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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2006年度 − III 研究活動 器官調節分野

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.37 2006年度の活動

III 研究活動

分子生理研究部門

器官調節分野

林基治(教授),大石高生(助教授)

清水慶子(助手),國枝匠(技術補佐員)

託見健,檜垣小百合(大学院生)

<研究概要>
A) 霊長類脳内生理活性物質?分布特性と発生・発達・加齢

林基治, 託見健, 檜垣小百合, 清水慶子

1) 脳老化に伴うソマトスタチン神経細胞の変化を,免疫組織化学法によりニホンザルを用いて調べた.その結果,昨年老人斑を観察した29才メスの前頭連合野において,凝集したソマトスタチン陽性神経繊維の変性像を観察した.従ってソマトスタチン神経細胞の変性と老人斑形成には,何らかの関係があるものと考えられる.

2) 霊長類に近縁のツパイの海馬体について,脳由来神経栄養因子(BDNF)とその受容体(TrkB)の免疫活性構造を調べた.その結果,成熟期(1才4ヶ月)では,歯状回の顆粒細胞と,CA3,CA2,CA1,海馬台における錐体細胞の細胞体と樹状突起に,TrkBの免疫活性を観察した.一方,BDNFは細胞体に少なく,樹状突起や軸索に多く観察された.6才6ヶ月の老齢ツパイにおいては,TrkBとBDNF共に免疫活性の顕著な減少が観察され,ツパイで両分子が脳老化と密接に関連があることが確認された.

3) マカクサル視床下部におけるGnRHニューロンへの興奮性シナプス入力の発達変化を明らかにするため,GnRHニューロンへのグルタミン酸作動性入力を免疫組織化学法を用いて解析した.その結果,従来考えられていたよりはるかに多くの興奮性シナプスが,GnRHニューロンに入力していることが明らかになった.

4) マカクサルの閉経にともなう内分泌変化と脳の解剖学的変化を解析するため,老齢個体の経時採血と脳組織の採取をおこなった.免疫組織化学法により海馬や嗅内野のエストロゲン受容体ERα・βやBDNF等の陽性構造を比較したところ,老齢個体でERβの高い発現が見られた.


B) 大脳基底核におけるプロテインキナーゼC基質の遺伝子の発現の研究

大石高生, 林基治

プロテインキナーゼCは脳の神経伝達に重要な役割を果たす酵素である.脳内での発現が知られている代表的な基質はGAP-43,MARCKS,ニューログラニンで,いずれも細胞骨格の調節に関わっている.これら三種のプロテインキナーゼC基質の遺伝子発現を成体及び生後発達期のマカクの大脳皮質運動関連領野で調べた.MARCKSとニューログラニンの遺伝子はII-VI層のいずれでも強い発現が見られたが,GAP-43遺伝子は成体ではV, VI層でのみ強い発現が見られた.いずれの遺伝子も錐体細胞で発現していたが,GAP-43とニューログラニンの遺伝子は下行線維の起始細胞である大型錐体細胞よりも周辺のより小型の錐体細胞での発現が強かった.いずれの遺伝子発現も生後減少したが,GAP-43遺伝子発現は生後発達期に一過性の上昇があった.


C) リハビリテーションの脳内機構に関する基礎研究

大石高生, 林基治

中枢神経系に損傷を負った場合には,損傷の部位と程度に応じて機能が損なわれる.しかし,適切なリハビリテーションを施せば,機能はある程度回復する.この現象の脳内メカニズムを明らかにするため,大脳皮質運動野の限局的損傷による指の麻痺の回復過程を定量的に解析した.精密把握の訓練を行った個体では,損傷部の大きさによって時間は異なったが,訓練後1,2ヶ月で運動機能の回復が見られた.示指端と拇指端を用いる正常な精密把握が回復するまでには,示指端と拇指の近位部を用いた代替的な把握が数種類観察された.代替的把握を行っている時期には,餌を取る成功率は上昇と一時的下降を繰り返した.これに対し訓練を行わなかった個体では,把握の回復自体が遅く,代替的把握は見られたが,精密把握は出現しなかった.精密把握の回復には訓練が必須である.精密把握に関わる脳部位を決定する研究にも着手した.

