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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > Vol.47 目次

 

. 研究教育活動

1. 研究部門及び附属施設

(研究業績に記した#は共同利用研究の成果に基づくもの)

 


神経科学研究部門

高次脳機能分野

<研究概要>

情動情報処理における前部帯状回の役割の解明

鴻池菜保、岩沖晴彦、中村克樹

情動情報の処理におけるサル前部帯状回の役割を明らかにするため、アカゲザルの前部帯状回から単一ニューロン活動を記録し、他個体の表情などの刺激に対する応答性を調べた。本年度は、ニューロン記録の終了したサルを用いて記録部位を組織学的に同定し、更なる検討をした。



顔弁別能力の霊長類種間比較研究

中村克樹、禰占雅史、竹本篤史

同種他個体の顔弁別の能力を霊長類の種間で比較する目的で、コモンマーモセットとアカゲザルで弁別課題を実施し、その成績を比較した。


情動行動に関わる脳領域の神経結合様式の研究

中村克樹、宮地重弘、鴻池菜保、禰占雅史、金侑璃、酒多穂波

情動行動に関わる神経回路を解明することを目的に、ニホンザルの脳の前部帯状回に複数の神経トレーサーを注入し、扁桃核や視床、側頭葉皮質を中心とした各領域における標識神経細胞の分布を解析した。


コモンマーモセットの認知機能計測

中村克樹、竹本篤史、三輪美樹、鈴木比呂美、櫻井彩華、正村聡美

コモンマーモセットの認知機能(知覚・記憶等)を調べるために、遅延見本合せ課題を用いてマーモセットの空間記憶を調べた。図形弁別課題および逆転学習課題における老齢マーモセットの学習の特徴を解析した。


遺伝子改変マーモセットを用いた尾状核におけるドーパミンの役割の解明

中村克樹、竹本篤史、山森哲雄(理化学研究所)、渡我部昭哉(理化学研究所)、高司雅史(理化学研究所)、尾上浩隆(理化学研究所)、横山ちひろ(理化学研究所)

ウィルスベクターを用い、マーモセットの尾状核のD1受容体とD2受容体を別々にノックダウンし、行動変化等を調べた。D2受容体をノックダウンした場合、学習やモチベーションさらに睡眠サイクルに変化がみられた。これらをまとめ、論文や学会で発表した。


発達初期のサイトカイン暴露に誘導される行動異常の検討

中村克樹、三輪美樹、竹本篤史、鴻池菜保、那波宏之(新潟大学)

発達初期のマーモセットをサイトカインに暴露し、発達とともにどのような行動異常が出現するかを検討している。活動量や認知機能に異常が見られることが分かってきた。また、コントロール個体およびサイトカイン暴露個体での経時的な脳MRI撮像を実施した。


マーモセットにおける集団内の音声情報伝達にかかわる神経基盤の解明

鴻池菜保、三輪美樹、中村克樹

警戒音による情報伝達に関わる神経基盤を解明することを目的とし、隔離したマーモセット個体に他個体の警戒音声を呈示する音声プレイバック実験を行った。様々な音声を呈示した時のマーモセットの音声および3次元での運動軌跡を解析した。


マーモセット疾患モデルを用いた神経回路障害ならびに分子病態の解析および治療法の開発

中村克樹、鴻池菜保、三輪美樹、竹本篤史、岡澤均(東京医科歯科大学)、田川一彦(東京医科歯科大学)、陳西貴(東京医科歯科大学)、田村拓也(東京医科歯科大学)、藤田慶大(東京医科歯科大学)

神経変性認知症の疾患モデルマーモセットにおいて分子・神経細胞および神経回路の病態を解析することを目的として、神経変性原因物質を脳内局所注入した2頭のマーモセットの脳内で、実際に変性がおきていることを組織学的に検証した。また、別の4個体で認知機能評価のための場所記憶課題を訓練した。


自由判断の神経機序の研究

酒多穂波、中村克樹、伊藤浩介(新潟大学)、五十嵐博中(新潟大学)

自由判断に関わる神経メカニズムを解明することを目指して、自由なタイミングで運動を行う課題を開発し、課題遂行中の被験者の脳活動をMRIを用いて計測し、分析を行った。運動開始の意図の前から脳活動が複数の場所で認められた。


競合条件下での行動選択における前頭前野の機能解析

禰占雅史、宮地重弘

競合条件下での行動選択時にサル前頭前野がどのような役割を果たしているのかを明らかにするため、競合条件下におけるマカクザル前頭前野の神経活動を解析した。その結果、前頭前野の内側部と主溝周辺部では行動選択の直前から競合条件依存的な応答がみられ、これらの応答では、非競合条件に比べて競合条件でより高い活動を示していた。本研究により、サル前頭前野の内側部と主溝周辺部は意思決定における競合情報の処理過程に関与することが示唆された。



