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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2006年度 > III 研究活動 日本人研究員・研修員

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.37 2006年度の活動

III 研究活動

4. 日本人研究員・研修員

日本学術振興会特別研究員(PD)
打越万喜子

受入教員:松沢哲郎

研究題目:思春期テナガザルの異性の歌に対する感受性−感覚性強化の認知実

験−

受入期間:2005年4月1日〜2008年3月31日

川合(久保)南海子

受入教員:正高信男

研究題目:加齢にともなう表象の操作能力の変化と脳機能に関する実験的研究

受入期間:2005年4月1日〜2008年3月31日

受託研究員
和田晃

受入教員:中村伸

研究題目:サルモデルでのバイオメディカル研究

受入期間:2006年5月11日〜2007年3月31日

研究生
須田直子

受入教員:上野吉一

研究題目:飼育下霊長類の福祉向上のための基礎研究

受入期間:2006年4月1日〜2007年3月31日

三浦優生

受入教員:松井智子

研究題目:幼児の言語発達が及ぼす心の理論能力への影響についての実験的研


受入期間:2006年4月1日〜2007年3月31日

内山リナ

受入教員:正高信男

研究題目:霊長類の音声非線形解析,学童期のメタ言語獲得

受入期間:2006年5月1日〜2007年3月31日

非常勤研究員
天野(早野)あづさ

研究課題:テナガザル類の種分化・亜種分化に関する分子遺伝学的解析

所属分野:遺伝子情報分野

研究期間:2006年4月1日〜2006年10月31日

  

竹元博幸

研究課題:放飼場飼育ニホンザルによる樹皮食選択と植物化学成分の相関関係

の解析

所属分野:附属人類進化モデル研究センター

研究期間:2006年4月1日〜2007年3月31日

樹木植生のある放飼場の環境維持のために,サルによる樹木への直接的な被害や

,糞の堆積・樹木更新の問題等について,長期的な影響を考慮して調査,作業を

おこなった.

霊長類研究所の第4放飼場および第5放飼場において,マーキングされた樹木を定期的に追跡調査し,その後の樹皮食の程度の変化や枯死の状況を把握した.サルの葉食や樹皮食の影響の他,風倒木やマツクイムシによる高木の枯死も少なくはなく,全体的に放飼場の植生構造の多様性が低下していると考えられた.サルの樹皮食の選択性は,17年度の調査結果と変化がなく,サカキやネジキ,カナメモチに対する採食選択性が高かった.特に放飼場の主要な樹種であるヒサカキとサカキについては,選択性が大きく異なる(ヒサカキ樹皮の採食選択性が低い)が,近縁の種でもあり,樹皮の物理的な性状が大きく異なることはない.現在,植物化学的分析のために定期的に樹皮を採取しており,今後分析する予定である.

また,平成16年度から17年度にかけて行った放飼場の温度環境についての調査結果の解析を行った.放飼場では,林冠(高さ3m前後)と地上部(1.3m)に,WBGT値(気温,放射温度,湿度,風速の影響を考慮した暑熱環境温度)で平均2.6度の差があった.しかし人工的な立体構築物の最上部(5m)と地上部(1.3m)ではその差は約0.7度であった.樹冠や立体構築物の最上部で日光浴を行っているサルの個体数はWBGTと負の相関を示した.つまり環境の温度が高いとき,多くの個体は地上部の気温が低いところで休息し,逆に環境温度が低い日は,立体構築物や樹冠部で日光浴していたことになる.樹木植生がある方が放飼場内の温度環境は多様になり,ニホンザルは(休息時)有効に微環境を選択し,体温調節のコストを低減していると考えられた.

樹木植生や人工的な構築物などを導入することは多くの霊長類飼育施設で行われているが,飼育動物に対する具体的な機能が調べられた例はほとんどなく,今後も生態学的,動物社会学的な手法・考え方を用いて追求していく必要があると思う.

江木直子

研究課題:鮮新世シベリア産出のコロブスの系統学的位置と古生態

所属分野:系統発生分野

研究期間:2006年4月1日〜2006年12月15日

Parapresbytis eohanumanは,中期鮮新世の化石コロブス類である.標本としては,シベリアのバイカル湖南東にある2つの化石産地から,上下顎,頭蓋破片,肘部の骨が知られている.本研究では,Parapresbytisの肘部の骨(上腕骨遠位部と不完全な尺骨)の形態を,現生コロブス亜科やヨーロッパ産化石コロブス類と比較し,そこから示唆されるParapresbytisの系統学的位置や運動行動について考察を行った.

