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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2003年度 > X 共同利用研究 2. 研究成果−施設利用1-10

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.34 2003年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 施設利用1-10

1 白神山地の猿害と農地放棄

和田一雄

2003年2月下旬に鷹巣群メス成獣1頭を捕獲して発信器を装着した.しかし5月下旬になって,隣接した東目屋村のサル駆除の際に射殺され,当該個体の追跡が困難になった.そのため,発信器装着による追跡は従来行ってきた藤川群1群のみであった.

電柵未設置農家が電柵を設置しない理由の大部分は耕作者の高齢化のためであり,いつ耕作を放棄するか分からない事であった.後継者がいればこのようなことは起こらないはずだが,平均耕作面積が0.6haと著しく小規模であり,かつリンゴ価格が低迷していては,若者は都市部に流出せざるを得ない.耕作放棄はこの調査を行っている2〜3年の間も続いており,20ヶ所を超えることが確認された.

白神山地周辺7町村の猿害に関する聞き込みでは,西目屋村のリンゴのような換金作物を有する所はなく,大部分が自家用野菜の被害であった.従ってほとんどの自治体が対策としてはサル駆除のみであったが,八森町だけが全国からボランティアを募集して,サルの追い上げを行っていたことが注目された.

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2 サル肝ミクロソームのNADH依存的アルコール酸化酵素の機能解析

渡辺和人・舟橋達也・山折大(北陸大・薬・衛生化学)

我々は大麻成分Δ8-tatrahydrocannabinol(Δ8-THC)の主代謝物の1つである7-hydroxy-Δ8-THCから活性代謝物である7-oxo-Δ8-THCへの酸化を触媒するサル肝ミクロソーム酵素(Microsomal Alcohol Oxygenase, MALCO)を同定し,そのMALCO活性は他の動物種と異なり,高いNADH要求性を示す特徴を有することを明らかにしてきた.本年度の研究は,THCと内因性ステロイドホルモンとの間に代謝的相互作用について,ステロイド類によるNADH依存的なMALCO活性化機構について検討した.NADH依存的なMALCO活性はコルチゾン,エストロンによって活性化を受けなかったが,テストステロン及びプロゲステロンによって強く活性化された.MALCOの顕著な活性化を示したテストステロン及びプロゲステロンについて,活性化の濃度依存性10-500μMを検討した結果,エフェクター濃度に依存してNADH依存的反応では共に最大約2.8倍まで活性化された.そこで,MALCOの活性化機構を解明するために速度論的解析を行ったところ,テストステロン,プロゲステロンいずれの添加においてもS50の低下及びVmaxの上昇を示した.現在,テストステロン6β水酸化反応に対する7β-hydroxy-Δ8-THC添加の影響について検討している.

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3 霊長目における尿酸トランスポーターURAT1ホモログのcDNAクローニング

細山田真(杏林大・医・薬理)

尿酸代謝酵素uricaseは高等霊長類において遺伝子変異により機能が欠損し,尿酸代謝は大きく変化する.また,腎臓における尿酸動態も旧世界ザルでは分泌型を示すのに対し,ヒトを含む類人猿では再吸収型を示す.ヒトにおいて尿酸再吸収の約3分の2を担うと考えられている尿酸トランスポーターURAT1が,遺伝学的には最も近い尿酸分泌動物である旧世界ザルにおいてどのような一次構造かを検討することが本研究の目的である.ヒトURAT1およびマウスURAT1で保存されているcDNA配列の部分をプライマーとして,カニクイザル腎臓からRT-PCR,3'-RACE,5'-RACEを行ってカニクイザルURAT1 cDNAをクローニングし,direct sequencingによりDNA配列を決定した.その結果exon 1からexon 9に相当するcDNA配列は95.1%保存されていたが,exon 10に相当する3' 末の配列がヒトURAT1と異なり,ヒトのexon 10のさらに下流のゲノム配列とほぼ一致するため,カニクイザルURAT1 はalternative splicingによってC末の構造が変化していることを明らかした.今後の検討課題としてカニクイザル腎でのURAT1分子の局在を検討し,C末構造変化に伴うURAT1の局在変化が,カニクイザル腎で尿酸を再吸収ではなく分泌している可能性について明らかにしたい.

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4 サル赤血球から炭酸脱水酵素アイソザイムの精製

西田利穂(麻布大・獣医),後藤俊二(京都大・霊長研)

アカゲサルの赤血球から各種液体クロマトグラフィーを組み合わせて,炭酸脱水酵素アイソザイムのCA-Iを精製した.CA-Iの分子量は29000で,等電点は7.0であった.今後はCA-IIの精製と大量に精製し,特異抗体の作製に着手する予定である.

