ENGLISH トップ 所長挨拶 概要 教員一覧 研究分野・施設 共同利用・共同研究 大型プロジェクト 国際集会 教育,入試 広報,公開行事,年報 新着論文,出版 教員,職員公募 国際共同事業 霊長類研究基金 リンク アクセス HANDBOOK FOR INTERNATIONAL RESEARCHERS Map of Inuyama サイトマップ
トピックス
コラム・連載 質疑応答コーナー ボノボ チンパンジー「アイ」 頭蓋骨画像データベース 霊長類学文献データベース サル類の飼育管理及び使用に関する指針 Study material catalogue/database 野生霊長類研究ガイドライン 霊長類ゲノムデータベース 写真アーカイヴ ビデオアーカイヴ

京都大学霊長類研究所
郵便番号484-8506
愛知県犬山市官林
TEL. 0568-63-0567(大代表)
FAX. 0568-63-0085

本ホーム・ページの内容の
無断転写を禁止します。
Copyright (c)
Primate Research Institute,
Kyoto University All rights reserved.


お問い合わせ

京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2006年度 > X 共同利用研究・研究成果−自由研究 11〜20

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.37 2006年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 自由研究 11〜20

11 霊長類の非侵襲的性腺機能調節法の開発

渡辺元, Hataitip Trisomboon(東京農工大・獣医生理), Sukanya Jaroenporn(岐阜大学・院・連獣), 野田志穂,山本ゆき(東京農工大・獣医生理)

対応者:清水慶子

個体数が増加したニホンザルが農業被害を起こしたり,タイワンザルなどの移入種が野生化するなどの問題を解決するため,内分泌学的手法を改良し,霊長類の生殖腺機能を非侵襲的に調節する方法を開発することを目的して研究を行った.本年度はまず,使用する薬物の効果を評価するために,雄精巣細胞の培養系確立を試みた.

性成熟に達した雄のボンネットモンキーから外科手術により精巣を採取した.白膜を除去後,精巣組織を細切したのち,コラゲナーゼを含む37℃に保温した培養液中で消化した.分離してきた細胞を96穴の培養プレートにて培養した.この中には生殖細胞,セルトリ細胞,ライデイッヒ細胞が含まれている.2日間培養後,培養液を交換し,更に種々の量のヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)を添加した.培養終了後培養液を回収し,得られた培養液中のテストステロン濃度をラジオイムノアッセイ法にて測定した.培養した細胞の組成を免疫組織学的に確認するために,培養した細胞は固定して保存した.

培養液中に放出されたテストステロン量は,添加したhCG0.02IU/ml, 0.2IU/mlでは増加しなかったが,2IU/ml添加により有意に増加した.

今後はこの培養系を用いて薬物を結合したhCGを作用させたときに起こる変化を,内分泌学的および免疫組織学的に解析する予定である.

12 多摩動物公園におけるオランウータン舎改修にともなうストレスの評価

山崎彩夏(東京農工大・院・比較心理)

対応者:上野吉一

糞中コルチゾル濃度の測定は,飼育動物の管理におけるストレス評価の非侵襲的方法として動物福祉の観点からその有用性は高いと考えられる.本研究では,多摩動物公園(東京都日野市)において飼育されるボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)3個体を対象とした.これらについて,2005年3月より,新設された飼育施設へ移動後における行動変容に関し継続的な観察をおこなってきた.立体的でより複雑な刺激が存在する多様な新飼育環境への導入が飼育下オランウータンに与える影響を,行動の時間配分や行動レパートリーの変化といった行動学的指標に加え,より多角的に評価することを目的とし,生理学的指標について検討した.今回は,生理学的指標としてELISA法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay:酵素免疫測定法)を用い,施設移動前後に採取した糞検体中におけるコルチゾル濃度の測定方法の確立を目指した基礎的検討をおこなった.この結果,オランウータンの糞検体中に含まれるコルチゾルを検出可能な濃度にまで抽出し,回収する方法が確立できた.今後は,採取した糞検体の分析を進め,ストレスホルモンであるコルチゾル濃度の変動の詳細を分析し,新施設移動によるストレスの影響を明らかにする予定である.

13 ニホンザル喉頭軟骨のCTスキャナーによる観察

木村順平(日本大・生物資源)

対応者:遠藤秀紀

哺乳類の発声器官の形態学的研究の一貫として,咽喉頭の形態についての非破壊的観察の可能性についてCTスキャナーを用いて検討を行った.

京都大学霊長類研究所所蔵のニホンザル全身ホルマリン固定標本他を用いて,東芝社製マルチスライス(16列)医用X線CT装置(Aquilion16)により全身の撮影を行った(スライス厚0.5mm).得られた連続断面画像をAZE社製三次元画像解析装置(AZE Virtual Place Smart)により三次元再構築し,咽喉頭部の観察を行った.下顎枝により包囲された咽喉頭部は,画像処理で下顎骨を除去する事により可視化が実現できる.咽喉頭部の形態は喉頭軟骨および気管軟骨が微弱ながらCT値を有することにより,ある程度観察が可能であるが,基本的構成軟骨(喉頭蓋軟骨,甲状軟骨,輪状軟骨,披裂軟骨)の区別は困難であった.舌骨装置と咽喉頭部の位置関係は理解できた.