リズムに「乗る」神経メカニズムの解明

宮地重弘

リズムに「乗る」神経メカニズムを明らかにする目的で、2頭のニホンザルを対象に行動実験を行なった。さらに、運動リズムにおけるドーパミンの役割を明らかにするため、ドーパミンD2受容体の作動薬、拮抗薬の投与を行ない、課題遂行への影響を解析した。


サルにおける音列知覚機構の解明

脇田真清

コモンマーモセットを用いて聴覚弁別訓練を行った。新たな個体を用い、要素は共通であるが配列の異なる二つの音列の弁別課題を行い、これまでに得られた結果を追試した。結果、先行研究と同じく、音列の変化を検出することはできても、規則性を知覚したり長期記憶に貯蔵したりできないことを明らかにした。


新型SSVEP-BCI開発のための基礎研究

竹本篤史、中村克樹

普及している脳-コンピューター間インターフェース(BCI)に、フリッカー光に対する定常的視覚誘発電位(SSVEP)を利用したSSVEP-BCIがある。このBCIの欠点は、フリッカー光のちらつきが不快な点である。ちらつきが感じられないほど高い周波数のフリッカー光を用いれば、この欠点を解消できるはずである。同一被験者を用いた組織的な脳波測定によって、70Hzという高周波数刺激のSSVEPでも測定可能であること、そしてこの高周波SSVEPは通常の低周波数のSSVEPとは異なる空間特性を示すことが明らかになった。これらの知見は、新たな高周波SSVEP-BCI開発に役立つであろう。


幼児虐待の連鎖-サルを対象とした不適切養育行動の世代伝達の研究

三輪美樹、中村克樹

家族単位で生活しているコモンマーモセットを対象として、幼児期に受けた不適切養育行動の次世代への伝達について検討している。その結果、行動発現の結果生じた創傷を異味異臭の創傷治療薬で処置することにより更なる行動発現が抑制され、次の出産時には発現が消失あるいは軽減することを、複数家族で確認することができた。また次世代での検討を実施するため対象個体での繁殖を開始した。


ニホンザルにおける母から子へのアクティブ・フードシェアリングに関する観察研究

中村克樹、鴻池菜保、鈴木比呂美

放飼場にて、子に対し積極的にイモを食べさせようとする行動が観察された母サルの行動が、ケージ内でも再現されることがわかった。ビデオ記録を行なったので、今後行動解析をおこなっていく。


眼球運動を指標としたコモンマーモセットの認知機能の研究

池田琢朗、中村克樹

コモンマーモセットの認知機能とその神経基盤を明らかにすることを目的に、眼球運動の測定系を開発し行動実験課題を設計した。安定した測定記録系を確立し基本的な課題の訓練を終え、現在より認知的な課題の訓練を進めている。


サルにおける観察恐怖学習の検討

岩沖晴彦、中村克樹

社会生活を送る動物にとって他個体の行動から学習することは生存確率を高める重要な能力である。ある生物や物体が恐怖の対象であるか否かを、ヒトは観察のみから学習し避けることができる。マカクザルにこの能力があるか否かを検討することを目標に実験を行なった。


主観的輪郭知覚に伴う神経回路ダイナミクス‐回転運動を用いた検討

竹本篤史、中村克樹

輪郭・形状の主観的な知覚体験を生み出す神経回路のダイナミクスを明らかにするため、回転運動する主観的図形を知覚させる視覚刺激を用いたヒトの心理物理学実験を行い、主観的輪郭生成の時空間要因を検討した。


コモンマーモセットの単回投与麻酔下における呼吸動態の検討

鴻池菜保、三輪美樹、石上暁代(技術職員)、中村克樹

ケタミン/キシラジン/アトロピン3剤およびアルファキサロン単剤の2プロトコールを用いて、麻酔薬投与前後の経皮的酸素飽和度および動脈血酸素分圧を計測した。その結果、麻酔薬投与後に著名な血中酸素レベルの低下が見られ、麻酔時には適切な呼吸サポートが必要と考えられた。



ものの硬さに関するラバーハンドイリュージョンの研究

金侑璃、中村克樹、勝山成美(東京医科歯科大学)、泰羅雅登(東京医科歯科大学)

触ったものの硬さに関してラバーハンドイリュージョンの現象が起こるか否かを行動学的に検討し、ラバーハンドイリュージョンによって硬さの評価が変わることが分かった。現在、この実験をMRI装置内で行う課題を開発し、課題遂行中の被験者の脳活動をMRIを用いて計測すべく準備を進めている。


