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H25
論文 44 報 学会発表 123 件
H25-A1
代:小林 和人
協:加藤 成樹
協:伊原 寛一郎
霊長類に特異的なイムノトキシン神経路標的法の開発

論文
Takada, M., Inoue, K., Koketsu, K., Kato, S., Kobayashi, K., Nambu, A.(2013) Elucidating information processing in primate basal ganglia circuitry: a novel technique for pathway-selective ablation mediated by immunotoxin. Front. Neural Circuits 7:140.

Hirano, M., Kato, S., Kobayashi, K., Okada, T., Yaginuma, H., and Kobayashi, K.(2013) Highly efficient retrograde gene transfer into motor neurons by lentiviral vector pseudotyped with fusion glycoprotein. PLoS One 8(9):e75896.

学会発表
伊原寛一郎、加藤成樹、菅原正晃、小林憲太、小林和人 HiRetとNeuRetウイルスベクターによる逆行性遺伝子導入の特性と比較(2013年6月20日) 第36回日本神経科学大会(京都).

平野雅、加藤成樹、小林憲太、岡田知明,八木沼洋行、小林和人 融合糖タンパク質組換え体レンチウイルスベクターによる運動ニューロンへの高頻度逆行性遺伝子導入(2013年6月22日) 第36回日本神経科学大会(京都).

Kato, S., Fukabori, R., Kobayashi, K., Yawo, H., Isomura, Y., Kobayashi, K. Functional control of specific neural pathways in basal ganglia circuit by HiRet vector-mediated transgene expression. (November 9, 2013) 43rd Annual Meeting of Society for Neuroscience(San Diego).
霊長類に特異的なイムノトキシン神経路標的法の開発

小林 和人 , 加藤 成樹, 伊原 寛一郎

霊長類の高次脳機能の基盤となる脳内メカニズムの解明とゲノム科学との融合のために、複雑な神経回路における情報処理とその調節の機構の理解が必要である。我々は、これまでに、高田教授の研究グループと共同し、高頻度な逆行性遺伝子導入を示すウイルスベクター (HiRet/NeuRetベクター)を用いて特定の神経路を切除する遺伝子操作技術を開発した。この神経路標的法では、ヒトインターロイキン-2受容体αサブユニット(hIL-2Rα)遺伝子を発現するNeuRetベクターを脳に注入することにより、そこへ入力する神経路にhIL-2R?遺伝子を発現させ、その後特定脳領域にhIL-2Rαに対して選択的に作用する組換え体イムノトキシンを投与することによって、目的の神経路の選択的除去を誘導する(Inoue et al., 2012)。しかし、このイムノトキシンはサルIL-2Rαに交差反応する可能性があり、標的細胞への選択性を高めるために、サルIL-2Rαに反応せず、マウスIL-2Rα(mIL-2Rα)に選択的に作用する新たなイムノトキシン(anti-mCD25-PE38)の開発を試みた。mIL-2Rαを用いて免疫化したラットより調製された3種類の抗体(3C7, 2E4, PC61)について、ハイブリドーマから得た遺伝子配列に基づきVHとVL領域を単一ペプチドとして連結し、緑膿菌体外毒素の膜貫通・触媒ドメインに融合したイムノトキシンを発現するベクターを作製した。これらのイムノトキシンについて大腸菌で発現させ、精製し、イムノトキシンの性能を評価する予定である。また、NeuRetベクターの遺伝子導入効率を向上させるため、融合糖タンパク質のジャンクションの至適化を行い、新たな融合糖タンパク質?型(FuG-E)を開発した(Kato et al.,2014)。今後、FuG-Eベクターについてサル脳内への遺伝子導入頻度を解析する予定である


H25-A2
代:磯田 昌岐
協:松本 正幸
協:Kevin McCairn
霊長類モデルを用いたトゥーレット症候群に有効な脳深部刺激療法の基礎的研究

論文
McCairn KW, Iriki A, Isoda M( 2013) Deep brain stimulation reduces tic-related neural activity via temporal locking with stimulus puses Journal of Neuroscience 33( 15): 6581-6593.

McCairn KW, Isoda M( 2013) Pharmacological animal models of tic disorders International Review of Neurobiology 112: 179-209.

学会発表
McCairn KW, Iriki A, Isoda M Deep brain stimulation eliminates tic-related neural activity via interlocking with stimulus pulses( May 30, 2013) The 16th Wuadrennial Meeting of the World Society for Stereotactiv and Functional Neurosurgery( Tokyo, Japan).

McCairn KW, Isoda M, Iriki A, Takada M, Matsumoto M Decoding a limbic-motor network contribution to the expression of obsessive compulsive behavior in macaques( June 22, 2013) The 36th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society( Kyoto, Japan).

McCairn KW, Iriki A, Isoda M Elimination of tic-related neuronal activity by deep brain stimulation via interlocking with stimulus pulses( June 24, 2013) The 11th World Congress of Biological Psychiatry( Kyoto, Japan).

McCairn KW, Iriki A, Isoda M Global dysrhythmia of cortico-basal ganglia-cerebellar networks underlie motor tics in a nonhuman primate model of Tourette syndrome( June 26, 2013) The 11th World Congress of Biological Psychiatry( Kyoto, Japan).

McCairn KW, Isoda M, Iriki A, Takada M, Matsumoto M Decoding a limbic-motor network contribution to the expression of obsessive-compulsive behavior in macaques( June 27, 2013) The 11th World Congress of Biological Psychiatry( Kyoto, Japan).
霊長類モデルを用いたトゥーレット症候群に有効な脳深部刺激療法の基礎的研究

磯田 昌岐 , 松本 正幸, Kevin McCairn

チックとよばれる不随意運動を特徴とするヒトのトゥーレット症候群の発症機構と、それに対する脳深部刺激療法の有効性を検討するため、同疾患の霊長類モデル動物を用いた電気生理学的研究を実施した。まず、ニホンザルの大脳基底核(被殻)にGABA-A受容体の拮抗薬であるビククリンを微量注入し(2-8 μl)、顔面と前肢のチックを誘発した。この症状は、薬剤注入の数分後から出現し、数時間(通常は2-3時間)後に消失するという一過性の経過をたどった。次に、チックの出現前後において、大脳皮質運動野、大脳基底核(被殻、淡蒼球外節、淡蒼球内節)、そして小脳(皮質および歯状核)から単一神経細胞活動と局所電場電位を記録し、広域神経ネットワークの活動を評価した。その結果、全ての記録部位において、チックに同期あるいは先行する異常な興奮活動を見出した。大脳基底核における異常活動の潜時は、大脳皮質運動野と小脳のそれよりも有意に早かったが、大脳皮質運動野と小脳間では有意差を認めなかった。さらに、淡蒼球内節に電気刺激(2相性パルス、各パルス幅60μ秒、周波数150Hz、刺激強度1V、持続時間30秒)を加えたところ、チックの振幅が減少し、淡蒼球の異常神経活動が減弱した。以上より、トゥーレット症候群は、大脳基底核に加え小脳を含む広汎な神経ネットワークの活動異常により引き起こされること、そして、大脳基底核の出力部の電気刺激がそのような異常活動を除去するのに有効であることが示唆された。


H25-A3
代:松本 正幸
協:川合 隆嗣
協:佐藤 暢哉
認知機能と行動制御における外側手綱核の役割

論文
Masayuki Matsumoto, Masahiko Takada(2013) Distinct representations of cognitive and motivational signals in midbrain dopamine neurons Neuron 79(5):1011-1024.

学会発表
Takashi Kawai, Nobuya Sato, Masahiko Takada, Masayuki Matsumoto Representation of learning signals in lateral habenula and anterior cingulate cortex(2013年6月22日) Neuro2013(京都).

Takashi Kawai, Nobuya Sato, Masahiko Takada, Masayuki Matsumoto Negative feedback monitoring by lateral habenula and anterior cingulate cortex in monkey during a reversal learning task(2013年11月10日) Neuroscience 2013, Society for Neuroscience(San Diego).
認知機能と行動制御における外側手綱核の役割

松本 正幸 , 川合 隆嗣, 佐藤 暢哉

外側手綱核と前部帯状皮質は罰に関連した神経シグナルを伝達する脳領域である。本研究では、それぞれのシグナルが脳内の学習プロセスに果たす役割を検討するため、マカクザル(ニホンザルとアカゲザル)を用いた電気生理学的研究を実施した。まず、二頭のサルに逆転学習課題を訓練した。この課題では、サルに二つの選択肢を呈示し、一方を選ぶと50%の確率で報酬が得られるが、もう一方を選択しても報酬は得られない。報酬が得られる選択肢は数十試行の間固定され、その後、明示的なインストラクション無しに入れ換わる。サルは、一方を選んで報酬が得られない試行が続いたとき、もう一方に選択を切り替える必要がある。課題遂行中のサルの外側手綱核と前部帯状皮質から神経活動を記録したところ、両方の脳領域で報酬が得られなかったときに活動を上昇させる神経細胞が多数見つかった。特に、前部帯状皮質で大きな神経活動の上昇が生じた後、サルが自らの選択を切り替える傾向が見られた。外側手綱核ではサルの選択に関連した神経活動は見られなかったが、前部帯状皮質よりも早いタイミングで神経活動が上昇していた。以上の結果から、まず外側手綱核で無報酬が検出され、その後、前部帯状皮質でサルの選択行動が決定されると示唆される。


H25-A4
代:星 英司
協:橋本 雅史
行動制御に関わる高次脳機能の解明に向けた神経ネットワークの解析

論文
Hirata, Y., Miyachi, S., Inoue, K.I., Ninomiya, T., Takahara, D., Hoshi, E., Takada, M.(2013) Dorsal area 46 is a major target of disynaptic projections from the medial temporal lobe. Cereb. Cortex 23(12):2965-2975.

Hoshi, E.(2013) Cortico-basal ganglia networks subserving goal-directed behavior mediated by conditional visuo-goal association. Front. Neural Circuits 7:158.

Saga, Y., Hashimoto, M., Tremblay, L., Tanji, J., Hoshi, E.(2013) Representation of spatial- and object-specific behavioral goals in the dorsal globus pallidus of monkeys during reaching movement. J. Neurosci. 33(41):16360-16371.

Arimura, N., Nakayama, Y., Yamagata, T., Tanji, J., Hoshi, E.(2013) Involvement of the globus pallidus in behavioral goal determination and action specification. J. Neurosci. 33(34):13639-13653.

関連サイト
東京都医学総合研究所 前頭葉機能プロジェクト http://www.igakuken.or.jp/frontal-lobe/index.html
行動制御に関わる高次脳機能の解明に向けた神経ネットワークの解析

星 英司 , 橋本 雅史

 霊長類の大脳皮質にある複数の高次運動野は認知的な行動制御において、重要な役割を果たす。さらに、こうした機能を達成するにあたって、他の脳部位、特に大脳基底核と小脳とのやり取りが重要であることが示唆されている。そこで、Brodmann 6野の外側面にある2つの高次運動野(運動前野背側部と運動前野腹側部)に注目し、これらが大脳基底核ならびに小脳と形成するネットワーク構築を解明することを目指して本研究を行った。大脳基底核と小脳は視床を介して大脳皮質に投射しているため、シナプスを越えて逆行性に伝播する性質がある狂犬病ウイルスをトレーサーとして用いた。運動前野にウイルスを注入した後の生存期間を調節することによって、淡蒼球内節と小脳核における投射起源、ならびに、線条体と小脳皮質における投射起源を同定することができた。その結果、いずれの部位においても「運動領域」(一次運動野へ投射する領域)が運動前野腹側部と背側部へ投射するのに対して、「連合領域」(前頭前野へ投射する領域)は運動前野背側部へ選択的に投射することが明らかとなった。この結果は、運動前野背側部を中心とするネットワークが認知情報に基づく行動計画に関与するのに対して、運動前野腹側部を中心とするネットワークは主として計画された行動を正確に実行する過程に関与することを示唆した。


H25-A5
代:桃井 保子
協:花田 信弘
協:小川 匠
協:野村 義明
協:今井 奨
協:岡本 公彰
協:井川 知子
協:齋藤 渉
協:宮之原 真由
協:菅原 豊太郎
チンパンジーの口腔内状態の調査:う蝕・歯の摩耗・歯周炎・噛み合わせの評価を中心に

論文
Miyanohara M, Imai S, Okamoto M, Saito W, Nomura Y, Momoi Y, Tomonaga M, Hanada N.(2013) Distribution of Streptococcus troglodytae and Streptococcus dentirousetti in chimpanzee oral cavities. Microbiology and Immunology 57(5):359-65. 謝辞あり

関連サイト
鶴見大学歯学部 保存修復学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/clinic/270

鶴見大学歯学部 探索歯学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/basic/343

鶴見大学歯学部 クラウンブリッジ補綴学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/clinic/285

鶴見大学歯学部 口腔微生物学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/basic/337

論文 Distribution of Streptococcus troglodytae and Streptococcus dentirousetti in chimpanzee oral cavities. 掲載ページ http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1348-0421.12047/abstract
チンパンジーの口腔内状態の調査:う蝕・歯の摩耗・歯周炎・噛み合わせの評価を中心に

桃井 保子 , 花田 信弘 , 小川 匠, 野村 義明, 今井 奨, 岡本 公彰, 井川 知子, 齋藤 渉, 宮之原 真由 , 菅原 豊太郎

チンパンジー11個体342歯に対して歯科検診を実施した.その内う蝕歯は16歯,喪失歯は3歯であった.よって,う蝕経験歯を指すDMF歯は19歯,DMF指数は 1.45であった.歯肉溝の深さは,342歯中317歯が4mm以下であった.歯周ポケット測定時に出血を認めなかったのは6個体,動揺歯を認めなかったのは8個体であった.著しいプラークの蓄積と歯石の沈着が9個体に認められた.また,年齢に応じて全顎的に顕著な咬耗を認めた.
う蝕歯はそのほぼ全てに破折を認めた.そのうち前歯は11歯であり,破折・う蝕歯は前歯部に集中している.よって,う蝕の原因は外傷に起因すると考えられる.歯肉溝の深さが4 mm以下である歯は全体の92.7 %であり,そのほとんどが測定時の出血を認めなかった.深さ4 mmの歯肉溝は健康な歯肉であると推察する.現在までに検診した個体のう蝕と歯周疾患から見る口腔健康状態は,口腔衛生に関する介入は皆無であり,プラークと歯石の多量の沈着を散見するにもかかわらず極めて良好ということができる.この理由として,本研究所におけるチンパンジーが100品目を超える無加工のバランスの良い食餌を取っている事に着目している.いくつかの個体は経年的な検査結果を得ている.
また,採取したプラークから分離された6菌株については生化学的性状,遺伝子塩基配列より,S. mutansグループに属する新菌種であるとしてStreptococcus troglodytaeと命名し,承認された.さらに未知の細菌が存在する可能性があると考えている.



H25-A6
代:清水 貴美子
協:深田 吉孝
協:中辻 英里香
霊長類における概日時計と脳高次機能との連関

学会発表
Kimiko Shimizu, Yodai Kobayashi, Erika Nakatsuji, Yoshitaka Fukada SCOP dependent circadian memory formation for novel objects(2013.11.9-13) Society for neuroscience annual meeting(San Diego).

Kimiko Shimizu, Erika Nakatsuji, Yodai Kobayashi, Yoshitaka Fukada SCOP-related circadian memory formation for novel objects(2013.6.20-23) Neuro2013(京都).
霊長類における概日時計と脳高次機能との連関

清水 貴美子 , 深田 吉孝, 中辻 英里香

 我々はこれまで、齧歯類を用いて海馬依存性の長期記憶形成効率の概日変動を見出し、SCOPという分子が概日時計と記憶を結びつける鍵因子である可能性を示す結果を得てきた。本研究では、ヒトにより近い脳構造・回路を持つサルを用いて、SCOPを中心とした概日時計と記憶との関係を明らかにする。
 ニホンザル6頭を用いて記憶測定法の検討を行った。苦い水と普通の水が入った2つのボトルにそれぞれ異なる目印をつけ、水の味と目印との連合学習を行う。24時間後のテストでは普通の水を入れた2つのボトルに学習時と同じ目印をつける。どちらのボトルを選ぶかをビデオ観察し、記憶の判断をおこなう。記憶測定の前段階として、水の味と目印が連合する事をサルに覚えさせるための前学習(学習/テストに用いるものとは別の目印)が必要であるが、学習前日に朝昼夕 3回の前学習では学習効果がみられなかった。1日1回3日間の前学習では少なくとも一部のサルには学習効果がみられていたため、このスケジュールをもとに本テストを再検討し、最適な学習プロトコールを作成する。学習プロトコールが決定した後、SCOPshRNA発現レンチウイルスをもちいた海馬特異的なSCOPの発現抑制により、記憶の時刻依存性に対するSCOP の影響を検討する。



H25-A7
代:橋本 亮太
協:安田 由華
協:山森 英長
ゲノムによる霊長類における脳機能の多様性の解明

論文
Horiguchi M, Ohi K, Hashimoto R, Hao Q, Yasuda Y, Yamamori H, Fujimoto M, Umeda-Yano S, Takeda M, Ichinose H.(2013) A functional polymorphism (C-824T) of the tyrosine hydroxylase gene affects intelligence quotient in schizophrenia Psychiatry and Clinical Neurosciences 68(6):456-62.

Ohi K, Hashimoto R, Yasuda Y, Fukumoto M, Yamamori H, Umeda-Yano S, Fujimoto M, Iwase M, Kazui H, Takeda M(2014) Influence of the NRGN gene on intellectual ability in schizophrenia. Journal of Human Genetics 58(10):700-705.

Ohi K, Hashimoto R, Yamamori H, Yasuda Y, Fujimoto M, Umeda-Yano S, Fukunaga M, Watanabe Y, Iwase M, Kazui H, Takeda M (2013) The impact of the genome-wide supported variant in the cyclin M2 gene on gray matter morphology in schizophrenia. Behavioral and Brain Functions 9(1):40.

Ohi K, Hashimoto R, Yamamori H, Yasuda Y, Fujimoto M, Nakatani N, Kamino K, Takeda M (2013) How to diagnose the 22q11.2 deletion syndrome in patients with schizophrenia: a case report. Annals of General Psychiatry 12(1):29.

Hashimoto R, Ikeda M, Ohi K, Yasuda Y, Yamamori H, Fukumoto M, Umeda-Yano S, Dickinson D, Aleksic B, Iwase M, Kazui H, Ozaki N, Weinberger DR, Iwata N, Takeda M (2013) Genome-wide association study of cognitive decline in schizophrenia. Am J Psychiatry 170(6):683-684.

ゲノムによる霊長類における脳機能の多様性の解明

橋本 亮太 , 安田 由華, 山森 英長

統合失調症、双極性障害、うつ病などの精神疾患に関連することが知られているリスク遺伝子であるCOMT(catechol-o-methyltransferase gene)についての検討を行った。COMTは,ドーパミンの代謝酵素であり,COMTには機能的遺伝子多型(Val158Met)があることが知られている。Val多型はMet多型と比較してドーパミンを代謝する酵素活性が高いことから,ヒトの前頭葉においてVal多型ではMet多型よりドーパミンが多く代謝され,ドーパミン量が低下することが想定される。そこで,統合失調症において障害されていることが知られている前頭葉課題であるWCSTを行い,Val多型を持つとMet多型を持つものよりWCSTの成績が低く、さらに,前頭葉機能効率をfMRIにて測定し,Val多型を持つものではその効率が悪いことが報告された。最後に,遺伝子関連解析により,Val遺伝子多型は統合失調症のリスクとなることを報告している。すなわちCOMT遺伝子のVal多型はMet多型と比較してCOMT酵素活性が高く,その結果,前頭葉のドパミン量が低下し,前頭葉機能効率が悪くなり,統合失調症のリスクとなるということである。昨年度までに、マカク類において、エクソンシークエンスを行い、COMTのミスセンス変異を発見した。次に、大規模にこのミスセンス変異をタイピングする必要があるため、タックマン法を用いて、大量タイピング法を確立した。
本年度は、霊長研におけるニホンザル、アカゲザル、カニクイザル、台湾サル、ブタオザル、ボンネットザル、チンパンジーのPro265Ser多型のタイピングを行った。その結果、ニホンザルとカニクイザルのみにおいてこの多型が存在することがわかった。また、ヒトには、この多型は存在せず、サルの進化と行動様式の違いに関与している可能性が示唆された。
 ヒトにおいても、脳表現型コンソーシアムにおいて多数の脳表現型を測定し、ゲノム多型との関連の検討を行っており、有望な遺伝子については、霊長類における検討を行うストラテジーで進めている。



H25-A8
代:牛谷 智一
協:後藤 和宏
チンパンジーの視覚・注意の発達変化に関する比較認知研究
チンパンジーの視覚・注意の発達変化に関する比較認知研究

牛谷 智一 , 後藤 和宏

本研究は、チンパンジーとヒトの視覚処理を比較し、その共通点と相違点から、視覚の進化的要因を解明することを目的としておこなわれた。これら2種の比較から、知覚的体制化に関しての相違が明らかになりつつあるが、本研究では、その相違点のうち、特に、弁別・探索課題における部分・全体情報の視覚処理や注意のメカニズムを解明するとともに、発達変化に関する比較を視野に入れた実験系の確立を目指した。
これまでの実験から、画面上の物体といった「まとまり」を単位に賦活するような視覚的注意過程(オブジェクトベースの注意)がチンパンジーにもあることが明らかになったことから、今回は、物体の形状が注意の賦活にどう影響するかを検討した。手がかりと標的を背景の物体が直線的に結ぶ条件と、複雑に数回転回しながら結ぶ条件とを比較し、前者と比較して後者の反応時間が長くなれば、物体への注意の賦活は物体全体に均一ではなく、手がかり位置からの物体内部での距離に従って低くなることが示唆される。しかし結果は、これらの条件間で差はなく、物体全体が均一に賦活されていることを示唆するものであった。ただし、物体の位置が固定されていたことにより、標的の絶対位置の効果が大きく、物体の複雑さの影響が隠蔽された可能性も高い。今後、位置についての操作を加え、物体の形状の影響を精査する予定である。


H25-A9
代:田中 由浩
協:佐野 明人
チンパンジーにおけるトラックボール式力触覚ディスプレイを用いた比較認知研究
チンパンジーにおけるトラックボール式力触覚ディスプレイを用いた比較認知研究

田中 由浩 , 佐野 明人

 本研究では,トラックボール式力触覚ディスプレイを用いてチンパンジーによる力触覚に関する認知実験を行い,比較認知科学の観点から,力触覚の感度特性および運動と感覚受容の相互関係について考察することを目的としている.また,言語による情報伝達を用いないことで,力触覚の感覚の本質的な伝達や評価の方法についても考察したいと考えている.これまでに摩擦力の弁別について学習実験を行い,弁別の可能性を確認してきた.本年度は,これまでの実験結果を用いて触動作の解析などを行った.実験では大きさの異なる2種類の摩擦力を提示したが,操作されたトラックボールの平均速度を求めると,実験に参加した個体すべてにおいて,摩擦力が大きい時に速度が遅くなる傾向にあることがわかった.一方,平均加速度についてはあまり差が見られなかった.今後,弁別に正解した場合など,試行ごとに解析し,触運動の戦略や摩擦力の認知について考察したい.また,装置の摩擦力提示性能を評価するため,牽引式の摩擦力計測装置を開発した.評価の結果,方向や大きさに誤差はあるものの,これまでに使用していた0.5Nおよび8.0Nの摩擦力提示については差異を確認できた.


H25-A10
代:伊村 知子
チンパンジーにおける質感認知に関する比較認知科学研究

論文

学会発表
伊村知子・増田知尋・和田有史 チンパンジーにおける食物の質感知覚(2012年1月18日) 第三回多感覚研究会(東京大学).

伊村知子・増田知尋・和田有史・岡嶋克典 チンパンジーにおける食物のテクスチャ知覚(2012年5月12日〜13日) 日本動物心理学会第72回大会(関西学院大学).

関連サイト
新学術領域研究・質感脳情報学・ニュースレター http://shitsukan.jp/sites/default/files/newsletter03_131220-1.pdf
チンパンジーにおける質感認知に関する比較認知科学研究

伊村 知子

 これまでの申請者らの研究から、チンパンジーは「鮮度」の異なる食物の画像を見分ける際に、輝度の分布に関する情報を用いることが示唆された。本年度は、輝度分布から得られる情報の1つとして、立体的な形状の知覚について、チンパンジー7個体(平均年齢25.0歳)とヒト9名(平均年齢21.4歳)を対象に検討した。課題は、画面に提示される輝度のグラデーションのついた円36個をランダムに配置したパタン2つと、36個のうち中央の6個のみグラデーションの反転した円(ターゲット)を含むパタン1つの中から、ターゲットを含むパタンを見つけ出し、できるだけ速く正確に触れるというものであった。このとき、ヒトでは光が上から差すように、輝度のグラデーションが垂直方向に変化する方が、水平方向に変化する場合よりもパタンの違いを区別しやすいことが知られている。そこで、輝度のグラデーションを22.5度ずつ16種類の方向に変化させ、ターゲットの検出における輝度グラデーションの方向の効果を検討した。その結果、チンパンジーもヒトも、水平方向よりも垂直方向を中心とした輝度グラデーションにおいて、ターゲットを含むパタンを速く正確に検出できることが明らかになった。


H25-A11
代:岡本 早苗
協:Robin M. Bernstein
チンパンジー母乳における生物活性因子と子供の成長との関係性

論文

関連サイト
岡本の大学内でのページ http://www.maastrichtuniversity.nl/web/Profiel/s.barth.htm

研究協力者代表のRobin Bernsteinのページ http://www.colorado.edu/anthropology/people/bios/bernstein.html
チンパンジー母乳における生物活性因子と子供の成長との関係性

岡本 早苗 , Robin M. Bernstein

本研究は現段階でも継続中であり、26年度も引き続き、共同利用研究として継続希望が採択された。本研究では2000年から数年に渡り思考言語分野において採取、冷凍保存されていたチンパンジーの母乳サンプルを調べることにより、ヒトとチンパンジーにおける代謝および免疫に関係する因子の比較をおこなう。またチンパンジーの授乳期間が長いことから、母乳中の因子と乳児の発達との関係性を調べる。さらに同様に採取された母子の糞尿サンプルもあわせて調べることにより、乳児の発達に伴った母子の生理学的変化を総合的に検討する。現段階では、コロラド大学の研究協力者の実験室において、分析担当者の選抜および訓練がおこなわれている。また、母乳サンプル輸出についても、ワシントン条約に基づいたCITES(Convention on International Trade in Endangered Species)手続きのためのチンパンジー3個体各々の書類準備が進められている。今夏以降には、サンプルの輸出をおこない、分析を開始する予定である。


H25-A12
代:南部 篤
協:畑中 伸彦
協:知見 聡美
霊長類脳科学の新しい展開とゲノム科学との融合に向けた神経解剖学的検索

論文
Miyachi S, Hirata Y, Inoue K, Lu X, Nambu A, Takada M(2013) Multisynaptic projections from the ventrolateral prefrontal cortex to hand and mouth representations of the monkey primary motor cortex Neurosci Res 76:141-149.

Takada M, Hoshi E, Saga Y, Inoue KI, Miyachi S, Hatanaka N, Inase M, Nambu A (2013) Organization of two cortico?basal ganglia loop circuits that arise from distinct sectors of the monkey dorsal premotor cortex. Basal Ganglia ? An Integrative View:DOI: 10.5772/54822.

Takada M, Inoue K, Koketsu D, Kato S, Kobayashi K, Nambu A(2013) Elucidating information processing in primate basal ganglia circuitry: a novel technique for pathway-selective ablation mediated by immunotoxin. Front Neural Circuits 7:140.

学会発表
橘吉寿、岩室宏一、喜多均、高田昌彦、南部篤 パーキンソン病モデルサルの大脳基底核における異常リズム生成機構.(2013.3.29) 第90回日本生理学会大会(東京).

