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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2005年度 > X 共同利用研究 4. 共同利用研究会

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.36 2005年度の活動

X 共同利用研究

4 共同利用研究会

第6回ニホンザル研究セミナー
  • 日時:2005年5月14日(土)〜15日(日)
  • 場所:霊長類研究所大会議室
  • 参加人数:約50人
  • 世話人:杉浦秀樹,室山泰之
  • <プログラム>
  • 5月14日(土)
  • 座長:早川祥子(京都大・霊長類研究所)
  • 宇野壮春(宮城教育大)「ニホンザル・群れ外オスの社会学的研究」
  • コメンテータ:堀内史朗(東北大・文学)
  • 花村俊吉(京都大・理・人類進化論)「ニホンザル餌づけ群におけるオスの空間的位置とメスとの社会関係―空間的位置の分化機構と差異の観察―」
  • コメンテータ:高畑由起夫(関西大・総合政策)
  • 座長:座馬耕一郎(京都大・霊長類研究所)
  • 島田将喜(京都大・理・人類進化論)「ニホンザルコドモの遊びの研究」
  • コメンテータ:早木仁成(神戸学院大・人文)
  • 話題提供,総合討論
  • 高畑由起夫(関西学院大・総合政策)「ワオキツネザルの母系的集団におけるメスの順位と繁殖成功,およびグループサイズの影響〜ニホンザルとの比較資料として」
  • 室山泰之(京都大学・霊長類研究所)「死体からわかること−野生ニホンザルの栄養状態の季節変動と地域変化」
  • 懇親会
  • 5月15日(日)
  • 座長:室山泰之(京都大・霊長類研究所)
  • 江成広斗(東京農工大・連合農学・野生動物保護学)「農村社会の展望から猿害問題を再考する〜白神山地における西目屋村アニマルパトロールの事例から〜」
  • コメンテータ:鈴木克哉(京都大・霊長類研究所)
  • 座長:半谷吾郎(京都大・霊長類研究所)
  • 風張喜子(北海道大・環境科学)「ニホンザルのパッチ利用における他個体の影響」
  • コメンテータ:中川尚史(京都大・理・人類進化論)
  • 清野未恵子(京都大・理・人類進化論)「野生ヤクシマザルオトナメスの昆虫類捕食行動」
  • コメンテータ:丸橋珠樹(武蔵大)

若手研究者を中心に,ニホンザルを対象とした野外研究の成果を発表した。発表内容は多岐にわたったが,いずれも発表者自身の調査に基づくもので、興味深い内容のものが多かった.若手研究者を交えた交流や意見交換の場としても有意義な研究会であった.

(文責:杉浦秀樹)

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視線,共同注意,心の理論
−共同利用計画研究「チンパンジー乳幼児期の認知行動発達の比較研究(H13-15)」, 「チンパンジーの認知や行動とその発達の比較研究(H16-)」研究成果発表会−
(PRI Cooperative Research Workshop "Gaze, Joint Attention, and Theory of Mind")
  • 日時:2005年8月1日(月)〜2日(火)
  • 場所:京都大学霊長類研究所1階大会議室
  • 参加人数:約60人
  • 世話人:友永雅己,松沢哲郎,田中正之,吉川左紀子(京都大・教育)
  • <プログラム>
  • 8月1日(月)
  • 黒木美紗(九州大)「乳児の視線転換に及ぼす情動の影響−始発的共同注意の獲得の観点から」
  • 常田美穂(北海道大)「共同注意の発達における養育者の役割」
  • 仲川こころ,小嶋秀樹(情報通信研究機構),安田有里子(近江八幡市立心身障害児通園センター)「2項関係への気づき・3項関係への気づき−ロボットから見た自閉症児のコミュニケーション発達」
  • 長井志江(情報通信研究機構)「ロボットによる視覚的共同注意の学習」
  • 共同利用計画研究「チンパンジーの認知や行動とその発達の比較研究」および関連研究成果発表ポスターセッション
  • 小沼裕子(中央大),金沢創(淑徳大),山口真美(中央大)「乳児の視線知覚における部分処理と全体処理」
  • 瀬山淳一郎(東京大)「視線方向残効」
  • Stephen R. H. Langton(University of Stirling)「Faces, gaze and visual attention.」
  • 8月2日(火)
  • チンパンジー実験見学
  • 久世濃子(東京工大)「オランウータンの凝視行動の特徴と社会的機能」
  • 橋彌和秀(九州大),小林洋美(科学技術振興機構)「The evolution of "social eyes" in primates.」
  • 野村光江(京都大)「伝達行為としての顔面表出」
  • 友永雅己(京都大)「チンパンジーにおける視線認知」
  • 昼食およびポスターセッション
  • 佐藤弥(京都大)「表情と視線の交互作用:心理学研究と脳画像研究からの知見」
  • Reginald B. Adams Jr. (Tuffts Univeristy)「Feed-forward versus feedback threat responses show differential attunement to clear versus ambiguous threat.」
  • 総合討論

