H30
論文 0 報 学会発表 0 件
H30-A1
代:宇賀 貴紀
協:三枝 岳志
協:熊野 弘紀
協:須田 悠紀
判断を可能にする神経ネットワークの解明
H30-A2
代:石垣 診祐
協:遠藤 邦幸
FUS抑制マーモセットモデルにおける高次脳機能解析
H30-A3
代:南部 篤
協:畑中 伸彦
協:知見 聡美
協:佐野 裕美
協:長谷川 拓
協:纐纈 大輔
協:若林 正浩
協:Woranan Wongmassang
協:Zlata Polyakova
遺伝子導入法による大脳基底核疾患の病態に関する研究
H30-A4
代:小林 和人
協:菅原 正晃
協:加藤 成樹
協:渡辺 雅彦
協:山崎 美和子
協:内ヶ島 基政
協:今野 幸太郎
ウイルスベクターを利用した神経回路操作技術による霊長類脳機能の解明
H30-A5
代:関 和彦
協:大屋 知徹
協:梅田 達也
協:工藤 もゑこ
協:窪田 慎治
協:戸松 彩花
複数骨格筋への単シナプス性発散投射構造の解剖学的同定
H30-A6
代:石田 裕昭
協:西村 幸男
マカクザル前頭極の多シナプス性ネットワークの解明
H30-A7
代:藤山 文乃
協:苅部 冬紀
協:平井 康治
協:緒方 久実子
協:東山 哲也
霊長類の皮質ー基底核ー視床ループの形態学的解析
H30-A8
代:橋本 均
協:中澤 敬信
協:笠井 淳司
協:勢力 薫
霊長類脳の全細胞イメージングと神経回路の全脳解析
H30-A9
代:Wirdateti
Analysis of mitochondrial sequences for species identification and evolutionary study of slow loris (genus Nycticebus)
H30-A10
代:松本 正幸
協:山田 洋
マカクザル外側手綱核の神経連絡
H30-A11
代:Mukesh Chalise
Study on phylogeography of highland macaques and langurs in Nepal
H30-A12
代:Aye Mi San
協:Phyu Pyar Tin
Conservation genetics of Myanmar’s macaques? a phylogeographical approach
H30-A13
代:田中 真樹
協:竹谷 隆司
協:鈴木 智貴
協:亀田 将史
行動制御における皮質下領域の機能解析
H30-A14
代:南本 敬史
協:永井 裕司
協:小山 佳
協:堀 由紀子
協:藤本 淳
脳活動制御とイメージングの融合技術開発
H30-A15
代:Van Minh Nguyen
Effect of the fragmentation on genetic diversity of macaque populations in Central Vietnam
H30-A16
代:Hadi Islamul
Fish-eating behavior of the macaques : A comparative study of long-tailed macaque and Japanese macaque
H30-A17
代:西村 幸男
協:鈴木 迪諒
意欲が運動を制御する神経基盤の解明
H30-A18
代:福田 真嗣
協:村上 慎之介
協:谷川 直紀
協:楊 佳約
脳機能におよぼす腸内細菌叢の影響
H30-A19
代:植木 孝俊
協:尾内 康臣
高等霊長類成体脳神経新生の動態と機能のin vivo解析技術の創出
H30-A20
代:筒井 健一郎
協:中村 晋也
協:吉野 倫太郎
協:森谷 叡生
協:小野寺 麻理子
協:大原 慎也
サル内側前頭葉を起点とする領域間回路の解析とうつ病モデルの創出
H30-A21
代:Muhammad Azhari Akbar
A comparative study in daily activity of colobines under captive condition
H30-A22
代:桃井 保子
協:花田 信弘
協:今井 奨
協:岡本 公彰
協:齋藤 渉
協:宮之原 真由
チンパンジーの口腔内状態の調査と歯科治療法の検討
H30-A23
代:伊村 知子
ヒトとチンパンジーにおける「平均」の知覚に関する比較認知研究
H30-A24
代:原田 悦子
協:須藤 智
チンパンジーにおける健康な加齢にともなう認知的機能やモノとの相互作用の変化
H30-A25
代:平松 千尋
協:山下 友子
協:中島 祥好
協:上田 和夫
霊長類における音声コミュニケーションの進化および発達過程の研究
H30-A26
代:工藤 和俊
協:三浦 哲都
ヒトおよびチンパンジーにおける協調行動の比較発達研究
H30-A27
代:山崎 美和子
協:今野 幸太郎
協:内ヶ島 基政
経路選択的な機能操作技術を応用したマーモセット大脳皮質―基底核ネットワークの構造マッピング
H30-A28
代:田中 由浩
協:川崎 雄嵩
触覚情報を用いたチンパンジーの個体識別および課題反応との関係分析
H30-A29
代:齋藤 亜矢
芸術表現の霊長類的基盤に関する研究
H30-A30
代:鯉江 洋
協:揚山 直英
協:中山 駿矢
霊長類の加齢誘引疾患に関する研究
H30-A31
代:生江 信孝
協:桃井 保子
協:齋藤 渉
協:秋葉 悠希
協:大栗 靖代
協:正藤 陽久
協:飯田 伸弥
協:斎藤 高
協:斎藤 香里
動物園のチンパンジーにおける口腔内状態の調査
H30-A32
代:狩野 文浩
チンパンジーを対象としたアイ・トラッキングによる記憶・心の理論・視線認知についての比較認知研究
H30-A33
代:竹下 秀子
協:山田 信宏
協:高塩 純一
協:櫻庭 陽子
脳性麻痺チンパンジーへの発達支援と養育環境整備
H30-B1
代:佐々木 哲也
細胞種特異的遺伝子発現・エピジェネティクスと精神疾患モデルにおけるその異常
H30-B2
代:中村 浩幸
外側膝状体から頭頂視覚連合皮質への直接視覚入力回路の形態学的研究
H30-B3
代:鈴木 俊介
協:鈴木 絵美子
ヒト特異的転移因子による脳関連遺伝子の発現調節機構の進化
H30-B4
代:浅川 満彦
協:萩原 克郎
東北および四国地方に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生虫症および感染症に関する疫学調査
H30-B5
代:白石 俊明
協:澤田 研太
野生ニホンザルおよび同所に生息する野生動物の果実利用時期と採食頻度

論文

関連サイト
富山県 立山カルデラ砂防博物館 http://www.tatecal.or.jp/tatecal/index.html
H30-B6
代:風張 喜子
野生ニホンザルにおける分派の意図性の判別基準と要因の検討
H30-B7
代:疋田 研一郎
金華山のニホンザルにおけるグルーミングの熱心さの検証と互恵性との関わり
H30-B8
代:江成 広斗
豪雪地に生息するニホンザルの樹皮・冬芽食が植物群集に及ぼす影響
H30-B9
代:東 超
霊長類の各種の組織の加齢変化
H30-B10
代:荒川 高光
協:江村 健児
前後肢遠位部運動器の系統発生を形態学的に解析する
H30-B11
代:今村 拓也
種特異的ノンコーディングRNAによるほ乳類脳神経機能分化
H30-B12
代:一柳 健司
協:平田 真由
協:一柳 朋子
霊長類におけるエピゲノム進化の解明
H30-B13
代:松岡 史朗
協:中山 裕理
下北半島脇野沢の野生ニホンザル群の個体群動態
H30-B14
代:笹岡 俊邦
協:藤澤 信義
協:小田 佳奈子
協:宮本 純
協:崎村 建司
協:中務 胞
協:夏目 里恵
異種間移植によるマーモセット受精卵の効率的作成方法の開発研究
H30-B15
代:郷 康広
ヒトの高次認知機能の分子基盤解明を目指した比較オミックス研究
H30-B16
代:小林 俊寛
協:平林 真澄
協:正木 英樹
チンパンジー iPS 細胞からの始原生殖細胞分化誘導とその機能評価
H30-B17
代:清家 多慧
ニホンザルの遊び終了時におけるコミュニケーション
H30-B18
代:篠原 隆司
協:篠原 美都
協:森本 裕子
協:渡邉 哲史
協:森 圭史
霊長類精子幹細胞の培養
H30-B19
代:松尾 光一
協:森川 誠
協:山海 直
協:Suchinda Malaivijitnond
マカクにおける繁殖季節性に起因する骨量増減と骨リモデリングのメカニズム
H30-B20
代:岩槻 健
協:中嶋 ちえみ
協:稲葉 明彦
協:中安 亜希
霊長類由来ex vivo培養系を用いた消化管細胞機能の解析
H30-B21
代:小野 龍太郎
協:八木田 和弘
協:金村 成智
協:山本 俊郎
霊長類歯牙の象牙質成長線に関する比較解剖学的検討
H30-B22
代:中内 啓光
協:正木 英樹
異種生体環境を用いたチンパンジーiPS細胞からの臓器作製
H30-B23
代:持田 浩治
協:川津 一隆
観察学習による警告色の進化プロセスに関する実験的研究
H30-B24
代:齋藤 慈子
協:新宅 勇太
吸啜窩の発達的変化の種間比較
H30-B25
代:佐藤 暢哉
協:林 朋広
コモンマーモセットにおける空間認知
H30-B26
代:那波 宏之
霊長類における神経栄養因子の精神機能発達に与える影響
H30-B27
代:伊藤 浩介
サル類における聴覚事象関連電位の記録
H30-B28
代:荒川 那海
協:颯田 葉子
協:寺井 洋平
霊長類におけるヒトの皮膚の表現型の特性について
H30-B29
代:伊沢 紘生
協:宇野 壮春
協:関 健太郎
協:三木 清雅
協:高岡 裕大
協:関澤 麻伊沙
協:涌井 麻友子
金華山島のサルの個体数変動に関する研究
H30-B30
代:松本 惇平
協:柴田 智広
マカクザルマーカーレスモーションキャプチャーソフトウェアの開発
H30-B31
代:Heui-Soo Kim
協:Hee-Eun Lee
Transposable element derived Mirco RNA analysis in various primate tissues
H30-B32
代:豊川 春香
多雪地生態系においてニホンザルが支える機能の評価~ニホンザルと食肉目の種子散布プロセスの比較から~
H30-B33
代:山下 俊英
協:貴島 晴彦
サル脊髄損傷モデルを用いた軸索再生阻害因子とその抗体による神経回路修復に関する研究
H30-B34
代:村田 幸久
協:中村 達朗
コモンマーモセットにおける食物アレルギーの診断と管理法の開発
H30-B35
代:Laurentia Henrieta Permita Sari Purba
Functional characterization of bitter taste receptors in Asian Leaf-eating Monkeys
H30-B36
代:伊藤 孝司
協:北川 裕之
協:西岡 宗一郎
ムコ多糖症自然発症霊長類モデルに関する総合的研究
H30-B37
代:羽山 伸一
協:中西 せつ子
福島市に生息する野生ニホンザルの放射能被曝影響調査
H30-B38
代:井上 治久
協:沖田 圭介
協:今村 恵子
協:近藤 孝之
協:江浪 貴子
協:月田 香代子
協:大貫 茉里
霊長類神経系の解析とヒト疾患解析への応用
H30-B39
代:横田 伸一
二ホンザルとアカゲザルにおける新規ストレスマーカーの探索とストレス反応性の比較研究
H30-B40
代:國松 豊
アフリカ中新世霊長類化石の形態学的研究
H30-B41
代:藤田 一郎
協:稲垣 未来男
マカカ属サルにおける扁桃体への皮質下視覚経路の神経解剖学的同定
H30-B42
代:Kevin William McCairn
協:Kendall Lee
協:Taihei Ninomiya
Multi-Dimensional Analysis of the Limbic Vocal Tic Network and its Modulation via Voltammetry Controlled High-Frequency Deep Brain Stimulation of the Nucleus Accumbens
H30-B43
代:外丸 祐介
協:信清 麻子
協:畠山 照彦
一卵性多子ニホンザルの作製試験
H30-B44
代:蔦谷 匠
協:Matthew Collins
協:Enrico Cappellini
協:大河内 直彦
プロテオミクス解析によるニホンザル授乳状況の推定
H30-B45
代:筒井 健夫
協:小林 朋子
協:鳥居 大祐
マカク乳歯歯髄幹細胞を用いた歯髄再生への応用
H30-B46
代:寺山 佳奈
高知県室戸市におけるニホンザルが利用する食物資源の解析
H30-B47
代:平田 暁大
協:柳井 徳磨
協:酒井 洋樹
飼育下サル類の疾患に関する病理学的研究
H30-B48
代:中務 真人
協:芳賀 恒太
協:小林 諭史
協:小嶋 匠
協:富澤 佑真
霊長類の脊柱構造に関する進化形態学的研究
H30-B49
代:時田 幸之輔
霊長類下肢の筋構成と支配神経パターン
H30-B50
代:Jeanelle Uy
The relationship between gut size and torso anatomy
H30-B51
代:澤野 啓一
協:田上 秀一
CTを用いたニホンザルの頭蓋底と眼窩を通過する血流、及び頭部静脈血還流路に関する研究
H30-B52
代:神奈木 真理
協:長谷川 温彦
協:永野 佳子
協:Ganbaatar Undrakh
STLV自然感染ニホンザルの抗ウイルスT細胞免疫
H30-B53
代:日比野 久美子
協:竹中 晃子
ヒト動脈硬化症のアカゲザルモデル作出のための基礎研究
H30-B54
代:佐藤 真伍
協:西岡 絵夢
協:渡邊 明音
協:福留 祐香
飼育下のニホンザルおよびアカゲザルにおけるBartonella quintanaの分布状況とその遺伝子系統
H30-B55
代:岡田 誠治
協:俣野 哲朗
協:刈谷 龍昇
サル造血免疫機能の解析とサル免疫不全ウイルス感染モデルマウスの樹立
H30-B56
代:加藤 彰子
協:近藤 信太郎
マカク属サルの形態的・環境的因子から、歯周病発症を解明する
H30-B57
代:高須 正規
代謝プロファイルテストを用いた野外飼育ニホンザルの飼養管理評価
H30-B58
代:Lia Betti
協:Todd C. Rae
"Positional, dimorphic and obstetric influences on pelvic shape in primates"
H30-B59
代:倉岡 康治
協:稲瀬 正彦
視覚刺激の好みに対するホルモンの影響
H30-B60
代:清水 貴美子
協:深田 吉孝
霊長類における概日時計と脳高次機能との連関
H30-B61
代:栁川 洋二郎
協:永野 昌志
協:鳥居 佳子
協:黒澤 拓斗
マカク属における精液凍結保存方法の改善と人工授精技術開発
H30-B62
代:William Sellers
The comparative biomechanics of the primate hand
H30-B63
代:長谷 和徳
協:吉田 真
自律的に歩容遷移を行うマカク四足歩行モデルの開発
H30-B64
代:三浦 智行
協:阪脇 廣美
複合ワクチネーションによるSIVの感染防御効果の解析
H30-B65
代:荻原 直道
協:大石 元治
協:PINA Marta
ニホンザル二足・四足歩行運動の運動学的・生体力学的解析
H30-B66
代:Kanthi Arum Widayati
協:Yohey Terada
Genetic characterization of bitter taste receptors in Sulawesi macaques
H30-B67
代:Bambang Suryobroto
Genomic Evolution of Sulawesi Macaques
H30-B68
代:大石 元治
協:荻原 直道
大型類人猿の前腕における回内-回外運動機構の機能形態学的解析
H30-B69
代:後藤 遼佑
三次元運動解析を見据えたシロテテナガザルの身体モデルの作成
H30-B70
代:柏木 健司
ニホンザルが豪雪山岳地域を生き抜く上での温泉活用と戦略
H30-B71
代:鯉田 孝和
色盲サルの皮質応答計測
H30-B72
代:保坂 善真
協:割田 克彦
サル雌性生殖器由来幹細胞の分離とその機能解析の試み
H30-B73
代:澤田 玲子
成人を対象とした単語認知に関する脳波研究
H30-B74
代:前多 敬一郎
協:束村 博子
協:上野山 賀久
協:真方 文絵
協:迫野 貴大
野生ニホンザルの個体数抑制技術の開発
H30-B75
代:田伏 良幸
ヤクシマザルにおける個体間の社会関係が抱擁行動の方向性に与える影響
H30-B76
代:松原 幹
屋久島の野生ニホンザルによる頬袋由来種子の二次散布と糞虫相調査
H30-B77
代:落合 知美
協:川出 比香里
飼育下霊長類における採食エンリッチメントの分析と検討
H30-B78
代:森光 由樹
ニホンザル絶滅危惧個体群を広域管理するために必要な遺伝情報の検討
H30-B79
代:佐々木 えりか
協:井上 貴史
協:石淵 智子
協:高橋 司
協:黒滝 陽子
霊長類における絶滅危惧種の保全技術の確立
H30-B80
代:城戸 瑞穂
協:曹 愛琳
協:西山 めぐみ
口腔における感覚受容機構の解明
H30-B81
代:牟田 佳那子
協:太田 裕貴
協:岡野 ジェイムス洋尚
協:外丸 祐介
協:信清 麻子
コモンマーモセットにおける表情解析手法の確立
H30-B82
代:Leonardo C?sar Oliveira Melo
協:Maria Ad?lia Borstelmann de Oliveira
協:Anisio Francisco Soares
Absorption and bioavailability of gum’s compounds used by marmoset in field and laboratory conditions
H30-B83
代:宮沢 孝幸
協:金村 優香
協:橋本 暁
協:小出 りえ
協:北尾 晃一
サルフォーミーウイルスから見るニホンザルの種分化分析
H30-B84
代:緑川 沙織
協:時田 幸之輔
肉眼解剖学に基づく霊長類腹鋸筋の機能とその系統発達
H30-B85
代:加賀谷 美幸
霊長類の運動適応と胸郭-前肢帯配置
H30-B86
代:矢野 航
霊長類-口腔内細菌叢の共進化の自然史
H30-B87
代:金子 新
協:塩田 達雄
協:中山 英美
協:三浦 智行
協:入口 翔一
アカゲザルiPS細胞の免疫細胞への分化
H30-B88
代:岡澤 均
協:陳 西貴
協:藤田 慶大
協:田川 一彦
マーモセット疾患モデルを用いた神経回路障害ならびに分子病態の解析および治療法の開発
H30-B89
代:Brittany Kenyon
協:Noreen von Cramon-Taubadel
協:Stephen Lycett
Morphological and Taxonomic Distinction in Macaca: a 3D Geometric Morphometric Analysis of the Skeleton
H30-B90
代:熊谷 美樹
ニホンザルの幼少個体における順位獲得と母親による援助の性差
H30-B91
代:佐々木 基樹
霊長類後肢骨格の可動性
H30-B92
代:小倉 淳郎
協:越後貫 成美
マーモセット幼若精細管のマウスへの移植後の精細胞発生の観察
H30-C1
代:川合 伸幸
協:邱??
サルの脅威刺激検出に関する研究
H30-C2
代:樋口 隆弘
協:平野 満
協:能勢 直子
協:塩谷 恭子
次世代心臓分子画像診断法の開発

論文

H30-C3
代:土屋 萌
福島原発災害による野生ニホンザル胎仔の放射線被ばく影響
H30-C4
代:橋戸 南美
協:松田 一希
同所的に生息する旧世界ザルにおける苦味受容体機能の解明
H30-C5
代:小林 純也
霊長類細胞におけるDNA損傷応答・細胞老化の解析
H30-C6
代:辰本 将司
協:郷 康広
ニシフーロックテナガザルの新規ゲノム配列決定
H30-C7
代:加納 純子
霊長類細胞における染色体反復配列領域の機能解析
H30-C9
代:中道 正之
協:大西 絵奈
飼育下のコモンマーモセット(Callithrix jacchus) 集団における子育てと社会関係について
H30-C8
代:川田 美風
協:森本 直記
マカクザルにおける母体骨盤と児頭の形態関係について
H30-C10
代:中林 一彦
協:小林 久人
霊長類の種特異的ゲノム刷り込み機構確立の解明
H30-C11
代:佐藤 佳
協:伊東 潤平
協:三沢 尚子
協:小柳 義夫
霊長類ゲノム解析を通したウイルス感染制御遺伝子の進化に関する研究
H30-C12
代:堀益 靖
協:服部 登
協:河野 修興
KL-6抗原と生物の進化
H30-C13
代:佐藤 侑太郎
協:狩野 文浩
チンパンジーを対象としたアイ・トラッキングによる社会的認知研究
H30-C14
代:山村 崇
排泄物中に含まれる繁殖制御因子の解析
H30-C15
代:久世 濃子
協:五十嵐 由里子
類人猿における骨盤の耳状面前溝の性差および種差
H30-C16
代:佐藤 宏樹
協:Tojotanjona Razanaparany
チャイロキツネザルの採食戦略における周日行性の意義
H30-C17
代:澤田 晶子
協:牛田 一成
協:土田 さやか
ニホンザルの植物由来の物質に対する分解能の検証
H30-C18
代:酒井 朋子
霊長類の比較脳解剖イメージング研究のためのデータベース・システムの開発
H30-C19
代:渡士 幸一
協:竹内(柴田)潤子
霊長類ヘパドナウイルスのスクリーニングおよびその受容体進化解析
H30-C20
代:西川 真理
協:持田 浩治
協:木下 こづえ
ニホンザルにおける夜間の性行動および配偶者選択

H29
論文 17 報 学会発表 67 件
H29-A1
代:Aye Mi San
Conservation genetics of Myanmar’s macaques: a phylogeographical approach

学会発表
Aye Mi San Temple monkeys and their present situation in Myanmar( November 9, 2017) Workshop on Myanmar Biodiversity and Wildlife Conservation funded by Norwegian Environment Agency( Department of Zoology , University of Yangon, Myanmar).

Aye Mi San, Hiroyuki Tanaka & Yuzuru Hamada Anthropogenic activities on non-human primates in Mon State, Myanmar(December 5-9, 2017) 7th Asian Vertebrate International Symposium(University of Yangon, Myanmar).
Conservation genetics of Myanmar’s macaques: a phylogeographical approach

Aye Mi San

 As Myanmar is located in transition zone of habitat environment for many mammals, phylogeographical study of Myanmar non-human primates (NHP) will contribute the understanding of evolution of Asian NHP. In Myanmar, most of the NHP are threatened due to illegal hunting and habitat degradation by anthropogenic activities. The rhesus macaque (M. mulatta) is not an endangered species. However, conflict between the monkeys and humans is a serious problem. The local extinction is worried because of the over-hunting in the non-protected areas. To avoid the local extinction, adequate population regulation is needed for this species. Information from the phylogeography of this species, especially genetic relationship among local populations, is quite helpful for determining the conservation priority. In this study, I analyzed genetic variations in mtDNA sequence in the rhesus macaques as well as other macaques.
 DNA was extracted from a total of 33 fecal samples comprising four populations from Central Myanmar (Pokokku group, n=6; NGM group, n=4; YTG group, n=7; Powin group, n=16). I determined approximate 1200 bp of the D-loop region for these samples. Next, five rhesus, three stump-tailed and one Assamese macaques from Kachin State, northern Myanmar were analyzed for two mitochondrial regions: D-loop and the 1.8 kb region including the full length of cytochrome b gene and the HVS1 region of D-loop. In order to depict the phylogeography of each species of macaques in Myanmar, I need to analyze more samples to increase data points in Myanmar. Part of the results obtained in this study was presented in the following conferences:
1. Aye Mi San (2017) Temple monkeys and their situation in Myanmar. (Workshop on Myanmar Biodiversity and Wildlife Conservationː Supported by Norwagian Environment Agency 9 Nov 2017)
2. Aye Mi San, Hiroyuki Tanaka & Yuzuru Hamada (2017) Anthropogenic activities on non-human primates in Mon State, Myanmar. (7th Asian Vertebrate International Symposium, 5-9 Dec 2017, Supported by Kyoto University)



H29-A2
代:南本 敬史
協:平林 敏行
協:永井 裕司
協:堀 由紀子
協:藤本 淳
脳活動制御とイメージングの融合技術開発

学会発表
Atsushi Fujimoto, Yukiko Hori, Yuji Nagai, Kevin W McCairn, Toshiyuki Hirabayashi, Masahiko Takada, Tetsuya Suhara, Takafumi Minamimoto Predicted reward value in the rostromedial caudate and the ventral pallidum for goal-directed action in monkeys. (2017.7.22) 日本神経科学学会(幕張).

Y. NAGAI1, B. JI1, Y. XIONG2, J. G. ENGLISH3, J. LIU2, Y. HORI1, K.-I. INOUE4, T. HIRABAYASHI1, A. FUJIMOTO1, C. SEKI1, K. KUMATA1, M.-R. ZHANG1, T. SUHARA1, M. TAKADA4, M. HIGUCHI1, B. L. ROTH3, J. JIN2, T. MINAMIMOTO1 A novel PET ligand for visualizing DREADD expression in the monkey brain(2017.10.5) 日本核医学学会(横浜).

Y. NAGAI1, B. JI1, Y. XIONG2, J. G. ENGLISH3, J. LIU2, Y. HORI1, K.-I. INOUE4, T. HIRABAYASHI1, A. FUJIMOTO1, C. SEKI1, K. KUMATA1, M.-R. ZHANG1, T. SUHARA1, M. TAKADA4, M. HIGUCHI1, B. L. ROTH3, J. JIN2, T. MINAMIMOTO1 A novel PET ligand for visualising cellular and axonal DREADD expression in monkeys(2017.11.12) Society for Neuroscience(Washington DC).

南本 敬史1、三村 喬生1、永井 裕司1、井上 謙一2、須原 哲也1、高田 昌彦2 化学遺伝学とPETイメージングの融合による黒質線条体ドーパミン神経活動制御(2018.1.18) 日本マーモセット研究会.

Takafumi Minamimoto PET imaging-guided chemogenetic manipulation of reward-related circuits in monkeys.(2018.2.12) Advances in Brain Neuromodulation(Roma).
脳活動制御とイメージングの融合技術開発

南本 敬史 , 平林 敏行, 永井 裕司, 堀 由紀子, 藤本 淳

 本研究課題において,独自の技術であるDREADD受容体の生体PETイメージング法と所内対応者である高田らが有する霊長類のウイルスベクター開発技術を組み合わせることで,マカクサルの特定神経回路をターゲットとした化学遺伝学的操作の実現可能性を飛躍的に高めること目指した.H29年度は副作用が懸念されるCNOに替わるDREADDアゴニストとして,clozapine類似化合物の中から脳移行性が高くかつDREADDに親和性の高い「化合物X」(特許出願準備中)を見出した.Xは極少量で脳内局所に発現させた興奮性DREADD(hM3Dq)を活性化させるとともに,Xを放射性ラベルした[11C]XはDREADDの脳内発現を画像化するPETリガンドとしても有用で,高感度にhM4Di/hM3Dqの発現を定量するとともに,陽性神経細胞の軸索終末に発現したDREADDsも鋭敏に捉えることに成功した(NagaiらSFN2017).DREADDと化合物Xにより,サル脳回路操作がより高い信頼性・実用性をもって実施可能となることが期待できる.


H29-A3
代:松本 正幸
協:山田洋
マカクザル外側手綱核の神経連絡
マカクザル外側手綱核の神経連絡

松本 正幸 , 山田洋

 嫌悪的な事象(報酬の消失や罰刺激の出現)を避けることは、動物の生存にとって必須である。研究代表者と所内対応者らの研究グループは、マカクザルを用いた電気生理実験により、外側手綱核と呼ばれる神経核がこのような回避行動の制御に関わる神経シグナルを伝達していることを明らかにしてきた(Kawai et al., Neuron, 2015; Baker et al., J Neurosci, 2016)。ただ、どのような神経回路基盤に基づいて外側手綱核がこのような機能を獲得したのかについてはほとんど明らかになっていない。本研究では、外側手綱核が他の脳領域とどのような神経連絡を持ち、そのシグナルがどの領域に伝達されているのか、またどの領域を起源とするのかを解析することを目的とする。平成29年度は、所内対応者とのディスカッションを通じて、外側手綱核に注入する神経トレーサーの種類や解析対象脳領域、使用するサルなど、実験デザインの詳細を決定した。平成30年度に実験を実施予定であるため、本年度の画像ファイルの提供は見送りたい。


H29-A4
代:関 和彦
協:大屋 知徹
協:梅田 達也
協:工藤 もゑこ
協:窪田 慎治
協:戸松 彩花
複数骨格筋への単シナプス性発散投射構造の解剖学的同定
複数骨格筋への単シナプス性発散投射構造の解剖学的同定

関 和彦 , 大屋 知徹, 梅田 達也, 工藤 もゑこ, 窪田 慎治, 戸松 彩花

 脊髄運動ニューロンに投射するPremotor neuronは大脳皮質、脳幹、脊髄にそれぞれ偏在し、最近の申請者らの電気生理学的実験によってPremotor neuronの複数筋への機能的結合様式が筋活動の機能的モデュール(筋シナジー)を構成することが明らかになってきた。この神経解剖学的実体については全く明らかにされておらず、ヒトの運動制御の理解の発展と、運動失調に関わる筋、神経疾患の病態理解や新しい治療法の開発のためには喫緊の研究課題である。そこで本研究では上肢筋の脊髄運動ニューロンへ投射する細胞(Premotor neuron)の起始核である脊髄、赤核、大脳皮質からの発散性支配様式を解剖学的に明らかにすることによって、霊長類における巧緻性に関わる皮質脊髄路の脊髄運動ニューロンへの直接投射の機能的意義を解剖学的観点から検討する。
 本年度は新たなウィルスベクターの開発を継続して行なった。また、国立精神・神経医療研究センターにおいて、霊長類研究所から供給を受けたAAVベクターの機能評価をマーモセットを対象に行なった。 



H29-A5
代:平松 千尋
協:山下 友子
協:中島 祥好
協:上田 和夫
霊長類における音声コミュニケーションの進化および発達過程の研究

論文

関連サイト
九州大学 芸術工学研究院 感性多様性研究室 http://www.design.kyushu-u.ac.jp/~divsense/
霊長類における音声コミュニケーションの進化および発達過程の研究

平松 千尋 , 山下 友子, 中島 祥好, 上田 和夫

 公益財団法人日本モンキーセンターとの連携研究として、同センターで飼育されている霊長類のうち、チンパンジー、ヤクニホンザル、リスザル、タマリン、ワオキツネザルを主な対象とし、様々な発達段階にある複数個体から音声を録音した。録音は指向性マイクロフォンと高音質なポータブルレコーダーを用いて、個体から約2-6mの位置で行った。現在、これまで当グループが開発してきた方法により、霊長類音声の共通性および相違、発達段階での変化を明らかにする分析を進めている。これまでの共同利用研究と、ヒトの発達段階の音声を合わせて分析した結果では、系統や発達段階を反映すると考えられる音響的特徴の違いが示されつつある。特に、チンパンジーの音声は、ヒト幼児の音声と音響的特徴が近い可能性を示す分析結果を得ており、今年度の録音データを追加することで、明確な成果として示すことを目指している。


H29-A6
代:Kurnia Ilham
The effects of the physical characteristics of seeds on gastrointestinal passage time in captive long-tailed macaques
The effects of the physical characteristics of seeds on gastrointestinal passage time in captive long-tailed macaques

Kurnia Ilham

 I conducted feeding experiment to the captive female long-tailed macaque (N=5 individuals) at PRI Kyoto University to investigate the effect of seeds physical characteristic on their passage time. I used 5 different types of seeds (Melon, Kangkung, Small plastic seed, Medium plastic seed, and Egg plant) with varied dimensions. The different seed size might influence seed movement in the gastrointestinal system. Thus, gut passage time would be influence seed dispersal distance. I tested effect of seed types on the percentage of seed recovery and three variables related to passage time (MRT,TLA and TT). During the study i found the median seed recovery was about 3-32%. Among the three passage time variable, the mean retention (MRT: 24-109h), mean last seed appereance (TLA:13-136h) and the transit time (TT: 22-79h) were signifficantly differ among seed types. The mean rentention time for each seed types were also found significantly differ between individuals. Result of my study implies that havier seeds which have long retention time in the gut would be disperse far from the parent tree. On the contrary, lighter seeds are dispersed near the parent.


H29-A7
代:桃井 保子
協:花田 信弘
協:今井 奨
協:岡本 公彰
協:齋藤 渉
協:宮之原 真由
チンパンジーの口腔内状態の調査と歯科治療法の検討

論文

学会発表
齋藤渉,兼子明久,宮部貴子,友永雅己,桃井保子 京都大学霊長類研究所のチンパンジー1個体に生じた外傷歯に対する歯科処置と術後6年の経過(2017.6.8-9) 日本歯科保存学会2017年度学術大会(第146回)(リンクステーションホール青森).

