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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2007年度 > X 共同利用研究・研究成果−自由研究 21,22,24〜29,31

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.38 2007年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 自由研究 21,22,24〜29,31

21 左右大脳半球皮質の機能分化の起源を探る

伊藤和夫 (岐阜大・院・医)

 ヒトの大脳皮質では, 左右半球で異なる機能分化がみられる. たとえば, 頭頂葉では右側の損傷の場合のみ半側空間無視が出現する. この機能分化は, 霊長類においてヒトへの系統発生途上において出現すると考えられる. 大脳皮質の左右差は, ヒト以外の霊長類では報告されていない. 私たちは, ヒトの頭頂連合野と相同な皮質であるニホンザルの5野と7野において, 同側性と対側性の線維連絡に左右差が存在するか否か検討した.

 3頭のニホンザルの5野と7野に神経トレーサーを微量注入した. その結果, 視床では, 前視床枕核に同側性の投射がみられた. 外側中心核では, やはり同側性に逆行性に標識された神経細胞と順行性に標識された神経終末が観察された. 内側中心核では, 左右半球皮質いずれの注入例においても, 両側性に神経細胞と終末が標識されていた. 皮質では, 両側の帯状回皮質 (23野) において, 標識された神経細胞と終末が見いだされた. 両側性に線維連絡がみられた部位において, 左右差が認められるか否か, 統計学的に検討中である.

22 ヘビの写真がニホンザルの視覚的注意に及ぼす影響について

柴崎全弘 (名古屋大・院・情報科学)

 これまでに行われてきたヒトを対象にした研究から, ヒトはヘビのように我々の進化の歴史において危険であった対象へ恐怖を示す傾向を持っていることが明らかにされてきた. 近年の視覚探索課題を用いた研究では, ヒトは花の画像よりもヘビ・クモの画像をはやく検出できることが示されている. しかし, この結果にはヒトのヘビに対する生得的な恐怖だけでなく, 経験的に獲得された恐怖や嫌悪も影響している可能性が考えられる. そこで本実験ではヘビに対する生得的な恐怖の効果を検討するために, 実験室で育てられ, ヘビを一度も見たことのないサルを被験体として視覚探索の実験を行なった.

 訓練では, ヘビのカラー写真9枚と花のカラー写真9枚を使用した. タッチパネルモニター上に呈示される写真のマトリックスは, ターゲット1枚とディストラクター (3か8枚) で構成されており, 花の写真の中にヘビの写真がある場合と, その逆の場合とがあった. 訓練は1日60試行であった. 正答率80%以上の日が3日連続するまで訓練を続け, その翌日からのデータを分析の対象とした.

その結果, 3頭とも花よりもヘビを発見するほうがはやくなった. ヘビに対してナイーブなサルでもヘビの視覚探索が効率的に行われたことから, ヒトとサルでみられるこの性質は生得的であることが示唆された.

24 健常児と自閉症児における視線・表情の情報処理過程とその相互作用

魚野翔太 (京都大・院・教育)

 自閉症スペクトラム障害 (ASD) では共同注意の障害が報告されているが, 実験場面では視線方向への自動的な注意シフトが生じることが示されている. 本研究では, 視線に情動的な表情が組み合わせられた場合, 健常群と同様に注意シフトが促進されるかどうかを調べた. 動的な恐怖表情および中性表情の視線が呈示され, 参加者は視線と一致した方向もしくは逆方向に呈示されるターゲットを検出するよう求められた. 健常群では恐怖表情の視線手がかりの効果 (逆条件−一致条件の反応時間) が中性表情よりも大きくなったが, ASD群では差は見られなかった. この結果は, 情動的な視線の処理に障害があることで, より複雑な現実場面では視線コミュニケーションの障害が顕著に現れるということを示唆している. 背景にある神経基盤を明らかにするために同様のパラダイムで健常成人での予備的な実験を行ったところ, 顔選択的に惹起するN170において表情条件間の差が生じることが示された. 今後, ASD群において行動と対応した脳活動の障害が見られるかどうかを検討する予定である.

