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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2007年度 > X 共同利用研究・研究成果−計画研究1

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.38 2007年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 

(1) 計画研究
1-1 哺乳類にみられる歯の形態的多様性と個体変異

本川雅治 (京都大・総合博), 浅原正和 (京都大・院・理)

 霊長類研究所収蔵の霊長類, 食肉類, 食虫類, および有袋類の歯列および歯のマクロ形態を, 種レベル, さらに個体レベルで観察・比較した. 個体レベルでは, 計量的形質のほか, 欠失歯や過剰歯, 形態異常, 非計量的形質である附加咬頭の出現頻度などについても検討した.歯の欠失・過剰は, 岐阜県産のタヌキに関して高頻度で認められた. 過去に1例のみ報告のある下顎第3臼歯後方の過剰歯が4例観察されたほか, 下顎第3臼歯の欠失や上下顎の第2前臼歯の欠失が多数観察された. タヌキにおける歯数の変異と, 形態計測値の個体間比較から,前臼歯歯槽部の相対的短縮が前臼歯の欠失の原因因子であることが示唆された. また, 臼歯の磨耗に顕著な個体変異があることや, 咬合に使用する咬頭に個体変異が見られることが推測された. 咬み合わせや, 歯列形態,臼歯咬頭の配置について, 幾何学的形態測定法を用いた比較解析のためのデータを取得し, 解析を進めている. 今後は実験的手法を導入し, 観察された変異の機能的側面を明らかにし, 咀嚼を通じた個体と外界の相互関係の検討につなげていく予定である.

1-2 ニホンザルの下顎形態の地理的変異とその要因

天野雅男 (帝京科学大)

 下顎は食性を反映して変異を生じやすいといわれているが, その測定の困難さから詳細な研究がされてこなかった. そこで本研究では幾何学的計測法を用いて下顎形態における地理的変異を検討し, 頭骨形態でのこれまでの報告との比較を行った. 霊長類研究所所蔵のニホンザル下顎226標本に加え, 他各地の博物館などに保管されている14地域 (宮城, 金華山, 日光, 長野, 山梨, 静岡, 房総, 白山, 福井, 小豆島, 島根, 高崎山, 幸島, 屋久島) 産の野生個体425標本を使用した. 下顎骨の左側面と背側面の写真を撮影し, 幾何学的計測法により相対歪み解析を行い, 形状を表す主成分得点に対して多変量分散分析と判別分析を行なった. その結果, 地域間に有意な差が存在することが明らかになった. 特に房総, 金華山, 屋久島, 白山の標本はその他の地域から顕著な形態的分化を示した. これらのうち, 白山以外は頭蓋変異あるいは血液タンパク質多型の研究でも示されており, いずれも現在あるいは過去の隔離を反映したものと考えられる. 白山の形態の特殊性は今後その要因を検討する必要がある. 温暖な屋久島, 房総はともに顎が長く, 下顎枝は咬筋の発達が示唆される形態であった. また, 寒冷な白山や金華山の標本は, 顎の幅が狭く, 側頭筋の発達が示唆される形態をしていた. これらの変異の要因については, 現在または過去の食性と生物地理学的な要因の両面から検討していく必要がある.

1-3 各種霊長目における四肢運動機構および咀嚼機構の機能形態学的解析 

大石元治, 浅利昌男 (麻布大・獣医)

 チンパンジー (ナックル歩行・地上性) とオランウータン (懸垂運動・アジア型) の解剖学的特徴を理解することで, 類人猿の移動様式を裏付ける身体の構造と機能の解明に努めてきた. しかし, 骨格系に比べて, 両者の筋肉に関する定量的な研究は多くはない. そこで, 今回はオランウータン (1個体) の左上肢における筋形状を把握するため, 筋の起始・終止や走行, 筋重量と筋束長の計測を行った. さらにこれらの計測値から生理学的断面積PCSA (筋重量 ÷[筋密度×筋束長]) を求めた.総筋重量, 総PCSAに対する各筋の比率をそれぞれについて計算し, チンパンジーの文献データ (2個体) と比較してみると, 上腕部においてオランウータンの肘関節の屈筋の筋重量比, PCSA比が大きな値を示した. 前腕部では, 筋重量比では大きな違いは認められなかったが, PCSA比においてオランウータンの手根伸筋と指伸筋が大きく, 逆に指屈筋は小さい値を示した. 今後類人猿を解剖する機会があれば, 標本数を増やし, 今回認められた差異が, ロコモーションの差異を反映しているかを検討していきたい.