関連サイト
鶴見大学歯学部 保存修復学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/clinic/270

鶴見大学歯学部 探索歯学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/basic/343
チンパンジーの口腔内状態の調査と歯科治療法の検討

桃井 保子 , 花田 信弘, 今井 奨 , 岡本 公彰 , 齋藤 渉, 宮之原 真由

 同研究所が飼育するチンパンジー14個体のうち,これまで12個体の口腔内診査 (視診,歯周ポケット検査,動揺度検査) を行い,歯科治療を要すると思われる個体をスクリーニングした.そのうち1個体 (処置時:26歳,雌) の上顎左側中切歯に,外傷による歯髄腔露出を伴う歯冠破折および唇側歯肉に瘻孔を認めた.デンタルX線撮影を行ったところ,根尖部歯根膜腔の拡大と根尖部の外部吸収を認め,慢性根尖性歯周炎と診断し,ヒト治療の通法通り根管治療を行った.処置直後のX線検査でガッタパーチャポイントによる緊密な根管充填を確認し,根面をコンポジットレジンで充填した.
 術後8ヶ月と6年での経過観察において瘻孔の消失が確認でき,X線検査で根尖部の外部吸収の進行は認められず,周囲骨組織の不透過性の亢進が確認された.術後6年では残存歯質は黒褐色に着色していたが,歯質表層の軟化は認められなかった.レジン修復は辺縁の一部にわずかな破折を認める程度で脱落や大きな破折は認められず,連続したステップや辺縁着色も認めなかった.
 以上から,チンパンジーの歯の破折と根尖性歯周炎に対して,ヒト歯と同じ処置が有効であることを確認した.本症例は喧嘩や転落等の外傷による破折に起因する根尖性歯周炎と思われる.ヒトに比べ極めて強い咬合力を有するチンパンジーに対して,接着性コンポジットレジン充填を根面のみに限局させ,咬合力がかかりにくいに形態に整復したことが,再破折と再感染を回避できた要因と考えている.



H29-A9
代:河野 礼子
オランウータン臼歯表面の皺を数量化する
オランウータン臼歯表面の皺を数量化する

河野 礼子

 オランウータンの大臼歯エナメル表面に特徴的な「皺(シワ)」について、その特徴や差異を検討するために、3次元デジタルデータをもちいてシワを数量的に評価することを試みた。歯冠全体をマイクロCT撮影したデータから得た表面形状データを利用した。今回は、オランウータン大臼歯7点と、比較のためにギガントピテクス大臼歯4点について、シワの程度を表す2つの変数を指標として比較した。「溝面積」は、溝を咬合面窩の表面形状データから平均曲率が0.4以上となる点として抽出して、咬合面窩全体の投影面積に占める割合として求めた。一方、「起伏度」は、咬合面窩の形状データを強度平滑化(9×9の移動平均を5回)し、前後の表面積の差を投影面積に対する比として評価した。起伏度は隆線の太いギガントピテクスの方が大きいという結果になり、オランウータン特有の細かいシワの評価には必ずしも適していない可能性が示唆されたが、溝面積はオランウータンのシワの多寡によく対応していた。今回抽出した溝の領域から「線」成分を抽出できれば、より細かいシワパターンの特徴を数量的に評価することができると期待される。


H29-A10
代:森本 直記
化石頭蓋形態の推定モデルの作成と検証
化石頭蓋形態の推定モデルの作成と検証

森本 直記

 遺伝的な情報が得られない化石種においては、類縁関係を推定するうえで形態情報が最も重要である。一方で、形態学的な解析にも限界がある。特に、定量分析に必要な解剖学的特徴が欠損している化石種を対象とする場合、現在広く用いられている幾何学的形態計測の手法が適用できない。本研究では、サイズ変異に伴う形態変異(アロメトリー)に着目し、現生種におけるアロメトリーのパターンを「外挿」することで、現生種にみられる形状変異をもとに化石種の形状を推定復元する手法を開発することを目的に研究を行った。
 今年度は、これまでに行ったアロメトリー解析の結果を補強するために、すでに取得済みのデータに加え、補完的にマカク・ヒヒのデータを取得し、定量解析の精度向上に努めた。その結果、前年度までに明らかにしていた、マカクとヒヒに共通なアロメトリーのパターンと、アロメトリーとは無関係な形態変異を確認した(添付画像、第1主成分1と第2主成分に対応)。現在、成果発表へ向けて準備を行っている。



H29-A11
代:宇賀 貴紀
代:三枝 岳志
協:須田 悠紀
判断を可能にする神経ネットワークの解明
判断を可能にする神経ネットワークの解明

三枝 岳志 , 須田 悠紀

 判断形成の神経メカニズムの理解には知覚判断、特にランダムドットの動きの方向を答える運動方向弁別課題を用いた研究が大きな役割を果たしてきた。運動方向を判断する際、大脳皮質中側頭(MT)野が動きの知覚に必要な感覚情報を提供していることは明らかであるが、MT野の情報がどこに伝達され、判断が作られているのかは未解明である。眼球運動を最終出力とする判断を司る脳領域として、大脳皮質外側頭頂間(LIP)野、前頭眼野(FEF)、上丘(SC)などが想定されており、これらの領野で判断関連活動が計測されている。しかし、LIP野を不活性化しても判断に影響はでず、判断関連活動と判断との因果関係が未解決な重要問題として捉えられている。本研究では、化学遺伝学的手法を用い、MT野からのどの出力経路が判断に必須であるかを調べることにより、判断を可能にする神経ネットワークを明らかにすることを目指す。今年度は本研究に必要な種々の準備を行った。具体的には、実験室・手術室の立ち上げ、DREADD実験に関連する各種申請を行い、サル1頭に運動方向弁別課題を訓練した。


H29-A11
代:三枝 岳志
判断を可能にする神経ネットワークの解明
判断を可能にする神経ネットワークの解明

三枝 岳志 , 須田 悠紀

 判断形成の神経メカニズムの理解には知覚判断、特にランダムドットの動きの方向を答える運動方向弁別課題を用いた研究が大きな役割を果たしてきた。運動方向を判断する際、大脳皮質中側頭(MT)野が動きの知覚に必要な感覚情報を提供していることは明らかであるが、MT野の情報がどこに伝達され、判断が作られているのかは未解明である。眼球運動を最終出力とする判断を司る脳領域として、大脳皮質外側頭頂間(LIP)野、前頭眼野(FEF)、上丘(SC)などが想定されており、これらの領野で判断関連活動が計測されている。しかし、LIP野を不活性化しても判断に影響はでず、判断関連活動と判断との因果関係が未解決な重要問題として捉えられている。本研究では、化学遺伝学的手法を用い、MT野からのどの出力経路が判断に必須であるかを調べることにより、判断を可能にする神経ネットワークを明らかにすることを目指す。今年度は本研究に必要な種々の準備を行った。具体的には、実験室・手術室の立ち上げ、DREADD実験に関連する各種申請を行い、サル1頭に運動方向弁別課題を訓練した。


H29-A12
代:藤山 文乃
協:苅部 冬紀
協:中野 泰岳
協:緒方 久実子
協:東山 哲也
霊長類の皮質ー基底核ー視床ループの形態学的解析

論文
Yoon-Mi OhFuyuki KarubeSusumu TakahashiKenta KobayashiMasahiko TakadaMotokazu UchigashimaMasahiko WatanabeKayo NishizawaKazuto KobayashiFumino Fujiyama(2017) Using a novel PV-Cre rat model to characterize pallidonigral cells and their terminations Brain Structure and Function 222:2359-2378.

霊長類の皮質ー基底核ー視床ループの形態学的解析

藤山 文乃 , 苅部 冬紀, 中野 泰岳, 緒方 久実子, 東山 哲也

 本研究では、最終的には霊長類での解明を目指しているが、パーキンソン病の原因物質であるドーパミンニューロンに、大脳基底核の淡蒼球外節細胞がどのように投射するのかを調べるために、所内対応者の高田昌彦教授にパルブアルブミン(PV)発現細胞特異的にCreを発現するPV-CreRatを提供していただいた。このラットを使用して、淡蒼球外節パルブアルブミンニューロンの終末が黒質緻密部の特定の領域に優位に分布することを明らかにした。さらに、淡蒼球外節のパルブアルブミン細胞の活性化によって黒質緻密部のドーパミン細胞が強く抑制されることを電気生理学的に証明した(Oh, Karube et al., Brain Structure and Function, 2017)。
 現在は所内対応者の高田昌彦教授にご提供いただいたマーモセットを用いた実験を進めている。この研究によって、動物種を超えたドーパミンニューロンへの調節制御が明らかになると考えている。



H29-A13
代:石垣 診祐
協:遠藤 邦幸
FUS抑制マーモセットモデルにおける高次脳機能解析
FUS抑制マーモセットモデルにおける高次脳機能解析

石垣 診祐 , 遠藤 邦幸

 ヒトのFTLD患者で確率逆転学習において特異的な所見が存在したことから、これに類する高次脳機能行動バッテリーの開発を霊長類研究所で行い、実際のモデルを用いた研究を名古屋大学医学研究科で実施するために、マーモセットの飼育を開始し、高次脳機能解析のセットアップを行った。 マーモセットの飼育室内で5回/週を上限として1頭あたり1回に1時間程度の行動実験訓練を合計で8頭に対し開始した。具体的にはマーモセットの飼育ケージの前面扉に認知実験装置を装着し、マーモセットに画面をタッチさせることで実験を行った。 マーモセットに1対の視覚刺激を提示して、その1つをタッチすると報酬が与えられる。他方にタッチすると誤反応となる。 この図形弁別課題を学習させた後、逆転学習課題を実施する予定である。ヒトの患者で用いている確率逆転学習課題に類似した課題の開発にも着手した。


H29-A14
代:齋藤 亜矢
芸術表現の霊長類的基盤に関する研究
芸術表現の霊長類的基盤に関する研究

齋藤 亜矢

 チンパンジーとアーティストが共同で絵画を制作する試みから、それぞれの描画表現の特徴を明らかにする研究の1年目として実施した。チンパンジーが描いた絵にアーティストが加筆する、アーティストが描いた絵にチンパンジーが加筆する、という2つの条件で、それぞれの絵の特徴や制作のプロセスを比較するものである。今年度は、相互に制作プロセスが見える条件で実施する本実験に先だって、制作プロセスを見せず、描いた絵のみで加筆のやりとりをする予備実験をおこなった。まずアーティストに自由に絵を描いてもらい、その様子を映像で記録した。次に、チンパンジーのアイに、その絵に加筆してもらった。アイはすでに絵が描かれた部分を避けてふちどるようになぐりがきをした。2018年度にも研究を継続し、相互に制作プロセスが見える条件での実験にすすむ予定である。また当該年度は、霊長類研究所のチンパンジーの過去の絵画作品の電子データ化も進めた。そのほか、チンパンジーの絵画作品を沖縄科学技術大学院大学で実施された人工知能美学芸術展への出品、日本モンキーセンターで開催中の霊長類アート展への出品と展示協力をおこなった。


H29-A15
代:田中 真樹
協:竹谷 隆司
協:鈴木 智貴
協:亀田 将史
行動制御における皮質下領域の機能解析
行動制御における皮質下領域の機能解析

田中 真樹 , 竹谷 隆司, 鈴木 智貴, 亀田 将史

 大脳皮質の機能は視床を介した小脳や大脳基底核からの皮質下信号によって調節されている。分子ツールをニホンザルに適用した複数の実験を進め、小脳外側部と大脳視床経路の機能を探ることを目的に研究を進めてきた。実験1では小脳に化学遺伝学的手法を適用することを予定していたが、CNOの副作用の問題もあり、H29年度は遺伝子導入は行わず、予備実験として小脳核ニューロンの記録実験を行った。実験2では、視床-大脳間の情報処理を明らかにするため、大脳視床路を光遺伝学的に抑制することを試みた。前年度に京大からウイルスベクターを提供していただき、H29年前半まで北大で遺伝子導入個体を用いて光刺激実験を行った。遺伝子導入後半年ほどで反応性が悪くなり、H29年7月に組織採取して京大で免疫組織学的検討を行ったところ、ベクター接種部位の多くの細胞が脱落していることが分かった。導入遺伝子の発現量が多いため、長期的に細胞死を引き起こすものと考え、接種後早期の発現を京大で再確認していただいた。結果、同株のベクターでは接種後約1か月の時点では細胞死はみられず、導入遺伝子の強発現が見られることが確認できたため、年明けから再度ベクターを作成していただいた。その間、北大にて新たな個体を用意して課題の訓練と補足眼野のマッピングを行い、H30年度4月初旬に2頭目への遺伝子導入を行った。今後、遺伝子発現を待って、光刺激実験を再開する。


H29-A16
代:福田 真嗣
協:福田 紀子
協:村上 慎之介
協:伊藤 優太郎
協:石井 千晴
脳機能におよぼす腸内細菌叢の影響
脳機能におよぼす腸内細菌叢の影響

福田 真嗣 , 福田 紀子, 村上 慎之介, 伊藤 優太郎, 石井 千晴

 ヒトを含む動物の腸内には、数百種類以上でおよそ100兆個にも及ぶとされる腸内細菌が生息しており、その集団を腸内細菌叢と呼ぶ。腸内細菌叢は宿主腸管と密接に相互作用することで、複雑な腸内生態系を構築しており、宿主の生体応答に様々な影響を及ぼしていることが報告されている。近年、無菌マウスを用いた研究や抗生物質を投与したマウスを用いた研究において、腸内細菌叢が脳の海馬や扁桃体における脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生量に影響を与え、その結果マウスの行動に変化が現れることが報告されている(Heijtz, et al., PNAS, 108:3047, 2011)。これは迷走神経を介した脳腸相関に起因するものであることが示唆されているため、腸内細菌叢が宿主の脳機能、特に情動反応や記憶力に影響を及ぼす可能性が感がえられる。しかし、マウスを用いて情動反応や記憶力と腸内細菌叢との関係を調べるには、げっ歯類では限界があると考えられることから、本研究では小型霊長類であるコモンマーモセットに着目し、高次脳機能、特に情動反応や記憶力と腸内細菌叢との関係について解析を行った。本年度は高次脳機能評価を行うための課題訓練と、図形弁別課題およびその逆転学習課題を訓練した。さらに、記憶機能を検討するため空間位置記憶課題も訓練した。これらのマーモセットの便を採取し、次世代シーケンサーを用いて腸内細菌叢解析を行った。得られた腸内細菌叢情報と認知機能情報について、相関解析や多変量解析手法を用いてアプローチし、認知機能に関連する腸内細菌叢の探索を行った。


H29-A17
代:Tshewang Norbu
Ecological and phylogeographical study on Assamese macaques in Bhutan
Ecological and phylogeographical study on Assamese macaques in Bhutan

Tshewang Norbu

 I investigated mitochondrial DNA (mtDNA) variations of the macaques inhabiting along two major river systems (Amochhu and Wangchhu) in the west of Bhutan. In this study, I aimed to focus on whether the distribution of rhesus and Assamese macaques were sympatric or allopatric in the study area. In addition, the analysis of samples taken from Sakten area in the east of Bhutan was also preliminarily done for comparative study. Following previous methodology, samples extracted from fecal materials were subjected to sequencing of mtDNA non-coding region and to alignment with previous data for the phylogeographical assessment. The result suggested that the habitat of rhesus macaques is restricted to the bordering area with India in less than 300 m asl (above sea level). Distribution of Assamese macaques is dominated in other study sites of west Bhutan in this study. Thus, the zoogeographical distribution of the two macaques is likely to be allopatric or parapatric at least in west Bhutan. Meanwhile, river system specific haplogroup, known in the central mountainous area of Honshu island in Japan, was unclear in west Bhutan. Though sex identification was incomplete for obtained samples, this result was supported only by female samples for which sexing by PCR succeeded. Therefore, it may not be reasonable to explain the evolutionary change of Assamese macaques in the study area only by unidirectional population expansion along the river systems. In the preliminary examination for the samples from Sakten area in east Bhutan, I detected several mtDNA haplotypes that had not been found in previous study. It is necessary to increase the numbers of study sites and samples in future to evaluate phylogeographical status of monkeys living in the area.


A map showing the major river systems in Bhutan. I investingated macaque populations along Amochhu and Wangchhu rivers in west Bhutan in this study.


H29-A18
代:橋本 均
協:中澤 敬信
協:笠井 淳司
長類脳の全細胞イメージングと神経回路の全脳解析

論文
Kaoru Seiriki, Atsushi Kasai, Takeshi Hashimoto, Wiebke Schulze, Misaki Niu, Shun Yamaguchi, Takanobu Nakazawa, Ken-ichi Inoue, Shiori Uezono, Masahiko Takada, Yuichiro Naka, Hisato Igarashi, Masato Tanuma, James A. Waschek, Yukio Ago, Kenji F. Tanaka, Atsuko Hayata-Takano, Kazuki Nagayasu, Norihito Shintani, Ryota Hashimoto, Yasuto Kunii, Mizuki Hino, Junya Matsumoto, Hirooki Yabe, Takeharu Nagai, Katsumasa Fujita, Toshio Matsuda, Kazuhiro Takuma, Akemichi Baba, Hitoshi Hashimoto(2017) High-Speed and Scalable Whole-Brain Imaging in Rodents and Primates Neuron 94(6):1085-1100.

学会発表
Atsushi KASAI, Kaoru SEIRIKI, Takeshi HASHIMOTO, Misaki NIU, Shun YAMAGUCHI, Yuichiro NAKA, Hisato IGARASHI, Masato TANUMA, Takanobu NAKAZAWA, Ken-ichi INOUE, Masahiko TAKADA, Katsumasa FUJITA, Hitoshi HASHIMOTO FAST, High-speed serial-sectioning imaging for whole brain analysis with high scalability(2017年11月13日) Neuroscience2017(ワシントンDC(米国)).

Atsushi Kasai FAST, high-speed serial-sectioning imaging for whole-brain analysis with high-scalability(2018年3月10日) 日本薬理学会関東部会(次世代薬理学セミナー)(東京).
長類脳の全細胞イメージングと神経回路の全脳解析

橋本 均 , 中澤 敬信, 笠井 淳司

 本年度は、我々が最近開発した、サブミクロンの空間解像度の全脳イメージングを世界最速で行うことが可能な光学顕微鏡システムFASTを用いて、成体マーモセット脳を単一細胞レベルで観察した。それらの画像データから、脳形態や細胞密度の違いを検出することに成功した。ヒト脳とげっ歯類の脳構造。機能には異なる点が多く、ヒト脳機能や治療法確立のためには、その間を橋渡しする霊長類の脳解析として極めて重要である。また、昨年度の回路構造の結果と合わせ、本成果を論文化した(Seiriki et al. Neuron, 94:1085-1100 (2017))。


H29-A19
代:南部 篤
協:畑中 伸彦
協:知見 聡美
協:佐野 裕美
協:長谷川 拓
協:纐纈 大輔
協:若林 正浩
協:Woranan Wongmassang
協:Zlata Polyakova
遺伝子導入法による大脳基底核疾患の病態に関する研究
遺伝子導入法による大脳基底核疾患の病態に関する研究

南部 篤 , 畑中 伸彦, 知見 聡美, 佐野 裕美, 長谷川 拓, 纐纈 大輔, 若林 正浩, Woranan Wongmassang, Zlata Polyakova

 パーキンソン病の病態を明らかにするため、ドーパミン作動性神経細胞に選択的に働く神経毒であるMPTP (1-methy-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine) の投与により作製したパーキンソン病モデルサルの神経活動を覚醒下で記録した。大脳基底核の出力部である淡蒼球内節では、自発発火頻度に変化はなく、大脳皮質運動野の電気刺激に対する応答様式が変化していた。この結果は、出力部の平均発火頻度の変化ではなく、大脳皮質-大脳基底核経路を介した淡蒼球内節における一過性のphasicな伝達様式の異常が、パーキンソン病症状の発現に寄与していることを示唆している。即ち、以下のような病態メカニズムにより、無動や寡動が起こると考えられる。淡蒼球内節はGABA作動性の抑制性ニューロンで構成され、常時連続発火することによって、その投射先である視床と大脳皮質を抑制している。正常な状態では、直接路を介した入力によって淡蒼球内節が一時的に抑制されると、脱抑制によって視床と大脳皮質の活動が増大し運動を起こす。一方、パーキンソン病では大脳皮質からの入力によって淡蒼球内節が十分に抑制されず、視床と大脳皮質に対する抑制を解除出来ないと考えられる。


H29-A21
代:筒井 健一郎
協:大原 慎也
協:中村 晋也
協:細川 貴之
サル内側前頭葉を起点とする領域間回路の解析とうつ病モデルの創出
サル内側前頭葉を起点とする領域間回路の解析とうつ病モデルの創出

筒井 健一郎 , 大原 慎也, 中村 晋也, 細川 貴之

 京都大学霊長類研究所の高田昌彦教授の研究室を訪れ、設備について見学をし確認をするとともに、高田教授および井上謙一助教と研究計画について話し合った。具体的には、まず、過去の知見を参考にしながら、神経トレーシング実験におけるウイルスベクターの注入部位を、各標的脳領域(前部帯状皮質、扁桃体、側坐核)毎に検討した。さらに、実際に用いるウイルスベクターやその組み合わせについて検討した。今後は、これらの検討に基づき神経トレーシング実験を行い、その結果を受けて経路選択阻害実験に着手する予定である。


H29-A22
代:石田 裕昭
協:西村 幸男
マカクザル前頭極の多シナプス性ネットワークの解明
マカクザル前頭極の多シナプス性ネットワークの解明

石田 裕昭 , 西村 幸男

 前頭極 (Brodmann area 10; BA10)は霊長類の前頭前野に固有の最前端領域で、ヒト脳において最も大きく発達している。本研究はサル脳を用いて、BA10の大脳基底核のループ回路の構造を明らかにするために、順行性、逆行性コンベンショナル・トレーシング法と狂犬病ウイルスを用いた逆行性越シナプス・トレーシング法を組み合わせ、マカクザルBA10の2次シナプスまでの神経ネットワークを解析した。BDA(biotinylated dextran amines)を用いBA10から大脳基底核への順行性投射を調べた結果、前部(head)および後部(body, tail)尾状核、視床下核腹内側部に神経終末が認められた。次にFB(fast blue)と狂犬病ウイルスを用い、大脳基底核からBA10への1次、2次シナプス投射をそれぞれ調べた。その結果、FBによる逆行性1次ラベルは、視床MDmcと内側視床枕に認められた。狂犬病ウイルスによる2次シナプスのラベルは、主に黒質網様部 (SNr)の背外側部および腹内側部の両方に認められた。前部淡蒼球内節(GPi)の背側部と腹側部にラベルが認められた。データの詳細は現在解析中である。今後はBA10と大脳基底核のループ回路の構造を3次シナプスまで解明し、BA10と大脳基底核の機能連関を明らかにする。


H29-A23
代:伊村 知子
ヒトとチンパンジーにおける「平均」の知覚に関する比較認知研究
ヒトとチンパンジーにおける「平均」の知覚に関する比較認知研究

伊村 知子

 昨年度(2016年度)の共同利用研究に続いて、場面全体の特徴の「平均」を瞬時に知覚する能力の1つであるアンサンブル知覚についてチンパンジーとヒトを対象に検討した。その結果、複数の対象の大きさの「平均」だけでなく、複数の対象の鮮度のような質感の「平均」も知覚できる可能性が示唆された。これまでの成果を論文等にまとめて発表した(Imura, Kawakami, Shirai, & Tomonaga, 2017, Proceedings of Royal Society B; 伊村知子・友永雅己, 2017, 科学)。
 一方、年度の後半には、鮮度以外の質感知覚の感度を詳細に検討するため、チンパンジー2個体を対象に、CGを用いて作成した人工物の光沢の強さの識別課題を実施した。画面に呈示された4枚の物体の画像の中から、1枚だけ光沢の強さが異なるものを選択させた。その結果、チンパンジーは、光沢の強さの違いを識別するのが困難であった。食物の鮮度にまつわる光沢の違いを識別したのに対し、人工物の光沢の強さを識別しなかった理由については、今後さらに検討する必要がある。



H29-A24
代:Islamul Hadi
Hot-spring bathing Behavior of Long-Tailed Macaques and Japanese Macaques: A Comparative Study
Hot-spring bathing Behavior of Long-Tailed Macaques and Japanese Macaques: A Comparative Study

Islamul Hadi

 I conducted observation in Jigokudani Monkey Park, Nagano in 2 to 6 of December 2017. During this observation, I counted 160 individuals of provisioned Japanese macaque live in the park. During four days observation, I found some individuals of Japanese macaque took bathe in the man-made hotspring pool in the park. I recorded 292 minutes of duration of hotspring bathing exhibitted by monkeys. The behavior also exhibitted in 23 session during 4-days observation. The behavior is mostly occured in the morning and aftenoon. The duration of behavior each session vary within 1 to 63 minutes with the mean 12.7 minutes per session. Number of individuals those took bathe in the hot-spring pool were 1 to 20 individuals per session. The adult females and juveniles were most frequent to be observed took bathe.Compared to long-tailed macaque in Mt. Rinjani, Lombok-Indonesia in August 2008, where the hot-spring bathing behavior also reported, the Japanese macaque spent longer duration to take bathe than those in long-tailed macaque (10.7 minutes) and 3 session within 3-days observation. Four to six individuals ( adult males, adult females, sub-adult males) were exhibitted the behavior. The hot-spring bathing in long-tailed macaque observed only occured during morning, while Japanese macaques did both inthe morning and afternoon.


Two adults long-tailed macaques took hotspring bathing in Pengkereman of Mount Rinjani Lombok Indonesia


Sub-adult males and juvenile of Long-tailed macaques took hotspring bathing in Pengkereman of Mount Rinjani Lombok Indonesia


Two adult females and juvenile of Japanese macaque took hotspring bathing in Jigokudani Monkey park


H29-A25
代:Hao Luong Van
Phylogeograpical study of the slow loris for conservation and reintroduction

学会発表
Tanaka H, Luong HV, San AM, Hamada Y Development of a mitochondrial marker for conservation genetics of slow loris(2017.7.15-17) 日本霊長類学会大会(福島市).
Phylogeograpical study of the slow loris for conservation and reintroduction

Hao Luong Van

 The slow loris is listed as ‘Vulnerable’ in the IUCN Red List because they are being overhunted for the illegal pet trade, used for meat and as ingredients of traditional medicine. In Vietnam, two species (Nycticebus bengalensis and N. pygmaeus) are found. The Center for Rescue and Conservation of Organisms (CRCO) of Hoang Lien National Park protects diverse organisms, including the slow loris, and tries to reintroduce them to the wild. However, it is hard to get information about the original habitat of confiscated animals. The purpose of the study is to accumulate mtDNA sequence data from slow loris of known origin, in order to establish a tracking system that infers the origin of these protected animals using DNA information.
 In 2017, I analyzed nine slow lorises (N. bengalensis: n=5, N. pygmaeus: n=4) that had been protected at CRCO. DNA extraction was carried out using hair samples. Two-step PCR was performed in order to avoid amplifying NUMT as follows: firstly, we amplified the 9 kb region of mtDNA by Long-PCR using total DNA, and next the target 1.8 kb region spanning a full length of cyt b gene and HVS1 of D-loop was amplified by using a long-PCR product as template DNA. DNA sequencing was performed with 3130 Genetic Analyzer. The sequence data obtained here was aligned with dataset that included the samples of two species from northern Vietnam collected in 2014 and 2015 and samples of N. bengalensis from Myanmar (n=2) and Laos (n=1). Loris tardrigradus (GenBank Accession No. AB371094) was used as an outgroup and three species of slow loris (N. bengalensis: NC_021958, N. coucang: NC_002765, and N. pygmaeus: KX397281) were analyzed for comparison.
 The result of phylogenetic analysis showed the suggestive data. All the individuals of N. pygmaeus had the identical sequence for the target mtDNA region even though the target sequence is the most variable region in mtDNA. Two individuals of N. bengalensis protected in Soc Son Rescue Center, Hanoi were closely related to the GenBank sequence of N. coucang. The GenBank sequence of N. bengalensis connected to the above cluster of N. coucang + two individuals from Hanoi, hence this sequence data is questionable about the identification of species. The genetic marker used in this study is can be applicable to the phylogeogaraphy study of N. bengalensis because it showed intra-specific variations.



H29-A26
代:諏訪 元
協:佐々木 智彦
協:小籔 大輔
協:清水 大輔
人類出現期に関わる歯と頭蓋骨の形態進化的研究
人類出現期に関わる歯と頭蓋骨の形態進化的研究

諏訪 元 , 佐々木 智彦, 小籔 大輔, 清水 大輔

 前年度中に新たに発見されたチョローラ層出土の類人猿化石の同定と初期評価を進めると共に、ラミダスとアウストラロピテクス各種、さらには中新世類人猿のウラノピテクス、ヒスパノピテクス、プロコンスル等について、ベーズ法による犬歯の性差の数量解析を行った。それぞれの種において、雌雄ごとの歯冠最大径の平均値と雌雄共通の分散対数値を推定し、サンプルと性内の変異(それぞれ変動係数)と雌雄平均値比の確立密度分布をMCMC法で導出し、現生の類人猿とヒトの性差と比較した。結果、中新世の類人猿は、ウラノピテクスが最小であったが、それでも現生大型類人猿程度、ヒスパノピテクスとプロコンスルはゴリラ程度かそれ以上の大きな性差を示した。初期人類では、かつてはサンプル変動係数が大きいため、性差がボノボ程度に大きいと報告されていたアファレンシス始め、アウストラロピテクスの各種はそれぞれ現代人に近い小さな性差を持つことが示された(雌雄の平均比が1.12から最大1.16程度)。ラミダスの犬歯の歯冠径の性差についても同程度の推定結果が得られ、Suwa et al.(2009)による簡易推定の結果を検証すると共に、雄の犬歯サイズの縮小が人類の系統の初期に起きたとする仮説を改めて支持する結果が得られた。


H29-A27
代:植木 孝俊
協:尾内 康臣
高等霊長類成体脳神経新生の動態と機能のin vivo解析技術の創出
高等霊長類成体脳神経新生の動態と機能のin vivo解析技術の創出

植木 孝俊 , 尾内 康臣

 カニクイザルのgenomicライブラリーよりサルの神経幹細胞で特異的に遺伝子発現を誘導するためのnestin遺伝子プロモーターと同エンハンサーをクローニングし、その活性をマーモセットの神経幹細胞初代培養系で確認した後、名古屋市立大学にてEGFP発現レンチウイルスおよびHSV1-sr39tk発現レンチウイルスを脳海馬歯状回に顕微注入し、その神経幹細胞特異的な発現を免疫組織化学的に確認した。次年度には、これらサルに適用可能な遺伝子発現系の構築を踏まえ、成体脳神経新生動態のPETイメージングおよび神経新生障害病態モデルの作出・症状解析を開始することができる見込みである。


H29-A28
代:小林 和人
協:菅原 正晃
協:加藤 成樹
協:渡辺 雅彦
協:内ヶ島 基政
協:今野 幸太郎
ウイルスベクターを利用した神経回路操作技術による霊長類脳機能の解明
ウイルスベクターを利用した神経回路操作技術による霊長類脳機能の解明

小林 和人 , 菅原 正晃, 加藤 成樹, 渡辺 雅彦, 内ヶ島 基政, 今野 幸太郎

 霊長類の高次脳機能の基盤となる脳内メカニズムの解明のためには、複雑な脳を構成する神経回路の構造とそこでの情報処理・調節の機構の理解が重要である。我々は、これまでに、高田教授の研究グループと共同し、マカクザル脳内のニューロンに高頻度な逆行性遺伝子導入を示すウイルスベクター (HiRet/NeuRetベクター)を開発するとともに、これらのベクターを用いて特定の神経路を切除する遺伝子操作技術を開発した。また、高田教授・中村教授との共同研究により、コモンマーモセットを用いた脳構造と機能のマップ作製の研究を推進するために、HiRet/NeuRetベクター技術はマーモセット脳内においても高効率な遺伝子導入を示すことを明らかにした。本年度は、視床線条体路の選択的除去を誘導するための予備実験として、融合糖タンパク質E型 (FuG-E) を用いてシュードタイプ化したNeuRetベクターを作成し、これをマーモセットの尾状核と被殻のそれぞれに注入し、ベクターの導入パターンを解析した。尾状核への注入は束傍核を標識し、被殻への注入は内側中心核を標識し、両者の経路が選択的な投射パターンを持つことを明らかにした。視床線条体路を欠損する動物を用いて、運動機能と認知機能を評価するための予備実験として、野生型マーモセットの視覚弁別課題のテストを行った。認知機能の評価には、中村教授によって開発されたマーモセットの認知機能のテストバッテリーを利用した。
 逆行性導入に関わる新規の融合糖タンパク質機能を評価するために、FuG-E型糖タンパク質の変異体を用いて作成したウイルスベクターをマーモセット脳内に注入し、従来のFuG-E型ベクターの効率と比較検討した。FuG-E変異体については、N末端より440番目のアミノ酸をグルタミン酸に変異させたタンパク質(FuG-E/P440E)がマウス脳内への遺伝子導入が最も高い効率を示すことから、このベクターをマーモセット線条体に注入した結果、大脳皮質、視床、黒質の多数の神経細胞への遺伝子導入を確認した。



H29-B1
代:島田 将喜
協:古瀬 浩史
協:坂田 大輔
奥多摩湖周辺の野生ニホンザル「山ふる群」の調査と環境教育
奥多摩湖周辺の野生ニホンザル「山ふる群」の調査と環境教育

島田 将喜 , 古瀬 浩史, 坂田 大輔

 2013年度から継続されてきた山ふる群を対象とするフィールド調査を実施した。昨年度まで80数頭程度で安定していた集団サイズについて、今年度山ふる群の推定最大頭数は66頭であり、昨年度までからは大きく減少した。サルの直接観察が十分ではなかったものの、今年度採食回数が多かった食物は、草本類、オニグルミの種子、つる性植物であった。前年度に引き続き、山ふる群のサルが民家付近の農作物や果樹などを採食する行動は、一度も観察されなかった。遊動域は山のふるさと村を中心とする狭い範囲に集中しており、昨年度までと異なりダムサイトへの出現が認められなかった。解放水域を除く推定遊動面積は13.0km2であった。他地域の野生ニホンザルの遊動域面積に比べて広いと考えられるが、2015年度の推定遊動面積33.0km2をピークに2年連続で前年度より少なく見積もられた。現在の山ふる群の遊動域は、民家の多い湖北に向かって大きくなった事実はなく、自然林に近い南~南東に向かって広がっていると考えられる。集団サイズと遊動面積の減少は、山ふる群の分裂の可能性を示唆するものである。調査中にそうした兆候に観察者が気づいたことはなかったが、今後も調査を継続することによって、分裂が現実に生じたのか、これまでも頻繁に観察されてきた分派が常態化しているだけなのかについて、手掛かりを得る必要がある。


H29-B2
代:Heui-Soo Kim
協:Hee-Eun Lee
Epigenomics and Evolutionary Analysis of HERV-K LTR elements in various primates

論文
Yi-Deun Jung, Hee-Eun Lee, Ara Jo, Imai Hiroo, Hee-Jae Cha, Heui-Soo Kim( 2017) Activity analysis of LTR12C as an effective regulatory element of the RAE1gene Gene 634: 22-28.