Hatanaka N, Miyachi S, Nambu A, Takada M Neuronal networks innervating the jaw-opening and jaw-closing muscles: A retrograde transneuronal tracing study with rabies virus in the rat.(2013. 11. 12) Neuroscience 2013 (San Diego, USA).
霊長類脳科学の新しい展開とゲノム科学との融合に向けた神経解剖学的検索

南部 篤 , 畑中 伸彦, 知見 聡美

 パーキンソン病をはじめとするヒト大脳基底核疾患の治療法として、大脳基底核に刺激電極を埋め込み高頻度連続電気刺激を行うという脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation, DBS)が行われている。しかし、連続刺激が局所の神経を抑制しているのか、興奮させているのかなど、その作用メカニズムについては不明なことが多い。今回サルの淡蒼球内節を刺激し、局所の神経活動を記録することにより、DBSの作用メカニズムを探る実験を行った。淡蒼球内節の単発刺激では局所の神経活動が一時的に抑制され、高頻度の連続刺激では刺激期間中の神経活動が完全に抑制された。また、この抑制にはGABA-A受容体が関わっていることが明らかになった。一方、淡蒼球外節刺激の場合は、抑制とそれに引き続く興奮が観察された。とくに高頻度の連続刺激では、興奮が目立つ傾向にあった。抑制にはGABA-A受容体が、興奮にはグルタミン酸受容体が関わっていることが明らかになった。このように淡蒼球内節と淡蒼球外節とでは、局所刺激した場合の反応が大きく異なることがわかった。このことは、両者においてGABA作動性入力とグルタミン酸作動性入力の比重の違いなど、神経解剖学的な差によると考えられた。また、このように反応が違うことを利用すれば、淡蒼球内節と淡蒼球外節とを容易に区別することが出来るようになり、ヒトの定位脳手術の際、ターゲットの同定に利用できる可能性が示唆された。


H25-A13
代:村井 千寿子
霊長類における時空間的な対象関係の理解に関する比較研究
霊長類における時空間的な対象関係の理解に関する比較研究

村井 千寿子

生物と物体の区別は、あらゆる動物において必須の基本的な知識のひとつである。しかし、ヒト以外の動物が生物・物体に関してどのような知識を持つかについては実験的研究が少ない。本研究では、ニホンザル・チンパンジーを対象にこれら対象の運動特性の理解について調べた。実験では、物体的な運動として水平運動を、生物的な運動としてシャクトリ虫のような物体の伸縮を伴う運動を設定し、二次元の幾何学図形がそれぞれの運動で移動するアニメーションを作った。物体は他の物体からの接触がある場合のみ運動が起こり、対して、生物は他の物体からの働きかけがなくても自己推進的な運動が可能である。そこで、先の物体的・生物的対象がこれらの運動ルールにしたがって移動する自然事象、またはルールに反して移動する違反事象を被験体に提示し、各事象に対する注視反応の違いから、被験体がそれぞれの対象においてその違反性に気づくかどうかを調べた。昨年度までの研究ですでに、チンパンジーにおいてその違反検出の可能性が示唆され、またニホンザルにおいても同様の可能性が示されている。本年度はこの結果を強めるために、ニホンザルにおいてより多数の被験体でのデータ収集を行い、分析を進めている。


H25-A14
代:安藤 寿康
協:岸本 健
協:多々良 成紀
協:福守 朗
協:山田 信宏
協:小西 克也
二卵性ふたごチンパンジーの行動発達に関する比較認知発達研究
二卵性ふたごチンパンジーの行動発達に関する比較認知発達研究

安藤 寿康 , 岸本 健, 多々良 成紀, 福守 朗, 山田 信宏, 小西 克也

高知県立のいち動物公園のチンパンジー・コミュニティでは,2009年に1組の二卵性の雌雄の双子が誕生し,母親および母親以外のメンバーによる養育が現在まで継続している。母親以外のメンバーが実子以外の子を世話する様子が,通常のチンパンジー・コミュニティではほとんど見られないことから、われわれはかれらがなぜ、どのように双子を世話するのか、またそうしたかかわりの中で双子は社会性をどのように発達させていくのかを検討するために,この双子とその母親,父親,非血縁者(すべて成体のメス) の9人をそれぞれ個体追跡法で観察しつづけている。本年度も観察を継続するとともに,得られたデータを解析し,11月9日・10日にのいち動物公園で開催されたSAGA16において発表した。
データの解析から,母親以外の成体メスの中には,通常,非血縁の子に対して行わないような運搬の世話行動を双子の一方に対し行う者が複数いることが分かった。また,子の社会的認知能力と運動能力の発達に伴い双子間、ならびに双子と大人間の相互作用も複雑なものに変化していることが観察より見てとれた。双子たちの行動には個体差が明確になってきているが,現時点ではこれが性差に起因するのかどうか不明である。



H25-A15
代:植木 孝俊
協:尾内 康臣
協:間賀田 泰寛
協:小川 美香子
協:岡戸 晴生
成体脳神経新生のin vivo動態解析技術の創出
成体脳神経新生のin vivo動態解析技術の創出

植木 孝俊 , 尾内 康臣, 間賀田 泰寛, 小川 美香子, 岡戸 晴生

 哺乳動物成体脳神経新生の動態、その分子基盤の研究は、これまで専らマウス等のげっ歯類で行われ、ヒト、マカクザル等の高等霊長類での成体脳神経新生の生理的役割、及び、その障害が精神神経疾患の病態生理に与る仕組みは未解明であった。そこで、本研究では、マカクザル(ニホンザル、アカゲザル)成体脳内の神経幹細胞をPETによりin vivoで画像化し、その動態と病態脳での神経新生障害を、リアルタイムで定量的に解析することをねらいとした。
 ここでは、初めに神経幹細胞をポジトロン放出核種で特異的に標識するため、神経幹細胞選択的に中性アミノ酸トランスポーターと、その共役因子を発現するレンチウィルスによる遺伝子発現系を構築した。即ち、nestinプロモーター/エンハンサーをカニクイザルBACライブラリーからクローニングし、それによりP2A配列を介したトランスポーター並びに共役因子遺伝子を発現するウィルスベクターから、ウィルス粒子を調製した。次に、ヒト神経幹細胞株にウィルスを感染し、nestinプロモーター/エンハンサーの神経幹細胞特異的活性を確認するとともに、成獣ラット海馬へのウィルス感染により、in vivoで神経幹細胞特異的なEGFP発現を誘導した。



H25-B1
代:森本 直記
協:Christoph Zollikofer
協:Marcia Ponce de Le?n
マカクザルにおける出産様式に関する形態学的研究
マカクザルにおける出産様式に関する形態学的研究

森本 直記 , Christoph Zollikofer, Marcia Ponce de Leon

ヒトにおける出産様式の進化に関する研究は、脳機能・歩行様式・生活史が関わる多面的な課題である。しかし、出産進化のメカニズムにおいて鍵となる新生児と骨盤の化石記録が乏しく、直接的な検証が極めて困難である。そのため、現生の霊長類をモデルとした研究が不可欠である。本共同研究では、マカク(アカゲザル)をモデルとし、出産メカニズムに関する生体データを取得・解析することを目的とした。2013年度は、妊娠・出産期の母親5個体(+胎児5個体)をCT撮像し、母親と胎児の3次元データを取得した。時間的制約等により、当初目標としていた母子10組のデータを期間内に得ることはできなかったため、最終目標である母子の形態的な共変異関係の統計的な解析には至らなかった。しかし、マカク母子の詳細な3次元形態データは他に類をみない貴重なものであり、今後の研究発展の基礎となるデータは得られた。さらに、3組に関しては同一個体における妊娠中期・後期の形態データも取得できた。今後、さらにデータを充実させ、コンピューター内での出産シミュレーションや、形態的な共変異関係の解析へと研究を発展させていく計画である。


H25-B2
代:三坂 巧
協:石丸 喜朗
協:戸田 安香
霊長類における旨味受容体T1R1/T1R3のアミノ酸応答性の評価

論文
Yasuka Toda, Tomoya Nakagita, Takashi Hayakawa, Shinji Okada, Masataka Narukawa, Hiroo Imai, Yoshiro Ishimaru, and Takumi Misaka(2013) Two distinct determinants of ligand specificity in T1R1/T1R3 (the umami taste receptor) JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY 288(52):36863?36877.
霊長類における旨味受容体T1R1/T1R3のアミノ酸応答性の評価

三坂 巧 , 石丸 喜朗, 戸田 安香

旨味受容体T1R1/T1R3はヒトとマウスで応答するアミノ酸の種類が異なる。本研究では、味覚受容体発現細胞を用いた味の評価技術を利用し、様々な動物種の旨味受容体のアミノ酸応答性を調査し、旨味受容体のアミノ酸配列の違いとアミノ酸応答性の違いを比較検討することを目的としている。
昨年度構築したマントヒヒT1R1およびリスザルT1R1発現プラスミドを用いて、細胞評価系によりアミノ酸応答性の評価を行った。その結果、マントヒヒT1R1がヒトT1R1と同様にL-Gluに対し高感度である一方で、リスザルT1R1はマウスT1R1同様、酸性アミノ酸よりもL-Alaなど他のアミノ酸に対し高感度であることが明らかとなった。
また、マカク属サルにおいて種間・地域間でTAS1R1遺伝子の多型が認められ、この多型によりアミノ酸感受性に変化が生じることが示唆された。そこで、L-Gluに対する閾値が異なることが期待されたアカゲザルインド群と中国群を用いて、行動実験を実施した。しかし、今回の試験では旨味という新規の味に対し嗜好ではなく忌避を示す個体がいるなど、予定通りの評価が行えなかった。今後、L-Gluの味に対する馴化期間を十分に設けることで閾値の正確な評価が可能になるのではないかと考えている。


H25-B3
代:東原 和成
霊長類の嗅覚・フェロモン受容体の多様性と進化

論文

学会発表
Atsushi Matsui, Yoshihito Niimura, Kazushige Touhara Evolution of olfactory receptor gene repertoires in primates(1st, November, 2013) The 11th International Symposium on Molecular and Neural Mechanisms of Taste and Olfactory Perception(Fukuoka, Japan).

新村 芳人、松井 淳、東原 和成 哺乳類進化における嗅覚受容体遺伝子ファミリーの膨張と収縮:13種の真獣類を用いた比較解析(2013年9月21日) 日本遺伝学会 第85回大会(横浜).

新村 芳人、松井 淳、東原 和成 哺乳類進化における嗅覚受容体遺伝子ファミリーの膨張と収縮:13種の真獣類を用いた比較解析(2013年9月6日) 日本味と匂学会 第47回大会(仙台).

関連サイト
東原化学感覚シグナルプロジェクト http://www.jst.go.jp/erato/touhara/index.html
霊長類の嗅覚・フェロモン受容体の多様性と進化

東原 和成

感覚受容体には生物が環境へ適応しながら進化してきた歴史が刻まれている。なかでも嗅覚・フェロモン感覚の受容体は、摂食・危険忌避・繁殖行動と密接に関連し、生物群としての社会性にも深くかかわっている。
ヒトを含む霊長類と、それ以外の哺乳類のゲノムデータから、進化学的に特殊な嗅覚受容体遺伝子を同定した。これらは哺乳類にとって特別な役割があると考えられる。これまでにRT-PCRによる発現解析で、これらの嗅覚受容体遺伝子が、様々な臓器に発現していることを確認した。この知見をもとに、嗅覚受容体タンパク質をアフリカツメガエルの卵母細胞を用いたアッセイ系で再構成し、化学物質に対する応答を測定中である。また、嗅覚受容体遺伝子の発現比較解析を行うために、大規模シークエンサーによるRNAシークエンシングを進めている。これまでにアカゲザルのライブラリーからシークエンスを行っている。嗅覚受容体およびその関連遺伝子の発現レベルを定量的に比較解析することで、嗅覚受容体遺伝子の発現パターンが得られ、時間軸を加えた嗅覚受容体レパートリーの解明につながると考える。


H25-B4
代:山下 俊英
協:中川 浩
サル脊髄損傷モデルを用いた軸索再生阻害因子とその抗体による神経回路修復に関する研究

論文

学会発表
中川浩、二宮太平、高田昌彦、山下俊英 サル脊髄損傷後の自然回復機構による皮質脊髄路網再編と運動機能変化(2013.5.26) 第48回日本理学療法学術集会(名古屋).

二宮太平、中川浩、上野将紀、西村幸夫、大石高生、山下俊英、高田昌彦 脊髄路損傷モデルザルにおける大脳皮質運動野から脊髄への越シナプス的入力様式(2013.6.22) Neuro2013(京都).

中川浩、二宮太平、高田昌彦、山下俊英 RGMa expression is increased in the peri-lesional sites after spinal cord injury in macaques(2013.6.20) Neuro2013(京都).

関連サイト
研究室のホームページ http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molneu/index.html

CRESTの研究内容 http://www.jst.go.jp/crest/crest-bnn/reseacher/22/06.html
サル脊髄損傷モデルを用いた軸索再生阻害因子とその抗体による神経回路修復に関する研究

山下 俊英 , 中川 浩

これまで、霊長類モデルを用いて、軸索再生阻害因子と脊髄損傷後の神経回路網再編成による機能再建に焦点をあて研究を行ってきた。その結果、阻害因子のひとつであるRGMが脊髄損傷後損傷周囲部にその発現量を増加させることを見出した。さらに、その責任細胞のひとつにミクログリアを同定することができた。現在は、そのRGMの作用を阻害する薬物を用いて脊髄損傷後の機能回復過程および神経回路網形成の有無を検証している。コントロール群(薬物投与なし)に関しては、自然経過にともない緩徐ではあるが、運動機能の回復がみられた。大脳皮質運動野と脊髄を直接連絡する神経路である皮質脊髄路を順行性トレーサーでラベルした結果では、自然回復に伴って脊髄損傷部を越えた神経軸索枝の一部が、直接指の筋肉を制御する運動ニューロンへ結合していることが分かった。これは、成熟した中枢神経においても神経可塑性能を有する可能性を示唆する知見である。


H25-B5
代:加藤 彰子
協:Tanya Smith
ニホンザルにおける歯の組織構造と成長

学会発表
Akiko Kato, Nancy Tang, Amanda M. Papakyrikos, Katie Hinde, Ellen Miller, Yutaka Kunimatsu, Eishi Hirasaki, Daisuke Shimizu, Tanya M. Smith Molar enamel thickness in four macaque species(9-13 April 2013) 82nd annual meeting American Association of Physical Anthropologists (AAPA)(Knoxville, Tennessee).

Nancy Tang, Akiko Kato, Katie Hinde, Ellen Miller, Tanya M. Smith Molar development and life history in four macaque species(9-13 April 2013) 82nd annual meeting American Association of Physical Anthropologists (AAPA)(Knoxville, Tennessee).
ニホンザルにおける歯の組織構造と成長

加藤 彰子 , Tanya Smith

これまでに我々は、ニホンザルを含む6種類のマカクの歯冠エナメル質の厚みについてX線CT画像解析により調査をおこなってきた。その結果、平均的エナメル質の厚み(AET)と相対的エナメル質の厚み(RET)は種間で有意な差が認められ、特にカニクイザルとブタオザルではAETが低く、ニホンザルとバーバリーマカクではAETが高い結果となった。上下顎ともに第一大臼歯のAETは各マカクの生息範囲を代表する緯度との間に有意な正の相関関係が見られた(p<0.001)。RETの比較ではAETで見られた結果とは異なる種間差が認められた。つまり、RETはベニガオザルで相対的に小さく、カニクイザルで相対的に大きな厚みとなった。ニホンザルのRETは全6種の中では最も大きな厚みが認められた。これらの結果と生息環境および食性との関係について先行研究を基に考察し、AJPA(American Journal of Physical Anthropology)に現在投稿中である。今後は、大臼歯の歯冠エナメル質に認められる成長線を用いて歯の形成速度と食性との関係を調査していく予定である。


H25-B6
代:田和 正志
協:岡村 富夫
低酸素化あるいは再酸素化がニホンザル血管機能に及ぼす影響

学会発表
田和 正志 冠動脈における可溶性グアニル酸シクラーゼ酸化還元平衡状態に及ぼす低酸素あるいは再酸素曝露の影響(2013年7月12日) 第123回日本薬理学会近畿部会(名古屋).
低酸素化あるいは再酸素化がニホンザル血管機能に及ぼす影響

田和 正志 , 岡村 富夫

 cGMP 産生酵素である可溶性グアニル酸シクラーゼ (sGC) には、一酸化窒素 (NO) によって活性化される還元型 (reduced sGC) とされない酸化型 (oxidized sGC)、ヘム欠失型 (heme-free sGC) の 3 種類が存在する。近年これらの sGC を標的とする種々の薬物が開発されており、sGC stimulator は reduced sGC を、sGC activator は oxidized および heme-free sGC をそれぞれ NO 非依存的に活性化する。したがって、これらの両薬物は sGC のレドックス状態を調べるツールとしても活用されている。
 前年度までの研究で、ニホンザル冠動脈を低酸素あるいは再酸素に曝露すると、sGC stimulator による弛緩反応は減弱し、sGC activator による反応は増強することを明らかにしてきた。今年度は、低酸素あるいは再酸素曝露下での sGC stimulator および sGC activator による cGMP 産生を摘出ニホンザル冠動脈において確認した。その結果、血管反応性と相関して、低酸素あるいは再酸素曝露により sGC stimulator による cGMP 産生は減少し、sGC activator による産生は増大した。以上の結果は、低酸素あるいは再酸素に曝露された冠動脈では、発現する sGC のフォームが reduced sGC から oxidized/heme-free sGC へと移行していることを示している。



H25-B7
代:Kim Heui-Soo
協:Ja-Rang- Lee
協:Jung-Woo-Eo
Molecular characterization of HERV-R family in primates

論文
Jungwoo Eo, Hee-Jae Cha, Hiroo Imai, Hirohisa Hirai, and Heui-Soo Kim( 2014) Expression Profiles of Endogenous Retroviral Envelopes in Macaca mulatta (Rhesus Monkey) AIDS Research and Human Retroviruses 30(10): 996-1000. 謝辞 This research was supported by the Cooperative Research Program of the Primate Research Institute, Kyoto University.

Yuri Choi, Yi-Deun Jung, Selvam Ayarpadikannan, Akihiko Koga, Hiroo Imai, Hirohisa Hirai, Christian Roos,and Heui-Soo Kim( 2014) Novel variable number of tandem repeats of gibbon MAOA gene and its evolutionary significance Genome 57( 8): 427-432. 謝辞 This research was supported by the Cooperative Research Program of the Primate Research Institute, Kyoto University.

学会発表
Jungwoo Eo Expression of Human Endogenous Retrovirus (HERV)-R Env Protein in Non-human Primates( October 9-11, 2013) International Conference of the Korean Society for Molecular and Cellular Biology( Seoul, Korea).

Jungwoo Eo Expression Analysis of Human Endogenous Retrovirus (HERV)-R in Primates( September 5-6, 2013) 2013 KOGO 22nd Annual Conference( Seoul, Korea).

Jungwoo Eo Endogenous retroviral envelope protein expression in rhesus monkey (Macaca Mulatta) and common marmosets (Callithrix Jacchus)( 11th-16th August, 2014) XXCth congress of the International Primatological society( Vietnam).
Molecular characterization of HERV-R family in primates

Heui-Soo-Kim , Ja-Rang- Lee, Jung-Woo-Eo

Endogenous retroviruses (ERVs), which are footprints of ancient germ line infections, inserted into the genome early in primate evolution. Human endogenous retroviruses (HERVs) occupy around 8% of the human genome. Although most HERV genes are defective with large deletions, stop codons, and frameshifts in the open reading frames (ORFs), some of full-length sequences containing long ORFs are expressed in several tissues and cancers. Several envelope glycoproteins, encoded by env genes, have retained some characters of their ancestral infectious viruses with essential physiological consequences for the organs where they are expressed. Previous studies have shown Env expression of HERVs at mRNA level rather than the more difficult detection of protein expression in cells and tissues. Whether Env is functionally conserved in primate species is not well explored. To better understand possible role of Env in primates, here, we examined the expression of four HERVs (HERV-R, -K, -W, and -FRD) Env proteins in various tissues of rhesus monkey and common marmosets. The HERV Env proteins were observed moderate to high levels in each tissue, showing tissue-specific or species-specific expression patterns. These data suggest a biologically important role for the retroviral proteins in a variety of the healthy tissues of rhesus monkey and common marmosets.




Fig. 1. Expression of HERVs (HERV-R, -K, -W, -FRD) Env proteins in rhesus monkey and common marmosets. Expressions in various tissues of (a) Rhesus monkey, (b) infant common marmoset, and (c) adult common marmoset were analyzed by western blotting. Western blot was performed in more than three independent experiments. Each band was normalized to glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH).


H25-B8
代:古川 昭栄
協:福光 秀文
協:宗宮 仁美
サル脊髄由来間質系幹細胞の培養とその移植によるラット脊髄損傷修復効果の検討
サル脊髄由来間質系幹細胞の培養とその移植によるラット脊髄損傷修復効果の検討

古川 昭栄 , 福光 秀文, 宗宮 仁美

ラット脊髄損傷部位にFGF-2を注入すると脊髄に固有の間葉系細胞 (FGF-2-誘導性フィブロネクチン陽性細胞:FIF) が増殖し運動機能が改善される。又、培養下で増殖させたFIF細胞の移植によっても同等の効果が認められる。そこで、もしサルの脊髄にFIF様細胞が存在するならばそれを培養し、ラット脊髄損傷モデルに移植して運動機能に及ぼす効果を評価した。ラット脊髄からのFIF細胞培養法に準じた方法で得たサルの細胞は、ラットFIF細胞と比較すると、1)形態では区別できない、2)やや増殖性が低い、3)FGF-2に応答して増殖する、など、ラットFIFに類似する細胞を得ることができた。そこで、培養下で増やしたサルFIF様細胞を、脊髄損傷(全切断)ラットの損傷部位に移植(免疫抑制剤も投与)し、7週間にわたり運動機能を評価した。移植群では5匹中3匹に運動機能の改善が認められが、非移植群でも5匹中1匹に改善が認められたことから、両群間の統計学的な有意差は得られなかった。結論として、ラットFIF細胞ほど活性は顕著ではないが、サルの脊髄にもFGF-2に応答して増殖し、脊髄損傷修復機能をもつラットFIF細胞様の細胞が存在するものと推定された。


H25-B9
代:東島 沙弥佳
尾の機能に着目した旧世界ザル仙骨の形態学的分析
尾の機能に着目した旧世界ザル仙骨の形態学的分析

東島 沙弥佳

霊長類における顕著な尾の形態変異は系統進化と適応に関わる重要な指標である。現生種における仙尾部骨格形態変異の多様性とその要因解明は、尾の形態・機能の解明に有用であり、霊長類の進化過程復元に必要不可欠な知見を提供する。前回の共同利用研究において筆者は、尾長の異なる狭鼻猿種において三次元的幾何学的形態分析を実施、仙骨正中矢状面形態が尾長をよく反映することを明らかにした。しかし同時に、マカク類とヒヒ類で形態が明瞭に異なるなど尾長以外の要因も仙骨形態変異に影響を及ぼす可能性が示された。そこで本研究では、計測範囲を、正中矢状面のみでなく仙骨全体へと広げ、仙骨形態と尾の機能、形態との関連を広く分析した。霊長類研究所所蔵の狭鼻猿種、原猿種成熟個体 (歯列完全萌出以後) の仙骨右側に47点のランドマークを設け座標を三次元計測し、得た座標を一般化プロクラステス法により基準化後、CVA(正準変量分析)を実施した。結果、広く旧世界ザル類において仙骨尾側(最終仙椎)形態が尾長を強く反映すること、また、仙骨頭側の形態は、系統の違いや地上環境利用頻度など尾長以外の要因を反映して変異することが明らかになった。


H25-B10
代:長岡 朋人
協:矢野 航
チンパンジー頭蓋の比較解剖学―乳様突起部の形態を中心に―
チンパンジー頭蓋の比較解剖学―乳様突起部の形態を中心に―

長岡 朋人 , 矢野 航

前年度の共同利用研究によって、胸鎖乳突筋はヒトでは1つであるがチンパンジーでは4つに分かれており、M.cleidooccipital、M.sternooccipital、M.cleidomastoid、M.sternomastoidにより構成されること、ヒトには欠くM.omocervicalisが存在することが明らかになった。本研究では、チンパンジー頭蓋を用いて、乳様突起部の筋の起始・停止・支配神経を詳細に記載し、乳様突起部の筋の神経支配の解明を進めた。
骨形態では若齢個体では平板だった乳様突起だが、年齢が進むと形態が凸状に変化し、位置も外耳道を覆うように前下方に拡がっていた。筋の配置では顎二腹筋後腹に注目したところ、観察した2体とも乳様突起先端に起始しており、乳様突起形態の発達変化と最も相関しているのは同筋の配置であった。胸鎖乳突筋の各腹と頭板状筋は乳様突起の外側部に起始しており、茎突舌骨筋頭長筋、上頭斜筋は後方に起始していた。乳様突起に付着するのは第二以降の鰓弓、あるいは体節由来の筋群であり、第一鰓孔である外耳道より後ろに位置する。その発生学的制約下で前頸部の発達変化や系統進化に対応する為の筋付着部の異所的変化として、乳様突起の形態を捉えうる可能性が示唆された。
乳様突起部の支配神経を調査したところ、副神経は、M.cleidomastoidとM.cleidooccipitalの間から出て、M.omocervicalisの後縁に沿って下降し、複数の分枝はいずれも僧帽筋の深層に分布した。次に頚神経は、M.cleidooccipitalの後方から出て、M.cleidomastoid/occipitalとM.sternomatoid/occipitalの表層を上前方に向かい前頚部の皮膚に分布する頚横神経、胸部から肩の広い範囲の皮膚に分布する鎖骨上神経、そしてM.cleidomastoidの深層に入り込んで分布する枝が認められた。すなわち、M.cleidooccipitalの支配神経は副神経と頚神経であること、M.omocervicalisの支配神経は副神経もしくは頚神経であることが示唆された。


H25-B11
代:Zhang Peng
協:Yang Liu
協:Xunxiang Xia
DNA analysis of wild rhesus macaques in Southern China
DNA analysis of wild rhesus macaques in Southern China

Peng Zhang , Yang Liu, Xunxiang Xia

Abstract Knowledge of intraspecific variation is important to test the evolutionary basis of covariation in primate social systems, yet few reports have focused on it, even in the best-studied species of the Macaca genus. We conducted a comparative study of the dominance styles among three provisioned, free-ranging groups of Japanese macaques at Shodoshima Island, Takasakiyama Mountain and Shiga Heights, and collected standard data on aggressive and affiliative behavior during a period of 5 years. Our data in the Takasakiyama and Shiga groups support previous studies showing that Japanese macaques typically have despotic social relations; nevertheless, our data in the Shodoshima group are inconsistent with the norm. The social traits of Shodoshima monkeys suggested that: (1) their dominance style is neither despotic nor tolerant but is intermediate between the two traits; (2) some measures of dominance style, e.g., frequency and duration of social interactions, covary as a set of tolerant traits in Shodoshima monkeys. This study suggests broad intraspecific variation of dominance style in Japanese macaques as can be seen in some other primate species.


H25-B12
代:和田 直己
協:藤田 志歩
哺乳類の肩甲骨の材料力学的特徴および肩帯周辺筋の移動運動との関係

学会発表
和田直己、谷大輔、中村仁美、大木順司、西村剛、藤田志歩 ほ乳類の肩甲骨の形態学的研究(25年9月8日) 2013年第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会(岡山).

中別府奈央、和田直己 シロテテナガザルのbrachiationについて(25年9月6−8日) 2013年第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会(岡山).
哺乳類の肩甲骨の材料力学的特徴および肩帯周辺筋の移動運動との関係

和田 直己 , 藤田 志歩

2012, 2013年で実施した肩甲骨と移動運動に関する研究により肩甲骨の形態と
系統、生息域、そして移動運動との関係を示すことができた。
ゾウ、サイ、などの大型動物を除いて、死体のCT撮影により3次元構築された
肩甲骨において外形、断面の計測を行った。調査した動物種は、霊長類42種、食肉類38種, 有蹄類41種、げっ歯類、28種、有袋類、21種、その他39種、肩甲骨数は430である。
計測値項目は21である。計測実測値は、肩峰、鈎状突起、烏口突起を除いてすべての動物種で体重に強い相関を示した。しかし、体重と計測値の関係は動物種によって異なった。
形状、つまり比については動物種との相関がみられたが、そのばらつきは実測値に比べて大であった。生息地を反映するロコモーションとの関係が確認された。


H25-B13
代:江成 広斗
協:江成 はるか
音声によるニホンザル個体群のモニタリング手法の実用試験
音声によるニホンザル個体群のモニタリング手法の実用試験

江成 広斗 , 江成 はるか

ニホンザルの個体群管理に資することを目的に、音声記録法を利用した本種の個体群モニタリング手法の開発を一昨年度から着手している。当該年度において、その実用試験を白神山地北東部において6月と9月の2回実施した。それぞれの季節に、7か所のモニタリングサイトを用意し、音声記録装置(Song Meter SM2+)1台と、精度検証を目的としたセンサーカメラ(Reconyx HC600)3台をそれぞれ設置した。その結果、ニホンザルの群れの検出頻度は、両手法間で同等、もしくは音声記録法が上回るケースも確認された。6月の実験では、エゾハルゼミによる環境雑音(約3,000Hz)による検出力の低下が当初懸念されたものの、周波数が異なるニホンザルのクーコール(1,000Hz以下)であれば検出は可能であった。音声記録法で得られたニホンザルの発声音は、予め設定した音声判別因子(recognizer)によって自動検出できるため、調査者の目によってニホンザルの撮影画像を特定する必要のあるセンサーカメラに比べて、調査者間バイアスを低減させることが可能であると考えられる。ただし、音声判別因子の精度は季節や周辺の環境条件によって変動することも考えられ、今後も異なる条件で実用化に向けた試験を繰り返す必要がある。


H25-B14
代:小島 大輔
協:森 卓
協:鳥居 雅樹
霊長類の光感覚システムに関わるタンパク質の解析
霊長類の光感覚システムに関わるタンパク質の解析

小島 大輔 , 森 卓, 鳥居 雅樹

脊椎動物において、視物質とは似て非なる光受容蛋白質(非視覚型オプシン)が数多く同定されている。私共は最近、非視覚型オプシンの一つOPN5がマウスの網膜高次ニューロンや網膜外組織(脳や外耳)に発現すること、さらにマウスやヒトのOPN5がUV感受性の光受容蛋白質であることを見出した [Kojima et al. (2011) PLoS ONE, 6, e26388]。このことから、従来UV光受容能がないとされていた霊長類にも、UV感受性の光シグナル経路が存在することが示唆された。そこで本研究では、OPN5を介した光受容が霊長類においてどのような生理的役割を担うのかを推定するため、霊長類におけるOPN5の発現パターンを解析している。本年度は、主としてニホンザルの各組織(眼球・外耳など)より調製したcDNA試料を用いて、OPN5遺伝子発現の詳細な解析を行ったところ、哺乳類以外のOPN5遺伝子には見られないエクソンが存在することが明らかになった。ニホンザルの場合、このエクソンを含むOPN5 転写産物は、これまで同定されていた通常型OPN5転写産物よりも発現量が高いことがわかった。今後は、この新たなOPN5転写産物の機能や存在意義にも着目して研究を進めたい。


H25-B15
代:鍔本 武久
現生ニホンザルにおける距骨サイズの変異と体重との関係

論文
Tsubamoto, T., Egi, N., Takai, M., Thaung-Htike, and Zin-Maung-Maung-Thein(2016 = in press) Body mass estimation from the talus in primates and its application to the Pondaung fossil amphipithecid primates Historical Biology 28(1). 謝辞あり

学会発表
鍔本武久・名取真人 現生ニホンザルの幼獣における距骨および踵骨のサイズと形態の変異(2013年9月6-9日) 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会(岡山県岡山市).

鍔本武久・名取真人 成長過程における距骨および踵骨のサイズと形態の変異:現生ニホンザルの幼獣の例(2014年1月25日) 日本古生物学会第163回例会(兵庫県三田市).