1-4 完新世ニホンザルとニホンイノシシの骨形態学的研究

姉崎智子 (群馬県立自然史博物館)

 ニホンザルについては, 神奈川県横浜市中区No.2遺跡出土の縄文時代前期末葉〜縄文時代中期初頭の資料を分析した. 19点の下顎骨の内, 第3大臼歯の萠出異常の個体を1体確認した.

 イノシシについては, 16県よりすでに得られている約500点の資料に加え, 奄美大島, 沖縄本島, 西表島, 石垣島, 波照間島のイノシシ頭骨標本250点の計測・分析を実施した. また, 神奈川県については, 現生イノシシ20体と縄文時代の遺跡出土資料を追加分析した. その結果, (1) イノシシの大きさは, 本州, 九州, 琉球列島の順に小さくなることが確認された, (2) 神奈川県では地域集団によって頭骨形状に相違が認められ, 特に伊豆集団は他集団と異なる傾向が認められた, (3) 神奈川県の東部と西部に位置する縄文時代前期から中期初頭の遺跡から出土したイノシシの大きさを比較すると, 臼歯サイズに顕著な差異が認められ, 県東部のほうが大きいことが明らかとなった.

1-5 霊長類四肢の樹上適応に関する3次元立体画像解析

佐々木基樹 (帯広畜産大・畜産)

 霊長類は, 様々な生活環境下において地上性, 半地上性, または樹上性生活をしている. 本研究では, CTスキャナーを用いて霊長類の趾, 特に第一趾の可動域を非破壊的に観察した. 今回の研究には, チンパンジー, ニホンザル, そしてオランウータンの後肢を用いた. 各趾を伸展させた状態と屈曲させた状態でCT撮影をおこない, 得られた断層画像データを三次元立体構築して解析に用いた. 第一趾の屈曲に伴う第一中足骨の内転が3種の霊長類全てに確認されたが, オランウータンではその可動域が最も大きく, 次いでニホンザル, チンパンジーの順であった. しかし, ニホンザルでは第一中足骨と第二中足骨の間隔が3種の中で最も小さくなっていた. このニホンザルに認められた形態学的特徴は, ニホンザルが体の大きさに合った細い枝をより確実に把握し樹上で活発に活動するために適応進化させてきたのかもしれない. また, オランウータンはその大きな体型にも関わらず, 熱帯雨林の樹上で主に生活することから, 後肢の把握機構を顕著に発達させ, また体重を支えることの出来る太い木の枝を把握するために第一中足骨が第二中足骨に対して90度近く開くと考えられる. また, チンパンジーでは第一中足骨は足の背腹平面で内転しており, 上下斜め方向に可動面を持つ他の2種の可動様式とは異なっていた. これはチンパンジーの地上性適応の一つであると考えられる.

1-6 錐体筋・腹直筋支配神経の比較解剖学的検討

時田幸之輔 (埼玉医科大・短期大学・理学療法学科)

 錐体筋支配神経の観察を行う前段階として, 今年度はカニクイザル腰神経叢の個々の神経について起始, 経路, 分布の特徴を調査した. L1: 腹壁に進入し外側皮枝 (Rcl) を分枝した後, 側腹壁の内腹斜筋 (Oi) と腹横筋 (Ta) の間 (第2-3層間) を走行し, 腹直筋鞘に入る. 腹直筋の後面から筋枝を与えた後, この筋を貫いて前皮枝(Rca)を分枝する. L2: 上幹と下幹に分岐する. 上幹はRclを分枝し, 側腹壁の第2-3層間を走行し, 腹直筋鞘に入り, Rcaとなる. 下幹はRclを分枝し, 側腹壁の第2-3層間を走行し, OiとTaへの筋枝となる. L3: L4への交通枝を分枝した後, 大腰筋の内側を貫き, 大腰筋と小腰筋の間を通り, 大腰筋の表面を下行する. 深鼠径輪の外側で鼠径靱帯を貫き, 大腿内側に分布する皮枝となる (#1). L4: L3からの交通枝を受けた後, 主枝, 大腿神経に参加する枝, 閉鎖神経に参加する枝の3枝に分岐する. 主枝は大腰筋を貫いて現れ, 腸骨筋の表面を下行する. 上前腸骨棘の内側で鼠径靱帯を貫き, 大腿外側に分布する皮枝となる (#2). 3体5側の腰神経叢について比較を行ったところ, 大腿に分布する皮枝 (#1, #2)については, 個体差が多く, その皮枝の起始分節により, 経路, 分布が変化することが示唆された. 今後は今回の結果を基に錐体筋・腹直筋支配神経の起始分節, 経路, 分布について調査を行っていきたい.