コモンマーモセットにおけるプレパルスインヒビション(PPI)測定系の確立

櫨原慧、中村克樹

現在、コモンマーモセットを対象として精神疾患のバイオマーカーとなり得るPPIの測定系の確立に取り組んでいる。ヒトや他のサル種で行われているPPI測定を参考にし、音刺激や装置の作製を行った。


マーモセットにおける利他行動と家族関係についての研究

坂田良徳、中村克樹

コモンマーモセットは、高い寛容性や利他的な行動を示す。こうした利他行動に家族関係が与える影響を明らかにすることを目的とし、実験の準備を進めた。


<研究業績>

原著論文

Konoike N, Miwa M, Ishigami A, Nakamura K (2017) Hypoxemia after single-shot anesthesia in common marmosets. Journal of Medical Primatology, 46, 70-74.

#Takaji M, Takemoto A, Yokoyama C, Watakabe A, Mizukami H, Ozawa K, Onoe H, Nakamura K, Yamamori T (2016) Distinct roles for primate caudate dopamine D1 and D2 receptors in visual discrimination learning revealed using shRNA knockdown. Scientific Reports, 6, 35809.

Wakita M (2016) Interaction between Perceived Action and Music Sequences in the Left Prefrontal Area. Front Hum.

Neurosci., 10, 656.


その他の執筆

中村克樹「脳を鍛えたい 皆伝!新あたま道場」問題作成 毎日新聞、2016-2017

中村克樹「中村克樹のDo you 脳?」(隔週連載) 毎日新聞、2016


学会発表等

Konoike N, Miwa M, Ishigami A, Nakamura K (2016) Hypoxemia after single-shot anesthesia in common marmosets. The 39th annual meeting of the Japan Neuroscience Society, Yokohama, July, 2016.

Miyabe-Nishiwaki T, Miwa M, Konoike N, Kaneko A, Ishigami A, Natsume T, Nakamura K (2016) Evaluation of anesthetic and cardiorespiratory effects after intramuscular administration of alfaxalone alone, alfaxalone-ketamine or alfaxalone- butorphanol -medetomidine in common marmosets (Callithrix jacchus). IPS APS Chicago, August, 2016.

Miyachi S (2016) Intentional and automatic motor rhythm control in human and monkey. Annual Meeting, Society for Neuroscience, San Diego, Nov. 11th, 2016.

Nakamura K (2017) Characteristics of learning abilities in common marmosets. 2017 Asia-Oceania Regional Meeting for Marmoset Research, March, 2017.

Tanabe S, Uezono S, Tsuge H, Fujiwara M, Nagaya K, Sugawara M, Miwa M, Konoike N, Kato S, Nakamura K, Kobayashi K, Inoue K, Takada M (2016) Comparison of the efficiency of retrograde gene transfer between lentiviral vectors pseudotyped with FuG-E and FuG-B2 glycoprotein in primate brains: Striatal input system. The 39th annual meeting of the Japan Neuroscience Society, Yokohama, July, 2016.

Tsuge H, Uezono S, Tanabe S, Fujiwara M, Nagaya K, Sugawara M, Miwa M, Konoike N, Kato S, Nakamura K, Kobayashi K, Inoue K, Takada M (2016) Comparison of efficiency of retrograde gene transfer between lentiviral vectors pseudotyped with FuG-E and FuG-B2 glycoprotein in primate brains: Cortical input system. The 39th annual meeting of the Japan Neuroscience Society, Yokohama, July, 2016.

Wakita M (2016) Vocal communication in non-human primates revisited: Small New World monkey, big new horizon? In contributed symposium ‘Marmoset cognition:clue for understanding cognitive evolution in social animals’. 31st International Congress of Psychology, Yokohama, July, 2016.

#平川玲子、三輪美樹、石割桂、井上貴史、中村克樹、佐々木えりか(2016) ワタボウシタマリンでの非侵襲的受精卵採取の試み. 第6回日本マーモセット研究会大会、 東京大学、 2016/12/12-14

石上暁代、兼子明久、三輪美樹、中村克樹(2016) 京都大学霊長類研究所におけるマーモセットの健康診断. 第6回日本マーモセット研究会大会、東京大学、 2016/12/12-14

#伊藤浩介、禰占雅史、鴻池菜保、中田力、中村克樹(2016) 無麻酔アカゲザルにおける頭皮上聴覚誘発電位の長潜時成分:記録法と成分同定. 第46回日本臨床神経生理学会学術大会、 福島県郡山市、 2016/10/27-29

三輪美樹、福田真嗣、井上貴史、兼子明久、石上暁代、中村克樹(2016) マーモセット下痢治療法としての腸内細菌叢移植. 第6回日本マーモセット研究会大会、東京大学、 2016/12/12-14