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5 チンパンジーの繁殖特性に地域個体群変異をもたらす要因の検討

藤田志歩(日本学術振興会特別研究員),坪田敏男(岐阜大・農)

野生チンパンジーでは,性成熟年齢や出産間隔などの繁殖パラメータにおける地域個体群変異が知られている.生息地の環境要因は,チンパンジーの活動パターンに影響をおよぼし,栄養状態を介して生殖能力に差をもたらすと予想されることから,本研究では,マハレ(タンザニア)とボッソウ(ギニア)のチンパンジーメスにおける活動時間配分,食物構成,糞中生殖関連ホルモン濃度を比較することによって,チンパンジーの生殖能力と生息地の環境要因との関係について調べた.本年度は,これまでに採集した糞サンプルからホルモン濃度を測定し,行動データから活動時間配分と食物構成についての分析をおこなった.その結果,マハレのメスはボッソウのメスより,卵巣機能の指標となる卵胞期エストロゲン濃度および黄体期プロゲステロン濃度の低いことが明らかとなった.活動時間配分の比較では,マハレのメスはより休息時間を減らし,採食時間を延長していたことから,マハレではチンパンジーの採食効率は低いことが示唆された.これらのことから,2地域の採食条件の違いが栄養状態を介してメスの卵巣機能に影響をおよぼしていること,そのためにメスの生殖能力の地域差が生じていることが明らかとなった.

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6 チンパンジーによる房付き掘り棒の製作と使用

竹元博幸(京都大・霊長研・人類進化モデル研究センター)

中央アフリカ地域のチンパンジーは掘り棒を用いてシロアリを採食することが知られている.しかし直接観察が難しいため,掘り棒の形状の変異やその製作方法,使用方法,道具としての分類がいまだはっきりしていない.2000年2月-3月に赤道ギニア,2003年2月-3月にカメルーンで,野生チンパンジーの房付き掘り棒の製作と使用方法についての調査を行った.また,実際に樹木を折り取る実験も行った.これらの結果と霊長類研究所の野外施設,展示資料室に保管されている房付き掘り棒(カメルーン産,杉山幸丸氏収集)を比較し,道具使用と生息環境との関係について考察した.

今回,赤道ギニアとカメルーンで採取された房付き掘り棒は,過去に報告されたものとほぼ同じ形状であった.実験によると,樹種によって幹を折りとった時に自然に房ができる物とできないものがある程度決まっていた.また,自然に房ができない樹種は石でたたいたり,歯で噛んだりしても房を形成させることは難しかった.したがって,多くの場合,掘り棒の房はチンパンジーが棒を折り取る時に自然にできたものが多いと考えられる.各調査地で掘り棒に房がついている割合が異なるのは,チンパンジーの道具製作技術の地域差ではなく,房ができやすい,あるいはできにくい樹の環境中の割合,つまり植生の差異による可能性もある

なお,調査結果の一部は既に学術雑誌に投稿中である.

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7 霊長類乳児における顔認識

桑畑裕子(京都大・院・文)

本年度は,前年度までに引き続き,マカクザル乳児における顔認識を調べる研究をおこなった.

顔刺激に含まれる全体的,あるいは部分的特徴が,被験体の偏好追視反応に与える影響と,その発達的変化を明らかにすることを目的とした.生後0〜2ヶ月齢のマカクザル乳児が実験に参加した.刺激として,以下の4種類の図形を用いた:ヾ蘓涎繊奮胴柔部品の形状と全体的配置が顔様),部品顔図形(構成部品のみが顔様),4蘿枌嵜涎繊柄澗療配置のみが顔様),そ椎枌嵜涎繊壁品も配置も顔様でない).これらのうち, 櫚◆き−い鯀箸濆腓錣察ぢ个砲靴独鏝蛎里膨莠┐掘こ道彪磴紡个垢訥瓢詒娠を測定した.

