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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2004年度 > X 共同利用研究・研究成果−計画研究2「野生霊長類の保全生物学」

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.35 2004年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 計画研究2「野生霊長類の保全生物学」

2-1 ウマヤザル信仰に伴う頭蓋骨の調査による口承と生息分布域の相関関係

中村民彦

ウマヤザル信仰とは厩に猿の頭蓋骨や手を祀り牛馬の健康や安産などを祈願したものである.当信仰は東北全域に流布していたが,近代から現代における残留形態や口承の全容は充分に解明されていない.更に,これに関係するニホンザルの捕獲や捕殺の方法も不明である.今年度も当風習を知る古老からの口承を求め,聞き取りにより記録し,ニホンザルの生息分布との関係を明らかにしようと岩手県を中心に調査を行った.調査の結果,従来発見されている事例も加えると軽米町1,山形村6,久慈市1,野田村1,玉山村1,雫石町2,新里村2,沢内村1,東和町1,北上市2,江刺市1,胆沢町1,大東町1,前沢町2,藤沢町2,平泉町1の計26の事例を記録する事ができた.保存形態の内訳は頭蓋骨22,手4である.頭蓋骨では牛馬の守護神,薬用,安産,火災防止などの口承事例を得た.手については種蒔き時に使用すると豊作との口承事例を得た.頭蓋骨には無病息災や家内安全を,手には五穀豊穣をと,祈願の内容に使い分けが認められる.一方,捕獲や捕殺の方法を詳細に知るインフォーマントは発見できなかった.当信仰が広く分布し,こうしたサルの需要にサルマタギのような供給者が関与していたなら県下のサル生息地の消失を招いた狩猟圧の原因になった可能性も考えられる.ウマヤザルの風習とニホンザルの分布空白域との関係については,次年度以降の調査で更に検討を重ねていきたい.

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2-2 GISを用いたニホンザルの行動圏利用に関わる要因の評価

辻大和(東京大・院・農学生命科学)

本研究ではニホンザルの行動圏利用に関わる諸要因を定量化し,各要因がニホンザルの生息地利用に与える影響の相対的な重要性を把握することを目的とする.本年度は,泊まり場の選択と温度環境の関連性を示すことに重点を置いた.宮城県金華山島北西部の様々な地形6タイプ10箇所(尾根×3,沢×3,海岸,シバ群落,シキミ群落,スギ群落)に温度データロガーを設置し,2004年6月15日から2005年3月19日にかけて気温を記録した.記録期間中,調査対象群は沢を泊まり場とすることが多く(48 / 84日),また夏(6 - 8月)(11 / 22日22: 50%),秋(9 - 11月)(26 / 45日: 58%),冬(12 - 2月)(11 / 17日: 65%)と,季節が進むにつれて沢を多く泊まり場とした.ロガーのデータと風速のデータからサルの体感温度を計算した結果,沢ではそれ以外の群落(一度も使わなかったスギ群落を除く)と比較していずれの季節も体感温度が高かった.したがって,観察されたサルの泊まり場選択は,沢を積極的に利用することで夜間の体温維持コストを防ぐためと考えられた.

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2-3 加害群の分裂とその後の農地利用パターンに関する研究

鈴木克哉(北海道大・院・文・地域システム)

青森県下北郡佐井村にて,この地域の主な被害時期にあたる7〜8月に調査を行った.特に2004年8月1日〜15日の15日間は6:00〜20:00の間,2時間毎に両群れの位置を測定した.今回の分析ではこの15日間の追跡データをもとに,GISソフトArcViewにより土地地用分析を行った.農地からの距離により4段階のバッファ(50m未満,50-100m,100-200m,200m以上)を設けて測位点を集積し,各環境に対する群れの利用割合を算出した.またイブレフの係数を用いて環境選好性を表した.

それぞれの群れは約20頭(Y1群)と約50頭(Y2群)の頭数をなし,行動圏はほぼ重複しているが,遊動は別々に行われていた.各群れの農地利用割合には差があり,例えば農地から100m以内の環境利用割合は,Y2群が全体の約45%であるのに対し,Y1群では約31%であった.2003年の調査結果(7〜9月:70日間,1日2ポイント)と比較すると,Y2群の農地利用割合や農地周辺に対する選好性は両年ともに高く,ほとんど変化はみられなかったが,Y1群の農地利用割合は増加していた(17%;2003年).また,Y1群は2003年には各環境に対する顕著な選好性がなかったのに対して,2004年には農地周辺(100m以内)の環境に対して正の選考性が高かった.2003年にみられた分裂後の群れ間の農地依存度の差は,2004年には小さくなっていたということが言える.