1-7 ニホンザル歯牙の幾何学的形態計測学を用いた形態学的研究

藤田正勝 (奈良文化財研究所)

 霊長研に保管されているMacaca fuscata, M. fasccularis, M. mulatta (合計300個体) の下顎第1〜3大臼歯の咬合面をデジタル写真撮影したが, これはM. fuscataの地域的な差を見るために房総半島, 長野, 島根産の雌雄が含まれる. 分析では, 遺跡などからもっとも出土頻度が高く, これら3種の判別が難しいとされる下顎第1臼歯を最初に扱うことにした. 幾何学的形態計測学的分析を行うための有効な標識点群を探し出すことを目標にした.統計的分析では, それぞれの産地ごとのプロクラステス合意配置を求め, 最終的にはプロクラステス合意配置における多変量解析の累積寄与率90%以上の主成分を用いて, Chord法によるクラスター分析を行うことを目標とした.

 M. fascicularisM. fuscataM. mulattaから顕著に判別できる標識点を発見できたが, これではM. fuscataの地域差や雌雄差からM. mulattaを判別することができないことがわかった. このことから有効な標識点によって, 種差だけでなくM. fuscataの地域差が判別できる可能性がでてきた.

1-8 霊長類の網膜黄斑に特異的に発現する遺伝子群の同定

古川貴久, 井上達也 ( (財) 大阪バイオサイエンス研究所)

 ヒトを含めた霊長類の網膜は中心部に黄斑という特徴的な構造をもつ. 黄斑部では, 視細胞の中でも錐体細胞が高密度に存在し, これにより黄斑構造を持つ生物は良好な視力が得られる. 実際, 近年日本を含む先進国で増加傾向にある加齢性黄斑変性症などの黄斑疾患は,重篤な視力低下や失明の原因となっている. これまで,黄斑発生の分子メカニズムついての報告はほとんどみられない. われわれは, 黄斑発生に関わる遺伝子群の同定を目的として, 周産期のアカゲザルの網膜を黄斑部と周辺部に分けて採取し, それぞれの総RNAについてマイクロアレイを用いて遺伝子発現を比較した. 現在のところ, 30遺伝子のうち9遺伝子については少なくとも黄斑部の視細胞層に高い発現を認めた. これらのうち, 我々はSREBP2 (sterol regulatory element binding protein 2) に着目している. SREBP2は脂質代謝に関わる遺伝子群の発現を広範に制御することが知られる転写因子であり, in situハイブリダイゼーションによってマウス網膜においても発生期視細胞に発現を認める. 現在SREBP2のDNA結合ドメインであるbHLH-ZIPドメインにEngrailedのリプレッサードメインを融合したドミナントネガティブ変異体を作製し, これを網膜視細胞で強制発現するトランスジェニックマウスを作製し解析中である.

1-9 高次連合野成熟過程における連合野特異的遺伝子(Rbp4) の発現変化の解析

小松勇介, 山森哲雄 (基礎生物学研究所)

 レチノイドは, レチノール (ビタミンAアルコール)やレチノイン酸 (ビタミンA酸)などを含む. レチノールは生体内で抗酸化作用があるだけでなく, 酸化されてレチノイン酸となり, 数多くの遺伝子発現制御に関わり, 個体発生・発達において, 重要な役割を果たしている. 我々は成体マカクザルの連合野で高い発現を示すレチノール結合蛋白質 (RBP4) が新生仔の前頭前野 (高次連合野) において第5層の発現が未成熟であり, 領野差の発現様式は生後発生で形成されることを以前に報告した. このことは生後における連合野の発達にはレチノイド代謝制御が要求される可能性を示唆する. そこで現在, 他のレチノイド代謝関連分子も含め, 生後の発現様式変化を解析中であるが, いくつかの遺伝子でRBP4と同様に新生仔では第5層の発現様式が未成熟なものが見つかってきた. 皮質第5層は皮質下神経核へ投射する神経細胞が存在しているので, 今後これらレチノイド代謝関連遺伝子群の発現変化と, 皮質だけではなく連合野の生後発生に関与する神経核での解剖学的変化などとの関連性を調べることを考えている.

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