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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2003年度 > X 共同利用研究 2. 研究成果−自由研究21-30

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.34 2003年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 自由研究21-30

21 チンパンジーとヒトにおける絵画的奥行知覚

伊村知子(関西学院大・院・文)

チンパンジーとヒトを対象に,絵画的奥行手がかりの1つである陰影による形状の知覚について検討した.ヒトでは,陰影から形状を知覚する際,「単光源」,「上方からの照明」という2つの制約を用いる.この制約がチンパンジーにも当てはまるかを検討するために,陰影図形を用いた形態弁別課題における陰影方向の効果を調べた.課題は,陰影を持つ多数の円が含まれた背景の中から,陰影方向を反転させた12個の円により構成された図を分離し,その形態が「完全な円(O)」であるか「一部が欠けた円(C)」であるかを弁別するものである.コンピュータ画面上に呈示された2つの刺激のうち,「C」を含む刺激を選択すれば正解となる.図となる円に付加された陰影の方向により,垂直方向の陰影については,上が明るく下が暗い円(凸),下が明るく上が暗い円(凹)の2種類,水平方向の陰影については,左が明るく右が暗い円と右が明るく左が暗い円の2種類の計4条件を設けた.その結果,ヒトでは,垂直方向の陰影を持つ2条件の方が,水平方向の陰影を持つ2条件に比べ,形態弁別に要する反応時間が速かった.一方,チンパンジーでもヒトと同様,垂直方向の陰影を持つ2条件の方が,水平方向の陰影を持つ2条件に比べ,形態弁別に要する反応時間が速く,正答率も高かった.したがって,チンパンジーも,ヒトと同様の制約を用いて陰影による形態弁別をおこなっている可能性が示唆された.

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23 霊長類中枢神経系におけるタキキニン神経系の分布

小西史朗(三菱化学生命科学研究所),鈴木秀典(日本医科大・薬理)

タキキニン作動性神経系は両生類から霊長類まで種を超えて広く存在し,情動,記憶,痛覚伝達など多様な中枢神経機能を修飾すると考えられている.近年ではタキキニン受容体拮抗薬がヒトにおいて新しい抗うつ薬として,その効果が期待されているが,霊長類における本神経系については,脳内分布をはじめとして十分に検討がなされていない.そこで本研究では,霊長類におけるタキキニン神経系の生理的役割を知るための第1段階として,サルにおけるタキキニン受容体をクローニングし,その脳内分布を定量的に検討することを目的とした.昨年度に引き続き研究を進め,アカゲザルのタキキニン受容体NK-1およびNK-3 cDNAの全長をクローニングした.アミノ酸配列からヒト型NK-1受容体の薬理学的性質を持つことが推測された.引き続きアカゲサル3頭の脳から,大脳皮質の各部位,扁桃体,海馬,等の各組織を分割摘出し,受容体mRNAの定量をPCR法を用いて行った.その結果,脳部位間における両受容体発現の違いが明らかになった.特に扁桃体あるいは海馬などの情動記憶に深く関る部位においては,げっ歯類との種差も観察された.これらの結果は,霊長類の高次機能におけるタキキニン作動性神経系の役割の重要性を反映していると考えられる.

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24 大脳皮質抑制性介在ニューロンの役割の研究

片井聡(信州大・医)

大脳皮質にはさまざまな種類の神経細胞が存在する.この中で抑制性介在ニューロンは,大脳皮質がその機能を実現するうえで重要な役割を果たしていることが,1次感覚野などで明らかになっている.しかし,連合野ではほとんどデータがない.これは,無麻酔で行動する動物で細胞タイプの同定が難しかったためである.一方,最近になって,バースト発火(高頻度発火)のパターンを手がかりにすることにより抑制性介在ニューロンの同定が可能になってきた.そこで,この方法を用いて連合野における抑制性介在ニューロンの役割の検討を試みた.