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2-4 中産間地域におけるニホンザルにとっての景観構造

辻涼子(北海道大・院・農),揚妻直樹(北海道大・FSC)

本研究の調査地である秋田県の白神山地周辺では,1990年頃からニホンザル(Macaca fuscata)による農作物被害が発生している.そこで,この地域の景観構造を把握した上で生息地管理を検討するため,まず(1)景観構成要素である各植生タイプをサルにとっての食物量という視点から評価した.次に(2)植生タイプ,地形(標高・傾斜),農耕地,林縁長といった景観構造の特徴を明らかにした.さらにその景観構造とサルの利用状況の関係から被害を与えているサルが定着している条件を抽出した.

結果,農耕地への依存度によってサルの群れが利用する環境条件が異なっていた.里の群れは低標高の農耕地周辺環境を幅広く利用していた.一方,山の群れは山から里への定着過程の群れと考えられ,推定生息地は里の群れの背後に定着していた.サルにとっての食物生産性は農耕地周辺が高く,その背後のスギ人工林で低かった.以上のことからサルは里にひきよせられやすい景観構造に生息していると考えられた.農作物被害を軽減するためにはこのような景観構造を管理する必要性が示唆された.

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2-5 保護管理にむけた中部山岳地域のニホンザルの遺伝的多様性解析

森光由樹(野生動物保護管理事務所)

昨年度までの研究では,核DNA変異からニホンザル地域個体群の遺伝的特性を分析するために必要な試料の調製法,実験条件について実施した.長野県地獄谷A群のサンプルと大分県高崎山で採取されたサンプルを用いた.地獄谷A群16頭,高崎山A群67頭,B群14頭,C群66頭の血液試料を用いた.地獄谷はマイクロサテライトDNA (D20S484,D10S611,D5S1470,D19S582,D1S533,D1S548)高崎山は(D19S582,D6S493,D3S1768)について解析を行った.定法に従って血液からDNAを抽出しPCRにてそれぞれの遺伝子座をタッチダウン法で増幅した.PCR増幅産物はABI PRISM 3100 Genetic Analyzerを用いて分離・検出した.ヘテロ接合度は地獄谷では,D20S484,0.74,D10S611,0.68,D5S1470,0.66,D19S582,0.77,D1S533,0.71,D1S548,0.76であった.高崎山のヘテロ接合度はD19S582,0.81,D6S493,0.76,D3S1768,0.62であった.今後はさらにサンプル数を増やして情報収集し将来的には野生群の分析を目指したい.

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2-6 ニホンザルの食物パッチ利用に対する生態的・社会的要因

風張喜子(北海道大・院・農)

これまで多くのパッチモデルが提出されてきたが,それらは霊長類の食物パッチ利用を説明しきれていない.その理由は,対象となった種は群れを形成し,他個体の存在がパッチ利用に対して重要な影響を及ぼしているためと考察されている.そこで,本研究では宮城県・金華山島のニホンザルにおいてパッチの質(パッチサイズ・食物密度・周辺パッチの数)と社会的要因(パッチ内の個体数・順位)がパッチ利用の局面(滞在時間・食物の取り込み速度・パッチ内の探索時間・採食効率)に及ぼす影響を定量化した.2004年の春にB1群を対象として調査を行い,主要食物となった3品目ごとに分析した.

滞在時間は樹冠の小さな品目でパッチ内の個体数が多いほど短く,樹冠の大きな品目でパッチ内の個体数が多いほど長くなる傾向があった.取り込み速度,採食効率は3品目でパッチ内の個体数が多いほど向上する傾向が示された.また,パッチ内の個体密度・個体間の干渉頻度は低くかった.パッチ滞在中に採食効率の低下が起こらなかった.これらのことから調査時期において消費型・干渉型競争が弱かったと言える.このような食物環境下では他個体の存在が採食効率を向上させ得ることが示唆された.

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2-7 管理を目的とした三重県下のニホンザル遺伝子モニタリング

赤地重宏(三重県中央家畜保健衛生所)

三重県下において,ニホンザルの被害防除を目的とし,電波発信機を用いてサルの動向を把握し,対策を実行する試みがなされている.発信機装着のためのサル捕獲の際,採血を実施することで血液材料を多数採集することができた(約400検体).今年度も昨年度に引き続き,抽出したDNAを用い,霊長類研究所のキャピラリーシーケンサーを利用して遺伝子の解析を実施している.現在のところ捕獲時の位置情報が特定できているサルのうち,メスを中心に83検体の解析を実施した.結果の検討等については現在進行中である.今後,これらデータを用い,位置情報と遺伝子情報を合わせて検討することで地域個体群の遺伝的構造を明確にしたいと考えている.

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2-9 オスの行動が,群れによる農作物の加害に与える影響について

清野紘典(宮城教育大・院)

2004年度までのニホンザル野生群による農作物への加害及び出没状況調査において,オトナまたはワカモノオスがメスやコドモよりも積極的で,かつ無警戒に農耕地に出現することが示唆され,群れによる農作物の被害レベルや農地への慣れに,特定のオスが何らかの影響を与えていることが推測された.そこで,どのようなオス個体が影響を及ぼしているのか明らかにするために,群れオスを個体識別することで順位や齢構成の相違による農耕地での行動差異を調査することを計画した.