D) MRIを用いた脳画像データーベース作成

大石高生

ニホンザルは神経科学における重要な研究対象であるが,大脳皮質を記載した脳アトラスが出版されていない.我々は非侵襲的手法であるMRIを用いて,装置やソフトウエアの開発を行いつつ,ニホンザルの大脳を含んだ電子的脳アトラスを作成中である.今年度は,2003-5年に生まれた計六頭を一ヶ月おきに,2001年に生まれた二頭を三ヶ月おきに産業技術総合研究所で撮影し,データを蓄積した.ソフトウエアをウェブアプリケーション化し,インタフェース,表示法を大幅に改善した.

E) 霊長類の生殖リズムの発現に関する研究

清水慶子, 託見健, 桧垣小百合, 林基治

1)「霊長類の成長に伴う性腺系の変化および季節繁殖リズムの発現機構」

視床下部?下垂体?性腺系に着目し,各種霊長類の胎生期から性成熟までと閉経期以降の血中生殖関連ホルモン動態を調べた.本年度はレプチンと季節繁殖や性成熟との関連について,さらに性差,種差について精査した.その結果,末梢血中レプチン動態には性差,季節差および年齢差があることが分かった.さらに,マカカ属サルの中でカニクイザルとニホンザルとで差があることが分かった.また,レプチンの局在を免疫組織化学的に調べたところ,マカクザルの脂肪組織にレプチン免疫陽性細胞が多くみられた.

2)「尿・糞を用いたホルモン動態測定」

これまでに開発した尿・糞中プロゲステロン,エストロゲン,テストステロン,コルチゾールおよび尿中ゴナドトロピンの測定法により,マカクおよびチンパンジーのホルモン動態を調べた.その結果,尿・糞中ホルモン動態は血中のそれと良く相関し,本法は野生霊長類や大型類人猿のホルモン測定法として有用であることが分かった.本年は餌付け群ニホンザルおよび類人猿を用い,ストレスと糞および尿中コルチゾール量の関連を調べた.その結果,ストレス負荷により尿中・糞中コルチゾール量が増加することが明らかとなった.

3)「マカクザルの性腺機能調節における成長因子の役割」

成長ホルモンの内因性分泌促進物質として単離・同定されたグレリンの分泌動態とその分泌源について,免疫組織化学法および real-time PCR法を用いて調べた.また,視床下部GHRH産生neuronと比較検討した.グレリン産生細胞は視床下部には存在せず,末梢中グレリンの主な分泌源は胃体部であること,グレリンの一次構造はGHRHと同様に種差があることが明らかになった.本年はこれに加え,ニホンザルの末梢血中グレリン量を測定し,成長と正の相関が認められることを明らかにした.

F) 霊長類の脳の形態的および機能的性分化の特性

清水慶子, 託見健, 桧垣小百合, 林基治

様々なステージの妊娠マカクザルに性ステロイドホルモンを投与し,その後に生まれた新生児の脳および性腺の形態的変化を調べた.本年はマカクザルの脳におけるステロイドホルモンレセプターの局在を免疫組織化学法により調べ,さらに血中内分泌動態と合わせ,マカクザルマカクザルの性分化の特性を検討した.これらのサルとは別に,同様の方法により生まれた子ザルの母子間行動について調べたところ,性ステロイドホルモン投与ザルから生まれた子ザルは対照群のコザルと比較して,明らかに異なる行動を示した.


G) 内分泌撹乱物質と生殖生理

清水慶子, 託見健, 桧垣小百合, 林基治

内分泌攪乱物質の一種である植物エストロゲンが,成熟期および胎児期のマカクザルの視床下部?下垂体?性腺系にどのような影響を及ぼすかについて,内分泌学的,組織学的,分子生理学的に検討している.

<研究業績>
原著論文 

1) Barrett, GM., Bardi, M., Zavala Guill?n, A K., Mori ,A., Shimizu, K. (2006) Regulation of sexual behaviour in male macaques by sex steroid modulation of the serotonergic system. Experimental Physiology 91: 445-456.

2) Higo, N., Oishi, T., Yamashita, A., Murata, Y., Matsuda, K., Hayashi, M. (2006) Nrothern blot and in situ hybridization analyses for the neurogranin mRNA in the developing monkey cerebral cortex. Brain Research 1078(1): 35-48.