近年,視線の認知とそれに関連するさまざまな問題が,発達心理学,認知心理学,霊長類学など多くの領域で研究されるようになってきた.かつて行われていたような,どの種では視線追従が可能で,どの種ではできないか,とか,何歳になればできるようになるか,という現象面の把握にとどまらず,他の認知機能との関連や,より高次の社会認知機能との関連,さらにはコミュニケーションとの関連など,視線がわれわれの活動に果たす機能とその機構を明らかにしようとする研究も増えてきた.そこで本研究会では,視線認知を足がかりにして,それに関連するであろうさまざまなトピックに焦点をあて,議論を行った.スピーカには,中堅・若手を問わず,これらの問題に関心をもつ国内外の研究者を招き,多様なトピックのなかからそれぞれの参加者が今後の研究のヒントをつかんでもらい,共同研究の新たな展開が起きることも期待した.

発表されたトピックは,母子間の相互交渉における共同注意の発達的変化,ロボットによる共同注意の獲得に関する構成論的アプローチや,視線追従ロボットの療育への応用,視線の知覚に関する心理物理的,発達的,認知神経科学的,そして比較認知的研究,さらには,霊長類における視線コミュニケーションとその適応的意義など,「視線」をめぐる多様なレベルからの発表がなされた.また,今回,京都大学21世紀COEプログラム「心の働きの総合的研究拠点形成」の招聘で来日していたStirling大のLangton氏とTuffts大のAdams氏にもご参加いただき,視線認知研究の新たな展開の可能性や,視線認知と情動認知の関連に関する最新の知見についてお話いただいた.

「視線」に限定しただけでも,このような多様なトピックがそれぞれに精力的に行われている.今回の研究会では,普段接点の少ないこれらの研究領域間でのコミュニケーションを促し,新たなコラボレーションの可能性を探ろうとしたが,その試みは徐々にではあるが広がりつつあるものと思われる.また,今回の研究会では視線の理解の先にある他者理解・心の理論の問題にまではアプローチできなかった.この点については,次年度以降の研究会につなげていきたい.

今回,新たな試みとして,私たちが推進してきた共同利用研究計画課題「チンパンジー乳幼児期の認知行動発達の比較研究(H13-15年度)」,「チンパンジーの認知や行動とその発達の比較研究(H16年度-継続中)」および関連する研究のポスター形式の成果発表会をプログラムに組み込んだ.ポスターの前ではそれぞれに活発な議論がなされ,この試みはひとまず成功したものと思っている.今後は,共同利用研究の成果発表だけでなく,大学院生などの若手の研究者からのポスター発表参加を募って研究会自体を活性化することを考えていきたい.