サルにサッカード(急速眼球運動)課題を学習させ,前頭眼野から神経活動を記録した.神経細胞をバースト発火の有無から2群に分けた.バースト有り群については,スパイク間隔とバースト内スパイク数によるクラスター分析を行った.その結果,バースト有り群はさらに3つの群に分類できることが判明した.先行研究との比較から,バースト無し群はRS(regular spiking)細胞に,バースト有りの3群はそれぞれFS(fast spiking),FRB(fast rhythmic bursting),IB(intrinsic bursting) 細胞に相当すると考えられた.この内,FS細胞は抑制性介在ニューロンと推定される.今後,各神経細胞群のサッカード課題に対する役割を検討する予定である.

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26 非ヒト霊長類における肝炎ウイルス(特にE型肝炎ウイルス)の分子疫学的研究

平野真,丁欣,阿部賢治(国立感染症研究所・病理)

我々は,日本国内の各種霊長類における抗E型肝炎ウイルス (HEV) 抗体の保有率を調べた結果,4種のマカク,すなわちニホンザル,カニクイザル,アカゲザル,タイワンザルに抗 HEV IgG 陽性の個体を見いだした.抗 HEV IgG 陽性率は加齢と共に上昇する傾向を示し,またニホンザルに関しては,高い陽性率を示す群があった.ウイルス感染初期に高値を示す IgM が陽性の個体は見られなかったけれども,我々は,ニホンザルが HEV の宿主となっている可能性を想定し,検出感度の高い逆転写・入れ子式ポリメラーゼ連鎖反応 (RT-nested PCR) 法でニホンザル検体から HEV ゲノム RNA を検出できるか否か試みた.本共同利用研究することで,6個体と少数ながら HEVの増殖する肝臓のサンプルの提供を受け,HEV ゲノムの2ヶ所の領域 (ORF3 および ORF2) に RT-nested PCR 法を適用したが,いずれも陰性だった.次いで,抗 HEV IgG が陽転していない若年個体の血清サンプルを新たに入手することができたので,これら血清についても同様に検出を試みたものの,すべて陰性だった.

以上の結果から,日本国内のマカクに HEVが感染している可能性を完全に否定することはできない.しかし,日本国内の非ヒト霊長類に HEV と交差反応性を示す類似のウイルスが感染している可能性をより重視すべきであろう.

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27 霊長類を対象とした動物福祉のための飼育環境評価法の開発

森村成樹(林原生物化学研究所・類人猿研究センター)

飼育下の霊長類の行動は,性や年齢などの個体特性,集団構成,物理的環境特性によって異なる.本研究では,動物福祉の観点から飼育環境の評価法開発を目的とし,異なる飼育環境のチンパンジー2集団(わんぱーくこうちアニマルランドと林原類人猿研究センター)の行動を比較した.また,ニホンザル1集団(霊長類研究所)について,放飼場の移動にともない物理的環境の変化が行動に与える影響を検討した.一方,動物福祉に配慮した飼育には,日常の行動を記録したり,環境エンリッチメントの効果を評価し,飼育管理へ反映させる必要がある.行動データは記録・分析に多くの時間と手間を要するため,飼育に生かすことが難しい.そこで,観察でPDA(SONY PEG-NX70V)1台を利用し,簡便な記録・分析方法も検討した.行動記録用プログラムはNS Basic/Palm 3(NS Basic社製)を用いた.観察は,個体追跡法(1セッション60分)とした.その結果,2ヶ所のチンパンジーの行動比較では,採食や移動など飼育環境によると考えられる行動の差異が検出された.ニホンザルでは,飼育環境が変化した前後で個体間距離といった空間利用に差異が見られた.さらに,PDAを利用することで訓練せずに平均11.4秒で個体名,行動,位置を記録できた.本年でPDAによる記録法はほぼ完成した.今後は,さらに観察例を増やし,飼育環境の評価法の開発を進める.