3) Higo, N., Oishi, T., Yamashita, A., Murata, Y., Matsuda, K., Hayashi, M. (2006) Expression of protein kinase C-substrate mRNAs in the basal ganglia of adult and infant macaque monkeys. Journal of Comparative Neurology 499(4): 662-676.

4) Mori, T., Takumi, K., Shimizu, K., Oishi, T., Hayashi, M. (2006) Heterogenity of the developmental patterns of neurotrophin protein levels among neocortical areas of macaque monkeys. Experimental Brain Research 171: 129-138.

5) Muroyama, Y., Shimizu, K., Sugiura, H. (2007) Seasonal variation in fecal testosterone levels in free-ranging Japanese Macaques. American Journal of Primatology 69: 1-8.

6) Nagano, M., Saito, F., Haneda, E., Konishi, S., Hayashi, M., Suzuki, H. (2006) Distribution and pharmacological characterization of primate NK-1 and NK-3 tachykinin receptors in the central nervous system of the rhesus monkey. British Journal of Pharmacology 147: 316-323.

7) Ohira, K., Homma, K.J., Hirai, H., Nakamura, S., Hayashi, M. (2006) TrkB-T1 regulates the RhoA signaling and actin cytoskeleton in glioma cells. Biochemical and Biophysical Research Communications 342: 867-874.

8) Ohira, K., Funatsu, N., Homma, K.J., Sahara, Y., Hayashi, M., Kaneko, T., Nakamura, S. (2007) Truncated TrkB-T1 regulates the morphology of neocortex layer I astrocytes in adult rat brain slices. European Journal of Neuroscience 25: 406-416.

9) Tohno, S.,Tohno, Y., Azuma, C., Moriwake, Y., Satoh, H., Minami, T., Mahakkanukrauch, P., Ohishi, T., Hayashi, M. (2006) Decreased of calcium and phosphorus in monkey cardiac walls with development and aging. Biological Trace Element Research 110: 233-249.

その他雑誌 

1) 大石高生 (2006) AFTERNOON TEA. 日本生理学雑誌 68(4): 135-137.

翻訳 

1) 泰羅雅登, 中村克樹, 大石高生, 山下晶子, 倉岡康治, 村田哲, 筒井健一郎,

泉明宏, 大木紫, 野瀬出, 丸山昌一, 石橋英俊, 永福智志, 齋藤慈子, 花沢明俊

, 臼井信男, 佐伯恵里奈, 功刀浩, 中村徳子 訳 (2006) カールソン神経科学テキス

ト 原書8版―脳と行動―. (Carlson, N. 著, Physiology of Behavior, 8th Edition)

pp.721, 丸善株式会社, 東京.

2) 大石高生, 久保田競 訳 (2006) 記憶と情動の脳科学. (McGaugh, J. 著,

Memory and Emotion: The Making of Lasting Memories ) pp.281, ブルーバックス,

講談社, 東京.

学会発表等 

1) Higo, N., Oishi, T., Yamashita, A., Murata, Y., Matsuda, K., Hayashi, M. (2006) Expression of protein kinase substrate (GAP-43, MARCKS and neurogranin) mRNAs in the monkey motor cortex. 第36回北米神経科学会 (Oct. 2006, アトランタ, 米国) Society for Neuroscience Abstract 34: 682.21.

2) Iida, M., Matsuda, K., Higo, N., Oishi, T., Yamane, S. (2006) MRI脳画像データベースの構築. 第21回生体・生理工学シンポジウム (2006年11月, 鹿児島) 第21回生体・生理工学シンポジウム論文集.

3) Murata, Y., Higo, N., Oishi, T., Yamashita, A., Matsuda, K., Hayashi, M. (2006) The motor training provids better improvements in finger dexterity after primary motor cortex damage in adult monkey. 第36回北米神経科学学会 (Oct. 2006, アトランタ, 米国) Society for Neuroscience Abstract 34: 560.18.

4) 林基治, 伊藤麻理子, 清水慶子, 託見健, 山下晶子, 泰羅雅登 (2006) 老齢ニホンザル脳内アミロイドタンパク質(Aβ40)の免疫陽性構造. 第22回日本霊長類学会大会 (2006年7月, 大阪) 霊長類研究22(Spplement): S-10.

