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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2007年度 > XIII  ニホンザル野外観察施設の改廃と野生生物研究センターの設立

京都大学霊長類研究所 年報 

Vol.38 2007年度の活動

XIII ニホンザル野外観察施設の改廃と野生生物研究センターの設立

2008年4月1日, 京都大学に野生動物研究センター(Wildlife Research Center) が発足しました. その設立経緯と将来構想について解説します.

設立に到る経緯

 2006年の夏休み前, 時計台の2階の懇親会場で, 尾池和夫総長から, 「大学には植物園も水族館もあるのに, なぜ動物園はないのですか」という問いかけがありました.京都大学植物園は京都の北白川にあります. また, 京都大学水族館が和歌山県の白浜町にあります. 京都大学総合博物館もあります. しかし, 京都大学動物園はありません. そもそも, 大学に動物園があるとは寡聞にして知りません.

熟慮したうえで, 06年11月21日に総長にお返事を差し上げました. 京都大学が, 研究対象として野生動物をもっと取り上げ, 動物園と連携して, 京都大学らしい社会貢献をするべきだというのが主旨です.

 京都大学の動物学教室において, 現在の最も重要な研究対象はホヤです. 脊索動物から脊椎動物への進化をゲノム的視点から解析するうえできわめて重要な動物です. また, 50年間1200世代以上にわたって暗黒条件下で継代飼育しているショウジョウバエの遺伝子変異と行動に関する研究も貴重です. また, ヤドカリについての優れた研究もあります.

しかし, 動物園にいるゾウやキリンやカバの研究は誰もしていません. 京大の培ってきたフィールドワークの伝統を活かし, 最新のライフサイエンスの手法を加えて, 野生動物の研究を通じたユニークな社会貢献ができると考えました.

ニホンザル野外観察施設の改廃

 一方, 霊長類研究所では, かねてより野外観察施設の改組拡充が霊長類研究所の懸案でした. 1993年に大学院重点化改組にともなって, 研究所は大部門化をおこないました. 久保田競所長の時代です. それまで創設時の構想に従った9つの研究部門がありましたが, 4大部門10分野に再編されました. 同時に, チンパンジー研究の推進の核となる分野と位置づけて「思考言語分野」が新設されました. 概算要求が認められて文部科学省から,思考言語分野に教授1, 助教授1 (助手からの振り替え)が新たに措置されました.

1999年には, やはり文部科学省への概算要求によって, サル類保健飼育管理施設を改組拡充し, 人類進化モデル研究センターを創設しました. 杉山幸丸所長の時代です. このときには, 教授2 (1は助教授からの振り替え), 外国人客員教員1が措置されました.

すなわち, 過去2回の概算要求で, 研究部門は大部門改組され, 2付属施設のうちの1つも改組されたのですが, ニホンザル野外観察施設の改組だけが手付かずで,将来の課題として残されていたわけです. ニホンザル野外観察施設は, 河合雅雄所長の時代に創られました.研究林構想と一体となった施設です. 下北, 木曾, 志賀高原, 幸島, 屋久島の5つの場所に, 研究林と称する野生ニホンザルの観察場所を設定したのです. なお, この施設には, 幸島と屋久島に観察所があります. 幸島観察所には, 常駐する2名の技術職員がいます. 野外観察施設には准教授1名と助教1名の2名の教員がいます.

 ニホンザル野外観察施設の将来構想について検討した結果, もはやサルだけを研究対象とする時代は過ぎたと認識しました. サルの研究を継続するためにも, 他の動植物に目配りした生態系の全体を対象とした研究の推進が必要不可欠でしょう. たとえば, 幸島には天然記念物のサルがいるだけでなく, 対岸の石波海岸は照葉樹林として天然記念物になっています. また, 屋久島は世界自然遺産の島です. サルとシカが有名ですが, カメも産卵に上陸します. 屋久杉があります. 昆虫や羊歯類など, 多様な動植物の宝庫です.

そこで, 霊長類研究所の付属施設であるニホンザル野外観察施設を改廃して, それを原資として, 絶滅の危惧される野生動物を対象とする研究センターを, 新たな独立部局として京大本体に設置することを構想しました. 小さいけれどもきらりと光る, 京大らしいユニークな教育・研究・社会貢献のできる新センターです.