鍔本武久・江木直子・高井正成・タウン-タイ・ジン-マウン-マウン-テイン 霊長類における距骨からの体重推定とポンダウン化石霊長類への応用(2015年1月31日) 日本古生物学会第164回例会(愛知県豊橋市).
現生ニホンザルにおける距骨サイズの変異と体重との関係

鍔本 武久

 距骨サイズの成長過程における種内変異を明らかにするために,現生のニホンザルの幼獣個体を対象に,距骨サイズの変異および体重との関係を調べた.ニホンザルの幼獣244個体(オス142;メス102)の距骨の4カ所を計測し,個々の個体の体重データを台帳より取得した.自然対数変換したデータを用いて,体重と距骨の各計測値との単変量アロメトリーを調べたところ,不偏長軸についての雌雄差はほとんどなかった.したがって,先行研究において成獣における距骨サイズに雌雄差があったが,この成獣における雌雄差は,性の違いというよりもむしろ体重の違いに起因すると考えられる.体重に対する距骨サイズは,滑車の幅は等成長(傾き〜1/3)で,長さと幅は過成長(傾き>1/3),距骨頸部の長さは劣成長(傾き<1/3)だった.これは,距骨の滑車の幅を使えば,先行研究で求めた成獣における距骨サイズから体重を求める式がニホンザルの幼獣にも適用できることを示す.また,距骨の計測値について多変量アロメトリー解析をおこなった.滑車の幅はやや劣成長,長さは過成長,幅はやや過成長,頸部の長さは劣成長となった.つまり,成長(距骨が大きくなる)とともに,距骨の滑車の幅と頸部の長さは相対的に小さくなる.


H25-B16
代:東 超
霊長類の各種の組織の加齢変化
霊長類の各種の組織の加齢変化

東 超

今回の研究では消化器系の内臓のカルシウム、燐、マグネシウム、硫黄、鉄、亜鉛が加齢に伴ってどのように変化するのかを明らかにするため、サルの肝臓の元素含量の加齢変化を調べた。用いたサルは28頭、年齢は新生児から31歳である。サルより肝臓を100g程度採取し、水洗後乾燥して、硝酸と過塩素酸を加えて、加熱して灰化し、元素含量を高周波プラズマ発光分析装置(ICPS-7510、島津製)で測定し、次のような結果が得られた。

(1)サルの肝臓においてはカルシウム、燐、マグネシウム、硫黄、鉄、亜鉛含量は加齢とともに減少傾向にあった。特にマグネシウム、燐、硫黄、亜鉛含量が有意な減少が認められた(P<0.05)。

(2)サルの肝臓のカルシウム含量はすべて2mg/g以下で、石灰化しにくい内臓であることが分かった。

(3)サルの肝臓においてはカルシウム、燐、マグネシウム含量の間に有意な相関が認められ、カルシウム、燐、マグネシウムが一定の比率でサルの肝臓に蓄積されることを示している。


H25-B17
代:佐藤 毅
協:榎木 祐一郎
協:小宮山 雄介
腱および骨組織の効率的再生に向けた基礎研究

論文
Sato T, Hori N, Nakamoto N, Akita M, Yoda T.(2013) Masticatory muscle tendon-aponeurosis hyperplasia exhibits heterotopic calcification in temporal tendon Oral Dis in press.

Nakamoto A, Sato T, Hirosawa N, Nakamoto N, Enoki Y, Chida D, Takeda S, Usui M, Sakamoto Y, Yoda T.(2013) Proteomoics-based identification of novel proteins in tendon of masticatory muscle tendon-aponeurosis hyperplasia patients Int J Oral Maxillofac Surg 43(1):113-119.

学会発表
Tsuyoshi Sato Masticatory muscle tendon-aponeurosis hyperplasia exhibits heterotopic calcification in temporal tendon(平成25年10月3日) ASBMR Symposium: Cutting Edge Discoveries in Muscle Biology, Disease and Therapeutics(Baltimore, USA).
腱および骨組織の効率的再生に向けた基礎研究

佐藤 毅 , 榎木 祐一郎, 小宮山 雄介

 【目的】咀嚼筋腱・腱膜過形成症の開口障害は腱組織の過形成に起因しており、われわれは本疾患患者の腱組織において、分泌タンパク質であるβ-crystallin A4(CRYBA4)が特異的に上昇していることを報告している(Nakamoto A et al, 2013)。また、本疾患の男女比は1:2.5と女性に多い(有家ら2009)。今回、腱細胞におけるCRYBA4の機能およびエストロゲンの作用について検討を行った。
【方法】マウス眼球cDNAからPCRでCRYBA4を増幅し発現ベクターpcDNA3へクローニングを行った。腱細胞株としてTT-D6細胞を用いた。TT-D6細胞にCRYBA4を過剰発現させ、腱分化マーカーの発現を検討した。さらに、エストロゲンとして17β-estoradiolを用い、TT-D6細胞に作用させて腱分化マーカーの発現をリアルタイムPCRで検討した。
【結果】TT-D6細胞にCRYBA4を過剰発現させることで腱分化の初期マーカーであるscleraxisの遺伝子発現が低下した。17β-estoradiol処理によりTT-D6細胞においてcollagen 6A1の遺伝子発現が上昇した。
【結論】咀嚼筋腱・腱膜過形成症においては、CRYBA4の発現が高いことで、腱細胞の分化初期を抑制するが、エストロゲンの作用で腱細胞のコラーゲン線維の増加を促進させる可能性が示唆された。


H25-B18
代:大西 暁士
網膜神経細胞のサブタイプ形成を担う分子群の霊長類における発現パターンの解析
網膜神経細胞のサブタイプ形成を担う分子群の霊長類における発現パターンの解析

大西 暁士

ヒトを含む多くの霊長類の多くは赤・緑・青色感受性の錐体視細胞に起因する3色性色覚を持つが、これら錐体視細胞のサブタイプを決定するための分子機構は不明な点が多い。これまでにマウス網膜を用いた機能ゲノム学的解析により、転写制御因子Pias3が青・緑錐体視細胞のサブタイプ決定に重要な役割を担う事を報告した。そこで、霊長類網膜においてPIAS3と関連遺伝子についての発現パターンを免疫組織化学的手法により解析した。
 試料には成体マーモセットの眼球を用い、マウス網膜で抗原特異性を確認した抗体で蛍光組織染色を行った。この結果、成体マーモセット網膜において1型レチノアルデヒド脱水素酵素が中心窩部分で高い発現を示す事が分かった。この遺伝子はマウス網膜では緑錐体の局在する領域で高い発現を示す。また、同遺伝子の発現量の変化と青および緑錐体オプシンの発現パターンの変化に相関性が見られることから、霊長類の中心窩部分では赤緑錐体のオプシンのサブタイプの発現制御に関与する事が示唆される。今後、マウスおよびマーモセットにて同遺伝子のGOF/LOF解析を行い、表現型を評価する予定である。


H25-B19
代:日下部裕子
霊長類における甘味受容体の膜移行機序の解析
霊長類における甘味受容体の膜移行機序の解析

日下部裕子

甘味の受容は、進化に伴って変化することが知られており、特に一部の人工甘味料の感受性は霊長類を境に進化に伴って獲得されたことが示唆されている。また、我々は、齧歯類とヒトでは甘味受容体を構成する分子であるT1r3の膜移行性が異なることを見出しており(図)、甘味受容体は甘味物質の受容だけではなく、構造機能特性が進化によって変化すると考えられる。そこで、人工甘味料の感受性が種によって異なる霊長類のT1r3の膜移行性を明らかにすることで、進化による味の感受性の変化と味覚受容体の膜移行機序の変化の関係を理解することを目的とした研究を行った。現在、チンパンジー、アカゲザル、ニホンザル、マーモセットのT1r3の膜移行を評価するためにそれぞれのN末端にタグを付加した変異体を作製中であり、一部は膜移行を評価するために培養細胞へ導入を行っている。今後、膜表面に移行した受容体のタグについて抗体染色を行うことで、膜移行を評価する予定である。


図:ヒトおよびマウスT1r3の膜移行能の評価 ヒトT1r3およびマウスT1r3のN末端にタグを付加した変異体を利用して膜移行したT1r3をタグに対する抗体染色を行うことで可視化し、マウスT1r3が単独で膜移行できるのに対してヒトT1r3が単独では膜移行できないことを見出した。現在作製している霊長類のT1r3についても同様の方法で、それぞれの膜移行能を評価する予定である。


H25-B20
代:森光 由樹
野生ニホンザル絶滅危惧孤立個体群のMHC遺伝子の解析
野生ニホンザル絶滅危惧孤立個体群のMHC遺伝子の解析

森光 由樹

兵庫県に生息しているニホンザルの地域個体群は、分布から孤立しており遺伝的多様性の消失及び絶滅が危惧されている。地域個体群の保全にむけて、早急な遺伝的多様性の調査が必要である。そこで、報告者は、兵庫県香美町小代に生息している孤立地域個体群、美方A群6頭を学術捕獲し、採取した血液サンプルを用いてMHCクラス粁琉DRBを分析した。血液サンプルを、RNA Laterを用いて処理後、市販の抽出キットを用いてRNAを抽出した。抽出したRNAを鋳型にRT-PCRを行い、pGEM-T Easy Vector Systemを用いて産物のクローニングを行った。目的の領域をコロニーPCRにより増幅し、ダイレクトシーケンス法で塩基配列を決定した。現在、塩基配列の解析作業を進めている。来年度は、さらに分析数を増やすこと、また、島嶼に生息している、淡路島群からも、サンプルを採取し同法にて分析を行い、地域個体群のMHCの特徴を整理する予定である。


H25-B21
代:澤野 啓一
ヒト上科 (Hominoidea) における蝸牛の比較解剖学的研究

学会発表
Sawano K1,3, Yokoyama T4, Tanaka T2, Kato T2, Takahashi T1,, Hagiwara H3, Inoue T3, Sato M5, Tateishi K4, Kawahara N 4 The relationship between thickness of the skull wall and the presence and positioning of the carotid canal and the Cochlea within human and mammalian evolution.(2013-11-03,雑誌刊行はDecember 2013. ) The 67th Annual Meeting of the Anthropological Society of Nippon (筑波・国立科学博物館.Anthropological Science Vol. 121 (3) : p.240. ).
ヒト上科 (Hominoidea) における蝸牛の比較解剖学的研究

澤野 啓一

 蝸牛Cochleaは聴覚器の中心的部分であり、それは、ヒトでは頭蓋底の骨質の最も厚い部分に埋もれて存在する。そしてそこには、隣接して太い頚動脈管(その中には内頚動脈)が強く屈曲して走行するという空間配置と成っている。こうした関係性について、great apesやそれ以外のAnthropoidea(Simiiformes)、更にはCarnivora、Perissodactyla、及びArtiodactylaの各動物と比較して検索検討してみた。 蝸牛が相対的に最も厚い骨質に包まれるのはgreat apes (Gorilla, Pan, Pongo)である。great apesのCochleaの存在様式は、三者間では類似度が大きい。これらの動物では、頚動脈管は蝸牛に隣接しつつ、Homoよりも遥かに長距離を屈曲蛇行して走行する。ヒト上科 (Hominoidea)を除くAnthropoidea(Simiiformes、ここではHaplorhini直鼻類ではない)では、蝸牛を包む骨質は、相対的にgreat apesよりも薄く、頚動脈管は蝸牛に隣接して走行するが、その走行は屈曲蛇行しつつも、great apesよりも遥かに短い距離であった。他方、CarnivoraのCanis, Vulpes, Nyctereutes, Ursus, Selenarctosなどでは、蝸牛を包む骨質は厚くは無くて、近隣には大きな空洞を持つBulla tympaniが存在する。地上の振動音を増幅して蝸牛に伝えるには、蝸牛が厚い骨質に包まれるよりも、大きなBulla tympaniの存在の方が効果的なのであろう。ArtiodactylaとPerissodactylaでは、Bulla tympaniの発達の程度は様々であるが、蝸牛を包む骨質は厚くは無く、頚動脈が頭蓋底を貫く部分は管状ではない。


H25-B22
代:佐伯 真美
伊豆大島に生息するタイワンザルの遺伝的多様性に関する研究
伊豆大島に生息するタイワンザルの遺伝的多様性に関する研究

佐伯 真美

伊豆大島には、1939〜1945年に動物園から逸走し野生化したタイワンザルが生息する。1980年代に東海岸域だけだった分布は、現在島のほぼ全域に拡大している。今年度計画ではこれまでの研究により得たデータの解析を計画したが、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)近傍のマイクロサテライトDNAの多型性に関する分析に切り替えた。これは、MHCに連鎖するDNA標識を加えて外来種個体群の遺伝的特徴を検討するためである。
MHC領域にあるマイクロサテライトDNAの5座位(D6S2691,D6S2704,D6S2793,D6S2970,MICA)につき伊豆大島で採取した血液あるいは組織から調製した39検体を分析した。蛍光ラベルした各座位のPCR産物を3130xl Genetic Analyzerによりフラグメント解析し、各検体の遺伝子型を判定した。対照のため、同様の分析を青森県野辺地(5検体)、和歌山県大池(4検体)についても行い、検出できる対立遺伝子の相違にも注目した。
検査したいずれの座位でも伊豆大島では多型が認められた。対立遺伝子数は2(D6S2793)〜6(D6S2691)で、遺伝子タイプには対照地域と一部に違いがあった。ヘテロ接合率では、観察値が0.167〜0.846、期待値が0.401〜0.776であった(下図を参照)。D6S2793ではヘテロ接合体の観察頻度が期待頻度より有意に小さく、null alleleが予想された。他の座位ではHardy-Weinberg平衡からの有意な逸脱は認められなかった。



H25-B23
代:尾頭 雅大
協:河村 正二
新世界ザル苦味受容体TAS2Rに対するリガンド感受性多様性の検証
新世界ザル苦味受容体TAS2Rに対するリガンド感受性多様性の検証

尾頭 雅大 , 河村 正二

霊長類の進化において色覚と化学物質感受能の発達はトレードオフの関係にあるとされてきたが検証が待たれている。新世界ザル類は色覚と食性に大きな多様性があることが知られている。そこでトレードオフ仮説を検証し、要因として食性がどのように関係するかを検討する上で新世界ザルに注目した。本課題ではその第一歩として化学センサーのうち苦味受容体のTAS2R1とTAS2R4のリガンドに対する反応強度(最大応答強度:(ΔF/F0)max)と感度(半数効果濃度:EC50)をヘテロ培養細胞系カルシウムアッセイを用いて次の種間で比較した:マントホエザル(恒常的3色型色覚、葉食)、ノドジロオマキザル(L/Mオプシン3アレル型2-3色多型色覚、雑食)、コモンマーモセット(3アレル型2-3色多型色覚、昆虫・樹液食)、チュウベイクモザル(2アレル型2-3色多型色覚、果実食)、ヨザル(夜行性完全色盲、果実食)。TAS2R1の樟脳に対する感度は夜行性のヨザルが最も高かった。一方TAS2R4のコルヒチンに対する感度は恒常的3色型色覚のホエザルが他よりも有意に低いが、反応強度はマーモセットが他より有意に高かった。これらから、新世界ザル種間で苦味感覚に違いがあることが示唆された。しかし、色覚や食性との関連を含め、他の受容体も含めたさらなる研究が求められる。


H25-B24
代:持田 浩治
添い寝相手との親和性がニホンザルの睡眠に与える影響
添い寝相手との親和性がニホンザルの睡眠に与える影響

持田 浩治

社会的睡眠(添い寝や集団での睡眠)の獲得は,霊長類の睡眠の多様性を考察する上で重要なイベントと考えられる.なぜなら集団での睡眠は,泊まり場における寒さや捕食圧といった厳しい睡眠環境を緩和すると考えられるからである.このように社会的睡眠は,しばしば,泊まり場の外的環境に対するリアクションという文脈のなかで評価されてきた.一方,添い寝相手との社会関係といった泊まり場内環境が睡眠に及ぼす影響は,睡眠医学の重要な研究課題にもかかわらず,ヒト以外の霊長類において注目されてこなかった.そこで私達は,鹿児島県屋久島西部に生息する野生ニホンザルの昼夜の行動観察をとおして,親和性や血縁といった添い寝相手との関係が,かれらの睡眠時間にどのような影響をあたえるかを調べた.8月に予備調査として対象群のメンバーの移出入の確認をおこなった後に,翌年の2月から3月にかけて約1ヶ月間,野外調査をおこなった.具体的には,日中の終日同時2個体追跡による直接観察および夜間の赤外線カメラによる観察をおこない,一日の総睡眠時間やその分布,群内の複数個体間の睡眠の同調性について調べた.これらの調査によって得られた結果を解析し,今後,学会や科学雑誌にて発表して行く予定である.


H25-B25
代:Su Hsiu-hui
協:Fok Hoi Ting
Male dispersal of the Taiwanese macaque (Macaca cyclopis) in Ershui area of Taiwan
Male dispersal of the Taiwanese macaque (Macaca cyclopis) in Ershui area of Taiwan

Su Hsiu-hui , Fok Hoi Ting

This research aimed to investigate the population genetics in wild Macaca cyclopis at Hengchun peninsula, the south most region of Taiwan. Fecal samples were used to extract DNA, on which cmyc control and sexing test were conducted. The good quality and known-sex DNA samples were analyzed by sequencing of mitochondrial DNA (mtDNA) HVR-I and 3 autosomal microsatellite loci.
We found 10 haplotypes from HVR-I analysis, including 7 haplotypes found in both sexes and 3 haplotypes found only in males. Nucleotide variation among the 10 haplotypes is between 1 to 14 base pair, and their pairwise distance is 0.002-0.020.
The result of Maximum likelihood phylogenetic tree and TCS network constructed by HVR-I sequences suggested that M. cyclopis at the peninsula diverged into 3 clades, north, central and south. The north clade is located above Highway 200, the central clade is located at Nanrenshan, and south clade is located south to the Sianglin Village. Three rare haplotypes were carried by 3 different males, which may suggest their migration from other unsampled populations or transferring by human to this region.
We tested 79 samples (9 samples in north clade, 1 samples in central clade and 69 samples in south clade) for 3 microsatellite loci, including D7S794, D14S306 and D19S582, which have 5, 6 and14 alleles, respectively. The result of AMOVA (FST = 0.046) by GENALEX and the number of migrates is 5.136 per generation, which showed recent gene flow among the 3 clades. We are going to analyze more loci to increase the accuracy.
Base on the maternal molecular marker analysis we suggest that there are three clades of M.cyclopis at Hengchun peninsula, but the biparental marker analysis shows that there is recent gene flow among clades. Female philopatry may lead to the mtDNA geographical structure, and movement of males among clades occurs.

Key words: population genetics, gene flow, haplotype, male-biased dispersal, Macaca cyclopis


H25-B26
代:CHALISE MUKESH
Study on phylogeography of macaques and langurs in Nepal
Study on phylogeography of macaques and langurs in Nepal

CHALISE MUKESH

I changed the plan of this cooperative research program due to paucity of fund to visit Japan. I and counterpart tried to found a small facility in Kathmandu to initiate laboratory work for phylogeographical study on Nepalese primates. It became possible to extract DNA from fecal samples by combining sampling and preparation methods originally designed by the counterpart. During the study period, I collected fecal samples of Assamese macaques and Gray langurs in Nepal (see attached map) and succeeded in extracting DNA for DNA typing. In October 2013, I also conducted a field investigation with the counterpart at Ramanagar (for Semnopithecus hector) and Aanbookhaireni (for Macaca assamensis) for observation and fecal sampling of langurs and Assamese macaques, respectively.
A preliminary analysis of mtDNA sequencing was conducted in Inuyama by the ounterpart. In the analysis of langurs, the applicability of PCR primers was tested for mtDNA direct sequencing. It was necessary to design new primers specific to the control region. Finally, we could make protocols which allow examinations of mtDNA 16S rRNA region and HVR1 (hypervariable region 1). We will apply this new protocol to further investigation of Nepalese primates in future study.


H25-B27
代:森 大志
血液酸素動態分析による歩行中の姿勢制御戦略の検討

学会発表
平崎鋭矢,森大志 NIRS信号を用いた筋活動分析の試み(2013年11月1−4日) 第67回日本人類学会大会(つくば市).
血液酸素動態分析による歩行中の姿勢制御戦略の検討

森 大志

本研究はニホンザルモデルが四足・二足での立位姿勢さらに四足・二足歩行する際の四肢・体幹筋の局所的血液酸素動態の相違を近赤外線分光法(NIRS)によって明らかにすることを目的とした。これにより、各運動課題時の四肢・体幹筋における酸化ヘモグロビン濃度(oxy-Hb)、脱酸化ヘモグロビン濃度(deoxy-Hb)を非侵襲的に計測でき、筋電図では分析困難であった筋の局所的代謝活動といった新規の情報を得ることができる期待される。本年度は実験器機に生じた様々なトラブル(初期不良)解決、さらに動物の実験環境への馴化訓練に時間を要した。そのためサルから記録することはできなかったが、ヒトを対象とした予備実験を実施した。その結果、姿勢変換(静止立位からの前傾)時に腓腹筋内側頭で脱酸化ヘモグロビン濃度(deoxy-Hb)の上昇が観察された。一方、歩行時では歩行中を通してdeoxy-Hbとともに酸化ヘモグロビン濃度(oxy-Hb)も下降したが、その中でoxy-Hbもdeoxy-Hbも歩行相に応じた下降・上昇が観察された。これらの結果は、NIRSによって筋の局所代謝活動が観察できる可能性を示唆する。図は前腕屈筋群から計測した代表例である。成果の一部は第67回日本人類学会で発表した。


H25-B28
代:川島 友和
協:佐藤 二美
心臓を制御する神経系の進化形態学ならびに機能解剖学的解析

論文
Kawashima T, Thorington RW Jr., and Sato F.( 2013) Systematic and comparative morphologies of the extrinsic cardiac nervous system in lemurs (Primates: Strepsirrhini: Infraorder Lemuriformes, Gray, 1821) with evolutionary morphological implications. Zoologischer Anzeiger (A Journal of Comparative Zoology) 252: 101-117. 謝辞 あり
心臓を制御する神経系の進化形態学ならびに機能解剖学的的解析

川島 友和 , 佐藤 二美

 これまで心臓へ分布する自律神経系の形態に関して、主に霊長類を対象として解析を行ってきた。このような臓性構造は、機能的修正を受け変化しやすい体性構造とは異なり、比較的保守的な構造であると思われ、近年の分子進化で明らかにされてきたような霊長類の分類群において、各分類群内では比較的類似した構造を示し、分類群間では多様化した比較的段階的な形態変化を有することが示唆された。
 そこで今後さらなる形態形成の原則を理解する為に、心臓自律神経系の生態学的環境変化や機能解剖学的変化との関係を明らかにする事を目的として、様々な環境へ適応し、多様性に富む哺乳類全般を対象として解析対象を拡大した。
 今年度は、液浸標本の中からフクロモモンガ(Petaurusbreviceps)1体を対象として解剖学的解析を行った。現在のところ、有袋類のみならず、霊長類以外の有胎盤哺乳類も多種多数例を対象に解析できていないため詳細は不明であるが、既に解析を行った有袋類の心臓自律神経系の形態は、他の有胎盤哺乳類のそれと大きな相違点を見いだす事はできなかった。また、フクロモモンガは滑空性という特殊な運動様式を持つ種であるが、それに特有な形態的所見の抽出にいたっていない。今後、本共同利用だけでなく、これまでと同様に欧米の博物館や動物園の標本からのデータをさらに収集し研究を継続してゆく予定である。



H25-B29
代:六波羅 聡
協:鈴木 義久
遺伝子解析による三重県内のニホンザルの個体群調査

学会発表
六波羅 聡、鈴木 義久、川本 芳 遺伝子解析による三重県内のニホンザルの個体群調査(平成25年9月6日〜9日) 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会(岡山理科大学(岡山県岡山市)).
遺伝子解析による三重県内のニホンザルの個体群調査

六波羅 聡 , 鈴木 義久

昨年度、一昨年度に引き続き、三重県内のニホンザルについて、保護管理を検討するため、現存する群れの遺伝的構造を把握すること、和歌山県からのタイワンザル遺伝子の拡散状況のモニタリングを目的とし、本年度は、メス9個体についてD-loop第1可変域の塩基配列の分析、オス9個体についてY-STR検査を行った。
過去3年間の結果を整理したところ、メス64個体、オス75個体の結果が得られた。
メスのD-loop第1可変域については、26のハプロタイプに分類され亀山市周辺を境に大きく南北2系統に分類された。過去の研究結果のD-loop第2可変域の分析で見られた分類と同じ傾向であった(Kawamoto et al. 2007)。このうち北のグループは、本州系統の遺伝子であると考えられる。南のグループは、紀伊半島固有の遺伝子であると考えられ、三重県内に限られた結果ではあるが、台高山地を中心にして周辺地域へ拡大したことが示唆された
オスのY染色体は、15タイプに分類された。複数のタイプ内に広範囲の個体が含まれており、多様なタイプが広域に分布していることが確認され、メスで確認された2系統間でオス移住による遺伝子交流があることが示唆された。タイワンザル由来とみられるタイプは確認されなかった。
来年度は、遺伝子の広域的・継続的な検討を可能にするための方法を検討しながらサンプル数を増やしていくこと、特にメスについて、遺伝子と地理との関係などの詳細な分析を行うことで、三重県内の群れの状況についてさらに細かく明らかにしていく予定である。


H25-B30
代:筒井 健夫
マカク歯髄幹細胞を用いた歯髄再生療法の確立

論文

学会発表
筒井 健夫 筒井 健機 In vitroとin vivoにおけるマカク歯髄幹細胞の細胞特性(2013年11月24日) 日本口腔組織培養学会設立50周年記念学術大会・総会(日本歯科大学 生命歯学部 東京 千代田区).

関連サイト
50回記念大会 http://www10.showa-u.ac.jp/~jtcsdr/ri_ben_kou_qiang_zu_zhi_pei_yang_xue_huihomupeji/di50hui_ji_nian_da_hui.html
マカク歯髄幹細胞を用いた歯髄再生療法の確立

筒井 健夫

平成25年度は、混合歯列期のアカゲザルより採取した歯髄幹細胞についてin vitroとin vivoにおいてヒト歯髄幹細胞と比較解析を行い日本口腔組織培養学会設立50周年記念学術大会・総会にて口演発表を行った。また、乳歯歯髄幹細胞の継代培養と全身麻酔下のニホンザル3例(1歳)の上顎左側中切歯より乳歯歯髄組織の採取を行った。学会発表で報告した歯髄幹細胞は、アカゲザル2例 (3歳: 上顎右側中切歯、側切歯と埋伏犬歯および下顎右側埋伏第二大臼歯)とヒト1例(11歳:智歯)より採取した。In vitroでは細胞形態観察と細胞増殖、および石灰化誘導能について解析した。細胞形態はヒト歯髄幹細胞でも観察される線維芽細胞様形態を示した。細胞増殖率については、アカゲザルでは上顎右側中切歯の歯髄幹細胞を除いて同様の細胞増殖率を示し、分化誘導により全ての歯髄幹細胞においてアリザリンレッド染色陽性像が観察された。また、ヌードマウスへの皮下移植では、H-E染色より歯髄/象牙質様形成物が観察された。さらに免疫染色より象牙質形成タンパクであるbone sialoprotein 陽性像が観察された。継続して研究を行っている乳歯歯髄幹細胞の継代培養については、培養日数では770日、継代数は153を越えて現在も培養を行っている。また、全身麻酔下のニホンザルより採取した乳歯歯髄組織は初代培養を行い、高い増殖率を現す細胞では継代培養を行っている。


 全身麻酔下のニホンザルより採取した乳歯歯髄細胞(初代培養)


H25-B31
代:島田 将喜
野生ニホンザルのワカモノオスの群れ間移籍と社会関係の維持

論文
島田将喜(2015) 平成26年度 山ふる群調査報告書:4. 謝辞謝辞あり

学会発表
Masaki SHIMADA The importance of social play network for the juvenile wild Japanese macaques(2014年7月19−21日) 第74回動物心理学会大会(犬山国際観光センターフロイデ 愛知県犬山市).

島田将喜 金華山の野生ニホンザルのコドモが形成する社会的ネットワーク(2014年7月5−6日) 第30回日本霊長類学会(大阪府大阪市 大阪科学技術センタービル).