学会発表
Hee-Eun Lee, Hee-Jae Cha, Imai Hiroo, Heui-Soo Kim Comparison of Human Endogenous Retrovirus K Expression in Various Tissues of Primates and Humans( 2017.02.08-2017.02.10) The 13th KOGO winter Symposium 2017( HongCheon, Republic of Korea).

Hee-Eun Lee, Hee-Jae Cha, Takashi Hayakawa, Imai Hiroo, Heui-Soo Kim Correlation of Human Endogenous Regrovirus K (HERV-K) Expression in Various Tissues of Primates and Human( 2017.08.03-2017.08.04) The 58th Annual Meeting and International Symposium of Korean Society of Life Science( Gyeongju, Republic of Korea).

Hee-Eun Lee, Hee-Jae Cha, Takashi Hayakawa, Imai Hiroo, Heui-Soo Kim Analysis of Human Endogenous Retrovirus K (HERV-K) Expression in Primates and Human( 2017.08.09-2017.08-10) The 72th Annual Meeting of The Korean Association of Biological Sciences(Yongin, Republic of Korea).

Hee-Eun Lee, Hee-Jae Cha, Takashi Hayakawa, Imai Hiroo, Heui-Soo Kim Human Endogenous Retrovirus K (HERV-K) Expression in Primates including Human( 2017.10.26-2017.10.27) International Conference of the Genetics Society of Korea 2017( Seoul, Republic of Korea).

Hee-Eun Lee, Yi-Deun Jung, Yuri Choi, Hee-Jae Cha, Heui-Soo Kim Activity Analysis of an LTR12C as a productive regulatory element in RAE1 Gene( 2017.10.26-2017.10.27) International Conference of the Genetics Society of Korea 2017( Seoul, Republic of Korea).
Epigenomics and Evolutionary Analysis of HERV-K LTR elements in various primates

Heui-Soo Kim , Hee-Eun Lee

 Human endogenous retroviruses (HERVs) and related sequences account for ~8% of the human genome. It is thought that HERVs are derived from exogenous retrovirus infections early in the evolution of primates. HERV-K is the most biologically active family because it retains the ability to encode functional retroviral proteins and produce retrovirus-like particles. To better understand the regulatory mechanism of HERV-K expression, we characterize the structure of HERV-K50F family LTRs (sequences, transcription factors binding). The sequence of human HERV-K50F was analyzed to check the difference of the structures with various primates. The structures of each HERV-K50F in primates including human was different. Orangutan had shorter LTRs compared with others. Additionally, for the epigenetics studies, the HERV-K50F sequence was analyzed to check the CpG islands. There were some CpG sites and we were able to get the methylation primer including 10 CpG sites. For the further studies, we will continue the methylation studies in primates, and a new project about the miRNAs.


H29-B3
代:古川 貴久
協:大森 義裕
協:茶屋 太郎
霊長類の網膜の形成と維持を制御する分子機能の解析
霊長類の網膜の形成と維持を制御する分子機能の解析

古川 貴久 , 大森 義裕, 茶屋 太郎

 私達は、アカゲザルまたは、ニホンザルなどの霊長類の網膜の遺伝子発現解析を行うことで、黄斑に特異的に発現する遺伝子群の同定を試みた。現在、平行して黄斑を持つ脊椎動物である、鳥類モデルの黄斑の研究を進めている。これら二つの生物種から得られた情報を統合することで、黄斑の形成・維持の普遍的なメカニズムを解明する。
 本年度は、新生仔のアカゲザル2頭、生後2年のニホンザル2頭の眼球を採取した。まず、眼球を摘出し、ハサミ等で解剖し網膜組織を単離した。網膜を黄斑を含む中央部分と、周辺部分(上下内側外側)の領域に分けサンプルとして凍結保存した。これらの組織からTrizol試薬を用いてRNAを精製した。得られたtotal RNAを用いて逆転写酵素によりcDNAを合成した。内在性遺伝子のコントロールとしてはGAPDHを用いた。黄斑部で少ない桿体視細胞に発現する遺伝子であるRhodopsinのプライマーを用いてQPCR解析を行ったところ、Rhodopsinの発現は黄斑部分では遺伝子発現が有意に低下していることを確認した。現在、中心窩部分での発現が変動する遺伝子の候補に対するプライマーを用いて遺伝子発現の変化の観察を行っている。これらの研究を進めることでヒトを含む霊長類において黄斑部位の形成や維持に重要な遺伝子を見出すことが期待される。



H29-B5
代:佐藤 佳
協:小柳 義夫
協:三沢 尚子
協:中野 雄介
協:中川 草
協:上田 真保子
霊長類ゲノム解析を通したウイルス感染制御遺伝子の進化に関する研究
霊長類ゲノム解析を通したウイルス感染制御遺伝子の進化に関する研究

佐藤 佳 , 小柳 義夫, 三沢 尚子, 中野 雄介, 中川 草, 上田 真保子

 申請者を含めたこれまでの先行研究から、インターフェロンを含めた自然免疫関連遺伝子や、APOBEC3やtetherinと呼ばれる内因性免疫遺伝子が、レンチウイルスの複製制御に寄与していることが、ウイルス学的実験から明らかとなっている。そして、興味深いことに、これらの遺伝子は進化的に正の選択を受けており、種によって配列が多様である。本申請研究では、レンチウイルスの複製制御に寄与している霊長類の遺伝子配列情報を同定し、その進化的意義を分子進化学的手法により明らかにすることを目的とする。本年度は、検体分与の可能性も含め、共同研究の方向性について、霊長類研究所において、今井准教授らと共同研究打ち合わせを実施した。


H29-B6
代:城戸 瑞穂
協:合島 怜央奈
協:吉本 怜子
口腔における感覚受容機構の解明
口腔における感覚受容機構の解明

城戸 瑞穂 , 合島 怜央奈, 吉本 怜子

 適切な口腔感覚は、哺乳・摂食・情報交換など行動の基盤として重要な役割を果たしている。ところが、温度感覚や唐辛子や胡椒などのスパイスなどのへ感覚、あるいは、触圧感覚などについてはほとんど理解されていない。これまでマウスを対象として研究を進めてきた結果、口腔の上皮にセンサーであるtransient receptor potential channel(TRPチャネル)の発現があること、粘膜に分布する神経線維にも発現が認められること、また炎症等により粘膜に分布する神経線維の分布が増加すること等がわかってきた。そこで、霊長類における口腔感覚機構解明を狙い、センサーの発現を明らかにするため、条件検討を進めた。本年度は、対照組織としてニホンザルの新たな採材の機会があり、口腔組織および三叉神経節を得た。そこで、実験条件の検討を進めることができた。さらに、新たな抗体も精製が進んだことから、霊長類での発現解析の条件検討を工夫しているところである。齧歯類では安定している一方で霊長類組織では、タンパク発現については検討に時間を要しており、感度の高い方法等での検討をさらに進める予定である。


H29-B7
代:山下 俊英
協:貴島 晴彦
サル脊髄損傷モデルを用いた軸索再生阻害因子とその抗体による神経回路修復に関する研究
サル脊髄損傷モデルを用いた軸索再生阻害因子とその抗体による神経回路修復に関する研究

山下 俊英 , 貴島 晴彦

 脊髄損傷後に軸索再生阻害因子のひとつであるRGMの発現が損傷周囲部に増加していることをサルモデルを用いて明らかにするとともに、このRGMの機能を阻害することによって運動機能が回復することを検証した。すなわち、脊髄損傷後のRGM作用を抑制することにより、神経可塑的変化が促進され、運動機能回復につながることが示唆された。本研究成果は、原著論文としてCerebral Cortex誌に受理された。
Nakagawa H, Ninomiya T, Yamashita T, Takada M (2018) Treatment with the neutralizing antibody against repulsive guidance molecule-a promotes recovery from impaired manual dexterity in a primate model of spinal cord injury. Cereb Cortex, in press.



H29-B8
代:浅川 満彦
協:萩原 克郎
東北および四国地方に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生虫症および感染症に関する疫学調査

論文
浅川満彦・外平友佳理・岡本宗裕(2017) 輸入サル類の潜在的な寄生虫病-特に、医学用実験動物として利用されるカニクイザル Macaca fascicularis の検疫中に斃死した事例を参考に エキゾチックペット研究会誌 19:17-20. 謝辞有り

学会発表
浅川満彦, 羽山伸一, 岡本宗裕 ニホンザル(Macaca fuscata)における寄生蠕虫相の概要-特に、最近の東日本における調査から判明した地理的分布域に関して(2017年4月9日) 第72回日本生物地理学会年次大会(東京大学弥生キャンパス).

浅川満彦, 羽山伸一, 岡本宗裕 東日本におけるニホンザル(Macaca fuscata)の寄生蠕虫相(概要)(2017年7月15-17日) 第33回日本霊長類学会大会(福島).

関連サイト
酪農学園大学野生動物医学センター公式フェースブック https://www.facebook.com/mitsuhiko.asakawa
東北および四国地方に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生虫症および感染症に関する疫学調査

浅川 満彦 , 萩原 克郎

 ニホンザルの寄生虫症を含む寄生虫病病原体の疫学調査についての2017年の刊行は次の2本であった。1)浅川ら(共著者、岡本): 輸入サル類の潜在的な寄生虫病-特に、医学用実験動物として利用されるカニクイザル Macaca fascicularis の検疫中に斃死した事例を参考に、エキゾ研会誌、(19)、17-20 (2017) 2)三觜ら(連絡著者、浅川):福島市に生息するニホンザル (Macaca fuscata)の寄生蠕虫保有状況-特に下北半島個体群との比較に注目して. 青森自然史研究, (22),39-41。前者はニホンザルおよび外来性マカク類の蠕虫検査を行う上で貴重な資料となった。後者は下北個体群と比較し当方地方における蠕虫類の分布特性を論じた。2017年における学会報告としては1)浅川ら(共同演者、岡本): ニホンザル(Macaca fuscata)における寄生蠕虫相の概要-特に、最近の東日本における調査から判明した地理的分布域に関して. 第72回日本生物地理学会年次大会,東京大学,4月9日;浅川ら(共同演者、岡本):東日本におけるニホンザル(Macaca fuscata)の寄生蠕虫相(概要).第33回日本霊長類学会大会、福島、7月15日から17日」の2本を実施した。これらの報告では、前述したように寄生蠕虫の地理的分布特性を示した。野生ニホンザル寄生虫に関しては、過去に当研究所の後藤らが下北の集団を調べているが、その際には発見されていなかったOgmocotyle属の吸虫が最近の申請者らの研究で大量に発見され、福島産個体群の結果が、上記のよに公表出来た。また、外来種との関連性を検討するため、カニクイザルの情報も比較対象として、それらの成果も公表出来た。分布特性は口頭発表とまりではあるが、生物地理で中間報告が出来た。


H29-B9
代:伊藤 浩介
サル類における聴覚事象関連電位の記録

学会発表
伊藤浩介、禰占雅史、鴻池菜保、中村克樹、中田力 聴覚機能の進化:ヒトとアカゲザルにおける無侵襲頭皮上聴覚誘発電位記録による検討(2017.12.3) 日本基礎心理学会第36回大会(茨木市).

伊藤浩介 皮上脳波記録で探る聴覚皮質機能の進化(2017年12月19日) 第47回ホミニゼーション研究会(犬山市).

Itoh K, Nejime M, Konoike N, Nakamura K, Nakada T. Musical chord change detection in the macaque monkey is hindered by insertion of silent gaps between chords: a scalp ERP study.( 2017年11月14日) Neuroscience 2017 (Society for Neuroscience 47th Annual Meeting)( Washington DC).

Kosuke Itoh Evolutionary elongation of the time window of auditory cortical processing(2018年1月11日) Post-Symposium of the 33rd Annual Meeting of the International Society for Psychophysics: Perception and the Brain(福岡市).

伊藤浩介 霊長類聴覚機能の種差:ヒトとマカクにおける頭皮上脳波記録による検討(2018年3月6日) 第 7 回 新潟脳研-霊長研-生理研合同シンポジウム(愛知県岡崎市).
サル類における聴覚事象関連電位の記録

伊藤 浩介

 これまで継続して来た共同利用・共同研究により、マカクザルの頭皮上脳波記録の方法論はほぼ完成し、質の安定した聴覚事象関連電位の記録が可能となってきた。一方、マーモセットの脳波記録では、①頭部面積が小さく電極の設置が難しいことや、②頭皮の皮脂の多さによる電極インピーダンスの増大などの問題が明らかになった。これらの要因により、電極設置に時間がかかり、電極数を増やせず、脳波記録が安定しないなどの問題が生じていた。そこで、今年度はこれらの問題の解決を目的とした技術開発を行った。①の対処としては、電極のデザインを、電極部の大きさと形状のみでなく被覆の材質も含めて刷新し、頭部への接着法も見直した。②の対処としては、皮膚の前処理でアセトンによる脱脂を十分に行うこととした。これにより、電極設置の迅速化と脳波記録の質の安定化が達成されるとともに、今後電極数を増やしていく可能性が開けた。ここで開発した電極や電極設置法はマカクザルにも適用可能なものであるため、マカクザル脳波記録法の、さらなる改善にも貢献する成果である。


H29-B10
代:中務 真人
協:森本 直記
協:野村 嘉孝
協:小林 諭史
協:芳賀 恒太
大型類人猿における手首・大腿部の可動性の検証
大型類人猿における手首・大腿部の可動性の検証

中務 真人 , 森本 直記, 野村 嘉孝, 小林 諭史, 芳賀 恒太

 ヒトと現生アフリカ類人猿の共通祖先が、①上肢優位な現生類人猿的特徴をもっていたのか、あるいは、②現生子孫種に比べ特殊化の程度が低い類人猿であったのかが、大きな議論となっている。これを検討する目的で、大型類人猿の手、大腿の関節の運動機能について研究を行っている。著しい大型化をしたゴリラを除き、現生大型類人猿の手の相対母指長は短いが、母指退化、内側列の伸長のいずれが強く寄与しているのか議論が続いている。そこで、母指退化に関連すると考えられる母指列中手指節関節の種子骨の出現頻度に注目した。ヒトを含み類人猿以外の霊長類では、ほぼ例外なく撓側と尺側に一対の種子骨が存在するが、大型類人猿については、先行研究で一致した結果が得られていない。われわれは大型類人猿標本18体をX線CTによって観察し資料数を倍増させ、以下の結果を得た(資料数は先行研究との合算)。チンパンジー(n=24)では、約2割の個体で一つあるいは一対の種子骨が存在するが、オランウータン(n=6)、ゴリラ(n=7)では認められない。この結果は、各属が独立に種子骨を喪失(母指の機能退化が発生)したことを示唆し、②に整合的である。


H29-B11
代:荻原 直道
協:大石 元治
ニホンザル二足・四足歩行運動の運動学的・生体力学的解析

論文
荻原直道(2017) 解剖学的筋骨格モデルによるヒト二足歩行運動の計算機シミュレーション バイオマテリアル-生体材料- 35(3):173-179.

学会発表
荻原直道 踵骨形態と直立二足歩行の進化(2017年11月5日) 第71回日本人類学会大会(東京都文京区).

荻原直道 ニホンザル二足歩行の力学から探るヒトの進化(2018年3月5日) 日本学術会議第3回理論応用力学シンポジウム~力学と知能の融合:古典力学の新潮流~(東京都港区).

関連サイト
慶應義塾大学理工学部機械工学科 荻原研究室 www.ogihara.mech.keio.ac.jp/
ニホンザル二足・四足歩行運動の運動学的・生体力学的解析

荻原 直道 , 大石 元治

 本研究では、ヒト的な直立二足歩行の獲得を妨げる四足性霊長類の運動学的・生体力学的制約要因がどこにあるのかを明らかにするために、ニホンザル四足歩行の運動学的・生体力学的解析を行い、二足歩行と対比することを通して、ニホンザルが二足歩行を獲得する上での促進要因・制約要因を明らかにすることを目的としている。
 本年は、傾斜トレッドミル上を四足歩行するニホンザルの接地パターンを比較・分析した。その結果、トレッドミルの傾斜により前肢に作用する床反力が増大しても、lateral sequence歩行への遷移は基本的に観察されなかった。霊長類の四足歩行は、他の多くのほ乳類と異なるdiagonal sequence歩行を採用しており、これを説明する有力な仮説の一つに「重心位置仮説」があるが、重心位置が接地パターンの直接的決定要因ではないことが示唆された。
 また、ニホンザルの屍体標本から、歩行に関係する主要な筋の速筋線維と遅筋線維の割合を組織学的手法によって求めることを試みた。具体的には、各筋から組織片を採取し、クリオスタットで切片を作成し、組織化学的染色(ATpase染色)によって筋線維型の比率を求める研究を推進した。



H29-B12
代:William Sellers
The comparative biomechanics of the primate hand
The comparative biomechanics of the primate hand

William Sellers

 This project forms part of our ongoing research into the biomechanics of primates. In this last year we achieved three major goals. Firstly, we succeeded in publishing a paper in Royal Society Open Sciences based on our experimental work at PRI in previous years where we used our markerless motion capture system to record 3D locomotor kinematics of chimpanzees walking. This paper used the experimental data to ground truth a computer simulation in order to better understand the evolutionary processes that lead to gait choice and optimality. Secondly, based on the pilot data on primate hands and hand use that we have been collecting at PRI, we were successful in a collaborative grant bid to the UK Natural Environment Research council to study the co-evolution of tool using behaviour and hands in the hominin fossil record. This research grant includes travel funding so that future visits will continue to be possible. Thirdly, we were successful in the experimental work carried out at PRI in 2017. Our aim this past year was to compare the way that Japanese macaques use their hands when performing locomotor activities to the way they use their hands whilst manipulating objects. The challenge here is that in order to record the movements of the fingers in 3D we need film a relatively small volume, and this means that we need to train the subjects to put move such that they grasp the substrate in the location the cameras are recording from. We attempted this for a new experimental set up in the laboratory where we used a vertical pole that the animal was able to climb, using two different pole diameters. In both cases the experiments were successful although there were many trials where the animals did not place their hands in the volumes we were measuring from and this meant that the amount of data collected was rather lower than in previous years. Climbing is particularly difficult compared to the horizontal walking we have measured before because the animal has an extra degree of freedom since it can choose the vertical rotation of its body around the cylindrical pole, and this means that it can obscure our view of its hands very easily. However, climbing is an activity that we are particularly interested in since the hands are required to grip with significant amounts of force in this situation, whereas horizontal walking requires relatively little grip force on the part of the animal since they balance very precisely. And of course climbing is one of the important specialisations of the primate order, and is thus a major focus of biomechanics research.


H29-B13
代:岩槻 健
協:熊木 竣佑
協:中嶋 ちえみ
霊長類由来ex vivo培養系を用いた消化管細胞機能の解析

学会発表
中嶋ちえみ、難波みつき、熊木 竣佑、大木 淳子、今井 啓雄、山根 拓実、大石 祐一、岩槻 健 霊長類味蕾オルガノイド培養系の確立(2017/9/26) 日本味と匂学会第51回大会(神戸国際会議場).

熊木竣佑、今井啓雄、粟飯原永太郎、山根拓実、大石祐一、岩槻健 サル消化管オルガノイドを用いた味細胞様細胞の解析(2017/9/26) 日本味と匂学会第51回大会(神戸国際会議場).

岩槻健 マウスとサルの味蕾オルガノイド培養系(2017/9/26) 日本味と匂学会第51回大会(神戸国際会議場).

岩槻健 オルガノイド培養系を用いた味蕾および消化管の機能解析(2017/6/29) 実験病理組織技術研究会第24回総会・学術集会(タワーホール船堀).

熊木竣佑、大木淳子、山田夏美、今井啓雄、粟飯原永太郎、山根拓実、大石祐一、岩槻健 サル消化管オルガノイド作製と味細胞様細胞への分化誘導(2017/5/20) 第71回日本栄養・食糧学会大会(沖縄コンベンションセンター).
霊長類由来ex vivo培養系を用いた消化管細胞機能の解析

岩槻 健 , 熊木 竣佑, 中嶋 ちえみ

 昨年度から引き続きアカゲザルおよびニホンザルからの腸管オルガノイド作製を行なった。培養条件の検討により、Wnt3aの活性が同オルガノイドの増殖に最も重要であることがわかった。29年度は、さらに作製した腸管オルガノイドが効率よく分化する方法を模索すると同時に、生体内の腸管上皮細胞と同様のタンパク質を発現しているかを調べた。まず、作製した腸管オルガノイドの培地よりWnt3aおよびWntのアゴニストを抜いた培地で3日間培養することで細胞分化を誘導した。その結果、内分泌細胞のマーカーである5-HTやタフト細胞のマーカーであるDCLK1の発現量が上昇し、Wnt活性がなくなることにより細胞分化が亢進したことが確認された。同条件にて細胞分化を誘導した上で、様々な分子の発現をRT-PCRにより調べたところ、幹細胞マーカーであるLgr5の発現は抑制され、代わりに内分泌細胞、吸収上皮、杯細胞などが発現する分子の転写が亢進していることがわかった。このように、今回我々はサルオルガノイドを効率よく分化する条件を確立した。今後、分化させた腸管オルガノイドを使い、げっ歯類では測定できない霊長類独特の栄養素受容機能について解析していく予定である。


H29-B14
代:中村 浩幸
外側膝状体から頭頂葉視覚連合野への直接視覚入力回路の形態学的解明
外側膝状体から頭頂葉視覚連合野への直接視覚入力回路の形態学的解明

中村 浩幸

 霊長類外側膝状体(LGN)極小細胞層(koniocellular layers: K 層)から、1次および2次視覚皮質を経由せず、頭頂視覚連合皮質V3/V3A野へ直接投射する神経回路を神経軸索トレーサーを用いて詳細に解明する事が研究の目的である。本年度は、1頭のアカゲザルの両側V3A野(ならびに古典的V3A野の背側部LOP野)に蛍光色素(ディアミディノイエローDYとファーストブルーFB)を微量注入して、同側視床LGNにおける逆行性標識細胞の分布を調べた。V3A野にほぼ限局して蛍光色素を微量注入(1例)すると、LGN尾側6分の1から3分の1にかけて、LGNと視索との間に存在するK細胞層(S層)の内側部ならびにK1-4層内側端に逆行性標識細胞が観察された。V3A野とLOP野にまたがる注入(2例)では、LGN尾側3分の1のS層内側部に逆行性標識細胞が観察された。LOP野とその背側の7野のみに注入(1例)しても、LGNには逆行性標識細胞は見られなかった。これらの結果は、LGNのS層ならびにK1-4層内側部のK細胞がV3A野に投射し、粗大な視覚情報を短潜時で頭頂連合野皮質へ入力している事を示唆する。


H29-B15
代:栁川 洋二郎
協:永野 昌志
協:髙江洲 昇
協:菅野 智裕
協:坂口 謙一郎
マカク属における精液凍結保存方法の改善と人工授精技術開発

論文
Fukuda K, Inoguchi Y, Ichiyanagi K, Ichiyanagi T, Go Y, Nagano M, Yanagawa Y, Takaesu N, Ohkawa Y, Imai H, Sasaki H(2017) Evolution of the sperm methylome of primates is associated with retrotransposon insertions and genome instability Human Molecular Genetics 26(18):3508-3519. 謝辞あり

学会発表
栁川洋二郎、菅野智裕、南晶子、兼子明久、印藤頼子、佐藤容、木下こづえ、岡本宗裕、片桐成二、永野昌志 ニホンザルにおける排卵誘起処理を伴う単回人工授精プログラムの検討(2017.9.13-15) 第160回日本獣医学会学術集会(鹿児島市).

栁川洋二郎、菅野智裕、兼子明久、印藤頼子、佐藤容、木下こづえ、今井啓雄、平井啓久、片桐成二、永野昌志、岡本宗裕 ペレット法により凍結したニホンザル精液に対する融解法の違いが精子性状に与える影響(2017.11.1-2) Cryopreservation conference 2017(つくば市).
マカク属における精液凍結保存方法の改善と人工授精技術開発

栁川 洋二郎 , 永野 昌志, 髙江洲 昇, 菅野 智裕, 坂口 謙一郎

 ニホンザルにおいては人工授精(AI)による妊娠率は低く、特に凍結精液を用いたAIによる産子獲得例がない。そのため、精液の凍結保存法改善とともに、メスの卵胞動態を把握したうえでAIプログラムの開発が必要である。
精液凍結についてはこれまでにドライアイス上で精液を200 μl滴下してペレット状に凍結する方法では融解後に活力を有する精子が確認されたがその生存率は低かった。そこでペレットの融解法による精子への影響を検討した。ガラスチューブを37℃に加温し、ペレットをチューブに投入して融解するのが、ガラスチューブが空の場合とペレットと等量の凍結保存液が入っている場合とでは、保存液が入っている方が融解後の運動性が高かった。さらにドライアイス上に0.25および0.5 mlストローに封入した精液を静置して凍結した後、37℃温湯で融解した場合と前述の200 μlペレットとの融解後の運動性を比較したところ、0.5 mlストローを融解した場合に運動性が高かった。⁻80℃温度域において一定の保存が可能となったが、保存期間の延長が精子に与える影響について更なる検討が必要である。今年度はさらに3月に月経開始から10日目、12日目、14日目の3個体に対し、新鮮精液を授精したが、全頭受胎には至らなかった。



H29-B16
代:笹岡 俊邦
協:藤澤 信義
協:前田 宜俊
協:小田 佳奈子
協:中尾 聡宏
協:崎村 建司
協:中務 胞
協:夏目 里恵
異種間移植によるマーモセット受精卵の効率的作成方法の開発研究

論文

学会発表
前田宜俊, 中務 胞, 三輪美樹, 宮本 純, 小田佳奈子, 藤澤信義, 夏目里恵, 中尾聡宏, 神保幸弘, 田中 稔, 山本美丘, 坪井広樹, 阿部光寿, 﨑村建司, 中村克樹, 笹岡俊邦 マーモセット卵巣のマウスへの移植と 卵胞刺激ホルモン投与による移植卵巣の成熟(2017年7月28日) 新潟大学脳研究所 第47回(2017)新潟神経学夏期セミナー(新潟市 ).

宮本 純 異種間移植マーモセット卵巣由来卵子を用いた受精卵の効率的作成法の検討(2017年10月年10月5日) 第24回みかんの会(新潟市 新潟大学医療人育成センター).

宮本 純 異種間移植マーモセット卵巣を用いた受精卵の効率的作成法の検討(2018年3月6-7日) 第7回 生理研?霊長研?脳研合同シンポジウム(愛知県岡崎市 生理学研究所).

異種間移植によるマーモセット受精卵の効率的作成方法の開発研究

笹岡 俊邦 , 藤澤 信義, 前田 宜俊, 小田 佳奈子, 中尾 聡宏, 崎村 建司, 中務 胞, 夏目 里恵

 <目的>マーモセットは、薬の代謝や体の構造がヒトに近く、発達した脳を持ち、高い認知機能を持つ。さらに、遺伝子改変マーモセットの作製が可能となり、ヒトの疾患モデル動物として注目されている。マーモセットは繁殖力が高く、小型で取り扱いやすいといった利点がある。しかし、マーモセットの飼育環境が整った研究施設は限られており、遺伝子改変動物の作製には卵子を採取する必要があるが、数多くの卵子を得ることが困難で、採卵には手術が必要であること、採卵までにかかる飼育コストを考慮すると、容易ではない。
 そこで私たちは、霊長研の中村克樹教授、高田昌彦教授から分与して頂いた、安楽死されたマーモセットの卵巣を免疫不全マウスに移植することによって、効率的にマーモセット卵子および受精卵を効率的に作出することに取り組んでいる。
 <方法>マーモセット卵巣を新潟大学に冷蔵輸送し、到着当日にマウスに移植した。
(1)マーモセット卵巣を細切した。移植しない場合は液体窒素にて凍結保存した。(2)免疫不全マウスの卵巣を切除後、左右の腎被膜下に卵巣片を移植した。凍結保存した卵巣は融解後に使用した。(3)移植から7日後にPGF2alpha、9日後から卵胞刺激ホルモン(FSH)を9日間毎日または2日毎に投与した。(4)FSHの投与開始から9日後に左右腎臓を採材した。(5)卵巣から採卵できた卵子を4時間培養した。(6)培養後MⅡ期となった卵子を顕微授精し た。
 <結果>これまでに、冷蔵輸送後および凍結融解後のマーモセット卵巣は腎被膜下に生着し、GV期の卵子を得ることが出来た。GV期の卵子は成熟培養後、MⅡ期に進み、顕微授精後、前核期受精卵まで発生させることが出来た。



H29-B17
代:森光 由樹
遺伝情報によるニホンザル地域個体群の抽出と保全単位の検討
遺伝情報によるニホンザル地域個体群の抽出と保全単位の検討

森光 由樹

 兵庫県に生息するニホンザルの地域個体群は、美方、城崎、大河内・生野、船越山、篠山の5つに分けられている。報告者は、これまで5つの地域個体群について、常染色体遺伝子、Y染色体遺伝子を用いて遺伝的分断の有無を検証してきた。常染色体遺伝子は、5つの地域個体群、平均He=0.735、 Ho= 0.718で、地域個体群間で有意差は認められなかった。 またY染色体遺伝子では、11のハプロタイプが検出され地域個体群間でオスの遺伝的交流が認められた(森光ら2017)。そこで本年度は、ニホンザル地域個体群の抽出と孤立度についてGIS プログラム MAPⅡ (ver.1.5 Think Space)とArcView(10.1)を用いて解析を行った。55頭のオスのミトコンドリアDNAハプロタイプの情報を用いて出生群を判定し、その個体の移動距離を算出した。71.8%が地域個体群間で移動しており移動距離は平均37km±5.7であった。GIS解析では、37kmで接続するセル、クランプを同一の地域個体群とした。その結果、 美方と城崎、大河内・生野と船越山、そして篠山は、京都府の地域個体群(丹波・丹後)に結合され3つに分けられた。今後、絶滅地域個体群の保全単位を考える上で、オスの移動頻度や移動距離をさらにモニタリングしながら保全単位を再考する予定である。


H29-B18
代:佐藤 暢哉
協:林 朋広
コモンマーモセットにおける空間認知
コモンマーモセットにおける空間認知

佐藤 暢哉 , 林 朋広

 本研究は,コモンマーモセットの空間認知能力について検討することを目的として,齧歯類を対象とした研究で用いられてきた迷路と同様の実験事態を使用した空間学習課題や空間記憶課題を開発することを目的としていた.マーモセットを飼育ケージから実験箱に移動して課題を課すことは困難であると判断し,飼育ケージ内で実施できる実験課題を開発する方針を決定した.そのために,マーモセットの実際の飼育環境の詳細を観察し,飼育ケージのサイズなどの観点から空間学習課題事態の候補をを絞りこみ,必要となる装置を考案した.
 具体的には,齧歯類でよく使用される放射状迷路を基本として,マーモセットの運動能力を考慮し,縦方向への移動を含めた三次元的構造を考えた.迷路中央に位置するプラットフォームから周囲に放射状に伸びるアームを有し,さらにその途中部分から下方向へ伸びる構造を持ったマーモセット用の放射状迷路を設計した.マーモセットには,中央位置から周囲に配置しているアーム先端部まで行くことを求める.穴の最底部まで到達することを,その選択を行ったとみなし,正答の場合はそこに報酬を呈示できるようにする予定である.今後は,詳細部分を修正の上,迷路を作成し,実際にマーモセットを対象にいくつかの空間学習課題を実施したいと考えている.