三輪美樹、鈴木比呂美、中村克樹(2016) コモンマーモセットのTwin-fight. 第25回サル疾病ワークショップ2016麻布大学、 2016/7/2

仲子 友和、竹本 篤史、小谷 真奈斗、鴻池 菜保、中村 克樹、池田 和仁(2016) タッチパネルを用いた客観的な意欲評価法の作製. 第6回日本マーモセット研究会大会、東京大学、 2016/12/12-14

中村克樹、鴻池菜保、三輪美樹、本澤史章、染谷成則(2016) マーモセットMRI撮像用保温ベスト. 第6回日本マーモセット研究会大会、東京大学、 2016/12/12-14

中村克樹、三輪美樹、鈴木比呂美、木場礼子、山口智恵子、竹本篤史(2017) コモンマーモセットの認知機能検査. 第6回生理研-霊長研-脳研シンポジウム、新潟大学研究所、2017/3

酒多穂波、伊藤浩介、鈴木雄治、中村克樹、渡辺将樹、五十嵐博中(2017) 事象関連fMRIによる自由な意図の神経基盤の検討. 第6回生理研-霊長研-脳研シンポジウム、新潟大学研究所、2017/3

竹本篤史、中村克樹(2017) 線条体尾状核ドーパミン受容体D2Rの発現抑制によるコモンマーモセットの行動変化. 第6回日本マーモセット研究会大会、東京大学、2016/12/12-14

#竹本篤史、高司雅史、横山ちひろ、渡我部昭哉、水上浩明、小澤敬也、尾上浩隆、山森哲雄、中村克樹(2016) 線条体尾状核ドーパミン受容体D2Rの発現抑制によるコモンマーモセットの行動変化. 第6回生理研-霊長研-脳研シンポジウム、新潟大学研究所、2017/3


講演

中村克樹(2016) 子供にしてほしいこと、してはいけないこと 新幼児教育研究会 2016/7/25

中村克樹(2016) 脳の働きの不思議 名古屋市中村区傾聴ボランティア 2016/10/2

中村克樹(2016) 脳の不思議 兵庫県小野市体験授業 2016/10/26

中村克樹(2016) 子育てに大切なこと 松山市愛光幼稚舎 2016/11/6

宮地重弘(2016) 研究活動および神経科学についての講演「岡崎北高キャリア講演会」2016/9/13、犬山市


 

京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > Vol.47 目次

 

. 研究教育活動

1. 研究部門及び附属施設

(研究業績に記した#は共同利用研究の成果に基づくもの)

 

統合脳システム分野

<研究概要>

先端的神経ネットワーク解析による霊長類大脳眼球運動制御システムの構造と機能の解明

高田昌彦、 井上謙一、 二宮太平

(1)狂犬病ウイルス(RV)ベクターを用いた眼球運動関連皮質領野の投射様式と多シナプス性入力様式の解析については、研究代表者らがすでに開発済みである高発現型multi-color RVベクターを用いた逆行性越シナプス的多重トレーシングを、実際に眼球運動関連皮質領野において実施する前に、これまで実績のある運動前野(背側部および腹側部)にまず適用し、トレーシングシステムの検証をおこなうとともに、運動前野に由来する大脳皮質―大脳基底核ループ回路の構造基盤を解析し、現在、得られたデータを原著論文にまとめる準備を進めている。

(2)多領域多点同時記録による眼球運動関連ネットワークダイナミクスの解析については、研究代表者らがすでに導入済みである多領域多点同時記録法を用いて、眼球運動課題遂行中のマカクザルの眼球運動関連皮質領野、大脳基底核、上丘から同時記録をおこなう実験システムのセットアップを進めている。

(3)神経路選択的な光遺伝学的抑制法や化学遺伝学的抑制法の確立については、研究代表者らがすでに霊長類において開発に成功し、最近、原著論文として発表した光遺伝学による神経路選択的刺激法を応用し、搭載遺伝子を交換して光遺伝学的抑制法を霊長類で確立するためのウイルスベクターの作製を進めている。


サル脊髄損傷モデルを用いた代償性神経回路再編メカニズムの解明

高田昌彦、 中川 浩、 山中 創

脊髄損傷後の機能回復と神経回路再編のメカニズムを明らかにするため、解剖学的および生理学的にヒトに近縁のマカクザルを用いて、脊髄損傷後に起こる皮質脊髄路の代償性変化を同定し、運動機能回復との相関を解析することを目的とし、以下4点の項目を実施した。(1)サル脊髄損傷モデルの作製、(2)脊髄損傷後の運動機能の解析、(3)脊髄における代償性神経回路の形成様式の解析、(4)代償性神経回路の機能回復への寄与の検証を完了し、得られた実験データをまとめて原著論文を作成し、現在、国際誌に投稿中である。また、追加項目である「大脳皮質における代償性神経回路の形成様式の解析」についても、現在、脊髄損傷モデルを作製し、逆行性ニューロンラベルをおこなう準備を進めているところである。


