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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2005年度 > X 共同利用研究・研究成果−施設利用 1〜10

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.36 2005年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 施設利用 1〜10

1 酵母細胞を用いたサル肝Microsomal aldehyde oxygenase発現系の構築及び機能解析

渡辺和人,舟橋達也,山折大(北陸大・薬・衛生化学)

対応者:景山節

我々はニホンザル肝ミクロソームよりアルデヒドを対応するカルボン酸体へと酸化する酵素 (Microsomal aldehyde oxygenase, MALDO)を精製し,そのN末端アミノ酸配列からCYP2A及びCYP2B分子種であることを明らかにしてきた.そこで,本年度の研究ではニホンザル(雄・3才)肝臓よりmRNAを抽出し,ヒトCYP2A6 cDNAの非翻訳領域を基に設定したプライマーを用いてRT-PCR法によりcDNAをクローニングした.その塩基配列を決定したところ,その推測されるアミノ酸配列はヒトCYP2A6と91.0 %,ヒトCYP2A13では92.3 %一致した.クローニングしたcDNAを発現用ベクターを用いて酵母に導入し,発現系の構築を試みた.ニホンザルCYP2A発現酵母よりミクロソーム画分を調製し,ニホンザルMALDO抗血清を用いてWestern blottingを行ったところ,約50 kDaの位置に単一のバンドが検出された.現在,発現酵母より調製したミクロソーム画分を用いて本酵素の酵素化学的な特性について検討している.

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3 サル胚性幹細胞の肝細胞への分化と胎齢等を考慮した薬物動態試験への応用

松永民秀,水上紗弥香,百瀬泰行,村井健太郎,大森栄(信州大・病院薬)

対応者:景山節

【目的】サル胚性幹細胞(ES細胞)から肝細胞への分化誘導に関する研究はこれまでほとんど行われていない.本研究は,力ニクィザル ES 細胞から肝細胞への分化と,分化過程から見出した新規シトク口ム P450 ( CYP )の mRNA 発現を明らかにすることを目的とした.

【方法】サル ES 細胞より作成した胚様体(EB)をコラーゲン処理したプレートに接着させ,培養することにより分化した.

【結果・考察】EB 培養により肝細胞マーカーが検出されたことから,肝細胞へ分化していることが示唆された.また,薬物代謝型分子種のCYP1A1 ,CYP2C20 ,CYP2D17 ,CYP3A66,CYP3A8 の mRNA が検出された.さらに,ヒト胎児肝細胞に特異的に発現する CYP3A7 と高い相同性を有する新規 CYP ( CYP3A7m)を EB 培養細胞より見出した. CYP3A7m の mRNA は,ES 細胞の分化初期に発現していることが確認できたが,胎齢170日のニホンザル胎児の肝には全く検出されなかった.一方,母ザルの肝には検出されたことから, CYP3A7mは CYP3A7と異なり胎児特異的に発現する分子種ではない可能性が示唆された.

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4 飼育下チンパンジーの腸内細菌検索

牛田一成,上西源太郎(京都府立大・院・農)

対応者:景山節

チンパンジーの腸内細菌はほとんど知られていない.そこで,野生チンパンジー個体と腸内細菌叢の構成を比較する目的で霊長類研究所飼育下チンパンジー個体の糞便を採取し,細菌検索に供した.いわゆるビフィズス菌(Bifidobacterium spp.)は,ヒトでは優勢な細菌であり,さらに保健効果を有する有用細菌として知られている.これまでのわれわれの研究から,チンパンジーにおいてもビフィズス菌がボッソウ野生個体に共通する細菌として検出されることがわかった.そこで,霊長研飼育個体群からビフィズス菌の分子生態学的検出を試みた.ビフィズス菌16S rRNA遺伝子の特異配列をターゲットとしたReal time-PCRおよび増幅産物のシーケンスに基づく系統解析を行った.霊長研個体群では,成人の場合検出レベルが低く(< 103/ g),一方霊長研で誕生した子供ではヒトと同様のレベル(108- 109/g)で検出された.検出された配列は,B.dentium, B.adolescentis, B.pseudolongumでいずれもヒトで優勢な種であった.これらのものは,Bossou個体群からは検出されなかったので,ヒトからの伝播を考慮する必要が示唆された.このように,飼育下のチンパンジーの腸内細菌叢は野生個体と基本構造は類似するものの優勢な菌種のレベルでは異なっており,今後の検討がさらに必要である.

