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京都大学霊長類研究所
郵便番号484-8506
愛知県犬山市官林
TEL. 0568-63-0567(大代表)
FAX. 0568-63-0085

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2010年 京都大学霊長類研究所 オープンキャンパス
大学院ガイダンス

2009年11月18日修正


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  日 程
  2010年 2月22日(月) 〜2月23日(火)
 定 員
  約60名
 場 所
  京都大学霊長類研究所 (愛知県犬山市)
 問合せ先:霊長類研究所総務掛
E-mail:
TEL: 0568-63-0512
FAX: 0568-63-0085
 内 容
オープンキャンパスは大学院受験希望者および霊長類学に興味のある大学生(主に学部2-4年生)を対象に開催されます。霊長類研究所で現在行っている研究を紹介し、最新の研究成果について分かりやすく解説します。講義の合間には、所内見学や教員との懇談会も予定しています。実際の研究の様子を直接見たり聞いたりし、大学院の研究について教員に相談することもできます。

2/22(1日目) 9:30より受付を開始し10:00より講義をはじめる予定です。

所内見学について

各分科ごとの懇談会について

オープンキャンパス スケジュールと講義内容

 

 霊長類研究所とは
 京都大学霊長類研究所は、1967年に附置された共同利用・共同研究拠点です。京都大学理学研究科生物科学専攻霊長類学・野生動物系として、修士課程および博士課程の大学院教育を行い、若手研究者を育成しています。生態学、社会学、認知科学、神経科学、遺伝学、ゲノム科学、生物医学、形態学、古生物学などの幅広い研究分野で構成され、多様なサルを対象に学際的な基礎研究のできる機関として世界に知られています。
 オープンキャンパス参加申込について
参加費: 無料

応募締切:2010年1月15(金) 
オープンキャンパスの募集を延長します(締切日:平成22年1月31日(日))
ただし、延長分につきましては共同利用宿泊施設の予約はできません。

<参加の申し込み方法>

<電子メールでの申込>
以下のフォームをメールにコピーしてE-mail:まで申し込んでください。なお、このフォームによる申込は、確実に連絡の取れる電子メールアドレスをお持ちの方に限らせていただきます。電子メールアドレスをお持ちでない方は封書で申し込んでください。

すべての項目に記入してください。とくに共同利用宿泊施設を利用される方は、正確な記入をお願いします。(今年度は宿泊棟耐震工事の関係で宿泊可能な人数が限られます)

締切:2010年1月31日(日曜日)

◆ メールで申し込みされた場合、「申し込み受付完了」を確認するメールが担当より送られます。申込後、数日経っても、確認メールが届かない場合は総務掛まで必ず問い合わせをしてください。
問い合わせ先:霊長類研究所総務掛
TEL:0568-63-0512
FAX:0568-63-0085
E-mail:

☆ 参加希望者多数の場合は抽選となります。採否の通知は、締切日(2010年1月15日)以降に電子メールでお知らせします。

<送信フォーム>
 2010年霊長類研究所オープンキャンパスへの参加を希望します。
1) 氏名(シメイ):
2) 年齢:
3) 性別: 男 ・ 女

<所属>
4) 大学名:
5) 学部・学科名:
6) 学年:

<連絡先>
7) E-mail:
8) 郵便番号:
9) 住所:
10)電話番号:

<共同利用宿泊施設利用希望>(宿泊費 1泊 1,650円 2泊 2,370円 利用できる人数に限りがあります)
11)2/21(日) 宿泊希望 ・ 希望なし
12)2/22(月) 宿泊希望 ・ 希望なし

<所内見学希望コース>(2つまで選択可・コース名を記入)
14)       コース
15)       コース

<各分科ごとの懇談会希望>(2つまで選択可・分科名を記入)
16)       分科
17)       分科

<送信フォーム終わり>


<封書での申込>
すべての項目に記入してください。とくに共同利用宿泊施設を利用される方は、正確な記入をお願いします。

返信用封筒(定形封筒)に80円切手を貼り、住所・氏名を書いて同封してください。
採否の通知・資料の送付に用います。

宛先
〒484-8506 愛知県犬山市官林41-2
      京都大学霊長類研究所 オープンキャンパス 係

「オープンキャンパス参加申込」と朱書すること。

締切:2010年1月31日(日曜日)

☆ 参加希望者多数の場合は抽選となります。採否の通知は、締切日(2010年1月15日)以降に郵便でお知らせします。

<封書での申込事項>
印刷して記入していただいても結構です。

2010年霊長類研究所オープンキャンパスへの参加を希望します。
1)氏名(シメイ):
2)年齢:
3) 性別: 男 ・ 女

<所属>
4) 大学名:
5) 学部・学科名:
6) 学年:

<連絡先>
7) E-mail:
8) 郵便番号:
9) 住所:
10)電話番号:

<共同利用宿泊施設利用希望>(宿泊費 1泊 1,650円 2泊 2,370円 利用できる人数に限りがあります)
11)2/21(日) 宿泊希望 ・ 希望なし
12)2/22(月) 宿泊希望 ・ 希望なし

<所内見学希望コース>(2つまで選択可・コース名を記入)
14)       コース
15)       コース

<各分科ごとの懇談会希望>(2つまで選択可・分科名を記入)
16)       分科
17)       分科


個人情報については「京都大学における個人情報の保護に関する規定」に基づいて取り扱います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