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28 霊長類大脳皮質内の抑制細胞と領野間結合

山下晶子(日本大・院・医・応用システム神経科学)

大脳皮質は生理学的/解剖学的に異なる特徴を持つ多数の皮質領野からなっている.また,皮質領野間の相互関係には階層性があることが知られていて,例えば,第一次視覚野から第2時視覚野への投射はfeed forward(FW)と呼び,逆をfeedback(FB)と言う.視覚系ではFW投射は視覚情報を伝え,FBは注意など視覚認知を制御する情報を伝えるなど生理的機能が異なっている.解剖学的にもFWとFB結合では起始細胞や軸索終末が分布する層にそれぞれ特徴があり,げっ歯類視覚野ではFWはGABA細胞の細胞体付近に,FBは樹上突起遠位部に終末を持つという違いも報告されている.サル大脳皮質の運動関連領野と視覚関連領野にトレーサーを注入し,出力運動系でも入力感覚系と同じような階層構造や線維連絡が見られるのか,GABA細胞と投射の関係は霊長類でもみられるのかを調べた.視覚系ではFWとFB結合がGABA細胞のそれぞれ,近位部,遠位部へ入力するパターンが観察されたが,運動野ではFWとFB投射の終末の分布に関する顕著な違いは見られなかった.霊長類出力システム内の運動野や運動前野では,錐体細胞の樹状突起初節にGABA終末が集まる像や錐体細胞の細胞体を取り囲むGABA終末像が多く観察される.前頭前野では錐体細胞の軸索初節や細胞体にはGABA終末は散在して存在し,運動野のような終末の集積は観察されない.

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29 マカクザル類Y染色体マーカーの開発

田口尚弘(高知大・黒潮圏海洋科学・海洋健康医科学)

従来解析が遅れている旧世界ザルのY染色体進化の研究に利用できるマーカーを得るため,我々が技術確立してきた染色体顕微切断・PCR・FISH・クローニング法を用いて,旧世界ザル類のY染色体マーカーを単離することを目指した.染色体顕微切断法により,アカゲザルのY染色体を10本採取し,PCR で増幅後,FISH法でY染色体特異的プローブであることを確認した.このプローブはアカゲザルY染色体のヘテロクロマチン領域に特異的に結合し,中間期核においてもその存在が判別できた.さらに,このPCR 産物をクローンニングし,18個のクローンを得た.FISHで確認したところ,18個中2個のクローンがアカゲザルY染色体の短腕に存在するヘテロクロマチン領域に特異的であった.これら2個のクローンの塩基配列を決定し,遺伝子バンクに登録した.このアカゲザルY染色体に特異的なプローブを使って,ニホンザル,アヌビスヒヒ,シロエリマンガベイ,ホオジロマンガベイ,サバンナモンキーのY染色体を比較解析したところ,局在部位が種間で異なることが確認された.このことから,このクローンが,今まで解析手段のなかった旧世界ザルのY染色体進化の研究に,有効なマーカーであることも明らかとなった.本研究の成果はChromosome Research 11: 147-152,2003 に発表した.

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30 遺伝子マーカーを用いたマントヒヒの種分化仮説の検証

山根明弘(北九州市立自然史・歴史博物館),庄武孝義(京都大・霊長研)

アラビア半島に生息するマントヒヒの由来,およびその種分化のメカニズムを探るべく,サウジアラビア王国の各地から採集したマントヒヒの血液,およびその周辺のアフリカ産のマントヒヒ,アヌビスヒヒの血液からDNAを抽出し,ミトコンドリア遺伝子の多型領域の塩基配列をそれぞれ解析し,系統的比較を行った.

血液サンプルは1997年以降,庄武孝義教授が中心に現地で採集したものであり,サウジアラビアでは紅海沿いに,北はメジナから南はナジランまでの約1000kmの間の9群(メジナ,タイフ近郊4群,アルバッファ,アブハ,ワジダバン,ナジラン)から160頭の採血を行い,ソマリア国境沿いのエチオピアでは1群から40頭の採血を行い,合計200頭のミトコンドリア遺伝子のD-loop領域,340bpの塩基配列の解析を行った.

その結果,サウジアラビア産のものからは19のハプロタイプ,エチオピア産のものからは6つのハプロタイプが認識され,これらをNJ法でクラスタリングしてみたが,明確にサウジアラビアタイプのものと,エチオピアタイプのものを区別することはできなかった.さらに,アヌビスヒヒのタイプのものがサウジアラビアのクレードにも見られるなど,非常に複雑な様相を示した.これらのことから,アラビア半島のマントヒヒとアフリカのマントヒヒの間に,過去に何度も遺伝的な交流があり,アフリカでは種間の交雑をも含めた交流があったことを示唆するものである.

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会