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5 ニホンザルの古分布の復元に関する研究

三戸幸久(ニホンザル・フィールドステーション)

対応者:渡邊邦夫

ニホンザルについての過去の分布資料から,ニホンザル古分布の復元を目指している.資料としては,すでに長谷部資料(1923,三戸による判読,1989),岸田(1953),竹下(1962),竹下(1970,未発表),環境省(1978)をはじめ,縄文遺跡や各種古文献のデータ入力が終わっている.その資料を基に3D地図の上におとして立体的な分布状況復元とその変遷過程を明らかにする作業を行った.まずこうした文献は図化されたものと地名でしか残されていないもの,あるいは地名も町名や村名だけとか山地名だけとか様々なので,その統一した入力方法を検討した.その上で,地図上に分布資料を重ね合わせ,時代的な変遷を検討している.資料が膨大であるため,現在も作業は継続中である.   

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6 ヒト内在性レトロウイルス遺伝子のヒトゲノム侵入時期の検証

小田高也(琉球大・院・生命統御)

対応者:景山節

H16-17年度に採択された基盤研究「データベースを利用したヒト内在性レトロウイルス関連遺伝子が持つ転写能の検討」によりNCBIのdbESTおよびnrデータベースをスクリーニングした結果,脳で発現する可能性を有するヒト内在性レトロウイルス関連の転写物の解析候補ローカスを24箇所見いだした.胎児脳由来RNAを用いたRT-PCRで検証実験を行った所,1p36.13にはHUERS-P3bに属するHERV転写物が,また5p15.33にはHERVK9に属する転写物の存在が確認できた.

17年度に胎盤での特異的発現を報告した1ローカスを加えた合計3ローカスのヒト内在性レトロウイルスに関して,霊長類の進化との関連を考察するためにゲノムDNAを用いてホストへの進入時期の検証をPCRベースの実験で行った(チンパンジー・ニホンザル・アカゲザル・コモンマーモセット・フサオマキザル・ヨザル・クモザル・ギャラコを使用).その結果1p36.13のHUERS-P3bおよび5p15.33のHERVK9は共にヒトとチンパンジーでのみ増幅が得られたことから,これらはヒトが旧世界ザルと分化した後でゲノムへ進入したと考えられた.胎盤での特異的発現を示す21q22.3のHERVF(typeB)はヒトでのみ増幅され,進入時期は更に新しいと推定された.今後は増幅産物の塩基配列の比較も行うなど,更に詳細に検証する予定である.

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7 チンパンジ−幼児の砂遊びにおける象徴的操作の実験的分析:2〜4歳齢段階のまとめ

武田庄平(東京農工大・比較心理)

対応者:松沢哲郎

不定形な"かたち"ゆえの多義的性質を有する砂の操作を自発的な遊びという文脈の中で捉え,チンパンジ−幼児の認知機能の発達的分析を2歳齢〜4歳9ヶ月齢段階においてこれまで行ってきた.今回はこれらの結果を再度見直すために,研究所に保存してある過去3年間の実験のビデオのマスタ−テ−プからのダビング作業,及び実験を行う度に行ってきた行動解析を全体的に再度見直しデ−タを精緻化する作業を行った.また,本研究課題とは別に行ったヒト幼児(1〜5歳児)を被験者とした類似条件下での砂の対象操作実験結果のとりまとめも行い,本研究との系統比較を合わせて行った. 砂の操作行動は,2歳齢段階では大半が砂と身体との直接的な関わりであったが,3歳齢段階以降では,道具を使っての砂の操作が現れ始め,3歳6ヶ月齢段階では明確に砂を道具間で移動させる操作等が出現し,さらに4歳齢段階以降では,砂をコップに入れて砂を飲み物に見立てた“飲むふり”を行ったと理解できる操作や,砂を他者に投げつけるという自身−砂−他者の三項関係的操作も見られた.これらの発達傾向をヒト幼児(1〜5歳児)においておこなった類似条件下での砂の対象操作実験結果と比較するとヒトにおける砂の対象操作行動の発達とチンパンジーのそれとは実は大筋あまり違いがなく,細かな質的な差を以って両者の違いが示され得るという興味深い結果を得た.

