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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2007年度 > XII 霊長類研究所40周年記念関連行事

京都大学霊長類研究所 年報 

Vol.38 2007年度の活動

XII 霊長類研究所40周年記念関連行事

1) 記念書籍出版

現職教員全員による「霊長類進化の科学」(510ページ)(京都大学霊長類研究所編)を京都大学学術出版会から出版した(2007年6月25日初版第1刷出版).

2)講演会

1. 6月1日講演会, 式典, 懇親会を執り行った.

   講演会・祝賀会の延べ参加人数 約370名

40周年記念招待講演

スバンテ・ペーボ博士(ドイツ・マックスプランク進化人類学研究所)の講演

『霊長類学からみた人間の由来:比較ゲノム解析から』

 講演では2つの研究内容が紹介された. 第1は, 発話に関連する転写活性因子FOXP2遺伝子に関するもので,ヒトとチンパンジーでは2つのアミノ酸が異なること,ならびにこの遺伝子をマウスゲノムに挿入しノックインマウスを作製したところ, そのマウスが音声に似た音を発するようになったことを紹介し, 本遺伝子の機能に関わる考察を行った. 第2は, ネアンデルタール人の骨から抽出したミトコンドリアDNAを進化系統解析し, 現代人との系統的つながりの仮説をサポートするとともに, 両者間での交配はほとんどなかったことも示し, 現代人の分布拡散機序の自説を示した. 最近ネアンダール人の核の全ゲノムを解読中であることも紹介した.(文責:平井啓久)

フランス・ドウバール博士(アメリカ・エモリー大学)の講演

『動物にみられる「共感」について』

 動物は共感(他者の感情を理解し共有する能力)するか, という命題を解く手段として, 類人猿, 新世界ザル, 旧世界ザル, ゾウを対象として行われてきた, 動作や情動の伝染, 慰め, 和解, 目標を定めた援助, 自己鏡映像認知, 文化的行動などに関する研究を紹介するとともに, 理論的な考察を行った. 博士自身のアイデアである「ロシア人形モデル」を用いて模倣と共感の関連を示し, 動物の共感はトップダウン(他者の状況を理解し, 他者の立場にたって考える)形式ではなく, ボトムアップ(他者と同調して情動を共有する)形式であることを示した. さらに共感は, 進化的に古くからある能力(哺乳類,鳥類が共有)であり, 層的な構造を有していると結論づけた.(文責:友永雅己・平井啓久)

2. ジュニア公開講座・京都公開講座

(a) 6月2日ジュニア公開講座「この手でさわってみよう」

  出席者:約50名, マスコミなどの取材有り

『霊長類と古人類の複製化石の体験学習』

 初期霊長類から古人類まで, 約30個の霊長類の頭骨複製化石を元に, 3人の教員 (高井正成, 遠藤秀紀,西村剛) が霊長類の進化について解説をした. 複製化石を実際に手にすることにより, その大きさや形を実際に体験することができるという初めてのもくろみであったが, 参加者の反応も上々であった. 中高生を対象としていたが, 大学教養部の学生も何人か参加していた. また子ども達の保護者の方も熱心に質問をしており, 関心の高さが見てとれた. 京都市内の洛北高校生物部からは複数の参加者があり, 最初から最後まで質問をしていた. かなり突っ込んだ質問もあり, 高校生の興味や知識の高さに驚かされる結果となった. (文責:高井正成)

『チンパンジーの記憶検査の体験学習』

 京都大学霊長類研究所のチンパンジー母子たちが日々の認知実験の中で取り組んでいる「数字系列の記憶検査課題」を実際に体験できるデモを5セット用意した.プログラムの作成は認知学習分野の南雲純治技官による. これらのデモ装置は前日の記念祝賀会の会場内からすでに稼動させていた. ジュニア公開講座当日は, 思考言語分野の友永雅己と田中正之の2名で来場者の対応を行った. 教師に引率された中学生や親子連れでの参加があり, みなそれぞれにデモ課題に取り組み, チンパンジーの成績と各自の成績を比較するなどしていた. 担当教員が来場者に個別に対応したが, 参加人数が適正規模であったため, 混乱もなく終了した. 試みとしては成功であったと思うが, 参加者がもう少し多くてもよかったかと思う. 親子連れでの参加が大半であったことを考えると「ジュニア公開講座」というよりは「親子で体験する霊長類学の最前線」的な発想もあったのではないかと思った.(文責:友永雅己)

      

(b) 6月2日 京都公開講座:「霊長類学の新展開」 出席者 約200名

13:00-13:10「霊長類研究所創立40周年」所長・松沢哲郎

 研究所の設立経緯ならびに現況を説明した.