内藤将・島田将喜 奥多摩湖周辺に生息するニホンザルの遊動〜新たに進出した場所の利用〜(2014年10月31日〜11月2日) 第20回「野生動物と社会」学会(愛知県犬山市 犬山市国際観光センター“フロイデ”).
野生ニホンザルのワカモノオスの群れ間移籍と社会関係の維持

島田 将喜

ニホンザルのワカモノオスの出自群の移出・他群への移入プロセスを明らかにするため、金華山A群出身のワカモノオス6個体を主な観察対象とし、彼らのA群、隣接群、隣接群追随オスグループ内における社会関係に関するデータを2007年から蓄積している。アシモ(10歳)とフミヤ(9歳)は、2009年以降B1群追随オスグループを形成し続けていたが、2013年交尾期にいたって彼らが群れ内の個体とも直接的なインタラクションをもつようになったことを確認した。ラキ(7歳)はキール(6歳)はB1追随オスグループを形成し、アシモ・フミヤとは親和的なインタラクションを行っていた。またこれまでB1群れオスだったラマ(13歳)はヒトリオスとしてB1周辺部を遊動していた。フミヤとアシモの行動・社会関係のデータの予備的分析の結果、フミヤのB1群内の個体との関わり方と、B1追随オスグループの個体との関わり方には著しい違いがあり、群内ではメスたちと近接する一方、オスグループでは「遊び」やマウンティングを頻繁に繰り返すことが明らかになった。過去6年間に蓄積されたデータによれば、オス間の関係性は、出自群から移出した後も長期間にわたり維持され、群れオスは群れ内とオスグループとの間を、頻繁に往来する。このことが、追随オスグループのメンバーが次に群れオスになることを容易にするというワカモノオスの移籍のパタンを生み出しているものと示唆される。この結果は、金華山個体群という閉鎖系に特有の現象かもしれない。


H25-B32
代:姉崎 智子
群馬県における猿害の実態と遺伝的多様性について
群馬県における猿害の実態と遺伝的多様性について

姉崎 智子

2012年度に引き続き、2013年度もニホンザルの生息状況および猿害の実態と遺伝的多様性について明らかにし、猿害の削減に役立てることを目的に、利根町、昭和村で捕獲された17体のニホンザルを解剖し、食性、繁殖状況等を調べた。本年度の捕獲は1月〜3月の冬季に集中していた。栄養状態は良好であり体型指数は85.3から201.4であり、2月に最も高かった(図1)。食性では2体で胃内容物が確認された。分析の結果、トウモロコシ、カキ、ブドウが検出された。カボチャが11体から検出されたが、これは誘因餌であった。捕獲位置はいずれも耕作地内および人家周辺であり、捕獲個体は農作物に餌付き人慣れの進んだサルであったと推察された。これらの成果については、県野生動物保護管理計画検討会の基礎資料として活用された。今年度のサル17体についても、研究所遺伝子情報分野の苦味受容体遺伝子等の分析に供した。また、本サンプルについて、大阪大学橋本亮太准教授のご指導を賜った。


図1 2008年〜2013年度の群馬県ニホンザル体型指数の季節変化


H25-B33
代:池園 哲郎
協:松田 帆
協:松村 智裕
協:斉藤 志ほ
COCH遺伝子発現の種特異性に関する検討

論文
Kataoka Y, Ikezono T, Fukushima K, Yuen K, Maeda Y, Sugaya A, Nishizaki K.( 2013) Cochlin-tomoprotein (CTP) detection test identified perilymph leakage preoperatively in revision stapes surgery. Auris Nasus Larynx. 40(4): 422-4. 謝辞著者:池園 哲郎年:2013タイトル:難治性めまいへのアプローチ 外リンパ瘻 診断基準の改定と臨床所見の特徴雑誌名:Equilibrium Research巻:72号:4ページ:215-221謝辞:

学会発表
Ikezono T Instruction coursePerilymphatic fistula with high diagnosis accuracy : A novel perilymph specific protein “cochlin tomo-protein”( 2013.4.27-30) 2nd Meeting of European Academy of ORL-HNS and CE ORL-HNS( Nice,FRANCE発表者:Ikezono Tタイトル:SymposiumInner ear proteomics identifies unique structures of cochlin isoforms ?insights to cochlin function and pathophysiology of dfna9-年月日:2013.6.4学会名:20th World Congress of the International Federation of Oto-Rhino- Laryngological Societies iFOS開催地:Seoul,KOREA発表者:Ikezono Tタイトル:SymposiumInner ear trauma with perilymphleakage Clinical characteristics revealed by novel biochemical diagnostic marker年月日;2013.6.4学会名:20th World Congress of the International Federation of Oto-Rhino- Laryngological Societies iFOS開催地:Seoul,KOREA発表者:Ikezono T, Usami S, Suzuki M, Ogawa Kタイトル:Panel discussionWhat is special with perilymph? Clinical characteristics revealed by novel biochemical diagnostic marker Cochlin-tomoprotein(CTP)年月日;2013.11.14-17学会名:29th POLITZER SOCIETY MEETING the most prestigious meeting on Otology開催地:Antalya TURKEY発表者:池園哲郎タイトル:教育講演外リンパ瘻の臨床−診断のバイオマーカーCTPの診断性能と診断基準改定年月日;2013.5.15-18学会名:第114回日本耳鼻咽喉科学会総会開催地:北海道札幌市発表者:池園哲郎タイトル:公募インストラクションコース外リンパ瘻(CTP検査の有用性)年月日;2013.11.24-26学会名:第23回日本耳科学会総会開催地:宮崎県宮崎市).
COCH遺伝子発現の種特異性に関する検討

池園 哲郎 , 松田 帆, 松村 智裕, 斉藤 志ほ

■研究目的
 COCH遺伝子は非症候性遺伝性難聴のひとつDFNA9の原因遺伝子である。COCH遺伝子の蛋白産物であるCochlinは、(1)内耳で蛋白の70%を占めており(2)4つの分子量の異なるアイソフォーム(p63、p44、p40、CTP)を持つ、(3)内耳にほぼ特異的に発現している、(4)CTPが外リンパ特異的に存在している事を解明した。ヒト以外では、齧歯類、偶蹄目でも同様に存在し、その発現パターンはヒトと異なっていることから霊長類サルでの検討が重要な意味を持つ。
■研究計画・方法
 アカゲザルもしくはニホンザルの外リンパ及び内耳組織蛋白を採取し、ウェスタンブロット法による蛋白解析を行う。
■これまでの研究の経緯と成果
 Cochlinは、内耳で最もドミナントな蛋白であるが、その機能はまだ解明されていない。平成25年度の研究で、ヒト外リンパでは、16kDaのCTPに相当する蛋白が検出されるが、サル外リンパではこれに加えて11kDaの蛋白が認められた。興味深いことに脱糖鎖反応により16kDaの蛋白は11Kdaへと変化することが示された。ヒト以外の霊長類の研究により、Cochlinのアイソフォーム形成メカニズムとその機能の解明が進むと考えられる。


H25-B34
代:和田 一雄
協:市来 よし子
協:山田 英佑
協:大出 悟
協:田邊 佳紀
協:山下 和輝
協:座馬 耕一郎
協:浅井 隆之
協:藤田 志歩
協:竹ノ下 祐二
大隅半島東斜面におけるニホンザルの群れ分布と猿害の研究

論文
藤田志歩、座馬耕一郎、竹ノ下祐二、和田一雄、市来よし子 (2015) , 大隅半島に生息する野生ニホンザルの群れサイズ−屋久島との比較?, 南太平洋海域調査研究報告 56:33-35.

学会発表
藤田志歩、浅井隆之、棚田晃成、園田真子、大羽真理、小松千紘、座馬耕一郎、竹ノ下祐二、山田英佑、大出悟、和田一雄、市来よし子 大隅半島に生息するニホンザル野生個体群の生態的特徴:集団サイズと食性(2014年9月) 日本哺乳類学会2014年度大会(京都).

座馬耕一郎,和田一雄,市来よし子,竹ノ下祐二,藤田志歩,浅井隆之,棚田晃成,園田真子,山田英佑,大出悟 大隅半島の照葉樹林に生息するニホンザル野生個体群の集団サイズ(2014年7月) 日本霊長類学会大阪大会(大阪).
大隅半島東斜面におけるニホンザルの群れ分布と猿害の研究

和田 一雄 , 市来 よし子, 山田 英佑, 大出 悟, 田邊 佳紀, 山下 和輝, 座馬 耕一郎, 浅井 隆之, 藤田 志歩, 竹ノ下 祐二

 大隅半島東部は90%以上国有林に属し、1950-80年代の大面積皆伐・一斉針葉樹人工林化の施業から免れて、天然照葉樹林が広域に残されている。加えて、稲尾岳(標高930m)周辺は稲尾岳自然環境保全地域に指定されているので、森林は比較的良好に、海岸までの東斜面も途切れずに維持されている。我々は、9月11日から6日間、海岸線から500m-1kmの所にある林道、15.7kmを7区間に分け、各区間に1-2人の調査員を配置して、観察区間の群れ移動を観察した。この間で、3群を確認した:1)調査地の東側、大浦集落近くで、14頭+(成獣メス6、成獣オス3、成獣1、亜成獣2、アカンボ1、その他1)。2)中間点で、56頭+(成獣メス13、成獣オス8、成獣4、亜成獣18、アカンボ6、その他7)。調査の西側、打詰川沿いに、66頭+(成獣メス23、成獣オス3、成獣1、亜成獣36、アカンボ2、その他1)。いづれの群れも全頭計数はできなかったが、かなり大きな群れであろうと予測された。糞は多数集め、食性、ミトコンドリアDNAの分析を行っている。
 その後、和田・市来は9月18日から10日間、肝付町と南大隅町を広域に情報集めに歩いた。猿害については、肝付町の岸良、大浦などの限界集落では、人口減少に歯止めがかからず、耕作面積が減少しているので、大きな問題にはなっていない。他方、打詰集落など南大隅町寄りの集落では、水田などに町の補助を受けて簡易電柵を設置し、効果を上げていた。


H25-B35
代:三上 章允
霊長類のおける髄鞘形成の評価研究
霊長類のおける髄鞘形成の評価研究

三上 章允

ヒトや類人猿の脳の発達をみる目的でMRIのT1強調画像の高信号領域を白質と評価する研究が行われている。神経線維のまわりにある絶縁物質である髄鞘には脂質が多く含まれ、MRIのT1画像では高信号として記録される。そのため、高信号領域の発達変化は、非侵襲的方法で髄鞘形成の経過をみる有力な手段とされている。しかしながら、MRIの高信号領域が本当に髄鞘形成と相関するかどうかを組織標本で評価した研究はない。本研究では、マカカ属のサルの発達過程で、MRIによる高信号領域の評価と組織標本による髄鞘形成の判定を同じ個体で行い、その相関を評価する研究を行った。今年度は、45日齢のアカゲザルの1頭と、10歳齢のニホンザル1頭の脳標本全領域の組織切片を一定間隔でファスト・ブルー染色し白質、灰白質領域の比較を行い、前頭部から後頭部まで皮質領域が乳児期に広いことを確認した。詳細については4月現在解析中であるが、8月の国際霊長類学会で発表予定である。


H25-B36
代:Janya Jadejaroen
協:Suchinda Malaivijitnond
Identification of hybrids between long-tailed and rhesus macaques in a hybrid population in Thailand
Identification of hybrids between long-tailed and rhesus macaques in a hybrid population in Thailand

Janya Jadejaroen , Suchinda Malaivijitnond

I have studied hybrids between long-tailed and rhesus macaques in Thailand (Khao Khieow Open Zoo, KKZ) based on their morphological, behavioral and genetic characteristics. Morphological study was conducted by using relative tail length, pelage color, crown hair, cheek hair and sexual skin. Morphological characteristics of macaques in the study area were divided in groups from long-tailed to rhesus macaques by using cluster analysis. Individuals with known morphological characteristics were selected for behavioral study. Genetic study for the discrimination of rhesus and long-tailed macaques was studied during this cooperative program.
The aim of this study was to use single nucleotide polymorphisms (SNPs) in STAT6 fragments for the discrimination of rhesus and long-tailed macaques according to the Barr et al. (2011) using the techniques adapted and developed by Dr. Kawamoto.
Sixty-four fecal samples (of 54 macaques) from KKZ (2011-2012) were extracted using potato starch method. After amplification for STAT6 genes and checking for amplicons, 21 samples were selected for the SNPs study. In addition, 25 fecal DNA samples of KKZ 2011, 40 blood DNA samples of KKZ 2006 (Drs. Malaivijitnond & Hamada’ s), 10 fecal DNA of long-tailed macaques at Kasetsart University, Si Racha Campus and nearby area 2011 and 9 crude blood samples of long-tailed macaques from Wang Kaew (WK), Rayong Province 1998 (Dr. Kawamoto’ s) were also amplified and tested for products of STAT6 fragments. The PCR condition for amplification was step 1; 94°C for 2 hours, step 2; 98°C for 10 seconds, 58°C for 30 seconds, and 68°C for 30 seconds, and step 3; 10°C for infinity. The amplification conditions of STAT6 genes for fecal DNA, blood DNA, and crude blood were KOD-FX x 45 cycles of step 2 (2 repeats), KOD-FX x 35, and KOD-FX x 40, respectively. PCR products checking were by running the amplicons through 2% agarose gel in TAE buffer system.
In Barr et al. (2011), the different between the 2 species was at base 491 which is A in rhesus and G in long-tailed macaques. When applying Apa I as restriction enzyme, Dr. Kawamoto found that this could be applicable for the discrimination of the two species when checking DNA bands after digestion of STAT6 fragments of each sample. By using Apa I, STAT 6 fragments with G at base 491 were cut while the fragments with A at base 491 were not (Figure1). In cases of heterozygotes, some fragments were cut while some were not. This produced one band of 745 base pairs in rhesus AA type, two bands of 511 and 234 base pairs in long-tailed GG type, and three bands of 745, 511 and 234 base pairs in AG heterozygotes.
Of the 21 fecal DNA samples of KKZ (2011-2012), 18 could be genotyped as 4, 8 and 6 AA, AG, and GG, respectively. Of the 25 fecal DNA samples of KKZ (2011), 24 could be genotyped as 1, 12 and 11 AA, AG, and GG, respectively. For 40 blood DNA samples of KKZ 2006; 4, 24 and 12 were AA, AG, and GG, respectively. Genotypes frequencies of KKZ samples collected in 2006 and 2011 suggested random mating (2006: Fisher exact probability test, P=0.8225; 2011: Fisher exact probability test, P=0.5936, Chi-square = 1.12 (<3.84 at P=0.05, df=1)). Allele frequencies of KKZ sampling in 2006 and 2011 and 2011 and 2011-2012 were insignificant different (Chi-square = 1.53 and 2.09, respectively at P=0.05, df=1). From 10 fecal samples of long-tailed macaques from Kasetsart University, Si Racha Campus and nearby areas, 8 could be genotyped as GG the others were not detected. All the 9 crude blood WK long-tailed samples were genotyped as GG.
In addition to confirm the SNPs, we checked the sequence of STAT 6 fragments. We checked 4, 2 and 4 AA, AG, and GG of fecal and blood samples from the hybrid population in KKZ. The sequences confirmed all the AA, AG, and GG with 2 AA that could not be detected. Three and 4 samples of long-tailed macaques from the campus and nearby areas and from WK also confirmed GG homozygotes.
The results of this study suggested that SNPs different in STAT6 fragments could be used for the discrimination of rhesus and long-tailed macaques. This could be used as the genetic evidence of hybrids between the two species in KKZ, Thailand.


H25-B37
代:赤座 久明
中部山岳地域のニホンザル遺伝子モニタリング

学会発表
赤座久明、川本芳 中部山岳地域のニホンザル遺伝子モニタリング(2014年9月5日〜7日) 日本哺乳類学会2014年度大会(京都大学).
中部山岳地域のニホンザル遺伝子モニタリング

赤座 久明

過去の共同利用研究で、石川、富山、新潟、長野、岐阜の中部5県の山岳地域に生息するニホンザルの群れから、ミトコンドリアDNA調節領域(mtDNA-CR)(412塩基対)について、6タイプの塩基配列の変異を検出した。6タイプの中の1つのJN21タイプ(kawamoto et al 2006による分類)は近畿地方から中部地方の日本海側に広域的に分布し、ニホンザルの群れの分布拡大の経過を検討する上で重要な集団である。JN21の分布域の中で唯一太平洋側に分布する岐阜県長良川流域の群を対象にして、DNA試料(糞)の採集とmtDNA-CR第1可変域(603塩基対)と第2可変域(412塩基対)の遺伝子分析を行った。第2可変域に関しては、長良川本流右岸と右岸支流の新宮川流域でJN21を12例、長良川本流左岸と右岸支流の内ヶ谷でJN22を18例検出した。2つのタイプは412塩基対のうち1塩基対が異なるだけの近縁な集団である。DNAによる性判別で、JN21、JN22タイプ共にメスの個体を含む集団であることを確認することができたので、長良川流域にはこの2つのタイプの集団が生息することが分かった。第1可変域ではJN21、JN22にそれぞれ2タイプの変異がみられ、第1、第2可変域を合わせた全領域を比較すると4タイプの集団に分けることができた。日本海側に広域分布する集団が、長良川沿いに北から南に向けて分布域を拡大した可能性が考えられる。

JN21タイプの分布域周辺で、これまで遺伝子分析の行われていない、福井県九頭竜川流域に生息する群れを対象にして、DNA試料(糞)の採集とミトコンドリアDNAのDループ第2可変域(412塩基対)の遺伝子分析を行った。
九頭竜川本流の上流域でJN22が6例、支流の真名川でJN30が15例、新タイプが3例、JN35が1例、JN22が1例、笹生川でJN30が6例、大納川でJN30が1例であった。この結果から、九頭竜川流域は、本流上流部にJN21と近縁のJN22の群れが生息しているが、支流には広範囲にJN30の群れが生息していることが分かった。JN30は滋賀、三重、岐阜に分布するタイプで、九頭竜川はこの集団の北端に位置する。



H25-B38
代:時田 幸之輔
チンパンジーの体幹と下肢帯の境界領域における脊髄神経前枝の形態的特徴

論文
Hidaka Aetai,Kounosuke Tokita,Ryuuhei Kojima (2014) Morphological variations of the superior gluteal artery - cosidering based on observing the peripheral nervous systems -投稿予定) Anatomical Science Internatioal.

学会発表
時田幸之輔 チンパンジー分岐神経の解析(2014年7月4日〜6日) 第30回日本霊長類学会大会(大阪府吹田市).
チンパンジーの体幹と下肢帯の境界領域における脊髄神経前枝の形態的特徴

時田 幸之輔

研究代表者は, 腹壁から下肢への移行領域に着目し, ヒト及びニホンザルにて腰神経叢と下部肋間神経の観察を行ってきた. その結果, 下肢へ分布する神経(腰神経叢)の起始分節(構成分節)が尾側へずれる変異が存在するが明らかになった(2012,2011,2010,2009,2008).同様な形態的特徴がチンパンジーにおいても存在するか否かを明らかにすることを目的にチンパンジーの体幹と下肢帯の境界領域における脊髄神経前枝(下部肋間神経, 腰仙骨神経叢)の観察を行った.
腰神経叢と仙骨神経叢の境界に位置する分岐神経(仙骨神経叢の上限)を起始分節はL3であった. 詳細に観察すると, L3から仙骨神経叢へ参加する成分が少ない群(L3少群)とそうでない群(L3並群)とに分けることができた. L3少群の方がL3並群に比較して, 仙骨神経叢の起始分節は, 1分節以内の違いであるが, やや低いと言える.
胴体に特徴的な神経である標準的な肋間神経前皮枝(Rcap)のうち最下端のRcapの起始分節は, L3少群でTh12+L1, L3並群はTh13と, L3少群の方がやや低かった.
以上より,胴体(胸部)に特徴的な神経であるRcap, Rclの起始分節の起始分節が尾側へずれると, 分岐神経を中心とした下肢への神経も尾側へずれると言える. これらの変異は胴体の延長に関連した変異であると考えたい.
本研究の成果は第30回日本霊長類学会大会にて発表予定である.


H25-B39
代:安藤 温子
霊長類が利用する果実の化学成分特性

学会発表
安藤温子, 鈴木節子, 堀越和夫, 鈴木創, 梅原祥子, 半谷吾郎, 村山美穂, 井鷺裕司 絶滅危惧種アカガシラカラスバトの採食生態: DNAバーコーディングを用いたアプローチ( 2014年3月16日) 第61回日本生態学会( 広島).

安藤温子, 鈴木節子, 堀越和夫, 鈴木創, 梅原祥子, 半谷吾郎, 村山美穂, 井鷺裕司 小笠原諸島に生育する種子植物のDNAバーコーディングに基づく絶滅危惧鳥類の食性解析( 2014年3月21日) 日本植物分類学会第13回大会( 熊本).

安藤温子, 鈴木節子, 堀越和夫, 鈴木創, 梅原祥子, 半谷吾郎, 村山美穂, 井鷺裕司 大量塩基配列から探る森林性絶滅危惧鳥類の採食生態( 2014年3月28日) 第125回日本森林学会( 大宮).
霊長類が利用する果実の化学成分特性

安藤 温子

霊長類が生息する大陸島と、霊長類が生息しない海洋島において、動物に散布される果実の適応戦略を評価するため、果実の化学成分を比較した。大陸島である屋久島から19種、海洋島である小笠原諸島父島から33種の果実を採取し、中性デタージェント繊維 (NDF)、粗タンパク質、粗灰分、粗脂肪の含有率を乾燥重量で算出した。各項目の平均値と標準偏差はそれぞれ、屋久島で0.34±0.18, 0.054±0.040, 0.054±0.030, 0.132±0.195, 父島で0.481±0.18, 0.082±0.059, 0.044±0020, 0.122±0.131であった。NDFと粗タンパク質の含有率は、父島において有意に高かった。粗灰分と粗脂肪の含有率においては、島間で有意な差は見られなかった。屋久島においては、霊長類が多様な果実を利用する重要な種子者である一方、父島ではほとんどの果実が鳥によって散布される。今回の結果は、霊長類と鳥類の果実に対する選択性の違いが、大陸島と海洋島における果実の化学成分特性に反映されている可能性を示唆している。今後、対象種や測定項目を増やして詳細な分析を行うことにより、より明確な傾向が見いだされるかもしれない。


H25-B40
代:松村 秀一
協:赤尾 大樹
アフリカ産オナガザル科霊長類の味覚情報体遺伝子の多様性
アフリカ産オナガザル科霊長類の味覚情報体遺伝子の多様性

松村 秀一 , 赤尾 大樹

本研究では、アフリカ東部ウガンダ共和国カリンズ森林に同所的に生息するオナガザル科霊長類であるアカオザル(Cercopithecus ascanius)、アオザル(C. mitis)、ロエストザル(C. lhoesti)の3種を対象に、味覚受容体遺伝子の種間・種内変異を分析し、採食生態等との関連を明らかにすることを目的とした。糞から抽出したDNAサンプルを用い、3つの苦味受容体遺伝子Tas2r1、Tas2r16、Tas2r38について塩基配列を決定した。遺伝子毎に系統樹を作成し、多数の核遺伝子に基づいて推定されている3種の系統関係と比較した。また、サンプル数の多いロエストザルでは、種内変異についても分析した。その結果、Tas2r1とTas2r38における3種の系統関係は先行研究と一致したが、Tas2r16については一致しなかった。また、ロエストザルでの種内多型が観察されたのは、Tas2r1のみだった。Tas2r16では、受容体の機能に影響する可能性のある重要な位置のアミノ酸に置換がみられた。今後は、カルシウムイメージング解析等の手法を用いて、これらのアミノ酸置換が機能に与える影響について調べていきたい。


H25-B41
代:原 英彰
協:嶋澤 雅光
協:増田 智美
協:古島 淳史
コモンマーモセットを用いた加齢黄斑変性症に伴う網膜血管新生の発症機序の解明
コモンマーモセットを用いた加齢黄斑変性症に伴う網膜血管新生の発症機序の解明

原 英彰 , 嶋澤 雅光, 増田 智美, 古島 淳史

 我が国において、加齢黄斑変性症は中途失明原因の第4位を占める疾患であり、近年増加の一途をたどっている。しかしながら、現在臨床応用されている抗体医薬品は硝子体内投与で行われており身体的負担が大きい。そのため新規医薬品開発が望まれているが、よりヒトに近いモデルでの検討が必要である。そこで、我々は加齢黄斑変性症に伴う網膜血管新生の発生機序の解明を目的として、コモンマーモセットを用いてレーザー誘発脈絡膜血管新生モデルの作製を試みた。今年度の研究においてはレーザー照射出力の検討を行った。
 眼底カメラ(Micron掘砲房茲衂佞韻可能なレーザー照射装置により、マーモセットの黄斑周辺8か所にレーザー照射を行った。21日目フルオレサイト?注射液1号0.5 mL/kg大腿静脈内投与し造影後の蛍光眼底観察を行い、血管新生からの蛍光漏出を確認した。同日眼球を摘出後、凍結切片を作製した。凍結切片のヘマトキシリン・エオジン染色を行い、レーザー照射部位の組織学的な変化を観察した。
 レーザー出力650、1,000、1,500、2,000 mWで処置したところ、1,500、2,000 mW処置で照射部位に脈絡膜血管新生を確認した。以上より、出力1,500 mWのレーザーを用いることでマーモセットのレーザー誘発脈絡膜血管新生モデルの作製に成功した。


H25-B42
代:日比野 久美子
協:竹中 晃子
ヒト動脈硬化症のアカゲザルモデル作出のための基礎研究

学会発表
日比野 久美子、竹中 晃子、鈴木 樹理、森本 真弓、釜中 慶郎 ヒト脂質代謝関連疾患のモデル動物としての可能性       〜家族性高コレステロール血症アカゲザル〜(平成26年6月29日) 第3回栄養改善学会東海支部会(三重県(鈴鹿医療科学大学).
ヒト動脈硬化症のアカゲザルモデル作出のための基礎研究

日比野 久美子 , 竹中 晃子

京大霊長研のインド由来アカゲザルに、LDLR(低密度リポタンパク質レセプター)遺伝子のLDL結合領域にCys61Tyr変異を有する高コレステロール血症個体を13年前に見出し、今年初めてF2世代でホモ接合型個体が生まれた。ヘテロ接合型成体6頭は通常食下で血中LDL値及びt-CH(総コレステロール)値が有意に(p<0.001)高かったので、この家系についてヒト動脈硬化症モデルとなる可能性を検討した。成体オス3頭について0.1%CH含有飼料を投与し経時的に血液検査を行い、2頭はLDL値が顕著に増加し、その内の1頭(#1784)は6週間で動脈硬化指数LDL/HDL>3.5およびt-CH/HDL>5.0を超え、モデル作出の可能性を示した。残りの#1774はLDL値の上昇が悪く、他のエクソン領域に更なる変異を有している可能性が示唆された。対照群3頭のうち1頭は9週間の0.1%CH含有飼料投与で全くLDL値の上昇を示さなかったが、他の2頭のLDL値は1.5倍まで上昇した。更に、ホモとヘテロ接合型の乳児2頭の血中CHの経時変化を追跡中である。通常食下の母乳を飲んでいる状況下のLDL値は、変異をもたない対照個体3頭に比べ1.4倍の値を示している。


H25-B43
代:稲用 博史
数学モデルを用いた霊長類大腿骨近位部形態の解析

学会発表
稲用博史、濱田穣、平崎鋭矢 ヒトとチンパンジーの大腿骨の形状の比較 骨形状決定の数学モデルによる筋力の評価(2014年9月) 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会(岡山市).
数学モデルを用いた霊長類大腿骨近位部形態の解析

稲用 博史

Wolffの法則に従えば、骨は力学的ストレス(荷重)を受け、力学的に最適な形状になっている。この法則を最適化理論と考え数式で表現し有限要素法を用いて数値的に解を求めると骨に対する力学的条件を推定することが出来る。
ヒトとチンパンジーの大腿骨の形状を比較すると、ヒトには、BicondylarAngle と呼ばれる大腿骨の傾きがある。また、ヒトは直立二足歩行する。
これにより、以下の結果を得た。
ヒトの骨盤の形状は内臓を支えるために短く幅広くなった。同時に、ヒトは直立することにより大臀筋を発達させた。発達した大臀筋は腸脛靭帯の緊張を高め、チンパンジーと比べて、より外方から大転子を強く圧迫するようになった。
ヒトとチンパンジーの骨形状を求めるために、初期形状と力学的条件を設定し有限要素法を用いて計算し形状を求めた。これにより、Bicondylar Angle は大臀筋力が大きいことにより形成されることが推定された。


H25-B44
代:大平 耕司
協:竹内 理香
抗うつ薬によるマーモセット海馬歯状回顆粒細胞の脱成熟効果
抗うつ薬によるマーモセット海馬歯状回顆粒細胞の脱成熟効果

大平 耕司 , 竹内 理香

我々は、これまでに統合失調症や双極性気分障害の患者死後脳や多数系統の精神疾患マウスモデルにおいて未成熟海馬歯状回(iDG)が生じていることを報告している。一方、野生型マウスに対して、抗うつ薬の慢性投与や脳電撃ショックを処置すると、iDGが生じることをあきらかにしている。これらのことより、iDGの人工的な正常化と誘導が実現できれば、統合失調症、双極性気分障害、うつ病などの精神疾患の治療法に結びつくことが期待できる。昨年度に引き続き、個体数を追加し、抗うつ剤であるフルオキセチン(FLX)の放出ペレットを皮下に埋め込み、4週間後に脳を固定して組織学的解析を行った。FLX投与個体において、歯状回顆粒細胞の脱成熟化を確認した。さらに、大脳皮質の前頭前野において、FLXによって新しい神経細胞が産生されていることを見出した。以上の結果は、FLX投与によって生じる歯状回顆粒細胞の脱成熟や大脳皮質の神経新生が抗うつ効果を担っている可能性を示唆している。今後は、これまでの成果について、学会発表や論文としてまとめたい。


H25-B45
代:纐纈 大輔
クロリンe6の逆行性輸送と光反応による投射選択的神経破壊法の開発
クロリンe6の逆行性輸送と光反応による投射選択的神経破壊法の開発

纐纈 大輔

し、昨年度の共同利用研究で行った、運動前野から一次運動野(M1)へ投射するニューロンの選択的破壊に加えて、頭頂連合野からM1へ投射するニューロンの選択的破壊を試みた。まず、皮質内微小刺激を行い電気生理学的にM1の前肢領域を同定し、逆行性輸送物質であるデキストランにCe6を結合したものを注入した。1ヶ月後、十分にデキストラン−Ce6が逆行性輸送された後に、M1前肢領域に投射している運動前野背側部、および頭頂間溝背側部に近赤外光を照射した。細胞体内に蓄積したCe6は光照射により活性化して、活性酸素の一種である一重項酸素を発生する。一重項酸素は細胞のアポトーシスを誘導し、結果としてCe6を細胞体内に持つ投射ニューロンだけを選択的に破壊する。実験終了後、脳切片を確認したところ、デキストラン−Ce6は投射元皮質内の第3層と第5層に逆行性輸送されていることを組織学的に確認した。以上のように、投射選択的神経経路の破壊に必要な技術を獲得できたと考えられる。今後は選択的破壊の効率化を目指していきたい。


H25-B46
代:河野 礼子
狭鼻猿類の大臼歯内部形状の比較分析

論文
Reiko T. Kono, Yingqi Zhang, Changzhu Jin, Masanaru Takai, Gen Suwa(2014) A 3-dimensional assessment of molar enamel thickness and distribution pattern in Gigantopithecus blacki Quaternary International 354:46-51. 謝辞あり

Takai M, Zhang Y, Kono RT, Jin C(2014) Changes in the composition of the Pleistocene primate fauna in southern China. Quaternary International 354:75-85.

Zhang Y, Kono RT, Wang W, Harrison T, Takai M, Ciochon RL, Jin C (2015) Evolutionary trend in dental size in Gigantopithecus blacki revisited. Journal of Human Evolution 83:91-100. 謝辞あり

Zhang Y, Jin C, Kono RT, Harrison T, Wang W.(2016) A fourth mandible and associated dental remains of Gigantopithecus blacki from the Early Pleistocene Yanliang Cave, Fusui, Guangxi, South China. Historical Biology 28:95-104.

学会発表
河野礼子・張穎奇・金昌柱・高井正成 中国南部の広西壮族自治区から出土した更新世大型類人猿遊離歯化石(2013年11月2日) 第67回日本人類学会大会(つくば).

高井正成・河野礼子・金昌柱・張穎奇 中国南部における更新世霊長類相の変遷(2013年11月2日) 第67回日本人類学会大会(つくば).

河野礼子・張穎奇・金昌柱・高井正成・王?・Terry Harrison ギガントピテクス臼歯サイズの時代変化(2014年11月1日) 第68回日本人類学会大会(浜松).