H29-B19
代:持田 浩治
観察学習による警告色の進化プロセスに関する実験的研究
観察学習による警告色の進化プロセスに関する実験的研究

持田 浩治

 本研究は,個体の直接的な学習経験だけでなく,他者の行動をモデルとした観察学習が,まずさや危険さと関連した目立つ体色(警告色)を創出・維持する,という仮説の妥当性を,理論と実証の両面から検証することを目的としたものである.本年度は,ニホンザル6個体を対象に,ヘビのような危険生物の警告色に対する観察学習の成立の可否を検討した.具体的には,ニホンザルがヘビ模型を警戒する学習用ビデオとウィスコンシン型汎用テスト装置を用いて学習実験を行った.学習過程に個体差が強く影響したため,現段階で強く断定できないが,観察学習“前”条件で赤黒縞模様に塗装した様々な刺激物(ヘビ模型だけでなく四角ボードなどの非生物的形状)を回避した被験個体は,観察学習“後”条件において,ヘビ模型だけを選択的に回避した.一方,観察学習前に赤黒縞模様オブジェクトを回避しない個体は,観察学習後条件において,いかなる刺激物に対しても回避行動を示さなかった.以上の結果は,直接的な経験なしに他者を観察することで警告的学習が成立すること,ただし観察学習が成立するためには,学習前に何らかのキューが必要であることを示唆した.


H29-B20
代:岡澤 均
協:陳 西貴
協:藤田 慶大
協:田川 一彦
協:泰羅 雅登
協:勝山 成美
マーモセット疾患モデルを用いた神経回路障害ならびに分子病態の解析および治療法の開発
マーモセット疾患モデルを用いた神経回路障害ならびに分子病態の解析および治療法の開発

岡澤 均 , 陳 西貴, 藤田 慶大, 田川 一彦, 泰羅 雅登, 勝山 成美

 これまでに正常マーモセット脳へ神経変性誘発因子X(4歳齢、1頭 )あるいは溶媒(PBS)(6歳齢,1頭)を頭頂葉に継続注入(2週間に一回、合計4回)し、Xによる分子変化が誘導される神経変性関連因子Yの神経変性特異的な修飾の増加を免疫染色で確認した。平成29年度は、4頭のマーモセットからXを投与する前の空間位置記憶課題のデータを取得した。今後、投与前のデータ取得が終了した個体から順次Xを投与し、課題成績に対する投与の影響を継時的に評価していく計画である。


H29-B22
代:小林 諭史
ヒト上科の成長に伴う骨格のプロポーション変化

学会発表
小林諭史, 森本直記, 西村剛, 山田重人, 中務真人 ヒトおよび現生大型類人猿の四肢の相対成長(2017年7月16日) 第33回日本霊長類学会大会(福島).

小林諭史, 森本直記, 西村剛, 山田重人, 中務真人 ヒト科における生後の四肢相対成長(2017年11月3日) 第71回日本人類学会大会(東京).
ヒト上科の成長に伴う骨格のプロポーション変化

小林 諭史

 現生ヒト上科系統が分岐して以降のヒト上科の化石記録はヒトの系統以外では極めて少なく、ヒト上科の進化史の考察のためには現生種の徹底的な直接比較が欠かせない。しかし、現状では、ヒト上科の成長に伴ったプロポーション変化を直接比較した研究は乏しい。そこで、ヒト上科における胎児からオトナに至るまでの成長に伴った骨格のプロポーション変化を解明し、種間、特に現生の大型類人猿間に見られる類似性の起源を明らかにすることを目的とした。平成29年度はX線CTを用いて、主に出生後のヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザルの四肢骨長の計測を行い、前肢長(上腕骨長と橈骨長の和)と後肢長(大腿骨長と脛骨長の和)、上腕骨長と橈骨長、大腿骨長と脛骨長の相対成長について種間比較を行った。その結果、ヒト上科において四肢骨長の相対成長は変わりやすい形質とは言えなかった。特に、大型類人猿間ではどの組み合わせにも有意差は見られなかった。また、ヒトの長い後肢など、オトナ時の特殊なプロポーションの達成に寄与する相対成長は観察されたものの、相対成長は必ずしも成長に伴って変化する機能的な要請に最適化されていないことが示唆された。


H29-B23
代:羽山 伸一
協:中西 せつ子
協:名切 幸枝
協:石井 奈穂美
福島市に生息する野生ニホンザルの放射能被曝影響調査

論文
Hayama S. Nakiri S, Nakanishi S, et al.(2017) Small head size and delayed body weight growth in wild Japanese monkey fetuses after the Fukushima Daiichi nuclear disaster. Scientific Reports(7):3528. 謝辞あり
福島市に生息する野生ニホンザルの放射能被曝影響調査

羽山 伸一 , 中西 せつ子, 名切 幸枝, 石井 奈穂美

 本研究グループでは、2007年から福島県ニホンザル特定鳥獣保護管理計画にもとづき福島市で個体数調整のために捕獲された野生個体を分析し、妊娠率の推定や遺伝子解析などを行ってきた。福島市にはおよそ20群、2000頭の野生群が生息しているが、2011年の福島第1原子力発電所の爆発により放射能で被曝した。2012年度に放射性セシウムの蓄積状況と血液性状の関係を調査し、血球数やヘモグロビン濃度などの低下を明らかにした。今年度は、その後の筋肉中放射性セシウムの蓄積状況と血液性状を調査するとともに、胎仔の相対成長について被ばく前後で比較を行った。
 その結果、新たに被ばく後の胎仔で、頂臀長に対する体重および頭蓋サイズの相対成長が低成長であることが明らかとなった。
 また、将来における中長期的な影響評価を可能にするため、採取した臓器及び遺伝子等の標本保存を行った。



H29-B24
代:橋 香奈
サル類およびチンパンジーにおけるヘリコバクター感染に関する研究
サル類およびチンパンジーにおけるヘリコバクター感染に関する研究

橋 香奈

 ヒト胃内に生息することが知られているピロリ菌の一部は、発がんタンパク質であるCagAを産生し、胃上皮細胞内に注入することが知られている。また、CagAの発がん活性は宿主の居住する地域により差が生じることが示唆されている。
本年度は、昨年度から引き続き、霊長類研究所で飼育されているニホンザルから単離されたCagA陽性ピロリ菌(サル由来ピロリ菌)の病原性の検討を目的とした実験を行なった。まず、サル由来ピロリ菌を全ゲノム解析した結果、東南アジアで感染が報告されているピロリ菌株の変異株である可能性が示唆された。また、AGS細胞やマウスES細胞由来胃オルガノイドを用いたインフェクション実験の結果、サル由来ピロリ菌及びそれらのCagAは一般的なヒト由来ピロリ菌株に比べて病原性が低いことが示唆された。
 本研究の成果は現在、国際学術誌に投稿中である。



H29-B25
代:藤本 明洋
全ゲノムシークエンスデータ解析に基づく解析困難領域の同定と遺伝的多様性の解析
全ゲノムシークエンスデータ解析に基づく解析困難領域の同定と遺伝的多様性の解析

藤本 明洋

 申請者は、日本人の全ゲノムシークエンスデータを用いて、(1)第2世代シークエンサーでは解析が困難な領域の特徴を明らかにする。また、(2)それらの領域のゲノム配列を読み取り長の長い第3世代シークエンサーを用いて決定することにより、解析困難領域の遺伝的多様性を解明する。現在は(2)の解析を行っている。
 申請者らは、既に日本人108人の全ゲノムシークエンスデータより、解析困難な領域を抽出した(解析困難な領域は、ヒト標準ゲノム配列に存在しない配列と多様性が極めて高い領域より選出した)。それらの配列を濃縮するためのアレイ(解析困難領域アレイ)を作成した。また、日本人108人の解析困難領域を濃縮しPacBio RSを用いてシークエンスを行った。現在は、PacBio RSのデータ解析を行っている。第2世代のシークエンサーのデータをPacBioシークエンサーのリード配列に対してマッピングを行い、エラーを補正する手法の開発を行った。SRiMP2ソフトウエアを採用し、様々なマッピングパタメーターを試し、マッピングの偽陽性率と偽陰性率が低いマッピングパタメーターを見出した。ミトコンドリア配列を用いた解析では、シークエンスエラーの多くを除去することが可能であったが、核ゲノム配列においてはリピート配列が多いため、解析が難航している。マッピングのパターン等を考慮した解析を行うことで精度向上を試みている。



H29-B26
代:那波 宏之
協:難波 寿明
霊長類における神経栄養因子の精神機能発達に与える影響
霊長類における神経栄養因子の精神機能発達に与える影響

那波 宏之 , 難波 寿明

 精神疾患の治療法を探るためヒト精神疾患をげっ歯類でモデル化しようとされてきたが、ヒトとマウスの高次脳機能のギャップから行きづまっている。ゆえにヒト認知機能をより正確に模倣するためには よりヒトに遺伝子や脳構造が類似する霊長類を用いた方がよいのではないかといわれている。共同研究者らは、統合失調症の最有力な仮説である「サイトカイン炎症性仮説」に基づき、これまでサイトカインをげっ歯類新生児に投与することで、当該モデルを樹立、解析してきた。本モデル動物は様々に精神疾患に適合する中間表現型を呈するものの、ヒト精神疾患のモデルとしての妥当性においてはやはり決め手に欠いていた。そこで本共同利用研究課題では、霊長類(マーモセットおよびアカゲザル)を用い、その認知行動変化をモニターすることで、仮説やモデルの妥当性を検証する。マーモセット新生児4頭へのEGF投与を実施した。内マーモセット2頭が、活動量の上昇・アイコンタクトの頻度低下・逆転学習課題等の成績低下を示した。今年度はビデオによる行動観察を継続するとともに、MRIを用いたT1強調画像・T2強調画像およびDTIのデータ取得を行った。また、プレパルス抑制の測定をするための装置を開発した。次年度には、プレパルス抑制の計測およびPETを用いた伝達物質系の活動計測の計画を進める予定である。またEGFに皮下投与したアカゲザル2頭も行動異常が現れた。2頭に関しては、学習課題成績の悪化を確認した。人や同種他個体に対する行動異常を定量化する方法を検討している。


H29-B27
代:國松 豊
アフリカ中新世霊長類化石の形態学的研究

論文
Kunimatsu, Y., Sawada, Y., Sakai, T., Saneyoshi, M., Nakaya, H., Yamamoto, A., and Nakatsukasa, M.(2017) The latest occurrence of the nyanzapithecines from the early Late Miocene Nakali Formation in Kenya, East Africa Anthropological Science 125(2):45-51. 謝辞あり

Kunimatsu, Y., Tsujikawa, H., Nakatsukasa, M., Shimizu, D., Ogihara, N., Kikuchi, Y., Nakano, Y., Takano, T., Morimoto, N., and Ishida, H.(2017) A new species of Mioeuoticus (Lorisiformes, Primates) from the early Middle Miocene of Kenya. Anthropological Science 125(2):59-65. 謝辞あり

学会発表
國松 豊 アフリカ後期中新世化石産地ナカリから新たに発見された大型類人猿化石(2017年11月5日) 第71回日本人類学会大会(東京).
アフリカ中新世霊長類化石の形態学的研究

國松 豊

 長年、京大を中心とした日本調査隊がケニヤ共和国において実施してきた野外発掘調査によって、ケニヤ北部のナチョラ、サンブルヒルズ、ナカリから中新世の霊長類化石が多数発見されてきた。採集された化石は、ケニヤの法律によって国外持ち出しが原則禁止されており、ケニヤの首都ナイロビにあるケニヤ国立博物館にすべて収蔵されている。本研究ではこれらの霊長類化石の分析を順次行っている。2017年度には、2017年8月から9月にケニヤ共和国ナカリにおいて野外発掘調査を実施した。2018年3月に再びケニヤに渡航し、ナイロビのケニヤ国立博物館において、同館に収蔵されているナカリ、ナチョラ出土の霊長類化石の分析および他の産地から収集された化石との比較を行った。霊長類研究所では、比較のために現生霊長類の骨格標本や霊長類化石レプリカコレクションの観察、計測をおこなった。ナカリから最近出土した大型類人猿の上顎大臼歯や小型「類人猿」の下顎大臼歯標本の分析を中心に研究を進めた。大型類人猿の新たな上顎大臼歯標本は、ナカリから見つかっているNakalipithecus nakayamaiよりも小型で、形態的にもかなり異なっており、Kunimatsu et al. (2016)で示唆した、中新世後期前半のナカリには大型の類人猿が2種類いたという仮説を支持するものである。


H29-B28
代:佐藤 真伍
飼育下のニホンザルおよびアカゲザルにおけるBartonella quintanaの分布状況とその遺伝子系統
飼育下のニホンザルおよびアカゲザルにおけるBartonella quintanaの分布状況とその遺伝子系統

佐藤 真伍

 Bartonella quintanaは人に発熱や回帰性の菌血症を引き起こす塹壕熱の原因菌で,重症化すると心内膜炎や細菌性の血管腫などの原因となる。塹壕熱は,第一次・二次世界大戦時に兵士の間で流行した感染症であり,現在では都市部に生活するホームレスなどの集団内において感染が確認されている。近年では,中国や米国で実験用に飼育されていたアカゲザルやカニクイザルやわが国の野生ニホンザルにもB. quintanaが分布していることが明らかとなっている。平成28年度の本共同利用・共同研究(課題# 2016-D-21)では,和歌山県由来の椿群のニホンザル1頭(個体#:TB1)からB. quintanaが分離されたことから,わが国の霊長類の研究機関においても本菌が分布していることが初めて明らかとなった。
 平成29年度には,同研究所内で飼育されているニホンザル154頭から新たに血液を採取し,B. quintanaの保菌状況を引き続き検討した。その結果,大阪府由来の箕面群のニホンザル2頭からB. quintana様の細菌が分離された。現在,遺伝子性状に基づいて分離株の菌種同定を試みているとともに,複数の遺伝子領域を用いて型別するMulti-locus sequence typing(MLST)の実施も検討中である。



H29-B29
代:佐々木 基樹
協:近藤 大輔
霊長類後肢骨格の可動性
霊長類後肢骨格の可動性

佐々木 基樹 , 近藤 大輔

 これまでにニシローランドゴリラ3個体、オランウータン2個体、チンパンジー4個体の後肢のCT画像解析をおこなってきた。趾の可動域の解析では、第一趾を最大限伸展させた状態でCT画像撮影をおこない、得られたCT断層画像データを三次元立体構築した後、第一趾の可動状況を観察した。ニシローランドゴリラやチンパンジーの第一趾の第一中足骨は、上下方向に可動性を持つオランウータンとは違って足の背腹平面で可動しており、その可動域は、肉眼的にはオランウータン、ニシローランドゴリラ、そしてチンパンジーの順で大きかった。今回、コンピュータソフトを用いて趾の可動状況を定量化することを試みた。第一中足骨と第二中足骨がなす平面上におけるそれら中足骨のなす角度をソフト上で解析した。計測した角度の平均は、オランウータンで104度、ニシローランドゴリラで73度、そしてチンパンジーで52度であった。これらの結果によって、肉眼的観察結果を定量的に裏付けることができた。今後、検体数を増やし、精度の高い解析を行っていければと考えている。


H29-B30
代:小倉 淳郎
協:越後貫 成美
マーモセット幼若精細管のマウスへの移植後の精細胞発生の観察

学会発表
越後貫成美、葛西 秀俊、井上 弘貴、饗場 篤、小倉 淳郎 発生工学的手法を用いたマーモセット世代短縮技術の開発(2017/5/26) 日本実験動物学会(郡山市(福島県)).

越後貫成美、葛西秀俊、井上弘貴、饗場 篤、小倉淳郎 Shortning the marmoset intergeneration time using immature spermatozoa(2017/9/27) Fourth World Congress of Reproductive Biology(宜野湾(日本)).
マーモセット幼若精細管のマウスへの移植後の精細胞発生の観察

小倉 淳郎 , 越後貫 成美

 最近我々は、顕微授精技術を用いることにより、マーモセット体内で自然発生した生後1年前後の精子・精子細胞(未成熟精子)から受精卵が得られることを明らかにした。そこで本研究では、さらに早期に顕微授精を行う可能性を検討するために、性成熟の早いマウスへ新生仔マーモセット未成熟精細管を移植し、精粗細胞から精子・精子細胞発生が加速するかどうかを確認する。昨年度(2016-D-16)より、免疫不全マウスNOD/SCID系統に生じる免疫拒絶反応を回避するために、さらに重度の免疫不全マウスであるNSG系統をホストに利用している。昨年度中にやや矮小の7ヶ月齢の雄マーモセット1匹より手術にて片側精巣を摘出しNSG雄陰嚢腔に移植し、今年度、移植組織を回収して組織学的観察を行ったが、精子発生は確認されなかった。そこで、さらなる改良法として、ホストマウスの去勢を行なうことにより、GnRH分泌を促進し、移植精巣組織の発達を早める試みを開始した。4ヶ月齢雄マーモセットの片側精巣を去勢NSGマウスの腎皮膜下に移植し、現在移植後2.5ヶ月が経過したところである。約3ヶ月で移植組織を回収し、組織学的観察を行なう予定である。


H29-B31
代:久世 濃子
協:五十嵐 由里子
類人猿における骨盤の耳状面前溝の性差および種差

学会発表
久世濃子 類?猿にも妊娠出産痕があるのか?類?猿における?盤の?状?前溝?(2017年9月10日) 日本哺乳類学会2017年度大会(富山県富山市).
類人猿における骨盤の耳状面前溝の性差および種差

久世 濃子 , 五十嵐 由里子

 ヒトでは、骨盤の仙腸関節耳状面前下部に溝状の圧痕が見られることがあり、特に妊娠・出産した女性では、深く不規則な圧痕(妊娠出産痕)ができる。直立二足歩行に適応して骨盤の形態が変化し、産道が狭くなった為にヒトは難産になった、と言われている。妊娠出産痕もこうしたヒトの難産を反映した、ヒト経産女性特有の形態的特徴であると考えられてきた。一方我々は、平成28年度までに、京都大学霊長類研究所および国内の博物館、動物園収蔵の大型類人猿3属51個体の耳状面前下部を観察することによって、大型類人猿でも圧痕が見られることを確認した。本研究では圧痕の形成要因を調べる為に、類人猿の遺体を解剖し、耳状面に付着する筋肉や靭帯の状況を調べる予定であった。本年は所内で少なくとも、ゴリラとオランウータン各1個体を解剖する計画だったが、代表者が年度半ばで、スイスに長期出張(3ヶ月間)することが決まった為、予定どおり所内での解剖を行うことができなかった。そのかわり、共同利用の研究費で購入したノギスを用いて、スイス(チューリッヒ大学、バーセル自然史博物館)等で、大型類人猿の骨格標本を対象に調査を行った。その結果、今まで推定されていた耳状面前部の圧痕発生頻度の種間差-ゴリラで高く、オランウータンで低い(圧痕があった個体/観察個体;ゴリラ:28/28、チンパンジー:18/24、オランウータン:7/16)を確認できた。今後はさらに解剖の観察例を増やし、圧痕の形成要因を明らかにしたいと考えている。


チューリッヒ大学標本庫での調査風景


H29-B32
代:Yun Yang
Behavioral ecology of parasite infection in wild rhesus macaques in Southern China
Behavioral ecology of parasite infection in wild rhesus macaques in Southern China

Yun Yang

 We finished the research project under the supervision of Dr. Andrew MacIntosh on both social networks and parasitological analyses in CICASP and the laboratory of the Section of Social Systems Evolution. We employed current parasitological protocols used in Dr. MacIntosh's lab (formalin-etheyl acetate sedimentation and sheather's sugar flotation) to extract parasite eggs and larvae from 260 fecal samples of wild rhesus macaques (Macaca mulatta) in Neilingding island, China. As a result, we identified three nematodes (Oesophagostomum spp.,Trichuris spp., Strongyloides spp.) and other parasites and pseudo-parasites (Balantidium coli cysts, Balantidium coli trophozoites) and insect eggs (see images). We used a McMaster chamber to estimate the number of parasite eggs/ larvae (Oesophagostomum, Trichuris, Strongyloides and Balantidium) per gram of fecal sediment (i.e. EPG) as a proxy for infection and parasite spreading across individuals. We developed two social networks from the frequencies of allogrooming for each period and calculated seven network parameters (outdegree, indegree, outstrength, instrength, betweenness, closeness, eigenvector). We used R software to build generalized linear mixed models to explore the effects of social behavior factors and demographic factors (sex and age) on the prevalence, infection intensity and diversity of three directly transmitted gastrointestinal nematodes (Oesophagostomum spp., Trichuris spp. and Strongyloides spp.) in wild rhesus macaques. We found that juveniles have a higher prevalence and infection intensity of Oesophagostomum spp. and Strongyloides spp. than adults, as well as nematodes diversity. We didn't find sex-biased infection of these three nematodes in our study group. Individuals with higher outstrength in the grooming network are more likely to be infected with Strongyloides spp.. Individuals with higher outdegree in the grooming network have less diverse nemotodes. Individuals with higher indegree in the grooming network have lower Trichuris spp. prevalence. This study complemented our existing knowledge of intestinal parasites in Chinese wild rhesus macaques, described the factors affecting the gastrointestinal parasite infection of wild rhesus macaques in detail, and also provided a theoretical basis for the protection of wild rhesus macaques in the Neilingding island nature reserve. We greatly appreciate the opportunity and support the Primate Research Institute Kyoto University provided me for my research. Many thanks to Dr. MacIntosh and his colleagues at PRI for their advice and help throughout my study.


H29-B33
代:Mohammed Znari
"Nutritional Ecology of crop-raiding Barbary macaques, Macaca sylvanus in the High Ourika valley, western High Atlas, Morocco"
H29-B34
代:外丸 祐介
協:信清 麻子
協:畠山 照彦
一卵性多子ニホンザルの作製試験

学会発表
外丸祐介、信清麻子 サル類における体外培養系受精卵の作製について(2017年10月13日) 第51回日本実験動物技術者協会総会(山形).

外丸祐介、信清麻子、岡本宗裕 サル類の体外培養系受精卵の作製について(2017年12月2日) 第35回動物生殖工学研究会(川崎).

外丸祐介、信清麻子、岡本宗裕 サル類における基盤的発生工学技術と凍結保存技術について(2018年1月16日) 第7回日本マーモセット研究会大会(京都).
一卵性多子ニホンザルの作製試験

外丸 祐介 , 信清 麻子, 畠山 照彦

 本課題は、動物実験に有用な一卵性多子ニホンザルの作製を目指すものであり、これまでに体外培養系卵子・受精卵の操作・作製に関する手法の確認を進めながら、分離受精卵からの個体作製試験に取り組んできた。平成29年度では、前年度実施した移植試験により、2分離した体外受精卵から単子ではあるが健常産仔の獲得に成功した。また、2回の実験実施により計4頭の雌ニホンザルについて採卵処置を行い、得られた卵子を用いて体外受精卵を作製した後、一部の受精卵を用いて2分離および4分離受精卵を作製した。これらの分離受精卵について体外培養により桑実胚・胚盤胞まで発生させた後、霊長類研究所の雌ニホンザル2頭をレシピエントとして移植試験を実施し、現在は経過を観察中である。今後は、一卵性双仔の獲得に向けて分離受精卵の移植試験を継続するとともに、ニホンザル受精卵の移植レシピエントとしてのカニクイザルの有用性確認を進める予定である。


H29-B35
代:筒井 健夫
協:小林 朋子
協:鳥居 大祐
協:松井 美紀子
マカク歯髄細胞三次元培養構築体移植による歯髄再生
マカク歯髄細胞三次元培養構築体移植による歯髄再生

筒井 健夫 , 小林 朋子, 鳥居 大祐, 松井 美紀子

 平成28年度は、ニホンザル3例に対して歯髄の採取、歯髄細胞の培養および移植を行った。歯髄は、右側乳側切歯と右側乳犬歯、また脱落が近日中に予期される上下顎乳中切歯について個体別に採取可能な部位より抜歯、もしくは生活歯髄切断法を応用し採取した。歯髄細胞は採取後、初代培養および継代培養を行い、歯髄細胞三次元構築体を作製した。3例のニホンザルに対して歯髄細胞三次元構築体の自家移植を上顎右側乳犬歯、または下顎左側乳犬歯へ行った。移植に際しては、歯質を切削し露髄を確認後、歯冠側1/3から1/4程度の歯髄除去処置を行った。処置前と移植後にはエックス線撮影を行い、処置の確認を行った。歯髄細胞を採取した歯についても、エックス線撮影より処置後の状態を確認後対応し、その際、後続永久歯の確認も行った。2017年1月に移植を行った3例のニホンザルから採取した下顎右側乳犬歯は脱灰後、薄切片を作製し組織学的検査を行っている。また、以前採取したアカゲザルの乳歯歯髄細胞において、自発性に不死化した細胞について細胞特性解析を行った。不死化後の細胞の核型をG-band法にて解析し、不死化後の核型はほぼ4倍体で、個々の細胞で染色体数のばらつきが顕著であった。また、テロメア長はテロメアhybridization protection assay法で解析し、不死化後の細胞は不死化前の細胞と比較してテロメア長が短かった。これらの結果は第59回歯科基礎医学会学術大会にて発表した。


H29-B36
代:井上 治久
協:沖田 圭介
協:今村 恵子
協:近藤 孝之
協:江浪 貴子
協:舟山 美里
協:大貫 茉里
霊長類神経系の解析とヒト疾患解析への応用
霊長類神経系の解析とヒト疾患解析への応用

井上 治久 , 沖田 圭介, 今村 恵子, 近藤 孝之, 江浪 貴子, 舟山 美里, 大貫 茉里

 チンパンジーのiPS細胞から神経細胞を分化誘導し、神経活動の評価を行った。具体的には、MAP2、NeuN、synapsin Iが陽性の成熟神経細胞を作製し、平面微小電極アレイ計測システム(MED64-Basic、Alpha Med Scientific)を用いて神経細胞の自発電気活動を記録した。培養期間に比例して神経細胞の自発発火に基づくspike頻度は増加し、シナプス伝搬による同期バースト発火が検出された。同期バースト発火は、シナプス形成の成熟化の指標のひとつであり、チンパンジーiPS細胞由来神経細胞で、機能的な神経ネットワークが形成されていることが示された。さらにこの神経細胞の電気活動において薬剤応答性が検出できるかを調べた。作製した神経細胞は、グルタミン酸受容体等に対する薬剤応答性を示し、神経ネットワークの機能的な成熟化が示唆された。これらの結果から、チンパンジーiPS細胞から作製した神経細胞は機能的なシナプスと神経ネットワークを形成し、霊長類神経系の機能解析に有用と考えられた。


H29-B37
代:Kanthi Arum Widayati
協:Yohey Terai
Genetic characterization of bitter taste receptors in Sulawesi macaques

学会発表
Widayati KA, Xiaochan Y, Suzuki-Hashido N, Purba LHPH, Bajeber F, Suryobroto B, Terai Y, Imai H Characterization of the TAS2R38 bitter taste receptor for phenylthiocarbamide (PTC) of Macaca tonkeana and M. hecki( 27 and 28 January 2018) 62nd Primates Conference( Japan Monkey Centre).

Widayati KA, Xiaochan Y, Suzuki-Hashido N, Purba LHPH, Bajeber F, Suryobroto B, Terai Y, Imai H BEHAVIORAL AND ALLELIC VARIATIONS OF THE TAS2R38 BITTER TASTE RECEPTOR FOR PHENYLTHIOCARBAMIDE (PTC) OF TWO SPECIES OF SULAWESI MACAQUES(8 and 9 August 2017) The 2nd International Conference on Biosciences( IPB International Convention Centre, Indonesia).
Genetic characterization of bitter taste receptors in Sulawesi macaques

Kanthi Arum Widayati , Yohey Terai

 Bitter perception plays an important role in avoiding ingestion of toxins by inducing innate avoidance behavior. Bitter taste is mediated by the G protein-coupled receptor TAS2R, which is located in cell membranes. Since TAS2R genes are directly involved in the interaction between mammals and their dietary sources, it is likely that these genes evolve to reflect species-specific diets during mammalian evolution. One of the best-studied bitter taste receptors is TAS2R38, which recognizes bitter molecule phenylthiocarbamide (PTC). We did experimental behavior and genetic characterization of TAS2R38 of two species of Sulawesi Macaques. Sulawesi macaques are unique due to their extensive evolutionary divergence into seven species in an island, which covers only 2.5% of the genus area. We used PTC to test avoidance behaviors of 25 individuals of Macaca hecki (N: 13) and Macaca tonkeana (N: 12) in Palu city, Central Sulawesi. All M. hecki rejected 2mM PTC-containing food and thus appeared to be PTC taster. On the other hand, four individuals of M. tonkeana indicated to be PTC non-taster, which rarely discriminated the bitterness of PTC. All of the critical amino acid positions for human TAS2R38 functionality are not altered in both M. hecki and M. tonkeana receptors. The non-taster individuals showed specific nucleotides on sites 349, 390, 401 which may lead to amino acid change on position 117, 130 and 134 respectively. By calcium imaging, we confirmed that the receptor with those specific amino acids change showed lower sensitivity to PTC compared to the wild types.


H29-B38
代:Jeanelle Uy
The relationship between gut size and torso anatomy
The relationship between gut size and torso anatomy

Jeanelle Uy

 The gut (gastrointestinal tract) is a unique example of a visceral structure that is thought to have driven changes to postcranial dimensions. A longstanding assumption within paleoanthropology is that the torso skeleton, particularly the ribcage and pelvis, reflects organ size; however, no data exists in the literature that directly links soft tissue (guts) to hard tissue (bones). The purpose of this project is to determine if gut size is related to torso morphology. We will test if the bony anatomy of the ribcage and pelvis is related to gut size in anthropoids. Thoracic measurements were obtained from Homo, Hylobates, Pan, Pongo, Gorilla, Macaca, and Cebus skeletons. Existing whole abdomen scans from humans (n=200) were obtained from my institution (UW-Madison) and existing scans of Pan (n=4) and Cebus (n=8) were obtained from KUPRI. We will test the null hypothesis that gut volume is not related to the pelvis or the thorax and a second null hypothesis that gut volume relative to body size does not differ across these anthropoid species. The comparison of thorax dimensions across species shows that the monkeys and Hylobates had more similar ribcage volumes in their upper and lower thorax and also have the smallest gut sizes, according to published data. On the other hand, the hominids had less similar upper-to-lower thorax volume ratios and have relatively larger gut sizes. Additionally, we have found that, in general, male humans tend to have gut volumes that are correlated with variables related to body size, while females have a more complicated relationship between the skeleton and the gut. Across species analysis will be performed once all the human data and Cebus scans have been analyzed. The data analysis will continue to progress throughout this fiscal year.


H29-B39
代:Srichan Bunlungsup
協:Suchinda Malaivijitnond
Genetic assessment of the hybridization between two subspecies of long-tailed macaque (Macaca fascicularis fascicularis and M. f. aurea)
Genetic assessment of the hybridization between two subspecies of long-tailed macaque (Macaca fascicularis fascicularis and M. f. aurea)

Srichan Bunlungsup , Suchinda Malaivijitnond

 Rhesus macaque (Macaca mulatta) is one of the most well-known non-human primate species. They were previously classified into 6 subspecies, however, due to an inadequate information, the recognition of subspecies level distinctions became obsolete and this species was subsequently divided into three main groups that are Eastern (China and vicinity), Western (India and vicinity) and Southern (Indochinese) groups. Most of the previous studies focus only on the first two groups which cause their evolutionary history still be obscured. Here, we collected wild samples of southern rhesus populations from Thailand and Myanmar. Hypervariable region I (HVSI) on mtDNA were sequenced and analyzed together with other downloaded sequences of rhesus macaque from throughout their distribution range. Phylogenetic trees were constructed using NJ, ML, and Bayesian analysis. All methods showed similar topology in which Western rhesus macaque (blue) was first separated from other regions in approx. 1.77 Mya, followed by the separation between Southern (green) and Eastern group (yellow) in approx.1.48 Mya. All tested populations showed negative Tajima’D value with no significant difference. Since Indian rhesus showed lowest nucleotide diversity within the group and highest genetic differentiation from others, we supposed that rhesus macaque was first originated in Indochinese regions then, migrated westward and eastward to Indian and China, respectively. However, Indian rhesus had experienced genetic drift and severe bottleneck and thus, showed genetic distinctive from other regions. Since this preliminary result includes only a part of mitochondria DNA, we are now analyzing other regions of mtDNA and hope this should help us to gain clearer scenario about rhesus evolutionary history.