(文責:友永雅己)

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霊長類モデルでのバイオメディカル研究の新展開-2005
  • 日時:2005年10月29日(土)9:30-18:00
  • 会場:犬山国際観光センター・フロイデ
  • 参加人数:59人
  • 世話人:中村伸,三上章允,清水慶子,藤本浩二(予防衛生協会),竹中晃子(名古屋文理大)
  • <プログラム>
  • 1. 霊長類の感染微生物とその統御
  • 座長:藤本浩二(予防衛生協会)
  • 光永総子(京都大・霊長類研)「Bウイルスモニタリングに関する最近の知見」
  • 原正幸(国立感染研・筑波大)「マカク属サル類におけるSRVの感染」
  • 高野淳一朗(予防衛生協会)「霊長類医科学研究センターカニクイザルコロニーにおける微生物学的モニタリングとSPF化への取り組み」
  • 俣野哲朗(東京大院・医学系)「サルモデルにおけるエイズワクチンの解析」
  • 2. 霊長類の機能ゲノム情報の解析とその活用
  • 座長:向井鐐三郎(感染研・基盤研・予防衛生協会)
  • 柴田宏昭(医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センター)「カニクイザルES細胞を用いた再生医療研究」
  • 纐纈大輔(京都大・霊長研)「健常ザルおよびサル局所脳虚血モデルにおけるニューロン新生」
  • 4. 霊長類での肥満・栄養・メタボリックシンドローム関連研究
  • 座長:竹中晃子(名古屋文理大・健康生活)
  • 清水慶子(京都大・霊長類研)「マカク属サルの血中レプチン動態」
  • 吉田俊秀(京都府立医科大・臨床,京都市立病院・糖尿病/代謝内科)「倹約遺伝子と人間の栄養」
  • 総合討論

今回の研究会では,霊長類モデルでのバイオメディカル研究として「霊長類の感染微生物とその統御」,「霊長類の機能ゲノム情報の解析とその活用」,「霊長類モデルでの再生医療および脳神経研究」ならびに「霊長類での肥満・栄養・メタボリックシンドローム関連研究」についてトピックを選定した.左記のプログラム内容で関連研究の成果紹介とそれに関わる質疑など,演者・座長・出席者の間で終日活発な意見・情報交換が持たれた.参加者総数は,研究会会場が霊長類研の外(フロイデ)にも拘わらず多数(59名)の出席があり,霊長類モデルでのバイオメディカル研究への関心の高さが窺える.

また,参加者は大学・研究機関のみでなく法人・事業体などからも多く,研究会の目的の一つでもある,霊長類モデルでのバイオメディカル研究について学・官・産関係者での情報交換や交流の場としても寄与できた.

(文責:中村伸)

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霊長類の発達加齢に関する多面的研究
  • 日時:2005年12月1日(木)〜12月2日(金)
  • 場所:京都大学霊長類研究所大会議室
  • 参加人数:約30人
  • 世話人:大石高生,林基治,清水慶子,脇田真清
  • <プログラム>
  • 12月1日(木)
  • 挨拶 大石高生(京都大・霊長類研究所)
  • セッション「遺伝子から見た脳の発達加齢」
  • 座長:林基治(京都大・霊長類研究所)
  • 高橋浩士(三菱化学生命科学研究所)「霊長類における脳の領域形成・神経回路形成に関わる遺伝子発現について:げっ歯類との比較」
  • 肥後範行(産業技術総合研究所・脳神経情報研究部門)「脳の発達と可塑性にともなう神経成長関連タンパクの発現変化」
  • 大平耕司(京都大学大学院・医学研究科)「成熟期の大脳皮質に存在する神経前駆細胞」
  • セッション「行動と形態から見た脳の発達加齢」
  • 座長:脇田真清(京都大・霊長類研究所)
  • 脇田真清(京都大・霊長類研究所)「ラット脳における感覚モダリティーの分化と連合」
  • 大石高生(京都大・霊長類研究所)「MRI画像で見たニホンザル頭部と脳の生後発達」
  • 船橋新太郎(京都大学大学院人間・環境学研究科)「前頭前野の発達性機能障害としてADHDをとらえられるか」
  • 久保南海子(京都大・霊長類研究所)「老齢ザルの認知機能に関する行動的評価と神経変性の推定」

