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京都大学霊長類研究所
郵便番号484-8506
愛知県犬山市官林
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FAX. 0568-63-0085

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平成22年度京都大学霊長類研究所東京公開講座
「サル・ヒト・人」

平成22年度
京都大学霊長類研究所東京公開講座
「サル・ヒト・人」

日時:9月25日(土)

場所:日本科学未来館(参加費無料)

主催 京都大学霊長類研究所

定員  300名

申込〆切:9月10日(希望者多数の場合、事前に終了することもあります)

平成22年度東京公開講座は終了しました。


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プログラム

13:00-13:15 所長挨拶

13:15-14:00 脇田真清 「サルにことばがわかるか」

14:00-14:45 古市剛史 「類人猿ボノボ:メスたちの平和力」

14:45-15:00 休憩

15:00-15:45 郷 康広 「ゲノムを通して我が身を知る」

15:45-16:30 川本 芳 「ブータンのサルと人」

16:30-17:00 質疑


平成22年度東京公開講座は終了しました。

A. 申し込みフォームによる申込:
 電子メールアドレスをお持ちの方は、「申し込みフォーム」をクリックしてください。(https対応ページに移動します。)
 
 学生以外の方は「一般の方の申込フォーム」内に氏名、ふりがな、職業、年齢をご記入の上、メールアドレスを入力してください。自動返信メールが届きますので、指示に従って登録してください。(メールアドレスのない方の分を代理で申し込んでいただいてもかまいません。1回の申込でひとりづつ申し込んでください。また、当日の入場の際には所定のプリントアウトまたはメール画面の提示が必要です。)

 学生の方は「学生の方の申込フォーム」内に氏名、ふりがな、所属学校と学年、年齢をご記入の上、メールアドレスを入力してください。自動返信メールが届きますので、指示に従って登録してください。(https対応ページに移動します。)
 
B. 官製往復ハガキによる申込:
 往信用に、
  (1)「東京公開講座申し込み」、
  (2)住所、
  (3)電話番号、
  (4)氏名(よみがな)、
  (5)年齢、
  (6)職業(○○大学1年生、○○高校2年生、○○高校生物担当教員、主婦など)
を明記の上、下記宛にお申し込みください。
なお、受講の採否をお知らせしますので、返信用に住所と名前を必ずお書きください。

* いただいた個人情報は当公開講座以外では使用しません。

お問い合わせ先〒484-8506 愛知県犬山市官林
京都大学霊長類研究所「東京公開講座」係
電話 (0568)63-0512
FAX (0568)63-0085
E-mail:tokyo2010@pri.kyoto-u.ac.jp


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲノムを通して我が身を知る

郷 康広


 「ヒト」はいつから「サル」ではなくなり「人」になったのでしょう? このように書くと、「人はサルの一種ではないの?」と疑問にもたれる方も多いのではないでしょうか。その問いに対して「そのとおりです」とも答えられますし、もう一方では「いえ、違うという考え方もあります」と答えられるというのが私の立場です。それは、「ヒト」と「人」の違いにあります。「ヒト」とは生物学的な存在としての「ひと」を表し、「人」は社会学的・文化的な存在としての「ひと」を表しています。では、我々の身体の設計図であるゲノムには「ヒト」を「人」として特徴づける、つまりその他の生物とは質的に違う何らかの特徴があるのでしょうか?

 (カタカナの)ヒトの全ゲノム配列を解読しようという試みが1990年前後に始まり、およそ11年・3000億円をかけて2001年に概要ゲノム配列が発表されました。その後、配列解読技術の飛躍的な進歩があり、現在では、ヒト1人の全ゲノム配列は1週間・100万円で行なえるようになってきています。そこまでコストが下がると、1人だけではなくいろいろなヒトのゲノムが読めるようになってきます。実際に、世界規模でいろいろなヒトのゲノム配列が解読されつつあり、そのペースは1日あたり2?3人と言われる程です。たくさんのヒトのゲノムが読まれる背景には、ヒトの多様性理解という基礎研究から、病気の原因解明と治療という応用研究にいたるまで、大変重要な研究課題です。ただし、冒頭に述べた「ヒト」を「人」として特徴づける何かを見つけるためには、ヒトだけを見ていてはその全体像が見えてこないのは明らかです。