H29-B40
代:清水 貴美子
協:深田 吉孝
霊長類における概日時計と脳高次機能との連関
霊長類における概日時計と脳高次機能との連関

清水 貴美子 , 深田 吉孝

 我々はこれまで、齧歯類を用いて海馬依存性の長期記憶形成効率に概日変動があることを見出し、SCOPという分子が概日時計と記憶を結びつける鍵因子であることを示してきた (Shimizu et al. Nat Commun 2016)。本研究では、ヒトにより近い脳構造・回路を持つサルを用いて、SCOPを介した概日時計と記憶との関係を明らかにすることを目的とする。
 ニホンザル6頭を用いて、苦い水と普通の水をそれぞれ飲み口の色が異なる2つのボトルにいれ、水の味と飲み口の色との連合学習による記憶効率の時刻依存性について実験をおこなっている。各個体あたり、朝/昼/夕の何れかに試験をおこない、学習から24時間後にテストを行う。ボトルをセットしてから最初の一口目が正解(普通の水)だった場合にポイントを加算する方式で、6頭の記憶テスト結果を評価したところ、昼に有意に記憶効率が高いという結果が得られた。しかし、各時刻におけるサルの飲水欲求の強さが記憶テストの結果に影響する可能性があるため、1日の飲水行動パターンを測定したところ、食餌時の飲水量には時刻による差は見られず、食餌時以外の時刻にはほとんど飲水行動は見られなかった。本記憶テストでは、テストと同時に食餌を与えているため、各時刻の飲水欲求は同程度であると考えられ、記憶テストの結果にも影響を与えていないと考えられた。また、昼の記憶効率の高さにSCOPが関わっているかどうかを確かめるために、6頭のうちの2頭の海馬にSCOP shRNA発現レンチウイルスまたはコントロールレンチウイルスを投与し、昼の時刻の記憶効率を測定した。コントロールレンチウイルスを投与したサルは、何も投与していないサルの昼の時刻と同程度の記憶効率を示したが、SCOP shRNA発現レンチウイルスを投与したサルは、著しく記憶効率が低下していた。しかし、正確な記憶効率を評価するためには、さらに記憶テストの試行回数を増やす必要がある。



H29-B41
代:Bambang Suryobroto
Genomic Evolution of Sulawesi Macaques
Genomic Evolution of Sulawesi Macaques

Bambang Suryobroto

 Macaca is a characteristic monkey of Asia/Oriental zoogeographical realm, however seven species of them distribute allopatrically and endemically in Sulawesi Island that is the center of Wallacea region. In 2017 we studied M. tonkeana and M. hecki because there were reports that the two species hybridize in their borderland area. We therefore follow an evolutionary model called “speciation with gene flow” to analyze the exome sequences of both species. In collaboration with Dr. Yohei Terai of Sokendai, we had succeeded in getting exome genomes of 11 individuals of M. tonkeana and 11 M. hecki. In these two species, the total number of codons is 2,874,866 and number of segregating sites are 34,519. With the expertise of Dr. Shohei Takuno, also from Sokendai, we analyzed these data. The exome sequences provide matrices of allele frequency spectrum (AFS) to infer demographic model of population subdivision. Given a homologue genetic region from the two species, the resulting AFS is a 2-dimensional matrix that recorded the number of diallelic genetic polymorphisms; each of our AFS was 23-by-23 matrix (indexed from 0). From these AFSs, we calculated the statistics commonly used for population genetic inference, such as Wright’s FST (population differentiation) and Tajima’s D (departure from neutrality). We calculated FST as 0.289 and for M. tonkeana the D is -1.18 and M. hecki -0.937. The negative Ds indicated the excess of rare variants which may be interpreted as the two populations had been through a bottleneck event and now expanding. Furthermore, we iteratively assigned an individual (probabilistically) on the basis of their genotypes to each population which is characterized by a set of allele at each locus. In doing so we found a recent admixture which evidently came from M. tonkeana to M. hecki.


H29-B42
代:松岡 史朗
協:中山 裕理
下北半島脇野沢の野生ニホンザル群の分裂が個体群動態に与える影響
下北半島脇野沢の野生ニホンザル群の分裂が個体群動態に与える影響

松岡 史朗 , 中山 裕理

 下北半島南西部のA87群は2012年に83頭に増加し、2013年4月に43頭(87A群)と22頭(87B群)の2群に分裂した。分裂5年目の2017年度の出産率は、87A群40%、87B群は86%、赤ん坊の死亡率は87A群、87B群ともに0%と分裂前の高い出産率、低い死亡率の状態に戻った。分裂前(1984~2011年)分裂後(2013年以降)の群の増加率、出産率、0~3歳の死亡率、遊動距離を比較してみたが、今年度もどれも変化は見られなかった。87A群の15歳のオトナメスが1頭が死亡した。GPS発信機の装着による首輪の擦れによる傷の化膿が原因と考えられる。分裂前、年々増加傾向にあった群れの遊動面積は、分裂後も縮小は見られず、今年度は昨年度に利用していなかった地域の利用が確認された。しかし以前は利用していたが今年度は、ほとんど利用しなくなった地域もあり遊動面積が拡大したとは言い難い。87A群は今年度66頭となり、現在と同様の高い出産率、低い死亡率が続いた場合、2,3年で再び分裂した頭数に達する。今年度も、1日程度のサブグルーピングが観察された。グルーミングの頻度と個体数との関係は現在解析中である。グルーミングの相手は、親子、姉妹の頻度が高かった。


H29-B43
代:村田 幸久
協:中村 達朗
コモンマーモセットにおける食物アレルギーの診断と管理法の開発

論文

関連サイト
東京大学大学院農学生命科学研究科 放射線動物科学研究室 http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/houshasen/
コモンマーモセットにおける食物アレルギーの診断と管理法の開発

村田 幸久 , 中村 達朗

 正常便のマーモセット3個体、泥状便のマーモセット3個体(うち1個体は正常便の個体と同一個体で別の日)から尿を採取し、排泄された脂質濃度の網羅的な測定(リピドーム解析)をおこなった。その結果、泥状便を繰り返し、Marmoset Wasting Syndromeが疑われた1個体について、正常便の際も、泥状便の際にも、炎症性脂質メデイエーターと呼ばれる脂質濃度が大きく上昇しており、強い炎症が示唆された。
 また、泥状便を繰り返すが、抗炎症剤を投与された1個体は、これらの上昇は確認されなかった。今後は食物アレルギーが疑われる個体に加え、Marmoset Wasting Syndromeが疑われる個体についても対象とし、さらに検討を加える予定である。



H29-B44
代:三浦 智行
協:阪脇 廣美
協:水田 量太
複合ワクチネーションによるSIVの感染防御効果の解析

論文
Beauchemin, C. A., Miura, T., and Iwami, S.(2017) Duration of SHIV production by infected cells is not exponentially distributed: Implications for estimates of infection parameters and antiviral efficacy. Sci. Rep. 7:42765.

Iwanami, S., Kakizoe, Y., Morita, S., Miura, T., Nakaoka, S., and Iwami, S.(2017) A highly pathogenic simian/human immunodeficiency virus effectively produces infectious virions compared with a less pathogenic virus in cell culture. Theor. Biol. Med. Model. 14:9.

学会発表
三浦智行 霊長類モデルを用いたHIV感染症の予防・治療法開発(2017年7月1日) 第26回サル疾病ワークショップ(相模原).

姫野愛、石田裕樹、森ひろみ、松浦嘉奈子、菊川美奈子、三浦智行 CCR5指向性サル/ヒト免疫不全ウイルス感染アカゲザル血漿における中和能の進化(2017年10月24-26日) 第65回日本ウイルス学会学術集会(大阪).
複合ワクチネーションによるSIVの感染防御効果の解析

三浦 智行 , 阪脇 廣美, 水田 量太

 我々は、エイズの原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の感染モデルとしてサル免疫不全ウイルス(SIV)や、それらの組換えウイルスであるサル/ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)のアカゲザルへの感染動態と免疫応答について長年研究してきた。一方、SIV遺伝子を発現するBCGベクターとワクシニアウイルスベクターを組み合わせて免疫することにより、SIVの感染防御効果が得られることを示唆する予備的結果を得た。平成29年度は、ワクチン群3頭および対照群3頭のアガケザルについて免疫誘導状況について調べたところ、ワクチン群では対照群に比較してSIV特異抗原に対する免疫が誘導されていることが確認された。そこで、SIVmac239株による攻撃接種実験を行ったところ、期待に反してワクチン群と対照群でウイルス増殖に違いが認められなかった。また、新規に開発した攻撃接種用SHIVとして、臨床分離株と同等レベルの中和抵抗性を有するCCR5親和性SHIV-MK38C株の感染実験を開始した。ワクチン候補のさらなる改善および攻撃接種用SHIVの攻撃接種ウイルスとしての適正評価のために平成30年度も感染実験を継続する。


H29-B46
代:朝長 啓造
協:小嶋 将平
内在性ボルナウイルスによるウイルス感染抑制メカニズムの解明
内在性ボルナウイルスによるウイルス感染抑制メカニズムの解明

朝長 啓造 , 小嶋 将平

 内在性ボルナウイルス様エレメント(EBLs)は、霊長目を含む多くの動物のゲノムに存在するボルナウイルス様配列である。ヒトゲノムに存在するEBLsは、臓器および培養細胞において発現し抗ウイルス作用を示すことがすでに当研究室において明らかとなっている。しかし、ヒト以外の真猿亜目に属するサルにおいてその配列、発現、および機能はまだ明らかとなっていない。そこで本共同研究では、霊長類に内在しているEBLsの機能を明らかにすることを目的に、新世界ザル、および類人猿由来の培養細胞を用い、EBLsの探索、配列決定、発現解析、および機能の解析を目的として行った。分与されたのチンパンジー、ゴリラならびにマーモセット由来の繊維芽細胞よりゲノムDNAを抽出し、ヒトゲノムに存在する特定のEBLに対するオルソログ配列をPCR法により同定した。またRNAを抽出し、RT-PCR法によりオルソログ領域からの転写を確認した。また、オルソログとその周辺配列のシークエンス解析とEBL発現に関与するプロモーターの保存性を明らかにし、進化過程におけるEBLの選択圧についても検討を行った。その結果、分与された細胞において、特定のヒトEBL(hsEBLN-3)のオルソログ配列が存在することが明らかとなった。また、hsEBLN-3は、真猿亜目の細胞においてmRNAを発現していることも示された。現在、ヒト細胞におけるhsEBLN-3の機能解明を行っており、本共同研究の成果は、hsEBLN-3の機能解明に関する論文に重要な結果として掲載をする予定である。


H29-B47
代:岡田 誠治
協:俣野 哲朗
協:刈谷 龍昇
サル造血免疫機能の解析とサル免疫不全ウイルス感染モデルマウスの樹立
サル造血免疫機能の解析とサル免疫不全ウイルス感染モデルマウスの樹立

岡田 誠治 , 俣野 哲朗, 刈谷 龍昇

 本研究の目的は、ニホンザルの造血・免疫系を解析し、その特徴を明らかにすること、その結果を元にニホンザルの造血免疫系を構築したマウスモデルとエイズモデルを構築することである。
 本年度は、ニホンザル2匹から脾細胞・末梢血を採取し、2種類の高度免疫不全マウス(NOD/Scid/Jak3欠損マウス及びBALB/c Rag-2/Jak3二重欠損マウス)腹腔内に移植した。2×10E7個以上移植されたマウスは、2週間以内に死亡した。1×10E7個移植されたマウスでは、フローサイトメトリーによりニホンザル細胞の生着が確認されたが、その割合は低かった。
 来年度は、マウスに適量の放射線照射をするなどの処置により、効率の良い移植系の確立を目指す。



H29-B48
代:平田 暁大
協:柳井 徳磨
協:酒井 洋樹
飼育下サル類の疾患に関する病理学的研究

論文
Miyabe-Nishiwaki T, Hirata A, Kaneko A, Ishigami A, Miyamoto Y, Yamanaka A, Owaki K, Sakai H, Yanai T, Suzuki J.(2017 ) Hepatocellular carcinoma with intracranial metastasis in a Japanese Macaques (Macaca fuscata). J. Med. Primatol. 46(3):93-100.
飼育下サル類の疾患に関する病理学的研究

平田 暁大 , 柳井 徳磨, 酒井 洋樹

 飼育下でサル類に発生する疾患およびその病態を把握するため、霊長類研究所で死亡あるいは安楽殺したサル類を病理学的に解析していた。平成29年度中に25頭(コモンマーモセット15頭、ニホンザル8頭、チンパンジー1頭、オマキザル1頭)の病理学的解析を行った。さらに、同研究所の獣医師と臨床病理検討会(CPC、Clinico-pathological conference)を開催し、病理学的解析結果を治療データ、臨床検査データ(血液検査、レントゲン検査、CT検査、MRI検査等)と照合し、症例の総合的な解析を行った。
 研究期間中に、マーモセットで進行性の削痩を主症状とする消耗性症候群(Wasting syndrome)の症例が多数認められたが、病理組織学的解析により、罹患個体には高度な腸炎(慢性小腸炎および慢性大腸炎)が認められることを明らかになった。本症候群の病態は一定ではないことから、いくつかの疾患が包含されている可能性が指摘されている。今回の解析から、同症候群の中には腸炎を特徴とする疾患が含まれていることが示唆され、未だ解明されていない本症候群の病因の解明にも繋がると考えられる。
 脳内転移の見られた肝臓癌のニホンザルの症例について論文を発表した。CT検査、MRI検査等の詳細な臨床検査データと病理解析結果を提示した貴重な報告であり、サル類の臨床診断技術および精度の向上に資すると考えられる。



H29-B49
代:郷 康広
ヒトの高次認知機能の分子基盤解明を目指した比較オミックス研究

論文
Tatsumoto S, Go Y, Fukuta K, Noguchi H, Hayakawa T, Tomonaga M, Hirai H, Matsuzawa T, Agata K, Fujiyama A.(2017) Direct estimation of de novo mutation rates in a chimpanzee parent-offspring trio by ultra-deep whole genome sequencing. Sci Rep. 7(1):13561. 謝辞あり

Shimogori T, Abe A, Go Y, Hashikawa T, Kishi N, Kikuchi SS, Kita Y, Niimi K, Nishibe H, Okuno M, Saga K, Sakurai M, Sato M, Serizawa T, Suzuki S, Takahashi E, Tanaka M, Tatsumoto S, Toki M, U M, Wang Y, Windak KJ, Yamagishi H, Yamashita K, Yoda T, Yoshida AC, Yoshida C, Yoshimoto T, Okano H.(2018) Digital gene atlas of neonate common marmoset brain. Neurosci Res. 128:1-13.

Fukuda K, Inoguchi Y, Ichiyanagi K, Ichiyanagi T, Go Y, Nagano M, Yanagawa Y, Takaesu N, Ohkawa Y, Imai H, Sasaki H.(2017) Evolution of the sperm methylome of primates is associated with retrotransposon insertions and genome instability. Hum Mol Genet. 26(18):3508-3519. 謝辞あり

川本芳, 川本咲江, 濱田穣, 山川央, 直井洋司, 萩原光, 白鳥大祐, 白井啓, 杉浦義文, 郷康広, 辰本将司, 栫裕永, 羽山伸一, 丸橋珠樹(2017) 千葉県房総半島の高宕山自然動物園でのアカゲザル交雑と天然記念物指定地域への交雑拡大の懸念 霊長類研究 33(2):69-77.

学会発表
郷康広 霊長類における精神・神経疾患関連遺伝子解析と認知ゲノミクスの展望(2018年2月24日) 平成29年度京都大学霊長類研究所共同利用研究会「霊長類における認知ゲノム研究」(犬山).

郷康広 「ゲノムを通して我が身を知る〜ヒト集団にみられる「個性」創発の起源に関する論考〜」(2017年10月29日) 日本社会心理学会第58回大会(広島市).

郷康広 Spatiotemporal brain transcriptome architecture and application for disease model in marmosets(2017年9月21日) 第27回日本神経回路学会全国大会(北九州市).

Yasuhiro Go Spatiotemporal brain transcriptome architecture and application for disease model in marmosets(2017年9月8日) 第60回日本神経化学学会大会(仙台市).

郷康広 ゲノムを通して我が身を知る〜人とヒトとサルの間にあるもの〜(2017年4月15日) 愛知高等学校特別講演会(名古屋市).
ヒトの高次認知機能の分子基盤解明を目指した比較オミックス研究

郷 康広

1. ヒト精神疾患・高次認知機能解明のための霊長類モデル動物の開発
 ヒトの高次認知機能やその破綻として現われる精神・神経疾患の本質的な理解のために、マカクザルおよびマーモセットを対象としたマルチオミックス解析を実施することで霊長類モデル動物の開発を行った。具体的には、それぞれ1000頭近くの個体に対して精神・神経疾患関連候補遺伝子ターゲット配列解析を行うことにより、遺伝子機能異常変異を自然発症的に持つ個体の同定を行った。また、神経変性疾患である多系統萎縮症や先天的代謝異常症であるライソゾーム症様の表現型を呈するマカクザルを対象とした集団ゲノム解析を行い、原因遺伝子を明らかにした。さらに、精神・神経疾患の脳内分子動態を明らかにするための脳内遺伝子発現マップ作製のために、マカクザル発達脳発現解析、および、マーモセットを用いたマクロレベルとミクロレベルの全脳遺伝子発現動態解析を行った。マーモセットのマクロレベルでの研究の一部を理化学研究所脳科学総合研究センターとの共同研究として論文発表した。さらに、国立精神神経センターとの共同研究として薬理学的自閉症モデルマーモセットの脳における遺伝子発現動態変化解析を行い、自閉症の分子動態解明に向けたトランスレータブル研究を推進した。
2. 比較オミックス解析による「ヒト化」分子基盤の解明
 ヒト化の最大の特徴のひとつである脳の形態進化・機能進化の分子基盤の解明のために、ヒトと非ヒト霊長類であるチンパンジー・ゴリラ・テナガザルの死後脳を用いた網羅的発現解析を行った。その結果、ヒト特異的な発現変化を示す遺伝子はチンパンジーのそれに比べて顕著に増加しており、その半数以上は、ヒト海馬のニューロンやアストロサイトにおいて生じていることを明らかにした。また、チンパンジー親子トリオ高深度全ゲノム解析による直接突然変異率の推定および一世代間におけるゲノム構造変異に関する研究を、国立遺伝学研究所、京都大学霊長類研究所との共同研究として行い、結果を論文として公表した。



H29-B50
代:神奈木 真理
協:長谷川 温彦
協:永野 佳子
STLV自然感染ニホンザルの抗ウイルスT細胞免疫
STLV自然感染ニホンザルの抗ウイルスT細胞免疫

神奈木 真理 , 長谷川 温彦, 永野 佳子

 サルTリンパ球向性ウイルス(STLV)はヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の近縁ウイルスであり、ニホンザルに高率に自然感染している。HTLV-1感染では一部の感染者が成人T細胞白血病(ATL)を発症する。HTLV-1特異的T細胞応答に個体差があり、ATL患者では低応答(免疫寛容)であることから、T細胞応答を強化することには治療的意義があると我々は考えている。本研究で、我々はウイルス特異的T細胞応答を活性化する治療方法の開発を目的として、STLV感染ニホンザルにおけるSTLV特異的T細胞応答の評価系を作成し、個体レベルで免疫活性化実験を行う。T細胞応答はMHCに拘束されるため、野生のニホンザルでは個体ごとに抗原認識部位が異なる。そこで我々は、感染個体から個別にSTLV感染細胞株を樹立し、これを標的としてT細胞応答を解析する方法を選択した。平成29年度は、PCRで定量可能なレベルのプロウイルス量を持つSTLV自然感染ニホンザル 6頭の末梢血白血球から細胞株の樹立を試み、3頭から一過性に増殖するSTLV感染細胞株を得た。これらの感染細胞を用いて、in vitroで宿主のSTLV特異的T細胞応答を調べたところ、2頭からはSTLV特異的なT細胞応答が認められたが1頭からは検出できなかった。これらのことから、STLV自然感染ニホンザルのT細胞応答には、ヒトHTLV-1感染者と同様に個体差があり、免疫寛容を示す個体があることが示唆された。


H29-B51
代:Laurentia Henrieta Permita Sari Purba
Functional characterization of bitter taste receptors in Asian Leaf-eating Monkeys

学会発表
Laurentia Henrieta Permita Sari Purba, Kanthi Arum Widayati, Sarah Nila, Kei Tsutsui, Nami Suzuki-Hashido, Takashi Hayakawa, Bambang Suryobroto, Hiroo Imai Characterization of bitter taste receptor TAS2R38 to PTC in Colobine Monkeys(25-27 September 2017) 51st Annual Meeting of The Japanese Association for the Study of Taste and Smell ( Japan).
Functional characterization of bitter taste receptors in Asian Leaf-eating Monkeys

Laurentia Henrieta Permita Sari Purba

 TAS2R38 is one of TAS2R multigene families that encode receptor to recognize bitter from several N-C=S compounds including PTC. TAS2R38 had been identified in many primates. TAS2R38 in human, chimpanzee, Japanese macaques exhibit intra-species polymorphism that lead to different behavioural response of individual. Taster individual show aversion to PTC, in contrast to tolerant in non-taster individuals.
 Leaf-eating monkeys (Subfamily Colobines) are unique among primates because their diet mostly consisted of leaves that perceptually tasted bitter to human. We confirmed that Trachypithecus, Presbytis and Nasalis were all less sensitive to PTC compared with macaque both in behavioral detection and cell assay. In addition we found four colobine specific amino acid mutations (V44I, Q93E, I148F, and R330K) that revealed in comparison with human, chimpanzee and macaque TAS2R38 receptors.
We did site-directed mutagenesis of macaque TAS2R38 to mimicking colobine in the specific position. By calcium imaging, we measured the responses of cell expressing mutant TAS2R38 of macaque mimicking colobine. The single-site mutations of four amino acids of TAS2R38 of macaque to mimic colobine confirmed that those mutations in colobines are responsible to the decreased sensitivities to PTC. In addition, double-, triple- and quadruple- site mutations are less sensitive to PTC compare to the wild type. We found mutants containing amino acid change at position 93 were remarkably reduced the sensitivities as shown by the EC50 values. We proposed that Q93 are important to keep the function of TAS2R38 receptor in PTC-taste species such as macaque.



H29-B52
代:関澤 麻伊沙
ニホンザル野生群におけるinfant handlingの意義
ニホンザル野生群におけるinfant handlingの意義

関澤 麻伊沙

 群れを形成する霊長類では、母親以外の個体(ハンドラー)が新生児へ接触するinfant handling(IH)という行動が日常的にみられる。IHは,ハンドラーがアカンボウに興味を持ち、ハンドラーと母親との交渉が行われ、母親がハンドラーを許容する、という3段階があると考えられる。しかし、これまでの研究では、これらを総合的に解釈したものはなかった。そこで本研究では、ニホンザル野生群を対象に、上記の3段階を踏まえて、IHの意義を総合的に理解することを目的とした。申請者はこれまで3年間に渡り、宮城県金華山島に生息する野生ニホンザルを対象にIHに関わる行動データを収集してきた。今年度は、アカンボウ3頭とその母親について前年度までと同様に個体追跡による行動観察を行い、補足的なデータを収集した。これまでに集めたデータを分析した結果、ハンドラーは、母親の子育てスタイルや母子間距離、自身と母親の社会関係などを見極めて、接触しやすいアカンボウを選択的にハンドリングしている可能性が示唆された。


H29-B53
代:横田 伸一
二ホンザルとアカゲザルにおける新規ストレスマーカーの探索とストレス反応性の比較研究
二ホンザルとアカゲザルにおける新規ストレスマーカーの探索とストレス反応性の比較研究

横田 伸一

 本研究の目的は、ニホンザルとアカゲザルにおいて簡便に測定できるストレスバイオマーカーを見出し、それぞれのサル種におけるストレス反応性の特徴をバイオマーカーの観点から明らかにすることである。平成29年度は、ストレス負荷(サルをホームケージから他室の個別ケージに一時的に移動させるストレス)の2日前と当日の同時刻に採取した血液および唾液中のコルチゾール、メラトニン、アミラーゼ、免疫グロブリンA(IgA)の濃度測定に成功し、血漿よりも唾液中のコルチゾール濃度の方が鋭敏にストレス反応を捉え得ることを明らかとした。また、コルチゾール濃度の上昇に並行して、アミラーゼとIgAの濃度が減少することも明らかにした。コルチゾール、アミラーゼ、IgAの変動は、半数例にあたるN=6の時点ではアカゲザルにおいてのみ有意差が検出されており、バイオマーカーの観点からもニホンザルとアカゲザルのストレス反応性の違いが見出される可能性がでてきている。今後は、ストレスの種類をより現実的なものに変更し、唾液や血液以上に採取が容易な糞便中でのバイオマーカーの検出系の創出にもチャレンジしてみる予定である。


H29-B54
代:Leonardo C?sar Oliveira Melo
協:Maria Ad?lia Borstelmann de Oliveira
協:Anisio Francisco Soares
Absortion and bioavaiability of gum’s compounds used by marmoset in field and laboratory conditions
Absortion and bioavaiability of gum’s compounds used by marmoset in field and laboratory conditions

Leonardo C?sar Oliveira Melo , Maria Ad?lia Borstelmann de Oliveira, Anisio Francisco Soares

 From three family groups of marmosets monitored since 1998, in two Brazilian biomes: Caatinga Biome in the county of Arcoverde - 8º 24’ S e 37º 03’ W - and Atlantic Forest Biome in two others counties: Recife and São Lourenço da Mata - Tapacurá Ecological Fieldstation 08o 07' S, 34o 55’ W) in the state of Pernambuco, we collected samples of feces from marmosets and gums used by their diet.
In the cases of feces were collected from the identified individual, the sex and weight of the individuals were recorded. Other samples were collected on the feeding platforms, in which case no individual data was available. All samples were stored in ependorf without preservatives and stored in freezer -20 oC within 4 h of collection. "
 Samples of four species of gum trees of the Atlantic Forest and Caatinga - in number of 2 for each site - were collected with the aid of a metal spatula. These were packed in sterilized pots and preserved under refrigeration. In the laboratory, they were lyophilized and later preserved in deep freeze at -20 degrees.



H29-B55
代:牟田 佳那子
協:増井 健一
協:矢島 功
プロポフォールとフェンタニルによるコモンマーモセットの全静脈麻酔法の確立
プロポフォールとフェンタニルによるコモンマーモセットの全静脈麻酔法の確立

牟田 佳那子 , 増井 健一, 矢島 功

 我々は、実験動物として数を増やしているコモンマーモセットの全身麻酔の質の向上を目的として、静脈麻酔薬と鎮痛薬の投与のみで全身麻酔状態を維持する全静脈麻酔法の確立を行っている。本年度はプロポフォールの血中濃度と麻酔深度の関係を調査した。当初ヒトの麻酔深度モニターとして使用されているBISモニターの電極部をマーモセット用に改良し、脳波のスペクトラム解析から麻酔深度を評価する予定であったが、電極が非常に小型で、わずかな動揺も脳波に影響してしまい、長時間安定してデータを記録することが困難であった。このためプロポフォール投与時の外的刺激の許容性評価に変更し、麻酔深度の判定を行った。健康なマーモセット6頭にセボフルラン鎮静下で尾静脈に留置針を設置し、完全に覚醒させた後に8 ㎎/kgのプロポフォールを4 mg/kg/minの速度で投与した。その後宮部らが作成した、音、視覚そして触覚刺激に対する反応、姿勢、瞬きの5項目に関して4段階で鎮静度を評価する、霊長類の鎮静度スコアをマーモセット版に改良したものを用いて、2分毎に鎮静度および心拍数、呼吸数をモニターした。その結果ボーラス投与のみで全頭約10分間の完全な不動化を得られた。現在はこの不動化に必要な血中濃度を予測血中濃度と比較し、薬力モデルを作成中である。


H29-B59
代:秀平 万純
野生ニホンザルにおける老齢メスの性行動
H29-B60
代:荒川 那海
協:颯田 葉子
協:寺井 洋平
霊長類におけるヒトの皮膚の表現型の特性について

学会発表
荒川那海 ヒトと類人猿の皮膚における遺伝子発現比較(2017年7月15日) 第33回日本霊長類学会大会(コラッセふくしま).

荒川那海 ヒト-類人猿間の皮膚での遺伝子発現比較とヒト特異的形質について(2017年8月24日) 日本進化学会第19回大会(京都大学吉田キャンパス).
霊長類におけるヒトの皮膚の表現型の特性について

荒川 那海 , 颯田 葉子, 寺井 洋平

 他の霊長類と比較してヒトの皮膚では表皮が厚く、表皮と真皮の結合面積を増大させるように基底膜の形状が波型であり、また弾性線維が豊富であることが定性的に報告されている。これらの特徴はヒトで減少した体毛の代わりに皮膚の強度を増し、外部の物理的な刺激から体内部を保護するために進化してきたと考えられている。本研究では、ヒト特異的皮膚形質が進化の過程でどのような遺伝的基盤によって獲得されてきたのかを、遺伝子発現量に焦点を当てたヒトと類人猿の種間比較から明らかにすることを目的としている。
 ヒト5個体、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン各種3個体ずつの皮膚total RNAを用いたRNA発現量解析(RNA-seq)を行った結果、基底膜や弾性線維の形成に関わる複数の遺伝子の発現量がヒト特異的に高く発現していることが明らかになった。さらにこれらの遺伝子の発現調節領域を分子進化学的手法とヒストン修飾の情報により推定した。それらの領域中のヒト特異的置換がヒト特異的な遺伝子発現を生み出すと推定し、各遺伝子2〜10個の候補置換を抽出した。今後これらの候補置換が実際にヒト特異的遺伝子発現を生み出しているのか、プロモーターアッセイにより検証していく。



H29-B61
代:大石 元治
協:荻原 直道
大型類人猿の前腕における回内-回外運動機構の機能形態学的解析

学会発表
大石元治、荻原直道、宇根有美、添田聡、尼崎肇、市原伸恒 大型類人猿における肘関節の伸筋•屈筋の筋生理学的断面積について(2018年3月) 第123回日本解剖学会総会全国学術集会(東京都).
大型類人猿の前腕における回内-回外運動機構の機能形態学的解析

大石 元治 , 荻原 直道

 回内-回外運動は手首の回転運動に関与し、三次元的に位置する支持基体を用いる樹上性ロコモーションや、手の器用さと関連が深い。大型類人猿は樹上環境で懸垂型ロコモーションを高頻度に行うが、典型的なロコモーションの種類や出現頻度に大きな違いが種間に存在することから、回内-回外の運動性も異なる可能性がある。本研究では未固定の前肢の標本を用いて、前腕骨格の回内-回外運動を再現しながらCT撮影することにより、回内時と回外時の橈骨と尺骨の相対的な位置関係を観察している。本年度は、チンパンジー2個体の前腕のCT撮影を行うことができた。最大回内時、最大回外時のデータから三次元再構築を行うことで、尺骨を軸とした橈骨の運動を再現した(図)。また、CT撮影後は前肢筋の起始部、停止部、走行の特徴を観察した。筋は骨から分離して筋束長、湿筋重量を測定した。さらに、これらの計測値から筋力と相関のある筋生理学的断面積を算出した。今後は標本数を増やすとともに、他の大型類人猿との定量的な比較を予定している。


H29-B62
代:前多 敬一郎
協:束村 博子
協:大蔵 聡
協:上野山 賀久
野生ニホンザルの個体数抑制技術の開発
野生ニホンザルの個体数抑制技術の開発

前多 敬一郎 , 束村 博子, 大蔵 聡, 上野山 賀久

 雄ニホンザルにニューロキニンBの受容体(NK3R)の拮抗剤を投与し、血中薬物濃度の変化を検討するとともに、血中テストステロン濃度および精巣の組織学的変化を指標としてその繁殖抑制効果を検証した。具体的には、NK3R拮抗剤SB223412のDMSO飽和溶液を充填したシリコンチューブを繁殖期の雄ニホンザル3個体に皮下移植した。2個体はインプラントを1週間維持しその後摘出した。移植前に1回、移植後からの1週間1日に1回、計8回の採血(1 ml/回)を行った。残りの1個体は45日間インプラントを維持しその後摘出した。移植前に1回、移植後からの1週間1日に1回、チューブ摘出時1回、計9回の採血(1 ml/回)を行った。この個体はチューブ摘出時に安楽殺し、視床下部、精巣、精嚢腺を採取した。血液から血漿を分離し、NK3R拮抗剤濃度量をHPLCおよびLC/MSにて解析した。その結果、血漿中NK3R拮抗剤量はチューブ移植後に増加していた。また、精巣および精嚢腺の組織切片を作製しHE染色を行った。その結果、精巣において精母細胞やセルトリ細胞の異常な脱落が認められた。精嚢腺は全体および腺腔の大きさが縮小していた。
 現在、エンザイムイムノアッセイにより血漿中テストステロン濃度を測定している。また、視床下部からはRNA抽出を行い、NK3Rのクローニングを行う予定である。



H29-B63
代:長谷 和徳
自律的に歩容遷移を行うマカク四足歩行モデルの開発

学会発表
伯田 哲矢,吉田真,長谷和徳,平崎鋭矢 ニホンザルの歩容のシミュレーションによる解析(2017年11月5日) 第38回バイオメカニズム学術講演会(大分県別府市).

長谷和徳,林祐一郎,矢野龍彦 筋骨格モデルによるナンバ歩きの生体力学分析(2017年11月4日) 第38回バイオメカニズム学術講演会(大分県別府市).

