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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2007年度 > X 共同利用研究・研究成果−自由研究 1〜10

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.38 2007年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 自由研究 1〜10

1 ニホンザル新生児における匂い刺激によるストレス緩和効果

川上清文 (聖心女子大・心理)

 筆者らはニホンザル新生児が採血を受ける場面に, ホワイトノイズやラベンダー臭を呈示するとストレスが緩和されることを明らかにした(Kawakami, Tomonaga & Suzuki, Primates, 2002 ,43, 73-85). 本研究では, その知見を深めるために, ミルクの匂い (Lactone C-12-D) を呈示してみることにした. ニホンザルのミルクではなく, ヒトのミルクの匂いである.

 本年度はメス3頭のデータが得られた. 第1回目の実験日が平均生後10日(平均体重528.7g), 第2回目は生後17日(平均体重562.0g) であった. 匂いを呈示した条件と呈示しない条件を比べた. 行動評定の結果では, ミルクの匂いの呈示効果はみられなかった. コルチゾルの分析を急ぎたい.

 なお, 今年度もミルクの匂いは, 高砂香料で合成された. 高砂香料に感謝したい.

2 ニホンザル飼育個体を用いた生態学的研究

辻大和 (麻布大・獣医)

 本年度は, 種子散布者としてのニホンザルの特性を把握する一環で, プラスチックビーズを採食させて排泄までの時間を調べる予定であった. しかし, 予定していた実験を実施できなかったため, 2007年5月および8月から12月までの計6回, 宮城県金華山島で調査を行い, ニホンザルの糞を採集した. それと並行してこれまでに収集した糞サンプルの分析を行った.

サルの糞からは, ニガイチゴ, ソメイヨシノ, ヤマボウシ, ヤマウコギ, ホオノキ, クマヤナギ, レモンエゴマ, ケヤキ, シデ類, アオハダ, カマツカ, ウラジロノキ, オオウラジロノキ, クマノミズキ, サンショウ, ハダカホオズキ, ガマズミ, ノイバラ, サンカクヅル, マツブサ, ヤドリギといった多様な植物の種子が数多く発見されたが, これらの種構成や種子の量は年次的に変化した.

 来年度は飼育下のサルを用いた実験を実施し, その結果と本年度の結果を合わせることにより, 種子散布者としてのニホンザルのはたらきについて考察を加える予定である.

3 同所的に生息するサルとシカの種間関係2

揚妻直樹 (北海道大・北方生物圏フィールド科学センター), 揚妻-柳原芳美 (苫小牧市博物館・友の会)

 本研究では個体追跡によるシカの行動観察から, ヤクシカとヤクシマザルの間に見られる種間交渉・種間関係について定量的な把握を行った.

 屋久島西部地域で, 人付けされた野生シカ4頭 (メス2頭・オス2頭) を対象に, サルが活動する日の出前1時間から日没後1時間の時間帯で個体追跡による観察を行った. 対象個体の行動は2分毎に記録した. また20m以内のサルとの近接の有無も記録した. さらに, 対象個体とサルが交渉を持った場合には, その事例をアドリブサンプリングした. 2007年6月から11月にかけて, 合計約95時間, 約3000回のシカの行動を記録した.

 シカの観察中, 対象個体がサルの20m以内に近接していた時間割合は8%であった. これは昨年の値 (9%) と比べてほぼ同じであった. シカは総観察時間の25%を採食に費やしていた. シカが採食した品目の中でサルが供給した品目 (サルが落としたと思われる食物) の採食時間割合は11%であり, 昨年 (4%) と比べ多かった. サルが供給した食物品目の中ではヤマモモ・マテバシイ・モッコクなどの果実・種子が88%, ウラジロエノキ・シロダモ属などの葉が10%, サルの糞が2%であった. なお, 食物のやり取り以外のシカとサルの直接的な交渉は特に観察されなかった.

4 野生ニホンザル・オスグループのクルミ食いに関する研究

宇野壮春 (宮城のサル調査会)

 金華山島の一部のサルはオニグルミの硬い種子を歯で割って食べる. 硬い種子を歯で噛み割るに年齢やクルミの落下時期がどのように関係しているのかを2007年10月と2008年3月のそれぞれ10日間調査した. 対象となったのは10頭前後のオスグループで, 結果, 7歳以上をオトナオス (N=8), それ以下をワカモノオス (N=3) とした場合に, すべてのオトナはクルミを採食できたが, ワカモノで採食できたのは1頭だけだった. オトナは平均で1.3分に1個 (109/137), ワカモノ (1頭)は3.4分に1個 (23/79) の割合で採食し, オトナはワカモノの3倍の速さで採食した. また, オトナは拾ったクルミのほとんどを割ったが, ワカモノは数個に1個の割合でしか割れなかった. クルミを割れないワカモノは, 採食個体の近くに留まり, 個体が去った後に残された破片を拾い食いする行動が頻繁に観察され, クルミへの執着心が伺われた. 今回はクルミの落下時期との関係は明らかにならなかった.