25 金華山のニホンザルによる種子散布:おもに散布後の定着・発芽について

笹岡直子 (東京大・院・農学生命)

 霊長類が果実類の種子散布に重要な役割を果たしており, ニホンザルでも研究事例が集まりつつあるが, サルの追跡がし易く, 糞の回収がし易い場所での情報は重要である. そこで本研究は宮城県金華山島に生息するニホンザルを対象に, ニホンザルがよく利用するベリー類の糞への出現を明らかにすることを目的とした.

 本年度は, 金華山でサルの糞中へのベリー類の出現について, 島の北西部に生息する群れを対象とし, 調査した. 糞の採集はサルによってベリー類がよく利用される夏から秋 (8月〜12月) に行った. 8月はクマヤナギ, 9月がサンカクヅル, 10月はガマズミとカマツカ, 11月, 12月は両月ともガマズミとノイバラの種子が糞の中に多く排出された. これらのうち, クマヤナギやガマズミは破壊されたものもあったが, 糞中にも多数出現したので, サルが種子散布に貢献している可能性がある. 一方, サンショウとカマツカは種子の破壊率が高かったため, サルによる採食はこれらの植物にとって散布のうえで有効とは考えにくい.

26 霊長類の非侵襲的性腺機能調節法の開発

渡辺元, Hataitip Trisomboon (東京農工大・院・動物生命), Sukanya Jaroenporn (岐阜大・院・連獣), 野田志穂, 山本ゆき (東京農工大・獣医)

 個体数が増加したニホンザルが農業被害を起こしたり, タイワンザルなどの移入種が野生化するなどの問題を解決するため, 内分泌学的手法を改良し, 霊長類の生殖腺機能を非侵襲的に調節する方法を開発することを目的して研究を行った. 本年度は使用する薬物の効果を評価するために, 雄精巣細胞の培養系確立し, 植物由来のタンパク合成阻害薬サポリンを結合したホルモンの作用を検討した.

 性成熟に達した雄のボンネットモンキーから外科手術により精巣を採取した. 白膜を除去後, 精巣組織を細切したのち, コラゲナーゼを含む37℃に保温した培養液中で消化した. 分離してきた細胞を96穴の培養プレートにて培養した. この中には生殖細胞, セルトリ細胞, ライデイッヒ細胞が含まれている. 2日間培養後, 培養液を交換し, 更に種々の量のサポリンを結合したヒト絨毛性性腺刺激ホルモン (hCG) を添加した. 培養終了後培養液を回収し, 得られた培養液中のテストステロン濃度をラジオイムノアッセイ法にて測定した. 培養した細胞の組成を免疫組織学的に確認するために, 培養した細胞は固定して保存した.

 今後は, サポリンを結合したhCGを作用させる実験を実験室内でおこなうとともに, 屋外での実験に取り組む準備をしている.

27 クロキツネザルの父子判定に付いて

宗近功 ( (財) 進化生物学研究所)

 クロキツネザル (Eulemur macaco) 繁殖群の遺伝的管理法確立の為の基礎情報を得る目的で, マイクロサテライトDNAの分子標識の開発と父子判定を行った. 対象個体は計12頭で, 父親候補♂3頭, 母親♀3頭, 子供5頭およびアダルト♂1頭が含まれる. マイクロサテライト遺伝子座は近縁種において報告されている15種類(Eulemur fulvus 用5座位, E. mongoza用7座位, Lemur catta用2座位, Propithecus verreauxi用1座位) を用いてPCR増幅を試みた. その結果, 15種類中14種類が増幅し, 1種類 (Em1座) は増幅しなかった. 増幅した14種類中4種類 (Efr04座, Efr26座, Efr56座 ,Em11座) では変異が認められず, 変異が確認されたのは10種類であった(Lc1座, Lc7座 ,47HDZ268座 ,Em2座 ,Em4座 ,Em5座, Em7座, Em9座, Efr09座, Efr30座). 変異の見られたマイクロサテライト遺伝子座の遺伝子型から, 5頭全ての子供の父親を解明する事が出来た.

 今後, これらのマイクロサテライト遺伝子座を使用して父子判定を行い, 血統登録を行うとともに遺伝的管理の精度を上げて行きたい.