今後,ヒト医学領域におけるCT撮影技術等も参考に,軟骨撮影方法および画像解析の改善により,さらに明瞭に咽喉頭部の描写ができると思われる.また,MRIとの併用も効果的と考えられる.

14 白神山地における猿害の社会的位置づけとその展望

江成広斗(東京農工大・連合農学)

対応者:渡邊邦夫

白神山地において,近年顕在化する猿害に対する対策は各地で実施されている一方,その多くは場当たり的な対症療法である.こうした背景には,地域の農業や社会の衰退があり,人とニホンザル(以下サル)との持続可能な共存の姿(問題解決の目標像)を見出すことが出来ていないことにある.本研究は,当地域の適切なサル保護管理政策を検討するために必要とされる地域社会(特に農業)の現状・展望を聞き取り調査から明らかにすることを目的に実施された.その結果,農業の現状は,1)2005年の農地法改正を機に,大規模農業への展開を図る日本海側の町村と,2)零細農業を継続する内陸側の町村の2つに類型化された.農地の大規模化は農業利益の改善に繋がり,経済的被害許容水準の向上に貢献している.一方,ここ数年の雪害は,各地の零細農業(特に果樹園)における離農を推し進め,結果として被害農家の減少に繋がっている.こうした現況は当地域における猿害問題の沈静化へと繋がる可能性があるが,無秩序に進行する縮小社会と農地拡大は,計画的なサル保護管理政策を検討する上で無視できない要素であり,今後もその動向を把握する必要がある.

15 心臓自律神経支配に関する比較形態学的解析

川島友和(東京女子医科大・解剖)

対応者:國松豊

私は,これまでの2年間の本研究所共同利用研究を利用して,一部の原猿類から類人猿まで広く解剖を行ってきた.その中で,順次ある程度個体数が集まったマカクザルやヒトを対象とした心臓自律神経支配に関して報告を行ってきた.

最終的に,霊長類における心臓自律神経系の進化形態を明らかにしたいと考えている.そこで,今年度は例数が不足しているコロブスの中からアンゴラコロブス(Colous angolensis)と,アジルテナガザル (Hylobates agilis)の解剖を行った.

その結果,アンゴラコロブスに特徴的な所見が観察されたもののその基本的構造は,他の旧世界ザルと共通の特徴を有していた.また,アジルテナガザルの形態は,他のテナガザルの形態に類似し,旧世界ザルやヒトのそれとは大きく異なっていた.

今後もさらなる種の解析や比較によって霊長類における心臓自律神経系の形態学的特徴やその進化的変化が明らかになるであろう.

16 霊長類毛色遺伝子の多様性と変異解析

山本博章, 築地長治,上原重之(東北大・院・生命科学)

対応者:川本芳

脊椎動物色素細胞は,その多様な機能から生物集団の生存戦略に深く関わってきたものと推察される.本研究は,毛色や皮膚色発現に深く関わる遺伝子群を野生霊長類からクローニングし,各個体のアレル解析を行うことを目的とした.まず最初にコモンマーモセット皮膚から,Dkk1,Eda,Hsp6,MitfのcDNA断片をクローニングし,次にニホンザルからチロシナーゼおよびMitfのcDNA断片をクローニング出来た.しかしこれらは断片であったため,一次構造解析と表現型の対応が進んでいるマウスのアレル情報等と比較するには,全長の配列を明らかにする必要があった.多種の関連遺伝子について解析を行う計画であるので,RACE法は次善の策とし,cDNAの両端にPCR用のプライマー配列を付加すべく,凍結保存試料,また新たに採取した皮膚試料からトータルRNAを再度調製した.常法に従って充分量のmRNAを調製するには,小分けした各皮膚片由来のトータルRNAでは不十分で,これらを集めて処理する必要があった.ようやくプライマー付加ができるところまで来た.我々にとって本計画は大変重要であるので,利用させていただいた試料をもとに今後とも解析を続けたい.

17 霊長類における排卵の制御機構に関する研究

束村博子, 川原万季,山田俊児(名古屋大・院・生命農)

対応者:鈴木樹理

メタスチン/GPR54系は,近年生殖機能の制御において中心的は役割を持つことで注目されている.本研究では,ニホンザルのLH分泌機構の解明を目的とし,ニホンザルにおけるメタスチンニューロンの脳内分布及び性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンとの関係を免疫組織化学的手法により検討した.

無処置又は卵巣除去手術を施した成熟雌のニホンザルの前顎断切片を,抗ヒトメタスチン抗体を用いて免疫組織化学により染色し,メタスチンニューロンの脳内分布を観察した.さらに抗GnRH抗体を用いてGnRHニューロンとの二重染色を行い,メタスチンとGnRHとの関係を観察した.