その結果,マカクザル乳児は,特定の刺激に対して偏好を示し,またそうした反応は発達に伴って質的に変化することが明らかとなった.生後0ヶ月齢の乳児は,全体として顔配置をもつ刺激に対してのみ偏好を示した(ヾ蘂皚部品顔,4蘿枌屐筬そ椎枌屐法ダ幻1ヶ月齢になると,全体と部分のいずれもが顔様である刺激に対してのみ,偏好反応が示された(ヾ蕁筬配置顔,4蘿枌屏皚そ椎枌屐法イ靴し,生後2ヶ月齢を過ぎると,どの刺激ペアに対しても偏好反応が見られなかった.本実験で示されたマカクザルの結果は,ヒト乳児における顔図形偏好とその発達的変化に極めて類似しており,発達初期の顔認識において,広範な霊長類が共通の基盤を有していることを示唆しているだろう.

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8 霊長類の歯冠形態(切歯・犬歯の外形及び歯面形状)に関する研究

和田良光(京都歯科補綴研究所)

マーモセット科永久切歯と犬歯の歯冠形態調査の一環として,マーモセット属とタマリン属の7種について,style,Stylid,cingula,cingulid,隆線,溝などの調査を行った.

Style,stylidの出現頻度については上・下顎歯ともに2属間ではよく似ていた.

上顎歯第1切歯ではdistostyleの出現,欠如例がほぼ同数で,上顎第2切歯と犬歯ではmesiostyleとdistostyleの出現例が多かった.

下顎第1切歯ではdistostylidの出現率は40%に満たず,第2切歯と犬歯の約70%にmesiostylidとdistostylidが存在していた.

Callithrix jacchusとSaguinus oedipusのstyleとstylidの出現率はHershkovitz(1977)のそれとほぼ同程度であった.

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9 サルの臓器間の炭素・窒素同位対比の変動

和田英太郎(総合地球環境学研究所),田中洋之(京都大・霊長研),兵藤不二夫(総合地球環境学研究所)

動物の体の部位が示すδ15N−δ13Cマップ

1)ヒゲ・ヒトのひげのδ13C値も住んでいる食文化圏によって変わってくる.典型的な例が「牧草・小麦→ウシ→ヒト」のヨーロッパと,「トウモロコシ・小麦→ウシ→ヒト」の南北アメリカである.ミュンヘンに滞在する二人が,それぞれ日本と米国を旅行した.このときヒゲのサンプルを採取したところ,約2週間の旅行であったが帰国後のヒゲのδ13C値は,−19.5‰から−17‰あるいは−20.5‰から−19‰と高くなった.このようなことは,私たちの気がつかないうちに日常的に起こっていることになる.(K. Nakamuraほか,Biomed. Mass Spectom., 9. 390 (1982)).

2)臓器・動物の臓器もアミノ酸組成の違いや生理機能の違いを反映して,異なる同位体比を示す.これまでのデータベースは決して十分ではないが,以下のような傾向が見られている.

ラット,サケ,ヘビ,ミツバチなどは脳や心臓のδ15Nが相対的に高くなっている.これに対して鳥の脳はぞ言う気の中で最も低い値を示す(和田ら未発表のデータ).

3)脳・ラットの脳のδ15N値は成熟期に高くなる.また,その値はほかの臓器に比べて個体間のゆらぎが若干大きくなることが見いだされた(和田,工藤らの未発表データ).

4)骨・骨はリン酸カルシウムを主成分としており,リン酸PO4のδ18Oはヒトや動物が飲んでいる水のδ18Oを反映することが知られている.

これらの知見にサルの臓器データを加えたい.採取した試料は乾燥中であり,24ヶ月以内にδ15N,δ13Cを測定する予定となっている.

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10 マハレ山塊のチンパンジーの音声行動に関する映像音声資料の分析

保坂和彦(鎌倉女子大・児童)

昨年度に引き続き,マハレ山塊国立公園のチンパンジーの音声行動を収録した映像音声資料の整理・分析を行った.1991〜1994年及び2000〜2001年の調査において,アナログ機器で収集した映像・音声資料のデジタル化作業については,ほぼ完了した.その資料を分析のために利用しやすくするためにデータベース化する作業を継続している.本研究の主たる目的である「マハレのチンパンジーの音声エソグラムの作成」は,この作業と平行して進めていく予定である.また,大人雄を含む個体間相互作用,あるいはヒョウや死体との遭遇において音声行動が果たす役割についても,分析を進めている.近年,マルチメディア機能の充実したパーソナルコンピューターやDVDレコーダーが普及したことが影響し,チンパンジーの映像エソグラムや音声行動に関する研究は増加の一途をたどっている.次年度以降も,霊長類研究所の文献資料を利用して最新の成果や話題を追跡しつつ,本研究の成果をまとめあげ発信していきたい.

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会