Kono RT, Zhang Y, Jin C, Takai M, Wang W, Harrison T Size trend of the Gigantopithecus blacki tooth fossils from the Pleistocene cave deposits in southern China.(2014年10月23日) International Symposium on Paleoanthropology in Commemoration of the 85th Anniversary of the Discovery of the First Skull of Peking Man(Beijing,China).

Kono RT, Zhang Y, Jin C, Takai M, Wang W, Harrison T Size trend of the large hominoid tooth fossils from the Pleistocene cave deposits in southern China.(2014年8月15日) International Primatological Society XXV Congress(Hanoi, Vietnam).

狭鼻猿類の大臼歯内部形状の比較分析

河野 礼子

現生のヒトや大型類人猿について、大臼歯三次元形状を詳細に分析した結果、エナメル質の厚さと分布の特徴が、各種の食性に応じた適応的なものであることがこれまでに明らかになっている。本研究は狭鼻猿類のさまざまな種類について、大臼歯三次元内部形状を分析することにより、化石資料の系統的位置づけや、機能的特徴を検討することを目指して実施している。本年は中国産の化石類人猿、ギガントピテクス大臼歯資料について、分析の結果を論文発表した。ギガントピテクス大臼歯はエナメル質の分量が絶対的に多いが、歯の大きさで標準化するとホモ・サピエンスと同程度の厚さであること、また高い歯冠の中でも咬合面付近に特に分厚くエナメル質が分布しており、同じようにエナメル質の厚い化石人類や食性の類似性がしばしば提案されてきたジャイアントパンダのいずれとも異なる食性への適応を遂げた可能性を論じた。また、中国南部・広西産のサル化石資料の種構成・変遷についての論文発表にも参加した。この資料の一部の標本についてマイクロCT撮影を実施し、種同定の判断について、内部形状の情報を合わせてさらに検討を進めている。


H25-B47
代:松岡 史朗
協:中山 裕理
下北半島脇野沢における野生ニホンザルの個体群動態と法面利用の関係
下北半島脇野沢における野生ニホンザルの個体群動態と法面利用の関係

松岡 史朗 , 中山 裕理

2012年に81 +α頭だった87群は、その後しばしばサブグルーピングし、2013年2月以降2つのサブグループ(87A群87B群とする)のメンバーが固定した。2012年12月と2013年5月の間に、オトナ♀1頭、0歳3頭、1歳11頭、2歳3頭、3歳♀2頭、4歳♂1頭5歳♂2頭が行方不明となり、2013年3月下旬には1歳1頭の頭骨を発見した。結果として87群由来の2群の合計数は68頭(A群45頭(赤ん坊5頭)、B群23頭(同2頭))と減少した。サブグルーピングの際に0〜3歳の子どもが親と離れることがしばしば観察され、87群では多数個体の同時消失の前例がなかったので、群れの分裂がこの多数個体消失事件に何らかの影響を与えている可能性が疑われる。分裂後の出産率と赤ん坊の死亡率は、それぞれ、A群50%、38%、B群22%、0%と、分裂前と大差ないようだった。2013年の観察では2群とも分裂前の遊動域を利用し、遊動域の分割・縮小はなかった。A群の法面滞在時間は18%と前年度(17%)同様高かった。


H25-B48
代:山田 博之
協:清水 大輔
テナガザル(Hylobates)の犬歯の比較形態学的研究:ペア型社会を支持するのか?

論文
山田博之,濱田 穣,石田英實(2013) :ボノボの犬歯形態と性的二型 Anthropological Science(Japanese Series) Vol.121(2):89−104.

学会発表
山田博之 歯の大きさからみた人類集団の流れ(2013.9.1.) 第33回歯の形態学をめぐる懇話会(名古屋).

山田博之,清水大輔,濱田 穣 シロテテナガザル(Hylobates lar)の犬歯の性的二型(2013.9.7.) 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会(岡山理科大学,岡山市).

山田博之,濱田 穣,國松豊,中務真人,石田英實 類人猿の下顎犬歯歯冠舌側面に見られる性的二型(2013.11.3.) 第67回日本人類学会大会(国立科学博物館 筑波研究施設,つくば市).

関連サイト
歯の豆辞典 http://ymd20hiro4.sakura.ne.jp/
テナガザル(Hylobates)の犬歯の比較形態学的研究:ペア型社会を支持するのか?

山田 博之 , 清水 大輔

小型類人猿シロテテナガザル(Hylobates lar)について犬歯形態の詳細な記載と大きさの性的二型性を明らかにすることを目的に研究を行った。テナガザルの犬歯は従来いわれているように性的二型性が小さく,雌雄間で形態が非常によく似ている。歯冠頬側面の概形は上顎犬歯でサーベル形,下顎犬歯は不正四辺形を呈する。オスに較べてメスの形態特徴を挙げると,1)サイズが小さい,2)歯冠浮彫像の発達が弱く,全体に丸みを帯びている,3)下顎犬歯の近心shoulderの位置が相対的に尖頭寄りにある,4)歯頚隆線がよく発達している。歯冠サイズによる犬歯の性差では,上・下顎の歯冠基底部のサイズや歯冠高でオスの方が有意に大きい。一方,下顎犬歯では歯冠近遠心径に対する歯頚部エナメル質の厚さはメスの方が有意に大きく,強い性差を示す。歯冠の高径,とくに下顎犬歯の尖頭から近心shoulderまでの距離が最も強い性差を示す。犬歯の形態やサイズに性的二型がみられることはペア社会を構成するテナガザルでもある程度雌雄の違いが大きさや形にも存在することを示す。


H25-B49
代:緑川 沙織
比較解剖学に基づく体幹-上肢移行領域の形態学的特徴

学会発表
緑川 沙織,時田 幸之輔,小島 龍平 内側上腕皮神経に関する比較解剖学的考察(2013年9月14日) 第12回コ・メディカル形態機能学会(広島国際大学).

緑川 沙織,時田 幸之輔,小島 龍平 皮幹筋支配神経の比較解剖学的検討(2013年9月6〜9日) 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会 2013年度合同大会(岡山理科大学).

緑川 沙織,時田 幸之輔,小島 龍平 内側上腕皮神経に関する比較解剖学的考察(2013年10月19,20日) 京都大学霊長類研究所 共同利用研究会(京都大学霊長類研究所).
比較解剖学に基づく体幹-上肢移行領域の形態学的特徴

緑川 沙織

ヒトをはじめとする哺乳類の腕神経叢, 特に内側上腕皮神経(Cbm)と肋間上腕神経(Icb)の起始・経路・分布に注目し, 肉眼解剖学的に詳細な調査を行ってきた.
ヒトにおいてCbmは, 内側神経束の背側層に所属し, 第2肋間外側皮枝(RclII)と吻合した後に上腕内側から後面にまわり, 上腕後面から肘頭までの皮膚に分布する. なお, Cbmはヒトや一部の類人猿に限って出現し, Cbmを持たない種においてはIcbがその分布領域を補う(相山, 1968).
我々は, カニクイザルとブタ胎仔においてCbmとIcbの起始・経路・分布を詳細に観察し, CbmとIcbに代償関係が存在すること, また神経の構成分節に差異が生じることを明らかにした(緑川他, 2012). さらに, そのような差異が種毎の運動様式の差異に伴って変化する胸郭と肩甲骨の位置関係に影響される可能性を指摘した(緑川他, 2012). 今回は, 運動様式がヒトとマカクの中間に相当する類人猿, チンパンジーの腕神経叢について肉眼解剖学的な観察を行った. チンパンジーの腕神経叢では, 内側神経束の背側より分岐し, 上腕動静脈の背側を通り上腕内側に分布する皮神経(Cbm)が観察された. また, RclIIの後枝がIcbとして上腕内側に分布していた. 以上より, チンパンジーのCbm, Icbはヒトと近い所見が得られた.


H25-B50
代:那波 宏之
協:難波 寿明
霊長類における神経栄養因子の精神機能発達に与える影響
霊長類における神経栄養因子の精神機能発達に与える影響

那波 宏之 , 難波 寿明

マーモセットは社会行動性の高い霊長類であり、また他の霊長類と比較してその成長も早く、神経発達障害を病因とする統合失調症などのヒト精神疾患をモデル化するには打ってつけの霊長類であると考えられる。共同研究者らは、サイトカインによる脳発達障害ならびにその精神疾患への寄与を中心に研究し 多くの実績をあげてきた。実際、新生仔マウスの皮下に神経栄養性サイトカインである上皮成長因子(EGF)やニューレグリン1などを投与することで、統合失調症のモデルを作成することに成功している。また、最近では、カニクイザル新生児を用いて、同様の実験を8年に渡り実施し、本サイトカイン統合失調症モデルにおける霊長類への適用可能性も報告している。
  2010年には、マーモセット新生児へのEGF投与を実施、2011年には妊娠9〜11週と妊娠12〜14週のマーモセット母体にでEGF投与を行い、現在、その産子の行動発達を観察しているところである。EGF投与を皮下投与されたマーモセット新生児は、思春期を超え、目あわせなどの行動変化が観察されるようになって来ていて、現在、その定量化を試みている。妊娠母体へのEGF投与動物の産子については、これから思秋期を迎える時期になるので、注意深くその行動を観察する予定である。


H25-B51
代:松岡 雅雄
協:安永 純一朗
協:菅田 謙治
協:三浦 未知
協:田邉 順子
ニホンザルにおけるサルT細胞白血病ウイルスの動態の解析・免疫治療
ニホンザルにおけるサルT細胞白血病ウイルスの動態の解析・免疫治療

松岡 雅雄 , 安永 純一朗, 菅田 謙治, 三浦 未知, 田邉 順子

霊長類研究所にて飼育中のニホンザルの6割はSTLV-1に感染している。これらの末梢血を解析し、CD4陽性Tリンパ球優位にSTLV-1が感染していること、プロウイルス量には大きな個体差があること(0.001%から53%)が判明した。次世代シークエンサーを用いた感染細胞クローナリティの解析により、プロウイルス量が高い個体では感染細胞のクローナルな増殖が認められ、組織によりクローナリティのパターンが異なることが判明した。STLV-1由来の TaxおよびSTLV-1 bZIP factor (SBZ)はHTLV-1のTax、HTLV-1 bZIP factor (HBZ)と同等の機能を有しており、STLV-1感染ニホンザルはHTLV-1感染者と病態が類似する有用な霊長類モデルであると考えられた。実際、STLV-1感染ニホンザルに抗CCR4抗体と投与したところ、速やかな感染細胞の減少が認められ、無症候性HTLV-1キャリアに対する新しい発症予防法開発に貢献する結果が得られた。これらの成果は国際誌Retrovirologyに掲載された(Miura M, et al. Retrovirology, 10; 118, 2013.)。現在、このモデルを用いて新規免疫療法の開発を進めている。


STLV-1感染ニホンザルはSTLV-1感染者と類似する病態を呈し、有用な動物モデルである


H25-B52
代:佐藤 百恵
協:中尾 汐莉
協:高木 幸恵
遺伝子分析を利用したワオキツネザルの父系判定の研究
遺伝子分析を利用したワオキツネザルの父系判定の研究

佐藤 百恵 , 中尾 汐莉, 高木 幸恵

2012年度の研究で性成熟雄14個体について遺伝子多型の違いがみられたマイクロサテライトDNAマーカーのうちLc5、Lc6、Lc8、69HDZ091、69HDZ208、69HDZ035の6つの各マーカーに、解析結果の波形が読みやすくなるようテール配列GTTCTTを組み込み【図1】、日本モンキーセンター(JMC)で飼育している85頭のワオキツネザルのうち、1コロニー(23個体)について父子判定を行った。当初はワオキツネザルの体毛から遺伝子分析を進めていたが、途中でDNAの収率が低く解析困難な個体が増加したため、サンプリングの方法を見直した。樫類の細い枝を10cm程度の長さに切り先に十字の切り込みを入れ、そこに落花生等の餌を挟み込み対象個体に齧らせた。それを溶解緩衝液入りのチューブに直接浸したものから口内細胞由来のDNAを調製した。23個体の遺伝子型分析を行ったところ、安定して結果が得られた【図2】。2011〜2013年の間に出生した9個体について判定したところ、同コロニーの性成熟雄4頭のうち2頭が父親になっていることが判明した。今後は、まだ解析していない他のコロニーの個体を解析しJMCで出生した個体について父親を特定し、家系図を作成したうえで、近交係数や行動観察とデータの比較を行っていく予定である。


H25-B53
代:Charmalie AD Nahallage
Morphological correlates of a behavioral propensity for tool use in primates: a comparative macaque model.
Morphological correlates of a behavioral propensity for tool use in primates: a comparative macaque model.

Charmalie AD Nahallage

Previous research has analyzed the dimensions of the metacarpal of chimpanzees, Olduvan hominids and humans to make a case for determining the dexterity of fossil hominids. Our study attempts to extend this comparative focus to monkey species with known propensities for fine precision grip of objects. We chose the Japanese macaque based on our field studies of stone handling behavior, which demonstrate great manual dexterity in the manipulation of stones using grips similar to chimpanzees and humans. A total of 100 Japanese macaque metacarpals (50 males and 50 females) were selected from the Primate Research Institute’s skeletal collection. We measured the pollical metacarpal head breadth and the length of the pollical bone. While analysis is still underway, the index derived from the ratio of these measurements place the Japanese macaque well within the range of humans and chimpanzees with regards to dexterity. The next step is to obtain measurements from the metacarpal of capuchin monkeys, a Neo-tropical species also well known for its ability to use stone tools for the processing of hard nuts, similarly to chimpanzees in Western Africa.


H25-B54
代:一柳 健司
協:佐々木 裕之
協:福田 渓
霊長類におけるエピゲノム進化の解明

論文
Fukuda, K., Ichiyanagi, K., Yamada, Y., Go, Y., Udono, T., Wada, S., Maeda, T., Soejima, H., Saitou, N., Ito, T. & Sasaki, H.(2013) Regional DNA methylation differences between humans and chimpanzees are associated with genetic changes, transcriptional divergence and disease genes. J Hum Genet 58(7):446-454. 謝辞あり

学会発表
一柳健司 霊長類進化におけるゲノムとエピゲノムの相互作用(2013年8月16日) 国立遺伝学研究所?研究会「新機能獲得の分子進化」(三島市).

福田渓、一柳健司、井口志洋、佐々木裕之 トランスポゾンによる霊長類のエピゲノムの進化(2013年9月19日) 第85回日本遺伝学会、ワークショップ「転移因子と宿主の相互作用」(横浜市).

福田渓、一柳健司、一柳朋子、大川恭行、郷康広、佐々木裕之 種間比較によるヒトエピゲノム形成基盤の解明(2013年5月30日) 第7回日本エピジェネティクス研究会年会(奈良市).
霊長類におけるエピゲノム進化の解明

一柳 健司 , 佐々木 裕之, 福田 渓

我々は霊長類におけるゲノム進化とエピゲノム進化の関係を解明するため、ヒト、チンパンジー(霊長類研究所の飼育個体)、ゴリラおよびオランウータンの末梢白血球のDNAメチル化比較研究を行い、CTCFタンパク質の結合配列の出現・消失やマイクロサテライト配列の小さな変化によって、DNAメチル化状態が変化し、転写状態に影響を与えていることを世界で初めて示した(Fukuda et al. 2013, J. Human Genet.58:446-454)。
本年度はGAINよりニホンザル精子サンプルを供与頂き、ヒト、チンパンジー、ニホンザルの精子メチル化状態をゲノムワイドに比較解析した。興味深いことに、ヒト特異的に大きな低メチル化領域(数十kb以上)が多数出現していた。これらの領域は核膜結合領域に多く、コピー数多型などヒト集団内でのゲノム構造多型が見られる領域でもあった。一方、小さな領域(1kb以下)のメチル化変化については、CTCFなどの転写因子の結合配列変化に加え、SVAやAluといったレトロトランスポゾンの種特異的な挿入により、周辺のエピジェネティック状態が変化することを明らかにした。


H25-B56
代:加賀谷 美幸
霊長類の前肢帯骨格の可動域解析

学会発表
加賀谷美幸 中新世ヨーロッパのはみだし類人猿〜体幹直立姿勢の進化〜(2013年6月29日) 日本人類学会進化人類学分科会第30回シンポジウム(キャンパスプラザ京都).

加賀谷美幸 ヒトのからだのヒトらしさの由来:肩と体幹のボディプランの進化(2013年11月) 解剖・組織技術研究会第11回研修会(広島大学).
霊長類の前肢帯骨格の可動域解析

加賀谷 美幸

肩関節は、前肢帯(肩甲骨と鎖骨、筋群)に支えられて胸郭上で位置をさまざまに変える。前肢の挙上に伴い前肢帯骨格はどのような位置をとるか、その可動範囲と骨格形態との関係を分析するため、霊長類研究所のニホンザル(11個体)とアカゲザル(3個体)の成体を麻酔し計測した。三次元デジタイザにより、受動的な挙上位や力を加えない自然位における肩甲骨の内側縁や肩甲棘、鎖骨、胸骨、上腕骨の上顆、脊柱などの三次元座標を体表から取得した。装置を前年度から改良し、被験体を30度傾斜の腹当て付き座面に前傾で座らせ、腕を任意の位置で固定するクランプをスライド式に支える自立式フレームを制作した。前方あるいは側方に腕を挙上する場合、ヒトでは肩甲骨が上方回旋して関節窩を頭側に向けるが、マカクザルでは肩甲骨が回旋とともに胸郭の背側へ偏位して内側縁が脊柱の棘突起と干渉し、また、肩と下顎が接触して可動範囲を制約していた。上記被験体のうち4個体のニホンザルを背臥位でCT撮影したところ、鎖骨外側半の位置は第5−7頚椎レベルで、ヒトにみられるより鎖骨が挙上傾向にあり、肩甲骨の上方回旋の可動範囲が大きくないことを示唆した。


H25-B57
代:長谷 和徳
協:林 祐一郎
加齢変化特性を考慮できるニホンザルの四足歩行計算機シミュレーション

学会発表
林祐一郎,長谷和徳,萱沼徹,平鋭矢 足先軌道を考慮した位相振動子を用いたニホンザル四足歩行運動のシミュレーション (2013年11月3日) 第67回日本人類学会大会(茨城県つくば市).

萱沼徹,長谷和徳,平崎鋭矢 位相振動子を用いたニホンザル四足歩行シミュレーション (2014年3月15日) 日本機械学会関東支部第20期総会講演会(東京都小金井市).

荻原俊輝,長谷和徳,林祐−郎 子供体形モデルによる3次元歩行シミュレーション(2013年11月16日) 第34回バイオメカニズム学術講演会(埼玉県所沢市).

戸沢優介,長谷和徳,林祐一郎,太田進,小見山智衣,佐藤慶彦 ナンバ歩行における下肢関節の力学的負担の評価(2013年11月16日) 第34回バイオメカニズム学術講演会(埼玉県所沢市).

長谷和徳 位相振動子と特異値分解を用いた歩行動力学シミュレーションの安定化の試み(2013年12月8日) 日本人間工学会関東支部第43回大会(東京都日野市).
加齢変化特性を考慮できるニホンザルの四足歩行計算機シミュレーション

長谷 和徳 , 林 祐一郎

本研究では,ニホンザルモデルを用いて,霊長類のオトナ期における筋・骨格の加齢変化を調べ,運動能に対するそれらの影響を明らかにするため,これらの力学的な特性を考慮・反映し得る四足歩行の計算機シミュレーションモデルの構築を試みた.霊長類研より提供を受けたニホンザルのモーションキャプチャデータや歩容の特徴の知見を参照し,運動制御モデルの構築を行った.具体的には,足先の軌道をパラメトリックに生成できる関数の導入,四肢の運動位相を適応的に変更可能な位相振動子の導入,足部反力負荷に応じた運動位相調節機構の導入などを行った.関節受動抵抗などの身体の骨格系の力学特性についても霊長類研より情報提供を受け,15節,24関節自由度の力学モデルを構築した.シミュレーションでは足部反力など含め,ニホンザルの特徴をよく表す歩行様式を実現できるようになった.また,身体の重心位置に応じて四肢の運動位相を前方交叉型と後方交叉型に遷移させるシミュレーションにも成功し,身体力学特性と歩容との関係を本モデルで分析できることを示した.ただし,加齢変化特性についてはまだ十分にモデル化できていないところもあり,今後の課題としたい.


H25-B58
代:外丸 祐介
協:信清 麻子
協:畠山 照彦
一卵性多子ニホンザルの作製試験

学会発表
外丸祐介 霊長類におけるクローン技術の開発(2013年5月16日) 日本実験動物学会(つくば).

外丸祐介 霊長類における遺伝的相同個体の作製技術について(2013年12月12日) 日本マーモセット研究会(福岡).
一卵性多子ニホンザルの作製試験

外丸 祐介 , 信清 麻子, 畠山 照彦

遺伝的に均一な霊長類個体を得る手段として受精卵分離および受精卵クローン技術による一卵性多子ニホンザルの作製を目指し、関連技術の検討を行った。昨年度に引き続き、体外成熟卵子からの受精卵作製手段として体外受精・顕微授精を実施した。射出精子を用いた場合には受精卵は得られなかったが、経皮的に採取した精巣上体精子を用いることで53%の受精率が得られ、受精卵の38%が胚盤胞へ発生した。しかし、これらの精子を凍結保存した後に体外受精に供試した場合では、何れも受精卵は得られなかった。これに対し、顕微授精では高率に受精卵を作製できた(79%)が、胚盤胞へ発生は低率(6%)であり、手法改善の余地があると考えられた。また、これらの技術を基盤として得られた受精卵を用いて分離試験を実施した結果、4分離した場合でも胚盤胞まで発生可能であることを確認した。今後は、より詳細なデータの収集と、分離胚からの個体作製に取組む予定である。


H25-B59
代:栗田 博之
ニホンザル群における食物摂取と栄養状態および繁殖成績の関係について:幸島群と高崎山群の比較
ニホンザル群における食物摂取と栄養状態および繁殖成績の関係について:幸島群と高崎山群の比較

栗田 博之

幸島での写真計測による体長計測は、7月に実施し、メス14個体についてデータ収集を行った。また、高崎山のメスに対する写真計測法による体長計測は、9月に実施し、6個体のデータ収集を行った。まだ十分なデータ解析は行えていないが、幸島群では特に20歳以上の高齢個体のデータが少なく、2個体群での十分な比較は今後の課題である。
 また、サルの重要な自然食物であるアラカシ・マテバシイ・ウラジロガシの堅果生産量を調査するために幸島に設置した4箇所のシードトラップからは、京都大学野生動物研究センター幸島観察所所員の全面的な協力の下で、ウラジロガシの堅果123個とアラカシの堅果62個を回収できた。一方、高崎山に設置した5箇所のシードトラップからは102個の堅果を回収したが、登山者によると思われるシードトラップの横倒しがあり、正確な落下量調査ができなかった。なお、シードトラップによる調査結果の一部は、2013年12月発行の「霊長類研究」に「調査・技術報告」として、掲載された(29巻55-61頁)。
 また、2011年度より行っている幸島群における餌獲得量調査は、実施予定時期(10月下旬)に台風の接近があり、また、別日程での調査が不可能であったため、2013年度は実施できなかった。


H25-B60
代:大石 元治
協:荻原 直道
協:菊池 泰弘
協:小薮 大輔
霊長類における懸垂運動機構の機能形態学的解析

学会発表
大石元治、荻原直道、清水大輔、菊池泰弘、尼崎肇 大型類人猿における下腿部と足部の筋について(2013年11月) 第67回日本人類学会大会(茨城県).

大石元治 相対重量値からみた大型類人猿の肩関節周囲の筋(2016年10月) 第70回日本人類学会大会(新潟県).
霊長類における懸垂運動機構の機能形態学的解析

大石 元治 , 荻原 直道, 菊池 泰弘, 小薮 大輔

類人猿に認められる幅の広い胸郭や球状の上腕骨頭といった形態的特徴は, 頭部より上に前肢を挙上させる懸垂運動と関連が深い。しかし, 類人猿のなかでも懸垂運動の種類や出現頻度に大きな違いが認められ, 懸垂運動への適応と一様に考えられている形質にも影響を与えると考えられる。近年, 霊長類を含めたさまざまな動物において数理モデルを用いた研究が進められており, ロコモーションと運動器の関係を研究する上で有用な手法となる。しかし, 筋骨格モデルには筋や骨の定量的データを得ることが必要不可欠であるが, これまでに行われてきた霊長類の解剖学的研究におけるデータは必ずしも筋骨格モデルの作成という目的に合致したものではない。本研究は懸垂運動を行う霊長類の筋骨格モデルの構築を念頭に, 筋や骨のパラメーターを得ることを目指して実施している。本年はチンパンジー(1個体)とオランウータン(1個体)のCT撮影を行い、胸郭形状の三次元データの入手を試みた。また、筋パラメータを入手する目的で同個体の四肢を解剖し, 付着部や走行を観察した。今後はこれらのデータをもとに数理モデルの作成や3次元形態計側を行う予定である。


H25-B61
代:大橋 順
協:中 伊津美
霊長類におけるマラリア感染関連遺伝子の分子進化学的解析
霊長類におけるマラリア感染関連遺伝子の分子進化学的解析

大橋 順 , 中 伊津美

ヒトのendothelial protein C receptor (EPCR)には膜結合型と分泌型の二種類が存在し、膜結合型EPCRは熱帯熱マラリア原虫の赤血球表面抗原PfEMP1のレセプターとして機能することが報告されている。EPCRの膜結合型と分泌型の産生量には個人差が存在し、EPCRをコードする、protein C receptor (PROCR)遺伝子の単一塩基多型rs867186のGアリルを保有すると分泌型の産生量が高く、Aアリルを保有すると低いことが知られている。共同研究により試料提供を受けた西チンパンジーの当該部位の配列解析から、Gアリルはヒトの系統で起きた突然変異であると考えられた(3匹の西チンパンジーは全てAアリルを保有していたため)。熱帯熱マラリアに感染した341名のタイ人重症マラリア患者と336名のタイ人軽症マラリア患者のrs867186遺伝子型を解析したところ、rs867186-GG保有者頻度が軽症マラリア患者群において統計学上有意に高く(P = 0.026)、派生型アリルGが重症マラリア抵抗性と関連していることが確認された。このことは、分泌型EPCRが感染赤血球表面上のPfEMP1に優先的に結合することが、膜結合型EPCRと感染赤血球との結合を阻害し、sequestrationを防ぐことにより重症化抵抗性を示すことを示唆している。次に、マラリア患者7名と西チンパンジー3匹について、PROCR遺伝子の全コード領域の配列決定を行った。ヒトとチンパンジーの配列比較を行ったが、ヒト系統のPROCR遺伝子に自然選択が作用した痕跡は検出されなかった。


PROCR rs867186と重症マラリア抵抗性


ヒトPROCR rs867186-Gは派生型アリル


H25-B62
代:宮沢 孝幸
協:吉川 禄助
協:下出 紗弓
協:中岡 里江
ニホンザルフォーミウイルスとニホンザルとの共進化の可能性

学会発表
吉川禄助、下出紗弓、中岡里江、坂口翔一、宮沢孝幸 ニホンザル由来サルフォーミーウイルスの全塩基配列決定と感染クローンの作製(2013年3月29日) 第155回日本獣医学会学術集会(東京).

