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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2003年度 > X 共同利用研究 2. 研究成果−自由研究11-20

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.34 2003年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 自由研究11-20

11 MT-V1単一視覚情報伝達経路の選択的破壊による運動視の阻害と神経再生

久恒辰博・纐纈大輔(東京大・院・新領域)

サルを用いた行動学実験により,脳の大まかな領域の機能分担は分かってきたが,領域間を結ぶ個々の神経ネットワークが情報処理の過程においてどのような役割を担っているかは殆ど分かっていない.そこで本研究では,逆行性に投射する神経伝達経路の情報処理における機能の解明を最終的な目標とし,単一の神経情報伝達経路を選択的に破壊する技術の確立を目指した.

実験はまず投射関係が密であり,領域の同定が比較的容易である,一次視覚野(V1)から外側膝状体(LGN)への逆行性投射経路をターゲットとして選択的破壊技術モデルの確立を目指した.まず光応答反応を測定してLGNを同定し,光増感物質であるクロリンe6を結合させた逆行性輸送物質をLGNに注入した.この複合物質はシナプス末端から取り込まれ,V1にある細胞体まで逆行性に運ばれる.そして,V1にレーザー光を照射することによりV1からLGNへ逆行的に投射している神経細胞のみを選択的に破壊した.

その後脳組織標本を作製して,選択的神経破壊が起こっているか確認を行った.LGNへ逆行性投射する神経細胞群はV1の第6層に存在しており,第6層での神経細胞の破壊は確認された.しかし,第6層以外にもレーザーによる損傷が見られた.以上の結果から,このモデルによる単一神経情報伝達経路の選択的破壊は可能であるが,照射するレーザー強度などの実験条件の検定が更に必要であると思われる.

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12 霊長類における認知的ストレスと免疫・内分泌反応の研究

大平英樹,市川奈穂(名古屋大・院・環境学),磯和勅子(三重県看護大・看護)

昨年に引き続き,霊長類における認知的ストレスに伴う免疫・内分泌反応を検討するため,本年度は下記の研究を行った.

急性ストレスに関する研究として,ニホンザルに認知的ストレス負荷を課し,そこでの免疫・内分泌動態を検討することを目的として,個体を対象に馴致・認知課題訓練を行い,1個体はパフォーマンスが実験可能な水準まで達した.加えて血液検体より同定される各種リンパ球サブセットなどの免疫指標の同定法を検討し,確立した.採血のためのベスト着用に関する馴致後,本実験に移行する予定である.

また慢性ストレスの生体への影響を検討するため,ニホンザル1個体を対象に上位個体とのケージ距離を操作することで社会的環境ストレスの程度を低度から高度に設定し,各条件における免疫系・内分泌系指標の測定および行動分析を継時的に実施している.ベースライン観測の後,高度ストレス状況に移動後,NK細胞数の増加,ヘルパーT細胞の減少傾向という傾向がみられている.今後,中度ストレス状況,低度ストレス状況における各指標の変化を継時的に測定すると共に,内分泌系指標であるコルチゾールと免疫指標の関連性の検討,およびストレス負荷に伴う行動の変化に関する分析を行う.

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13 ニホンザルの生涯にわたる繁殖戦略の変遷

榎本知郎(東海大・医)

霊長類の生殖器は,性淘汰によって進化したと考えられている.ニホンザルの精巣の進化を考察するため,われわれは,ニホンザルのオスの加齢に伴う精子形成の変化を組織学的に検討した.

ニホンザルの多様な年齢階層の,交尾季に死亡した個体から精巣組織を採取し,通常の組織学標本を作製し,光学顕微鏡で観察・分析した.その結果,3歳の個体では,精細管はセルトリ細胞のみで占められ,精子形成はまったく見られなかった.4歳になると,精細管に精子形成細胞が認められた.しかしそれは減数分裂のごく初期の段階でとどまり,精細胞は認められず,精子形成は行われていなかった.7歳から13歳までの個体で減数分裂も活発で,精上皮の精細胞の列も三,四層になり,最も活発な精子形成が認められた.20歳を越える個体になると,成熟した精細胞を含まない精細管が認められるようになる.これらの精細管では,セルトリ細胞間に間隙が認められ,血液・精巣関門が破壊されていた.