野生動物研究センターの憲章

霊長類研究所が母体となり, 理学研究科や東南アジア研究所の協力を得て, 学内での討議を進めた結果, 明けて2007年3月14日,「京都大学野生動物研究センター」という名称が尾池総長から示唆されました. その後ほぼ1年間にわたり, 企画委員会, 設置準備委員会, 部局長会議, 教育研究評議会など, 学内のさまざまなレベルでの審議を経て, 08年4月1日に発足の運びとなりました. なお新センターの内容に関わる実質審議は, 設置準備委員会 (霊長類研究所長が委員長) のもとでおこなわれました.

 2008年2月5日, 設置準備員会の最終回で「京都大学野生動物研究センター憲章」が制定されました. 以下の文言です.

『京都大学野生動物研究センターは, 野生動物に関する教育研究をおこない, 地球社会の調和ある共存に貢献することを目的とする. その具体的な課題は次の3点に要約される. 第1に, 絶滅の危惧される野生動物を対象とした基礎研究を通じて, その自然の生息地でのくらしを守り, 飼育下での健康と長寿をはかるとともに, 人間の本性についての理解を深める研究をおこなう. 第2に, フィールドワークとライフサイエンス等の多様な研究を統合して新たな学問領域を創生し, 人間とそれ以外の生命の共生のための国際的研究を推進する. 第3に,地域動物園や水族館等との協力により, 実感を基盤とした環境教育を通じて, 人間を含めた自然のあり方についての深い理解を次世代に伝える』.

なお憲章の英文は, 以下のとおりです.

The Declaration of Wildlife Research Center of Kyoto University

The Wildlife Research Center of Kyoto University aims to promote the scientific research and education on wild animals, and to contribute to the peaceful COExistence of living organisms on planet earth. The mission can be summarized in the following three points. First, the center should carry out basic research on endangered and threatened species of wild animals to promote their conservation in their natural habitat, to improve their health and welfare in captivity, and to encourage the fusion of scientific approaches to advance our understanding of human nature. Second, the center should integrate different areas of science to create new disciplines applicable to field settings and to encourage international collaboration for the symbiosis of humans and other living organisms. Third, in collaboration with zoos, sanctuaries, aquariums, museums, etc, the center should promote environmental education of youths by offering them unique experiences with nonhuman animals, and provide young people with a deep insight into nature including ourselves.


野生動物研究センターに移行した施設等

 新センターの拠点は, 京都大学本部のある吉田地区にしました. そこに教職員の大半がいます. 幸島観察所と屋久島観察所という2つのフィールド研究施設を霊長類研究所から委譲しました. 1948年に今西錦司らが幸島で野生サルの調査を始めました. その霊長類学の発祥の地をあえて切り出したことになります. 天然記念物のサルのいる幸島, 世界自然遺産でサルとシカと多様な動植物のある屋久島, その島の全体をさまざまな研究に活用することが, サルの研究の発展にもつながると考えたからです.

また, 2006年秋にチンパンジーの医学感染実験が廃絶され, 77人のチンパンジーを保護するチンパンジー・サンクチュアリ・宇土という施設ができ, 霊長類研究所が2007年8月から寄附講座としてその運営をしてきました. このサンクチュアリ運営も野生動物研究センターに委譲しました. したがって新センターには, こうした国内の3つの研究拠点に加えて, アフリカに6つ, ボルネオに1つの海外研究拠点があります.

大学院教育と研究

大学院教育は, 京大の理学研究科生物科学専攻でおこないます. 毎年4−5名の採用を予定しています. 今年の場合, 7月30−31日に入学試験をおこないます.

たとえば, 修士の2年間を経て動物園等に就職してはどうでしょうか. あるいは, 博士から編入することもできます. 獣医を卒業したあと3年間, 京都にきて野生動物の研究をし, その間にアフリカやボルネオで実習して博士学位を取得する道が開けました.

 野生動物研究センターの教員を紹介します. 教授として, 伊谷原一, 幸島司郎, 村山美穂の3名がいます. 准教授として, 杉浦秀樹, 田中正之, 中村美知夫, タチアナ・ハムルの4名がいます. 寄附講座には, 中村美穂准教授, 藤沢道子助教, 森村成樹助教の3教員がいます.

合計10人の教員のフィールドワークの足跡を追えば,世界各地に及びます. 10人中女性が4人です. 外国人も1人います. フィールドワークだけでなく, 幸島と村山の両教授はDNAの解析技術にも詳しい方です.