霊長類研究所 オープンキャンパス 大学院ガイダンス

<所内見学について>

所内見学は2月22日(月)と、23日(火)の2回、同じ内容で行います。以下の10コースの中から、2つ選ぶことができます。申し込みの際に、希望するコースを2つ選んでお知らせください。

1:進化形態分科(進化形態分野コース)「かたちを見よう〜形態学のすすめ」
 人体骨格模型やサル骨格標本、化石模型などに実際に触れながら、研究室・教員の紹介を行います。

2:系統発生分科(系統発生分野コース)「骨から過去を探る」
 化石発掘調査で実際に行っている化石模型作成などを体験してもらいながら、教員や院生が行っている野外調査や研究を紹介します。

3:ゲノム多様性分科(ゲノム多様性分野コース)「研究内容の紹介」
 霊長類の野生個体群や飼育個体群を対象にした遺伝学的研究、および哺乳類の進化機構の解明を目指すゲノムの研究を紹介します。また、実験室や関連施設を案内します。

4:社会生態分科(生態保全分野・社会進化分野コース)
 「スライドを使った野外調査の紹介」
 若手研究者と大学院生が、現在、各地で行っている研究や、調査地の様子などを交えて紹介します。

5:思考言語分科(思考言語分野コース)「チンパンジーの研究施設の紹介」
 チンパンジーが暮らす施設の見学を行います。

6:認知学習分科(認知学習分野コース)「ヒトを含めた霊長類の認知機能の研究」
 教員及び大学院生が行っている研究の紹介や実験室の見学を行います。

7:高次脳機能分科(高次脳機能分野コース)「行動決定の脳内機構」
 教員及び大学院生等による実験の紹介や実験室の見学を行います。

8:統合脳システム分科(統合脳システム分野コース)「脳を構成する神経回路を探る」
 教員及び大学院生等による研究内容の紹介と、研究室の案内を行います。

9:ポストゲノム科学分科(遺伝子情報分野コース)「霊長類ポストゲノム研究とは?」
 教員及び大学院生が行っている研究を紹介し、実験室や実験機器を見てもらいます。

10:実験動物科学分科(人類進化モデル研究センターコース)
「霊長類の実験動物学的研究とは」
 研究室、実験室ならびに飼育施設を教員が紹介します。

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霊長類研究所 オープンキャンパス 大学院ガイダンス

<各分科ごとの懇談会について>

分科ごとの懇談会は、2月22日(月)と23日(火)の2回、行われます。希望者は、1日目と2日目にそれぞれ違う分科の懇談会に参加できます。とくに希望がなければ、懇談会に参加する必要はありませんし、1日だけ参加する事も可能です。懇談会では入学試験の方法、霊長類研究所で行われている教員や大学院生の研究活動などについて、具体的な話を聞くことができます。
懇談会の参加を希望される方は、申込の際に希望する分科をお知らせください。講義等を聞いた上で、希望を変更したり追加する事も可能です。
分科・分野の詳細はホームページをご覧ください。
※ 分科とは、霊長類研究所における大学院教育の組織単位です。大学院入学試験は分科ごとに行われています。

分科(分野)教員

1:進化形態分科
進化形態分野:濱田穣、毛利俊雄、國松豊

2:系統発生分科
系統発生分野:高井正成、西村剛、江木直子

3:ゲノム多様性分科
ゲノム多様性分野:古賀章彦、川本芳、田中洋之

4:社会生態分科
生態保全分野:渡邊邦夫、半谷吾郎、橋本千絵
社会進化分野:古市剛史、マイケル・A・ハフマン、辻大和

5:思考言語分科
思考言語分野:松沢哲郎、友永雅己、林美里

6:認知学習分科
認知学習分野:正高信男、松井智子、香田啓貴

7:高次脳機能分科
行動発現分野:中村克樹、宮地重弘、脇田真清

8:統合脳システム分科
統合脳システム分野:高田昌彦、大石高生、松本正幸

9:ポストゲノム科学分科
遺伝子情報分野:平井啓久、今井啓雄、中村伸

10:実験動物科学分科
人類進化モデル研究センター:景山節、松林清明、明里宏文、鈴木樹理、宮部貴子


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霊長類研究所オープンキャンパス・大学院ガイダンス

2月22日(月)

9:30-10:00 受付

10:00-10:10 開会の挨拶
松沢哲郎(霊長類研究所長)

10:10-10-30 大学院入試に関するガイダンス
半谷吾郎(大学院世話役)

10:30-11:10 講義1「人間性って何だろう」
正高信男(認知学習分科)

11:10-11:50 講義2「化石の研究からなにがわかるのか」
高井正成(系統発生分科)

11:50-12:50 昼食(昼食弁当のご希望は、当日受付で引換券<1食500円>を購入して下さい)

12:50-13:50 所内見学1

13:50-14:00 休憩

14:00-14:40 講義3「動く遺伝子」
古賀章彦(ゲノム多様性分科)

14:40-15:20 講義4「霊長類ポストゲノムの展望と課題」
今井啓雄(ポストゲノム科学分科)