これらの結果から,ニホンザルのオスが適応度を上昇させるためには,オトナになって精子競争の原理が働く状態で他のオスと争い,老齢になれば,メスのオスに対する配偶者選択によって選ばれるのが,最も効果的な戦略であることが予想される.今後,この仮説について検討していきたい.

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14 霊長類における脳内ドーパミン伝達系関連遺伝子の多型解析

井上-村山美穂(岐阜大・応用生物)

本研究では,ヒトで性格への関与が報告されている神経伝達物質関連遺伝子の中でも最も研究が進んでいるドーパミン伝達系に着目し,霊長類各種について,伝達物質の受容,回収,分解の各過程に関与する遺伝子の多型を総合的に解析し,脳神経系の情報処理機構の解明に寄与することを目的としている.前年度までに行った,ドーパミンD4レセプター(DRD4)のエキソン3領域,およびドーパミントランスポーターの3'非翻訳領域に加え,新たにDRD4のイントロン2領域とプロモーター領域,およびドーパミンの代謝酵素カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)のエキソン領域を類人猿で解析した.その結果,DRD4のイントロン2領域にヒトでも未報告の新たな多型を見いだした.多型は塩基置換またはGC-rich配列の反復からなっており,ヒト,チンパンジー,オランウータン,アジルテナガザル,フクロテナガザルで,それぞれ3,3,2,2,4種類のアレルが見いだされた.ゴリラ21個体では多型は見いだされなかった.DRD4のプロモーター領域とCOMTについては,いずれの種でも多型は見いだされなかった.今後,遺伝子発現への影響や,チンパンジー等の個体の行動特性との関連を解析する予定である.

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15 霊長類の自発性瞬目に関する比較研究

田多英興(東北学院大),大森慈子(仁愛大)

ヒト以外の霊長類の瞬目行動については知見が多くない.そこで,初年度は霊長類の瞬目についての研究の糸口を見つけるために,日本モンキーセンターで飼育されている霊長類84種について,まずその瞬目の様子をビデオに記録し,そのうち54種についてビデオによる解析の可能な瞬目の諸側面について予備的な解析を行った.その結果,瞬目率の平均については,最大でボンネットモンキーの20回/分であった.この値はヒトとほぼ同じであった.ついでトクモンキー(17.0),ニホンザル(15.1)と続いた.一方少ない方はその多くが原猿類で,5分間一度も瞬目をしなかったポト(0),ついでレッサースローロリス(0.2),オオギャラゴ(0.3),ショウギャラゴ(0.3),と続いた.これらの種では数分間に1回という極めて少ない瞬目頻度を示した.興味深いことに,ヒト以外の霊長類では,瞬目が眼球運動または頭部運動と連動して生じることが非常に多く,54種の平均でみると,眼球/頭部運動なしで生起した瞬目はわずかに27.1%で,残りの多くは水平または垂直の頭部運動と連動して生じた.特に水平の運動と連動する瞬目は全体の50%に達した.また,眼瞼の運動速度もまたヒトと比べて非常に速いことも注目された.さらに,霊長研内のチンパンジーについて,ビデオによる生育記録などから瞬目行動を解析するための予備的作業についても着手した.

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16 サルにおける味覚選好形成の予備的研究

川合伸幸(名古屋大・情報科学)

霊長類の新生児の記憶研究を行うための予備的な検討を行った.2個体のニホンザル新生児を対象に,生後0〜1週齢から15〜20週齢まで,2種類の匂い(レモン・アーモンド)を条件刺激(CS),口腔へのキニーネ溶液(0.1 ml)の投与を無条件刺激(US)とした分化条件づけを行った.その結果,生後まもなく,キニーネ溶液に対する忌避反応が顔面表情の表出として見られたが(UR),USと対にされたCS+に対してそのような顔面表情の明確な表出(条件づけの形成)は見られなかった.両個体とも 4〜5週齢で,いずれの匂いに対しも強い忌避反応を示し,その後,いったんその反応が消失してから,CS+の匂いに対する忌避反応が多く見られるようになった.そのことが,分化条件づけの形成過程を反映しているかを確かめるために,条件づけ手続き終了後(20週齢と15週齢)から,2週間後と3週間後に,それぞれの匂い刺激がショ糖溶液(20%)の摂水をどの程度抑制するか調べた.最初の5分間の摂水量をベースラインとし,その後,ほ乳瓶の口に綿に湿した匂いを付けて,それぞれ5分間ずつ呈示し摂水量を測定した.その結果,ベースラインやCS-を付与した条件に比べて,CS+がある条件での摂水量は少なかった.このことは,風味〜嫌悪の条件づけが可能であることと,それが2週間保持されることを示唆しているが,それが生後何周齢くらいから可能かは不明である.