 そこで、私はヒトの比較対象として進化の隣人であるチンパンジーを中心として研究をしています。ヒトだけを見ていても見えない何かが、「チンパンジーを通してヒトを見る」という視点を持つ事によって見えてくることがあると考えているからです。チンパンジー、特に彼らのゲノムを見る事によって、そこから見えてくるヒトという存在、また「人」として特徴づけられるようなゲノム的な側面が果たしてあるのかどうか、いくつかの具体例を示しながら、私の考えをお話ししたいと考えています。

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ブータンのサルと人

ゲノム多様性分野 川本 芳 

 ブータンは本州の5分の1ほどの土地に70万人が暮らすヒマラヤ南麓の小国です。国土の70%以上は森林で、農牧業を営み独特の文化をもつ人たちが暮らしています。この小国は「世界で一番幸福な国」を目指していて、国民総幸福(GNH = Gross National Happiness)を国是に、物質より精神の豊かさを大事にしようとしています。2008年に王制から立憲君主制に変わり、社会も変化しています。私はこの国で、野生動物と家畜の野外調査を続けています。今回は、ヒマラヤの霊長類にみられる多様性と、ブータンが取り組みはじめた野生動物の被害管理について紹介します。

 はじめは自然とサルの話です。ブータンには、マカク(ニホンザルの仲間)、ラングール(金絲猴の仲間)、スローロリス(原猿類の仲間)の3グループの霊長類がいます。近年、ヒマラヤ南麓に棲む霊長類の分類や分布や適応の研究は重要性が増しています。3種が区別できるラングールでは棲み分けがみられます。しかし、最近ブータン中央部の渓谷地帯でラングールの種間雑種が発見され、その進化と保全が注目を集めています。一方、マカクでは国内の大半がアッサムモンキーだと考えられてきました。ブータンの東隣りにあたるインドのアルナーチャルプラデーシュで2005年に新種が報告され、マカクの分類の再検討が迫られるようになりました。現在、生態や遺伝の研究を進めています。深い渓谷による地理的隔離がこれら霊長類の分布や分化に影響すると考えられ、霊長類の進化研究でヒマラヤ山岳地域は大事な場所になっています。

 つぎはサルと人の話です。チベット系仏教が盛んなブータンでは、国民の多くが輪廻転生を信じ、命あるものを尊ぶ暮らしを営んでいます。しかし、日本と同様にこの国でもサルをはじめとしてイノシシ、ゾウ、シカなどの野生動物による農業被害が深刻化しています。国民投票で成立した新内閣は、自然保護政策の推進と国民生活の向上の二つの政治課題の調整に向けて、2008年にHuman-Wildlife Conflict Management Strategy(人と野生動物の対立の管理方針)を作り、考え方を整理しました。農業省を中心に、被害状況や住民意識の調査、実務者の養成と方針の啓発がはじまっています。折しも、日本では農業被害対策として増えすぎたサルの個体数調整という基本方針が打ち出され、捕まえて除くという被害対策が加速されています。ブータンは被害先進国の日本から、対策の技術と考え方を学ぼうとしています。価値観や宗教観の違いから、ブータンがどのような被害対策を講ずるかが今後問題になると思います。こうしたサルと人をめぐる問題の背景と現状について紹介します。

【HP紹介記事】
・『ブータンのウシたち』2009.7.8.
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/shinka/genome-diversity/kawamoto/topic4.html

・『赤いサルと黒いサル:ネパールのサル狩猟民ラウテ(Raute) 探訪』2009.8.2.
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/shinka/genome-diversity/kawamoto/topic5.html

【報告・論文】
・川本芳 高地における家畜化と家畜利用 -アンデスとヒマラヤの遺伝学研究.ヒマラヤ学誌,10:103-14,2009
・Kawamoto Y, Aimi M, Wangchuk T, Sherub Distribution of Assamese macaques (Macaca assamensis) in the Inner Himalayan region of Bhutan and their mtDNA diversity. Primates, 47:388-392,2006

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サルにことばがわかるか

脇田真清

 サルにことばといっても、「お手」や「お預け」と言えばその指示に従えるようになるかということではありません。それに、ヒトほど舌や喉が自由に動かせませんから、話そうとしてもサルにはヒトのことばは話せません。そうではなくて、ヒトがことばを理解するような仕組みが、サルの認知や脳にあるかということです。そのために、運動性言語野といわれてきたブローカ野(多くのひとでは左前頭葉にあります)の機能から、ヒトがことばを理解する仕組みを考えてみたいと思います。