15:20-15:30 休憩

15:30-16:10 講義5「新興再興感染症の霊長類モデル開発:困難への挑戦」
明里宏文(実験動物科学分科)

16:10-16:20 休憩

16:20-17:40 各分科の教員との懇談会1

18:00-20:00 懇親会(夕食を兼ねての立食形式の懇親会です。参加費1,000円。教員や大学院生とのコミュニケーションの場となります。)

 

2月23日(火)

9:30-10:10 講義6「ニホンザルの人口変動と社会変動」
半谷吾郎(社会生態分科・生態保全分野)

10:10-10:50 講義7「類人猿とヒトの社会構造の進化」
古市剛史(社会生態分科・社会進化分野)

10:50-11:00 休憩

11:00-11:40 講義8「チンパンジーのこころを探る」
友永雅己(思考言語分科)

11:40-12:40 昼食

12:40-13:40 所内見学2

13:40-13:50 休憩

13:50-14:30 講義9「形態の語るもの」
濱田穣(進化形態分科)

14:30-14:40 休憩

14:40-15:20 講義10「ヒトの脳は特別か?」
中村克樹(高次脳機能分科)

15:20-16:00 講義11「霊長類脳科学の新しい展開」
高田昌彦(統合脳システム分科)

16:00-16:10 休憩

16:10-17:30 各分科の教員との懇談会2

*時間、内容などは断りなく変更する場合がありますので、ご了承ください

 


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人間性って何だろう。

認知学習分野 正高信男

 一九九〇年代後半に入って、思春期に入った子どもによる凶悪事件が続発し、マスコミの話題となっているのは、周知のとおりである。「キレる」ということばも、すっかり定着した感がある。
 事件が報ぜられるたびに、「心の闇」という表現が登場する。けれどもこういった発想は根本的なところで、問題の本質を見誤っている気が私には、してならない。
 もっとも、一部の識者のように、同様の事件が増加していないと主張するつもりはない。なるほど彼らの指摘するように、数だけ見れば一〇代の犯行は、第二次世界大戦後まもないころの方が、今よりはるかに多いだろう。また今日でも、中高年の犯罪件数が若年層を上回っているのは事実である。
 だが問題は、動機である。金銭に困って罪を犯すのと、そうでないものを区別しない議論は、まったく意味がない。詳細が明らかになったのちも、「どうしてこんなことを・・・」と行動の理解に苦しむ事件は、まちがいなく増えているだろう。その上で敢えて、「心の闇」というレッテルを貼ることは見当はずれと思えてならないのだ。
 「キレる」という表現が多用されるきっかけとなったのは、一九九七年五月に起こった神戸での、少年Aによる年下の友人の殺害であった。翌年の一月には、栃木県黒磯市の中学校で、中一の生徒が女性教諭をナイフで刺し殺した。二月には東京の中三が、警官のピストルを奪う目的で殺人を企て、未遂に終わったと報じられた。以後も、同様のニュースの数は増えこそすれ、いっこうに減少の気配を見せていない。
 なるほど確かに、数だけに注目するならば、これらの事件の絶対数は所詮、微々たるものであるのは指摘のとおりである。マスコミがことさらセンセーショナルに、取り上げているという批判も、全く的外れとは言えないだろう。
 けれども本当に留意しなくてはならないのは、行動の質が変わってきたことの方ではないだろうか。例えば黒磯の中学生は、クラスメートが大勢いる衆目の面前で、教師の女性にナイフをかざした。しかしそれでも、相手がたじろがないと見るや、刺すに至った。
 少年は、「自分には力がある。教師ですら自分には屈服するのだ」という事実を、同じ学校に通う仲間に誇示したかった。だが相手が、意の通り振る舞わなかった点にこの事件の最大の不幸があった。「キレる」と呼ばれる現象を特徴づけているのは、行動に走る者の短絡性と動機の不明性にある。言いかえれば、衝動的としか把握できない点が従来と異なるのである。そして解釈不能ゆえにこそ、「心の闇」と取り沙汰されるのだろう。私たちが自分自身の行いを説明できるのは程度の差こそあれ、心のなかでことばによる判断を下しているからにほかならない。人間は外界へ向けて表明することなくとも、言語情報を操作することができる。心理学者はこれを内的言語と呼ぶ。およそ思考というものの基礎とされてきた。講義ではそういう能力の進化さいてきた背景について話す予定にしている。

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「化石の研究からなにがわかるのか」

高井正成(系統発生分科)