パーキンソン病サルモデルの多領域多点同時記録による集団発振現象および同期化の探索

高田昌彦、 二宮太平、 McCairn Kevin.William

(1)サルの課題トレーニング、記録部位の同定、およびコントロールデータの取得:まず1頭のニホンザルを用いて、単純なボタン押し課題をトレーニングし、トレーニング終了後、頭部固定器具および記録用チャンバーの取り付け手術をおこなった。MRIを撮像後、電気生理学的マッピングの結果に従って、大脳皮質、大脳基底核、視床、小脳における記録部位を決定し、コントロールデータを取得した。

(2)パーキンソン病サルモデルの作製およびモデルにおける多領域多点同時記録:マッピングおよびコントロールデータ取得が完了したサルにMPTPを静脈注射により投与し、パーキンソン病モデルを作製した。作製したサルモデルにおいて、コントロールデータ取得時と同様にして、安静時および課題遂行中の大脳皮質、大脳基底核、視床、小脳から神経活動(単一ユニット活動と局所電場電位)の同時記録を実施している。


霊長類の大脳―小脳―基底核ネットワークにおける運動情報処理の分散と統合

高田昌彦、 井上謙一、 二宮太平

(1)狂犬病ウイルスを用いた解析【構造解析】

開発に成功した4種類の異なる蛍光蛋白を発現する狂犬病ウイルスベクターの更なる改良をおこない、特にサル脳における逆行性越シナプス的多重トレーシングの最適化を図った。これらのベクターを利用して、複数の皮質領野に入力する多シナプス性ネットワークの構築様式を単一サル個体で解析するため、4種類のベクターを前頭前野の異なる4つの領域(9野、46d野、46v野、および12野)に注入した個体群と、2種類のベクターを運動前野の異なる2つの領域(背側部および腹側部)に注入した個体群を作製し、他の皮質領野や大脳基底核におけるニューロンラベルの分布を解析している。特に後者については、現在、得られたデータを原著論文として発表する準備を進めている。

(2)神経路選択的操作モデルサルの作製【介入解析】…詳細省略

(3)神経路選択的操作モデルサルの機能解析【介入解析】…詳細省略


マーモセットの高次脳機能マップの作成とその基盤となる神経回路の解明および研究環境の提供

高田昌彦、 大石高生、 井上謙一、 上園志織

(1)マーモセットの大脳を巡る多シナプス性神経回路の解析

前部および後部帯状皮質への狂犬病ウイルスベクター注入実験を継続し、大脳基底核および小脳からの多シナプス性入力の構築様式が前部帯状皮質と後部帯状皮質で異なっていることが明らかになり、このことはそれぞれの領域の機能の違いを反映していると考えられる。加えて、狂犬病ウイルスベクターを用いた逆行性越シナプス的多重トレーシング法における、ベクター注入からデジタルスライド解析装置による撮像、解析までのパイプラインをほぼ確立した。

(2)疾患/病態モデルマーモセットの作出

福島県立医科大学の小林和人教授との連携により、マカクザル脳で高い逆行性感染能を示したNeuRet(FuG-E型)ベクターとHiRet(FuG-B2型)ベクターのマーモセット脳における外来遺伝子の導入効率を線条体および大脳皮質への入力系において比較、検討した。また、片側性パーキンソン病モデルマーモセットの運動機能を評価するために開発した行動解析システムを利用し、2頭のマーモセットにおいてタスクトレーニングを完了した。

(3)片側性パーキンソン病モデルマーモセットの運動機能を評価するための光学センサー式高速高精度自動計時機能付き行動解析システムを開発した。


マカクザルを用いた脊髄損傷後の中枢への物理的刺激による可塑性制御機構の解明

高田昌彦、 大石高生、 中川 浩、 山中 創

マカクザルを用いて頸髄下部(C6/C7レベル)において片側2/3を傷害した脊髄損傷モデルを作製した。本研究では脊髄損傷サルモデルにおいて一次運動野(特に手指領域)をターゲット部位にした経頭蓋磁気刺激(TMS)を施行した。まず、局所刺激が可能なTMS装置の構築と効果的な刺激条件の検討をおこなった。TMSの施行システムについては、他大学と連携し、刺激部位の再現性を担保するためのTMSコイルのポジショニング法、およびサルの頭部固定法を確立した。また、TMSの至適条件についても頻度を1週あたり3〜5回刺激強度を15〜20 Hzに決定した。運動機能の回復過程における行動学的解析には、2種類の精密把持動作を定量的に評価できる方法を採用した。訓練を終えた2頭を用いて脊髄損傷手術を実施し、抗体治療とTMSの併用による複合的治療を行い、経時的な運動機能回復を調べた。その結果、損傷後6週目以降に運動機能の回復がみとめられた。