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8 絵画的奥行き知覚に関する比較認知科学的検討

伊村知子(関西学院大・院・文)

対応者:友永雅己

ニホンザルの乳児8個体(15-25週齢)とチンパンジーの成体1個体(Pan,22歳)を対象に,影を手がかりとした物体の3次元空間位置の知覚について馴化-脱馴化法を用いて検討した.

ボールの2次元的な運動の軌跡は同じにもかかわらず,影の運動の軌跡により奥行方向にボールが運動するように知覚される動画(Depth)と,床面から浮かび上がって上昇方向に運動するように知覚される動画(Up)を作成した.「Depth」を4試行繰り返しモニターに呈示して馴化させた後,テストではその運動の軌跡を水平方向に反転させた「Depth」と「Up」を1試行ずつ呈示し,いずれを長く注視するかを分析した.1試行の刺激呈示時間は20秒とした.その結果,テストの2種類の動画はいずれも新奇な刺激であったが,ニホンザルの乳児とチンパンジーの成体は「Depth」よりも「Up」に対しより長い注視反応,すなわち新奇選好を示した.したがって,影を手がかりに物体の3次元の運動方向の差異を弁別していた可能性が示唆された.「Up」に対する注視反応の増加が3次元空間位置の違いに基づくものかを検証するためにはさらなる検討が必要である.

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9 食物を介した母子間交渉の種間比較

上野有理(東京大・院・総合文化)

対応者:友永雅己

ヒト母子との比較を目指し,チンパンジー母子1ペアを対象に,食物を介した母子間交渉の発達を検討した.具体的には,参与観察場面において,実験者がチンパンジーの母親に食物を渡し,その後みられる母子間交渉を観察・分析した.子どもが10ヶ月〜1歳11ヶ月齢までと,2歳〜2歳11ヶ月齢までの交渉を比較したところ,母親から子どもへ食物が受け渡される頻度や,子どもの発声頻度に相違のあることが明らかになった.母親から子どもへの食物の受け渡しは,2歳齢以降でより頻繁に観察された(chi-square test; p<0.05).また母親との交渉場面において,子どもは2歳齢以降,より頻繁にフィンパーを発声した(Fisher’s exact probability test; p<0.01).食物を介した交渉場面でのフィンパー発声は,要求行動の1つといわれている.発声頻度が増加した2歳齢以降において,発声のない場合に比べ,ある場合により頻繁に食物が受け渡されるかを検討したところ,発声のある場合は75%,発声のない場合は57%の割合で受け渡しがみられたが,有意差はなかった(Fisher’s exact probability test; p=0.26).さらなる分析により,発声のさいの子どもの視線方向や,発声後の子どもの行動,それに付随する食物の受け渡しの有無が,時系列的に変化することも示唆され,フィンパー発声の機能を検討するためには,より多角的な分析が必要と考えられた.

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10 Colobinaeにおけるシセンキンシコウの社会構造の特徴と由来

和田一雄

対応者:渡邊邦夫

One male unit(OMU), band, all male groupからなるherdはアジアに分布するColobinaeの中でどのような位置付けになるのかを検討した.すなわち6-9つのOMUからなる bandはほかの bandと緩やかな社会関係を保って multi-bandを形成する.それは all male groupとオスの出入りを通して社会的関係を結び, herdとなる.このような重層構造はわれわれが調査しているシセンキンシコウ(Rhinopithewcus roxellana)でだけ知られている.

アジアにはColobinaeが30種生息するが,そのうち社会構造に言及されている11種類を概観すると,全部の種類がOMUとall male groupを有する.そのうちテングザルとキンシコウ4種はさらにbandを形成する. アジアのColobinaeはlate Mioceneにヨーロッパからシベリアにいたる北方グループとアフリカからlate Miocene-early Plioceneにアジアに至った南方グループに分けられる.その後mid-Pliocene からearly Pleistoceneにかけてrhinopithecomorphが東アジアに広く分布した.最終氷期には秦嶺山系に氷河がかかり,rhinopithecomorphはそこから南に分布が限定された.それまではおそらくOMUとall male groupからなっていた社会構造が変化し始め,現在の重層構造に変化したと思われる.Plio-Pleistoceneに繰りかえし訪れた氷期を乗り越える過程で得た厳しい生息環境にもすめる耐性を得たと思われる.後氷期以後中国南部に分布域を限定したキンシコウはその生態特性に沿って個体数を増やし,新しい社会構造を獲得して,分布域を拡大したと思われる.

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会