生物が死ぬと体は朽ち果てて最後はなにも残りません。しかし体の硬組織である骨や歯は、組織がケイ素などの鉱物に置換されることにより化石化することがあります。こういった生物の遺体の痕跡をもとに、生前の姿を復元し、形態的な進化や分布の変遷をたどることにより生物の進化史を解明しようとするのが古生物学です。我々の研究室ではサルの化石を中心に、新生代(約6500万年前から現在まで)の哺乳類の化石の研究をしています。
化石の研究は基本的に形態学的な手法で進められます。とにかく「物」がないと話が進まないので、化石を見つけにでかけます。サルの化石は日本ではあまり見つからないので、海外に発掘調査に行くことが多くなります。現在、霊長研ではアフリカと東南アジアで発掘調査をおこなっています。我々の研究室では東南アジアのミャンマー中部で調査を続けていて、サルを含む哺乳類化石を次々と見つけています。今回はこういった発掘調査で見つけた哺乳類化石とその研究方法を紹介します。
ミャンマー中部に分布するイラワジ層という地層は、後期中新世から中期更新世(約800?50万年前)のもので、陸生動物の化石が豊富にみつかることで有名です。20世紀初頭からゾウ、サイ、ウシ、カバ、食肉類など様々な哺乳類の化石の報告がされてきたのですが、不思議なことにサルの化石はひとつも含まれていませんでした。ミャンマーを含む現在の東南アジアは、ニホンザルを含むマカク類のサルや、リーフモンキーとよばれる葉食性のサル、そしてテナガザルなど様々なサル達が生息しています。これらのサル達はアフリカを起源として数百万年前には東南アジアにまで進出してきたことがわかっていたのですが、不思議なことにこれまで化石の報告が無かったのです。
我々の調査の結果、約500万年前の地層からリーフモンキー類の化石が発見されました。これは東南アジア地域で最古のリーフモンキーの化石です。現在その解析を行っているのですが、リーフモンキーの進化史の見直しが必要となってきました。また昨年12月の調査では数十万年前のものと思われる巨大なサルの化石を発見しました。絶滅したヒヒ類の化石のようですが、詳しいことはまだわかっていません。こういったサルの化石をどのように発見し、どのように研究しているのか、そして化石の研究からわかることは何かを紹介します。

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新興再興感染症の霊長類モデル開発:困難への挑戦

明里宏文
京都大学霊長類研究所・人類進化モデル研究センター

C型肝炎ウイルス(HCV)およびヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)それぞれC型肝炎および後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスである。どちらも一度感染するとウイルスを排除することが極めて困難であり、非常に長期(多くの場合生涯に及ぶ)慢性経過を辿り時として生命を脅かす。HCVおよびHIV-1感染者はアジア・アフリカ諸国を中心として今も感染拡大が進んでいる状況にあり、こうした国々ではその罹患者の多くが経済的な背景から多額の費用が必要な高度医療を受けることが容易でない。従ってより安価で有効な予防ワクチンの開発が求められている。こうしたワクチン開発に当たり、実験室レベルの基礎的研究結果を臨床医学の現場に反映させるためには、その有効性や安全性を評価するためのモデル動物が不可欠となる。しかしHCV, HIV-1に感染する唯一の動物であるとされるチンパンジーは、絶滅が危惧されている類人猿であることなどから実験動物としての使用が非常に困難な状況にある。
GB virus-B (GBV-B)はHCVに最も近縁なウイルスであり、GBV-B, HCV共にフラビウイルス科のヘパチウイルス属に分類されている。GBV-Bを新世界ザルであるタマリンに接種すると、2週後から顕著なウイルス血症を生じるとともに肝炎マーカーであるALT値が上昇し、肝組織ではHCVによる急性肝炎に酷似した病理組織像が観察される。我々はタマリンと同じ新世界ザルの一種であるマーモセットへのGBV-B感染実験において、これまで困難とされてきたHCV感染者と同様な長期慢性肝炎を発症することを初めて見出した。GBV-B/マーモセット感染・発症モデルはC型肝炎の動物モデルとして創薬やワクチン開発のみならず、ヒトでは困難なウイルス感染初期における病態や慢性化に至る免疫回避機序の解明に有用と考えられる。
一方、これまでAIDS動物モデルとして、サル免疫不全ウイルス(SIV)やSIVに一部のHIV-1遺伝子領域を組み込んだSHIVによるマカク属サルモデルが汎用されてきた。しかしこれらはHIV-1の予防ワクチン評価には不適当であり、HIV-1自身が感染するサルモデル開発が求められてきた。我々はこれまでサル指向性HIV-1(HIV-1mt)の開発を進め、最近カニクイザル個体で増殖可能な分子クローンの構築に成功した。HIV-1mtは、SIVmac(アカゲザル由来SIV)遺伝子の中で宿主域を規定する最低限の領域のみ(全ゲノムの約7%)がHIV-1ゲノムに組み込まれているもので、サルAIDSモデルの最終進化型と考えられる。これによりHIV-1の基礎研究面のみならず、抗HIV-1ワクチンや新規治療法の有効性評価が迅速化することが期待される。
本講義では、これらC型肝炎およびAIDSのサルモデルに関する我々の最新の成果について紹介したい。

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ニホンザルの人口変動と社会変動

半谷吾郎(社会生態分科・生態保全分野)

屋久島では、野生のニホンザルの調査が30年以上にわたって継続して行われています。1974年以来、人里から離れた西部海岸部の複数の群れの調査が行われてきました。30年間の調査で分かったことは、ニホンザルの群れは、決して安定ではなく、時間とともに大きく変動する存在だということです。1980年代前半までは、個体数の増加と対応して、群れの分裂が頻発しました。ところが、1980年代後半から、個体数を減少させる群れが増え、中には非常に小さくなって他の群れと融合し、消滅してしまう群れもありました。1999年には大量死が発生し、二つの群れが突然消滅するとともに、その周りの群れも大きく数を減らしました。これらの社会変動には、果実生産の年変動が大きくかかわっています。豊作の年には出産率は群れによって変わらなかったものの、不作の年には小さい群れで子供が生まれず、群れの大きさの差がますます拡大して行ったのです。また、大量死の年は、過去に例を見ないほど不作の年でした。