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18 ヒトの知能発達:-光トポグラフィを用いた脳機能イメージング研究-

小沢哲史(岐阜聖徳学園大学短期大学部)

ヒトの知能を測定するとされる課題群と脳活動との関連には不明な点が多い.本研究では,WAIS-Rの動作性下位検査の絵画配列から抜粋された4問を主たる課題とし,大学生・大学院生16名を研究協力者として検討を行った.絵画配列課題は,遂行に両手の自由な動きを必要とし,被験者に対して身体拘束性の低い光トポグラフィ装置での計測に適している.計測部位は前頭前野とした.結果は,以下の3点である.結果(1):個人差も一部に見られるものの,46野付近に左右対称の活動が観察された.結果(2):広範な個人差が認められるものの主観的判断に基づく失敗の内観と活動量が対応した.結果(3):課題順序・成績・活動量の三者の関係について:成績が良いあるいは中程度の研究協力者に関しては,課題順序と成績と活動量の関係に一定の傾向は見られなかった.一方,成績が相対的に良くない研究協力者については,活動量が相対的に高く,かつWAISにおいて制限時間が相対的に長く設定されている“難問”に先に取り組む群に割り当てられていた.なお,本研究は,2002年10月に岡ノ谷一夫助教授(千葉大),アブラ・デリシャット氏(科学技術振興事業団)および正高信男教授の協力の下で行われた実験の補足・分析を中心として行われた.

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19 ニホンザル胸部固有背筋および体肢筋の筋線維タイプ構成および筋構築の出生後の発達的変化

小島龍平(埼玉医科大学短期大・理学療法)

ニホンザル成獣の体幹および体肢の骨格筋の筋間および筋内部位間で筋線維タイプ構成に違いがみられる.また,マカク属を含む数種の霊長類の体肢筋において,成獣で遅筋線維の割合の高い抗重力筋においても出生直後は速筋線維の比率が高いことが報告されている.そこでニホンザルの固有背筋および体肢筋の筋線維タイプ構成の出生後の変化を筋構築とともに検索しようとした.本年度は,0日齢,5日齢,84日齢各1頭のホルマリン固定・同液中保存標本より採取した上腕二頭筋,上腕三頭筋内側頭,外側頭,内側広筋,外側広筋,中間広筋,腓腹筋内側頭,外側頭,ヒラメ筋,前脛骨筋の10筋を用いて免疫組織化学的手法により筋線維タイプの分別が可能であるかを試験的に検討した.一次抗体として抗fast-myosin抗体(MY-32)を用いた.どの標本から採取された筋試料においても明瞭な陽性反応を示す筋線維像が観察された.84日齢の標本において腓腹筋外側頭とヒラメ筋とで抗fast-myosin抗体陽性の筋線維の割合を比べると成獣での報告と同様に腓腹筋外側頭の方が割合が高かった.今後,さらに被験筋を増やし定量的な解析を行う予定である.

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20 ニホンザルの食物パッチ立ち去りの要因に関する研究

風張喜子(北海道大・農)

動物の食物パッチ利用は,採食効率の最適化という観点から理解が試みられてきた.しかし,群れを形成する霊長類においては,群れ内の他個体の存在も影響していることが指摘されている.そこで本研究では,ニホンザルの食物パッチへの滞在時間と,採食速度・食物分布・パッチサイズ・個体の順位や近接個体数などの関係を調べることで,食物パッチ利用の社会的要因を把握することとした.

調査は宮城県金華山島において,B1群を対象に2003年の春と秋に行った.対象群のオトナメス6頭に対し,終日個体追跡を行い,彼らの採食活動を観察した.また,2004年3月にはB1群の遊動域内で,彼らが利用した食物樹種の毎木調査を行った.

2003年秋の主要な食物パッチであるブナ種子パッチとケヤキ種子パッチについては,パッチ滞在時間はパッチ内の個体密度が高いほど長くなる傾向が見られた.この傾向はパッチ内の種子量を考慮しても変わらなかった.今後,詳しい分析を行う必要があるが,食物パッチ利用には社会的な影響が関与していることが示唆された.

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会