自然発症の難病と考えられるニホンザルに関する研究

大石高生、高田昌彦、今井啓雄(ゲノム進化)、平井啓久(ゲノム進化)、今村公紀(ゲノム進化)、釜中慶朗(NBRP)、森本真弓(技術部)、兼子明久(技術部)、宮部貴子(人類進化モデル研究センター)、橋本直子(技術部)、平崎鋭矢(進化形態)、木下こづえ(細胞生理)、郷康弘(自然科学研究機構)、東超(奈良県立医大)

早老症様の症状を示したニホンザルに関して、脳の元素分析を行った。一部の必須微量元素の減少が観察された。顔貌と骨格に異常の見られる若桜群のサルの家系に関して、血液、尿、骨格、行動の検査を継続した。まれな遺伝病である可能性が高まったため、遺伝子解析を開始した。


光操作による神経ネットワーク解析技術の開発

井上謙一

効果的な光刺激を実現するウイルスベクターを用いた遺伝子導入手法の開発として、神経細胞選択的かつ高発現型プロモーターの開発をおこなった。また、Tet-Offシステムを利用して、神経細胞選択性を保ちつつ極めて高い外来遺伝子発現能を持つAAVベクターシステムを開発した。また、上丘における 眼球運動制御メカニズムの解明のため、光刺激系、記録系、およびタスクプログラムの構築を行うとともに、サルのチェアートレーニングを行った。


サル脊髄損傷モデルにおける大脳皮質運動関連領野の可塑性変化機構の解明

中川浩

本研究では、サル脊髄損傷後の大脳皮質運動関連領野ごとの神経細胞の可塑性変化と運動機能回復との関係性について、樹状突起スパインと樹状突起の複雑さを指標として解剖学、行動学的に明らかにすることを目的とした。現在まで、ノーマルコントロール1頭について解析が終了しており、運動関連領野における5層錐体細胞の形態学的特徴について一定の所見を得ることが出来た。


霊長類うつ病モデルを用いた「セロトニン1Bレセプター仮説」の検証

山中創

リポポリサッカライド(LPS)惹起性うつ病モデルの作製するための行動評価系の確立を実施した。スクロース嗜好性テストの甘味に対する選好性、摂餌量、摂水量、行動量の4つの行動指標を測定対象とし、それぞれの実験設備の構築および実際にアカゲザルに実施し最適化を図った。スクロース嗜好性テストにおいては最適なスクロース濃度を特定するために6頭を対象に8つのスクロース濃度(0.1%から3.0%の範囲内)を提示し、スクロース水の消費量および%Preferenceを算出し、濃度反応曲線を作製した。その結果、0.25%スクロース濃度よりスクロース水の消費量が濃度依存的に増加し、その増加は1.5%スクロース濃度まで続いた。それ以降は飽和状態に達し、一定の170 mL/kg前後の消費量を示した。また、%Preferenceにおいては0.25%スクロース水より90%に達した。このような結果から0.25%と1.0%のスクロース濃度がアカゲザルのうつ状態を把握する上で有用であると考えられた。さらに、摂餌量、摂水量、行動量を同時に測定できるようなシステム構築を実施している。


<研究業績>

原著論文

Kimura K, Inoue K, Kuroiwa Y, Tanaka F, Takada M 2016: Propagated but Topologically Distributed Forebrain Neurons Expressing Alpha-Synuclein in Aged Macaque. PLoS ONE 11: e0166861.

#Nagai Y, Kikuchi E, Lerchner W, Inoue K, Ji B, Eldridge MAG, Kaneko H, Kimura Y, Oh-Nishi A, Hori Y, Kato Y, Kumata K, Zhang M-R, Aoki I, Suhara T, Takada M, Higuchi M, Richmond BJ, Minamimoto T 2016: PET imaging-guided chemogenetic silencing reveals a critical role of primate rostromedial caudate in reward evaluation. Nat Commun 7: 13605.


著書(分担執筆)

#Kobayashi K, Kato S, Inoue K, Takada M, Kobayashi K 2016: Altering entry site preference of lentiviral vectors into neuronal cells by pseudotyping with envelope glycoproteins. In Manfredsson FP, ed: Gene Therapy for Neurological Disorders: Methods and Protocols, Methods in Molecular Biology, vol 1382, Springer, pp175-186.