一方、同じく野生のニホンザルの長期調査が行われている宮城県の金華山島では、個体数の変動は見られますが、小さな群れが不利になるようなことはありません。残念ながら、これらの長期調査地では、環境の年変動、個体数の変動、社会変動を同時に調査していたわけではなく、彼らの社会のダイナミックな変動が、環境変動とどのようにかかわっていたのか、推測の域を出ません。

わたしたちは、屋久島の標高1000m付近に新しい調査地を設定し、1998年から継続調査を始めました。ここは海岸部の長期調査地から7kmほどしか離れていませんが、ヤクスギ林に覆われ、海岸部とは大きく異なった環境です。植生や果実生産の年変動、個体数密度、複数の識別された群れの構成と分布を、ボランティアで全国から集まった数十人の学生とともに毎年調べています。屋久島海岸部とあわせて、野生霊長類個体群の動態の空間的変異を明らかにするという、稀有な試みが、屋久島で始まろうとしています。

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チンパンジーのこころを探る─Do Chimpanzee Eyes Have It?─

思考言語分野 友永雅己

社会的な場面で発揮される「心」の働き、すなわち、社会的認知の問題は、近年、比較認知科学における中心的なテーマのひとつとなっている。さまざまな種を対象にさまざまな実験場面における社会的認知がこれまでに検討されてきた。今回の講義では、その中から、チンパンジーにおける視線の理解という問題を通して社会的認知の進化について考えてみたい。
他者の視線から、わたしたちはさまざまな情報を受け取ることができる。特に、視線にはその人の心的状態が反映される。今その人が何に興味を持って何に注意を向けているのか。わたしたちはこういった情報を他者とかかわる中で視線から得ている。まさに、「目はこころの窓」といえるだろう。
チンパンジーなどヒト以外の霊長類でも他個体の視線が社会生活で重要な役割を果たしているはずだ。ではどのように? 他個体の視線には大きく分けると2つの種類がある。自分に向けられた視線とそうでない視線だ。自分に向けられた視線をすばやく検出することは、その個体が自分に対して敵意を持っていようと好意を持っていようと、適応的意義は高いだろう。実際、ヒトでは新生児期にすでに自分に向けられた視線を好む傾向にあることが知られている。同様の傾向は、2か月齢のチンパンジーの乳児でも認められた。この時期は母子間での見つめあいが増加し、社会的相互交渉が始まる時期でもある。見つめあいと微笑がチンパンジー母子の絆を強めていくのだ。
視線の持つもう一つの機能は、他者の注意の方向を検出できるということだ。「視線追従」と呼ばれるこの能力によってわたしたちは他者が注意を向けているものを見つけることができる。この能力は、ヒトでは生後9ヶ月を前後して劇的に発達してくる。チンパンジーでも1歳ごろになると、実験者の指さしや頭の向きに自分の注意を向けることができるようになる。しかし、ここから、ヒトとチンパンジーでは異なる発達の道筋が見えてくるようだ。ヒトでは、他者の注意に追従した後、再びその他者と目を合わせ、注意を共有しようとする。「共同注意」と呼ばれる現象である。しかし、チンパンジーではこのような注意の共有はほとんど観察されない。他者と環境の事物をうまく取り込んで複雑な社会的交渉を行う能力、ここにヒトとチンパンジーの大きな違いがあるようだ。
ヒトでは、「共同注意」の先に「他者の心」がある。他者の欲求や意図を理解する能力の基盤に他者との注意の共有が必須であると考えられている。では、注意の共有の段階でヒトとの差異を示すチンパンジーはわたしたちと同じように他者に心を発見するのだろうか。それとも…

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霊長類脳科学の新しい展開

統合脳システム分野
高田昌彦

 脳を構成する複雑かつ精緻な神経回路(ネットワーク)の枠組みを解明することは、それを基盤にして獲得される多様な脳機能をシステム的に理解する上できわめて重要です。特に、行動の発現・制御機構を解明するためには、大脳を巡るネットワークの基本的構築、すなわち、大脳皮質領域における入出力様式や大脳皮質と強い結合を有する大脳基底核や小脳、視床における情報処理様式を解析し、その動作原理と機能的役割を知ることが本質的です。統合脳システム分野では、神経解剖学的、神経生理学的、および行動学的手法とともに、ウイルスベクターを用いた遺伝子導入技術を駆使して、運動機能や認知機能など、広く行動の発現と制御に関与する大脳ネットワークの構築と機能を解明することを目的としています。
 また、統合脳システム分野では、高次脳機能分野とともに、文部科学省研究開発拠点整備事業のひとつである「脳科学研究戦略推進プログラム「独創性の高いモデル動物の開発」の参画機関として、「先端的遺伝子導入・改変技術による脳科学研究のための独創的霊長類モデルの開発と応用」を目指した研究を推進していて、「遺伝子改変霊長類モデルの開発と高次脳機能の解析」を中心的な研究テーマとした最先端プロジェクトを展開しています。具体的には、ウイルスベクターを用いた遺伝子導入技術により、ニホンザルやマーモセットにおいて部位特異的かつ時間特異的にターゲット遺伝子を導入する技術を確立し、高次脳機能の解明と精神・神経疾患のメカニズムの解明を目指しています。特に、神経路選択的な遺伝子操作を実現し、行動学的、神経生理学的、神経解剖学的解析を行うことによって、発達障害、老化、疾患等の霊長類モデルを作出し、高次脳機能の発現メカニズムに迫りたいと考えています。さらに、統合脳システム分野では、パーキンソン病をはじめとする神経疾患や、今後の飛躍的な研究進展が期待される精神疾患の病態解明と新規治療法開発に向けた研究を展開しています。また、これらに関連して、特にニホンザルではゲノム解析や遺伝子発現、マーモセットでは脳の構造と機能に関する基盤的データを集積しています。