形態比較は,上腕骨で18,尺骨から13の箇所をノギスを使って計測し,計測値を主成分分析にかけることによって行った.Parapresbytisの標本はロシア科学アカデミーの標本から得たキャスト,その他のものについては,アメリカ合衆国国立自然史博物館と日本モンキーセンター所蔵の現生コロブス標本,フランス国立自然史博物館とモンペリエー大学所蔵の化石コロブス標本を用いた.

Parapresbytisの大きさとしては,上腕骨の標本の個体はSemnopithecusやNasalisのオスよりやや大きい程度だが,尺骨の標本の個体はどの現生コロブス類より大きく,オスのチャクマヒヒに匹敵する.上腕骨遠位部や尺骨の形態については,Semnopithecusやヨーロッパ産化石種であるDolichopithecusとMesopithecusという地上性を示唆されてきたコロブス類のものは,樹上性のコロブス類のものから区別できる.Parapresbytisの形態は,樹上性コロブス類の形態変異内に入る.

Parapresbytisの系統的な位置については,地上性に特殊化したDolichopithecusと近縁であるとされる場合もあるが,肘部の形態はむしろ樹上性コロブス類に近縁であることを示唆した.ただし,現生のほとんどのコロブス類が樹上性型の肘形態を持つため,肘部の形態にもとづいてParapresbytisがどの樹上性コロブス類に特に近いかを評価することはできない.肘部の形態からは,Parapresbytisが現生の樹上性コロブス類と同程度に,樹上性行動に適応していたことが示唆された.共伴哺乳類化石には森林性のものが含まれていて,中期始新世のバイカル湖地域には森林があったことが示唆された.したがって,Parapresbytisが樹上性であるということは,この地域の古環境とも一致している.

纐纈大輔

研究課題:LGN-V1フィードバック経路の機能の解明

所属分野:行動発現分野

研究期間:2006年4月1日〜2007年3月31日

特定の神経連絡経路のみを破壊することはこれまで不可能と考えられており,サルでそうした手法を試した研究はなされてこなかった.そこで本研究ではレーザーを用いることで,ある投射関係にあるニューロンのみを選択的に破壊できるこれまでにない画期的な手法の確立を試みた.また本研究では視覚が発達しており,脳解剖学的にもヒトに近く,更に視覚課題の訓練に適したサルを用いて,第1次視覚野(V1)から外側膝状体(LGN)へ逆行性投射しているニューロンの選択的破壊を行った.この逆行性の投射は解剖学的には良く知られているが,その生理学的な意義は未だに解明さていない.更にはLGNに入力する最も多くの神経線維は網膜からではなくV1からのものであり,このV1からLGNへの逆行性経路がLGNの機能に大きな役割を担っていると考えられる.

実験方法としては,まずLGNにクロリンが結合した逆行性輸送物質のビーズ(クロリン+ビーズ)を注入する.このクロリン+ビーズは細胞内逆行性輸送によりLGNに投射するV1からの逆行性経路を含む全てのニューロンの細胞体へと運ばれる.そして2週間後,同様にしてV1に近赤外波長のレーザーを照射する.するとクロリンが活性化しニューロン内に一重項酸素がつくられる.一重項酸素は活性酸素の一種であり,ある一定濃度以上細胞内で発生するとアポトーシスを誘導する.つまりこの方法によりV1でクロリンを細胞体内にもつニューロンのみに細胞死を起こすことが出来る.以上のようにしてV1からLGNへ逆行性投射しているニューロンのみの選択的破壊を試みた.