卵巣除去動物の視床下部弓状核(ARC)前方において特異的にメタスチン免疫陽性細胞体および繊維が観察された.また正中隆起(ME)においてメタスチン免疫陽性繊維が観察された.無処置動物のARC前方においてGnRH免疫陽性細胞体の近傍にメタスチン免疫陽性繊維が観察された.MEにおいても,GnRH免疫陽性繊維の近傍にメタスチン陽性繊維が観察された.以上の事からニホンザルにおいてもラットと同様に,メタスチンニューロンはARCに局在し,GnRHニューロンの細胞体及び終末の近傍に投射していることが示唆され,メタスチンがGnRHニューロンに直接作用することにより,性腺機能を亢進する可能性が示唆された.

18 野生ニホンザル・オスグループと群れオスの社会交渉に関する研究

宇野壮春(宮城のサル調査会)

対応者:杉浦秀樹

金華山島では2〜10数頭のオスグループが頻繁に観察される.そしてこれまでの調査から,オスグループを離脱して利用地域を重複させた群れのオスになった個体が2頭確認された.本研究では,その群れオスとオスグループがその後も社会交渉(グルーミングとオス同士のマウンティング)を行っているかどうか,交渉頻度に季節的なものはあるのかを調査した.その結果,4月(非交尾期)に行った10日間の調査ではごく普通に両者の社会交渉が観察されたが,8月(非交尾期),10月(交尾期)の同様の調査では一度も観察されなかった.このことから,群れオスになった個体はオスグループとの関係をきっぱりと絶っているわけでなく,以前よりは低頻度ではあるが,身体的接触を伴う社会交渉を通して,親和的な関係を持続させていることが明らかになった.ただし,非交尾期と交尾期でその差がどの程度あるのかは明らかにならなかった.

金華山で頻繁に観察されるオスグループは群れの中でも特に群れオスとの関係を保つことによって,特定の群れとの関係を維持させていることが示唆される.

19 反応コストや強化遅延がニホンザルの価値判断に及ぼす効果について

柴崎全弘(名古屋大・院・情報科学)

対応者:正高信男

報酬を手に入れるのにかかる反応コストの違いが,得られる報酬の信号刺激(図形)に対する選好に影響するかどうかについて,3頭のニホンザルを対象に検討した.実験はタッチパネルモニター付きのオペラントボックスで行なった.低コスト条件ではモニター上に呈示されるボタンを1回押すと,2つの図形刺激(S FR1+ S FR1−)が呈示された.また高コスト条件ではボタンを20回押すと,異なる2つの図形刺激(S FR20+ と S FR20−)が呈示された.図形にはあらかじめ選好に差がないことが確認されたものを使用した.どちらの条件でもS+を選択すると,報酬としてイモまたはピーナッツが与えられた.S+を正しく選択できるようになった後,SFR1+S FR20+(正解図形同士),またはSFR1−SFR20−(不正解図形同士)を非強化プローブで呈示したところ,3頭とも低コスト条件で呈示されていたSFR1を有意に選好した.

この結果は,ボタンを20回押すことによる疲労感がSFR20と連合して嫌悪され,ボタンを1回押すとすぐに呈示されたSFR1は相対的に選好されたと解釈できる.しかし,ハトを被験体とした先行研究では低コスト条件の刺激よりも高コスト条件の刺激のほうが選好されており,別の解釈がなされている.また今回の実験から,高コスト後の刺激が好まれるか,低コスト後の刺激が好まれるかには,被験体の動因レベルが関係している可能性が示唆された.

20 繁殖に関わる嗅覚情報の利用

齋藤慈子(国立精神・神経センター), 林由佳子(京都大・農)

対応者:清水慶子

これまでの鋤鼻器に関する形態・遺伝学的研究などから,類人猿ならびに旧世界ザルでは,繁殖に関する嗅覚刺激情報の利用が限定されていると推測されてきた.しかし近年の形態・行動学的研究結果から,その通念の再考が迫られている.本研究では,旧世界ザル,大型類人猿を対象として,繁殖に関するにおい物質の分析,嗅覚情報についての行動実験をおこない,繁殖に関わる嗅覚情報の有用性について検討することを目的とした.

昨年度採取したチンパンジーメスの性器周辺部のにおいを,ガスクロマトグラフィーにより分析した.その結果,物質まで特定はできていないが,3種類の物質において,排卵期と黄体期で分泌量が異なることが示唆された.また,カニクイザルを対象にペアリング実験をおこない,メスの性周期によりオスの行動が変化するか,また性周期の判別に嗅覚情報が利用されているか否かを検討した.昨年度のニホンザルを対象とした同様の分析では,卵胞期においてスニフィング,マウンティングの回数が大きくばらつく傾向がみられたが,今回分析をおこなったカニクイザルでは,性周期によるオスの行動の違いはみられなかった.

今後は,種内および種間での行動の違いが,におい成分分析の結果,および尿中ホルモンの値によって説明できるか否かを検討していきたいと考えている.

↑このページの先頭に戻る

このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会