5) 肥後範行, 村田弓, 大石高生, 山下晶子, 松田圭司, 林基治 (2006) 第一次運動野損傷後の巧緻運動の回復とその基盤となる神経回路再構築. 第29回日本神経科学大会 (2006年7月, 京都) Neuroscience Research 55(Supple): S15.

6) 飯田麻恵子, 松田圭司, 肥後範行, 大石高生, 山根茂 (2006) MRI脳画像データベースの構築 . 第21回生体・生理工学シンポジウム (2006年9月, 鹿児島) 第21回生体・生理工学シンポジウム論文集.

7) 村田弓, 肥後範行, 大石高生, 山下晶子, 松田圭司, 林基治 (2006) サル第一次運動野損傷後の訓練による精密把握運動の回復. 第29回日本神経科学大会 (2006年7月, 京都) Neuroscience Researh 55(Supple 1): S258.

8) 村田弓, 肥後範行, 大石高生, 山下晶子, 松田圭司, 林基治 (2006) 第一次運動野指領域の損傷後でも精密把握の回復は可能である-成体サルを用いて-. (2006年6月, 京都) 日本作業療法学会抄録集 40(1): 67.

9) 大平耕司, 本間光一, 平井啓久, 中村俊, 林基治 (2006) ラットグリオーマ細胞においてTrkB-T1はRhoAシグナリング経路とアクチン細胞骨格を制御する. 第29回日本神経科学大会 (2006年7月, 京都) Neuroscience Researh 55(Supple 1): S177.

10) 大石高生, 肥後範行, 村田弓, 山下晶子, 西村幸男, 松田圭司, 林基治, 関和彦, 伊佐正 (2006) サル頸髄側索破壊後の運動関連領野と脊髄のGAP-43発現の増加. 第29回日本神経科学大会 (2006年7月, 京都) Neuroscience Research 55(Supple): S125.

11) 清水慶子, 伊藤麻理子, 児嶋ちひろ, 渡辺元, 林基治 (2006) ニホンザルの妊娠中および出産後の血中レプチン動態ー胎盤は大量のレプチンを分泌しているー. 第22回日本霊長類学会大会 (2006年7月, 大阪) Primate Research 22(Supplement): S-30.

12) 清水慶子, 伊藤麻里子, 託見健, 林基治, 奈良和幸, 片上秀喜 (2006) マカクザルの発達・加齢にともなう血中グレリンおよびその抑制・促進因子の変化. 第79回 日本内分泌学会学術総会 (2006年5月, 神戸) Folia Endocrinologica Japonica Vol.28(No.1): 181.

13) 清水慶子, 伊藤麻里子, 託見健, 渡辺元, 林基治, 田谷一善 (2006) マカクザル血中レプチン動態の比較. 第99回 日本繁殖生物学会 (2006年9月, 名古屋) The Journal of Reproduction and Development Vol.52: 97.

14) 清水慶子, 伊藤麻里子, 託見健 (2006) 霊長類の脳の形態的および機能的性分化の特性. 特定領域研究「性分化機構の解明」第3回領域会議 (2006年9月, 淡路島).

15) 託見健, 森琢磨, 伊藤麻理子, 清水慶子, 日置寛之, 林基治 (2006) アカゲザルGNRHニューロンへのグルタミン酸作動生,GABA作動生入力の定量解析. 第29回日本神経科学大会 (2006年7月, 京都) Neuroscience Researh 55(Supple 1): S160.

16) 山下晶子, 大石高生, 林基治 (2006) 霊長類大脳皮質各領野のGABA細胞サブグループの特徴. 第29回日本神経科学大会 (2006年7月, 京都) Neuroscience Research 55(Supple): S148.

  講演 

1) 林基治 (2006) 霊長類脳の発達と加齢―神経栄養因子を中心に―. 金沢工業

大学情報システム研究所公開セミナー (2006年12月, 金沢).

2) 大石高生 (2007) サル運動皮質局所損傷後の機能回復. 第5回京都脳機能研

究会 (2007年2月, 京都).

3) 清水慶子 (2006) 動物から見た「ヒトとの共生」 . 第5回犬山シンポジウム (2006

年10月, 犬山 国際観光センター).

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