 クルミを割るには顎の力や大きさが関係していることは明らかだが, ワカモノでもクルミの硬さや大きさを選択することによって割ることが可能であった. ただし, 割れるまでにより多くの時間を要した.

5 野生ニホンザルにおける卵巣周期および発情行動の地域間比較

藤田志歩 (山口大・農)

 野生ニホンザルメスの卵巣周期や繁殖成功は, 個体の産歴や栄養状態といった内的要因だけでなく, 食物の豊凶や社会性比といった環境要因および社会的要因の影響も受ける. しかしながら, これらの要因がメスの卵巣周期や発情行動に及ぼす影響について, 実証的なデータはほとんどない. そこで本研究は, 生息環境および社会構成の異なる2つの野生ニホンザル集団において, 糞中ホルモン動態によるメスの卵巣周期と発情行動の発現パターンを比較した. 宮城県金華山島および鹿児島県屋久島に生息するニホンザルのメスを対象に, それぞれ2年間の調査を行った. その結果, 金華山では, のべ15頭中12頭のメスで排卵が確認され, そのうち9頭は初回排卵で受胎し (75%), 1頭は2回目以降の排卵で受胎した (8.3%). いっぽう, 屋久島では, 10頭全ての対象メスにおいて排卵がみとめられたが, そのうち初回排卵で受胎したメスは2頭であり (20%), 4頭は2回目以降の排卵で受胎した (40%). また, 金華山では, 受胎後に射精を伴う交尾行動は全く見られなかったのに対し (0%), 屋久島では, 受胎した6頭のうち4頭で受胎後の交尾が見られた (66.7%). 屋久島のメスにおいて初回排卵で受胎しにくい理由は, メス側, オス側, あるいは両者における何らかの生理的要因が考えられる. また, 交尾行動の発現パターンにおける両地域の違いについて, 気候条件が温暖で, 食物環境の比較的豊富な屋久島では, エネルギーを要する交尾行動の発現が環境要因によってあまり拘束されず, 卵巣周期と交尾行動との関連性が比較的弱いことが示唆された.

6 大型類人猿における非侵襲的ストレス評価を目的とした糞中コルチゾール測定系の確立

川村誠輝 (山口大・農)

 エコツーリズムは野生大型類人猿の保護活動の一環として実施されているが, 一方で, 大型類人猿にストレスを与えることが危惧されている. 本研究は, 野外調査地でも実施できるストレス評価法を確立するため, 非侵襲的試料を用いたコルチゾール濃度の測定系について検討した. 第一に, 冷蔵・冷凍設備のない野外調査地での糞試料の保存方法について検討するため, メタノール保存による方法と乾燥保存による方法を比較した. その結果, 両保存法による測定値が有意な相関を示したため, 野外調査地ではより簡便な乾燥保存が適することが確かめられた. 第二に, 糞中コルチゾール濃度によるストレス評価の妥当性を確かめるため, まず, 平常状態における野生大型類人猿の糞中コルチゾールレベルを調べた. 対象は日本モンキーセンター (JMC) および王子動物園 (OJI) のゴリラおよびチンパンジーとし, 糞中コルチゾール濃度の種や性による違い, および飼育環境の影響についても検討した. その結果, 糞中コルチゾール濃度は種や性別に関らず飼育環境によって異なり, OJIはJMCより高かった. さらに, OJIでは, チンパンジーはゴリラよりも高く, また, いずれの種もメスよりオスの方が高かった. 一方, JMCでは種差および性差は認められなかった. したがって, 糞中コルチゾール濃度によってストレスを評価するためには, 環境や個体の属性を考慮し, ベースラインに基づいた変動を調べる必要があると考えられた. 今後, 糞中コルチゾール濃度と行動学的指標を用いて, 実際に人からの働きかけが大型類人猿に与えるストレスについて調べる予定である.

7 自発的な身振り言語を用いたろう者によるコミュニケーションの研究

松本晶子 (沖縄大・人文), 小田亮 (名古屋工業大・院・工学)

 沖縄に在住するろう者4名 (男性2名, 女性2名, 年齢は60代後半から80代) について, 日常会話における身振り言語を調査した. これらのろう者は就学経験がなく, 自発的な身振りを発達させることによって, 周囲とのコミュニケーションを行っている. 対象のろう者と日常的に接している人との自由会話を録画した合計80分弱の会話場面をデジタルビデオを用いて録画し, 画像ファイルに変換した後に単語を単位として書き起こした. 次に, 単語を構成する手型を, 米川 (1984) に準じて分類した. その結果, すべてのろう者において, B手型, つまり指を広げたかたちの手型が最も多くみられた (36?56%). これは, 手型そのものが何らかの意味をもっているというより, 腕全体, あるいは身体全体で動作をするときに, 最も作りやすい自然な手型であるためであると考えられる. 次に多かったのが, G手型, つまり握った状態から人差し指のみを伸ばした手型であった. これは, 身振り言語において指さしが重要な役割を果たしているためであると考えられる. 実際, 1名を除いてG手型の40%から60%が指さしに使用されていた. これら以外の手型の出現頻度は低く, その傾向は4名に共通するものだった. B手型とG手型が多く使用されることは多くの手話言語においても知られており, 手話言語が身振りの特徴を基にして発展してきたことを示唆するものである.