この手法の第1のステップとしてLGNに確実にビーズ+クロリンを注入する必要がある.そこで注入用注射針に細胞活動記録用の金属電極を装着したものを作製した.これにより光応答を記録することでLGNの位置を同定し,その位置にビーズ+クロリンを注入することが可能となった.また実験終了後に脳組織切片を作製し,蛍光顕微鏡でビーズの分布を観察してビーズ+クロリンがLGN内に注入されていることを確認した.更にV1の組織切片を観察した結果,ビーズ+クロリンがV1の第6層のニューロンだけに分布していた.V1からLGNへ逆行性に投射しているのはV1の第6層のニューロンであることが解剖学的に知られていることから,ビーズ+クロリンが適切にニューロンの軸索内を逆行性輸送されたことが確認できた.そしてV1へのレーザー照射後にビーズとは別の逆行性輸送物質であるWGA-HRPをLGNに注入することで,逆行性投射ニューロンが破壊できたのか確認を行った.選択的破壊が適切に誘導されたならば,そのニューロンは消失しておりWGA-HRPで標識されないはずである.WGA-HRPで標識されたV1第6層のニューロンを2頭のサルで定量的に解析したところ,レーザー照射部位では照射していない部位に比べて標識されたニューロンの数が約70%であった.

今回の研究からビーズ+クロリンとレーザーを用いた投射選択的神経細胞破壊法によって約30%の逆行性投射ニューロンを選択的破壊できることが分かった.逆行性投射ニューロンの破壊によって起こると予想される行動レベルでの変化を見るためには細胞死誘導効率を更に上げる必要があるかもしれない.その場合にはビーズのサイズや電荷を変えることでニューロン内の逆行性輸送効率を改良することが考えられる.しかし30%の破壊でも細胞レベルでの変化は起こると思われるので,V1の細胞活動記録を行うことでV1からLGNへの逆行性投射ニューロンの機能を明らかにしていきたい.

清水大輔

研究課題:霊長類におけるエナメル室の微細構造と食性の関連

所属分野:形態進化分野

研究期間:2006年4月1日〜2007年3月31日

一般に,より「硬い」食物を食べる動物は,効率的に食物を咀嚼し,かつ歯のダメージを少なくするために,より「頑丈な」歯を持つ必要がある.従来,厚いエナメル質を持つ歯がすなわち「頑丈な」歯であるというイメージがあった.そのためより厚いエナメル質を持つ動物はより「硬い」食物を食べ,より薄いエナメル質を持つ動物はより「やわらかい」食物を食べているという推量がよくなされてきた.エナメル質は生体内でもっとも硬度が高い物質であるが,骨や象牙質に比べてもろく壊れやすい.つまりエナメル質が厚いということは一本の歯に占めるもろく壊れやすい物質の割合が増えるということであり,単純に厚いエナメル質を持つ歯が壊れにくいということにはならない.エナメル質内のたんぱく質の量が増えれば脆性は低くなるが硬度も低くなるため,エナメル質は壊れにくくなるが咬耗しやすくなる.物質の成分および外形を変えずに脆性を低く,硬度を高くすることは,その物質の微細構造を変えることで実現できる.エナメル質は発生時に形成されるエナメルプリズムと呼ばれる柱状の物質の集合体である.一般的に咬合力が大きい動物のほうが複雑なエナメルプリズムの構造を持っていることが知られている.そこで,ヒト上科の5属(i.e. Homo sapiens, Pan troglodytes, Gorilla sp., Pongo pygmaeus, Hylobates sp.)とオナガザル上科の2属(i.e. Colobus sp., Papio sp.),化石人類1属2種(i.e. Australopithecus anamensis, Australopithecus africanus)についてエナメルプリズムの構造を3次元的に解析した.更にエナメルプリズムの構造の違いがエナメル質の硬さに及ぼす影響について有限要素法を用いて解析し,エナメルプリズムの構造と咬合力との関連を考察した.

現生霊長類でも一般的に咬合力の大きい動物のほうがエナメルプリズムの構造は複雑であるという傾向が見られた.化石人類では,Australopithecus anamensisのほうがAustralopithecus africanusより複雑なエナメルプリズムの構造を持つ.さらに,A. anamensis はGorilla に,A. africanus はPanに似たエナメルプリズムの構造を持つ.エナメル質の硬さ解析に用いた動物はエナメルプリズムの構造解析に用いたもののうちHomo sapiens, Pan troglodytes, Gorilla sp., Australopithecus anamensis, Australopithecus africanusである.それぞれの種でエナメル質の物性値を統一し(エナメルプリズムを形成するアパタイトの結晶構造を考慮し異方性材料とした),エナメルプリズムの構造のみが異なるモデルを作成した.結果,一本のエナメルプリズムが描くサインカーブの周期が短い(より複雑な)種i.e. Homo sapiens, Australopithecus anamensis, Gorilla sp.の方が周期の長い種に比べ硬い(変形しにくい)傾向が見られた.つまり,エナメル質に含まれるタンパク質の量や,エナメルプリズムを構成するアパタイトの結晶構造が同じでも,エナメルプリズムの構造の違いにより,エナメル質の硬さ(変形しにくさ)に大きく影響することが示された.また,Australopithecus anamensisはAustralopithecus africanusに比べ咬合力をより多く必要とする食性(繊維質の多い食性)に依存していたのではないかと考えられる.