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  • 12月2日(金)9:30-15:00
  • セッション「元素分析から見た発達加齢」
  • 座長:大石高生
  • 東野義之,東野勢津子(奈良県立医科大学・医学部)「元素分析から見たニホンザルの動脈の加齢変化」
  • 佐藤広康(奈良県立医科大学・医学部)「サル心臓組織における微量元素の加齢変化の特徴」
  • セッション「性の発達加齢」
  • 座長:大石高生(京都大・霊長類研究所)
  • 託見健(京都大・霊長類研究所)「性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンへのシナプス性入力の発達変化」
  • 佐藤至(神奈川県警察科学捜査研究所)「オスの性の発達加齢?精漿蛋白を追いかけて?」
  • セッション「体格の発達加齢」
  • 座長:清水慶子(京都大・霊長類研究所)
  • 片上秀喜(宮崎大学・医学部)「アカゲザルにおける成長ホルモン(GH)放出ホルモン(GHRH)とグレリンの遺伝子発現に関する研究)」
  • 清水慶子(京都大・霊長類研究所)「マカクザルの発達・加齢とレプチン」
  • 濱田穣(京都大・霊長類研究所)「ヒト以外の霊長類における脂肪蓄積とその性差・季節変化・年齢変化」

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本研究会は,平成15〜17年度にわたって実施された計画研究「霊長類の発達加齢に関する多面的研究」のとりまとめとして開催された.計画研究の代表者8名に加え,所内対応者,大学院生および船橋新太郎,濱田穣両氏が報告を行った.

「遺伝子から見た脳の発達加齢」では,領域形成関連遺伝子FoxP2の発現様式,シナプス可塑性の高い時期にシナプスの前部後部の両方でプロテインキナーゼC基質が発現すること,囓歯類では大脳皮質第I層に存在する神経前駆細胞が霊長類では存在しないことなどが報告された.「行動と形態から見た脳の発達加齢」では,注意欠陥・多動性障害を前頭前野の発達障害と仮定して進行中の子ザルの行動実験の結果や,老齢ザルで障害される課題からの神経変性推定が報告された.「元素分析から見た発達加齢」では,ニホンザルとヒト,ヒトの中でも日本人とタイ人の動脈硬化の振興の違いが存在することなどが報告された.「性の発達加齢」では,新しい研究手法によるGnRHニューロンへのシナプス性入力の解析の結果や精漿タンパクPSAの動態に関する基礎研究の結果と応用について報告された.「体格の発達加齢」では,アカゲザルにおける成長ホルモン,成長ホルモン放出ホルモン,ソマトスタチンの分泌相関や発達加齢や性ホルモンの動態とレプチンとの関係,ヒト以外の霊長類における脂肪蓄積とその性差,季節変動や年齢変化などが報告された.

各発表に関する討論,議論は専門分野を超えて活発に行われ,参加者の発達加齢に対する認識は一段と深まった.発表者,推進者以外に所内の参加者が少なかったことが惜しまれる.

(文責:大石高生)

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アジア・アフリカ圏哺乳類現地調査におけるマテリアルエビデンスの可能性
  • 日時:2006年1月26日〜27日
  • 場所:京都大学霊長類研究所大会議室
  • 参加人数:約100人
  • 世話人:遠藤秀紀,濱田穣,毛利俊雄,國松豊,高井正成,川本芳,田中洋之
  • <プログラム>
  • 1月26日(木)
  • 濱田穣(京都大学・霊長類研究所)「東南アジアでの現生霊長類の調査・研究状況について」
  • 大井徹(森林総合研究所・関西支所)「ミャンマーにおけるマカクの分布とその調査法をめぐって」
  • 大澤秀行(京都大学・霊長類研究所)「タイの国立公園・野生生物サンクチュアリーでの分布生息実態調査」
  • 遠藤秀紀(京都大学・霊長類研究所)「アジア・アフリカ圏の自然史博物館の現状と標本研究の実例」
  • 本川雅治(京都大学・総合博物館)「東アジア産小型哺乳類の分類の見直し−台湾、中国南部での調査から見えてきたこと−」
  • 石黒直隆(岐阜大学・食品環境衛生)「イノシシ・ブタの分子進化」

