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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2003年度 > X 共同利用研究 2. 研究成果−自由研究1-10

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.34 2003年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 自由研究1-10

1 霊長類の足底の筋および関連する末梢神経の解析による比較解剖学的検討

荒川高光(神戸大・院・医)

筆者の前回の研究(計画研究3-1,霊長類研究所年報 Vol. 32, 2002)ではとくに足の母指内転筋の起始・停止形態について調査を行った.今回は足底の筋を主に支配する外側足底神経の詳細を調査した.標本はチンパンジーおよびアカゲザルの左下肢各1側である.それら標本の下腿部以遠を肉眼,あるいは(とくに足底部)実体顕微鏡を使用して詳細に剖出を行った.その結果以下のことが明らかになった.アカゲザルにおいては,腓腹神経が外側足底神経の成分に合流していた.チンパンジーではそのような形態は見つけることが出来なかった.アカゲザルにはMm. Contrahentesが存在した.その支配神経は外側足底神経深枝であり,第3背側骨間筋を支配する筋枝が分岐した直後,底側方向に当筋への支配神経が1本だけ確認できたが,他の筋枝は不明であった.ヒトの母指内転筋斜頭はMm. Contrahentesと相同であると言われるが,アカゲザルの母指内転筋斜頭とMm. Contrahentesへの支配神経は分岐位置が若干離れている印象を受けた.また,チンパンジーでは母指内転筋横頭への支配神経が2本確認され,そのうちの1本がアカゲザルのMm. Contrahentesを支配する神経とほぼ同じ位置から分岐していた.Mm. Contrahentesの筋成分がチンパンジー,ヒトにおいてどのような系統発生学的変化を遂げたのかを考察する上で興味深い所見と考えられた.

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2 サル類の正常及び病変組織におけるマクロファージ群の分布と機能的役割の解明

山手丈至(大阪府立大・院・農学生命)

バイオメデイカル研究における動物モデルとしてサル類は近年注目されている.マクロファージは多様な機能を有する細胞群で,生体の恒常性維持において重要な役割を担う.マクロファージの特性を明らかにする目的で,サル類の正常と病変組織におけるマクロファージ群の分布を免疫組織化学的に解析した.用いた抗体は,ヒト肺胞マクロファージを抗原として作製されたAM-3K,ヒトのスカベンジャーレセプターのタイプIを抗原として作製されたSRA-E5,ヒトのマクロファージの同定に繁用されているCD68である.これら抗体をサル類の全身諸臓器に適応した結果,全ての抗体がサル類のマクロファージを認識することが示された.特に,AM-3KとSRA-E5に対する免疫染色性は良好であった.二重免疫染色により,AM-3K陽性細胞は必ずしもSRA-E5に対して陽性にはならなかった.これは,サル類のマクロファージ群の多様な機能を示唆する.さらに,今回偶然みられた腎線維化病変において,AM-3K陽性マクロファージが多く出現することが示された.我々は,これまでの研究によりAM-3K,SRA-E5,CD68に対する免疫反応性が動物種間で違いがあることを見出している.マクロファージ群の種特異性の機能や,病変形成への係わりについてはさらに解析する必要がある.(SRA-E5とAM-3Kは,熊本大学医学部の竹屋元裕先生より譲渡された.)

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3 ニホンザルの生息地選択における物理環境の影響

辻大和(東京大・農学生命科学)

ニホンザルの行動圏利用は様々な環境要因から影響を受ける.本研究ではこれらの諸要因を定量化し,各要因が各季節のニホンザルの生息地利用に与える影響の相対的な重要性を把握することを目的とする.本年度はとくに泊まり場と温度環境に重点を置いた.宮城県金華山島北西部の様々な地形6タイプ10箇所(尾根100-300mまで3箇所,沢100-300mまで3箇所,海岸,シバ群落,シキミ群落,スギ群落)に温度データロガーを設置し,2003年11月21日から2004年2月14日にかけて10分毎に温度を記録した.記録期間中,調査対象群は沢を泊まり場とすることが多かった(21日中16日).ロガーのデータを解析した結果,沢・シキミ群落・スギ群落は尾根・シバ群落・海岸と比較して日中と夜間の気温の変化が小さく,平均気温は下回るものの最低気温は高かった.観察されたサルの泊まり場選択は,最低気温の高い沢を利用することにより夜間のエネルギーロスを防ぐためと考えられた.

