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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2007年度 > X 共同利用研究・研究成果−計画研究2

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.38 2007年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 

2-1 MAPキナーゼ情報伝達経路の足場タンパク質JLPに関する研究

善岡克次 (金沢大・がん研究所), 岩永飛鳥, 佐藤時春 (金沢大・院・医)

 MAPキナーゼ情報伝達経路の足場タンパク質JLP (別名SPAG9;足場タンパク質JSAP1のファミリーメンバー) は, ヒトやマカクサルでは成熟精子の先端部での発現が極めて高く, さらに, 抗JLP/SPAG9抗体により精子と卵母細胞の結合が阻害されるとの報告が複数ある. しかし, 遺伝子改変マウスをネガティブコントロールとした申請者らの解析では, 全く異なる結果が得られている. そこで, 申請者らが作製・精製した抗JLP/SPAG9抗体を用い, マカクサルの精巣および精巣上体におけるJLP/SPAG9タンパク質について, 免疫組織化学的解析を行った. その結果, マカクサルJLP/SPAG9タンパク質は, マウスの場合と同様, 精巣上体精子ではほとんど発現が認められず, 精子細胞で高い発現を示すことが明らかになった.

2-2 サル類の加齢に伴う自然発生病変の病理学的解析

山手丈至 (大阪府立大・院・生命環境)

 サル類はバイオメデイカル研究における動物モデルとして近年注目されている. 特に, 医薬品開発における非臨床試験である安全性試験において, ヒトにより近いことからデータが外挿し易いことから, サル類のこれら研究における重要性が増している. このような研究において, 加齢に伴って自然発生するサル類の多彩な病変を病理学的に解析し, その背景データを蓄積することは重要である. 本年度は, 昨年度から検査を進めてきた老齢の雌ニホンザル (28.5歳) に発見された悪性中皮腫について, 詳細な病理学的解析を行ったところ, 貴重な所見が得られたことから短報として実験動物学会誌に発表した (以下). また, 雌のニホンザル (26歳) に脾腫がみられ, それを病理学的に検査したところ血管由来の腫瘍が疑われた. そこで, 血管内皮を特異的に染める抗体を用いて免疫組織化学的に精査したところ, 明らかに血管内皮が異常に増殖していることが示された. さらに遺伝子解析を行ったところ抗凝固因子 (TFPI, TM) が上昇し, 凝固系に異常があることが示された. 本例は貴重な症例であることから, 現在他の論文等における類似の報告を調査し, 学術雑誌に発表すべく準備を進めている. Yamate J, Tomita A, Kuwamura M, Mitsunaga F, and Nakamura S. 2007 Spontaneous peritoneal malignant mesothelioma in a geriatric Japanese macaque (Macaca fuscate). Exp Anim. 56(2): 155-159.

2-3 霊長類を用いた「?血 (おけつ) 」病態の分子生理学・分子生物学的解明

後藤博三 (富山大・院・和漢診療), 藤本孝子 (富山大・和漢薬研究所)

 「?血」は東洋医学的病理概念の一つで, 現代医学的には微小循環障害を主とする病態ととらえられている.その治療薬である当帰芍薬散の作用機序をアカゲザルを用い検討した. アカゲザルに1g/head/dayの当帰芍薬散エキスを経口投与した. 2ヶ月間投与後, 肝生検を実施し, 低酸素応答関連因子の遺伝子発現をRC-PCR法を用い検討した. また, 糞便を採取し, 腸内細菌の変動をPCR法により解析した.

 その結果, 肝組織において投与前に比較し, 血管新生/抗血栓関連因子では, Tissue Factor Pathway InhibitorとThrombomodulinの増加を認めた. ステロイド/脂質/糖代謝関連因子では, HMG-CoA, SREBP-1cの増加とLDL-Receptorの減少を認めた. その他, IGF?, COX?, Annexin-1, SODの増加とIGFBP?の減少を認めた. 腸内細菌の検討では, RuminococcusやDesulfovibrioの遺伝子発現の増加が認められた.

以上のことから, 当帰芍薬散は, 抗血栓/抗酸化作用による微小循環改善作用を有し, 脂質代謝, 成長ホルモン産生, 炎症関連因子など多彩な影響を生体に及ぼしていることが示唆された. また, 腸内細菌叢にも変化を認めたことから宿主の恒常性維持にも影響を及ぼす可能性が示唆された.

2-4 霊長類の倹約遺伝子

竹中晃子 (名古屋文理大・健康生活)

 エネルギー倹約遺伝子多型は, 消費エネルギーを減少させるSNP のことである. β3AR 遺伝子の64Trp → Arg 多型の頻度は民族により異なり, モンゴロイドは0 . 4 - 0 . 2 , 白人で0 . 08 であり, へテロ接合型の人は消費エネルギーが200kcal /日節約され肥満を誘発する傾向がある. 霊長類のβ3AR 多型を検討したところ, 調べたチンパンジー35 頭 (霊長研5 頭, 三和化学30 頭), ゴリラ8 頭, オランウータン (マレーシア) 16 頭,さらに, ニホンザル27 頭, アカゲザル21 頭, カニクイザル18 頭, ボンネットモンキー2頭, フサオマキザル2 頭, クモザル1 頭も全てArg 型であった. 氷河期を生き延びた霊長類は倹約型を有し, 消費エネルギーを減少させずに, 厳しい食物環境に際しても生存可能なように適応していると考えられた. ヒトでは類人猿と分岐した後Trp 型が出現したことにより, 寒暖の差が激しいサバンナにおいて体毛を失った人類の祖先は発熱による体温上昇で内臓を守ることができた. しかし, 消費エネルギーは増加するため, 栄養価の高い動物を狩猟により取り入れたこと, 火を使用したことにより氷河期にも生存可能になり, 世界へ拡散できたのではないかと考えられる. なお, ヒト, チンパンジー, アカゲザルの塩基配列比較からヒト特異的変異がさらに2 か所あり, ヒトでの進化速度が速くなっていた. これらの変異についても現在検討中である.

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