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  • 1月27日(金)
  • 川田伸一郎(国立科学博物館・動物研究部)「欧米の博物館に所蔵されているアジア産モグラ類の標本.−標本収集の重要性−」
  • 木村順平(日本大学・獣医解剖)「東南アジア産哺乳類で比較解剖学を創る−センザンコウとマメジカ−」
  • 川本芳(京都大学・霊長類研究所)「フィールド調査における遺伝学的試料収集の方法−バングラデシュにおける事例」
  • 樽創(神奈川県立生命の星・地球博物館)「ニホンザルとタイワンザルの四肢骨形態」
  • 後藤俊二(日本野生動物研究所)「東南アジア各国での霊長類に関する現地調査より−獣医学的調査およびサンプリングから」
  • 栗田博之(大分市教育委員会)「ラオス霊長類の分布と生息実態(短報)」
  • Suchinda Malaivijitnond (Dept. Biol., Fac. Sci., Chulalongkorn Univ., Thailand)「チュラロンコーン大学自然史博物館とDNA data-baseについて」
  • Liora Kolska Horwitz(Dept. Evol. Syst. Ecol., The Hebrew Univ., Israel)“Regional variation in cranial biometry and pathology of wild boar in Israel: A pilot study.”
  • 本郷一美(京都大学・霊長類研究所)「タイ南部におけるマニ(オラン・アスリ)の霊長類狩猟」
  • 林田明子(帯広畜産大学・家畜解剖)「リス科におけるクラ地峡の生物地理学的影響」

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現地調査と現物資料に基づく研究,そして標本の恒久的収蔵を根幹とした継承性科学手法を,霊長類研究所は重視している.今日的な説明責任を満たす合理的対処として,定量化業績や短期的スクラップアンドビルドがとくに重要視される昨今,換言すれば,こうした現地調査と資料・データの継承性に根ざすマテリアルエビデンスの成果は,生物学界では不幸にして軽視されるようになっているといえるだろう.本研究集会は,長年にわたり,アジア・アフリカ圏で現地調査と標本蓄積に基づく研究体制を築いてきたメンバーによる,これまでの成果の集積と今後の展望を議論・思慮する場として,提案されたものである.

霊長類研究所を軸とした哺乳類の多様性研究がアジア・アフリカ地域に印した足跡を,収集されるデータと研究体制における人のつながりの中に見ることができる.我々は,タイ,マレーシア,インドネシア,ベトナム,ラオス,ミャンマー,バングラデシュ,インド,トルコ,ケニア,マダガスカルなどに継続的に調査体制を敷いてきている.たとえば,東南アジアにおけるマカカ類を中心とした形態進化学的研究,遺伝学的手法による解析,そして行動学的・生態学的調査によって,同地域の霊長類の多様性が認識・検証されてきた.一方,同地帯では,偶蹄類,食虫類,リス類,センザンコウ類などの多様な手法による研究が,日本側のイニシアティブによって進められてきた.これらの研究は,同時に該当国の人材を育て,研究組織の長期的基盤構築に貢献することとなっている.昨今隆盛の巨大プロジェクトによる短期的な投資よりも,人材育成を重視した長期的施策の方が,途上国調査の成果としては,意義深い学術体系を生み出すことが明らかである.たとえばタイ・チュラロンコン大学,タイ・国立科学技術研究所,ベトナム・生物多様性研究所,インドネシア・ボゴール動物学博物館,マダガスカル・アンタナナリボ大学などにおいて,地道な人的交流を重視した結果,これら地域の生物多様性研究に欠かせない,フィールドを熟知した人間と標本作製・収蔵施設を継続して育てることに成功している.また,トルコやタイでは発掘調査や現存野生動物集団の解析により,考古学的なアプローチを多角化してきた.霊長類研究所は,こうした活動の中心的役割を担ってきたことが明確といえる.