来年度以降は引き続き温度データを収集するのに加え,他の物理要因,他の群れの位置,水場の位置などの情報も収集し,これらの諸要因とサルの行動圏利用との関係を解析する.

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4 秋から冬にかけてサルの主食となる果実の結実の年次変動

高槻成紀(東京大・総合研究博物館)

2000年の秋以降4回の秋から冬にかけてのシーズンについて主要4果実樹種(カヤ,ブナ,ケヤキ,シデ)の結実量を,口が円形のトラップを種ごと10個設置して調査した.年次は以下,2000年から2001年にかけての冬を「00冬」などと表現する.その結果,種ごとに明らかな年次変動があり,カヤは00冬と01冬はまったく結実せず,02冬に少量,03年に大量(49±76個/m2)であった.ブナは00冬は微量,01年はなしだったが,02冬と03冬は豊作(それぞれ251±247個/m2,203±347個/m2)であった.ケヤキは00冬と03冬がそれぞれ2404±1271個/m2と2407±3688個/m2の豊作で01冬と02冬は凶作であった.シデはケヤキとよく似た変動をとり,00冬と03冬が豊作(1945±2326個/m2と1371±726個/m2)であった.この結果,サルにとっての冬の食物環境は00冬はケヤキとシデの小型堅果のみ,01冬はすべて凶作の最悪年,02冬は中型堅果ブナが豊作,03冬はすべてが豊作の最良年となった.このように短期間でも結実に大きな年次変動があり,しかもその組み合わせがさまざまであった.このような越冬時の食物供給の違いはサルの採食やそれに関連した行動圏利用,さらには死亡率などにも影響を与える可能性がある.

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5 ニホンザル新生児における匂い刺激によるストレス緩和効果

川上清文(聖心女子大・心理)

筆者らは,ニホンザル新生児が採血を受ける場面に,ホワイトノイズという音刺激やラベンダーの匂いを呈示するとストレスが緩和されることを明らかにした(Kawakami,Tomonaga & Suzuki,Primates,2002,43,73-85).本研究では,その知見をさらに深めるために,サルの好物であるリンゴの匂いを呈示してみた.本年度は,3頭のみの実験であり,さらに頭数を増やす予定である.

本年度の3頭は,メス1・オス2で,第1回目の実験日が平均生後8.7日(平均体重543.3g),第2回目の実験日が15.0日(体重580.0g)であった.1回目か2回目に,匂いを呈示し,呈示しない条件と比べた.行動評定の結果では,リンゴの匂いの呈示効果はみられなかった.今後,コレチゾルの分析結果を含めて,検討したい.

なお,リンゴの匂いは,以前のラベンダーの匂いと同様,高砂香料で合成されたものである.

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6 チンパンジー幼児・ニホンザル幼児におけるカテゴリ化能力の発達的研究

村井千寿子(京都大・院・文)

2-3歳のチンパンジー乳児における,自発的な「動物」カテゴリの形成に関する実験的調査を行った.実験には,被験体の対象に対する接触を伴う注視時間を指標とした馴化法を用い,被験体の訓練は一切行わなかった.また,哺乳類,鳥,昆虫,爬虫類の4種のカテゴリからの模型を刺激として用いた.あるカテゴリに属する4つの対象を,ひとつずつ連続して呈示された場合(例:哺乳類であればゾウ,ウマ,イヌ,ウシなど),被験体がそれらの共通性を認識し,同じカテゴリの成員としてグループ化したならば,刺激対象の呈示回数が進むにつれて,被験体の反応時間が減少すると予想される.一方,呈示された刺激を同じカテゴリの対象として認識しないのであれば,そのような反応時間の減少(馴化)は起こらないと考えられる.実験の結果,チンパンジー乳児が,上述の4つのカテゴリからの対象をグループ化することが示唆された.さらに,被験体がこれら4つのカテゴリを,より包括的なカテゴリである「動物カテゴリ」としてグループ化するかについても同様の方法によって調べたが,その証拠は得られなかった.今回の結果は,チンパンジー乳児が,上位レベルのカテゴリを自発的に形成するという新しい発見を示唆する.

