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苦味受容体TAS2R16の機能多様性と霊長類の食性進化

今井啓雄、鈴木南美、石丸喜朗、櫻井敬展、Yin Lijie、Pan Wenshi、
阿部啓子、三坂巧、平井啓久

Biology Letters、オンライン版3月7日掲載 

 今井啓雄 霊長類研究所准教授、鈴木南美 同大学院生、平井啓久 同教授らの研究グループは、霊長類の食べ物への指向性の原因を遺伝子レベルで検討した結果、味覚受容体の変異が原因である可能性を発見しました。この研究成果は、2012年3月7日の「Biology Letters」オンライン版に掲載されました。

 ニホンザルは冬場に樹皮等を食べて生存しています。この行動を見ても、人間がおいしくなさそうと思うように、霊長類の中でも食べ物の指向性は様々です。この原因を遺伝子レベルで検討した結果、味覚受容体の変異が原因である可能性を発見しました。

種々の霊長類はほぼ同じ遺伝子セットを持っているが、その配列は微妙に異なります。今回の研究ではヒト、アフリカのチンパンジー、中国のラングール、そしてニホンザルを対象に、柳の樹皮等に含まれる苦味(サリシン)などを受容する苦味受容体(TAS2R16)に注目し、培養細胞でタンパク質の性質を調べました。

その結果、まず、それぞれの霊長類で苦味耐性が異なることが示されました。特に、ニホンザルの苦味受容体は苦味耐性が高く、このことは行動実験でも確認できました。また、タンパク質の変異体解析により、原因となる変異部位が特定できました。

生態学的観察により、ニホンザルは他の種とは異なり、柳の樹皮等を採食することが報告されていますが、その原因はこの苦味受容体の変異が原因である可能性が高いと考えられます。

進化の過程で起こった遺伝子の変異が、採食行動にまで影響を与えているわけです。

図: 様々な苦味物質に対する霊長類の苦味受容体(TAS2R16)の反応パターン
(a) それぞれの苦味物質に対する反応感受性をプロットした。内側にあるほど感受性が高く(耐性が低い)、外側にあるほど感受性が低い(耐性が高い)。それぞれの霊長類種の反応パターンは苦味物質ごとに異なる。特にニホンザルのみ、柳の木の皮に含まれるサリシンなどの苦味に耐性が高い。青酸化合物であるアミグダリンに対しては、どの種も感受性が高く、苦味を感じて忌避できるようになっている。
(b) 受容体の86番目のアミノ酸変異による感受性の変化。ヒトやラングールの受容体をニホンザル型(86番目がT:スレオニン)にすると耐性が高くなり、ニホンザルをヒト型(E:グルタミン酸)にすると耐性が低くなる。

 

本研究は東京大学農学生命科学研究科「味覚サイエンス」講座、北京大学生物多様性研究拠点との共同研究により行われました。

 本研究成果は、主に以下の事業・研究課題によって得られました。 

科学研究費補助金基盤研究(B)「ゲノム多様性を基盤とした霊長類の種内・種間感覚特性の解明」、グローバルCOE A06「生物の多様性と進化研究のための拠点形成−ゲノムから生態系まで」、環境研究総合推進費D-1007、武田科学振興財団研究助成、鈴木謙三記念医科学応用研究財団助成

 Abstract: http://rsbl.royalsocietypublishing.org/cgi/content/abstract/rsbl.2011.1251?ijkey=sACVi2Jd0xLEzas&keytype=ref 

京都大学HP: http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/120315_2.htm

Biology Letters、オンライン版3月7日掲載

 

Functional diversity of bitter taste receptor TAS2R16 in primates

Hiroo Imai, Nami Suzuki, Yoshiro Ishimaru, Takanobu Sakurai, Lijie Yin, Wenshi Pan, Keiko Abe, Takumi Misaka and Hirohisa Hirai

In mammals, bitter taste is mediated by TAS2R genes, which belong to the large family of seven transmembrane G protein-coupled receptors. Because TAS2Rs are directly involved in the interaction between mammals and their dietary sources, it is likely that these genes evolved to reflect species-specific diets during mammalian evolution. Here, we investigated the sensitivities of TAS2R16s of various primates by using a cultured cell expression system, and found that the sensitivity of each primate species varied according to the ligand. Especially, the sensitivity of TAS2R16 of Japanese macaques to salicin was much lower than that of human TAS2R16, which was supported by behavioural tests. These results suggest the possibility that bitter-taste sensitivities evolved independently by replacing specific amino acid residues of TAS2Rs in different primate species to adapt to food items they use.

 This work was financially supported by Global COE A06 and by grants-in-aid from the MEXT (2137009, 22247036), and from the Ministry of the Environment (D-1007), Japan, and grants from the Takeda Foundation for Science and the Suzuken Memorial Foundation to H.I. 

Biology Letters, Published online before print March 7, 2012, doi: 10.1098/rsbl.2011.1251 

Full Text: http://rsbl.royalsocietypublishing.org/cgi/content/full/rsbl.2011.1251?ijkey=sACVi2Jd0xLEzas&keytype=ref

MAR/16/2012

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