研究理念・手法としてのマテリアルエビデンスを重視することは,今日の予算体系や税執行策と照らし合わせれば,必然的にさまざまな困難を伴う.しかし,これを継続せずして,調査地域の国や地域社会と融合した,継承性あるフィールド研究の発展はない.本集会は,今後も多岐にわたる研究計画を発案し,アジア・アフリカ地域の野生動物・霊長類・哺乳類の多様性の検討を継続する重要性を,確認することとなった.

(文責:遠藤秀紀)

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野生霊長類の保全生物学
  • 日時:2006年3月10日(金)〜3月11日(土)
  • 場所:京都大学霊長類研究所大会議室
  • 参加人数:約40人
  • 世話人:室山泰之,川本芳,毛利俊雄,杉浦秀樹
  • <プログラム>
  • 3月10日(金)
  • 座長:室山泰之(京都大・霊長類研究所)
  • 辻大和(東京大・農学生命科学研究科)「食物供給の年次変動が競合を介してサルの個体群動態に及ぼす影響」
  • 清野紘典(野生動物保護管理事務所関西分室)「仙台市西部に生息する野生ニホンザルの個体群動態と分派・分裂」
  • 鈴木克哉(京都大・霊長類研究所)「GISを用いた野生ニホンザル加害群の生息地利用評価」
  • 中村民彦「東北地方の厩猿信仰における残留形態とその口承」
  • 討論
  • 3月11日(土)
  • 座長:杉浦秀樹(京都大・霊長類研究所)
  • 川本芳(京都大・霊長類研究所)「ミトコンドリアDNA変異からみたニホンザルの地域性」
  • 赤座久明(富山県立雄峰高等学校)「北アルプス周辺地域におけるニホンザル地域個体群の分布特性とミトコンドリアDNA変異」
  • 森光由樹(野生動物保護管理事務所)「北関東に生息するニホンザルのミトコンドリアDNAの特徴」

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  • 座長:川本芳(京都大・霊長類研究所)
  • 早石周平(京都大・理・動物)「屋久島のニホンザルのミトコンドリアDNAにおける等質性と遺伝的変異の島内分布」
  • 萩原光(NPO房総自然博物館)「房総半島のおけるニホンザルと外来種に関する研究と現状」
  • 討論
  • コメンテーター:岩崎亘典,三戸幸久,高木直樹

現在,保全生物学ではこれまでの成果を整理しつつ,新たな理論的枠組みや方法論が生み出され,検証されようとしている.本計画研究「野生霊長類の保全生物学」はこうした認識に基づいて,霊長類にかかわる諸研究を推進することを目的として実施された.

平成17年度が最終年度であるため,これまでの研究成果をとりまとめるための共同利用研究会を開催した.1日目は,金華山に生息する野生群および人為的環境を利用する野生群の個体群動態,GISを用いたニホンザル集団の生息地利用の分析,および東北地方の厩猿信仰などの話題で発表があった.一見保全生物学に直接かかわらない話題もあったが,個体群管理や過去の分布復元について重要な示唆を与えるものとして評価された.また,GISの分析に関しては,コメンテーターからは,景観をスケールとする分析例が紹介され,ニホンザルの生息地管理を推進する上で重要な技術の一つであることが強調された.2日目は,日本全国のミトコンドリアDNA分布の分析結果が詳細に報告され,引き続いて各地の地域個体群を対象とした遺伝学的研究の発表が行なわれた.ミトコンドリアDNAについては,標識の基準化が行なわれるとともに,各地域でのミトコンドリアDNAの地域分化や遺伝的多様性,個体群分化の特徴が明らかになり,ニホンザル分布の歴史的変遷について興味深い議論が行なわれた.これらの知見は,現段階ではニホンザルの保全・管理に直接的に寄与するまでにはいたっていないが,将来的には遺伝学的な情報を反映したニホンザルの個体群管理を実施する基盤が整ったと考えられた.また,外来種問題について房総のアカゲザルの現状が紹介された.

