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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2004年度 > X 共同利用研究・研究成果−自由研究 1〜10

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.35 2004年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 自由研究 1〜10

1 小型霊長類の肘関節構造の比較:内部構造の観察と外部形態との関係

江木直子(京都大・理)

関節形態の種間比較を,霊長類の上腕骨猿位関節部を例にとり,内部構造に焦点をおいて行なった.骨構造の観察には,骨格標本(晒し骨)をpQCTで撮影した画像を使った.標本とpQCT機器は,京都大学霊長類研究所と大学院理学研究科自然人類学研究室所蔵のものを用いた.観察では,まず,約20種の霊長類について,上腕骨遠位関節の横断面影像を各数枚ずつCTで撮影した.ここから,関節内の緻密骨と海綿骨の相対的な量や骨梁数は体サイズによって大きく異なることが示唆された.次に,内部構造を外部形態やlocomotionの違いとに関連づけるために,体のサイズの似ている9種の霊長類を選び,比較を行なった.この比較では,capitulum・trochlear gutter・trochlea中央部の矢状方向断面影像を用い,ロリス類では相対的に緻密骨が厚く,逆にグエノンやキツネザルでは緻密骨が薄く,海綿骨の密度が高いという観察結果を得た.体サイズの似ている霊長類の中でも,緻密骨や海綿骨の骨量,海綿骨の密度に変異があり,locomotion或いは系統と関連がある可能性が示唆された.

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2 更新世松ヶ枝脊椎動物群の研究

荻野慎太郎(鹿児島大・理工)

明治から昭和初期にかけ,北九州市門司区の石灰採石場の洞窟堆積物中から産出が報告された,松ヶ枝動物群に含まれる動物化石のうち,サル類の幼獣の頭骨を用い形態学的に考察した.現生,および栃木県葛生産の後期更新世のニホンザル化石を用いた統計学的解析の結果,松ヶ枝産サル化石標本は,現生ニホンザルと比較してかなり大きな乳臼歯を持っていることが明らかとなった.一般的に縄文時代の遺跡から産出するニホンザルは現生種に比べて大型の傾向が見られるとされている(茂原ら,2002)が,本研究は化石ニホンザルが大型であるという傾向を統計学的に裏付けることになった. 松ヶ枝動物群を構成する多くの要素は,同時期の周口店動物群に対比可能なことが考えられるが,今回の研究において,更新世のニホンザルが大型の乳臼歯を持っているという結果が得られたことや,更新世及び縄文時代のニホンザルが形態学的に周口店動物群の要素として知られる大型のマカクザル化石(M. robustus)との関連を持つという指摘(Iwamoto, 1975)をふまえると,ニホンザルの祖先は43万年前頃日本列島に移入してきたとされる,華北動物相の一員であった可能性が高い.松ヶ枝産ニホンザル化石標本はニホンザルの系統関係の再考察や島嶼化に伴う形態変化の問題について議論していくうえで,今後重要なデータとなるであろう.

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4 薬剤によるニホンザルの中枢神経老化および細胞死の防御に関する研究

丸山和佳子,永井雅代(国立療養所中部病院・長寿医療研究センター・老年病),直井信(岐阜県国際バイオ研究所・神経),錫村明生(名古屋大・環境・神経免疫),新田淳美(名古屋大・医・薬剤)

神経栄養因子であるbrain derived neurotrophic factor (BDNF)およびglial cell line-derived neurotriphic factor (GDNF)は老化に伴う神経細胞死の防御はたらくことが期待される.脳内移行が可能な神経保護薬候補物質であるpropargylamine化合物 (PR)はin vitro,in vivoの実験で神経細胞死を防御すると同時に,実験動物(ラット,マウス,ビーグル犬)の寿命延長効果を示すことが報告された.PRはin vitroで神経細胞内の転写因子を活性化し神経保護に働くタンパクを誘導することが証明され,特に神経栄養因子の増加が顕著であった.サルの神経老化に介入しそれを防御する試みとして,サルにPRを投与し脳脊髄液中のBDNF,GDNFの変化を検討することを目的として研究を行った.