8 食物選択におけるマカク2種とチンパンジーの比較

森村成樹 ( (株) 林原生物化学研究所・類人猿研究センター)

 動物福祉の立場から, 雑食性の霊長類の飼育では様々な食物を給餌するのが好ましい. 様々な種において, 野生では100種以上の食物を採食するが, 一時に様々な食物を食べようとするのかについて, 多数の食物品目を同時に提示して利用品目数を調べた. 雑食性で採食特性が異なるチンパンジー3個体とマカク2種 (ニホンザルとアカゲザル) 各2個体を対象に, 1回の給餌 (採食バウト内) と1日の給餌 (日内) とでの採食品目数を比較した. 条件1では, バナナ, オレンジ, トマト, キャベツ, ダイコン, 条件2ではパイナップル, キウイ, サツマイモ, ニンジン, ピーマン, 条件3では条件1+条件2の10品目を3回ずつ提示した. 給餌量はマカクで各品目0.5kg, チンパンジーで2kgとした. その結果, 採食バウト内での選択品目数はチンパンジーよりもマカクの方が多かった. マカクでは, 5品目よりも10品目のほうが有意に選択品目数が増加したが, チンパンジーでは変化しなかった. 一方, 日内採食品目数はチンパンジーもマカクも差はなかった. マカクは1回の採食で様々なものを食べるが, チンパンジーは選択性が強く, 1日を通じて様々なものを食べる傾向が見られた.

9 ボノボの群れ動態に関する研究

田代靖子 ( (株) 林原生物化学研究所・類人猿研究センター)

 コンゴ民主共和国ワンバ森林では, 1973年から, 野生ボノボの長期調査がおこなわれてきた. 個体識別に基づくボノボの社会学的研究の分野では, これまでに多くの成果をあげている. ところが, 1996年の内戦勃発以降, 長期にわたって調査をおこなえず, 20年以上継続して個体識別されていた群れの個体の由来がわからなくなってしまった. ボノボの社会学的な研究をおこなう上で血縁関係は必須の情報であり, 内戦前のデータを活かすためにも, 個体名の確認が必要である.

 そこで, 2004年の調査再開時から, ボノボの糞に含まれるDNAを分析することによって個体の由来を明らかにする研究をおこなっている. 糞と尿からDNAを抽出し, ミトコンドリアDNAのd-loop領域の増幅とシークエンスをおこなった. 内戦前に採集されたメスの配列と比較することによって, 若オス3個体の由来が明らかになり, 内戦前には対象群に所属していなかったメス3個体の配列も確定した. また, 他群出身と思われるオスが対象群と一緒に遊動していることがわかった.

 今後, まだ目的部位の増幅・シークエンスができていない3個体について分析をおこない, 対象群全個体の由来を明らかにするとともに, 各個体の遺伝子試料を蓄積する予定である.

10 野生ニホンザルに起きた家系の順位逆転の要因について

風張喜子 (北海道大・院・環境科学)

 ニホンザルのオトナメス間の順位は家系によって決まり, 長期間ほとんど変化しない. しかし, 2003年の冬に宮城県金華山の個体群において家系レベルの順位逆転が観察された. 本研究では, 家系レベルの順位獲得・維持に及ぼす血縁個体の影響を明らかにすることを目的とした. (1) 敵対的交渉時の血縁個体からの援助の頻度と血縁個体数に関係が見られるか, (2) 家系内の血縁個体数・援助の頻度に順位逆転の前後で変化が見られるか検討した. 敵対的交渉時の援助の頻度については, 1995年〜2003年 (順位変動前), 2004年〜2006年 (順位変動後) のアドリブデータと本年度 (順位変動後) のデータを用いた.

 順位逆転の前後ともに, 血縁個体数が多いほど敵対的交渉時に血縁個体から援助を受ける頻度が有意に高かった. 順位逆転前には血縁個体数・援助の頻度とも, 順位が低下した家系で有意に高かった. 一方, 順位変動後には血縁個体数・援助の頻度ともに順位が上昇した家系のほうが有意に高かった. 以上の結果から, 血縁個体数の逆転とそれに伴う援助頻度の逆転が, 家系の順位逆転をもたらしたと考えられる. 家系レベルの順位獲得・維持には血縁個体が重要な影響を及ぼしていると言える.

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