参加者は約40名とそれほど多くなかったが,それぞれの課題について活発な議論が行なわれた.

(文責:室山泰之)

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動物園の生物学 3:動物園の役割を科学する
  • 日時:2006年3月15日(水)〜16日(木)
  • 場所:名古屋市東山動物園動物会館
  • 参加者:約130名
  • 世話人:上野吉一,友永雅己,鈴木樹理,遠藤秀紀
  • <プログラム>
  • 3月15日(水)
  • 1:憩い場
  • 神田幸司(名古屋港水族館)「シャチのパフォーマンスは何を見せるのか:ショーかトレーニングか」
  • 坂東元(旭山動物園)「憩いの場の提供:行動展示の効果」
  • 五百部裕(椙山女学園)「観客は動物園になにを求めるか:滞在時間からのスケッチ」
  • 2:教育の場
  • 並木美砂子(千葉動物園)「動物園で何が学べるか」
  • 竹ノ下祐二(日本モンキーセンター)「動物園と学校:先生とどう連携するか」
  • 大丸秀士(安佐動物園)「体験から学びへ」

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  • 3月16日(木)
  • 3:研究の場
  • 中道正之(大阪大)「動物園での発達科学」
  • 遠藤秀紀(京都大・霊長研)「動物園での遺体科学」
  • 上野吉一(京都大・霊長研)「動物園での認知・行動学」
  • 4:保全の場
  • 池田啓(兵庫県立大学)「保全の場としての動物園:動物園から生息地へ」
  • 森角興起(横浜市繁殖センター)「動物園における保全事業の現状と将来」
  • 楠比呂志(神戸大学)「冷凍動物園の将来」
  • 総合討論
  • 共催:名古屋市東山動物園
  • 協賛:市民ZOOネットワーク

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これまで研究会「動物園の生物学」を,2002年に共同利用研究会として,2003年には名古屋港水族館との共催として開催してきた.それぞれ「研究」,「教育」という観点から,動物園を検討をおこなった.これら2つに「憩い」,保全」を加えた,一般に指摘されている動物園の4つの役割は,相補的に関わり合っている.そこで今回は原点に立ち返り,これら4つの役割を具体的な事例をもとに,個別に吟味すると同時に,他の役割との関りを検討した.近隣のみならず全国から広く参加者があった.その内訳は,研究者および動物園関係者,学生,一般市民がそれぞれほぼ3分の1ずつとなった.非常に活発な議論が多様な立場から進められ,有意義な研究会だったと思われる.目的としていた動物園の社会的意義とそれを実現するための問題点を客観的/科学的に整理し,動物福祉への配慮や公共施設としての責務を注視した機能向上を模索するということは,必ずしも達成できたとは言えないが,今変わりつつある動物園を見直すきっかけとしては十分役立つことができたと考えられる.また,研究者と動物園との関係を深めるという点においても有効だったと捉えたい.

(文責:上野吉一)