藤田志歩

研究課題:野生ニホンザルにおける交尾戦略の多様性

所属分野:社会構造分野

研究期間:2006年4月1日〜2006年5月31日

ヒトを含めた多くの霊長類では,生殖に結びつかない交尾行動がみられる.すなわち,メスの排卵周辺期以外にも交尾をすることが知られている.このような行動の究極要因として,父性を攪乱する,受胎の確率を高める,精子競争によってより優秀なオスの遺伝子を得る,オス?メス間の社会的結合を強くするといった諸説が挙げられている.しかしながら,メスの生理状態と行動との関連や,行動の詳細についての実証的研究は,とくに野生個体を対象としたものは少ない.本研究は,野生ニホンザルの交尾戦略を明らかにするため,メスの交尾行動が卵巣周期に伴ってどのように変化するのかについて調べた.特に,交尾行動の発現パタンの年による違いから,食物の豊凶といった生態学的要因や性比といった社会的要因がメスの交尾戦略にどのような影響を及ぼすのかについて調べた.

調査は,宮城県金華山島において,1997年9月27日から12月12日まで,および1999年9月30日から12月20日まで行った.いずれの年も当歳子をもたないオトナメス6頭を対象とした.各対象メスについて1日おきに糞を採集するとともに,個体追跡法によって交尾頻度,交尾相手および交尾にまつわるオス?メス間の社会交渉を記録した.採集した糞からEIA法を用いてE1C および PdG 濃度を測定し,推定排卵日と受胎の有無について調べた.対象とした群れ(金華山A群)は39頭(1997年)および31頭(1999年)で構成され,発情メスの数と交尾可能なオス(群れ内オトナオスおよび群れに追随する群れ外オトナオス)の数の比は,それぞれの年で1:0.9および1:2.2 であった.

1997年は対象メス全頭が発情し,ホルモン動態からこれらのメスの排卵が確認された.一方,1999年は6頭中3頭が発情し,排卵が確認された.いずれの年も交尾頻度は卵巣周期に伴って変化し,全てのメスにおいて排卵周辺期で最大となった.交尾相手となったオスの数は,1997年では排卵周辺期で最も多かったが,1999年では排卵日の7?2日前の間(前排卵期後期)に最も多かった.また,排卵周辺期では,どのメスも群れの最優位オスとは1回も交尾が見られなかった.以上の結果から,メスの交尾行動は生理状態によってある程度制約されていることが確かめられた.また,オスの順位はメスの配偶者選択において有利には働かず,むしろ最優位オスは配偶者として選ばれていないことがわかった.さらに,発情メスの数が少なかった1999年は,特定のオスによる交尾の独占のために,排卵周辺期に交尾相手のオスの数が少ない傾向があり,メスあるいはオスの交尾戦略は性比によって異なることが示唆された.

村井勅裕

研究課題:Odd-nose Langrusの比較研究

所属分野:附属ニホンザル野外観察施設

研究期間:2006年11月1日〜2007年3月31日

猿害に対する学生の意識

猿害に関して学生はどのような意識を持っているのかについて予備的な調査を行った.岐阜にある大学生(43名)に対してアンケートを行った.アンケートは,1.野生のニホンザルを見たことがあるか2.猿害という言葉を聞いたことがあるか3.猿害に興味があるか4.猿害にあったのを実際に見たことがあるか5.この先,サルと人間との関わりをどのようにしていったらいいと思うか6.猿害を起こすサルを駆除することをどう思うか7.猿害を起こすのは人とサルどちらに主な原因があると思うか8.猿害対策をどのように進めていくべきだと思うか9.猿害対策では誰が考えていくべきだと思うか10.猿害の被害は誰が負担するべきだと思うかの10項目に対して行った.