28 ニホンザル乳児における放射運動感度の初期発達

白井述 (首都大学東京・人文科学), 山口真美 (中央大・文)

 前年度の研究によって, 生後1-5ヶ月のニホンザル乳児は刺激が一定の速度 (およそ10deg/s) で提示される場合には, 縮小運動よりも拡大運動に対してより高い感度を持つことが示された. ヒト乳児においては, 刺激速度の増減によって拡大/縮小運動感度が大きく変化することが報告されている (Shiraiら, 2008). 同様の傾向がニホンザル乳児においても観察されるか否かを検討するため, 今年度はより速い速度条件下 (およそ20deg/s) での実験を行った. 実験手続きは前年度と同様に, ドットパタンによる放射運動 (拡大または縮小運動のどちらか一方) と並進運動 (一方向の運動:上下左右のいずれか) を対提示し, 乳児の放射運動に対する視覚選好を強制選択選好注視 (FPL: Forced choice Preferential Looking Method) によって測定するものであった. 実験の結果, 刺激速度の上昇に伴い, 拡大/縮小運動に対する有意な選好が消失することが明らかになった. ヒトでは刺激速度の増加に伴い, 各運動に対する選好値が上昇することが報告されている. これらの結果は, ヒトとニホンザルでは放射運動感度の初期発達過程が異なる可能性を示唆するものである.

29 チンパンジーのポジショナル行動の非侵襲的3次元計測

平崎鋭矢 (大阪大・院・人間科学)

 本研究の全体構想は, チンパンジーの野外での身体運動を非侵襲的に定量化すること, および, それによって, 身体−運動−環境の関係を探ることである. 今年度は, 18年度の施設利用で開発した計測手法の改良と, それを用いた計測を行った. 具体的には, 屋外運動場で自由に行動するチンパンジーを2−4台のビデオカメラで撮影し, 動画像分析装置を用いて身体運動の3次元再構成を行った. 3次元再構成には, 運動場内の構造物を校正枠として利用した. 即ち, その構造物が画面内に入るようカメラを設置し, カメラ視野内を通過したチンパンジーの動きを運動学的に分析した. 撮影時間は, 約30時間であったが, チンパンジーが設定した計測空間 (幅約4m) で身体運動を行った回数は約30回であった. 今回の分析から, チンパンジーの二足歩行は, 安定した支持体上よりも, むしろロープ上において挙上した手で別のロープを掴みながら行われることが判明した. また, その際, テナガザルの同様の歩行とは異なり, 上肢帯と下肢帯の回旋が逆相になることも明らかとなった. ヒトの直立二足歩行の進化を探る上で興味深いロコモーション様式である. 今回得たデータ数は, ポジショナル行動をカテゴライズし, それぞれを運動学的に分析するにはまだ十分ではない. 2008年度の共同利用研究として継続し, より詳細な分析を行う予定である.

31 霊長類の各種の組織の加齢変化

東野義之, 東野勢津子 (奈良県立医科大・医・解剖)

 霊長類の冠状動脈の加齢変化を明らかにするために, アカゲザルとニホンザルの冠状動脈の加齢変化を元素含量の観点から研究した. 本研究には, 40頭のアカゲザルと21頭のニホンザルを用い, 性別は雄25頭, 雌31頭, 不明5頭で, 年齢は新生児から33歳で, 平均年齢が9.8±10.0歳であった. 固定された心臓より左右の冠状動脈を摘出し, 蒸留水で洗浄後, 硝酸と過塩素酸を用い, 加熱し灰化した. 灰化物中の元素含量を高周波プラズマ発光分析装置 (ICPS-7510, 島津製) を用いて測定した. アカゲザルとニホンザルの冠状動脈のCaとPの含量は若年期と比較すると, 老年期になっても増加せず, 逆に減少傾向であった. 左の冠状動脈の平均Ca含量は20歳以下では3.88±0.79 mg/gで, 一方20歳以上では3.37±1.03 mg/gであり, 20歳以上で13%だけ減少した. これらの結果はアカゲザルやニホンザルでは冠状動脈に動脈硬化がほとんど生じないことを示している. なお, 老年期に冠状動脈に動脈硬化が高頻度に生じるヒトの場合と対照的である.

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