Togo Matoba, Kazunori Hase, Sung Hyek Kim and Akira Yoshikawa: Three-Dimensional Neuro-Musculo-Skeletal Model with Mechanical Characteristics of stretch reflex(2017年7月25日) XXVI Congress of the International Society of Biomechanics(Brisbane, Australia).

Makoto Yoshida, Kazunori Hase: A Simulation Study on the Scale Effects on the Gait of Imaginary Bipeds(2017年7月25日) XXVI Congress of the International Society of Biomechanics(Brisbane, Australia).
自律的に歩容遷移を行うマカク四足歩行モデルの開発

長谷 和徳

 一般的な四足動物は後方交叉型と呼ばれる四肢の運動パターンによってロコモーションを行うが,ニホンザルなどのマカクは前方交叉型と呼ばれるロコモーション・パターンを持つ.本研究では,関節動態や神経系の運動制御機構などを考慮し自律的に歩容遷移可能なマカク類の四足歩行のシミュレーションモデルを作成し,身体力学系を含む力学的環境変化と歩行遷移との関係を計算論的に明らかにすることを試みた.霊長類研で撮影したニホンザルのロコモーションデータや,歩容の特徴の知見を参照し,四足歩行の運動制御モデルの構築を行った.制御系モデルとして,従来の脚位相制御機構に体重心に応じた位相調整が可能な仕組みを導入した.シミュレーションではサル本来の前方交叉歩行の他,後方交叉歩行も実現できるようにした.さらに,体形条件についても体重心が後方に位置するサル本来のサル型体形のほか,体重心を前方に位置するように体形条件を仮想的に調整したイヌ型モデルを構築した.シミュレーションではこれらの組み合わせた,前方交叉・サル型モデル,後方交叉・サル型モデル,前方交叉・イヌ型モデル,後方交叉・イヌ型モデルの4種類の歩行モデルで歩行運動を生成し,歩容を評価した.シミュレーションからはサル本来の前方交叉・サル型歩行モデルにおいて移動のエネルギ効率が最も良いとの結果が得られた.この特徴は脚位相と体重心などとの力学的な位置関係より説明ができると考えられた.ただし,モデルの妥当性については更なる検証が必要である.


H29-B64
代:豊川 春香
協:島田 将喜
野生ニホンザルの種子散布者としての役割と糞虫との相互関係
野生ニホンザルの種子散布者としての役割と糞虫との相互関係

豊川 春香 , 島田 将喜

 霊長類をはじめとした大型果実食者の絶滅が生態系機能の消失に直結することが熱帯において知られているものの、日本の森林においてその影響はほとんど注目されてこなかった。本研究では、特に研究例の少ない多雪地生態系を対象に、ニホンザルと食肉目各種が起点となる種子の一次・二次散布特性を比較することで、ニホンザルが持つ森林の多種共存を支える固有の機能の特定を試みる。
 一次散布では、ニホンザルが中型哺乳類の中では最も散布できる種子の種数が多様で、唯一の散布者となった種子が27種みられた。ニホンザルは食肉目よりも小さい種子を散布する傾向にあり、食肉目によって散布された種子の半数が発芽の阻害要因となる可能性がある果皮や果肉が付着したままの状態であったが、ニホンザルはほとんどが種子のみであった。また、糞虫による二次散布からは、中型哺乳類の糞すべてに糞虫が誘引されたことから、中型哺乳類によって散布された種子は二次散布されることが予想されるが、食肉目を利用する糞虫は二ホンザルと比べ、個体数・種数ともに少なかった。
 以上から、同じ種子であればニホンザルによる散布の方が発芽可能な種子は多く、種子の腐敗防止や種子捕食者からも忌避されやすい可能性が示唆された。



H29-B65
代:倉岡 康治
協:稲瀬 正彦
視覚刺激の好みに対するホルモンの影響
視覚刺激の好みに対するホルモンの影響

倉岡 康治 , 稲瀬 正彦

 霊長類は他個体に関する視覚情報に興味を示す。また、動物の社会行動においてはテストステロンやオキシトシンが重要な役割を果たすことが知られているため、上記のホルモンがニホンザルの社会的視覚刺激の好みにどう影響するかを行動実験で調べることを目的としている。
 本実験では、飼育ケージ内でのサルの自発的な行動によりデータを得る実験環境を構築することにした。霊長類研究所飼育室において、飼育ケージにタブレット型コンピューターを取り付け、複数の他個体画像を提示する。サルがある画像に興味を示して触れれば、その画像をより長く提示し、別の画像に興味を示さず触れることが無ければ、その画像は少しの時間の後に消えるようにプログラムする。この課題で各視覚刺激に対するサルの興味を調べ、テストステロンやオキシトシンを投与した後、その興味がどのように変化するかを調べる。
 本年度は、おもに飼育ケージ内でのホルモン投与前データの記録を試みた。実験を始めた当初、タブレット画面に視覚刺激が提示されるとサルは興味を示すが、なかなか画面に触ろうとする行動が見られなかった。そこで、画面への接触頻度をあげるため、画面にケーキシロップをつけた。サルがシロップを舐めるために画面を触ると、それに伴って他個体画像が提示されるようにした。最初はケーキシロップのためだけに画面を触っていたと思うが、時間が経ちケーキシロップがなくなってからも、画面への接触がみられることがあった。画像に対する興味が出てきた可能性がある。



H29-B66
代:中村 紳一朗
協:宮沢 孝幸
SRVのマカク属異種感染における病理組織学的研究
SRVのマカク属異種感染における病理組織学的研究

中村 紳一朗 , 宮沢 孝幸

 サルレトロウイルス5型(SRV5)感染のウイルスの組織学的分布は不明な点が多い。またSRV5のマカク属サル種間での病態の違いも不明である。当初、新規抗体による局在解明を目的としたが進捗がかなわず、本年度はエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)のSRV5による病態発症への関与を検討した。PCR法、ELISA法でSRV5陽性だった同一導入元のカニクイザル死亡例3頭(各リンパ腫、慢性肺炎、慢性腎炎で死亡)はニホンザルのSRV5感染と異なる症状だった。これら3頭と、SRV5陰性のカニクイザル3頭の主要臓器と血清を用い、臓器のパラフィン切片でHE染色およびEBVに対するIn situ hybridization(ISH)法、血清でEBVの間接蛍光抗体法(IF)を行った。
 SRV5陽性個体のISHで、リンパ腫例(Fig. 1)は腫瘍細胞に散在性の陽性像(Fig. 2)、慢性肺炎例は肺炎病巣内のリンパ球、リンパ系臓器のリンパ球に散在性の陽性像を認めた。慢性腎炎例はホルマリン浸漬が長く、有効な陽性像を認めなかった。SRV5陰性個体のISHでは、リンパ系臓器で非常に少数のリンパ球に弱い陽性反応を認めた。一方、IFは6例すべてが陽性だった。
 いずれのカニクイザルもEBVの抗体陽性で、ウイルスが潜伏性に感染していると思われるが、SRV5陽性個体ではISHでの陽性細胞が多かった。SRV5による免疫機能の低下がEBVの活性化を招き、これがSRV5陽性個体の不測の死亡の原因に関わっていることが推測された。
学会発表
中村紳一朗 再生医療実現のためのサル類モデルに関わる微生物学統御(H29年7月1日) 第26回サル疾病ワークショップ(麻布大学・神奈川県相模原市).



H29-B67
代:松原 幹
ヤクシマザルの頬袋散布種子および糞中種子の二次散布者調査

学会発表
松原 幹 屋久島のニホンザル種子散布におよぼすシカのサル糞食の影響(2017年9月8~11日) 日本哺乳類学会2017年度大会(富山大学).

松原 幹 屋久島のニホンザル種子散布とシカのサル糞食(2017年12月8~10日) 屋久島学ソサエティ第5回大会(屋久島離島開発総合センター(屋久島町宮之浦)).
ヤクシマザルの頬袋散布種子および糞中種子の二次散布者調査

松原 幹

 前年度に設置したヤクシマザルに糞散布されたヤマモモ種子と頬袋散布された種子の発芽調査を行った。糞散布されたヤマモモと頬袋散布されたリュウキュウマメガキの発芽は見られず、頬袋散布されたシロダモ・イヌガシで発芽を数多く確認した。シロダモとイヌガシの種子は動物による被食率が低いことが発芽率が高い一因と考えられる。しかし、複数のシロダモ実験区でシカと小動物避けカゴ内の種子や、カゴで覆わなかった種子が大雨で実験区外に流出し、実験区の下方の窪みで発芽するアクシデントがあった。     今年度はヤマモモの頬袋散布種子を採集して、糞散布された種子と比較を行う予定であったが、果実の結実量が不十分であったことから計画を延期した。また、夏の台風等の影響と果実結実率が高かった前年度の影響で、2017年10~12月の果実結実率が低く、頬袋散布調査に必要な数の種子を収集できなかった。現在、ヤクシマザルが散布した種子を訪問する動物種について、カメラトラップで撮影した動画を使って解析を行っている。


イヌガシ発芽


頬袋散布


H29-B68
代:澤田 玲子
成人を対象とした自己情報処理に関する脳波研究

学会発表
澤田玲子、十一元三、正高信男 自己氏名に対する素早い反応: 氏名刺激と筆記者における自己関連情報処理の解明に向けて (2017年9月21日) 日本心理学会第81回大会(久留米市).
成人を対象とした自己情報処理に関する脳波研究

澤田 玲子

 ヒトは顔や氏名、あるいは自分が作成した文字など、さまざまな対象において自己を認識する。このような自己関連情報処理には、対象ごとに異なる自己表象があるとする「領域特異的」であるとの報告があるが、先行研究では異なる視覚刺激 (たとえば、顔と名前) が用いられたため、領域特異的な自己関連情報処理によるのか、刺激特異的な情報処理であるのかが明らかではない。そこで、本研究は氏名と筆記者という2つの領域の自己関連情報をもつ手書きされた氏名を刺激として用いることで、自己関連情報処理が領域特異的であるのか検討した。具体的には、23名の日本人成人を対象に、自分あるいは他者によって手書きされた、自分あるいは他者の漢字とひらがなで表記された氏名を観察中に事象関連電位を計測した。その結果、刺激呈示後230~300ミリ秒に後頭領域に励起する事象関連電位P250の振幅、とくに右半球の電極で、筆記者における自己・他者の違いが記録された。また、刺激呈示後約300~500ミリ秒後に正中部に励起する事象関連電位LPCの振幅に、名前における自己・他者の違いが記録された。このように、氏名と筆記者にかんする自己関連情報の処理の違いは、異なる事象関連電位成分に反映した。この結果は、領域特異的な自己表象の存在を支持するものであると考えられる。


H29-B69
代:佐々木 えりか
協:井上 貴史
協:石淵 智子
協:高橋 司
協:黒滝 陽子
霊長類における絶滅危惧種の保全技術の確立

論文

学会発表
石淵智子、黒滝陽子、三輪美樹、井上貴史、中村克樹、佐々木えりか 霊長類における絶滅危惧種の保全技術の確立 ~ワタボウシタマリン~(2018年1月17日) 第7回日本マーモセット研究会大会(京都).

関連サイト
公益財団法人実験動物中央研究所 http://www.ciea.or.jp/
霊長類における絶滅危惧種の保全技術の確立

佐々木 えりか , 井上 貴史, 石淵 智子, 高橋 司, 黒滝 陽子

 非ヒト霊長類の多くは絶滅の危機にさらされており、絶滅危惧種に指定されている動物においては、動物園で飼育されている動物を交換し、近交化を防ぎつつ繁殖をおこない、野生に戻す取り組みが行われている現状である。我々は新世界ザルのコモンマーモセット(マーモセット)の胚を低侵襲的な経膣子宮灌流法で採取して凍結保存し、凍結胚を復元、胚移植によって個体作製を行う技術を有しているため、マーモセットと近縁で絶滅寸前としてレッドリストに登録されているワタボウシタマリン(タマリン)にその技術を転用して、種の保全のための基盤技術開発を行った。本研究は以上の目的のもと、マーモセットに近縁であるワタボウシタマリン3ペア(京都大学霊長類研究所)を用いて受精卵採卵を中心に進めた。まず初めに、タマリンの血漿を週に1回採取し、血漿プロゲステロン値を測定して性周期を調べた。また、その性周期やプロゲステロンの値から排卵日を決定し、排卵日から3~9日後に受精卵採卵を行なった。採卵法として、麻酔下の動物の膣内にガラス棒を挿入し、テフロン製ガイドカテーテル(外筒)を子宮口から子宮内に挿入、ガイドカテーテル内に採卵用カテーテル(内筒)を挿入して灌流液にて子宮内を還流し、戻ってきた還流液を回収、検鏡し受精卵を確認した。3頭のメスはいずれも性周期が動いており、のべ6回の排卵が確認されたため採卵を行い(表 1)、2個の受精卵(桑実胚と4細胞期胚、図1)、2個の未受精卵、1個の死胚を採取、また同時に灌流液に混入する子宮内膜も採取した。細胞の輸送においては、37度で輸送可能な細胞輸送機や液体窒素で凍結させた後に輸送するためのドライシッパーなどを用いて実験動物中央研究所に移送した。受精卵の移送後、桑実胚においては発生が認められ、胚盤胞に発生した(図 2)。種の保全を行うために、胚性幹細胞作製を試みたが、樹立には至らなかった(図 3)。また、ペアの雄が死亡したため、精巣細胞及び、精子の保存もおこなった(図4)。これらの結果から、タマリンはマーモセットの発生工学技術を転用することで配偶子を獲得、保存することが可能であることが示唆された。さらに、昨年度はワタボウシタマリン4ペアを用いて8回手術し、1個の胚盤胞を得るのみであったのに対し、今年は6回の受精卵採卵で2個の受精卵、2個の未受精卵、1個の死胚を得ることができたことから、排卵日予測と採卵手技の精度が上がったと考えられる。


H29-B71
代:大谷 洋介
協:小川 均
ニホンザルを対象とした顔認識システムの開発
ニホンザルを対象とした顔認識システムの開発

大谷 洋介 , 小川 均

 本研究ではニホンザルを対象とした広範かつ簡便な個体識別・登録手法の実現により調査・保護管理・獣害対策等の効率的な実施に資することを目的として、画像取得による顔認識システムの開発を実施した。
 平成29年度共同利用研究において取得した霊長類研究所飼育の高浜群(57個体)、若桜群(45個体)、嵐山群(62個体)、椿群(47個体)の個体を撮影した動画を元に顔認識システムの開発を進めた。
 昨年度開発したシステムを、精度・識別可能個体数の向上を目的として改修を行い、新たにDeepLearning技術を導入した。具体的には、HOG特徴量を用いた強化学習(Real AdaBoost)により画像中からニホンザルの顔領域を自動的に抽出し、CNN(Convolutional Neural Network)による識別器の作成を行った。得られた識別器を用いて個体登録・識別を行い、同集団内の15個体の識別を可能とした。
 野生下での運用試験によるプログラム改修を目的として鹿児島県熊毛郡屋久島町西部林道にて野生集団の撮影を実施し、約50個体から581本の動画を取得した。直近の作業目標として、本サンプルを利用して各集団のメス個体合計15-30頭程度の識別を行い、林道に出現する集団の識別が可能なシステムの実現を目指す。この作業を通じて試作システムの検証・改善を行うとともに、DeepLearningによる個体識別システム実装のプロトコル策定を行う。



H29-B72
代:金子 新
協:塩田 達雄
協:中山 英美
協:三浦 智行
協:入口 翔一
アカゲザルiPS細胞の免疫細胞への分化
アカゲザルiPS細胞の免疫細胞への分化

金子 新 , 塩田 達雄, 中山 英美, 三浦 智行, 入口 翔一

 アカゲザル3個体に由来する iPSCからマウスフィーダー細胞との共培養下に造血前駆細胞(CD34(+)細胞)、胸腺T細胞(CD4(+)8(+))の誘導を行った。いずれのクローンでもCD34(+)細胞とDP細胞への誘導が可能であった。そこでヒトiPS細胞からのT細胞誘導で有効性が報告され、臨床応用に用いられる無フィーダー培養を検討した。まず、アカゲザルiPS細胞培養そのものの無フィーダー化を試みたところ、細胞外マトリックスコート培養皿でのiPS細胞維持が可能であることが明らかになった。次に造血前駆細胞誘導を無フィーダー化したところ、CD34(+)細胞は誘導されるもののその後の誘導効率に支障をきたすことが明らかになったため、以後の実験ではマウスフィーダー細胞との共培養法を用いることとした。また、ヒトiPS細胞からのT細胞誘導法として報告されている三次元培養法を試みたところ、T細胞分化を認めなかった。これらの結果より、ヒトiPS細胞からのT細胞分化において有用性が示される条件であっても、必ずしもアカゲザルiPS細胞の分化誘導には適さないことが示唆された。
 マーキング後に生体へと移植する実験のために、アカゲザルから採取したCD34(+)細胞、あるいは上述の方法でアカゲザルiPS細胞から分化誘導したCD34(+)細胞や再分化T細胞に、ウイルスベクターを用いて遺伝子マーキングを行う実験を行った。アカゲザル骨髄由来のCD34(+)細胞あるいはiPS細胞由来のCD34(+)細胞へのマーキングが可能であることを確認した。



iPS細胞から誘導した造血前駆細胞


H29-B73
代:保坂 善真
協:割田 克彦
サル雌性生殖器由来幹細胞の分離とその機能解析の試み
サル雌性生殖器由来幹細胞の分離とその機能解析の試み

保坂 善真 , 割田 克彦

 実験2年度目の平成29年度は、前年度(平成28年度)に採取、増殖後に、冷凍保存しておいた月経血由来細胞(幹細胞と思われる)を解凍後、細胞性状の解析や組織細胞への分化を試みる計画であった。しかし、凍結保存しておいた細胞を再度播種したが、その生存率がきわめて低く、保存細胞を実験に供するすることは困難であることが明らかとなった。また、胎盤由来の組織からの幹細胞を採取も企図していたが、使用計画の都合により同組織を入手できなかった。月経血からの細胞の採取、分離を29年度も引き続き試みた。しかし、目的とする細胞の分離に至ることはできなかった。


H29-B74
代:中内 啓光
協:長嶋 比呂志
協:平林 真澄
協:正木 英樹
協:海野 あゆみ
協:佐藤 秀征
異種生体環境を用いたチンパンジーiPS細胞からの臓器作製
異種生体環境を用いたチンパンジーiPS細胞からの臓器作製

中内 啓光 , 長嶋 比呂志, 平林 真澄, 正木 英樹, 海野 あゆみ, 佐藤 秀征

 本年度は提供を受けたチンパンジー末梢血細胞からiPS細胞を作製し、以下の研究を行った。
a) チンパンジーナイーブ型iPS細胞の開発
 現時点で最も有望なナイーブ型への変換方法であるchemical resettingをチンパンジーiPS細胞に適用した。しかし、ナイーブ型iPS細胞株は樹立できなかった。チンパンジーとヒトは近縁種ではあるが、チンパンジー用に培養条件を至適化する必要があると考えている。
b) チンパンジープライム型iPS細胞からの異種間キメラ動物作製
 チンパンジープライム型iPS細胞をマウス胚やブタ胚に移植し発生させたところ、2-3日のうちに移植細胞は死滅し、キメラ個体は得られなかった。そこで、iPS細胞に抗アポトーシス因子であるBCL2の誘導型発現システムを導入したものを同様に移植した。その結果、マウス胚において最長で9.5dpcまでの移植細胞の寄与が認められた。ブタ胚においてもほぼ相同な発生段階である19dpcの段階で移植細胞の生存を確認している。ただし、どちらの種においても移植細胞の寄与率が低いこと、出生時においてキメラである個体が得られていないことが今後の検討課題である。
b)の結果については現在論文をまとめており、2018年中の発表を予定している。



H29-C1
代:川合 伸幸
協:邱 ??
サルの脅威刺激検出に関する研究
サルの脅威刺激検出に関する研究

川合 伸幸 , 邱 华琛

 ヒトがヘビやクモに対して恐怖を感じるのは生得的なものか経験によるのか長年議論が続けられてきた。我々は、ヘビ恐怖の生得性は認識されていることを示すために視覚探索課題を用いて、ヒト幼児や(ヘビを見たことのない)サルがヘビの写真をほかの動物の写真よりもすばやく検出することをあきらかにし、ヒトやサルが生得的にヘビに敏感であることを示した。しかし、発見したヘビの場所を長く記憶することは生存価があるが、ヘビの位置を長く記憶しているかは不明である。そこで、ニホンザルがヘビの位置を長く記憶しているかを、遅延見本合わせ課題で確認した。具体的には見本合わせ課題において、提示された見本刺激をサルが触った後に、1秒〜3秒の遅延期間を置いてから、2つの選択刺激を提示した。もしサルがヘビを長期間覚えているなら、ヘビの正答率が良くなると考えられた。しかし、遅延時間がのびるほど成績が低下したものの、ヘビの成績がよいとの結果は得られなかった。この結果は、サルはヘビを長期間覚えるわけではない可能性を示唆するが、選択刺激が2つしかなく、かつ遅延時間が比較的長いために、予期した結果が得られなかった可能性も考えられる。そこで次年度は、より多くの選択肢で、かつさらに短い保持時間で、ヘビの位置記憶が優れるかを検証する。


H29-C2
代:杉田 昌彦
協:森田 大輔
脂質を標的としたサル免疫システムの解明
脂質を標的としたサル免疫システムの解明

杉田 昌彦 , 森田 大輔

 アカゲザル末梢血より樹立したリポペプチド特異的細胞傷害性T細胞株(2N5.1, SN45)(J. Immunol. 2011; J. Virol. 2013)の増殖維持には、2〜3週間毎に適切なドナー由来のアカゲザル単核球の存在下で抗原刺激を行うことが必須である。本年度、霊長類研究所共同利用・共同研究課題を通して、T細胞活性化能を有するアカゲザルドナーを選定し、末梢血単核球を得てT細胞株を効果的に増殖維持することができた。さらに、このT細胞株を用いた研究から、以下の2つの顕著な成果をあげることができた。
1) 世界に先駆けて発見したアカゲザルリポペプチド提示分子Mamu-B*098(Nature Commun. 2016)が細胞内で結合する内因性リガンドとして細胞由来のリン脂質群を同定した。さらにMamu-B*098:リン脂質複合体の結晶構造を解明するとともに、その過程で新たなリガンド分子を見出し、その分子同定に成功した。(近日中に投稿予定)
2) 第2のアカゲザルリポペプチド提示分子としてLP2を同定し、LP2:ウイルスリポペプチド複合体の結晶化に成功した。さらにこれを用いてX線結晶構造解析を行い、LP2とリポペプチドの結合様式を解明した。(投稿中)



H29-C3
代:黒田 公美
協:齋藤 慈子
協:篠塚 一貴
協:矢野 沙織
マーモセット人工哺育個体の音声発達
マーモセット人工哺育個体の音声発達

黒田 公美 , 齋藤 慈子, 篠塚 一貴, 矢野 沙織

 家族で群れを形成し、協同繁殖をおこなうコモンマーモセットは、親子間関係の発達を知るうえで重要な知見をもたらしてくれる動物である。また、多様な音声コミュニケーションを行うことが知られている種でもあり、音声の発達的変化についても注目がなされている。愛着行動の発達を調べる方法として、古くから母子分離という方法がとられているが、実験目的の完全な分離は倫理的な問題があり、近年では行われなくなった。マーモセットは、通常双子を出産するが、飼育下では三つ子以上の出産がみられ、その場合、親が育てられるのは2頭までであるため、人工哺育が行われ、養育者から完全に分離された状態になるが、母子分離、音声発達の観点から人工哺育個体の音声の詳細について分析を行った研究はない。本年度は、昨年録音した個体のうち、録音状況が不十分であった2頭(うち1頭人工哺育)、さらに3頭の人工哺育個体とその対象個体3頭、昨年コントロールが取れていなかった個体の対象個体、合計9頭を対象に、それぞれ20分間の録音をおこなった。途中ヒトがエサを提示し、それらの刺激に対する反応も分析した。記録した音声・動画から、発声頻度の測定、音声の分類を行った。その結果、全個体ではないが、昨年同様、人工哺育個体は、通常養育個体に比べ、ヒトがエサを提示した場面で、ネガティブな発声(警戒音、不安時の音声)を発することが多い傾向がみられた。また、1歳弱の人工哺育個体では、乳児が特徴的に発する音声(Vhee)の発声が頻繁にみられた。(画像ファイルは昨年度までに録音した個体の分析結果を示したものであり、本年度の録音についての詳細は分析中である。)


H29-C4
代:土屋 萌
福島原発災害による野生ニホンザル胎仔の放射線被ばく影響
福島原発災害による野生ニホンザル胎仔の放射線被ばく影響

土屋 萌

 2011年3月11日に起きた東京電力福島第一原子力発電所の爆発により,放射線被ばくを受けた野生ニホンザルの次世代への影響を調べるため,震災前後における胎仔の脳容積の成長および,生後1年以内の幼獣の体重成長曲線を比較した。また、脳容積の推定のため,CT撮影により頭蓋内体積を計測した。震災後胎仔は震災前胎仔よりもCRLに対する頭蓋内体積が小さい傾向が見られ,胎仔に脳の発育遅滞が起こっていると考えられた。さらに、0歳の幼獣について捕獲日ごとに体重と体長との散布図を作成し,震災前個体と震災後個体の成長曲線を比較した。その結果、体長が250㎜に達するまでは震災前個体よりも震災後個体の方が体長に対する体重が軽い傾向が見られた。一方、成長が停滞する250~350㎜に達すると震災前個体も震災後個体も体重はほぼ変わらず,再び成長が見られる350㎜以上では大きな差は見られなくなった。以上より,震災後個体は生後も数か月間は成長が遅滞していることが示唆された。
 また、福島の被ばくしたサルと対照となる下北のサル、各数例について予備的な観察を実施したところ、被ばくの有無によって星状膠細胞の形態的な差異が認められた。



H29-C5
代:石野 史敏
協:金児?石野知子
協:李 知英
協:志浦 寛相
レトロエレメント由来の獲得遺伝子の霊長類における分布解析

学会発表
石野史敏、入江将仁、古賀章彦、金児−石野知子 哺乳類のレトロトランスポゾンに由来する遺伝子の機能(2017年8月25日) 日本進化学会(京都大学(京都)).
レトロエレメント由来の獲得遺伝子の霊長類における分布解析

石野 史敏 , 金児-石野知子, 李 知英, 志浦 寛相

 ヒトゲノムにはレトロエレメント由来の獲得遺伝子群である11個のSIRH遺伝子が含まれる。これらの多くは真獣類特異的遺伝子であり、近年の研究から、ヒトやマウスを含む真獣類の個体発生機構の様々な特徴(胎生や高度の脳機能など)に深く関係する機能を持つことが明らかになってきた。そのため、真獣類の進化を促した遺伝子群である可能性が高いと考えている。昨年に引き続き、脳で発現し行動に関係するSIRH11/ZCCHC16の解析を、南米に生息する新世界ザルに置いて行った。昨年度、南米の新世界ザルではN末領域の大きな欠失があることを明らかにしたが、新世界ザルの進化を考える上で重要な位置にあるクモザルの解析を行った。その結果、このN末領域の大きな欠失が共通して存在することが明らかになり、これらの共通祖先において変異が生じた可能性の高いことが明らかとなった。


H29-C6
代:Kelly Finn
Complexity in the Behavioral Organization of Japanese Macaques
Complexity in the Behavioral Organization of Japanese Macaques

Kelly Finn

 New bio-logging technologies are becoming increasingly popular for long-term data collection of animal movement, revolutionizing the data quantity one is able to attain from animals in their natural environments; however, extracting biological meaning from these data has been extremely challenging. While organization of movement is driven by many internal factors and external constraints, movement patterns are often our only window into the numerous underlying processes of an animal’s behavioral ecology. Sequences of behavior can have very different structure even with the same amount of behavior, but time series analyses can detect subtle changes in behavioral structure that are missed when using traditional measures, such as average durations or frequencies. However, we do not understand how much variability exists between individuals in the temporal structure of their activity patterns, and how much this varies within an individual by behavioral state, landscape, and social environment. There are also countless methods to analyze time series, and it has not been thoroughly explored which measures might show meaningful variation that correspond to individual or environmental attributes. The full utility of this approach has not been actualized, and the measurement of behavioral complexity is an untapped, potentially fundamental, source of knowledge about an animal’s behavior and health.
 The present study will determine which pattern characteristics of macaque movement show meaningful variability in scaling, randomness, memory, and intrinsic computation, and which of these attributes vary within an individual across behaviors or environmental contexts. Alongside previously used fractal analyses, we are applying additional complexity measures from the leading edge of information theory to create thorough complexity profiles of an individual’s movement. We recorded sequences of activity and location of macaques in durations of 12 continuous hours, every other day for 2 weeks. We used a combination of GPS and accelerometry bio-loggers, which were attached on collars to a subset of 5 adults. We video recorded hour-long focal follow observations of animals alongside bio-logging in order to determine the behavioral states of the macaques (e.g. foraging, travel). We also recorded group-level video to assess group-level activity and events (feeding, major fights, etc).
 Thus far we have begun descriptive analysis of the data we have collected. Preliminary analyses reveal individual differences in scaling patterns of movement, and consistent variation based on the time of day. Further analysis will continue quantifying these sequences, as well as GPS spatial data, with our suite of methods. We have also coded 50+ hours of focal follows recorded as video as time-stamped strings of behavioral changes. These data are currently being converted to time series for analysis, and will be used to convert accelerometer to discrete units of movement. The anticipated completion of this analysis is Winter 2018. With this data we will assess the variability in individual captive macaque behavioral structure, use this data to validate monkey behavior for accelerometer data in other studies, and make accessible a toolbox of tested complexity measures for future studies.