吉川禄助、坂口翔一、宮沢孝幸 ニホンザルからの感染性フォーミーウイルスの分離と全塩基配列の決定(2013年8月31日) 第19回日本野生動物医学会 京都大会 (京都).
ニホンザルフォーミウイルスとニホンザルとの共進化の可能性

宮沢 孝幸 , 吉川 禄助, 下出 紗弓, 中岡 里江

ヒト以外の霊長類は独自のフォーミーウイルス(FV)を保有しており、種間レベルで宿主とFVは共進化してきたことがわかってきた。ニホンザルは我が国で独自に進化してきたマカク属のサルであり、北は下北半島から南は屋久島まで広範な地域に生息しており、地域ごとに特色のある集団を形成している。本研究は種間レベルではなく、集団レベルでFVと共進化しうるか調査した。京都嵐山生息2頭及び鳥取若桜生息2頭の末梢血単核球よりFVを分離し若桜由来の一頭のFVの全長配列を決定した。このFVの配列はアカゲザルのFV(R289HybAGM)と近縁であることがわかった。さらに、残り3頭のFVのポリメラーゼ領域の一部の配列を決定し、系統解析をした。その結果、同じ生息地由来のFVは同一クラスターを形成したが、嵐山由来と若桜由来のFVは異なるクラスターを形成した。このことから、ニホンザルは集団毎に独自のFVを保有していると考えられる。ニホンザルは約40万年前に大陸より日本に移動してきたとされているが、その後の日本国内でどのように移動したかについては詳細にはわかっていない。今回の結果から各集団のFVを比較することで、詳細な移動歴が解析できると考えられる。今後は、さらに検体数を増やし調査していきたい。


H25-B63
代:野口 和浩
ヒト膣炎のモデル動物作出のための霊長類の膣内細菌叢に関する研究
ヒト膣炎のモデル動物作出のための霊長類の膣内細菌叢に関する研究

野口 和浩

 ニホンザルの膣内細菌叢を明らかにするために、今回は管林キャンパスで維持されている9〜19歳の5頭(A群)とバイオリソースプロジェクトとして異なる施設で維持されている7〜19歳の5頭(B群)について検討を加えた。ニホンザルの膣内からは今回もこれまでとほぼ同様に5種類の通性嫌気性菌群(Enterobacteriaceae, Streptococci, Staphylococci, Corynebacterium, Lactobacilli)と3種類の嫌気性菌群(Bacteroidaceae, Gram-positive anaerobic cocci(GPAC)、Gram-positive anaerobic rods (GPAR))が検出されたが、A群とB群との個体間に若干の違いが認められた。すなわち、通性嫌気性菌であるEnterobacteriaceaeはA群からは全く検出されなかったが、B群では4/5例(80%)から検出され、しかも分離菌数も106.7(CFU/vagina)と高い値を示していた。また、StreptococciはA群およびB群ともに検出率は5/5例(100%)であったが、その分離菌数はA群が106.4(CFU/vagina)に対してB群が103.6(CFU/vagina)と、B群の値はA群よりも1/1000程度低値であった。一方、嫌気性菌群ではA群およびB群ともにBacteroidaceaeおよびGPACが優勢菌として存在しそれほど大きな違いがないことが確認された。以上の成績より、ニホンザルの膣内細菌叢の構成はその個体の由来や生育施設の環境の違いにより影響を受け異なることが示唆された。今後はさらにニホンザルの膣内細菌叢が月経周期間でどのように変化するのか、また膣内pHあるいは性ホルモンとの関係などを明らかにし、ヒトの膣内細菌叢との比較を行いたいと考えている。


H25-B64
代:齋藤 慈子
マーモセットにおける養育個体のオキシトシン濃度
マーモセットにおける養育個体のオキシトシン濃度

齋藤 慈子

 神経ペプチドであるオキシトシンは、げっ歯類の研究から、社会的認知・行動に関わっていることが知られているが、いまだ霊長類の社会行動とオキシトシンの関係についての研究は数が少ない。本研究は、家族で群を形成し協同繁殖をおこなう、コモンマーモセットを対象に、母親だけでなく父親の、母親妊娠時および養育時のオキシトシン濃度を調べることを目的とした。前年度、マーモセット型のオキシトシンを合成し、市販のオキシトシ測定用EIAキット(ヒト、マウス用)を用いて、マーモセット型のオキシトシンが測定可能であることを確認した。乳児回収テストにより測定された養育のモチベーションと尿中オキシトシン濃度との関係を調べたが、有意な相関はみられなかったため、本年度はケージ内での背負い行動の観察と採尿を行った。これまでのところ、サンプル数が十分ではないため、引き続きサンプル数を増やしていく予定である。


H25-B65
代:松原 幹
ヤクシマザルの糞中種子の二次散布者調査
H25-B66
代:小早川 令子
協:小早川 高
協:伊早坂 智子
協:松尾 朋彦
サルの匂いに対する先天的な恐怖反応の解析
サルの匂いに対する先天的な恐怖反応の解析

小早川 令子 , 小早川 高, 伊早坂 智子, 松尾 朋彦

恐怖臭はマウスに対して恐怖に関連した行動や生理応答や脳活動を誘発する一連の匂い分子として同定された。恐怖臭はラットやウサギに対しても忌避行動やすくみ行動を誘発した。また、恐怖臭はブタに対してはマウスと同様の心拍数や体深部温度の低下と、マウスと逆に鼻先の体表面温度の顕著な上昇を誘発した。アカゲザルでは一部の恐怖臭によって顔面の表面温度の弱い変化が誘発されたが、明確な応答は認められなかった。恐怖臭が動物種によって異なる応答を誘発するメカニズムを解明するために、恐怖臭に対して特異的に応答する受容体遺伝子を、全マウス嗅覚受容体発現スクリーニング系を構築し解析した。その結果、恐怖臭に特異的に応答する恐怖受容体ファミリーの候補を同定した。恐怖受容体ファミリーはマウス、ラット、ブタで9〜13種類存在した。その一方で、アカゲザルやカニクイザルでは2種類しか存在せず、マーモセットでは1種類も存在しなかった。興味深いことにヒトでは5種類存在した。今後、恐怖受容体ファミリーの機能をマウスで解明すると共に、各種生物の受容体と恐怖臭の結合活性を解析することで恐怖応答と嗅覚受容体遺伝子との関連を解明する。


H25-B67
代:三浦 智行
SIV/SHIV/HIV-1mtの非ヒト霊長類細胞における増殖能

論文
Fujita, Y., Otsuki, H., Watanabe, Y., Yasui, M., Kobayashi, T., Miura, T., and Igarashi, T.(2013) Generation of a replication-competent chimeric simian-human immunodeficiency virus carrying env from subtype C clinical isolate through intracellular homologous recombination. Virology 436:100-111.

学会発表
米田舞、大附寛幸、松下修三、五十嵐樹彦、三浦智行 新規CCR5指向性かつ中和抵抗性SHIV分子クローンの作製及び解析(2013年11月20-22日) 第27回日本エイズ学会学術集会(熊本).
SIV/SHIV/HIV-1mtの非ヒト霊長類細胞における増殖能

三浦 智行

霊長類研究所のアカゲザルの血液を提供して頂き、当研究室のP3実験室内で比重遠心法により単核細胞を分離する。そこから適切な培養方法を用いることにより、リンパ球やマクロファージの培養系にもってゆき、新規に作製したSIV/SHIV/HIV-1mt等の組換えウイルスを感染させる。感染後、培養上清中のウイルスRNA量、逆転写酵素活性、感染力価や感染細胞中のウイルス抗原、アポトーシスマーカーあるいは細胞の生存率等を調べることにより、アカゲザルにおける新規作製ウイルスの感染性、増殖能、細胞障害活性などの性状を明らかにする。それらの基礎情報をもとに、さらにゲノム改変を加えたり、種々の新規作製ウイルスの中からウイルス研究所のサル感染実験施設でウイルス接種実験を行うウイルスを決定する。また、感染実験を行ったサルからのウイルスの再分離や、そのin vitroでの性状解析も提供して頂く血液で行う。

以上の実験計画で研究を遂行する予定であったが、25年度は組換えウイルスの作製が予定通り進まなかったために血液供給実績はなかった。



H25-B68
代:橘 裕司
協:小林 正規
協:柳 哲雄
ニホンザルのアメーバ感染に関する疫学研究
ニホンザルのアメーバ感染に関する疫学研究

橘 裕司 , 小林 正規, 柳 哲雄

最近、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)と形態的には鑑別できない新種のアメーバ(E. nuttalli)がサル類から見つかっている。本研究の目的は、ニホンザルにおける腸管寄生アメーバの感染実態を明らかにすることである。今年度は、大分県高崎山において餌付けされている野生ニホンザルの糞便61検体を採取した。糞便からDNAを抽出し、赤痢アメーバ、E. dispar、E. nuttalli、E. chattoni、大腸アメーバ(E. coli)、E. moshkovskiiについて、PCR法による検出を試みた。その結果、E. chattoniが58検体(95%)、大腸アメーバが39検体(64%)において陽性であった。また、E. disparが1検体(1.6%)のみ陽性であったが、その他の3種のEntamoebaは検出されなかった。今回検出されたアメーバは、全て非病原性のアメーバであった。これまでの他地域における調査でも、E. chattoni感染は高率に認められ、赤痢アメーバは検出されていない。一方で、E. dispar、E. nuttalli、大腸アメーバの感染の有無については地域差があり、特にE. nuttalliは西日本にはあまり分布していないことが、今回の調査においても確認された。



H25-B69
代:姉帯 飛高
ニホンザルの仙骨神経叢とその周辺構造物の観察 -特に神経と動脈の位置関係に着目して-

学会発表
姉帯飛高、時田幸之輔、小島龍平 ニホンザルにおける上殿動脈と仙骨神経叢の位置関係(平成25年9月6〜9日) 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会(岡山理科大学).

姉帯飛高、時田幸之輔、小島龍平 ヒト及びニホンザルにおける上殿動脈と仙骨神経叢の位置関係(2013年10月19〜20日) 共同利用研究会(京都大学霊長類研究所).

姉帯飛高, 時田幸之輔, 小島龍平, 相澤幸夫, 影山幾男, 熊木克治 上殿動脈が仙骨神経叢を貫く位置の多様性(平成26年3月26~29日) 第119回日本解剖学会総会・全国学術集会(自治医科大学).
ニホンザルの仙骨神経叢とその周辺構造物の観察 -特に神経と動脈の位置関係に着目して-

姉帯 飛高

 ニホンザル5体10側を対象に, 上殿動脈(Gs)が仙骨神経叢を貫く位置と, 大腿神経(F), 閉鎖神経(O), 腰仙骨神経幹(Tr)に分岐する分岐神経(Nf; 仙骨神経叢上界)の起始分節の関係を調査した.
Gsの貫通位置はL7/L7間, S1/S1間が観察された.
1) L7/L7間(2側): Nf起始分節はL5(2側)であった. F, O, Trの3枝の相対的な太さの関係はTr>F>OでL5の仙骨神経叢への参加が多い例(1側), F>Tr>Oで神経叢への参加が中等量の例(1側)があった. 後者は前者に比べ神経叢構成分節が低い.
2) S1/S1間(8側): Nf起始分節はL5(2側), L5+L6(2側), L6(4側)であった. L5の例は3枝の太さがF>O>TrでL5の神経叢への参加が少なく, その構成分節は1)の例より低い(2側). L5+L6(2側), L6の例の神経叢構成分節はさらに低い.
 以上より, 仙骨神経叢構成分節が高いとGsの貫通位置も高く(L7/L7), 神経叢構成分節が低いとGsの貫通位置も低い(S1/S1). よって, 神経叢構成分節が頭尾側へズレるとGsの貫通位置も頭尾側へズレる傾向がある. 代表研究者はヒトのGsと仙骨神経叢の位置関係についても調査し同様の傾向を見出していることから, 霊長類に共通した形態形成的変異である可能性が示唆された.



H25-B70
代:C?cile Sarabian
Factors underlying mouth versus hand-feeding among Koshima macaques
Factors underlying mouth versus hand-feeding among Koshima macaques

Cecile Sarabian

Hygiene - behaviors that maintain cleanliness - is universal among humans but remains a concern in epidemiology. Parasites, which impact health and biological fitness, are ubiquitous in nature and thrive in unsanitary conditions. Therefore, hygiene can be interpreted as an adaptive strategy to avoid infection. To address the biological basis for hygiene in humans, I developed an observational and experimental approach to test whether Japanese macaques of Koshima island (Macaca fuscata fuscata) display patterns of behavior consistent with Parasite Avoidance Theory. First, “hygienic” behaviors (e.g. rubbing or washing food) were recorded during focal observations of adult females (N=20). Second, I conducted field-experiments (N=33 trials) with females (N=14) and males (N=3) in which wheat was placed near fresh feces and plastic feces (condition 1) or on both feces plus a control (a piece of plastic notebook; condition 2). Preliminary results suggest that the performance of hygiene behaviors is positively associated with parasite richness. Experimental results remain unclear, but most individuals rejected wheat placed on fresh and plastic feces and all of them ingested wheat placed near them or on the control substrate. I am continuing this work at Koshima for my Master’s internship at the University of Strasbourg. I expect these results to improve understanding of behavioral mechanisms of parasite avoidance and evolutionary origins of human hygiene.


H25-B71
代:Carolyn Wang
"Parasites of the primates at the Endangered Primate Rescue Center, Cuc Phuong, Vietnam"
"Parasites of the primates at the Endangered Primate Rescue Center, Cuc Phuong, Vietnam"

Carolyn Wang

From Feb 3-21st 2014 I examined fecal samples collected by Andrew MacIntosh and Mike Huffman from the Endangered Primate Rescue Center in Vietnam. The goal of this brief study was to detect the presence of helminth eggs, and identify them if possible, in sample from hatinh langurs (Trachypithecus hatinhensis), red-shanked douc langurs (Pygathrix nemaeus), gibbons (Nomascus sp.), and Delacour’s langurs (Trachypithecus delacouri). All samples were processed using (1) sedimentation via a formalin-ethyl-acetate procedure and (2) flotation via Sheather’s solution. Slides from the samples were then scanned using light microscopy. I was able to identify Trichuris sp. eggs in samples from all four primate species, and Strongylid and Strongyloides sp. in the P. namaeus samples. There were also a number of as yet unidentified specimens from all samples which were photographed for future identification.


H25-B72
代:Jan Gogarten
Does parasite removal affect fractal complexity in vervet (Chlorocebus pygerythrus) behavior?
Does parasite removal affect fractal complexity in vervet (Chlorocebus pygerythrus) behavior?

Jan Gogarten

During my 2014 Cooperative Research Program I had hoped analyze data collected from wild vervet monkeys, but that field season was cancelled. Instead, I spent most of my time at PRI analyzing a data set given to Dr. MacIntosh by Dr. Sarah Turner of McGill University who has worked extensively with the Japanese macaques at Awajishima. Our aim was to characterize the scaling in behavioral organization of normally-developed macaques versus macaques with congenital limb malformations. However, because of a number of methodological considerations, including short sequence lengths (30 minutes) and considerable out of sight time, it remains unclear whether these data lend themselves appropriately to fractal analysis. Still, they provided a valuable opportunity to discern limitations in this research field and practice programming of analyses for future projects assessing the impacts of disease on wild primate behavior. I hope to continue working with these data and produce results that can be published in the coming months. In addition, the methods and ideas generated while at the PRI will be applied to my dissertation research and allow me to analyze data collected in the Ivory Coast and Uganda to understand drivers of primate disease dynamics and health.


H25-B73
代:Yan Ropert-Coudert
協:Akiko Kato
Methods for bio-logging primates
Methods for bio-logging primates

Yan Ropert-Coudert , Akiko Kato

On 2nd August 2013, collars with iGotU? GPS devices and Axy-2? accelerometers were attached to two male Japanese macaques (id’s: N118, N128) from the outdoor-enclosed Group 7 at the Research Resource Station (RRS) of the Kyoto University Primate Research Institute (KUPRI). The macaques were baited into the holding pen, transferred into individual cages and anaesthetized by trained veterinary staff to minimize stress during collar attachment. Both males were monitored in their individual cages for signs of distress. Some attention was paid by each to the newly-added collars as the anaesthetic wore off, but neither reacted strongly to their presence. After ca. 3 hours, the animals were released into their outdoor enclosure. GPS devices collected data at 4-minute intervals for 9 and 12 days, respectively. Accelerometers only collected data (at 25Hz) for ca. 3 days due to water damage to the batteries caused by heavy rains. In addition, video data recordings were made of each male around the feeding grounds on 5 days post deployment to validate accelerometer readings. We are currently in the process of analyzing these data to inform future studies wishing to investigate primate behavior through high-resolution automatic data logging techniques.


H25-B74
代:Elodie Thomas
Parasite removal and physiological stress in Japanese macaques of Koshima?
Parasite removal and physiological stress in Japanese macaques of Koshima

Elodie Thomas

Nematodes are among the most prevalent intestinal parasites around the world. The scientific understanding of nematode parasitism is well documented but remains incomplete, especially concerning parasite life cycles in wildlife and impacts on host immune systems. Generally, studies consider that negative conditions of the host, e.g. stress, tend to promote infection. However, few studies tested the relationship in the opposite direction: that intensity of infection might increase host stress. Our study used an experimental approach to better understand host-parasite relations in wild conditions. To do this, we studied Koshima Japanese macaques (Macaca fuscata) because they are free-ranging yet can be experimentally manipulated. We examined 20 adult females in two groups: control and treated with anthelminthic medicines (Drontal Plus? and Stromectol?). We focused on four parasite species: Oesophagostomum aculeatum, Trichuris trichuria, Streptopharagus pigmentatus and Strongyloides fuelleborni. We used non-invasive methods to estimate the infection intensity, eggs per gram of feces (EPG) via microscopy and to evaluate the stress levels via ELISA analysis of fecal glucocorticoid metabolites. Our results show that anthelmintic treatment reduces parasite richness and intensity of 3/4 parasite species. However, there was no relationship between treatment and fecal glucocorticoids, indicating that factors other than parasite infection drive stress dynamics.


H25-B75
代:Guilhem VAISSIERE
Does parasite infection affect Japanese macaque behavior and body condition?
Does parasite infection affect Japanese macaque behavior and body condition?

Guilhem VAISSIERE

Nematodes are parasites found everywhere around the world on both domestic and wild animals and they are the cause of numerous deaths. The parasites of Japanese macaques over the archipelago are well known thanks to previous studies. A previous study on Koshima identified four of these nematodes on the islet monkeys: Oesophagostomum aculeatum, Strongyloides fuelleborni, Streptopharagus pigmentatus and Trichuris trichiura. This study was originally designed to measure effects of infection on macaques, but changed to examining the summer reinfection period instead, which should give clear indication of variation in health risks across individuals. From June 6th 2013 to August 16th 2013, I collected 97 fecal samples from 20 adult female macaques, 10 control and 10 treated by Dr. Andrew MacIntosh with common anthelmintics to remove parasites (last treatment before current study: May 2013). Linear mixed-effect models where used to test the efficiency of the treatment to reduce both prevalence and intensity of the infection. The same models were also use to assess the reinfection process during summer. Treatment was effective against most parasite species. However, variation in reinfection across macaques was unclear, possibly because of interactive effects between parasites which were observed in some cases. More data will be required to assess health risks of infection.


H25-B76
代:安波 道郎
マカク属霊長類における感染症抵抗性の多型と表現型解析
マカク属霊長類における感染症抵抗性の多型と表現型解析

安波 道郎

東南アジアのMacaca属分布域に重複してサルマラリアの流行が見られることから、ヒト民族集団のゲノム進化での熱帯熱マラリア原虫の影響に似て、Macaca属の種分化にともなうゲノム進化にサルマラリア感染が関与してきたと想像できる。実際、東南アジアに流行し、日本列島では見られないサルマラリア原虫Plasmodium coatneyiは、流行地に棲息するカニクイザルでは感染後に宿主の防御系の働きによって自然に排除されるのに対して、自然界では触れることのないニホンザルへの実験感染では例外なく重症化し、抗原虫療法をしなければ致死的な経過を取ることが知られている。前年度までに、獨協医大・川合覚博士と共同で実施したカニクイザルおよびニホンザル、各2個体のP. coatneyiの実験感染時の経時的採血から、血漿中サイトカイン応答の種間差を明らかにした(発表準備中)。今年度は霊長研にて維持されているニホンザルおよびアカゲザル個体群を対象とし、末梢血単核細胞分画を用いてマラリア由来の病原体関連分子パターン受容体とされるToll様受容体TLR9の核酸リガンドに対する反応性の種差・種内個体差を解析した。現在TLR9の核酸リガンドに誘導されるケモカイン遺伝子転写を説明する遺伝子多型を検索している。


H25-B77
代:日暮 泰男
ニホンザルの中手骨と中足骨に関する機能形態学的研究

学会発表
日暮泰男, 後藤遼佑, 熊倉博雄 ニホンザルにおける中手骨・中足骨の頑丈性と歩行時の手掌圧・足底圧分布との関係(平成25年11月3日) 第67回日本人類学会大会(茨城県つくば市).

日暮泰男, 後藤遼佑, 熊倉博雄 ニホンザルの中足骨の頑丈性(平成25年11月30日) 日本解剖学会第89回近畿支部学術集会(奈良県生駒市).
ニホンザルの中手骨と中足骨に関する機能形態学的研究

日暮 泰男

本研究の目的は、ニホンザルの中手骨および中足骨の形態と運動機能との関連を調べることであった。霊長類研究所に所蔵されている20個体分の骨標本について、レーザースキャナ(DAVID Laserscanner)を用いて三次元モデルを作成し、このモデルから骨幹中央部のtotal subperiosteal area (TA)を算出した。TAは、材料の断面強度の指標の一つである断面2次極モーメントと強い相関があることが知られている。第1〜5中手骨をTAの大きい順に並べると1>3>4>2>5であった。第1〜5中足骨をTAの大きい順に並べると1>3>2>4>5であった。TAと歩行時に中手骨および中足骨にかかる荷重の大きさとの関係を調べたところ、対応関係は部分的であった。この結果から、ニホンザルの中手骨と中足骨の形態は歩行よりもさらに大きな荷重のかかるロコモーション様式とも関係している可能性や、把握などのロコモーション以外の運動機能とも関連している可能性が示唆された。また、以上の研究で使用した骨標本の中の4個体分についてCT撮像をおこない、従前より知られているTAと断面2次極モーメントとの強い相関がニホンザルの中手骨と中足骨でも認められるのかどうかをたしかめた。


H25-B78
代:神取 秀樹
協:片山 耕大
協:大橋 知明
協:野中 祐貴
霊長類、視覚・味覚のGPCR型受容体の構造・機能相関解析

学会発表
大橋知明、片山耕大、岩城雅代、今井啓雄、神取秀樹 ヒト苦味受容体に対する全反射赤外分光解析(2013年6月19日) 新学術領域研究「運動マシナリー」第1回班会議(名古屋).

Kota Katayama, Daiki Kawata, Hiroo Imai, Akimori Wada, Hideki Kandori. FTIR study of mutants of primate color visual pigments(August 25-30th 2013) Seventh International Conference on Advanced Vibrational Spectroscopy(Kobe, Japan).

大橋知明、片山耕大、岩城雅代、今井啓雄、神取秀樹 全反射赤外分光法によるヒト苦味受容体の構造解析(2013年9月6日-9日) 第53回生物物理若手の会夏の学校(伊豆).

大橋知明、片山耕大、岩城雅代、今井啓雄、神取秀樹 ヒト苦味受容体の赤外分光解析(2013年9月21日) 第19回錯体化学若手の会中部・東海地区勉強会(岡崎).

片山耕大、古谷祐詞、今井啓雄、岩城雅代、神取秀樹 全反射赤外分光法によるサル緑感受性視物質のクロライドイオン結合機構解析(2013年9月24-27日) 第7回分子科学討論会(京都).

Kota Katayama, Daiki Kawata, Hiroo Imai, Akimori Wada, Hideki Kandori. FTIR study of mutants of primate color visual pigments(October 28-30th 2013) The 51st Annual Meeting of the Biophysical Society of Japan(Early Research in Biophysical Award)(Kyoto, Japan).

Tomoaki Ohashi, Kota Katayama, Masayo Iwaki, Kei Tsutsui, Hiroo Imai, Hideki Kandori ATR-FTIR study of human bitter taste receptor(October 28-30th 2013) The 51st Annual Meeting of the Biophysical Society of Japan(Kyoto, Japan).

片山耕大、川田大樹、今井啓雄、和田昭盛、神取秀樹 霊長類色覚視物質の変異体に対する赤外分光研究(2013年11月18-19日) 分子研研究会”ロドプシン研究の故きを温ねて新しきを知る”(岡崎).

Kota Katayama, Daiki Kawata, Hiroo Imai, Akimori Wada, Hideki Kandori. FTIR study of monkey green- and red-sensitive pigments(December 1-5th 2013) GPCR workshop 2013(Maui, Hawaii).

野中祐貴、片山耕大、筒井圭、今井啓雄、神取秀樹 霊長類青感受性視物質の赤外分光研究(2013年12月5-7日) 柔らかな分子系第2回全体合宿会議(長浜).
霊長類、視覚・味覚のGPCR型受容体の構造・機能相関解析

神取 秀樹 , 片山 耕大, 大橋 知明, 野中 祐貴

ヒトを含む霊長類の網膜に存在する3種類(赤・緑・青)の色覚視物質は試料調製が困難なため、構造生物学的解析は過去に例がなく、我々の色認識メカニズムは謎のままであった。そのような現状下、我々は6年前より、培養細胞を用いて発現させた霊長類色覚視物質に対する赤外分光測定による構造解析を開始した。すでに赤・緑視物質においては、構造解析に成功しており (2報の論文を発表)、平成25年度は残された青視物質の構造解析に挑戦した。青視物質の試料調製は赤・緑視物質よりもさらに困難と考えられており、当初は構造解析に向けた実験条件の確立に2, 3年程費やすことも覚悟していた。しかし発現量の増加を目的に取り組んだ霊長類の種の選択という新たな試みや、実験条件の最適化を進めることで、僅か1年足らずで分光測定に向けた青視物質の試料調製を実現することができただけでなく、昨年末にはすでに報告している赤・緑視物質と同程度の高精度なスペクトル測定を実現することができた。現在、出揃った3種類の色覚視物質の構造スペクトルを統合させた波長制御メカニズムの論文を作成する一方で、青視物質にのみ観測された特徴的な赤外振動バンドの帰属に向けて変異実験にも取り掛かっている。
 また、苦味受容体の赤外分光解析に向けた実験を行う過程において、単離させたタンパク質のGタンパク質活性化機能の有無の問題が挙がっていた。そこで今年度は、放射性同位体標識試料を用いた活性化機能測定系の確立に取り組み、高感度の測定系を立ち上げることに成功した。これによりいずれのタンパク質単離過程において機能が失活しているのか評価できるだけでなく、分光測定から得られる構造と機能との相関性についての議論も可能となった。色覚視物質と同様、着実に構造基盤に立脚した苦味物質の受容メカニズムの解明に向けて研究が進展しており、今後も視覚・味覚の構造解析の成果を世界に発信できる点を踏まえ、支援いただいている霊長研に改めて謝意を表したい。


H25-B79
代:千葉 敏雄
協:山下 良子
協:柿本 隆志
協:山下 紘正
サル胎仔肺低形成の子宮内回復−羊水過少による肺低形成モデル作成と成長因子解析
サル胎仔肺低形成の子宮内回復−羊水過少による肺低形成モデル作成と成長因子解析

千葉 敏雄 , 山下 良子, 柿本 隆志, 山下 紘正

H25年度は、サル胎仔肺低形成モデルの治療を想定し、妊娠サルの全身麻酔下にバルーンによる胎仔気管閉塞(胎仔内視鏡的)術を行なうため、これまでに行った実験で明らかになった課題を解決すべく、1) 内視鏡の誘導のためのソフトウェアの改良と、2) バルーンの新たな解除技術につき、研究を進めた。1) では、子宮内のターゲットである胎仔の口を、三次元超音波画像の直交三断面から直観的に指定できるようにユーザインタフェースの改良を行った。また、内視鏡先端から見たターゲットまでの距離と方向を、術者がモニタを見て理解しやすいよう、表示方法を改良した。2) では、従来の気管を閉塞したバルーンを再度母体経腹的に挿入した内視鏡画像を確認しながら割るという手術が必要であったが、これを母体外から非観血的に集束超音波をバルーンに照射することで瞬間的に割って解除する、という新しい術式の開発を進めた。
 なお今年度はソフトウェアおよび超音波装置の開発の進捗と、サルの妊娠週齢のタイミングがうまく合わず、妊娠サルを用いて行う実験の機会が得られなかった。今後は羊水中でも鮮明な内視鏡画像が得られる手法も取り入れ、より安全性の高い手術操作が行えるよう改良を加えていく。


H25-B80
代:川合 伸幸
サルの表情伝染に関する研究
サルの表情伝染に関する研究

川合 伸幸

他者がある行動をしたときに、それを観察しているヒトはつい同じような行動をする。これは「行動伝染」といわれ、ヒトでは頻繁に観察される。ヒト以外の動物でも、チンパンジーや、イヌは、同種あるいは異種(ヒトから)間で「あくび」が伝染するとの報告があるが、「あくび」以外の行動伝染が動物で見られるかは不明である。
「あくび」の伝染は、視覚的にはっきりと観察できるが、ヒト以外の動物で「あくび」以外の行動伝染が観察されないのは、潜在的に伝染する行動が顕在化していないだけなのかもしれない。
ヒトでは、「あくび」以外にも「表情」の伝染が知られているが、それらは行動として観察可能なほど顕著でない場合も多く、一般的に筋電で計測されている。ということは、これまでにサルの表情伝染の報告がなくても筋電のレベルで表情が伝染している可能性が考えられる。そのことを検討するために、サルをモンキーチェアに固定し、さまざまな視聴覚刺激をサルに呈示し、行動分析を通じ表情伝染が生じるかを検討した。
その結果、サルの表情動画を見せたときにさまざまな行動が観察されたが、体動などの大きな筋電も重畳し、明確な結果は得られなかった。今後、独立成分分析(ICA)などを用い、体動のフィルターとして除去するなどの解析を行い、動画に対応した表情(の筋肉)が活動しているかを検討する。


H25-B81
代:渡我部 昭哉
協:高司 雅史
協:尾上 浩隆
協:横山 ちひろ
遺伝子ノックダウンマーモセットの行動解析
遺伝子ノックダウンマーモセットの行動解析

渡我部 昭哉 , 高司 雅史, 尾上 浩隆, 横山 ちひろ

私たちは、霊長類における遺伝子ノックダウン実験系の確立を目指している。この研究提案では、霊長類モデルとして新世界ザルであるコモンマーモセットを用い、shRNA (short hairpin RNA)を搭載したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を脳内に注入することで、遺伝子発現を抑制し、認知行動がどのような影響を受けるかを解析した。
  コモンマーモセットのAAV注入は、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター(CLST)で行い、PET撮像によって目的遺伝子の発現抑制を確認した。理化学研究所におけるAAV注入の前後に、霊長類研究所において認知実験を行い、遺伝子ノックダウンが認知行動に及ぼす影響を同一個体で比較した。認知実験には、中村教授の開発したタッチパネル方式の行動実験装置を用いた図形弁別課題及び、逆転学習課題を中心に行った。2013年度の本研究課題において、計4頭のPETデータと行動実験データを得ることができた。またこれらの個体についてはc-fosマッピングを行い、遺伝子発現抑制が脳活動に及ぼす影響についてより詳細なデータを集めることができた。これらのデータは論文として公表予定である。


H25-C1
代:柏木 健司
分:横畑 泰志
豪雪地域のニホンザルによる洞窟利用のモニタリング

論文
柏木健司・矢野 航(2014(印刷中)) 黒部峡谷鐘釣地域のハクビシン 富山の生物(53). 謝辞あり

学会発表
柏木健司 黒部峡谷の鐘釣鍾乳洞群−地面の下からアプローチする地球科学−.(2013年12月6日) 第三回立山研究会2013(富山大学理学部多目的ホール).

柏木健司 黒部峡谷の鐘釣鍾乳洞群におけるハクビシンの確認(2013年12月1日日曜日) 平成 25年度富山県生物学会研究発表会(富山市科学博物館、富山市).

柏木健司・高井正成・矢野 航・辻 大和 ニホンザルの洞窟利用の検証(2013年9月6日〜9日) 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度 合同大会(岡山理科大学).

柏木健司 黒部峡谷の鍾乳洞とニホンザルの生態(2013年6月6日) 平成25年度南砺市民大学 人と自然・環境(富山県南砺市).