高田昌彦 2016: 前頭連合野の神経解剖学. Brain and Nerve Vol.68 No.11「増大特集 連合野ハンドブック」, 医学書院, pp253-261.


その他の執筆

大石高生、霊長類を用いた脳機能研究:人との違いと共通点。 脳神経外科ジャーナル. 25, 6, 480-484.


学会発表

#Suzuki M, Inoue K, Nakagawa H, Takada M, Isa T, Nishimura Y. Motivation center in the ventral midbrain directly activates the descending motor pathways via the primary motor cortex. 第39回日本神経科学大会 (2016/07/21) パシフィコ横浜, 横浜市.

#Ishida H, Inoue K, Takada M, Hoshi E. Origin of multisynaptic projections from the amygdala to the forelimb region of the ventral premotor cortex in macaque monkeys. 第39回日本神経科学大会 (2016/07/21) パシフィコ横浜,横浜市.

McCairn K.W, Ninomiya T, Nagai Y, Go Y, Inoue K, Kimura K, Matsumoto M, Minamimoto M, Isoda M, Takada M. Investigations of spontaneously naturally emerging parkinsonism-cerebellar syndromein an aged Japanese macaque (Macaca fuscata yakui): a potential analogue of multiplesystem atrophy. 第39回日本神経科学大会 (2016/07/21) パシフィコ横浜,横浜市.

Tsuge H, Uezono S, Tanabe S, Fujiwara M, Nagaya K, Sugawara M, Miwa M, Konoike N, Kato S, Nakamura K, Kobayashi K, Inoue K, Takada M. Comparison of efficiency of retrograde gene transfer between lentiviral vectors pseudotyped with FuG-E and FuG-B2 glycoprotein in primate brains: Cortical input system. 第39回日本神経科学大会 (2016/07/22) パシフィコ横浜,横浜市.

Tanabe S, Uezono S, Tsuge H, Fujiwara M, Nagaya K, Sugawara M, Miwa M, Konoike N, Kato S, Nakamura K, Kobayashi K, Inoue K, Takada M. Comparison of the efficiency of retrograde gene transfer between lentiviral vectors pseudotyped with FuG-E and FuG-B2 glycoprotein in primate brains: Striatal input system. 第39回日本神経科学大会 (2016/07/22) パシフィコ横浜,横浜市.

Inoue K, Tanabe S, Tsuge H, Ueno T, Nagaya K, Fujiwara M, Sugawara M, Kato S, Kobayashi K, Takada M. Use of an optimized chimeric envelope glycoprotein for enhancement of the efficiency of retrograde gene transfer of a pseudotyped lentiviral vector in the primate brain. 第39回日本神経科学大会 (2016/07/22) パシフィコ横浜,横浜市.

#Seki K, S Wupuer, Umeda T, Inoue K, Kudo M, Takada M. In vivo electrophysiological evaluation of chanelrhodopsin-2-expressed dorsal root ganglion neurons in adults rats. 第39回日本神経科学大会 (2016/07/22) パシフィコ横浜,横浜市.

#Kudo M, S Wupuer, Inoue K, Takada M, Seki K. Differential adeno-associated virus mediated gene transfer to dorsal root ganglion neurons with different size in common marmosets. 第39回日本神経科学大会 (2016/07/22) パシフィコ横浜,横浜市.

#Ishida H, Inoue K, Takada M, Hoshi E. Multisynaptic projections from the basal nucleus of the amygdala to the ventral premotor cortex in macaque monkeys. Neuroscience 2016 (2016/11/12) Sun Diego, USA.

Ogasawara T, Takada M, Matsumoto M. Nigrostriatal signal inhibits saccadic eye movement during countermanding task in monkeys. Neuroscience 2016 (2016/11/12) Sun Diego, USA.

Ninomiya T, Nagai Y, Suhara T, Minamimoto T, Takada M, Matsumoto M, Isoda M, McCairn K.W. Prominent phase-amplitude cross-frequency coupling between alpha and gamma oscillations underlies motor-tic encoding in cerebro-basal ganglia-cerebellar networks. Neuroscience 2016 (2016/11/14) Sun Diego, USA.

Fujiwara M, Tanabe S, Tsuge H, Uezono S, Nagaya K, Sugawara M, Kato S, Kobayashi K, Inoue K, Takada M. Use of an optimized chimeric envelope glycoprotein enhances the efficiency of retrograde gene transfer of a pseudotyped lentiviral vector in the primate brain. Neuroscience 2016 (2016/11/16) Sun Diego, USA.