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ヒトと大型類人猿の社会構造の進化:性的競合の激化とその抑制をめぐって

社会生態部門 社会進化分野 古市剛史

 霊長類の社会構造の全体像を見渡したとき、ヒトと大型類人猿のグループ(以下ヒト上科)はきわめて特異な様相を見せる。原猿類に多く見られる夜行性単独生活の社会から、もっともシンプルなペア型社会、さらに大型ほ乳類に一般的に見られる母系の群れ型社会へという大きな進化の流れを突然破壊するかのように、ヒト上科にはさまざまなタイプの社会構造が現れるのだ。オランウータンは、1頭1頭がばらばらに動く単独生活を送り、長年の研究でもまだ社会構造の輪郭がとらえられない。ゴリラは単雄または複雄の小さな社会集団を作るが、他のほ乳類の同様の集団とは異なり、メスが集団間を移籍する。チンパンジーとボノボは、複数の雌雄からなる大きな群れ型社会を作るが、ここでも集団間を移籍するのはメスである。そしてヒトの社会は、文化的にさまざまな変容を遂げた今となってはその原型を探ることは難しいものの、チンパンジー・ボノボ型の父系の群れ型社会の中に、性関係を固定した雌雄と子供たちからなる核家族を形成した可能性が高い。ヒト上科で突然このようなバリエーションが生まれたのはなぜなのか。この問題は、我々ヒトの進化を解明する上でもっとも重要な問題であるにもかかわらず、いまだ未解決のまま残されている。
 この問題を解く手がかりのひとつに、ヒトと大型類人猿の共通祖先のグループに起こったと考えられる子育てと性の進化がある。中期中新世の安定した熱帯雨林環境下で繁栄を遂げたと考えられるヒト上科のグループは、メスの出産間隔を延ばし、長い時間をかけてゆっくりと子供を育てるという繁殖戦略を進化させた。そのため、メスの発情期間は極端に短くなり、いつでも性交渉をもてるオスの数との間に、大きなアンバランスが生じたと考えられる。その結果、オス間の性的競合は激化し、一般の母系の群れ型社会で複数のオスが共存するという形を取り得なくなる。そしてその性的競合の解決策として、現在見るような様々な社会構造が生まれたと考えるのである。
 このような仮説を検証していくためには、野生霊長類を対象としたさまざまな生態学的・行動学的研究を積み重ねていくしかない。異なる環境下に生息する霊長類が、どのような遊動・採食生活を送るのか、メスの性サイクルや発情のパターン、子育ての行動や期間が、種によってどのように異なるのか、オス間の性的競合がどのように現れ、それを解決するためにどのような行動を取るのか、競合の対象となるメスたちは、どのような行動を取って自分と子供の安全と利益を確保するのか・・・。そういった個別の研究テーマの総合の上に、ヒト上科の社会構造の進化とホミニゼーションという、最後に残された大きな謎の答えが見えてくる。この講義では、発情性比の変化によってヒト上科の社会構造の進化を説明する仮説を解説するとともに、社会構造に関連する近年のさまざまな生態学、行動学的研究の動向を紹介したい。

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「霊長類ポストゲノムの展望と課題」

今井啓雄(遺伝子情報分野:ポストゲノム科学分科)