結果は,約半数の人が野生ニホンザルを見た,猿害を聞いたことがある,猿害に興味があると答えた.猿害を実際に見たことがある人はほとんどいなかった.また,この先は,人とサルの境界線をはっきりと区別していくが最も多く,次いで境界線をあいまいに残す,農業をあきらめるがそれに続いた.サルの駆除に関しては,仕方がないが半数を占め,次いで他の方法を取るべきと続き,やめるべき,断固反対というのは少なかった.猿害は人間の側・サルと人間の両方に原因があると応えた人が半数弱を占め,サルが原因と応えた人はいなかった.猿害対策は被害にあっている方を中心に考えていくべきだという意見が半数を占め,サルを中心に考えるというのとその他が残りを分け合った.猿害対策は国・国民・研究者が考えていくべきと考えている人が多かった.猿害の被害は国が負担すべきであると考える人がほとんどを占めた.

アンケートの結果,学生の半数ぐらいは猿害を知っていて,興味を持っていることがわかった.今後は,猿害に関する授業を行い,広く猿害の実態を知ってもらい,授業の前後で,学生の意識がどのように変化していくかを研究していきたいと考えている.

テングザルの吐き戻し行動

 東南アジアのボルネオ島にのみ生息するテングザルNasalis larvatusは,コロブス亜科に属する.コロブス亜科は嚢状に大きく発達した前胃を有し,その内部にはセルロース分解菌などの微生物が棲息し,その分解作用により,本来消化できない高繊維質の食物から栄養を得ることができ,さらに植物に含まれる有害な消化阻害物質などを無毒化できる.コロブス亜科の前胃の構造と機能は,反芻動物の反芻胃と類似した点が多いが,摂食物を胃から口腔内へ吐き戻して再咀嚼する反芻行動は,コロブス亜科において今まで報告がなかった.しかし今回テングザルにおいて吐き戻し及び再咀嚼するのを観察した.そこで本研究ではテングザルの吐き戻し行動の概要と食性との関連について調査し,コロブス亜科における吐き戻し行動の発生要因と意義について考察した.

本研究では,2000年1月から2001年3月までの期間にボルネオ島(マレーシア・サバ州)キナバタンガン川支流流域で,テングザルの行動を撮影したビデオを用いて,個体・食性・吐き戻し行動に関するデータを収集し解析を行った.

テングザルの吐き戻し行動は,計195時間の撮影時間において23例と極めて低い頻度で観察された.吐き戻し行動は,新生児を除く全ての齢段階の個体で見られ,全て午前中の休息時に行われていた.午前に吐き戻しを行う理由として,胃内容物によって採食量が制限されるのを防ぐために採食前に胃内容物の通過を促すことが推測された.

テングザルの採食時間は葉・果実・花の採食が大部分を占めたが,各部位採食時間の割合は月ごとに異なった.吐き戻し行動の観察頻度は,葉の採食時間との間に有意な正の相関を示した.そのため,採食において葉への依存が高いときに吐き戻しが起こりやすくなる,つまり繊維質の高い食物を摂食すると吐き戻しが誘発されやすいと考えられる.

松原幹

研究課題:霊長類における分子生態学的研究と保全遺伝学的応用

所属分野:生態機構分野

研究期間:2006年11月1日〜2007年3月31日

本年度は霊長研で飼育されるニホンザルのMHC遺伝子多型の塩基配列解析を行った.霊長研の繁殖コロニーの由来は,嵐山,若桜,高浜,小豆島の4地域で,定期健康診断時に採血を行い,PCR法でMHC-DRB遺伝子の増幅を行い,DGGE法でアリル分離後,ダイターミネーター法で塩基配列の解読を行った.

コンゴ民主共和国カフジ・ビエガ国立公園の野生ヒガシローランドゴリラとチンパンジーの遊動と森林植生の関連をGISを用いて解析し,ヒトによる国立公園の伐採地域の森林植生と類人猿の利用植生の比較を行った.

その他には,霊長研で飼育されるニホンザルの飼育管理データベースの作成を行った.鹿児島県屋久島西部の海岸林に生息する野生ニホンザルの社会生態学的調査を行った.

研修員
早川祥子

研修題目:DNAによる野生ニホンザル社会構造の再構

     築

受入教員:Michael A. Huffman

研修期間:2006年4月1日〜2007年3月31日

座馬耕一郎

研修題目:霊長類の社会生態

受入教員:Michael A. Huffman

研修期間:2006年4月1日〜2006年8月31日

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