柏木健司 鐘釣鍾乳洞のすべて(2013年4月25日) 宇奈月の歴史と文化を楽しむ会 講演会(富山県黒部市宇奈月).
豪雪地域のニホンザルによる洞窟利用のモニタリング

柏木 健司

 富山県東部の黒部峡谷鐘釣地域において、豪雪を伴う厳冬期におけるニホンザルの洞窟利用について調査を行った。既にこれまでの調査で同地域のサル穴と呼ばれる鍾乳洞中に、厳冬期に排泄したと思われるサルの糞を観察している。本研究課題では、豪雪故に直接観察の困難な鐘釣地域において、自動センサーカメラを用いて厳冬期のニホンザルの洞窟利用の実態解明を目指して研究を進めている。
 2013年8月中旬から12月初旬にかけて、サル穴とホッタ洞と呼ばれる二つの鍾乳洞の洞口と洞内にカメラを設置し、洞窟環境における動作確認を進めた。その結果、洞口に設置したカメラにおいて、ニホンザルをはじめとしてハクビシンやげっ歯類などが洞窟内に侵入したことを確認した。さらに、11月中旬の降雪を伴う急激な気温低下時に、ホッタ洞洞口付近の洞内で数頭のニホンザルによるサル団子が形成されていることを確認した。また、外来種のハクビシンの鐘釣地域への侵入を論文として報告した(柏木・矢野、2014)。12月初旬以降、サル穴洞口と洞内の計2箇所にカメラを設置しており、その結果は入山可能な2014年4月末以降に判明する。
柏木健司・矢野 航,2014(印刷中),黒部峡谷鐘釣地域のハクビシン.富山の生物,no. 53.


2013年11月11日13時40分、ホッタ洞の洞口付近の洞内で確認された、数頭のニホンザルにより作られたサル団子。


H25-C2
代:近江 俊徳
分:石井 奈穂美
協:浅川 満彦
協:羽山 伸一
協:中西 せつ子
協:名切 幸枝
北限のサルにおける保全医学的研究

論文

学会発表
羽山伸一, 落合和彦, 名切幸枝, 中西せつ子, 石井奈穂美, 加藤卓也, 今野文治, 近江俊徳, 土田修一, 川本芳 福島市に生息する野生ニホンザルの筋肉中放射性セシウム濃度と造血機能との関係(2013年8月30日) 第19回日本野生動物医学会(京都).

北限のサルにおける保全医学的研究

近江 俊徳 , 浅川 満彦, 羽山 伸一, 中西 せつ子, 名切 幸枝

世界最北限に生息する野生霊長類である青森県下北半島のニホンザル(北限のサル)は、1970年に国の天然記念物に指定され、また1991年の環境省版レッドリストでは「保護に留意すべき地域個体群」として記載された貴重な生物である。その一方で、個体数の回復とともに農作物被害や人家侵入被害などが多発しており、現在個体数調整(青森県第3次特定鳥獣保護管理計画)のため捕殺が行われている。本研究では、行政と連携し北限のサルの個体群管理に役立つ保全医学的なデーターを蓄積するため、2013年4月〜11月の時点で57検体の標本を収集した。また、前年度までの検体も含めゲノムDNAよりY-STR 3座位(n=55〜67)の遺伝子型を解析(図)し、既法の福島のニホンザル(福島のサル)集団に比べ遺伝的多様性が低い座位や新規に見出されたアレルを保有する座位、遺伝子構成の地域間差異(傾向)が示された。31例の血液性状の解析では、解析可能個体において、白血球数146.3×102/μL±52.6×102(若齢個体n=11)、134.3×102/μL±59.4×102(成体n=14)。赤血球数533.5×104/μL±91.9×104(若齢個体n=11)、510.7×104/μL±134.1×104(成体n=17)の結果を得た。今後、解析例数を増やしさらにデーターを精査する予定である。


図. 北限(当研究)および福島のサル間でのY-STRアレル頻度の比較 


H25-C3
代:浅川 満彦
分:萩原 克郎
分:村松 康和
分:岡本 実
協:渡辺 洋子
協:三觜 慶
下北半島に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生虫症および感染症に関する疫学調査

学会発表
三觜 慶,石井奈穂美,名切幸枝,羽山伸一,岡本宗裕,浅川満彦 福島県に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生蠕虫保有状況(9月17-19日) 第20回日本野生動物医学会つくば大会(国立環境研究所).
下北半島に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生虫症および感染症に関する疫学調査

浅川 満彦 , 渡辺 洋子, 三觜 慶

青森県下北半島に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の内部寄生蠕虫相を調査し、寄生蠕虫数と地域や年齢等との関連性を分析した。材料は2012年夏〜2013年夏まで,下北半島にて捕獲されたニホンザル計100頭(大間町(以下略称:SO)9頭,風間浦村(SK)9頭,佐井村(SS)41頭,むつ市(SM)41頭)の冷凍消化管を用いた。
1頭を除き,ほぼ全頭に寄生蠕虫類が検出された(寄生率99.0%)。蠕虫種とそれぞれの寄生率(%)は以下のようなものであった;吸虫Ogmocotyle ailuri(88.0%),糞線虫 Strongyloides fuelleborni(49.0%),鞭虫 Trichuris trichiura(94.0%)。
吸虫の寄生率についてはSK群とSM群,SK群とSS群の母代表値に有意差があったが,線虫2種は地域間の有意差は見られなかった。年齢と寄生率に関しては有意差が認められなかったが,各年齢における虫体寄生数については,吸虫で0〜1歳群と7歳〜群間,糞線虫で0〜1歳群と7歳〜群間の母代表値,鞭虫で0〜1歳群と2歳群,0〜1歳群と7歳〜群間で母代表値にそれぞれ有意差が認められた。宿主の性別と寄生率・寄生数とも関連性は見いだせなかった。各蠕虫種間の存否については,吸虫と鞭虫の寄生率にある程度の傾向性を示すも,有意差は無く,それ以外の組み合わせでは何らの関連性は見出されなかった。


H25-C4
代:棒 洋二郎
分:盥晶 昇
協:永野 昌志
協:姜 成植
協:南 晶子
協:正木 智之
協:簑原 悠太朗
分:伊藤 真輝
分:菅原 里沙
分:小林 真也
ニホンザルの月経周期における卵巣動態の解明と人工授精技術の開発

学会発表
盥晶Ь此棒醉瞭麩此永野昌志、金子明久、今井啓雄、岡本宗裕、下鶴倫人、坪田敏男 尿道カテーテル法を応用したニホンザルの精液採取(2013年8月29日〜9月1日) 第19回日本野生動物医学会大会(京都).
ニホンザルの月経周期における卵巣動態の解明と人工授精技術の開発

柳川 洋二郎 , 永野 昌志, 姜 成植, 南 晶子, 正木 智之, 簑原 悠太朗

ニホンザルでは凍結精子を用いた人工授精(AI)による妊娠例は無く、産子獲得には効率的な精子採取・凍結法の開発とともに、人工授精適期を判定するために雌の排卵時期について詳細に検討する必要がある。
4頭の雌を用いて1〜3日おきに超音波により卵巣の観察を行った結果、月経12日目まで観察された卵胞は直径が5〜10mmに達し (n=4)、13〜15日目までに自然排卵した。また性腺刺激ホルモン放出ホルモンを月経9〜12日目(卵胞直径5 mm以上)に投与すると、翌日には全ての個体で排卵が起こった(n=3)。採精は雄4頭に実施し、2頭において電気射精後のカテーテル挿入により液状精液が採取できた。凍結融解後の高活力精子割合は市販のブタ用、ヒト用保存液を用いた場合より(それぞれ1.1%、12.2%)、Tes-Tris Egg-yolk (TTE)液の方が高かった(21.7%)。しかし、融解3時間後の高活力精子の割合は5.9%まで低下した。TTEで凍結した精液の子宮頚管内注入によるAIをのべ3回実施したが妊娠しなかった。
精液の子宮内投与法の開発と融解後の精子の生存性が維持される凍結法のさらなる検討が必要である。


H25-D1
代:伊沢 紘生
協:中川 尚史
協:藤田 志歩
協:風張 喜子
協:川添 達朗
協:宇野 壮春
協:関 健太郎
協:三木 清雅
金華山島に生息する野生ニホンザルの個体数調査
金華山島に生息する野生ニホンザルの個体数調査

伊沢 紘生 , 中川 尚史, 藤田 志歩, 風張 喜子, 川添 達朗, 宇野 壮春, 関 健太郎, 三木 清雅

 2013年の秋・11月後半に、2013年度の個体数に関する一斉調査を島に生息する6群とオスグループ、ハナレザルを対象に実施した。結果は239頭で、前年冬の一斉調査(2013年3月下旬に実施)では240頭だったので、ほとんど変化がなかった。例年だともう一度、3月下旬にも一斉調査を実施しており、本年度もその計画を立てたのだが、連日の悪天候で海が荒れ、島に渡る船が欠航続きゆえに、予定した研究者を投入しての一斉調査はできなかった。ただ、6群中5群については個体数を調べる事ができ、秋の一斉調査時以降、アカンボウを含めて消失個体がほとんどいなかったので、島のサルの総個体数も変化がなかったものと思われる。その理由は、昨年(2013年)3月下旬からブナの花が咲き始め、ブナの開花は5月上旬まで続いたこと、ブナの実が大豊作でサルは9月上旬から食べ始め、本年(2014年)3月末時点でもなおブナの落果を食べ続けていたことで、サルの栄養状態が一年を通して良好だったためと考えられる。なお、3月下旬の一斉調査(2013年度)の補足調査は4月上旬に実施する予定である。
 また、昨年5月と6月に群れごとの出産数の調査を実施した。その結果は僅か4頭と、きわめて少なかった。それは、昨年度(2012年度)は一年を通してサルの食物事情が悪く(ブナ、ケヤキ、シデ、ナラ、クリ等がすべて不作)、秋には、例年だと冬に食べる樹皮や磯の食物(海藻や貝)をすでに食べていたことの影響と考えられる。
 ところで、上記2014年3月の一斉調査時に、アカンボウの出産が始まっていた。2014年3月26日の時点で13頭生まれ、その後も続々と生まれている。これまでの継続調査では、3月下旬の一斉調査時において、出産が確認されることはめったになく、この異常に早い、しかも大量の出産は、本年度(2013年度)を通して、ブナの花とブナの実を中心に、昨年度(2012年度)とは打って変わって、サルの食物事情が大変良好であったことの反映であることは間違いない。5歳半のメスも発情し交尾していたことから、おそらくこの春(2014年度)の出産数は記録的な数にのぼる事が予測される。1982年に調査を開始してからこれまでに3回(1984、1993、2005年)、ブナの実の大豊作があったが、今春の出産数が確定してから、それからの年と比較検討する予定である。
 東日本大震災の影響で食物の点で一番心配されたのは、1m近く地盤が沈下したことによる海藻類の成育状況であるが、今年は大震災後三度目のシーズンを迎えて、ワカメを中心に端境期にサルの好む浪打際の海藻類がほぼ旧に復したことで、問題は解消された。実際には、きわめて珍しいことだが、ブナの実の大豊作によって一年を通してサルが磯を利用することはほとんどなかった。


H25-D2
代:羽山 伸一
協:石井 奈穂美
協:名切 幸枝
協:加藤 卓也
協:中西 せつ子
協:近江 俊徳
福島市に生息する野生ニホンザルの放射能被曝影響調査

論文
山田文雄1, 3,竹ノ下祐二2, 4,仲谷 淳5,河村正二2, 6,大井 徹1, 2, 3, 7,大槻晃太8,今野文治9,羽山伸一10,堀野眞一111日本哺乳類学会哺乳類保護管理専門委員会 2日本霊長類学会保全・福祉委員会 3森林総合研究所  4中部学院大学 5中央農業総合研究センター 6東京大学大学院新領域創成科学研究科 7東京大学大学院農学生命科学研究科 8福島ニホンザルの会 9新ふくしま農業協同組合 10日本獣医生命科学大学 11森林総合研究所東北支所 (2013年) 福島原発事故後の放射能影響を受ける野生哺乳類のモニタリングと管理問題に対する提言 哺乳類科学 53(2):373-386. 謝辞あり

学会発表
○羽山伸一1, 落合和彦4, 名切幸枝1, 中西せつ子2, 石井奈穂美1, 加藤卓也1, 今野文治3, 近江俊徳4, 土田修一5, 川本芳6(1日獣大・野生動物, 2NPO法人どうぶつたちの病院, 3JA新ふくしま, 4日獣大・獣医保健・基礎, 5日獣大・比較細胞生物, 6 京大・霊長研) 福島市に生息する野生ニホンザルの筋肉中放射性セシウム濃度と造血機能との関係(2013年9月) 日本野生動物医学会(京都大学).
福島市に生息する野生ニホンザルの放射能被曝影響調査

羽山 伸一 , 石井 奈穂美, 名切 幸枝, 加藤 卓也, 中西 せつ子, 近江 俊徳

[目的]2011年3月に発生した東日本大震災による福島第1原子力発電所の爆発により、福島県に生息するニホンザル(以下,サル)が放射性物質に被ばくした。そこで, 福島市のサルを対象として、被ばくによる健康影響を明らかにすることを目的として、今年度は胎仔の成長への影響を検討するための画像診断方法の検討を行った。また、今年度も採取した個体のセシウム測定、臓器及び遺伝子等の標本保存を行った。
[材料・方法]本研究に用いたサルは、鳥獣保護法に基づき実施された個体数調整により福島市内で捕獲され、殺処分された個体である。今年度は111頭を回収し、解剖した。胎仔は2008年から現在までに回収され、ホルマリン固定されていた個体90頭を対象とし、MRIおよびCTによる断層撮影を試みた。
[結果と考察] 筋肉中セシウム濃度は、1,000Bq/kg 前後を推移したが、越冬期に濃度が上昇する現象は、2013年度にも確認された。MRIおよびCTによる胎仔の断層撮影では、いずれも鮮明な画像が得られ、脳容積や長骨の長さ等が計測可能であると判断された。装置の取り扱いや画像の解析などを考慮すると、実験動物用小型CT装置を用いるのが最も適当と考えられ、次年度に新たな標本を加えながら計測を行う予定である。


H25-E1
代:村山 美穂
類人猿の神経伝達関連遺伝子の多様性解析
類人猿の神経伝達関連遺伝子の多様性解析

村山 美穂

本研究では、ヒトで報告されている性格に関与する遺伝子の相同領域を類人猿で解析し、種間の塩基配列比較や、個体の性格評定との関連解析を行って、飼育や繁殖に活用する情報を得ることを目指している。関連性の解析には多数の試料が必要なため、GAINを通じて飼育類人猿の試料提供を依頼し、比較可能なデータの蓄積を目指している。25年度は、以前にGAINより提供を受けたニシローランドゴリラを含む動物園飼育の14個体、およびガボンの野生8個体の性格評定値と遺伝子型の関連を解析した。ヒトの性格、特に不安や攻撃性との関与が報告されている神経伝達およびホルモン伝達関連の遺伝子(バソプレシン受容体、モノアミンオキシダーゼA、モノアミンオキシダーゼB、セロトニントランスポーター、アンドロゲン受容体)の型判定を行った。22個体の評定結果にもとづき、54項目はDominance、Dependence、Neuroticism、Openness、Vigilanceの5特性に分類された。飼育個体で、モノアミンオキシダーゼの遺伝子型とOpennessおよびDominanceに弱い関連が見られた。今後は個体数、候補遺伝子数を増やし、性格の客観的な評定のためのストレスホルモン測定も行い、性格のマーカーとなる遺伝子を探索する予定である。


H25-E2
代:尾崎 紀夫
協:Aleksic Branko
協:久島 周
ニホンザルを対象とした高解像度CNVスクリーニング解析
ニホンザルを対象とした高解像度CNVスクリーニング解析

尾崎 紀夫 , Aleksic Branko, 久島 周

近年、自閉症スペクトラム障害、統合失調症を含む精神疾患の発症に強い影響を及ぼす稀なゲノムコピー数変異(copy number variant; CNV)が多数同定されている。本研究では、妥当性の高い精神疾患の霊長類モデルを見つけ出すことを企図して、平成24年度に引き続き、ニホンザルを対象とした全ゲノムCNV解析を実施した。
ニホンザル379頭を対象にarray CGH (comparative genomic hybridization)で高解像度のCNV解析を行った。その結果、数10kbp程度の小規模CNVから数Mbの大規模CNVを含む多様なCNVを同定した。その中には神経発達に関連する遺伝子に機能的影響を与えるものが含まれていた。例として、NGF欠失、BDNF重複、14番染色体の4Mb以上の重複を同定した。この他、ヒト22q11.23の相同領域で重複を見出した。この領域はヒトで発達障害・統合失調症との関連が示唆されている。
これらCNVを有する個体は精神疾患の霊長類モデルとなる可能性があり、表現型を含めた詳細な検討を行う予定である。


H25-E3
代:杉田 昌彦
協:森田 大輔
脂質を標的としたサル免疫システムの解明
脂質を標的としたサル免疫システムの解明

杉田 昌彦 , 森田 大輔

 本研究グループは、アカゲザルにおいて、サル免疫不全ウイルス由来のリポペプチドを特異的に認識するT細胞の存在を明らかにしてきた。しかしこの免疫応答の分子機序は不明である。そこでアカゲザル末梢血単核球に反応するモノクローナル抗体を多数作製し、そのなかからリポペプチド特異的T細胞株の抗原認識を阻害する2種の抗体を選択した。得られた阻害抗体の生化学的解析から、それらはアカゲザルMHCクラス1分子様のタンパク質を認識する可能性が高まった。そこでアカゲザル末梢血より種々のMHCクラス1あるいはMHCクラス1関連遺伝子を単離し、トランスフェクションによりこれらの遺伝子群を発現した細胞を準備した。この細胞を用いたフローサイトメトリー解析から、阻害抗体のひとつは、古典的MHCクラス1遺伝子産物や非古典的MHCクラス1遺伝子産物に対して反応性を示すことがわかった。またもうひとつの阻害抗体は、リコンビナントタンパク質を用いたELISAの実験から、MHCクラス1重鎖と非共有的に結合するベータ2ミクログロブリンを特異的に認識することが判明した。以上の結果から、リポペプチド抗原提示分子はMHCクラス1様の分子であると結論付け、その同定に向け遺伝子ライブラリーの構築を完了した。


H25-E4
代:Molly Przeworski
協:Wynn Meyer
協:Hayakawa Sachiko
協:Sidi Zhang
The genetic basis of blue eyes in primates
The genetic basis of blue eyes in primates

Molly Przeworski , Wynn Meyer, Hayakawa Sachiko , Sidi Zhang

How many distinct molecular paths lead to the same phenotype? One approach to this question has been to examine the genetic basis of convergent traits, which likely evolved repeatedly under a shared selective pressure. We investigated the convergent phenotype of blue iris pigmentation, which has arisen independently in four primate lineages: humans, blue-eyed black lemurs, Japanese macaques, and spider monkeys. Characterizing the phenotype across these species, we found that the variation within the blue-eyed subsets of each species occupies strongly overlapping regions of CIE L*a*b* color space. Yet whereas Japanese macaques and humans display continuous variation, the phenotypes of blue-eyed black lemurs and their sister species (whose irises are brown) occupy more clustered subspaces. Variation in an enhancer of OCA2 is primarily responsible for the phenotypic difference between humans with blue and brown irises. In the orthologous region, we found no variant that distinguishes the two lemur species or associates with quantitative phenotypic variation in Japanese macaques. Given the high similarity between the blue iris phenotypes in these species and that in humans, this finding implies that evolution has used different molecular paths to reach the same end.


H25-E5
代:清水 大輔
協:海部 陽介
霊長類に変形性斜頭は見られるか?
霊長類に変形性斜頭は見られるか?

清水 大輔 , 海部 陽介

ヒトはその脳サイズから予測されるよりも10ヶ月早く、未熟な状態の赤ん坊を産む。これは生理的早産と呼ばれる現象で、ヒトにおける脳進化と直接関連する重要なイベントである。われわれは生後に生じる変形性斜頭(赤ん坊の柔らかい頭骨が外圧で歪む現象、DPと略す)はヒト特有で二次的晩成の進化とともに出現したという仮説たて研究を進めている。仮説が正しければ、変形のある人類の頭骨化石を探すことにより、生理的早産の進化を直接示すことができる。本課題では、この新しい仮説を検証するために、以下の2点の2つの予測に関するデータ収集を主目的として課題を遂行した。1)ヒト以外の霊長類に後天的なDPは存在しない。2)ヒト以外の霊長類では出生時の頭骨の成長がヒトよりも進んでいる。これらが妥当であれば、仮説は条件付きで支持される。日本モンキーセンターに所蔵されているチンパンジーとオランウータンの胎児および新生児の全身液浸標本計6標本を霊長類研究所所蔵のCTで撮像した。その結果、チンパンジーとオランウータンの新生児ではDPは観察されなかった。


写真はチンパンジーの新生児液浸標本(Pr3960)の正中断面像。


H25-E6
代:颯田 葉子
協:川嶋 彩夏
霊長類皮膚発現遺伝子の進化遺伝学的解析
霊長類皮膚発現遺伝子の進化遺伝学的解析

颯田 葉子 , 川嶋 彩夏

ヒトと霊長類の形態的な違いの一つとして、皮膚の構造がある。体毛の有無を含めて、汗腺や、皮下脂肪の量、温度感覚受容体、免疫系、水分調節など、さまざまな形質に関わる分子の分布がヒトと他の霊長類の間では異なることが予想される。そこで、皮膚でのこれらの形質に関わる遺伝子の発現量をヒトと霊長類で比較し、ヒトの形態・生理学的な特性の獲得に関連する遺伝的基盤を明らかにする。これまで、共同研究で提供いただいた、アカゲザル複数個体の皮膚についてRNAを抽出してマイクロアレイ解析による発現量の定量比較を行ってきた。この結果をチンパンジーの例と比較したところ、ヒトと他の霊長類(アカゲザルとチンパンジー)の間では、ケラチン及びケラチン関連タンパク質の発現が大きく異なることが明らかになった。提供いただいた各種霊長類(チンパンジー、ゴリラ、オラウータン)の皮膚組織からRNAおよびDNAを抽出した。現在は、これらのサンプルでのケラチン及びケラチン関連タンパク質のRNA発現量を定量化するためのRT−PCR用primerの設計を行っている段階である。また、その他にも、皮膚で発現する水チャネルAQP(アクアポリン)のゲノム配列決定も進めている。


H25-E7
代:川嶋 彩夏
協:颯田 葉子
苦味受容機構と解毒機構の共進化
H25-E9
代:保坂 和彦
野生チンパンジーのアルファ雄の肉分配に関する研究
野生チンパンジーのアルファ雄の肉分配に関する研究

保坂 和彦

昨年度に引き続き、マハレ山塊M集団のチンパンジーの長期資料を整理し、アルファ雄の行動や肉分配に関するデータベース作成を進めた。1991年以降のべ8頭のアルファ雄が在位したが、アルファ雄が肉分配の役割を担うという傾向に変化はない。この役割はアルファ雄自身が主導して奪取するものなのか、それとも、周囲個体の(肉の所有に対する)抑制あるいは委託によるものなのか。この問いに答えるため、(1)アルファ雄の政治的利益、(2)分配者―被分配者の互恵性に基づく協力行動、(3)被分配者による分配者の社会的操作、という3つの仮説に照らして検証するための資料整理を行っている。過去20年あまり複数の野生チンパンジー調査地で進んだ肉分配の研究は、これらの仮説を対立的に捉え、一つの要因のみを主張しようとするきらいがあった。しかし、Silk et al.(2013)が飼育下のチンパンジー対象の実験で示したように、チンパンジーはこれらすべての動機を追究しており、個体や状況によって重点の置き方が異なるだけであるのかもしれない。このような柔軟な発想に基づく分析を可能にするため、とくに社会行動と肉分配との関係を明らかにする資料整理と分析を今度の課題としていきたい。


H25-E10
代:鈴木 良雄
協:鯉渕 絵里
協:五十嵐 庸
協:長岡 功
協:横山 和仁
協:松川 岳久
協:櫻庭 景植
協:門屋 遥香
協:広沢 正孝
協:川田 裕次郎
生活習慣とAMY1遺伝子多型との関連
生活習慣とAMY1遺伝子多型との関連

鈴木 良雄 , 鯉渕 絵里, 五十嵐 庸, 長岡 功, 横山 和仁, 松川 岳久, 櫻庭 景植, 門屋 遥香, 広沢 正孝, 川田 裕次郎

近年、朝食欠食率の増加が問題視されているが、低年齢の児童では、朝から無理なく朝食を摂取する児童もいるが、時間をかけても、なかなか摂取してくれない児童もいる。ところで唾液アミラーゼ活性は出生時には発現しておらず、成長に伴い思春期までに発現するとされている。また唾液アミラーゼ遺伝子(AMY1)にはコピー数多型もある。このAMY1のコピー数多型が、成長期の唾液アミラーゼ活性に影響し、その結果、朝食摂取における個人差が生じている可能性を検討している。
そこで、2013年1月に長野市内の保育園(4か所)の園児(4〜6歳児:290名)を対象に、唾液・DNAの採取を行い、男子131名、女子119名より唾液を採取した。得られた250検体では園児の日齢と唾液アミラーゼ活性との相関係数は男子r=-0.003、女子r=0.009であり、まったく関係は認められなかった。現在、DNAについてAMY1コピー数の解析を行っている。
また、2014年には長野市内の小学生を対象に唾液・DNAの採取を行い、953検体の唾液・DNAを回収した。現在、この解析も進めている。


H25-E12
代:清水 慶子
協:石黒 龍司
類人猿の生殖関連ホルモン動態? 野外におけるサンプル採取保存法の開発
類人猿の生殖関連ホルモン動態-野外におけるサンプル採取法の開発

清水 慶子 , 石黒 龍司

霊長類を含む様々な動物を対象として、糞や尿を用いた内分泌動態モニタリングがおこなわれているが、これらの殆どはヒト用の抗体やキットを用いて行われているのが現状である。しかし、近縁関係においても生殖関連ホルモンの分泌機構に違いが認められ、それゆえ、ヒトでの測定系がそのまま類人猿やマカクでの測定に応用可能か否かは不明である。我々はこれまでに独自の生殖関連ホルモン測定法を開発し、それにより類人猿やマカクの血液、尿、糞、唾液中の性ステロイドホルモンや血中、尿中性腺刺激ホルモンの測定が可能となった。しかし、測定系は確立しても、野生の霊長類ではこれらの測定のための糞や尿を採取した後の保存が困難であることが多く、結果を得ることが難しい。これらのことから、本研究では詳細なホルモン測定をおこなうために、保存設備のない場合における野生霊長類のサンプル採取、保存法の開発を行った。対応者が現地で採取した野生霊長類の糞または尿を用い、濾紙、乾燥剤を用いたサンプル保存法を確立した。ついでこれらのサンプルを用いて繁殖状態の推定、性成熟度、老化の程度を推定するための性ステロイドホルモン、性腺刺激ホルモン、副腎由来のステロイドホルモン等を測定し、至適保存条件、抽出条件さらに抗体濃度の決定をおこなった。


H25-E13
代:今村 公紀
協:矢野 真人
協:岡野 ジェイムス 洋尚
協:西原 浩司
チンパンジーiPS細胞の樹立と神経・生殖細胞への分化誘導
チンパンジーiPS細胞の樹立と神経・生殖細胞への分化誘導

今村 公紀 , 矢野 真人, 岡野 ジェイムス 洋尚, 西原 浩司

昨年度の共同利用・共同研究を通して樹立したiPS細胞に対して、基本的な細胞特性の詳細解析を実施した。まず、RT-PCRによって多能性マーカー遺伝子の発現解析を行ったところ、チンパンジーiPS細胞ではナイーブ状態とプライム状態の双方のマーカー遺伝子が発現しており、また株間で発現パターンに違いが認められることが判明した。さらに、染色体解析の結果から、新生児由来iPS細胞のうちNE2株は正常な核型(48本)を有している一方、NE1株は異常な核型(50本)を示すことが明らかとなった。分化多能性の検証としては、NOD/scidマウス精巣への移植によってテラトーマ形成能を確認したほか、胚様体形成培養によって三胚葉マーカー遺伝子の発現上昇を確認した。


H25-E14
代:林 欽
協:中島 龍介
協:日下部 央里絵
霊長類の精子形成を支持する分子機序の解明と細胞培養

学会発表
Zachary Yu-Ching Lin, Masanori Imamura, Takamasa Hirano, Eiji Matsunaga, Miki Taoka, Hiroo Imai, Hirotaka James Okano, Atsushi Iriki, Mikiko C. Siomi, Haruhiko Siomi, Erika Sasaki, Hirohisa Hirai and Hideyuki Okano Developmental dynamic and culture of testicular germ cell in common marmoset Callithrix jacchus(12/3/2013) The 36th Annual Meeting of the Molecular Biology Society of Japan(Kobe, Japan).

Zachary Yu-Ching Lin, Masanori Imamura, Takamasa Hirano, Eiji Matsunaga, Miki Taoka, Hiroo Imai, Hirotaka James Okano, Atsushi Iriki, Mikiko C. Siomi, Haruhiko Siomi, Erika Sasaki, Hirohisa Hirai and Hideyuki Okano Molecular signatures and culture of testicular germ cells in common marmoset Callithrix jacchus(06/12/2013) International Society for Stem Cell Research (11th Annual Meeting)(Boston, USA).

Zachary Yu-Ching Lin, Masanori Imamura, Takamasa Hirano, Eiji Matsunaga, Miki Taoka, Hiroo Imai, Hirotaka James Okano, Atsushi Iriki, Mikiko C. Siomi, Haruhiko Siomi, Erika Sasaki, Hirohisa Hirai and Hideyuki Okano Molecular signatures and culture of testicular germ cells in common marmoset Callithrix jacchus(05/17/2013) The 11th Stem cell Research Symposium(Tokyo, Japan).