しかし,識別の指標として電波発信機の装着を試みたが,捕獲檻に対する対象群のオスの警戒心は強く,捕獲努力に対し目標捕獲数(群れのオトナオス7頭のうち4頭)に達しず調査進行が困難な状況であった.一方で,対象群のホームレンジ内で捕獲したオトナのオス個体2頭の連続追跡から短期的ながらもソリタリーの行動圏と隣接群との関係についての資料を得た.

今後は,群れオスの個体識別を継続するとともに,人為的環境に依存したソリタリーの動向と近接群への影響についても明らかにしたい.

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2-10 富山県のニホンザル地域個体群の分布特性と遺伝子変異

赤座久明(富山県立雄峰高等学校)

富山県に生息するニホンザルの群れの由来や隣接する群れの類縁関係を探るため,mt-DNAのDループ領域で塩基配列を比較した.14,15年度の共同利用研究から,県内で7タイプ(A,B,C,D,E,F,G)のmt-DNAが検出され,このうちA,B,C,Dは群れ所属のメスから検出され,県内の群れはこの4タイプの集団から構成されることが明らかになった.Dタイプは県の東部に偏って分布し,分布域の先端は黒部川上流域の黒四ダムに至っている.16年度はこのDタイプに注目し,この集団が北アルプス後立山連峰を越えて,長野県側にまで分布拡大しているか,また,日本海に沿って北上し新潟県に至っているかどうかを確認するため,DNA試料の採集と分析をおこなった.60個の糞とオス1個体の血液を分析した結果,長野県扇沢の群れからはG,新潟県糸魚川の群れからはDを検出した.これにより,Dの集団は北アルプスを越えて長野県側へは至っていないが,日本海に沿って新潟県糸魚川市までは北上していることが明らかになった.また,夏に後立山の稜線を利用するGの群れからBとDを1例ずつ,黒四ダムの群れからGを2例検出した.北アルプスを越えて,オスが両地域を移動していることが考えられる.

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2-11 房総半島におけるニホンザルとアカゲザルの交雑に関する研究

萩原光(房総のサル管理調査会),相澤敬吾(館山高等学校),川本芳(京都大・霊長研)

形態観察を行った結果,尾の形にさまざまなバリエーションを観察.尾の長いアカゲザルと尾の短いニホンザルの交雑によりバリエーションが生まれている可能性もあり,交雑の進行が懸念された.しかし,尾の長さなどの形態観察で群の現在の交雑状況を把握することはできていない.現在の交雑状況をより的確に把握するため遺伝子分析調査を行った.本年度4月,アカゲザル及び交雑個体群行動域の館山市神余地区北東側で糞サンプル28個を採集した.この採集地点はこれまでのアカゲザルを含む群観察記録の中で一番北にあたる.糞サンプルのミトコンドリアDNA等の遺伝子配列解析により分析を行った.結果,2頭の判定不明サンプルを除く26サンプル全てアカゲタイプと判定できた.またサンプルの雌雄比は♀18:♂8となった.この群には前回の共同利用研究によりニホンザルメスが群に加入していることが知られている.しかし今回,ニホンザルの遺伝子タイプは出現しなかった.また,今年度,同地域で捕獲された個体や房総丘陵側の捕獲した個体についても血液サンプルを採取しサンプルの蓄積を行った.

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2-12 屋久島ニホンザルの成立過程の解明とGISによる遺伝的変異の空間分布解析

早石周平(京都大・院・理)

2004年度には,鹿児島県屋久島に生息するニホンザルの遺伝的研究を進展するため,隣島の種子島にかつて生息したサルの情報収集を行った.種子島のサルはすでに絶滅しているため,標本の収集を目的に現地での聞き取り調査を7月に行った.一市二町で集落毎に昔を良く知る年配者を主に訪ね,合計39人の方々にサルについて聞き取り調査を行った.島の北部,南部ではサルに関する情報はなく,島の中央部でのみ,直接にサルを見たという情報が得られた.このことは1970年の東滋らの聞き取り調査と同じ結果であったが,東らが対象としなかった職種の方々からも同様の情報が得られたことが重要である.また,最後にサルが見られた時期が1950年代であったことを再確認した.今回の聞き取り調査では新しい標本は得られなかったが,70年前に肘から先の手のミイラを見たという情報を得た.このような標本は,種子島に生息したと思われるニホンザルの遺伝的プロファイルを明らかにし,屋久島と鹿児島本土に生息するニホンザルとの遺伝的関係を明らかにするための試料として重要である.また,標本はサルの左手首であるが,本土で知られる厩猿との関連を検討するためにも,さらに標本を収集する必要がある.今後も聞き取り範囲を広げて,情報と標本の収集に努めたい.

屋久島の地理情報のデジタル化と遺伝的変異の地理的分布の空間解析については,現在も作業進行中である.

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会