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第35回ホミニゼーション研究会「霊長類野外研究の将来」
  • 日時:2006年3月17日(金)〜18日(土)
  • 場所:犬山国際観光センター「フロイデ」2階多目的研修室
  • 参加人数:約200人
  • 世話人:渡邊邦夫,M.A.Huffman,高井正成
  • <プログラム>
  • 3月17日(金)
  • 渡邊邦夫(京都大・霊長研)「趣旨説明:野生ニホンザル長期継続観察の経緯と今後」
  • 杉浦秀樹(京都大・霊長研)「屋久島におけるニホンザル個体群のモニタリング」
  • 室山泰之(京都大・霊長研)「里のサルの保全と管理:基礎から応用まで」
  • 中村美知夫(京都大・理学研究科)「不惑のマハレ−古いフィールドからの新たな発想」
  • 山越言(京都大・アジアアフリカ地域研究研究科)「聖なるものを手なずけること:ギニア・ボッソウにおけるチンパンジー研究の現状と将来」
  • 竹ノ下祐二(日本モンキーセンター)「アフリカ大型類人猿の種間関係の野外研究」
  • 岩本俊孝(宮崎大・教育文化学部)「ヒヒ類の適応進化に関する野外研究」
  • 香田啓貴(京都大・霊長研)「インドネシアにおける野生テナガザル調査へのとりくみ-テナガザル音声の多様性の解明に向けて」
  • 平井啓久(京都大・霊長研)「アジルテナガザルの亜種分化と染色体」
  • 3月18日
  • 國松豊(京都大・霊長研)「ナカリ:東アフリカ中新世後期の化石産地における最近の野外調査」
  • 高井正成(京都大・霊長研)「マカクの進化:ユーラシアの西と東」
  • 姉崎智子(群馬県立博物館)・本郷一美(京都大・霊長研)「日本の遺跡から出土するニホンザル化石」
  • 川本芳(京都大・霊長研)「遺伝子から見たニホンザルの地域分化」
  • 討論者:山極寿一, 中川尚史(京都大学理学研究科),鈴木滋(龍谷大学)

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最近になって共同利用研究課題の応募数が減少している.その傾向は長年霊長研を支えてきた生態学研究の分野において特に目立っている.そのような危機感をもとに,野外研究の現状をとらえなおし,今後への展望を切り開いていこうという目的でもって,今回のホミニゼーション研究会は企画された.

最初の一日は,主として生態や社会・行動に関する国内外の野外調査についての議論であった.まず幸島をはじめとする長期継続研究の行方(渡邊),屋久島における野生群のモニタリング(杉浦),近年の野生ニホンザルによる猿害問題への取り組み(室山)などニホンザル研究についての発表の後,すでに40年になろうとするマハレでのチンパンジー研究(中村),同じくボッソウにおける研究の特殊性(山越),ゴリラとチンパンジ−が同所的に生息するアフリカ熱帯雨林における研究(竹ノ下)など,これまで日本の研究者が取り組んできた多様な研究内容と,現在模索している研究の方向性とが話し合われた.いずれのフィールドもさまざまな政治的社会的問題をかかえており,また研究を推進する側にも長期継続からくる閉塞感があって,それから脱皮すべくもがいている様がよくわかる発表が多かった.さらにアフリカ北部からサウジアラビアにかけてのヒヒ類調査のまとめ(岩本),最近はじまったアジアにおけるテナガザルの音声調査(香田),テナガザルにおける染色体変異と種分化の研究(平井)などが紹介され,また翌日行われた各種遺伝的マーカーによるニホンザル種内変異の研究(川本)とあわせ,新たなフィールドワークの展開がこうした分野の中からも起こってきていることが明らかになった.

二日目は,主として古生物学的な野外調査についての話題が中心であり,最近アフリカで発掘された中新世後期の類人猿化石をめぐる話題(國松),ユーラシア大陸に広く分布していたと思われるマカク類の進化史に関する概説(高井),日本国内から発掘されたニホンザル化石に関するまとめ(姉崎・本郷)が発表された.それぞれに最新の知見を基にしたものであり,この分野の最近の著しい進展ぶりがうかがえるものであった.

野外研究の今後の展望を見いだすという意味では,まだまだ不十分な点が多かったと思われるが,いずれにせよ参加者の中に問題意識を共有し,今後への一つのステップを刻むことはできたものと考えている.

研究会終了後13:30から4階フロイデホールにおいて,本年をもって定年を迎えられた霊長類研究所の茂原・森・大澤三先生の最終講義が行われ,その後,和やかに懇親会が行われた.三先生による最終講義のタイトルは以下のとおりである.

  • <最終講義>
  • 大澤秀行(京都大・霊長研・社会生態部門)「アフリカの原野にサルをたずねて」
  • 森明雄(京都大・霊長研・社会生態部門)「幸島に生息するニホンザルの社会生態学的研究」
  • 茂原信生(京都大・霊長類研・系統進化部門)「私の霊長類研究」

(文責:渡邊邦夫)

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会