先ず,薬剤非投与条件で若年(3 y.o.),成年(7-8 y.o.),老齢 (20-30 y.o.) のオスニホンザル各2-4頭について脳脊髄液の分析を行った.その結果,GDNFおよびBDNFは加齢に従い低下する傾向が示された.一方成年オスニホンザル4頭に対しPRを投与したところ,非投与群(4頭)に比較してGDNF BDNFの一過性の増加傾向が認められた.

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5 丹沢山塊のニホンザルの分布

福田史夫(共立薬科大)

丹沢山塊の森林面積約510平方キロにはニホンザルの群れが13群(平均群れサイズ=36,r:4-60)で約483頭が生息する(神奈川県,2003).これらの内,サイズの大きい7群が東丹沢に集中して偏在しており,他の6群は点在して分布している.1923年の故長谷部のアンケート調査(岩野,1974)では,丹沢山塊では4箇所の生息域が報告されているが,これはいずれも現在の東丹沢の集中分布の地域であり,他の地域では生息情報が報告されていない.その後,アンケートや聞き取り調査で丹沢山塊全域に生息していることが分かった(常田・福田・岩野,1978;飯村,1987)が,分布の偏りはつかめていない.しかし,山塊の計画的実地踏査はまだ行われていない.13群が偏在して分布する要因を調べるために全域を河川の流域や稜線によって8区画に分けた.今回は焼山・姫次・蛭ヶ岳・丹沢山・本間の頭・御殿の森の稜線に囲まれる範囲を月に2回1人以上で踏査し,必要に応じて同時に5班に分かれて踏査した.少なくても従来までの3群が確認できた.今後,各区画を段階的に踏査して,群れの分布を明らかにしていく予定であり,群れ分布の偏在の原因追及はまだこれらからの課題として残されている.

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6 大脳皮質抑制性介在ニューロンの役割の研究

片井聡(信州大・医)

大脳皮質にはさまざまな種類の神経細胞が存在する.この中で抑制性介在ニューロンは,大脳皮質がその機能を実現するうえで重要な役割を果たしていることが,1次感覚野などで明らかになっている.しかし,連合野ではほとんどデータがない.これは,無麻酔で行動する動物で細胞タイプの同定が難しかったためである.一方,最近になって,バースト発火のパターンを手がかりにすることにより抑制性介在ニューロンの同定が可能となってきた.そこで,この方法を用いて連合野における抑制性介在ニューロンの役割の検討を試みた.サルにサッカード眼球運動課題を学習させ,前頭眼野から神経活動を記録した.神経細胞を発火パターンから4群:RS(regular spiking),FS(fast spiking),FRB(fast rhythmic bursting),IB(intrinsic bursting) 細胞に分類した.先行研究より,FS細胞は抑制性介在ニューロンと推定される.FS細胞の18%は,サッカード期間に発火を停止した.この応答パターンは他の細胞タイプよりもFS細胞で多かった.この結果はFS細胞が,脱抑制によりサッカードの発現に関与している可能性を示唆する.

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7 注意欠陥/多動性障害(ADHD)のモデル動物の作成

船橋新太郎(京都大・人間・環境),清水慶子(京都大・霊長研)

注意欠陥/多動性障害(ADHD)児は,集中力不足,衝動性,気分の易変性,落ち着きのなさなどの行動上の特徴を示し,学校教育場面で大きな問題になっている.ADHDは,主として幼児や児童に見られ,行動上の特徴が前頭連合野損傷者で報告されている実行機能障害と類似していること,ドーパミン(DA)の再吸収阻害剤であるmethylphenidate (MPD)が治療に有効であることから,発達過程で前頭連合野内に生じたDA伝達系の異常がADHDの原因ではないかと考えられている.本研究では,幼弱マカクザルを使用し,前頭連合野に投射するDA線維を6-OHDAにより破壊し,DA線維の慢性的な欠損がその後行動にどのような変化を生じるのか,ADHD児の行動特徴と同様の特徴が生じるのかを行動学的に検討しようと試みた.今年度は平成16年生まれの4頭のサルと平成15年生まれの1頭のサルを使用し,行動実験用小型ケージ内の単独での自発行動,ホームケージ内で母親との共存時ならびに単独での自発行動の記録・解析を実施した.いろいろな条件での自発行動の記録を行った後,平成15年生まれのサルの両側前頭連合野に6-OHDAの注入を実施した.行動実験用小型ケージ内での行動に変化は見られないが,ホームケージ内での行動量の明らかな増加が観察されている.

