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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2004年度 > X 共同利用研究・研究成果−自由研究 11〜20

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.35 2004年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 自由研究 11〜20

11 霊長類の高コレステロール血症と遺伝子

竹中晃子(名古屋文理大・健康生活)

主に植物食であるマカカ属サルの家族性高コレステロール血症サルのLDLレセプター(LDLR)遺伝子変異を見出してきた.しかし18エクソンのうち2,4,9,15はヒトの塩基配列をプライマーとして用いたPCR法では増幅できなかった.LDLとの結合部位であるエクソン4については昨年度ニホンザルで増幅できるようにした結果,ヒトと比べ異なる荷電を伴う変異が一部に集中していたので,ホミノイドでの配列を決定した.マカカ属サルでは正荷電を有するアミノ酸6個,負荷電を有するアミノ酸1個,総計正荷電5個であるが,テナガザルに至る過程で正荷電が3個減少し,オランウータン,ゴリラ,ボノボ,チンパンジーおよびヒトでは正荷電2個を回復,正および負荷電1個を減少させた結果,総計正荷電4個までに復帰していた.しかし復帰したアミノ酸はホミノイドの中でも異なっていた.エクソン4はCysに富む繰り返し配列でLDLと結合する部位の立体構造を維持していると考えられている.このCys繰り返し配列の中にテナガザルのみが他のホミノイドやマカカ属サルとは異なり正荷電1個を失っていた.テナガザルのLDLレセプター活性に影響するか今後の検討を要する.

次にエクソン2も増幅しようとDNAウォーキング法で試み,増幅されたバンドを得ることができたので,さらに塩基配列を決定する予定である.

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12 大脳皮質進化の分子基盤に関する研究

米島宏幸(大阪大・院・生命機能)

層特異的な遺伝子の発現は,大脳皮質の神経細胞の分化の過程を理解する上で鍵となる現象である.第5層に豊富に発現している遺伝子のスクリーニングによって,われわれはEts転写因子のER81が発生期から幼若期にかけての齧歯類の大脳皮質全体の第5層の神経細胞の一部に発現していることを見出した.ER81は生後2日のマカクの第5層ニューロンでも検出された.生後14日では発現量はかなり少なくなり,成獣ではin situ hybridization法では検出できなかった.逆行性標識法と免疫組織化学法を組み合わせることによって,脊髄や上丘に投射している大脳皮質第5層の神経細胞のほとんどがER81を発現する一方,対側の大脳皮質に投射する第5層神経細胞の約1/3がER81を発現することがわかった.これらの結果は,ER81が第5層の神経細胞のうちある一部の集団の分化に関与しているということと,この機構は齧歯類と霊長類との間で保存されており,共通して利用されていることを示唆している.

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13 心臓に分布する頚胸部自律神経系の比較解剖学的解析

川島友和(東京女子医科大・医)

これまで,マカクザル(川島ら2000, 2001),ヒト(Kawashima, 2005)を対象に,心臓に分布する頚胸部自律神経系に関して解析を行ってきた.最終的に原猿,新世界ザル,旧世界ザル,類人猿,ヒトを対象として,ダイナミックな系統発生学的変化を探ることを目的としている.

今回,シロテテナガザル (Hylobates lar) 1体2側を用いて,高性能な手術用実体顕微鏡下において(Olympus OME 5000),同部位の詳細な肉眼解剖学的解析を行った.そうして,その結果をわれわれのこれまでの結果と比較検討を行った.

その結果,テナガザルのその形態は旧世界猿とヒトの中間的形態を有し,以下のような系統発生学的変化が観察された.

ゝ貔こΡ遒らヒトになるに従い,頚胸神経節(星状神経節)への胸神経節関与分節が減少する.

旧世界猿からヒトになるに従い,一部の神経節が,頭側に位置する.

5貔こΡ遒らヒトになるに従い,心臓神経の起始範囲が拡大する.

今後さらなる変化を探るために,例数を増やすと共に,霊長類各種の形態を探っていく予定である.