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7 ニホンザルにおける簡易物理的防護法の効果及び各種農作物に対する嗜好性

山中成元,常喜弘充,鋒山和幸(滋賀県農業総合センター・農業試験場・湖北分場)

ニホンザルによる農作物被害対策の一環として,当試験場で試作した簡易防護柵等による侵入防止効果を検討するとともに,昨年に引き続き食害を受けにくい農作物を選定する基礎資料を得るため,各種農作物に対する年齢別,採食経験別の嗜好性を検討した.簡易防護柵の侵入防止効果は,侵入試行回数では258回であったが,立て柱の上まで登るものの,立て柱に挿した弾性ポールのしなりや内側支柱に延びるネットのたわみにより,立て柱の上から柵内へ侵入できた個体は全く認められなかった.カゴ製被覆道具によるカボチャの奪取防止効果は,2日間で延べ84回の試行を繰り返したが,らせん杭で固定するタイプではカゴの浮き上がりがなく成功率は0%であった.カプサイシンを練り込んだネット被覆によるカボチャの奪取防止効果は実験初日では忌避的な行動が認められたが,2日目以降は早朝に顔を近づけて奪取しようとする個体が4頭認められ,5日目には歯でネットを噛みちぎってカボチャの奪取に成功した.一方,採食実験の結果,年齢や採食経験にかかわらず嗜好性が低かった品目はハーブであった.

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8 霊長類の体毛色多様性に関与する分子遺伝学的機構の解明

中山一大(東京大・理)

アグチパターンは毛の長軸方向に沿って暗帯と明帯が繰り返すもので,哺乳類の体毛に普遍的に存在しており,分子レベルではメラノコルチン1レセプター遺伝子(MC1R)とアグチタンパク質遺伝子(agouti)によって制御されている形質である.マカクでは,カニクイザル種群,トクザル種群に含まれる種の毛には明確なアグチパターンが存在し,全体的な体毛色が明灰色から暗褐色であるのに対して,シシオザル種群ではアグチパターンは明確でなく,体毛色は総じて黒い.このようなマカクにおける体毛色の多様性とMC1Rならびにagoutiの多様性との関連性を探るべく,マカク数種について両遺伝子の塩基配列をダイレクトシーケンシング法で決定した.今回の調査では,両遺伝子のコード領域上にはマカクの体毛色多様性に決定的な役割を果たしていると考えられる変異は発見されなかった.しかし,agoutiの塩基配列を分子進化学的に解析することによって,トクザル種群,カニクイザル種群では非同義置換率が同義置換率より低いのに対して,シシオザル種群では非同義置換率が同義置換率よりも高くなっていることが明らかになった.シシオザル種群では,明瞭なアグチパターンが喪失したことによって,agoutiのコード領域に作用してきた機能的制約が緩和したためと考えられる.

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10 旧世界ザルおよび新世界ザルを利用したcDNAサブトラクション法による種特異的発現遺伝子の検索

郷康広(総合研究大学院大・先導科学)

本研究は,種の個別性・特異性の遺伝的基盤を明らかにするために,ヒト・旧世界ザル・新世界ザルの各臓器において種特異的に発現している(もしくは発現していない)遺伝子を探索することを目的とした.

本年度は,方法の確立を行うため,比較的容易に実験材料を手に入れる事ができ,また,ゲノムデータベースおよび発現遺伝子データベースが充実しているヒトおよびマウスを対象として実験を行った.ヒトにおける発現抑制遺伝子および偽遺伝子を探索するために上皮に注目した.ヒト化における体毛消失(hair loss)の機構を明らかにするために,上皮における発現遺伝子のうち双方で同程度発現しているものを除き(サブトラクトし),ヒトで発現が抑制されている候補遺伝子を51種類同定した.その候補遺伝子を問い合わせ配列としてデータベース検索した結果,全ての遺伝子が,マウスと比較して発現は抑制されているものの,遺伝子として機能を失って(偽遺伝子化)はいなかった.ただし,発現抑制遺伝子の中には,機能未知のノンコードRNA(タンパク質に翻訳されずRNAが遺伝子の最終産物として機能する遺伝子)が多数見つかった.本共同利用研究において方法の確立ができたので,次年度以降,ヒトにより近縁な旧世界ザルおよび新世界ザルを利用し,ヒト化に至る過程で発現が抑制されているもしくは偽遺伝子化した候補遺伝子を絞り込み,その生物学的・進化的な意味付けを行う.

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会