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8 ニホンザル新生児における匂い刺激によるストレス緩和効果

川上清文(聖心女子大・心理)

筆者らは,ニホンザル新生児が採血を受ける場面に,ホワイトノイズという音刺激やラベンダーの匂いを呈示するとストレスが緩和されることを明らかにした(Kawakami, Tomonaga & Suzuki, Primates, 2002, 43, 73-85).本研究では,その知見をさらに深めるために,サルの好物であるリンゴの匂いを呈示した.昨年度からの継続研究である.

本年度は,新たに2頭のオスのデータが得られた.第1回目の実験日が平均生後7.5日(平均体重473g),第2回目は17.5日(平均体重561.5g)であった.匂いを呈示した条件と呈示しない条件を比べた.行動評定の結果では,リンゴの匂いの呈示効果はみられなかった.今後,コルチゾルの分析結果を含めて検討する予定である.

なお,リンゴの匂いは昨年同様,高砂香料で合成された.

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9 ニホンザルにおける回顧的推論とその加齢による影響

川合伸幸(名古屋大・情報科学)

ニホンザルが,新たに獲得した情報に基づいて,それ以前に獲得した情報を捨て去るか(すなわち回顧的な判断・推論を行うか)ということを調べるための予備的検討をおこなった.一般的に回顧的推論に関する研究は2つの訓練段階で構成される.第1段階は2つの刺激で構成される複合刺激が同時に強化の信号となり(AX+),第2段階でそのうち一方だけが強化されて(A+),テストで他方の刺激(X)への反応が,複合刺激での強化子しか受けていない統制群と比べて弱くなるかが調べられる.そのことを検討する前に,第1段階と第2段階を逆にした手続き,すなわち先に強化の信号となっていた刺激(A+)に,他の要素が加えて強化の信号としたときに(AX+),その付加された刺激要素は信号としての効力をもたないブロッキング現象が生じるかを調べた.

5個体の若齢ニホンザルを対象とした実験の結果ブロッキング現象が確認された.しかし,老齢個体は,健康上の問題から実験に用いることができなかった.

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10 ニホンザル乳児における拡大/縮小知覚の非対称性の発達

白井述,山口真美(中央大・文)

ヒト視覚系は,対象の後退手がかりである縮小運動よりも接近手がかりである拡大運動により高い感度を持つ.こうした拡大/縮小知覚の非対称性は発達初期に発現するが,ヒト以外の種でこれらの非対称性の発達を検討した例は無い.本研究は,ニホンザル乳児を対象に拡大/縮小知覚間の非対称性の発達を検討し,ヒトとの間で種間比較を行うことを目的とした.91-138日齢のニホンザル乳児9頭(平均日齢=107.6)を対象に実験を行った.1つの拡大(または縮小)図形と11個の縮小(または拡大)図形群によって構成された視覚探索刺激を呈示し,ターゲット(1つだけ異なる運動特徴を持つ図形)に対する注視行動の頻度を測定した(FPL法).実験の結果,ターゲットが縮小図形である場合のみ負の選好が生じ,ターゲットが拡大図形である場合には有意な選好は生じなかった.これらの結果は,乳児が縮小ターゲットを拡大図形群から検出したが,拡大ターゲットを縮小図形群からは検出しなかった可能性を示す.こうした知覚傾向は,ヒトとは大きく異なるものであり(ヒト:拡大>縮小,サル:拡大<縮小),今後もより多くの個体を対象に実験を継続し,詳細な検討を行う必要があると考えられる.

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会