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14 野生チンパンジーにおけるY-STRの変異

井上英治(京都大・院・理・人類進化)

野生チンパンジーにおけるY染色体の遺伝的多型についての解析を行なった.サンプルは,マハレ山塊国立公園で人付けされているMグループおよび周辺のサンプルを用いた.Y-STRについては,先行研究を参考に,DYS388,391, 392,393,395の5領域を調べた.コントロールとして調べた人のDNA,チンパンジーの血液からのDNAについては,PCRで増幅され,長さが決定できたが,種々改良を試みたが野生のサンプルはPCRでの増幅がうまくいかなかった.これは,サンプルの状態が悪かったためにDNA量が少ないことや,ヒト用に開発されたプライマーを用いたため,プライマーが適切でなかったためではないかと思われる.今後,そのような点を改良していきたい.Y-STRの分析は,時間がかかると思われたので,常染色体上のSTR遺伝子の解析を行なうことにした.これは,父性解析および血縁関係を調べるためである.現在解析の途中であるが,D2S1326,D9S302,D1S550,D5S1470,D9S922,D19S431の領域でMグループ内で多型が見つかっている.それぞれのアリル数は,6前後なので解析に十分な多型があると考えられる.まだ,全個体の遺伝子型を決定できていないので,まず全固体の遺伝子型を決定し,その後,調べる領域を増やし,父性解析を行なう.

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15 行動抑制-行動活性状況における前頭前野の活動〜近赤外線分光法(NIRS)を用いて〜

小沢哲史(岐阜聖徳学園大学短期大学部)

本研究は,ヒトを対象として行動抑制(罰)系および行動活性(報酬)系の2つの動機づけシステムと前頭前野の活動の連関を検討することを目的とした.本年はGray(1981, 1982)理論に基づいて作成された BIS/BAS尺度(Carver & White, 1994; 高橋, 2003; 安田・佐藤, 2002)の結果 と計算課題の正解・不正解のフィードバックに対する前頭前野の血流変化を測度として個人差を検討することを目指したが本務校多忙のため,予備的検討に留まった.

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16 ヤクシマザルの採食行動における昆虫食の役割

清野未恵子(京都大・理)

本年度は昨年度に引き続き,ヤクシマザルにとって動物食がどのような役割を果たしているのかを明らかにするため,どのような昆虫類をどのように探し出し採食しているのかを調査した.調査期間は2003年10月から2004年6月までで,鹿児島県屋久島の西部海岸地域に生息するヤクシマザルを対象に調査を行った.調査対象群はNina-A群で,そのうちオトナメス5個体を調査対象個体とした.その結果,年間を通して40種類の昆虫類を採食していることが明らかになった.それらを探索する行動のなかで,虫を獲ることを目的としているのが明確な「朽木を崩して虫を探索する行動(朽木崩し行動)」について分析した.朽木崩し行動は各月に観察されたが,11月〜3月にかけて増加し2月が最も頻度が高かった.朽木は,冬期に虫類を獲得する場所としてサルにとって重要な採食パッチであることが明らかになった.また,朽木を崩して虫を獲得した113回のうち,61回は同じ朽木かまたは付近の朽木で探索行動が続いた.これは朽木の中から採れた虫がサルの探索動因を強化し,さらに虫を得ようとしている行動であると考えられ,朽木に生息している昆虫類はサルにとって魅力的な食物であることが示唆された.一方で,朽木から出てくる虫の種類によって全て食べる・少し食べる・全く食べないなど採食行動が異なることから,朽木で採れる虫の種類のなかにも好みがある可能性も考えられる.

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17 コモンマーモセット脳内神経伝達物質,APUD系細胞の機能形態学的解析−2

唐沢延幸・岩佐峰雄・竹内輝美(星城大・リハビリ),山田敬喜(藤田保健衛生大・衛生)

前年度からの継続課題のうち,マーモセット脳内に分布するチロシン水酸化酵素(TH)免疫陽性細胞と芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)免疫陽性細胞を免疫細胞化学的方法で解析を進め結果を16th International Congress of the IFAA(Anatomical Science International; Vol.79, 2004, Sup: P4-196) にて発表.コリンアセチル転移酵素(ChAT) 免疫陽性細胞の局在の解析結果を27回日本神経科学会にて発表(NeuroscienceRes ; Vol.50, Sup:P1-002).(結果内容は前年度報告書にて既報済.) 今年度は消化管内分泌細胞の分布を齧歯類や食虫目との比較細胞学的解析を進め,マーモセット独特の特徴について,第110回日本解剖学会にて発表(Acta Anatomica Nipponica;Vol.80, 2005, Sup:P4-09),さらにモノアミンニューロンの分布についての解析を進め,結果は第28回日本神経科学会にて発表予定.