Tsuge H, Uezono S, Tanabe S, Fujiwara M, Sugawara M, Miwa M, Konoike N, Kato S, Nakamura K, Kobayashi K, Inoue K, Takada M. The lentiviral vector pseudotyped with FuG-E glycoprotien is more suitable, compared with FuG-B2, for retrograde gene transfer in the cortical input system of primate brains. 第6回マーモセット研究会 (2016/12/12) 東京大学, 東京都文京区

Sugawara M, Tanabe S, Uezono S, Tsuge H, Fujiwara M, Miwa M, Konoike N, Kato S, Nakamura K, Inoue K, Takada M, Kobayashi K. Differences in efficiency of retrograde gene transfer and cytotoxity between lentiviral vectors pseudotyped with FuG-E and FuG-B2 glycoprotein in primate brains. 第6回マーモセット研究会 (2016/12/12) 東京大学, 東京都文京区

大石高生, 兼子明久, 宮部貴子, 今井啓雄, 平崎鋭矢, 郷康広, 今村公紀, 木下こづえ, 釜中慶朗, 橋本直子, 森本真弓, 平井啓久, 高田昌彦. 霊長類研究所における遺伝病疑い家系に関する報告. 第6回 生理研-霊長研-脳研 合同シンポジウム (2017/03/10) 新潟大学脳研究所統合脳機能研究センター, 新潟市.

Inoue K, Miyachi S, Nishi K, Okado H, Nagai Y, Minamimoto T, Nambu A, Takada M. Prevention of MPTP-induced parkinsonism by recruitment of calbindin into nigral dopamine neurons. The 12th International Basal Ganglia Society Meeting - IBAGS 2017 (2017/03/27-2017/03/29) Merida, Mexico.

上園志織, 柘植仁美, 田辺創思, 藤原真紀, 長屋七奈, 長屋清美, 井上謙一, 高田昌彦. 狂犬病ウイルスベクターを用いた逆行性越シナプス的ラベル法によるマーモセット帯状皮質への入力様式の解明:大脳基底核からの入力について. 第112回日本解剖学会総会・全国学術集会 (2017/03/29) 長崎大学, 長崎.


講演

大石高生. 早老症のサル、シワコの話. くるるサイエンスカフェ(2016/04/05) 十六ビル, 岐阜市.

高田昌彦. 遺伝子改変サルが教えてくれる脳の機能とその障害. 生物科学専攻大学院入試説明会, 2016/04/23, 京都大学理学研究科,京都市.

大石高生. サルの脳、ヒトの脳. くるるサイエンスカフェ(2016/04/26) 十六ビル, 岐阜市.

大石高生. モデル動物としてのサル -サルを知り、ヒトを知る-. 土曜講座 (2016/05/28) 灘高等学校, 神戸市.

大石高生. ニホンザルの「早老症」. シンポジウム「ロドプシン研究を基礎とした研究展開」(2016/06/12) キャンパスプラザ京都, 京都市.

高田昌彦. 脳と心の研究の支援制度について. 第46回日本神経精神薬理学会年会 (2016/7/3) ソウル, 韓国.

大石高生. 脳の地図を書き換える. (2016/07/08) 学校法人西丹学園関西学研医療福祉学院, 奈良市.

井上謙一. Primate models for elucidating the circuit pathology of nigrostriatal dopamine system. 第39回日本神経科学大会サテライトシンポジウム:大脳基底核の機能と疾患:基礎と臨床 (2016/7/19) 横浜市.

井上謙一. 霊長類におけるウイルスベクターを利用した神経回路の光操作. ルミノジェネティクス研究会 (2016/07/23) KKRホテル熱海,熱海市

高田昌彦. αシヌクレイン過剰発現によるパーキンソン病霊長類モデルの開発. 第2回α-Synuclein研究会 (2016/07/25) 大阪万博公園 迎賓館, 吹田市

Inoue K. Manipulation of primate neural networks by means of modified viral vectors. NHP Chemogenetics Workshop (2016/12/1) National Institute of Health, Bethesda, USA.

Inoue K. Studying the structure and function of primate brain by using viral vectors. The 7th International Neural Microcircuit Conference (2016/12/08) 自然科学研究機構 岡崎コンファレンスセンター, 岡崎市.

Takada M. Protection against parkinsonism by calbindin recruitment into nigral dopamine neurons. Mini Symposium on Non-Human Primate Biology (2016/12/22) Institute of Neuroscience, Chinese Academy of Sciences, Shanghai, China.

井上謙一. ウイルスベクターを利用した霊長類における神経ネットワーク操作 第6回 生理研-霊長研-脳研 合同シンポジウム (2017/03/10) 新潟大学脳研究所統合脳機能研究センター, 新潟市.