13:10-13:50「分子標識でサルの何がわかるか」田中洋之

13:50-14:45「屋久島のニホンザル」半谷吾郎

屋久島では, 野生のニホンザルの調査が30年以上にわたって継続して行われています. 1974年以来, 人里から離れた西部海岸部の複数の群れを人付け, 個体識別して調査が行われてきました. 30年間の調査で分かったことは, ニホンザルの群れは, 決して安定ではなく, 時間とともにダイナミックに変動していく存在であるということです. 1980年代前半までは, 群れの分裂が頻発しました. これはおそらく個体数の増加と対応しているでしょう. ところが, 1980年代後半から, 個体数を減少させる群れが増え, 中には非常に小さくなって他の群れと融合し, 消滅してしまう群れもありました. 1999年には大量死が発生し, 二つの群れが突然消滅するとともに, その周りの群れも大きく個体数を減らしました. これらの社会変動には, 果実生産の年変動が大きくかかわっています. 豊作の年には出産率は群れによって変わらなかったものの, 不作の年には小さい群れで子供が生まれず, もともとある群れの大きさの差がますます拡大して行ったのです. また, 大量死の年は, 過去に例を見ないほど不作の年でした. 一方, 同じく野生のニホンザルの長期調査が行われている宮城県の金華山島では, 個体数の変動は見られますが, 小さな群れが不利になるようなことはありません.残念ながら, これらの長期調査地では, 環境の年変動,個体数の変動, 社会変動を同時に調査していたわけではなく, 彼らの社会のダイナミックな変動が, 環境変動とどのようにかかわっていたのか, 推測の域を出ません. わたしたちは, 標高1000m付近に新しい調査地を設定し, 1998年から継続調査を始めました. ここは屋久島海岸部の長期調査地から7kmほどしか離れていませんが, ヤクスギ林に覆われ, 照葉樹林の広がる海岸部とは大きく異なった環境です. 植生や果実生産の年変動, 個体数密度, 複数の識別された群れの構成と分布を, ボランティアで全国から集まった数十人の学生とともに毎年調べる体制を整えました. 同様の資料の収集が始まった屋久島海岸部とあわせて, 野生霊長類個体群の動態の空間的変異を明らかにするという, 稀有な試みが, 屋久島で始まろうとしています.

14:45-15:25「体が脳をつくる」宮地重弘

 前頭葉皮質は, 構造と機能の面から多くの領域に分けられるが, 大きくは前側の「前頭前野」と後ろ側の「運動野」に大別される. 運動野に損傷を受けると ,様々な運動障害が生じる. 運動野の一番後ろに位置する「一次運動野」では, 一番上の領域は足に対応し, そこから下に, 胴体, 腕, 顔の領域が並ぶ. この「身体部位再現地図」は, ヒト, サル, ネズミでほぼ共通であり, 進化のかなり早い段階でできたと考えられる. サルやヒトの運動野には, 一次運動野の前方に多くの高次運動野があるが, どの領域にも身体部位再現地図があり, 運動の様々な面を制御している. 前頭前野に損傷を受けても運動機能には影響はなく, 認知機能や人格の障害が起こる. このため, 前頭前野は認知機能を, 運動野は運動機能を担うと考えられてきた. しかし最近の多くの研究は, このような単純な二分法が成り立たないことを示している. 例えば, 運動野の様々な領域は, 運動ばかりでなく認知的な作業を行っているときにも活動する.我々は, 前頭前野も, 体の運動を統御するために発達したと仮定し, それならば, 前頭前野にも身体部位再現地図があるのではないかと考えた. 我々は, 前頭前野から一次運動野の様々な身体部位領域へのシナプスを超えた神経連絡を調べ, 前頭前野にも身体部位再現地図があることを見いだした. その並び方は, 一次運動野と同様, 上から足, 腕, 手, 顔の順であった. この身体部位再現地図と, 過去の研究で知られている, 前頭前野各領域の持つ認知情報の間には, 合理的な対応関係があった. たとえば, 腕の領域には物の位置の情報が, 手の領域には物の形の情報が集まっている. これは, 目標に対して腕を伸ばしたり, 手で物をつかんで操作するときに必要な情報である. これらのことから, 前頭前野は体の運動制御に必要な認知情報を最も必要とする運動野の領域へ振り分けるように発達したと考えられる.