H29-C7
代:日比野 久美子
協:竹中 晃子
ヒト動脈硬化症のアカゲザルモデル作出のための基礎研究
ヒト動脈硬化症のアカゲザルモデル作出のための基礎研究

日比野 久美子 , 竹中 晃子

 コレステロール(Ch)を組織に運搬する低密度リポたんぱく質の受容体遺伝子(LDLR)のエクソン3領域にCys61Tyr変異を有する個体がインド由来アカゲザルに見出され、17年間家系維持に努め、現在6頭のヘテロ接合型と1頭のホモ接合型個体を有している。平成25年度より、0.1%あるいは0.3%Chを含む飼料を投与し、このうち2頭のヘテロ接合個体が明らかに動脈硬化を起こす指標となるT-Ch/HDL>5.0 、LDL/HDL>3.5を著しく超えた。しかし3歳のホモ接合個体は正常の成体の血中Chとほぼ同じ値を示した。以前の研究から6~7歳までは血中総Ch値が約2割低下し続けることが明らかになっているため、今年度は4歳の正常、ヘテロ、ホモ接合個体に0.3%Chを10週間投与した。ホモ接合個体 #2041は正常個体よりも50-100mg/dlは高かったが4歳で動脈硬化指数を超えることはなかった。7歳までは正常個体において血中CHレベルは低下し続けるので8歳以降高くなる可能性もある。さらにこの個体はメスで、動脈硬化指数を超えた2頭は雄であるため、今後の家系維持には欠かせない個体である。また、ヘテロ接合個体#2051は生後黄疸があり、今回の投与でも3週目からLDL値が急低下し、体調が十分ではないように思われた。これまでの投与実験で、動脈硬化指数を著しく超えた#1784と#1834はLDLR遺伝子のCys61Tyr変異に加えて他の遺伝子変異を持っている可能性が考えられたので、#1784の母親(LDLRヘテロ接合体)をコントロールとして、次世代シークエンス法による3頭の全ゲノム変異解析を行っている。現在結果を解析中である。


H29-C8
代:保坂 和彦
野生チンパンジーの老齢個体の行動及び社会的地位の研究
野生チンパンジーの老齢個体の行動及び社会的地位の研究

保坂 和彦

 2017年8月~9月、マハレM集団のチンパンジーを対象に野外調査を実施した。社会行動、遊動行動、狩猟行動に関する過去資料と比較可能な項目について、主として全オトナ雄9頭を個体追跡して連続行動記録による資料収集をおこなった(個体追跡184時間、アドリブ約55時間)。調査期間中、10回のアカコロブス狩猟(7回成功)を観察し、少なくとも10個体の獲物が消費された。観察された肉分配のエピソード7回のうちα雄PRが肉を保持した事例は3回であった。残り4回のうち1回は同年齢のβ雄OR、3回は年長雄DW、BB、CTが肉を保持した。最高齢の元α雄FNは肉を保持することはなかったが、肉食クラスターに積極的にアクセスし、拒絶されることはなかった。これは、肉食クラスター内の個体による老齢個体への寛容性を示す事例として本課題の作業仮説を支持する証拠となる。また、老齢でなくともα雄にとって年長の劣位雄は、肉分配の場においてα雄と対等な関係を保っていた。さらに、初老に近い低順位雄BBとCTは、7~9歳の孤児に追随される姿が頻繁に見られており、これらの特別な個体間関係が、孤児の今後の社会関係や生存にどのような影響があるのか注視していきたい。


三世代家族。XT(左)はXP(中央前)の母親。XPは2児(前の2頭)の母親。


孤児3頭(左からIR,FG,TO)と彼らが追随する初老雄2頭(左からBB,CT)。


H29-C9
代:小林 純也
霊長類細胞におけるDNA損傷応答・細胞老化の解析
霊長類細胞におけるDNA損傷応答・細胞老化の解析

小林 純也

 放射線をはじめ様々な環境ストレスでゲノムDNAは損傷を受けるが、正常な遺伝情報を保つ(ゲノム安定性)ために生物は損傷したDNAを修復する能力を持つ。しかし、このような修復能力は加齢により減退し、その結果、DNA損傷が蓄積し細胞老化が起こると考えられる。一方で、遺伝子は常に正確に修復・複製されると進化に必要な遺伝子の多様性がうまれないことから、修復・複製の正確度にはある程度の幅があって、ゲノム安定性と遺伝的多様性の間でバランスがとられている可能性がある。このようなDNA損傷応答能・修復能と細胞老化、ゲノム安定性・遺伝的多様性の関係を探るために、本研究ではヒトを含む霊長類繊維芽細胞でDNA損傷応答能の差異を検討することを計画し、平成28年度から共同利用・共同研究を開始した。
 平成29年度研究では、平成28年度に提供を受けたチンパンジー、アカゲザル、コモンマーモセット、リスザル、オオガラゴの中で、アカゲザル由来繊維芽細胞について、ヒト正常繊維芽細胞とDNA損傷応答を免疫蛍光染色法を用いて比較することとした。DNA二本鎖切断損傷のマーカーであるリン酸化ヒストンH2AXはγ線照射30分後からヒト細胞同様にアカゲザル細胞でも核内フォーカス形成が観察され、照射4時間後にはヒトと同様に低下した。また、NHEJ修復経路に機能する因子53BP1のフォーカスの出現・消失も同様に見られ、放射線誘発DNA損傷の主な経路であるNHEJには両細胞間で大きな差はない可能性が示唆された。DNA損傷発生時にはDNA修復経路とともに、ATM/ATRキナーゼ依存的な細胞周期チェックポイント機構が活性化するが、これらキナーゼ特異的阻害剤を用いて、ATM/ATRの活性化の差をウエスタンブロット法で検討すると、ヒトと旧世界ザル由来SV40トランスフォーム細胞で活性化に差異が示唆された。そのため、30年度には正常繊維芽細胞においてもこのような差異が見られるかを検討する予定である。



H29-C10
代:松尾 光一
協:山海 直
協:Suchinda Malaivijitnond
協:森川 誠
マカクにおける繁殖季節性や加齢が骨格に与える影響の解析
マカクにおける繁殖季節性や加齢が骨格に与える影響の解析

松尾 光一 , 山海 直, Suchinda Malaivijitnond, 森川 誠

 性ホルモンが骨代謝に大きな影響を及ぼすことは、よく知られている。ニホンザルが季節繁殖性を示し、繁殖期と非繁殖期に性ホルモンの増減を毎年繰り返していることも知られている。しかし、毎年繰り返されるホルモンの増減によって、ニホンザルの骨密度がどのように変化しているのかということは知られていない。これまでに我々は、耳小骨や大腿骨を用いて、季節に伴い骨密度がどのように変動するかを解析してきた。その結果、若い世代のオスのニホンザルにおいて、大腿骨の骨量の季節性変動を見出した。
 今回、橈骨を用いて骨密度を定量し、死亡時の日付や年齢から季節変化による骨量と骨密度の変動を解析したところ、大腿骨と同じく比較的若い世代の橈骨の骨量において、季節性変動を示した。大腿骨における骨量の季節性変動が、橈骨においても再現性が見られたことで、さらし骨は、死亡時の骨量や骨密度を保存していると仮定すれば、季節性変動があるという仮説に確証が得られた。
 さらに、京都大学霊長類研究所内で飼育されているオスのニホンザル8頭を用いて、ヘリカルCTによる骨密度解析と血中ホルモン濃度の測定を、季節による変化を観察するために、9月と12月にそれぞれ同様の実験を行った。これにより、ヘリカルCTによる生体橈骨の骨密度や血中ホルモン濃度を解析する一連の手法を確立した。



H29-C11
代:徳山 奈帆子
Pan属2種における遊動時の意思決定行動の違い
Pan属2種における遊動時の意思決定行動の違い

徳山 奈帆子

 本研究では、ヒトと進化的に最も近いPan属の2種において、移動開始または移動中の意思決定パターンを分析することで、集団内でどのような「リーダーシップ」を持つのかを解明する。両種の社会構造の違いがリーダーシップに及ぼす影響を解明することを最終的な目的とする。2017年5-7月にウガンダ・カリンズ森林保護区にて野生チンパンジーの観察を行い、移動を最初に開始する個体(イニシエーター)と、追随する個体(フォロワー)を記録した。また、それらの結果を、2012年から2015年にコンゴ民主共和国・ルオー学術保護区のボノボにおいて同じように記録した結果との比較を行った。ボノボにおいては、移動開始の意思決定において偏った形のリーダーシップが見られること、老齢のメスに他個体が追従することでパーティの凝集性が保たれることが分かった。対してチンパンジーにおいては、詳しいデータ分析は終了していないが、パーティの凝集性は高順位のオスの移動に低順位オスたちが追従することで保たれている様子だった。チンパンジーにおいては、採食・休憩場所からオスたちが動き出しても、メス達がそのオスたちに付いていくことは少なかった。結果には、ボノボのメス中心社会、チンパンジーのオス中心社会という両種の社会性の違いがよく表れていた。


H29-C12
代:加納 純子
大型類人猿細胞における染色体末端領域の機能解析
大型類人猿細胞における染色体末端領域の機能解析

加納 純子

 大型類人猿のチンパンジー、ボノボ、ゴリラの染色体末端領域に存在するStSat繰り返し配列の細胞内機能を探り、ヒトとの違いを探ることを目的としている。29年度は、まずStSat配列に特異的に結合する蛋白質の同定と試みた。StSat配列のコンセンサス配列2リピート分の64塩基からなるDNAをDIGラベルし、チンパンジー細胞抽出液と混合した後、抗DIG抗体とマグネティックビーズを用いてStSat結合蛋白質を精製した (pull-down assay)。そのサンプルを質量分析によって同定したところ、RNA代謝に関わる因子が多く含まれていた。今後は、vivoでStSatに結合する蛋白質を同定するため、enChIP法による精製を試す予定である。
 また、ヒトと大型類人猿のサブテロメア遺伝子の発現の違いを解析した。その結果、そもそもチンパンジーではサブテロメア遺伝子のコピー数がヒトより少なく、遺伝子発現量もヒトより少ないことがわかった。さらに、チンパンジーではサブテロメアに存在し、ヒトでは染色体内部に存在する共通の遺伝子の発現量は、チンパンジーでヒトより高かった。今後、このような発現量の違いがStSatの影響によるものなのかなどについて解析を進める。



H29-C13
代:蔦谷 匠
協:Matthew Collins
プロテオミクス解析によるニホンザル授乳状況の推定
プロテオミクス解析によるニホンザル授乳状況の推定

蔦谷 匠 , Matthew Collins

 所内対応者の協力を得て採取したニホンザルの糞をコペンハーゲン大学(デンマーク)に輸送し,プロテオミクス解析を実施した.糞に大量に含まれるバクテリアを除去するために,ヒトの糞のプロテオミクス研究で用いられているタンパク質抽出方法を改良し,適用した.分析の結果,カゼインなど乳に特異的なタンパク質が授乳中のアカンボウからのみ検出された.糞に含まれるタンパク質を網羅的に解析し同定することで,個体の授乳・離乳状況が推定できる可能性が示唆された.今後,この成果をすぐにでも論文化する予定である.


H29-C14
代:山崎 美和子
協:今野 幸太郎
経路選択的な機能操作技術を応用したマーモセット大脳皮質―基底核ネットワークの構造マッピング
経路選択的な機能操作技術を応用したマーモセット大脳皮質―基底核ネットワークの構造マッピング

山崎 美和子 , 今野 幸太郎

 平成29年度は、霊長研から提供を受けた灌流固定脳を用いてin situ hybridizationと免疫染色を行い、光学顕微鏡および電子顕微鏡レベルでの局在解析を行った。マーモセット脳で適用可能なAMPA型受容体(GluA1, GluA2, GluA3, GluA4)に対するリポブローブを開発し、in situ hybridization法により成体マーモセット脳におけるmRNA発現細胞分布の確認を行った。その結果、マーモセット線条体におけるAMPA型受容体は主にGluA1, GluA2, GluA3から構成されていることが明らかになった。また、全てのサブユニットを個別に認識する抗体に加え、全てを同時に認識する抗体を開発した。これらを用いて染色を行い、mRNAの発現パターンと一致する結果を得た。また、全てのサブユニットを同時に認識する抗体を用いて免疫電顕解析を行った結果、視床―線条体シナプスと、皮質―線条体シナプスにおけるAMPA受容体の密度はほぼ同等レベルになるように制御されていることが明らかとなった。


H29-C15
代:今村 拓也
種特異的ノンコーディングRNAによるほ乳類脳神経機能分化

論文
Masahiro Uesaka, Kiyokazu Agata, Takao Oishi, Kinichi Nakashima, Takuya Imamura(2017) Evolutionary acquisition of promoter-associated non-coding RNA (pancRNA) repertoires diversifies species-dependent gene activation mechanisms in mammals BMC Genomics 18:285. 謝辞あり
種特異的ノンコーディングRNAによるほ乳類脳神経機能分化

今村 拓也

 本課題は、ほ乳類脳のエピゲノム形成に関わるnon-coding RNA (ncRNA)制御メカニズムとその種間多様性を明らかにすることを目的としている。本年度は、過年度の共同利用において既得の霊長類・げっ歯類ncRNA情報(DDBJアクセション番号DRA000861,
DRA003227,DRA003228など)をもとにncRNAの霊長類進化における機能を解析し、獲得ncRNAが遺伝子発現スイッチオンに確かに寄与していることを明らかにした成果をもとに、ncRNAが関与しうるトポロジカルドメイン変化について解析した。その結果、チンパンジー神経幹細胞において特定の遺伝子座間で時期特異的な相互座用を示す可能性が浮上した。今回見つかった特異的相互作用のなかには、マウス神経幹細胞には認められないものもあり、現在、これらが、霊長類の脳の特性を明らかにするための分子基盤となりうることを考えている。



H29-C16
代:一柳 健司
協:平田 真由
協:一柳 朋子
霊長類におけるエピゲノム進化の解明
霊長類におけるエピゲノム進化の解明

一柳 健司 , 平田 真由, 一柳 朋子

 霊長類研究所より3系統のiPS細胞(キク、マリー、ケニー)を分与いただき、RNAを回収して、mRNA-seqを行った。これらのサンプルはほとんど同じ遺伝子発現プロファイルを示した。それらのデータを公開されているヒトiPS細胞のmRNA-seqと比較し、数百の発現量が異なる遺伝子を同定した。これらの中にはクロマチンリモデリングにか変わる遺伝子群がエンリッチしており、種間でクロマチン状態が異なっている可能性が示唆された。現在、ChIP-seqによるクロマチン解析を進めている。一方、レトロトランスポゾンの発現量を比較したところ、リプログラミングに関わると言われているLTR7因子の発現量がチンパンジーで低く、連動してLTR7によって転写される遺伝子群の発現量もチンパンジーで低かった。これらの結果はリプログラミング経路に違いがある可能性を示唆するのかもしれない。比較に用いたヒトiPS細胞はリプログラミングの方法や培養条件が異なるので、今後は同じ条件でリプログラミング、培養したヒトiPS細胞を用いてmRNA-seqを行う予定である。


H29-C18
代:竹下 浩平
G.g.gorilla由来電位依存性プロトンチャネルのcDNAクローニング

学会発表
山本 旭麻, 谷林 俊, 渋村 里美, 藤原 祐一郎, 岡村 康司, 中川 敦史, 竹下 浩平 ユニークなCoiled-coil構造を有するVSOPの電気生理学的および構造学的研究(2017/09/21(木)) 日本生物物理学会年会(熊本).
G.g.gorilla由来電位依存性プロトンチャネルのcDNAクローニング

竹下 浩平

 電位依存性プロトンチャネル(Hv1)はH+透過性の膜電位センサーが細胞質内コイルドコイルによって2量体化したユニークな構造をもつ。生体内機能としては免疫系細胞における活性酸素産生、精子成熟調節、乳がんや白血病などの悪性化などに関与することが報告されている。これまでに研究代表者は世界に先駆けてHv1の結晶構造を決定し、H+透過機構の一端を報告した。このHv1のアミノ酸配列の保存性は高いことが知られているが、Gorilla Gorilla Gorilla(G.g.gorilla)由来のHv1の細胞質コイルドコイル領域については特徴的な配列がデータベースに登録されている。しかし、このGorilla由来の配列はゲノム解析配列から予測されたmRNA配列として複数報告されており、G.g.gorillaのHv1配列が本当に特徴的であるか不明である。よって本研究課題ではGorilla由来のHv1のcDNA配列の解析を行った。霊長類研究所の今井啓雄教授より提供頂いたニシローランドゴリラ(福岡市立動物園)のウイリー (♂)由来のSpleenよりmRNAの抽出、cDNA合成を行いDNAシークエンス解析を行った。その結果、G.g.gorillaのHv1の細胞質コイルドコイルの配列はヒト由来のHv1の細胞質コイルドコイル配列と100%の相同性であった。さらに解析したcDNA配列をBLAST検索したところ、GeneBank XM_091038652.1に登録されているPREDICTED: Gorilla gorilla gorilla hydrogen voltage gated channel 1 (HVCN1), transcript variant X6, mRNAが100%の相同性としてヒットした。今回の結果からG.g.gorillaのHv1配列はヒト由来のHv1と高い相同性があり、G.g.gorillaのHv1に特徴的な配列ではないことが判明した。一方で、G.g.gorillaのHv1のcDNA配列解析は新規であり、この配列情報をデータベースへ登録することを今後検討したい。


H29-C19
代:饗場 篤
協:川本 健太
精神・神経疾患モデルマーモセットの行動解析法の開発
精神・神経疾患モデルマーモセットの行動解析法の開発

饗場 篤 , 川本 健太

 本研究では統合失調症、神経変性疾患といった精神・神経疾患の理解や克服を実現し、ヒトの精神活動を理解するための行動標識法の開発を目的とした。そこで、霊長類研究所神経科学部門高次脳機能分野において行われているコモンマーモセットの認知機能評価および行動評価法をベースとした精神・神経疾患特異的な行動を適切に評価する方法の開発を目指した。
 霊長類研究所内で飼育されているコモンマーモセットの飼育環境を詳細に観察し、飼育ケージにおいて小型の認知実験装置を用いた認知課題の訓練を実施した。具体的には、精神・神経疾患モデルでない4頭のマーモセットに対して、図形弁別課題とその逆転学習課題への馴化と試行を実施した。実験装置のタブレット端末上に提示される二種類の図形から正解を選択することと報酬を得ることとの連合学習の成立を観察した。また、実験個体の体調管理や補食の給餌の条件検討を行った。
 今後は、霊長類研究所内の飼育・管理法を参考に当研究室で飼育・管理されているマーモセットへの飼育環境と体調の改善を行い、精神・神経疾患モデルの認知実験系のセットアップを行う予定である。



H29-C20
代:菅原 正晃
協:小林 和人
協:川本 健太
遺伝子改変マーモセットの行動解析法の開発
遺伝子改変マーモセットの行動解析法の開発

菅原 正晃 , 小林 和人, 川本 健太

 コモンマーモセットを対象として、遺伝子改変・編集技術を用いることにより各種精神・疾患モデルを作出し、機序の解明および治療法の開発を目指している。作出したモデル動物の認知機能がどのように健常個体と異なるのかを行動で評価するために、霊長類研究所で用いているタッチパネルを用いた認知実験を習得した。認知実験を実施するに先立ち、コモンマーモセットの飼育管理方法を日常観察の注意点等も教えてもらい習得した。また、学習課題の報酬の作製法も習得した。認知機能評価法に関しては、ナイーブな動物のタッチパネルへのタッチ訓練、図形弁別学習課題の訓練、逆転学習課題の訓練を実施した。さらに、新しい課題を開発するに際して必要となるコンピュータプログラムに関する知識等も習得することができた。今後は、所属機関(福島県立医科大学・東京大学)に戻り、同様のシステムを立ち上げ、認知機能の評価が霊長類研究所だけではなく所属機関でもできるようにする。


H29-C21
代:Colin A. Chapman
協:松田 一希
アジア・アフリカ霊長類の比較採食生態:とくに腸内細菌叢に着目して
アジア・アフリカ霊長類の比較採食生態:とくに腸内細菌叢に着目して

Colin A. Chapman , 松田 一希

 アジアとアフリカの霊長類の採食生態に関して、これまで代表研究者や協力者、所内対応者らが蓄積したデータに基づいて、比較研究をおこなった。とくにコロブス類の葉食について、消化に関する知見を論文にまとめた。    Matsuda, I., P.C.Y. Shi, J.C.M. Sha, M. Clauss, and C.A. Chapman. in press Primate resting postures: constraints by foregut fermentation? Physiological and Biochemical Zoology. Irwin, M.T., J.-L. Raharison, C.A. Chapman, R., Junge, J.M. and Rothman. 2017. Minerals in the foods and diet of diademed sifakas: Are they nutritional challenges? American Journal of Primatology. 10.1002/ajp.22623
Federman, S., M. Sinnott-Armstrong, A.L. Baden, C.A. Chapman, D.C. Daly, A.R. Richard, K. Valenta, M.J. Donoghue. 2017. The paucity of frugivores in Madagascar may not be due to unpredictable temperatures or fruit resources. PLoS ONE 12(1): e0168943. doi:10.1371/journal.pone.0168943.
Jacob, A.L., M.J. Lechowicz, and C.A. Chapman. 2017. Non-native fruit trees facilitate colonization of native forest trees on abandoned farmland. Restoration Ecology. DOI: 10.1111/rec.12414
Johnson, C.A., D. Raubenheimer, C.A. Chapman, K.J. Tombak, A.J. Reid, and J.M. Rothman. 2017. Macronutrient balancing affects patch departure by guerezas (Colobus guereza). American Journal of Primatology. DOI: 10.1002/ajp.22495



H29-C22
代:Kevin William McCairn
協:Kendall Lee
協:Paul Min
協:Taihei Ninomiya
Multi-Dimensional Analysis of the Limbic Vocal Tic Network and its Modulation via Voltammetry Controlled High-Frequency Deep Brain Stimulation of the Nucleus Accumbens
Multi-Dimensional Analysis of the Limbic Vocal Tic Network and its Modulation via Voltammetry Controlled High-Frequency Deep Brain Stimulation of the Nucleus Accumbens

Kevin William McCairn , Kendall Lee, Paul Min, Taihei Ninomiya

 MPTP投与によって作製したパーキンソン病サルモデルから、安静時およびボタン押し課題遂行中における大脳皮質、大脳基底核、小脳から神経活動の多領域多点同時記録を実施した結果、パーキンソン病モデルの小脳からベータ波の過活動を検出し、更にcross-frequency coupling解析により、運動遂行時における大脳皮質(特に一次運動野)との間のphase amplitude couplingが大脳基底核よりもむしろ小脳で顕著であることが明らかになった。この研究成果は、パーキンソン病の病態発現への小脳の関与を示唆しており、従来のパーキンソン病研究の範疇を超えた極めて独創的なものであるとともに、近年注目が集まっている大脳皮質、大脳基底核、および小脳の機能連関についても新たな知見を得ることができた。現在、原著論文として発表することを検討中である。


H29-C23
代:狩野 文浩
チンパンジーを対象としたアイ・トラッキングによる記憶・心の理論・視線認知についての比較認知研究
チンパンジーを対象としたアイ・トラッキングによる記憶・心の理論・視線認知についての比較認知研究

狩野 文浩

 赤外線式のリモート式テーブル設置型のアイ・トラッカーで、チンパンジーを対象に、ビデオを見せたときの眼球運動を測定した。
 ヒト幼児ではアイ・コンタクトや名前を呼ぶなどの顕示的手がかりのあとに、視線手がかりを与えると、特にその視線によく反応する(視線の先を追う)ことが知られている。同じテストに、家畜のイヌもヒト幼児と同様の反応を示すことが知られている。類人猿では研究がない。前年度の実験に引き続き、投稿した論文のエディターからのコメントに基づき、このテストの追加実験を行った。前年度は、ヒト役者が目の前の2つの物体のうちどちらかに目を向ける視線手がかりを与える前に、アイ・コンタクトと名前を呼ぶ顕示的な手がかりを与える条件と、同様に注意を惹くが顕示的ではない手がかり(頭を振る、視覚刺激が頭に提示されるなど)を与える条件の2条件でテストした。結果、チンパンジーはヒト幼児やイヌのように顕示的な手がかりの後に特に視線の先を追うという結果は認められなかったが、顕示的手がかりの後に、その手がかりを与えた役者の前のものを積極的に探す視線のパターンが認められた。エディターからは、提示する物体の数が2つと少ないことが結果に影響しているのではないかとコメントがあったため、今年度は、物体の数を4つに増やして同条件で再度テストした。結果は前年度の実験と同じものであった。
これらの結果から、チンパンジーはヒトの役者が与える顕示的手がかりの意味役割―つまり、なにか環境について示唆しているということ―をある程度理解していると考えられるが、その顕示的手がかりを視線手がかりに結び付けて、特定の物体について示唆を与えられているというようには理解しなかったことになる。この結果は論文としてまとめ、再び投稿する予定である。



H29-C24
代:加賀谷 美幸
霊長類の胸郭と前肢帯の形態・配置と可動域
霊長類の胸郭と前肢帯の形態・配置と可動域

加賀谷 美幸

 胸郭と前肢帯の位置関係を比較するため、これまでに撮影を行ったニホンザル、ヒヒ、クモザル、オマキザル(生体)の背臥位のCT像を観察したところ、旧世界ザル類に比べて新世界ザル類は脊柱に対し肋骨が尾側に傾き、胸鎖関節が相対的に尾側に位置する傾向がみられた。新世界ザル類のこのような骨格プロポーションでは、胸部と頭部の間のスペースが大きく確保され、肩関節の運動がより制約なく行えると予想された。一方で、樹上性の高い中型の旧世界ザルは、短時間の前肢ぶら下がり移動を行うが、胸郭-前肢帯配置は前述の旧世界ザルに近いのか、新世界ザルに近いのかは明らかでない。このため、日本モンキーセンター所蔵のテングザル、ハヌマンラングール、コロブスなどの冷凍標本を利用し、霊長類研究所にてCT撮影を行った。保存の目的上、解凍して姿勢を直して撮影することはできなかったため、肋骨の関節角度を生体の背臥位のものと比較することは難しいが、おおまかにはニホンザルやヒヒに近いようすがみられた。また、胸郭上で前肢帯のとりうる位置の種間差を明らかにするため、ニホンザルとヒヒの生体計測を追加実施し、新世界ザルのデータとあわせて分析中である。



H28
論文 32 報 学会発表 88 件
H28-A1
代:Aye San
Phylogenetic and population genetic studies for conservation of nonhuman primates in Myanmar

学会発表
Tanaka H, San A M, Kawamoto Y, Hamada Y. Conservation and phylogeography of the macaques distributed in Myanmar(2016年7月16日) 第32回日本霊長類学会大会(鹿児島市).

San A M, Tanaka H Incompatibility of the phylogenetic position of Macaca fascicularis aurea from Myanmar between mitochondrial and Y chromosomal trees( 20 Octber 2016) The 5th Asian Primates Symposium(Sri Jayewardenepura).

San A M, Tanaka H Phylogenetic and population genetic studies for conservation of non-human primates in Myanmar(17 October 2016) Generalization Meeting of Planned Research Program 2014-2016 "Evolution and Conservation of Asian Primates", Pre-symposium meeting for generalization meeting of cooperative research program of Primate Research Institute, Kyoto University( Sri Jayewardenepra University).
Phylogenetic and population genetic studies for conservation of nonhuman primates in Myanmar

Aye San

Myanmar holds a great diversity of nonhuman primates as many as 16 species.However, most of them are threatened due to illegal hunting for foods and pet trade and habitat degradation by anthropogenic activities. Under the planned research “International Cooperative Research on Evolution and Conservation of Asian Primates”, I analyzed variations in mitochondrial DNA in macaques (Macaca fascicularis aurea; Mfa, M. arctoides, M. leonina and M. mulatta) to obtain the phylogeographical information necessary for conservation of each species in Myanmar.
For the Myanmar’s long-tailed macaque (Mfa), I investigated the phylogenetic position of Mfa by analyzing of mtDNA and Y-chromosomal sequences. Fecal samples of six inland populations were collected and used for DNA extraction. I determined approx. 1.5 kb of the mitochondrial 12S-16S region and approx. 2.3 kb of TSPY (testis-specific protein, Y chromosome) gene. In order to avoid amplifying the NUMT, the long-PCR product of the 9 kb region of mtDNA was used as a template to amplify the target region. Phylogenetic trees were inferred by Bayesian analysis for mtDNA and by maximum likelihood method for TSPY by employing the DNA sequence data of other macaques representing 5 species groups in the genus. Five and two haplotypes were detected for mtDNA and TSPY from the samples examined, respectively. A monophyletic cluster of Mfa mtDNA was included in the sinica-group while Mfa TSPY was placed in the fascicularis-group. Incompatibility of the phylogenetic position of Mfa between mtDNA and Y chromosomal trees suggests a possible hybrid origin of Mfa. This unique character of Mfa can allow recognizing Mfa as an evolutionary significant unit in long-tailed macaques. The result of the study of Mfa was presented at the 5th Asian Primates Symposium (Sri Jayewardenepura, Sri Lanka, 20 October 2016).
Next, I developed a genetic marker for the detection of intra-specific variation: the mitochondrial 1.8kb region that included a full length of cytochrome b gene and hyper variable region 1 of D-loop. In Mfa, the 1.8 kb region was more variable than the 12S-16S region (average P-distance among different haplotypes was 0.0152 for the 1.8 kb region and 0.0049 for the 12S-16S region). Similarly the 1.8 kb region was determined for M. leonina and M. arctoides and M. mulatta. The result of phylogenetic analysis indicated that Myanmar’s M. leonina separated into at least three haplogroups. As to M. arctoides and M. mulatta, further study will be necessary including more samples in order to elucidate the phylogeography in Myanmar and detect the local conservation units. This result was presented at the following conference: Generalization Meeting of Planned Research Program 2014-2016 "Evolution and Conservation of Asian Primates", Pre-symposium meeting for generalization meeting of cooperative research program of Primate Research Institute, Kyoto University (Sri Jayewardenepra University, 17 October 2016).



H28-A3
代:蔦谷 匠
協:米田 穣
協:中川 尚史
飼育下チンパンジーにおける炭素・窒素安定同位体分析
飼育下チンパンジーにおける炭素・窒素安定同位体分析

蔦谷 匠 , 米田 穣, 中川 尚史

同位体採食生態食の研究では、生物の体組織の安定同位体比から採食物の割合を定量的に推定するために、食物と体組織・排泄物のあいだの同位体比の差分をあらかじめ算出しておく必要がある。霊長類研究所に飼育される13個体のチンパンジーを対象に、糞と毛について、この値を求める研究を実施した。その結果、ヒトや他の霊長類種で報告されているのと同様の値が得られた。本成果 (Tsutaya T et al., 2017. Rapid Commun Mass Spectrom 31:59-67. DOI: 10.1002/rcm.7760) は、野生チンパンジーの同位体採食生態復元の研究に対して、重要な基礎データを提供するものである。
また、同位体分析によって栄養状態や食性のモニタリングができないか検討するために、約1年間にわたって、これらのチンパンジーの尿も連続的に採取した。ボノボやオランウータンの研究から、尿の窒素安定同位体比や窒素濃度は、タンパク質摂取や代謝の状態を非侵襲的にモニタリングできるマーカーになり得る可能性が示唆されている。現在、安定同位体比の測定のための基礎検討や前処理を実施している段階であり、分析の結果が得られ次第、データ解析を実施し、論文化にとりかかる予定である。



H28-A4
代:滝澤 恵美
協:矢野 航
協:長岡 朋人
チンパンジーの比較解剖学―乳様突起部と股関節を中心に―
チンパンジーの比較解剖学―乳様突起部と股関節を中心に―

滝澤 恵美 , 矢野 航, 長岡 朋人

チンパンジーの後頭部を解剖し血管と神経の分布を確認した。後頭動脈の剖出を頭板状筋の表層と深層で試みたが後頭動脈は欠損していた。後耳介動脈が胸鎖乳突筋の表層を後ろに走行し、頭板状筋の表層を通り正中に達した。おそらく後耳介神経が後頭動脈の分布域に至り、後頭動脈の相当枝になると予想できた。大後頭神経は僧帽筋を貫いて後頭骨の正中部に分布することが確認できた。また、第三後頭神経は頭板状筋を貫き上行し、後耳介神経の近傍まで至る枝と僧帽筋の後ろに入り込む枝に分かれた(Fig.1)。
サバンナモンキーの頸部周りの解剖を行い骨格筋と神経分布を確認した。舌骨上筋、舌骨下筋を確認した。また側頸部の血管と神経の走行を観察し、この種では①外頸動脈が顔面神経・耳下腺神経叢の一部を貫くこと、②広頸筋の起始が肩甲棘まで広がっている所見を得た。これはヒトや多くはないが他の霊長類の解剖所見にはなかった新しい観察であった(Fig.2)。



H28-A5
代:西岡 佑一郎
第四紀ニホンザル化石の標本記載と形態分析
第四紀ニホンザル化石の標本記載と形態分析

西岡 佑一郎

平成27年度に引き続き,第四紀ニホンザル化石の記載と形態観察を行った.まず,後期更新世の化石産地(栃木県葛生,静岡県谷下,白岩鉱山,岩水寺,高知県猿田洞,山口県伊佐)から発見されている化石標本(実物化石計27点)を対象に歯牙および骨の特徴を記載し,各都道府県の現生ニホンザルの骨格標本と比較して,年代的な形態差を記録した.これら更新世の化石標本は現生集団と比べてほとんど形態に違いが見られないが,葛生産の大臼歯標本3点は歯冠サイズが現生集団よりも明らかに大型であった.大型標本は谷下産の上顎骨に含まれる第三小臼歯〜第三大臼歯にも観察された.また,この標本は(1)頰骨の近心側の付け根が通常のニホンザルよりも近心に位置している点,(2)口蓋孔およびその近位にある神経孔の位置が通常よりも近心に位置している点で現生標本と違いが見られた.標本の状態からして,これらの特徴は臼歯列が全体的に6 mm程後退した結果とも考えられる.谷下産化石標本は第三大臼歯が完全に萌出した成体雄と同定されるため,観察された形態差は成長や性差によらない個体変異と推定された.上顎骨が化石として見つかるケースは稀であるため,同じような特徴をもつ化石標本はまだ見つかっていないが,今後は年代的な形態変化である可能性も考慮して調査を進めていく必要がある.完新世の化石標本(計268点)は主に山口県の秋吉台から見つかったもので,本年度は標本の写真撮影と計測作業を行なった.化石標本の調査と並行して,これまでデータがほとんどなかった四国(高知・愛媛)産の現生ニホンザル骨格標本(計170点)をデータベース化し,歯牙の計測値をとった.化石標本の中には四国産のニホンザル化石が含まれているため,今後は現生種の基礎データに基づき形態分析を試みる


H28-A6
代:福田 真嗣
協:福田 紀子
協:村上 慎之介
協:伊藤 優太郎
協:石井 千晴
協:谷垣 龍哉
脳機能におよぼす腸内細菌叢の影響
脳機能におよぼす腸内細菌叢の影響

福田 真嗣 , 福田 紀子, 村上 慎之介, 伊藤 優太郎, 石井 千晴, 谷垣 龍哉

ヒトを含む動物の腸内には、数百種類以上でおよそ100兆個にも及ぶとされる腸内細菌が生息しており、宿主腸管と緊密に相互作用することで、宿主の生体応答に様々な影響を及ぼしていることが知られている。近年マウスを用いた研究で、腸内細菌叢が脳の海馬や扁桃体における脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生量に影響を与え、その結果マウスの行動に変化が現れることが報告されている(Heijtz, et al., PNAS, 108:3047, 2011)。これは迷走神経を介した脳腸相関に起因するものであることが示唆されているため、腸内細菌叢の組成が宿主の脳機能、特に情動反応や記憶力に影響を及ぼす可能性が感がられる。しかしながら、これら情動反応や記憶力と腸内細菌叢との関係を調べるには、マウスなどのげっ歯類では限界があると考えられることから、本研究では小型霊長類であるコモンマーモセットに着目し、高次脳機能、特に情動反応や記憶力と腸内細菌叢との関係について解析を行うことを目的とした。本年度は高次脳機能評価を行うための課題訓練を実施した。14頭のコモンマーモセットに図形弁別課題およびその逆転学習課題を訓練した。さらに、記憶機能を検討するため空間位置記憶課題も訓練した。これらのマーモセットの便を採取し、腸内細菌叢の解析を行った。次年度には腸内細菌叢と認知課題の成績との関係について検討する予定である。


H28-A8
代:磯田 昌岐
個体関係の定量化法の開発
個体関係の定量化法の開発

磯田 昌岐

霊長類動物では他の哺乳類動物と比べて集団サイズが大きく、複雑な社会関係が存在する。まず、社会的序列に基づく個体関係を定量化するため、2個体対面での餌取り課題を考案した。モンキーチェアに座って対面する2頭のサルの中央に実験者がひとつずつペレットを置き、サルはそれを競争的条件下で獲得した。上下関係が固定化したサル同士では、すべての試行において上位のサルがペレットを獲得した。上下関係が固定化していないサル同士では、各実験日の最初の試行でペレットを獲得したサルが優位となり、その日の餌取り行動を支配したが、どちらのサルが優位となるかは日によって異なった。社会的階層構造の固定化には、餌取り行動以外の要因も重要であることが示唆された。次に、自他の報酬獲得頻度の差に基づく個体関係を定量化するため、2個体対面での古典的条件づけを考案した。モンキーチェアに座って対面する2頭のサルの中央に、自己と他者で異なる報酬確率を関連づけた図形刺激を提示した。自己の報酬確率が一定であっても、他者の報酬確率が増加するにしたがい報酬期待行動の振幅が低下した。自己報酬の価値評価は、他者報酬との比較をとおして行われることが示唆された。


H28-A9
代:林 朋広
協:佐藤 暢哉
コモンマーモセットにおける空間認知
コモンマーモセットにおける空間認知

林 朋広 , 佐藤 暢哉

 本研究は,コモンマーモセットの空間認知能力について検討することを目的として,齧歯類を対象とした研究で用いられてきた迷路と同様の実験事態を使用した空間学習課題や空間記憶課題を開発することを目的としていた.マーモセットを飼育ケージから実験箱に移動して課題を課すことは困難であると判断し,飼育ケージ内で実施できる実験課題を開発する方針を決定した.そのために,マーモセットの実際の飼育環境の詳細を観察し,飼育ケージのサイズなどの観点から空間学習課題事態の候補をを絞りこみ,必要となる装置を考案した.
 具体的には,マーモセットの運動能力を考慮し,縦方向への移動を含めた三次元的構造を予定している.課題の基本的構成は,齧歯類でよく使用される放射状迷路の形式を想定している.中央の位置から周囲に配置している穴まで行き,そこから下方向へ移動することを求める.穴の最底部まで到達することを,その選択を行ったとみなし,正答の場合はそこに報酬を呈示できるようになっている.今後は,詳細部分を修正の上,迷路を作成し,実際にマーモセットを対象にいくつかの空間学習課題を実施したいと考えている.