研究とは「よく調べ考えて真理を究める」(広辞苑より)ことです。その醍醐味はまだ世界中のだれも知らないことを初めて発見することです。近年、世の中の安易な流れに乗じて研究もどき、科学もどきも広がっています。安易な気持ちで大学院に入って「よく調べないで考えないで真理に到達しない」まま卒業すると、たとえ博士をとっても就職先はなかなか見つかりません。皆さんは試験管を振ったり、論文を読んだり、パワーポイントを作ったりするだけで研究をした気になっていませんか?研究者の世界でもゲノム配列がインターネットで手に入るようになって、どこかから拾ってきた配列を解析ソフトで計算して満足している人が増えています。しかし、新しい発見にはオリジナルデータが必要で、霊長類のゲノムにはその宝庫である未知の領域が数多く存在します。当講義では霊長類ゲノムを基盤に新発見を目指して日夜努力している遺伝子情報分野の研究を紹介します。
当研究室では教員・研究員・大学院生がそれぞれオリジナルな研究テーマを設定して、ゲノム配列を基盤とした分子生物学・生化学・細胞生物学・神経科学・行動学・生態学まで縦に一本の筋の通った研究を行っています。研究のオリジナリティは材料・対象や方法によって大きく規定されますが、国際的に見るとポストゲノムの分野において日本のオリジナリティは国際的にまだそれほど高く評価されていません。我々はその現状を変えようとして対象として霊長類を選び、環境応答という生物の進化に関わる重要な問題に取り組んでいます。一つの分子や動物種・手法などにとらわれず、分野横断的な視点や技術を手に入れることにより、卒業生も学術分野のみならず社会の様々な分野で活躍できます。
「木を見て森を見ることができない」のが前ゲノム(〜2000年)時代でした。2001年からのゲノム時代は網羅的という言葉で覆い隠すように「森を見て木を見ない」研究が多かったように思います。しかし、2010年現在で様々な動物のゲノムが出揃ってくると、後(ポスト)ゲノム研究が必要になってきます。つまりこれからはゲノム情報を参考にしながら「森を見て木を見る」研究が主流になることが予想されます。ゲノムは生物の基本設計図ですから、生物が関与する医学・薬学・農学等、様々な領域でこの視点が必要になってくるでしょう。現に米欧中といった国々では多くの人材が輩出しています。当研究所が協力講座として所属する京都大学大学院理学研究科生物科学専攻では、グローバルCOEプログラムを通じてこのような視点を持つ研究者を養成しています。また、霊長類研究所ではグローバル30やHOPEプログラムを通じて国際的な視点を大学院生が会得する機会を提供しています。しかし、これも研究すべき対象と意欲があって初めて意味があることです。
遺伝子情報分野では現在は視覚・味覚・嗅覚のような感覚受容体と環境の相互作用を中心とした研究を行っていますが、研究する人それぞれに新しいアイデアがあると思います。オリジナルな対象と必要な実験や思考がそろっていれば、年齢や学年に関係なく世界的な研究ができるのがポストゲノム時代のよいところです。研究員や大学院生たちの体験談を聞きながら、霊長類研究所の特長を体験していってください。

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「形の語るもの」--サルの身体形態からヒトの起源をさぐる

濱田穣(進化形態分科)

 n角形の対角線は何本か?これに答えてニンマリする人。ニホンザルの頭骨を手にとって「ヒトの遠い祖先も、こんなだったんだ」とニンマリする人。どちらも、ちょっと危ない感じがしますが。生物の身体形態が何を意味するのか、どう解釈したらよいのか。それへのアプローチは様々です。
ヒトもサルも(霊長類)生物ですから、進化の過程で今のような身体形態(姿かたち)が作られているはずです。個体は生まれて死ぬまで、生命を維持し、次代をつくっていくという活動をします。身体形態はしたがって、これらの活動(作用)を果たすために、効率的にできているはず(機能)。また身体形態はゲノムによって決定され、両親から子へひきつがれ、長い年代のうちに、適応とか偶然とか、さまざまな歴史的変遷があって、今のような姿かたちになったはず(系統発生)。赤ん坊(胚、胎児)からオトナへ、そして老化して死んでいくという生活環にそって変化しているはず(個体発生)。身体形態は、この3つの基軸で見ることができます。私たちは、それに沿ってヒトの起源を明らかにしようとしています。
 まずもっとも直接的な化石を含む近縁霊長類の研究では、人類の直近の祖先であるヒト上科化石(チンパンジーやゴリラなどのグループ)を東アフリカで発掘調査しています。ケニア北部に1000-800万年前の有望な発掘サイトがあり、ここでヒト上科、オナガザル上科(ニホンザルやコロブスなどのグループ)だけでなく、これら二つのグループに入れられない「小型狭鼻猿類」の化石が発見されています。ヒトにつながるかもしれない祖先霊長類が生息していたころの霊長類動物叢が明らかにされつつあります。現在、アフリカの熱帯雨林には、ゴリラやチンパンジーなどのヒト上科、グエノンやコロブスなどのオナガザル上科がすみ分けていますが、1000万年前に、どのような棲み分けがあって、ヒト上科の霊長類がどのような生活をとっていたのかが解明されるでしょう。とても、おもしろいところです。ヒト上科化石が主に樹上で生活していたのか、それとも地上でも生活していたのか?樹上生活だったとして、枝上を歩行していたのか、それとも枝からぶらさがっていたのか(懸垂型)、何を食べていたのかなどは、人類へ系統を考えるうえで、答えるべき疑問です。
 ヒトといえば、大きな脳と直立二足歩行に適した身体形態が特徴に挙げられます。それ以外にも、なぜヒトの赤ん坊は、あんなにふっくらしているんでしょう?思春期(10歳ぐらい)から女性では乳房やお尻が発達するんでしょう?脂肪です。体重の20-30%もの脂肪が、皮下組織や内臓のまわりに蓄積されていて、それがヒトでは健康な範囲なのです。脂肪は、メタボリック・シンドロームと、官民あげて目の敵にされていますが、脂肪蓄積はヒトの進化過程で獲得された特徴のはずです。チンパンジーやニホンザルでは5-10%しかありません。ヒトでも幼児期を過ぎたコドモ期には、脂肪率が低めになります。
この脂肪蓄積はどんな意味をもっているのでしょう?ヒトの長い成長期間や寿命を持つ生活史、繁殖(子育てや父親)、そして大きな脳との関連性がありそうです。脂肪の機能は、なんといってもエネルギーの蓄積です。蓄積が必要なのは、供給が滞った際に対処するためです。脳は大食いで、しかもエネルギー供給が断たれると、すぐに障害を引き起こしてしまうという、やっかいな器官です。赤ん坊は四頭身ぐらいの、プロポーション的に大きな頭(脳)をもち、しかも脳がさかんに発達しているので、ひじょうに大きな割合でエネルギーが脳に必要です。これが断たれると、大きな障害をもたらし、死ななかったとしても、その後の脳機能が損なわれかねません。赤ん坊は、免疫系で劣っているので感染性の病気にかかりやすいので、エネルギー備蓄が欠かせないのです。
女性の身体形態、寿命の長さ、とくに老齢期について、エネルギー獲得と分配との関係から考えてみます。