教員がこれまで扱ってきた野生動物は, チンパンジー, ボノボ, サイ, イルカ, シャチ, ほかにウシやウズラやイヌなどの身近な動物もいます. 10人の兼任教員のなかには, そのほかに, ゴリラの山極寿一, ゾウやクジャクの長谷川寿一, アホウドリの長谷川博, 哺乳類全般の遠藤秀紀らがいます. また, 人間を対象としたフィールド医学を提唱する松林公蔵もいます.

野生動物のフィールドワークは, チンパンジーやボノボやゴリラやオランウータンなど大型類人猿の研究では日本が世界の第一線にあります. しかし, その他の野生動物の研究では大きく遅れをとっているのが現状です. 新センターから, ゾウやキリンやサイやイルカやペンギンの研究者が育ってほしいと願っています.

大学と地域動物園との連携

 大学と動物園との連携も着実に進みつつあります. 2007年9月に, 京大霊長類研究所准教授の上野吉一さんが辞職して, 名古屋の東山動物園に企画官として就職しました. 動物園の再生計画を進めるなかで大学とも連携してゆきます. すでに08年度予算として, チンパンジー・オオカミ・サンショウウオなどの展示施設の改修計画が進んでいます.

なお, 2008年4月には, 野生動物研究センターの准教授になった田中正之さんが, 京都市動物園に常駐して研究を始めました. 京都市動物園でも, 08年度予算でチンパンジー舎を改修し, 新たに4個体の1群を導入する計画が進んでいます.

野生動物研究センターに, 自然の生息地での研究と,動物園での環境教育とをつなぐ架け橋の役割を期待したいと思います.

謝辞

最後になりましたが, 野生動物研究センターの設立にあたって, 尾池和夫総長をはじめとした多数の皆様方のご支援をいただきました. 丸山正樹, 東山紘久, 松本紘, 木谷雅人, 中森喜彦, 北徹, 西村周三の理事・副学長から, それぞれのお立場から厚いご支援を賜わりました.

とくに丸山副学長には, 企画段階からお世話になり,京都市との橋渡しを最初にしていただきました. 松本副学長には, 研究担当理事として, 新センターの研究計画の実現に必要なご助言を賜わりました. 木谷副学長には, 事務職員の配置やセンター設置場所についてご尽力いただきました. 北副学長には, 耐震改修工事中の吉田構内で至難ななかで, 新センター施設の確保にご配慮いただきました.

設置準備委員会には, 上記の4副学長に加えて, 加藤重樹理学研究科長, 川崎良孝教育学研究科長, 平松幸三アジア・アフリカ研究科長,高林純示生態学研究センター長, 白山義久フィールド科学教育研究センター長, 水野廣祐東南アジア研究所長, 松林公蔵東南アジア研究所副所長, 山極寿一理学研究科教授,渡邊邦夫・景山節・遠藤秀紀・霊長類研究所教授, 長谷川寿一東京大学教授, 中道正之大阪大学教授にご参加いただきました.

大学院教育の実現にあたっては, 理学研究科の加藤重樹理学研究科長はじめ, 淡路敏之, 平野丈夫, 七田芳則, 今福道夫の各教授にお世話になりました.

野生動物研究センターを短期間で発足させるにあたって, 大量の事務作業が必要でした. 霊長類研究所の井山有三前事務長, 河田友彦会計掛長, 細川明宏総務掛長はじめ事務職員各位の尽力なくしては実現しなかったと思います. なお京都市動物園との連携については, 京都市の星川副市長と京都市動物園の上田至前園長にご尽力いただきました. 名古屋市東山動物園との連携については, 松原武久市長, 山田雅雄副市長, 小林弘志園長, 再生推進室の堀場和夫・大井憲司・上野吉一の各氏にご尽力いただきました. 寄附講座の移管については三和化学研究所の山本一雄社長のご理解とご支援を得ました. センター長の伊谷原一教授の割愛においては林原健・林原グループ社長の厚いご理解を得ることができました. こうしてお名前を挙げることができませんが, 京都大学内外の多くの皆様方のご支援なくして新センターは実現しませんでした. 改めて, 皆様方に深く感謝の意を表します.

(文責: 野生動物研究センター設置準備委員会委員長,霊長類研究所長, 松沢哲郎)

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