 ヒトのことばは、句から成り、句は単語から成っていますが、さらに単語は音素から成ります。単語は、連続的に入力される無意味な音素をひとまとまりに区切ることによって認識されます。また、どんな順番で単語が並んでいても、それらをうまく並べて意味の通るような文章にします。こうした分節化や文法処理のはたらきにブローカ野はかかわっています。ですから、例えば、単語では「かさ」と「さか」、文章では「人が犬を噛んだ」と「犬が人を噛んだ」のように、要素が同じでも並び方が変わると違う意味になるのはブローカ野がちゃんと働いているからです。

 実は、ブローカ野がはたらくのはことばだけではありません。例えば、音楽を聞くとき、次々に聞こえてくる音がある程度音がまとまったところで,一つ一つの音がどのように並んでいて,どんなメロディーに聞こえたか,どんなリズムで鳴っていたかをブローカ野は処理しています。

 つまりヒトの音声を使わなくても、言語処理の能力を調べられるということになります。モールス信号のように、少数の要素がどのように並んでいるかを理解する能力が、ヒトがことばを理解する仕組みの本質だということになります。

 そこで、公開講座では、ヒト以外の動物で行われた人工言語を使った研究や、いま私が行っている実験のようすを紹介しながら、「ことば」の処理のしくみを考えたいと思っています。

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類人猿ボノボ:メスたちの平和力

古市剛史

 アフリカ中部の森林地帯に生息する、系統的に人類に最も近いチンパンジーとボノボ。今から約100万年前に分かれたとされるこの2種は、ぱっと見にはその違いがわからないほどよく似ている。外見だけでなく、生まれてから死ぬまでの生活史も、メスが集団間を移籍するという父系の社会構造も、ほとんど違いがない。ところがこの2種間では、メスの性と社会行動が、全く異なっている。

 チンパンジーのメスは、出産後長い時間をかけて子どもを育て、4年近くにもおよぶ授乳期間中は発情を休止してオスたちとはあまりつきあわない。そのために、集団の中で発情しているメスはせいぜい1〜2頭で、10〜20頭ものオスたちが、そのメスとの性交渉を巡って競合を繰り広げる。基本的には順位の高いオスほど交尾のチャンスを得やすいため、オス間の順位争いは熾烈をきわめ、争いが殺しをともなうものに発展することもある。また、集団間の競合も激しく、意図的に相手の集団の縄張りに進入して相手のオスを殺し、最終的にはその集団を滅ぼしてメスと縄張りを手に入れるという、人間の戦争にもたとえられる行動を取ることもある。さらに、自集団に新しく入ってきたメスが最初に産んだ子どもを殺して食べてしまうという行動も見られており、これも、自分たちの子どもかどうかわからない子どもは殺し、早くメスに発情を再開させて自分たちの子どもをつくるための行動だと考えられている。

 一方ボノボのメスは、長い時間をかけて子どもを育てるのはチンパンジーと同じだが、出産後1年もすると、授乳中にもかかわらず発情を再開する。本当に妊娠できる発情を再開するのはチンパンジーと同様に上の子が離乳してからなので、この時期の発情は、ニセものの発情だ。また、妊娠中も、出産直前まで発情を継続する。このため、メスが性交渉をもてる日数はチンパンジーの数倍にもおよび、それにともなって、集団内にいつも複数の発情メスがいることになる。こうなると、いくら強いオスでも発情メスを独占することはできない。オスにとって大切なことは、他のオスに勝つことではなく、メスに気に入られることになる。オス間の性的競合は緩和され、集団内・集団間の殺しをともなう争いや移籍してきたメスの子どもを殺す行動も見られない。

 このような性のあり方の変化以外にも、ボノボのメスはチンパンジーとは異なる様々な特徴を示す。子育て中は単独で過ごす傾向の強いチンパンジーとは異なって、ボノボのメスたちはいつも集団の中心部に集まって生活し、集団の動きを牛耳る。メスたちは大人になってからも息子との絆を保ち、高順位のメスの息子が集団のリーダーになることが多い。オスが圧倒的に優位なチンパンジーとは異なって、ボノボのメスはオスとほぼ対等の関係にあり、とくに食物を巡る場面ではオスよりも優位に振る舞う。そして、他の集団と出会った時にはメスたちが率先して混ざり合ってしまい、異なる集団が数日にもわたって一緒に行動することもある。

 オスが主導権を握るチンパンジーの社会と、メスが主導権を握るボノボの社会。どちらの性が主導権を握るかということが、社会をどのように変えてしまうのか、私たち人類の兄弟にあたる2種を比較して考えてみたい。

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