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「動く遺伝子」

 古賀 章彦(ゲノム多様性分科)

 遺伝子は染色体上の決まった位置にあります。たとえば、ABO式血液型の遺伝子は第9染色体の長腕の端部、性決定のスイッチとなる SRY 遺伝子は Y 染色体の短腕の端部にあります。位置は、染色体の切断などの大事件でも起こらない限り、変わりません。ところが、このような「定住している遺伝子」、つまり「普通の遺伝子」のほかに、ゲノムの中には「動く遺伝子」があります。あるときは第12染色体にいたものが、次の世代では第5染色体、その次は X 染色体にいるというふうに、1世代で位置が変わってしまうことも、よくあります。トランスボゾンとよばれており、漢字で表すときは転移性遺伝因子、あるいは少し短くして転移因子となります。
 このトランスポゾン、ゲノムの中を動き回りますので、ホストの生物にとってはやっかい者です。たとえば、動いて着地した場所が、たまたま癌抑制遺伝子であった場合、その遺伝子を破壊して細胞が癌になることがあります。このような困ったことをよく起こしますので、生物のゲノムからは消失してしまって当然というのが、順当な考えです。ところがどっこい、ほとんどの生物のゲノムに、トランスポゾンはいます。たとえばヒトでは、ゲノムDNAの半分近くが、トランスポゾンまたはその残骸でできています。
 消失していないからには、ホストの生物にふだんは迷惑をかけながらも、ごくたまにはどーんと役に立つこともしているのかもしれないと、想像できます。ゲノム多様性分野では、トランスポゾンがどのような悪いことやよいことをしているのかを、調べています。そのほかに、トランスポゾンの応用を見据えた研究もすすめています。トランスポゾンは自然の状態では、ゲノムの中で「離陸」と「着陸」をしていますが、導入したい遺伝子をつないで外から供給し、そして「着陸」だけをさせれば、遺伝子導入ベクターとなります。効率のよいものができれば、遺伝子治療などへの応用につながります。

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ヒトの脳は特別か?

高次脳機能分科
中村 克樹

さまざまな動物の脳を比較すると、魚類・爬虫類・両生類より哺乳類・鳥類の脳が大きく進化・発達してきたことがわかります。その中でもより複雑な社会を築き、複雑なコミュニケーション をとっていると考えられる動物ほど、体の割に脳が大きく進化していると考えられるのです。社会の中で仲間と相互にやり取りをすることが脳の進化の大きな圧力になったと 考えられます。
これまでの多くの研究者によってさまざまな脳の働きが解明されてきました。しかしながら、そうした研究のほとんどが、仲間から隔離された実験室の中でさまざまな刺激を見たり聞いたりしているときの脳の働きでした。実際の生活を考えるとこのような隔離された状況は決して多くありません。私たちは多くの時間を仲間と一緒に過ごします。これからの脳研究では、仲間とのさまざまなやり取りをしているときに脳がどのように機能しているのかを調べることが大切だと考えています。私たちの研究室でも、今後はそうした研究を視野に入れて活動していきたいと考えています。
 今回の話では、いろいろな動物の脳の比較をした後で、ヒトがどのようにチンパンジーやサルと異なるのかを少し考えてみたいと思います。また、私たちの精神活動(つまり脳の働き)の中でも最も高次だと考えられるものの一つである「意識」について考え、脳の働きを調べることに興味を持ってもらえたらと思っています。

大学院受験に興味を持っている方々に研究室の紹介をします。高次脳機能分野は、昨年の4月に中村が教授として着任したばかりでこれからの研究室です。研究室としての大きな目標は、脳とこころの関係を解明することです。このために、ヒトや他の霊長類を主な対象として研究しています。脳の構造や機能は非常に複雑で、まだまだ分からないことばかりです。非常に多くの発見が待っていることでしょう。私たちはそうした未だ解明されていない脳の働きを調べています。特に、電気生理学的な手法を用いてニューロン(神経細胞)の電気活動を記録解析したり、さまざまな神経伝達物質やホルモンといった化学物質が脳の働きにどのように作用するのかを調べたり、脳機能イメージングの装置を用いて非侵襲的に脳活動を計測したり、ヒトやサルの複雑な行動そのものを解析したりしています。研究室としてのまとまりを考えながら、学生の皆さんの興味を取り入れたテーマで研究を指導します。
 皆さんが、脳と行動・脳とこころの関係を学ぶための教科書として「カールソン 神経科学テキスト」(丸善出版)等を執筆しています。参考にしてください。

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