2箇所の置換サイトからA・Bの2タイプに区別された.また,これら2タイプの分布は地理的に偏りがあり,動物園を境にAタイプは時計回りに,Bタイプは反時計回りに分布拡大したように観測された.そこで本研究では,|αしたサルの種,および群分裂を介した分布拡大の経緯,を遺伝学的に明らかにすることを目的とした.

本研究期間中に分析した81の試料のうち,78試料はタイワンザルタイプであり,これらは先行調査で確認されたA・Bタイプのいずれかであった.残る3試料については他の外来マカク種である可能性が示唆されたが,今後の分析によって検討する必要がある.

遺伝子タイプの地理的分布状況については,A・Bの2タイプは動物園の南約1km付近を境に,Aタイプは南部に,Bタイプは北部および西部に分布が偏っていた.また,島の南東部では両タイプが複数例混在していた.試料数の少ない南西部では,反時計回りに分布拡大した可能性の高いBタイプが数例検出され,他の外来マカク種の可能性がある3試料についても南西部でのみ検出された.分布拡大状況については,Bタイプが反時計回りに広く拡大した可能性が示唆されたが,試料の少ない南西部地域を含め今後の分析で検討する.

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5-3 熊本県に生息する野生ザルの個体群管理に向けた遺伝的モニタリング法の開発

藤井尚教(尚絅大・文)

熊本県内において野生ザル集団が生息している球磨地域から35個の糞とサルの耳や尾を16個と,阿蘇地域からサルの糞9個を公共団体の協力のもとで採取した.

この糞の中から,球磨地域13個,阿蘇地域3個の計16個を選び出しミトコンドリアのDNA抽出を試みたが,7個(球磨地域5個,阿蘇地域2個)で成功した.

この7個は球磨地域と阿蘇地域の地域固有なハプロタイプでで綺麗に二つに分けられた.

球磨地域は人吉盆地を東西に流れる球磨川によって南北に分けられ,北の五木相良地区と南の宮崎県境に接するあさぎり町皆越地区のサルのDNAは同じタイプの(41-1)型であった.

一方阿蘇地域では阿蘇南郷谷を東西に流れる白川を南北にはさむ久木野村と白川の集団で同じDNAタイプの(40)型であった.

(41-1)型は鹿児島県や宮崎県に見られる南九州型であり,(40)型は大分県や福岡県に見られる北九州型である.両者の境界線が熊本県のニホンザル地域個体群を二分しているといえよう.

これらのタイプがさらに細かいサブタイプに分類できるかは,今後の実験で検討を進めたい.なお上記の分析試料以外にも,今年度は球磨群の駆除個体から相良村で9,あさぎり町で6の皮膚標本を採集した.この標本については次年度にミトコンドリア遺伝子の分析を行う予定でいる.

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5-4 管理を目的とした三重県下のニホンザル遺伝子モニタリング

赤地重宏(三重県中央家畜保健衛生所)

三重県下においてはニホンザルの被害防除を目的とし,電波発信機をサルに装着することで,その群の位置を把握し,山へ追い上げる等の対策を実施している.発信機装着のためのサル捕獲の際,採血を実施することで血液材料を多数採集することができた(2003年8月現在で約400検体).今年度はそれらサンプルから抽出したDNAを用い,霊長類研究所のキャピラリーシーケンサーを利用して遺伝子の解析を実施した.実施し得たのは38検体で,結果の検討については現在進行中である.今後,継続して未検査の検体の解析と検討を進め,地域個体群の遺伝的構造を明確にしたいと考えている.また,近県においてニホンザルとタイワンザルとの交雑が問題になっていることから,これらサンプルからタイワンザル遺伝子の検出も試み,交雑が起こっているか否かを明らかにしたい.

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5-5 保護管理にむけた中部山岳地域のニホンザルの遺伝的多様性解析

森光由樹(野生動物保護管理事務所)

生態系を保全し,生物の多様性を維持することは現代社会において重要な課題である.ニホンザルの場合,狩猟や有害駆除による捕殺や道路網の発達,宅地造成などによって生息地が分断・縮小され,地域個体群の孤立化や局所的絶滅が進行していると考えられている.これまで報告者は,中部山岳地方に生息している個体のミトコンドリアDNAのDループ超可変域,412塩基対をPCRで増幅し塩基配列の解読作業を実施してきた.今年度の研究では,情報の少なかった群馬県の試料を用いて,同法にてmt DNAを分析して周辺県の個体ですでに検出されている塩基配列と比較した.その結果,観察されたハプロタイプは東北,北アルプス,西日本ですでに発見されているタイプか,もしくはそれに近いタイプであった.なかでも水上町,新治村に生息しているいくつかの群れは行動圏が隣接しているにもかかわらず,まったく別系統の東北と西日本のタイプであった.マイクロサテライトの分析は,昨年度実施した試料の調製法,実験条件をより詳細に整理し,本試験で用いるための試料の選定作業が進められた.今後も引き続き分析作業を実施していく予定でいる.近い将来ニホンザルの保護管理を遂行する上での重要な参考資料になると考えている.