15:25-16:05「かたちの進化とことばの起源」西村剛

 霊長類は約6500万年前に,樹上棲に適応したグループとして起源し, さまざまにかたちを変化させて進化してきた. その中で, ヒトは直立二足歩行を常態とするグループとして現れた. ヒトは適した足や腰, 脊椎, 頭蓋骨底部の骨格形態を有しており, 数多くの人類化石の発見により, その進化プロセスが明らかにされてきた.ことばの起源は, ヒトの進化史上, 直立二足歩行の進化や大脳化に並ぶ進化イベントであるが, ことば自体は化石記録に残らない. よって, その進化を解明するには,ことばの生物学的・文化的基盤の系統進化を復元するアプローチが欠かせない. 話しことばは, 音声の連続的ですばやい変化を必要としており, 霊長類の音声コミュニケーションの中では特異的である. それを実現している音声器官の形態は, ヒト系統で一つのパッケージとして現れたのではなく, 真猿類, 類人猿, ヒトの各系統進化の中で部分部分の形態変化の積み重ねで完成したことが明らかになった. 個々の形態進化の機能適応は, ことばでないのは明らかであり, おそらく摂食・嚥下機能にあると考えられる. ことばはヒト特異的であるがゆえに, その生物学的基盤もことばに適応してヒト系統で完成したと考えられる傾向が強い. しかし, その多くは, このようなモザイク的進化によっているのかもしれない.

16:05-16:45「ヒトのコミュニケーション:失敗して当たり前」松井智子

 人間のコミュニケーションは, 言葉に表れない話し手の意図を推測することで成り立っている. このようなコミュニケーションの形態は「推論モデル」とも呼ばれ,「コードモデル」(言葉を含めた記号の意味解読だけで成り立つコミュニケーション)と対比される. 推論モデルは, 話し手の考えていること, 言ったこと, 聞き手が解釈したことが合致することはごく稀であると説明する. すなわち, 言いたいことが伝わるという保障はどこにもなく, 逆に, 誤解される可能性が無限にあることになる. 一方, 人間は自分が知っていることは他人も知っていると思いがちで, 他人と共感することを欲する傾向がある. コミュニケーションにおいても, 思い込みで解釈してしまうことは多い. これらのことを考えると, 人間のコミュニケーションは, 失敗して当たり前ということになりそうだ. このことを自覚することから, 本当の意味で他者の視点に立つことができれば, 今日のコミュニケーション問題に解決の道が開けるかもしれない.

16:50-17:40 質疑応答

 各講演のあとその専門に関わる5?10分の質疑応答をおこなうとともに, すべての講演終了後に総合討論をおこなった. 総合討論時間の当初予定は15分だったが, 議論が盛り上がり結局45分に延ばした. 質問内容としては「各講演者の今後の研究構想」「ゲノムはわずかな相違なのに, ヒトが全地球を席巻している理由」「霊長類のヒト利用についての意見」「ことばの習得とヒトの成長」「食物による咽頭の進化に関する意見」「ヒト以外の霊長類における自閉症について」「霊長類の応用研究について」「生物の分岐および進化について」などであった. 全般的に来聴者の真摯な姿勢が質疑に現れており, 霊長類学への興味の深さが感じられた.提出して頂いたアンケートによると, 総合討論はかなりインパクトがあったようである. 今後も京都・大阪の関西地域での公開講座を望む声が多かった. 講演内容を記述した配布資料が欲しい旨の意見が多かった.(文責:平井啓久)

3. 東京シンポジウム

6月3日 東京シンポジウム2007 東京大学一条ホール          

  参加者 約280名

講演者

フランス・ドゥバール博士(アメリカ・エモリー大学 教授)『人間以外に見られる「共感」について』

スバンテ・ペーボ博士(ドイツ・マックスプランク進化人類学研究所 所長・教授)『霊長類学からみた人間の由来:比較ゲノム解析から』

山極壽一(京都大学理学研究科動物学専攻人類進化論講座 教授)『人間の社会はどう進化したか:類人猿のフィールドワークから』

諏訪元(東京大学総合研究博物館 教授)『化石からみた人類と人間性の起源』

 

松沢哲郎(京都大学霊長類研究所 所長・教授)『人間とチンパンジーの子育ての比較:人間は「子供たち」をみんなで育てる』



40周年記念祝賀会で挨拶する松沢所長


招待講演:百周年記念ホールを埋めた聴衆

(まとめ責任:平井啓久)

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