Zachary Yu-Ching Lin, Masanori Imamura, Takamasa Hirano, Eiji Matsunaga, Miki Taoka, Hiroo Imai, Hirotaka James Okano, Atsushi Iriki, Mikiko C. Siomi, Haruhiko Siomi, Erika Sasaki, Hirohisa Hirai and Hideyuki Okano Molecular signatures and culture of testicular germ cells in common marmoset Callithrix jacchus(02/20/2013) The 2nd Annual Meeting of Japan Society of Marmoset Research(Tokyo, Japan).
霊長類の精子形成を支持する分子機序の解明と細胞培養

林 欽 , 中島 龍介, 日下部 央里絵

昨年度の共同利用・共同研究を通して考案した霊長類精子形成細胞の新規培養法「Testicular sphere形成法」を利用して、マーモセット成体精巣由来の培養細胞の分子特性解析を行った。まず、Testicular sphereにおける遺伝子発現を培養開始から1週間ごとに最長4週間解析したところ、培養の経過とともに精子形成の後期に相当するマーカー遺伝子の発現が順次消失し、最終的には精原細胞や初期の精母細胞のマーカー遺伝子のみが観察された。同様の結果は免疫染色においても観察され、培養2週目のTesticular sphereでは精原細胞マーカー陽性細胞と減数分裂期マーカー陽性細胞が共に確認されたが、培養4週目になると後者は認められなかった。これらの結果はフローサイトメトリーによるDNA含量解析とも一致しており、本手法は霊長類の精原細胞の培養に指向した培養法であることが推測された。そこで、培養下のTesticular sphereにおいて精子形成を誘導する試みとして、GDNFの除去やレチノイン酸・テストステロンなどの添加を行った変法条件での培養も試みてみたが、いずれの場合においても減数分裂期のマーカー遺伝子の発現は確認できなかった。


H25-E15
代:平田 暁大
協:柳井 徳磨
協:酒井 洋樹
協:加藤 由隆
ニホンザルにおける心筋線維化の病理組織学的解析

学会発表
加藤 由隆、平田 暁大、兼子明久、鈴木樹理、酒井 洋樹、柳井 徳磨  ニホンザルの心臓の線維化に関する病理組織学的所見(2013年9月21日) 第156回日本獣医学会学術集会(岐阜).
ニホンザルにおける心筋線維化の病理組織学的解析

平田 暁大 , 柳井 徳磨, 酒井 洋樹, 加藤 由隆

我々は、ニホンザルにおいて心筋線維化(Cardiac Fibrosis:CF)が高率に見られることを見出し、その特徴について病理組織学的に検討した。京都大学霊長類研究所において斃死または安楽殺されたニホンザル54例(10%ホルマリン固定標本)を使用し、定法に従いパラフィン包埋切片を作製し、HE染色、マッソントリクローム(MT)染色、ピクロシリウスレッド(SR)染色を実施した。心臓の間質、心外膜下、血管周囲において線維性結合織の増生が認められ、CFの発生率は幼獣(3歳齢未満、n=15)で6.7%、亜成獣(3歳齢以上〜7歳齢未満、n=13)で13.0%、成獣(7歳齢以上〜20歳齢未満、n=17)で94.1%、老獣(20歳齢以上、n=9)で100%であり、加齢とともに有意に増加していた。また、SR染色標本を画像解析ソフトにより解析し、心臓組織の単位面積あたりの線維化の割合を定量化したところ、線維化の程度も加齢と共に有意に増加していた。心臓における炎症細胞浸潤の有無によってCFの発生率に有意な差が認められ、持続する軽度な炎症細胞浸潤がCFの発生に関与している可能性が示唆された。以上より、ニホンザルでは心臓のCFが高率に認められ、加齢とともに、発生率は上昇し、程度も悪化することが明らかとなった。


H25-E16
代:塩田 達雄
協:中山 英美
協:田谷 かほる
協:金子 新
アカゲザルiPS細胞の樹立
アカゲザルiPS細胞の樹立

塩田 達雄 , 中山 英美, 田谷 かほる, 金子 新

 後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)は宿主域が狭く、ヒト以外に感染する動物はチンパンジーのみである。
 我々は、アカゲサルの人工多能性細胞(iPS細胞)に遺伝子操作を加え、HIV-1が個体内で感染・増殖できる動物実験モデルアカゲザルを作出することを最終目標に、まずはアカゲザルのiPS細胞樹立を行い、CD4陽性T細胞への分化誘導方法を確率することを目的とした。
 アカゲザル末梢血からT細胞を分離し、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc のいわゆる山中4因子を発現する4種類のセンダイウイルスベクターを用いてiPS 細胞の樹立を試みた。しかし、得られた細胞をRT-PCRにおいて遺伝子解析した結果、センダイウイルスベクターの感染は確認できるものの、形態およびアルカリフォスファターゼ活性により未分化性iPS細胞樹立とは同定できなかった。そこで山中4因子が1つのセンダイウイルスベクターにすべて発現しているものを用い、現在アカゲサル末梢血T細胞由来iPS細胞の樹立を行い、同定解析中である。


H25-E17
代:高田 達之
協:檜垣 彰吾
協:白井 恵美
協:島田 愛美
協:小野 友梨子
協:谷口 聡美
協:山田 羽純
チンパンジーiPS細胞分化に与える環境化学物質の影響

論文
Shimozawa N., Ono R., Shimada M., Shibata H., Takahashi I., Inada H., Takada T., Nosaka T., Yasutomi Y.(3013) Cynomolgus monkey induced pluripotent stem cells established by using exogenous genes derived from the same monkey species Differentiation 85:131-139.

学会発表
高田 達之 環境化学物質がES細胞の生殖細胞分化に与える影響(11/14/2013) 第9回霊長類医科学フォーラム(つくば市).

小野友梨子, 吉田絢菜, 引原直樹, 檜垣彰吾, 高田達之 ノニルフェノールがES細胞の生殖細胞分化に与える影響(12/18/2013) 第15回日本内分泌撹乱化学物質学会(東京).
チンパンジーiPS細胞分化に与える環境化学物質の影響

高田 達之 , 檜垣 彰吾, 白井 恵美, 島田 愛美, 小野 友梨子, 谷口 聡美, 山田 羽純

 チンパンジーiPS細胞分化に与える環境化学物質の影響を評価するにあたり、まず、その対照としてカニクイザルES細胞およびiPS細胞を用いた実験を行った。カニクイザルES細胞とiPS細胞から胚様体(EB)を形成し、分化に伴う遺伝子発現の変化を調べた。その結果、数種類のES細胞・iPS細胞において、分化に伴うTEKT1(精細胞特異的遺伝子)発現量の上昇が認められたことから、TEKT1発現量の上昇は、ES細胞・iPS細胞分化において極めて共通な現象であると考えられた。
 そこで次に、TEKT1の機能を詳細に解析するため、TEKT1プロモーター制御下でVenusを発現するカニクイザルES細胞を作成し、EB形成実験を行った。その結果、分化に伴うVenus発現細胞の出現、および特徴的な管状構造と活発な運動性を有する繊毛の形成が確認された。このVenus発現細胞をセルソーターにより分取し、遺伝子発現解析を行った結果、生殖細胞特異的遺伝子は発現していないものの、精巣で発現の高いTEKT3、FOXJ1などの発現が認められたことから、本培養法により、ES細胞とiPS細胞は精巣と関連する組織へと分化している可能性が示唆された。


H25-E18
代:溝上 雅史
協:杉山 真也
協:中川 草
協:今西 規
協:石田 貴文
協:五條堀 孝
インターフェロンラムダ遺伝子ファミリーの進化学的解析
インターフェロンラムダ遺伝子ファミリーの進化学的解析

溝上 雅史 , 杉山 真也, 中川 草, 今西 規, 石田 貴文, 五條堀 孝

本年度では,提供されたチンパンジーゲノム(P.t.tとP.t.vのハイブリッド)を用いて、目的の領域であるInterferon lambda(IFN-λ)遺伝子ファミリーがコードされている領域に対して、ロングPCRによる増幅とシークエンス解析を試みた。この領域は、類似性の高い3遺伝子と1つの偽遺伝子が存在することがヒトで明らかとなっている。この領域を遺伝子ごとに分けて取得するための6つのプライマーセットを設計し、P.t.vとヒトで効率よく増幅することを確かめたが、本検体ではゲノムの断片長が短いためかロングPCRは困難であった。そこで、短いPCR領域に変更したプライマーセットを新たに準備し、ヒトとP.t.vで検証を行った。来年度では、本検体での増幅ができしだい、サンプル調製と次世代シーケンサー解析を行う。既に、ヒト、チンパンジー(P.t.v)、ボノボ、ゴリラ、テナガザルについて、それぞれ複数検体のシークエンスデータを得ているので、それらの配列について比較解析を行った。本検体のシークエンスデータが得られた段階で、これらの比較データに加えて種と亜種間でのIFN-λの進化の過程を解析する。


H25-E19
代:丸山 啓志
協:西村 剛
協:松岡 廣繁
協:安井 謙介
頭骨の形態から探るイルカの系統と音響機能の発達:霊長類との比較
頭骨の形態から探るイルカの系統と音響機能の発達:霊長類との比較

丸山 啓志 , 西村 剛, 松岡 廣繁, 安井 謙介

 イルカ類は,鳴音コミュニケーションに基づき社会構造を形成する点で,霊長類と共通している.その一方で,イルカ類の鳴音についての送信・受信システムは,霊長類と異なっているため,比較することで,各分類群のコミュニケーションの発達について示唆を与えることができる.本研究では,イルカ類固有の器官である「気洞」の鳴音の受信システムにおける役割を明らかにすることを目的とした.ここでは,化石種のイルカ類も含めて比較可能にするため,「気洞」の形状・容積を求めるために,頭骨のX線CTスキャンによる撮像を行った.用いた種は,ホイッスルという鳴音を発するマイルカ科(ハンドウイルカ・カマイルカ),ホイッスルを発さないネズミイルカ科(ネズミイルカ他3種)・ラプラタカワイルカ科(ラプラタカワイルカ)であった.その結果,従来のネズミイルカ科の「気洞」についての左右非対称性を裏打ちする結果となった.加えて,イルカ類に見られる頭骨の左右非対称性について,新たな知見を得ることができ,霊長類や鳥類(フクロウ)と対比可能なものであった.今後は,撮像する標本を増やすだけでなく,マイルカ科であるのにホイッスルを発さないセッパリイルカ属(イロワケイルカ)や,イルカ類の外群であるアカボウクジラ科の標本も扱い,包括的に取り組んでいく.


H25-E20
代:本川 智紀
MC1R遺伝子に着目したボノボの集団遺伝学的研究
MC1R遺伝子に着目したボノボの集団遺伝学的研究

本川 智紀

MC1R(melanocortin-1 receptor)は色素細胞表面に存在する色素産生に関与するレセプターである。ヒトにおいてMC1R遺伝子は、多様性が高く人種特異的多型が存在するため、MC1R多型情報は、ヒトの分岐過程を考察する際に有益な情報のひとつとなっている。私はヒト以外の霊長類においても、当遺伝子のデータは分岐過程を考察する上で有益な情報となると考えている。本研究ではボノボの遺伝子を解析し、すでに保有するヒト、チンパンジーなどの遺伝子データと併せ、当遺伝子の進化過程を比較解析することを最終目的としている。
本年度は、ワンバとイヨンジ合計20例の糞抽出DNAからダイレクトシークエンス法を用いた検討を行った。その結果、対象領域(MC1Rコーディング、プロモーター領域合計約2000塩基)がすべて解読できた数は6例、2/3以上の範囲で解読できた数は 3例、1/3以上の範囲で解読ができた数は 4例、それ以下は7例であった。
以上の結果より、ワンバとイヨンジのコンセンサス配列およびSNPが同定できる見込みであり、このデータをもとに、ダイレクトシークエンス法での解読が困難な領域をカバーできる新たな手法(リアルタイムPCR法によるSNP解析)の構築が可能になったと考える。


H25-E21
代:塩見 春彦
協:關 菜央美
協:平野 孝昌
協:山中 総一郎
協:岩崎 由香
協:齋藤 都暁
霊長類生殖細胞における小分子RNAの解析

論文

学会発表
平野 孝昌 霊長類PIWI-piRNAの解析(2013年7月24日) 日本RNA学会 第15回年会(愛媛県松山市).

關 菜央美 Analysis of PIWI-piRNA pathways in common marmoset(2013年9月23-25日) Riboclub 14th annual meeting(Quebec, Canada).

岩崎 由香 霊長類生殖組織における小分子RNAの統合的解析(2013年12月4日) 第36回日本分子生物学会年会(兵庫県神戸市).

關 菜央美 霊長類PIWI-piRNAの解析(2013年12月3日) 第36回日本分子生物学会年会(兵庫県神戸市).

関連サイト
慶應義塾大学医学部 塩見研究室ホームページ http://www.siomilab.med.keio.ac.jp/
霊長類生殖細胞における小分子RNAの解析

塩見 春彦 , 關 菜央美, 平野 孝昌, 山中 総一郎, 岩崎 由香, 齋藤 都暁

PIWIは昆虫からヒトまで広く保存されている、生殖幹細胞維持等に必須の遺伝子である。PIWIタンパク質はPIWI-interacting RNA (piRNA)と呼ばれる小分子RNAと結合し、piRNAの配列特異的に標的を認識することで遺伝子発現を負に制御する。霊長類では、マウスが有する3種類のPIWIに加え、4種類目のPIWI(PIWIL3)が存在する為、霊長類はマウスとは異なるPIWI-piRNA機構を有すると考えられるが、その詳細は明らかになっていなかった。我々は、PIWIL1を特異的に認識する抗体を作製し、コモン・マーモセット及びアカゲザルにおいてPIWIL1についての解析を行った。その結果、コモン・マーモセット、アカゲザルの両種の精巣において精母細胞及び精細胞でPIWIL1が発現することを見出した。また、両種のPIWIL1に結合するpiRNAの単離にも成功した。さらに、コモン・マーモセットPIWIL1結合piRNAの解析を進めたところ、遺伝子間領域及びトランスポゾン由来のpiRNAに加え、偽遺伝子領域やtRNA由来であるマウスではほとんど見られない種類のpiRNAが存在することを見出した。


H25-E22
代:佐藤 宏道
協:内藤 智之
協:末松 尚史
協:澤井 元
協:三好 智満
協:七五三木 聡
ニホンザル初期視覚系の色覚情報処理回路の研究
ニホンザル初期視覚系の色覚情報処理回路の研究

佐藤 宏道 , 内藤 智之, 末松 尚史, 澤井 元, 三好 智満, 七五三木 聡

 本共同研究においては霊長類研究所所蔵の研究試料「ニホンザル頭蓋骨(下顎なし)」(名称:PRI#5850)を譲り受け、研究に供している。技術的目的はニホンザル全動物標本における網膜神経活動記録実験のための脳定位固定装置の改良及び、網膜神経節細胞の活動を微小電極により記録するための電極刺入位置及び角度の調整をこの標本を用いて行うことにある。この研究はサルの初期視覚系における色覚情報処理回路を定量的に解析することがそもそもの目的であり、現時点(2014年3月末)では実験は準備段階にあり、ネコの1)網膜神経節細胞-外側膝状体ニューロン間、2)外側膝状体ニューロン-一次視覚野ニューロン間の同時記録を行った。これにより、受容野の時空間構造を形成する結合ルールが明らかになり、サルの視覚実験を行うための刺激-記録解析システムが構築された。


譲渡されたサル頭蓋骨を脳定位固定装置に固定し、改良したアタッチメントによる眼球固定および網膜神経節細胞記録のシミュレーションの様子。


H25-E23
代:伊藤 浩介
サル類における聴覚事象関連電位の記録

論文
Kosuke Itoh, Masafumi Nejime, Naho Konoike, Tsutomu Nakada, Katsuki Nakamura(2015) Noninvasive scalp recording of cortical auditory evoked potentials in the alert macaque monkey Hearing Research 327:117-125. 謝辞The work was supported by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science, and Technology (Japan), JSPS KAKENHI Grant Number 25540052, and the Cooperative Research Program of the Primate Research Institute, Kyoto University.

学会発表
伊藤浩介、禰占雅史、鴻池菜保、中田力、中村克樹 覚醒サルにおける頭皮上聴覚誘発電位の無侵襲記録(2015年3月4日) 生理研・新潟脳研合同シンポジウム(新潟市).
サル類における聴覚事象関連電位の記録

伊藤 浩介

言語や他の高次脳機能と異なり、明らかな適応的意義の見当たらない音楽は、何故どのように進化したのだろうか。本研究は、従来の行動指標の代わりに事象関連電位(ERP)を用いて、音楽の系統発生を探る試みである。すなわち、和音やメロディーなどの様々な音楽刺激に対するERPを種間比較することにより、これらの音楽刺激の脳処理の進化を明らかにすることを目的とする。複数年実験計画の初年度にあたる本年度は、マカクザルを対象に、無麻酔で頭皮上から聴覚事象関連電位を記録するための方法論を確立することを目指した。ヒトを対象とする場合と同じように無侵襲で脳波記録を行うため、動物はチェアを用いて必要最低限の保定をしたことと頭部を剃毛した以外は、ヒト脳波記録用のコロジオン電極をヒトと全く同じ方法で、頭皮上9箇所(F3, F4, C3, C4, P3, P4, Fz, Cz, Pz)、左右の耳朶、左眼窩左下に設置した。その上で、スピーカーから提示した和音や純音刺激に対して、聴覚事象関連電位が安定して記録できることを確認した。本課題は10月に採択され半年の研究期間であったが、次年度以降の研究に向けて十分な準備を整えることができた。


H25-E24
代:太田 博樹
協:勝村 啓史
協:松前 ひろみ
霊長類の性的二型とその多様性を制御する分子機構の解明に向けた基礎技術開発

論文
Y. Matsushita, H. Oota, B.J. Welker, M.S. Pavelka, S. Kawamura*(2014) Color Vision Variation as Evidenced by Hybrid L/M Opsin Genes in Wild Populations of Trichromatic Alouatta New World Monkeys. International Journal of Primatology 35:71-87.

学会発表
A. Sato, F. Campos, H.Oota, K. Jack, A. Di Fiore, F. Aureli, L. Fedigan, S.Kawamura Genetic Variation in Wild Capuchins and Spider Monkeys in Costa Rica: Implications for Dispersal Patterns(Jul. 26 - 30, 2011) The Society for Molecular Biology and Evolution, Annual Meeting(Kyoto, Japan).
霊長類の性的二型とその多様性を制御する分子機構の解明に向けた基礎技術開発

太田 博樹 , 勝村 啓史, 松前 ひろみ

【目的】本研究では、末梢血及び糞便あるいは唾液などを材料としたmRNAで、血液中の性ホルモンの変動と同調する遺伝子発現変動をトレースしうるか、技術開発を行うことを目的としている。
【方法】霊長類研究所において、ホルモン分析を行うために採血されたマカクについて、そのホルモン分析で用いられた残り(血球成分)を分与してもらい、血漿中の性ホルモンの情報と白血球中の遺伝子発現の情報を照合し、血中の性ホルモンの変動と同調的に発現変動が起こっている遺伝子をサーチする。
【進捗】(1)人類進化モデル研究センター長・岡本宗裕教授のもと、ニホンザル(メス)の性周期を研究している印藤頼子研究員から定期的に採血した血液の分与を受けた。印藤研究員は1週間に4頭のニホンザルから3回(月、水、金)採血を行った。約1ml採血し、血漿はホルモン動態の分析に用いられた。残った血球成分(約0.5ml)をRNAlaterに入れ、今井啓雄准教授がこれらを保管した。こうした採血を複数回おこないチューブの数は100本を超えた。(2)北里大学医学部の本研究室では、本研究の研究協力者・勝村啓史(博士研究員)の指導のもと、関口陽介(学部学生)が、(2)-1 3時間毎に採取したヒトの唾液からRNAを抽出し、(2)-2 定量PCRを行い時計遺伝子の1つであるPER2遺伝子の発現変動がトレースできるか実験をおこないこれに成功した。


H25-E25
代:石川 欽也
霊長類の老化小脳で変化する遺伝子発現の解明
霊長類の老化小脳で変化する遺伝子発現の解明

石川 欽也

小脳の老化でどのような遺伝子発現の変化が起き、それがどのような小脳機能の変化に関連しているかは全く不明である。我々はヒトにおける小脳の老化の遺伝子変化を検索してきたが、ヒトでは様々な個体差や環境差による影響によって、2次的に遺伝子発現が影響される欠点がある。このため、ヒトより均一な環境に近い条件で生育した霊長類での検索を行い、ヒトでの解析結果と比較することで、真の老化関連遺伝子を発見することを目的として、本研究を行った。
平成24年度までで合計老齢ニホンザル2頭(28歳、26歳、いずれも雌)とアカゲザル1頭(5歳、雄)について、小脳をヒトと同じ3か所ずつ採取した。今年度はさらに4検体を追加集積できた。本年度併行してヒトの健常者および疾患患者小脳組織での遺伝子発現を解析した。その結果、老化での遺伝子発現の量的変化は軽微であるのに対し、疾患によって健常者の2倍以上もしくは半分以下に変動する遺伝子を30程度発見した。この結果を受けて、霊長類小脳において、老化ではヒトと同様にこれらの遺伝子の発現には大きな変化がないことを確認することにし、平成25年度末にその解析を進めた。



H25-E26
代:藤山 秋佐夫
協:豊田 敦
協:野口 英樹
協:辰本 将司
協:福多 賢太郎
マカク類の比較ゲノミクス
マカク類の比較ゲノミクス

藤山 秋佐夫 , 豊田 敦, 野口 英樹, 辰本 将司, 福多 賢太郎

我々の研究グループでは、ニホンザルをはじめ、アジア地域に生息するマカク類を対象に比較ゲノム解析を行っている。
 本課題では、霊長類研究所が保有する中国産アカゲザル及びタイワンザルについて下記の試料の提供を受けた。このうち、アカゲザル(メス、血液)とタイワンザル試料から高分子DNAの抽出を行い、イルミナHiSeq2000/2500による大規模シーケンシングにより、各々ゲノム被覆度46倍及び56倍のペアエンド配列を得た。

得られた配列は、ニホンザル(4地域)、カニクイザル、アカゲザル(インド)参照配列と比較ゲノム解析を行い、ニホンザルとアカゲザル(中国)が最近縁でありタイワンザルはやや離れた系統になることがわかった.本共同利用による成果の詳細については、26年度の霊長類学会で発表予定(福多)である。



H25-E27
代:郷 康広
協:渡我部 昭哉
協:重信 秀治
霊長類のゲノム・トランスクリプトーム・エピゲノム研究

論文
Uesaka M, Nishimura O, Go Y, Nakashima K, Agata K, Imamura T.( 2014) Bidirectional promoters are the major source of gene activation-associated non-coding RNAs in mammals. BMC Genomics 15( 35): 35.

Fukuda K, Ichiyanagi K, Yamada Y, Go Y, Udono T, Wada S, Maeda T, Soejima H, Saitou N, Ito T, Sasaki H. (2013) Regional DNA methylation differences between humans and chimpanzees are associated with genetic changes, transcriptional divergence and disease genes. J. Hum Genet. 58(7):446-454. 謝辞あり

Gonda S, Matsumura S, Saito S, Go Y, Imai H.(2013) Expression of taste signal transduction molecules in the caecum of common marmosets. Biol Lett. 9(4):20130409. 謝辞あり

学会発表
郷康広 霊長類認知ゲノミクスと精神・神経疾患をターゲットとした霊長類モデル動物の探索(2014年1月12日) 自然科学研究機構新分野創成センターシンポジウム「大規模脳神経回路機能マップのその先」(東京).

郷康広 ゲノムを通して我が身を知る〜ヒトとサルの間にあるもの〜(2013年11月25日) 第28回生体・生命工学研究会(東北大学(仙台)).

郷康広 オス・メス間ゲノムコンフリクティングとその生物学的意義の解明(2013年6月2日) 新学術領域「ゲノム・遺伝子相関」班会議(神戸).

郷康広 ヒト脳・類人猿脳の時空間遺伝子発現解析 〜ヒトの特殊性を探し求めて〜(2013年10月29日) 新学術領域研究「ゲノム・遺伝子相関」若手の会(北海道(支笏湖)).

Yasuhiro Go Deep Exome Sequencing in Macaque Monkeys for the Establishment of Primate Cognitive and Psychiatric Disease Model(2013年6月13日) The 24th CDB meeting Genomics and Epigenomics with Deep Sequencing(神戸).

Yasuhiro Go Spatiotemporal gene expression trajectory in the human and non-human ape brains(2013年9月6-9日) Cold Spring Harbor Symposium(Cold Spring Harbor, US).

Yasuhiro Go Spatiotemporal gene expression trajectory in the human and non-human ape brains(2013年9月4-5日) NGS現場の会 第3回研究会(神戸).
霊長類のゲノム・トランスクリプトーム・エピゲノム研究

郷 康広 , 渡我部 昭哉, 重信 秀治

平成25年度は100個体のマカクザルの血液から調整したDNAを用いて、遺伝子コーディング領域(全エキソン)の配列決定を行った。ヒトの精神・神経疾患関連遺伝子として同定されている遺伝子とマカクザルにおける相同遺伝子の変異解析を行った結果、5,280遺伝子において100個体中の少なくとも1個体以上に遺伝子機能喪失変異を認めた。ヒトにおける先行研究により12の精神・神経疾患に何らかの関連があると報告されている4,082遺伝子における遺伝子機能喪失型変異を探索した結果、701個の遺伝子に変異が生じていることを明らかにした。このうち神経・神経疾患に関与する代表的な遺伝子を図に示す。見いだした遺伝子には、神経細胞間の情報伝達の中心的役割を果たすドーパミンに関係する遺伝子やパーキンソン病の有力な遺伝子、セロトニン受容体、ヒストン脱アセチル化酵素関連遺伝子などがあり、それらの遺伝子に機能喪失変異を有する個体や家系を見いだすことに成功した。


H25-E28
代:金子 新
協:田谷 かほる
協:塩田 達雄
協:中山 英美
アカゲザル骨髄細胞からのiPS細胞樹立およびT細胞への分化
アカゲザル骨髄細胞からのiPS細胞樹立およびT細胞への分化

金子 新 , 田谷 かほる, 塩田 達雄, 中山 英美

 抗原特異的なヒトCD8T細胞から作成したiPS細胞をソースに、in vitroで分化誘導したCD8T細胞は抗原特異的な免疫能を発揮することが知られる。本研究では、骨髄性CD34陽性細胞からiPS細胞を樹立し、困難とされるT細胞への分化誘導方法を確立するとともに、iPS細胞由来T細胞の自家移植によりヒト免疫不全症候群などによる破綻した免疫機構の再構築を免疫学的にヒトに近縁な霊長類を用いて検討することを最終目的としている。本年度は先ずアカゲザルの CD34陽性細胞由来のiPS 細胞樹立を目指したが、アカゲザルのiPS細胞はヒトやカニクイザルに比して樹立・維持が困難であること、骨髄穿刺にはある程度の侵襲を伴うことなどから、先ずは採取の比較的容易なアカゲザル末梢血細胞をソースとしてiPS細胞樹立・維持条件の最適化を試みた。
 アカゲザル末梢血から末梢血単核球を分離し、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc のいわゆる山中4因子を発現するセンダイウイルスベクターを用いてiPS 細胞の樹立を複数回試みた。いくつかの培養条件を最適化し、embryonic stem cell様の形態を示すコロニーを樹立・維持ができるようになった。今後は骨髄CD34陽性細胞をソースにしたiPS細胞の樹立に取り組む。


H25-E29
代:Philipp Khaitovich
協:Masahiro Sugimoto
協:Yasuhiro Go
Metabolome and lipidome signatures of the human brain
Metabolome and lipidome signatures of the human brain

Philipp Khaitovich , Masahiro Sugimoto, Yasuhiro Go

In this project, we plan to obtain a lipidome and metabolome features of human brain as compared to the brain of closely related primate species. We plan to measure the metabolite and lipid concentration levels in eight different brain regions of humans and five non-human primate species (chimpanzee, gorilla, orangutan, gibbon, macaque). The comparison among these species will allow us to identify the human-specific metabolic features of the brain and detect functional changes that evolved on the human lineage. Further, the identified metabolome and lipidome composition differences among species and brain regions will provide us insights into general metabolic characteristics of human brain that underlie the unique human cognition, as well as make it susceptible to neurological disorders common in humans.
In 2013, we obtained one orangutan brain sample and dissected it into eight regions. We will perform lipidome and metabolome analysis of these samples at Institute for Advanced Biosciences, Keio University. We also aim to obtain more non-human primate brain samples in the next year.


Figure 1. Lipidome composition of human tissues. Shown are results of a pilot experiment measuring approximately 5,000 lipid compounds in three brain regions, prefrontal cortex (PFC), primary visual cortex (V1) and cerebellar cortex (CBC), as well as two non-neural tissues, skeletal muscle and kidney. The results show distinct lipidome composition of the human brain, as well as substantial differences in lipidome composition among three brain regions.


H25-E30
代:齊藤 実
協:宮下 知之
コモンマーモセットを用いた加齢性記憶障害の研究
コモンマーモセットを用いた加齢性記憶障害の研究

齊藤 実 , 宮下 知之

将来コモンマーモセットを用いて加齢性記憶障害の行動薬理学・行動遺伝学的研究を行うことを計画している。こうした研究に必要な、コモンマーモセットの基礎的な行動実験の方法論取得を目的として、中村教授との共同研究を行った。年度末から始まり滞在期間が一ヶ月程と短かったが、中村教授が開発した学習装置を用いたマーモセットの訓練の仕方の習得を目指した。
 先ずは、マーモセットの体調管理を学んだあと、目的である基本的な学習記憶課題である視覚弁別課題の訓練の仕方を若齢体で習った。付随して学習装置のセットアップ、報酬として用いるエサの作製法、脳脊髄液の採取方、脳波の測定方法について学んだ。
 老齢体は一般的に運動能力やモチベーションが低いため、利用出来るタスクに工夫が必要なことが予測される。今回学んだ学習記憶課題を発展させることで老齢体での記憶評価に適した課題の開発を進める予定である。


H25-E31
代:岡野 栄之
協:岡野 ジェイムス洋尚
協:疋島 啓吾
協:酒井 朋子
拡散スペクトラムMRIを用いたチンパンジーの神経回路構造の解明
拡散スペクトラムMRIを用いたチンパンジーの神経回路構造の解明

岡野 栄之 , 岡野 ジェイムス洋尚, 疋島 啓吾, 酒井 朋子

平成25年度の年度末に採用され、研究期間も非常に限られていたため、 実際に霊長類の脳標本の撮像を行うまでに至らなかった。しかしながら、本随時研究の研究計画は、平成26年度の共同利用研究としても採択され、継続して実施する予定である。現在、我々は平成26年10月末までに和光の理化学研究所内に9テスラ以上で30cm以上のボアサイズを有する高磁場小動物用MRI装置を導入することを目標に、新規の超高磁場システムや高感度コイルの開発に取り組んでいる。この高磁場MRI装置が導入された暁には、チンパンジーなどの大型類人猿を含めた全ての霊長類の脳標本の神経線維構造や髄鞘分布を高精細に(30マイクロメートルの空間分解能で)3次元上に再構築することが可能となる。そこで本年度において、我々は本随時研究の継続研究として、貴研究所での脳標本の整理・運送を行うとともに、新規MRI装置を用いて、各霊長類の脳標本のサイズに対応した高磁場MRI撮像シークエンスを確立する予定である。