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5-6 ニホンザルが農耕地や人家周辺に出現するときのオスの関わり

斎藤千映美・清野紘典(宮城教育大)

対象群である仙台市西部に生息する奥新川A群(96頭)は,約8年前から農作物に加害するようになった.もっとも被害が深刻な8月〜10月の間に群れを追跡して,サルが農地に出現したら出没個体の性年齢を記録し,ランダムに個体1頭を選択しスキャニングした.これらから出現した農地の物理条件(農地から人家及び林縁までの距離),農地滞在時間,出現順,出現頭数,行動を調べた.

その結果,/猷箸ら近く,林縁から遠い農地には,サルは出にくい.⊇亳十腓帆軆亳蹴箙腓らオトナ・ワカモノオスは他のクラスより率先して,かつ頻繁に農地に出現する傾向が見られる.3胴堝阿任離好ャニング頻度から農地において,サルは採食中にもっとも頻繁に警戒行動を示す.だ別によるスキャニング頻度の違いから農地では,オスよりもメスの方が警戒心が強く,他個体や周囲を気にする傾向がある.ヂ粟ごとのスキャニング頻度の違いからオトナ・ワカモノオスは,農地に出現中には他のクラスより警戒心が希薄であるという以上5つが示唆された.

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5-7 富山県のニホンザル地域個体群の分布特性と遺伝子変異

赤座久明(富山県立新川みどり野高等学校)

14年度共同利用研究(自由19)において,富山県の丘陵地に生息するニホンザルの群れは,ミトコンドリアDNAの塩基配列の比較から,遺伝的に異なる4つ集団(A,B,C,D)から構成されていることが分かった.この結果を第19回日本霊長類学会で報告した.15年度は,北アルプスを源流にする常願寺川と黒部川の上流域でDNA試料の採取をおこなった.立山連峰の西側に位置する常願寺川の支流(標高1200m)で採取し,DNAを抽出することができた7個の糞はすべてがAタイプであった.また,立山連峰の東側に位置する黒部川の本流と支流(800m〜1900m)で採取した1個体(メス)の血液と15個の糞はすべてDタイプであった.一方,黒部川の東側に位置する後立山連峰の岩小屋沢岳(2630m)から鳴沢岳(2641m)にかけての稜線で採取した4個の糞のうち2個はBタイプであったが,他の2個はこれまでに県内では記録されていない新しいタイプ(Gタイプ)であった.常願寺川流域はAタイプ,黒部川流域はDタイプが,下流の丘陵地帯から上流の生息限界域まで連続分布しているが,夏に黒部川右岸の後立山連峰の稜線部を利用する群れは,黒部川沿いに分布する群れとは遺伝的に大きく異なる集団であることが推定される.

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5-8 白神山地野生ニホンザル群と地域社会の共生に関する研究

今井一郎(関西学院大)

本研究は,白神山地周辺地域に生息する野生ニホンザル群と地域社会との間に共生関係を築きあげるための方策を探ることを目的に実施した.2002年度に行なった共同利用研究(自由研究12)の成果の上に進めた.調査地域は鯵ヶ沢町・赤石川流域,岩崎村・松神地区および西目屋村内の諸集落である.鯵ヶ沢地域農業改良普及センターの協力で得られた被害金額などの資料を踏まえて,住民がもつニホンザル観と猿害問題に対する自治体当局の取り組みに焦点を当てて各地で聞き取り調査をおこなった.広域調査の結果,各地域,自治体でそれぞれの取り組みはあるものの,有害鳥獣捕獲許可を得て駆除することに頼らざるを得ない全般的な傾向が明らかになった.しかし,西目屋村では2002年度からAPP(アニマルパトロールプロジェクト:代表丸山直樹東農工大教授)による活動の一環としてNAP(西目屋村アニマルパトロール)活動が開始され今後の展開が注目される.和田一雄元東農工大教授がリーダーをつとめている.これは都市ボランティアによるニホンザル追い払い事業が中心となり,西目屋村のように過疎・高齢化が進む地域における日常的な労働力を補う点に効果が期待されるのである.西目屋村・農林建設課が協力して事業を進めている.この事業は地域住民,自治体,研究者と都市ボランティアの共同によって地域の環境保全を持続させようとする試みであり,また都市と農村部の人的交流を深める可能性を認めることもできる.今後はこの種の取り組みを長期的に追跡し効果を検証することにより自然環境,野生動植物の適正な保全策を検討する必要がある.

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会