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18 マカクザル乳児における生物に関する初期知識

堤清香(京都大・院・文),友永雅己(京都大・霊長研)

霊長類における生物に関する知識は生得的なのだろうか.また,それらの知識を規定する「生物らしさ」の属性は何だろうか.本研究では,生物モデルと非生物モデルをニホンザル乳児に呈示し,それらのモデルの自発運動に対する被験体の注視時間を測定して,生物に関する初期知識とその発達を明らかにすることを目的とした.1ヶ月児(10頭)と3ヶ月児(10頭)それぞれについて,非生物モデルとして石を,生物モデルのテスト1として玩具の眼がついた石を,また,生物モデルのテスト2として玩具の毛がついた石を呈示した.コントロール条件ではこれらの刺激を静止させ,テスト条件では自発運動させた状態で呈示したところ,1ヶ月児では,非生物モデル,眼あり生物モデル,毛あり生物モデルのいずれにおいても,コントロール条件と自発運動条件間で注視時間の差がなかったが,3ヶ月児では,非生物モデルと眼あり生物モデルにおいて,コントロール条件に比べて自発運動条件で有意に長く注視し,毛あり生物モデルではコントロール条件と自発運動条件で注視時間の差がなかった.このことから,1ヶ月児では生物概念がまだ形成されていないが,3ヶ月児では生物と非生物の区別ができており,生物らしさを規定する要因としては眼よりも全体のテクスチャー(毛がありふわふわしている)のほうが重要であることが示唆される.

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19 運動情報を手掛かりとした形態認知の脳内機構の研究

半田高史・久保田競(日本福祉大・院・人間情報)

本研究では,空間情報のひとつである動きの情報と形態情報のひとつである形の情報の統合過程の解明を目指した.先行研究で,このような情報統合を行っている領野の候補のひとつである前部上側頭溝(aSTS)の細胞は,動きのみを手掛かりとして描かれた図形に選択的に応答を示した.そこで,aSTSへ動きの情報を送ると推定されるMT野において,SFM条件(図形領域内のドットのみを一定方向に動かすことで図形の輪郭が知覚される条件)とSFL条件(暗い背景に対する図形の領域内で動くドットの明るさのコントラストを手掛かりに図形の輪郭が知覚される条件)の図形識別への寄与を調べた.2頭のアカゲザルに遅延見本合わせ課題を訓練した.注視点を画面中央に呈示し,サルはこの注視点に視線を維持し,0.5秒後に注視点が消えると同時にサンプル刺激として4種類のうち1つの図形を画面中央に白塗り状で1秒間呈示した.サンプル図形が消えると同時に,注視点が現れ遅延期を経て注視点を挟んだ点対称の位置に2つの図形をSFM条件で描いた.一方はサンプル図形と同じ図形(目標刺激),反対側は残りのうちの1つの図形(妨害刺激)である.弁別期では,サルはどちらがサンプル図形と同じ図形であるかを弁別し,注視点が消えた後,その選択した図形に視線を移し回答する.

SFM条件でテストした177個のMT細胞のうち,35%が,SFL条件でテストした115個のうち,37%が図形選択性を示した.図形の面積差による応答比較によって,MT野における図形選択的応答が細胞の受容野内を動くドットの数など物理的特性によるものでないことを確認した.SFM条件における図形選択的応答は,SFL条件におけるそれよりも遅れて最大応答に達した.また,細胞応答の図形差が生じる時間経過をaSTSと比較した結果,SFM条件での図形差はaSTSがMT細胞に先行していた.この結果は,SFM条件の図形弁別で,動きの情報はまずMT野からaSTSにもたらされた後,aSTSによって図形識別が行われ,この過程で図形選択的応答がMT野に戻されている可能性を示唆する.

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20 マカクにおける色素形成関連遺伝子の発現と体毛色に関する研究

中山一大(東京大・院・理)

マカクの体毛はアグーチ的なパターンを示し,また背腹軸に沿った明暗のパターンを有する.このようなパターンの形成にはagouti遺伝子の関与が考えられるが,マカク皮膚組織でagouti遺伝子が発現しているかどうかは不明である.また,agouti遺伝子の発現パターンの相違がマカク種間における体毛色変異に関連している可能性も考えられる.そこで本研究ではマカクの皮膚からRNAを抽出し,ノーザンブロッティング法,RT-PCR法などを用いてagouti遺伝子の発現を確認することを目的とした.しかしながら,本年度は実験殺のスケジュール上の問題で,研究に必要十分なマカク皮膚組織を入手できなかった.予備研究として,病死したチンパンジーの皮膚組織を用いてRNA抽出ならびにagouti遺伝子のRT-PCR増幅などの条件検討を行い,マカク皮膚組織が入手できた場合に行う実験系を確立した.また,共同利用研究会「分子遺伝学による霊長類進化研究の現状と展望」において,関連研究の成果を発表した.

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会