H28-A10
代:森本 直記
化石頭蓋形態の推定モデルの作成と検証

学会発表
西村 剛, 森本直記, 伊藤毅 ヒヒ族の顔面形状のアロメトリーと系統間差異(2016年10月10日) 第70回日本人類学会大会(新潟).
化石頭蓋形態の推定モデルの作成と検証

森本 直記

 遺伝的な情報が得られない化石種においては、類縁関係を推定するうえで形態情報が最も重要である。一方で、形態学的な解析にも限界がある。特に、定量分析に必要な解剖学的特徴が欠損している化石種を対象とする場合、現在広く用いられている幾何学的形態計測の手法が適用できない。本研究では、サイズ変異に伴う形態変異(アロメトリー)に着目し、現生種におけるアロメトリーのパターンを「外挿」することで、現生種にみられる形状変異をもとに化石種の形状を推定復元する手法を開発することを目的に研究を行った。
今年度は、すでに取得済みの現生マカクザルとヒヒ類の3次元頭蓋骨モデルに加え、補完的にデータを取得し、定量解析を行った。その結果、マカクとヒヒに共通なアロメトリーのパターンと、アロメトリーとは無関係な形態変異を切り分け、それぞれ抽出することに成功した(添付画像、第1主成分1と第2主成分に対応)。



H28-A11
代:伊村 知子
チンパンジーとヒトにおける大域的な視覚情報処理に関する比較認知研究

論文
Tomoko Imura, Tomohiro Masuda, Yuji Wada, Masaki Tomonaga, and Katsunori Okajima(2016) Chimpanzees can visually perceive differences in the freshness of foods. Scientific Reports 6(Article number: 34685):doi:10.1038/srep34685. 謝辞あり
チンパンジーとヒトにおける大域的な視覚情報処理に関する比較認知研究

伊村 知子

 昨年度(2015年度)の共同利用研究から、チンパンジーも、ヒトと同様に、複数の物体の平均の大きさを知覚することが明らかになった。この結果は、ヒトの方が、運動や形態の情報を統合して大域的に処理する能力は優れている可能性を示す従来の知見とは異なるものである。そこで、本年度は、大きさ以外の属性として、複数のキャベツの葉の「鮮度」の「平均」を知覚する能力について、チンパンジー2個体とヒト9名を対象に検討した。 「鮮度」の異なる画像が左右に1枚ずつ呈示されるSingle条件、左右に6枚ずつ呈示されるHomogeneous条件、左右の6枚ずつ呈示されるが、6枚は同一画像ではなく3種類の異なる「鮮度」の画像が2枚ずつから構成されるHeterogeneous条件の3条件で正答率を比較した。その結果、チンパンジー、ヒトともにSingle条件、Homogeneous条件よりもHomogeneous条件において、有意に高い正答率を示した。したがって、チンパンジーもヒトも「鮮度」の「平均」を知覚している可能性が示唆された。


H28-A12
代:山下 友子
協:平松 千尋
協:中島 祥好
協:上田 和夫
協:杉野 強
霊長類における音声コミュニケーションの進化および発達過程の研究
霊長類における音声コミュニケーションの進化および発達過程の研究

山下 友子 , 平松 千尋, 中島 祥好, 上田 和夫, 杉野 強

本研究では、ヒトを含む7種の霊長類の音声を種・性別・発達段階・録音条件によって分類したうえで、グループ間の非類似度行列から多次元空間内の刺激布置を求めた。音声を24周波数帯域に分割し、各帯域におけるパワー変動から帯域間の相関係数行列を算出した。行列間のユークリッド距離を求めて非類似度行列とし、非計量的多次元尺度構成法で刺激布置を求めた。その結果、ヒトの成人とヒト・類人猿以外の霊長類のグループが分かれて布置され、その中間にヒトの乳幼児のグループが布置された。この傾向は、成人・乳幼児・チンパンジーのデータを取り出した分析からも確認された。また、乳幼児の月齢が高いほど成人グループに、月齢が低いほどチンパンジーグループに近づくような傾向が得られ、ヒトを含めた霊長類の進化、発達に伴う声道構造の変化が音声にも反映されていることが示唆された。しかし、ニホンザル、テナガザルなども分析に含めた場合、チンパンジーの音声は、必ずしもヒトの音声グループ付近に布置されないことが明らかとなった。


H28-A14
代:桃井 保子
協:花田 信弘
協:今井 奨
協:岡本 公彰
協:齋藤 渉
協:宮之原 真由
チンパンジーの口腔内状態の調査と歯科治療法の検討

論文
Okamoto M, Naito M, Miyanohara M, Imai S, Nomura Y, Saito W, Momoi Y, Takada K, Miyabe-Nishiwaki T, Tomonaga M, Hanada N.(2016) Complete genome sequence of Streptococcus troglodytae TKU31 isolated from an oral cavity of chimpanzee (Pan troglodytes). Microbiology and Immunology. 60(12):811-816. 謝辞あり

学会発表
岡本公彰,宮之原真由,今井 奨,野村義明,齋藤 渉,桃井保子,花田信弘. チンパンジー口腔微生物叢の解析.(2016.5.27~29) 第65回日本口腔衛生学会.(東京医科歯科大学).

関連サイト
鶴見大学歯学部 保存修復学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/clinic/270

鶴見大学歯学部 探索歯学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/basic/343
チンパンジーの口腔内状態の調査と歯科治療法の検討

桃井 保子 , 花田 信弘, 今井 奨, 岡本 公彰, 齋藤 渉, 宮之原 真由

 チンパンジーの口腔細菌叢の解析を行った結果、ミュータンスレンサ球菌の新菌種を見つけ、S. troglodytaeと命名しInt J Syst Evol Microbiol. (2013)に発表した。この菌の全遺伝子を調べ、ヒトう蝕病原菌のS. mutansと比較を行った。方法は、チンパンジー口腔から分離されたS. troglodytae TKU31株を対象とし、Roche GS FLXにより得られた配列からアセンブル作業とGap closingにより全ゲノム配列を決定した。その結果、S. troglodytaeは、全長2,097,874 bp, DNA GC含量は37.18%であった。アノテーションの結果、CDSは2,082で、S. mutansの遺伝子と非常に類似していた。病原因子遺伝子として、グルコシルトランスフェラーゼ遺伝子(gtfB, gtfCおよびgtfD)、グルカン結合タンパク遺伝子(gbpA, gbpB, gbpCおよびgbpD)を持っていた。セロタイプを決定するrhamnose-glucose polysaccharide遺伝子はS. mutans LJ23株(セロタイプk)と最も類似していた。以上のことから、チンパンジーにはヒトと類似のう蝕原性細菌が存在するが、Momoiらが報告(JADR, 2010)した歯および歯周組織の検査結果では、う蝕が非常に少なく(カリエスフリーの傾向) 、plaque indexが大きいことを考慮すると、人類のう蝕起源は砂糖摂取が重要な因子である可能性が改めて示唆された。また、plaque の蓄積が顕著であるにも係らず、歯周ポケットの測定値は歯周組織がいたって健全であることを示しており、これも歯周病の病因を考える上で興味深い事象であった。また、宿主とその口腔細菌は共進化することが考えられた。(DDBJ/ENA/GenBank accession no AP014612)
 検診の結果、抽出された所内2個体の歯科治療(歯髄炎、根尖性歯周炎に対する根管治療)をヒトと同様の手技で行った。その内1個体の術後6年の検診では根尖性歯周炎の治癒と、その良好な長期経過が認められている。歯髄炎から移行する根尖性歯周炎は長期放置により歯性感染症など全身の健康にも影響を及ぼす可能性があり、また再発のリスクも高く、検診による早期発見、治療、経過観察が求められる。



H28-A15
代:倉岡 康治
協:稲瀬 正彦
視覚刺激の好みに対するホルモンの影響
視覚刺激の好みに対するホルモンの影響

倉岡 康治 , 稲瀬 正彦

 霊長類は他個体に関する視覚情報に興味を示す。また、動物の社会行動においてはテストステロンやオキシトシンが重要な役割を果たすことが知られているため、上記のホルモンがニホンザルの社会的視覚刺激の好みにどう影響するかを行動実験で調べることを目的としている。
 本実験では、飼育ケージ内でのサルの自発的な行動によりデータを得る実験環境を構築することにした。霊長類研究所飼育室において、飼育ケージにタブレット型コンピューターを取り付け、複数の他個体画像を提示する。サルがある画像に興味を示して触れれば、その画像をより長く提示し、別の画像に興味を示さず触れることが無ければ、その画像は少しの時間の後に消えるようにプログラムする。この課題で各視覚刺激に対するサルの興味を調べ、テストステロンやオキシトシンを投与した後、その興味がどのように変化するかを調べる。
 本年度は、本研究課題の初年度であるため、実験環境の構築を行った。タブレット型コンピューターを防水ボックスに入れ、画面のみがサルに見えるようにして、飼育ケージに固定した。他個体画像が提示されると、サルはじっと見つめていた。今後は装置への馴致を進め、サルが画像に触れる状況になってからデータを取る予定である。



H28-A16
代:諏訪 元
協:佐々木 智彦
協:小籔 大輔
協:清水 大輔
人類出現期に関わる歯と頭蓋骨の形態進化的研究
人類出現期に関わる歯と頭蓋骨の形態進化的研究

諏訪 元 , 佐々木 智彦, 小籔 大輔, 清水 大輔

エチオピアの中新世後期チョローラ層出土の霊長類化石(850から700万年前)の評価を進めた。2016年の調査により、オナガザル化石がさらに増し、800万年前のBetichaサイト出土のものは総数20点に達した。標本増により、Betichaのコロブス化石が複数種含むのか、変異の大きい単一種か、改めて検討する必要が生じた。先行研究では、下顎臼歯ノッチが深い(葉食適応の進行と関わると解釈される)コロブスは、700万年前以後から報告されている。そのため、Betichaのコロブスの下顎臼歯ノッチ深さと種構成の評価が重要である。そこで、前年度に継続し現生種における下顎臼歯ノッチ深さ等の臼歯形態を調査した。現生標本では歯頚線位置の判定が難しい場合があるため、Colobus polykomosの臼歯60点ほどについてマイクロCT画像と表面3次元画像の双方を獲得し、後者による歯頚線認定に問題がないことを確認した。その上で、C. polykomos, Pi. badius, Pr. verusの3種においてノッチ深さ、咬合面小窩長、咬頭尖位置などを計測した(全81標本)。いずれの現生種においてもノッチ深さの変異は予想以上に大きいことが判明した。この参照データをも基にBetichaのコロブス化石を評価中である。


H28-A20
代:Mukesh Chalise
Study on phylogeography of macaques and langurs in Nepal
Study on phylogeography of macaques and langurs in Nepal

Mukesh Chalise

I continued ecological observations and have collected fecal samples for the phylogeographical study in 2016. The aim of this program was to increase geographical information to assess ecological and evolutionary status of rhesus and Assamese macaques and Himalayan langurs from DNA analysis. In particular, I planned to compare the mode of local genetic differentiation among primate species in the Himalayan region. In previous years we collected some samples of primates from Churia range, Mid-hills and upper mountain regions of Nepal from east to west Nepal in different altitudinal gradients. However, still we want to cover the wider areas of Nepal where primates were observed by MKC. Our setting laboratory facility at Kathmandu currently since 2015 allows us to take PCR products for this program. Non-coding region of mtDNA was sequenced and phylogeography of subject species was assessed by molecular phylogenetic and population genetic analyses. I have also compared the data with those from other distribution areas, such as India, Bhutan, Sri Lanka, China and Thailand to evaluate the taxonomic status of monkeys in Nepal. Molecular assessment in the proposed program was particularly important at first for evaluation of a new species, Arunachal macaques, White-cheeked monkeys in sinica-species group of macaques. It is also valuable to investigate biological contrast observed in South Asian colobines by adding new information on Nepalese langurs. We are very interested in testing the validity of “convergence hypothesis” proposed by Karanth (2003), Karanth et al. (2008 & 2010), new sites of different munzala population (Chakraborthy et al. 2014) and also new species from China (Cheng Li et al. 2015) which assume a unique morphological convergence in macaques and langurs adapting to various niche in South Asia, specially The Himalayan region. I have used in larger extant the facilities and deposited samples in Dr. Kawamoto’s laboratory to do PCR, DNA sequencing and computer analysis. I had compared mtDNA variations of macaques and langurs in Nepal. We could establish a protocol of the DNA analysis which is applicable to the primate populations living in Himalayan region. We also set up a small facility in Kathmandu to extract DNA from collected fecal specimens in 2014 and further enrich in 2015 by the support of Dr. Kawamoto and Prof. Hamada of PRI. Our recent analysis suggested their phylogenetic proximity. But, we need to increase the number of samples and to cover wide areas of their habitats to get confident results. During the cooperative research program, I was attending 5th Asian Primate Symposium organized by PRI, Inuyama and Jayabardhane University held in Colombo 15-24, Oct, 2016. I had collected samples from different altitudinal gradients of the Nepal Himalaya. It ranges from Churia range of south to the lap of inner valleys of the Himalaya for macaques fecal samples whereas for Langur samples from Tarai plain (100masl) to high Himalayan pasture (4500masl). We had collected more than 125 samples covering a span of 1000km of Nepal from east to west and 200km of south to north (Photos 1, 2).


Photo1: Red dot indicates the fecal material collected sites for this research program in Nepal.


Photo 2 Collection of fecal smear in lysis buffer.


H28-A21
代:Tshewang Norbu
Ecological and phylogeographical study on Assamese macaques in Bhutan
Ecological and phylogeographical study on Assamese macaques in Bhutan

Tshewang Norbu

Due to recent discovery of new macaque species in Arunachal Pradesh and southeastern Tibet, evolutionary study of Assamese macaques (Macaca assamensis) in Bhutan becomes an important research subject in order to elucidate evolutionary and phylogenetic relationship among Asian macaques. In this study, we focused on Assamese macaques inhabiting two major river basins in western Bhutan. A total of 83 fecal samples were collected along the Wang chhu and the Ammo chhu rivers during May 2016 – Jan 2017. Fecal DNA was examined to compare the genetic features among populations in the study areas. We successfully sequenced the control region of mtDNA genome at Primate Research Institute in March 2017. Sexing was performed by PCR test with amelogenin primers to compare female specific mtDNA haplotypes. Two step PCRs, first with long PCR and second with target PCR, were used to avoid interference by numt (nuclear mtDNA). Finally, complete sequences of the non-coding region were determined for 48 samples during laboratory work in Inuyama. Phylogeographical assessment suggested that genetic differentiation among the riverine populations were not simply associated with geographical relationship. Some of haplotypes found in different river areas clustered together. The populations inhabiting Wang chhu river basin showed a conspicuous pattern of DNA relation where monkeys in the mid basin were separated from those in lower or upper basin. We will extend this phylogeographical investigation to other populations in central and eastern Bhutan.


H28-A22
代:狩野 文浩
チンパンジーを対象としたアイ・トラッキングによる記憶・心の理論・視線認知についての比較認知研究
チンパンジーを対象としたアイ・トラッキングによる記憶・心の理論・視線認知についての比較認知研究

狩野 文浩

赤外線式のリモート式テーブル設置型のアイ・トラッカーで、チンパンジーを対象に、ビデオを見せたときの眼球運動を測定した。
 ヒト幼児ではアイ・コンタクトや名前を呼ぶなどの顕示的手がかりのあとに、視線手がかりを与えると、特にその視線によく反応する(視線の先を追う)ことが知られている。同じテストに、家畜のイヌもヒト幼児と同様の反応を示すことが知られている。類人猿では研究がない。今回はこのテストを行った。ヒト役者が目の前の2つの物体のうちどちらかに目を向ける視線手がかりを与える前に、アイ・コンタクトと名前を呼ぶ顕示的な手がかりを与える条件と、同様に注意を惹くが顕示的ではない手がかり(頭を振る、視覚刺激が頭に提示されるなど)を与える条件の2条件でテストした。
 結果、チンパンジーはヒト幼児やイヌのように顕示的な手がかりの後に特に視線の先を追うという結果は認められなかった。ただし、興味深いことに、顕示的手がかりの後に、その手がかりを与えた役者の前のものを積極的に探す視線のパターンが認められた。したがって、チンパンジーはヒトの役者が与える顕示的手がかりの意味役割―つまり、なにか環境について示唆しているということ―をある程度理解していると考えられるが、その顕示的手がかりを視線手がかりに結び付けて、特定の物体について示唆を与えられているというようには理解しなかったことになる。この結果は論文としてまとめ、投稿した。
Human ostensive signals do not enhance gaze-following in great apes but do enhance object search, F Kano, R Moore, C Krupenye, M Tomonaga, S Hirata, J Call, submitted



H28-A24
代:Jade Burgunder
協:Klara Petrzelkova
協:David Modry
Network analysis and the spread of parasitic disease in great apes
Network analysis and the spread of parasitic disease in great apes

Jade Burgunder , Klara Petrzelkova, David Modry

We explored the relationship between social contact networks and the spread of pathogenic strongyle nematode parasites in chimpanzees and bonobos. Social network characteristics were compared to each individual's parasite load to investigate how different positions in groups can affect the transmission of disease. Results results were compared between the two species.
Fecal samples collected from bonobos (Pan paniscus) in Wamba, Democratic Republic of Congo, were examined in Dr. MacIntosh’s parasitology laboratory at PRI. A modified simple sedimentation method was used for parasite species identification and for quantifying the number of gastrointestinal nematode eggs per gram of faeces (EPG) as a surrogate measure of parasite infection intensity. Strongylid eggs, Strongyloides eggs, dicrocoeliid trematode eggs, Trogodytella trophozoites and Capillaria eggs were detected. Similar to Hasegawa’s parasitological survey in bonobos in Wamba (Hasegawa et al. 1983), the intensity of helminth eggs in our samples was usually very low (mean EPG= 3.79 ± 4.46). Troglodytella and Strongyloides were the most prevalent parasites, with all samples examined testing positive.
Parasitological data from chimpanzees (Pan troglodytes) in Kalinzu, Uganda were already available to be included in the analyses.
The social network position of each individual was determined using association data taken from ‘1 -hour party’ data that have been continuously collected from (1) chimpanzees in Kalinzu and provided by Dr. C. Hashimoto and (2) bonobos in Wamba and provided by Dr. T. Furuichi. Scan data collected from chimpanzees in Kalinzu were also used in the social network analyses to compare to the results obtained form the ‘1-hour party’ data. Social network analyses were implemented using sna and igraph packages in R. Network metrics such as degree, strength, eigenvector centrality and betweenness, obtained from the aforementioned behavioural data were correlated to the parasitological data by constructing generalized mixed-effect models. We found that strength and centrality have a significant effect on the intensity of strongylid infection in bonobos, whereas no social metrics could predict the intensity of infection in chimpanzees. These results suggest that bonobo’s position within their social network influences their level of infection by gastrointestinal nematodes. The different outcome found with the chimpanzee model may be explained by divergence in social association patterns between the two great ape species and this will need further investigation. A manuscript will be under preparation for a submission this year.



H28-A25
代:岡本-Barth早苗
協:Katie Hinde
Chimpanzee milk bioactive factors and relationship to infant growth'チンパンジー母乳における生物活性因子と子供の成長との関係性
Chimpanzee milk bioactive factors and relationship to infant growth'チンパンジー母乳における生物活性因子と子供の成長との関係性

岡本-Barth早苗 , Katie Hinde

本研究では2000年から数年に渡り思考言語分野において採取、冷凍保存されていたチンパンジーの母乳サンプルを調べることにより、ヒトとチンパンジーにおける代謝および免疫に関係する因子の比較をおこなう。またチンパンジーの授乳期間が長いことから、母乳中の因子と乳児の発達との関係性を調べる。さらに同様に採取された母子の糞尿サンプルもあわせて調べることにより、乳児の発達に伴った母子の生理学的変化を総合的に検討する。26年度は、母乳サンプル輸出について、ワシントン条約に基づいたCITES(Convention on International Trade in Endangered Species)手続きのためチンパンジー3個体各々の書類準備をおこなったが、個体履歴等の証明書類の完備が困難で手続きが長期化することが予想された。そのため、コロラド大学の研究協力者が来日して所内の実験室において、分析をおこなう方針に変更した。しかし、当初予定していた分析試薬の国内入手が困難であることが判明した。そこで27年度から新たに参加した研究協力者が異なる分析キットを用いて母乳の分析を開始する予定であったが、当人の所属異動(ハーバード大学からアリゾナ州立大学)に伴い来日しての分析を行うことが困難になったために、今年度に分析施行を予定していたが、諸事情により現在も施行されておらず、保留状態になっている。


H28-B1
代:柏木 健司
豪雪地域のニホンザルによる洞窟利用のモニタリング
豪雪地域のニホンザルによる洞窟利用のモニタリング

柏木 健司

 ニホンザルの厳冬期洞窟利用について、3地域(青森県下北半島、群馬県日光市野門、富山県黒部峡谷)で検討した。しかし、2015年度冬季は全国的な暖冬であり、ニホンザルにとって、洞窟を利用せざるを得ないほど寒くはなく、洞窟利用の痕跡は認められなかった。また、下北半島では対象とする洞窟についても確認できず、今後の課題として残された。一方、2016年度冬季は1月中旬以降にかなりの降雪があり、富山県では山間部でまとまった積雪が認められ、洞窟を利用している可能性が高い(自動撮影カメラのデイタは4月下旬以降に回収予定)。以下では、ニホンザルの洞窟利用が確認できた、黒部峡谷黒薙温泉の洞窟の例を報告する。
 花崗岩中に人工的に掘削された洞窟中には、その足元に引湯管が敷設され、訪問時(2017年4月4日)には洞外に向かう十数cm深の水流があり、引湯管からの暖気が充満していた。洞口から約8 mの位置から回収したニホンザルの骨格は、主要な部位に加え体毛も残されていた。昨年12月9日にはそこには何もなく(従業員の談話)、今冬季に入り込んで死亡した個体と判断される。洞窟に入り込んだ理由は、状況から厳冬期における防寒と考えられ、引湯管が敷設された洞窟という点で興味深い。



H28-B4
代:近藤 健
協:菊池 泰弘
体肢筋における類人猿とクモザルの類似性と相異性
体肢筋における類人猿とクモザルの類似性と相異性

近藤 健 , 菊池 泰弘

筋は、動物のロコモーションにとって必要不可欠な器官である。骨格筋を構成する筋線維において、筋重量が大きいということは、高い筋収縮力を示している。ぶらさがり行動(BrachiationやArm-swing)は一部の霊長類種に見られる特殊な移動様式であり、その中でもBrachiationを行う能力のある類人猿とArm-swingを頻繁に行うクモザルの類似性と相違性を明らかにする目的で後肢筋について調査した。
材料は、ニシゴリラ(オス・成獣・1側)、ボルネオオランウータン(メス・成獣・1側)、ニシチンパンジー(メス・成獣・1側)、フクロテナガザル(オス・成獣・1側)、ジョフロイクモザル(メス・亜成獣・1側)を用いた。計測方法は、筋から血管や神経組織を除去し、筋線維が腱膜付着する最遠位端で筋と腱を分離し、重量を電子天秤によって0.1gまで測定した。筋の作用を踏まえ関節運動方向別に分類し、後肢筋総重量から機能別の筋重量割合をもとめた。
その結果、クモザルの股関節外転筋(大殿筋,中殿筋,小殿筋)割合は、類人猿よりも低値を示し、足関節底屈筋(下腿三頭筋)割合は、類人猿よりも高値を示した。ただ、今回対象とした標本はそれぞれ1種1側であること、またクモザルはArm-swing以外に樹上性四足歩行も頻繁に行うことから、類人猿・クモザルのサンプル数を増やし、四足歩行を行うその他の霊長類種と比較することで、ぶらさがりを行う種における体肢筋の特異性を明らかにすることが可能であると考える。また、筋重量以外にも筋線維長や生理学的筋横断面積(PCSA)といった筋収縮能を表す他の指標値も検討していきたい。



H28-B5
代:町田 貴明
協:和田 直己
疾走性哺乳類の前肢、後肢筋のモメントバランスの研究
疾走性哺乳類の前肢、後肢筋のモメントバランスの研究

町田 貴明 , 和田 直己

疾走性哺乳類、チーター、ユキヒョウ、シマウマ、ラクダ、ブラックバックに関するモメントが算出できた。さらに現在、計画に示した、タイリクオオカミ、パタスモンキー、マーラに関してPCSAの算出ためのデータとなる、筋重量、筋線維長、角度の情報を得ている。モメントアームの算出はこれから行う。クモザル、ヒヒに関しては筋肉の起始ー終止の確認、筋重量の計測を終えた。筋線維につてはこれから実施する。すべてのデータが出そろったら、比較検討を行う。サイズ、系統、生息域の違いを反映するモメントバランスの違いを明らかにする。添付の図にはシマウマの研究結果の一部を示した。


H28-B7
代:関澤 麻伊沙
ニホンザル野生群におけるinfant handlingの意義

学会発表
関澤 麻伊沙、沓掛 展之 ニホンザル野生群における子育てスタイルとその決定要因(2017年7月16日) 第33回日本霊長類学会大会(福島).

Maisa Sekizawa, Nobuyuki Kutsukake The significance of infant handling in wild Japanese macaques( 2017年12月12日~2017年12月15日) Gottinger Freilandtage. Social complexity: patterns, processes and evolution( ドイツ).

関澤 麻伊沙、沓掛 展之 ニホンザル野生群におけるinfant handlingの意義:母子とハンドラー双方の視点から(2018年3月15日) 第65回日本生態学会大会(札幌).

関澤 麻伊沙、沓掛 展之 ニホンザル野生群における母子間交渉がinfant handlingを受ける頻度に及ぼす影響(2018年7月14日) 第34回日本霊長類学会大会(東京).
ニホンザル野生群におけるinfant handlingの意義

関澤 麻伊沙

霊長類では、母親以外の個体(ハンドラー)がアカンボウに接触するinfant handling(IH)が日常的にみられる。本研究では、ニホンザル野生群におけるinfant handlingの意義を、母子・ハンドラーの双方から解明することを目的としている。これまでの2年間に引き続き、今年度も宮城県石巻市金華山において、ニホンザルA群に今年度生まれたアカンボウ10頭とその母親を対象として、4月~7月まで行動観察を行った。各母子につき1回1~2時間の個体追跡を行い、ハンドラー、ハンドリングの内容、ハンドラーと母親の社会行動、母子の交渉を記録した。総観察時間は約499時間であった。現在はデータ入力中であり、終わり次第、これまでのデータと併せた解析を行う。今後の解析の中心とするのは、子育てスタイルとIHを受ける頻度の関係性についてである。IHの頻度は種によって異なり、種特異的な社会構造に依存するとされている。種特異的な社会構造には各種の子育てスタイルが影響しているとされているが、子育てスタイルには種内でも個体差があることが分かっている。この個体差が、IHを受ける頻度や母親の許容性にどのように影響しているのかを分析する予定である。


H28-B8
代:那波 宏之
協:難波 寿明
霊長類における神経栄養因子の精神機能発達に与える影響

論文
那波宏之 斎藤摩美(2016) サルやマウスを使った統合失調症のモデル化とその課題 分子精神医学 16(2):38-45. 謝辞有
霊長類における神経栄養因子の精神機能発達に与える影響

那波 宏之 , 難波 寿明

神経発達障害を病因とする統合失調症などのヒト精神疾患をモデル化するには、よりヒトに遺伝子や行動パターンが類似する霊長類が最適と考えられる。共同研究者らは、新生仔ネズミの皮下に神経栄養性サイトカインである上皮成長因子(EGF)やニューレグリン1などを投与することで、思秋期以降に種々の認知行動異常を呈する統合失調症モデルを樹立しているが、実際、ヒト霊長類でも再現されるかは不明であった。本共同利用研究課題では、サル霊長類でもサイトカインの新生児投与で発達依存性の認知行動変化が起こせるかどうか、マーモセットおよびアカゲザルを用いて検討している。
これまでにマーモセット新生児4頭へのEGF投与を実施してきているが、これまでにEGF投与を皮下投与されたマーモセット1頭が3、活動量の上昇・アイコンタクトの頻度低下・逆転学習課題等の成績低下を示したが、さらにもう1頭のマーモセットも同様の行動変化を示した。ビデオによる行動観察・MRIを用いた構造およびDTIのデータ取得を継続している。また、合計3頭のアカゲザル新生児へEGF投与を行ったが、3頭とも飼育担当者が行動異常を確認した。うち1頭は予後不良と判断されたが、2頭は個別飼育のケージに移し、逆転学習課題等を実施し、成績が悪いことを確認した。



H28-B9
代:笹岡 俊邦
協:前田 宜俊
協:小田 佳奈子
協:中尾 聡宏
協:崎村 建司
協:中務 胞
協:夏目 里恵
協:藤澤 信義
異種間移植によるマーモセット受精卵の効率的作成方法の開発研究

学会発表
前田宜俊, 中務 胞, 三輪美樹, 小田佳奈子, 藤澤信義, 夏目里恵, 中尾聡宏, 神保幸弘, 田中 稔, 山本美丘, 坪井広樹, 阿部光寿, 﨑村建司, 中村克樹, 笹岡俊邦 マーモセット卵巣のマウスへの移植と 卵胞刺激ホルモン投与による移植卵巣の成熟(2017年3月10日) 第 6回 生理研 ?霊長研 ?脳研合同シンポジウム(新潟市).
異種間移植によるマーモセット受精卵の効率的作成方法の開発研究

笹岡 俊邦 , 前田 宜俊, 小田 佳奈子, 中尾 聡宏, 崎村 建司, 中務 胞, 夏目 里恵, 藤澤 信義

 本研究では、マーモセットの卵巣を免疫不全マウスに移植し、マーモセット卵子をマウス個体で成熟させ、体外受精・顕微授精を用いて受精卵を多数得る方法を開発することである。このため、マウス個体内へのマーモセット卵巣の生着、未成長卵子の成熟、排卵に必要な条件を明らかにする。これまでに、中村克樹教授の研究室のマーモセットの安楽死処置の際に、卵巣組織及び精巣上体の提供を受けた。卵巣は、氷上で細切し凍結保存、または冷蔵組織保存液に浸漬する方法にて新潟大に搬送し、ヌードマウスの卵黄嚢内、腎臓被膜下、皮下に移植した。移植後に卵胞刺激ホルモン(FSH)投与を開始し、数週間後には移植卵巣内の卵胞の成熟が観察された。そこで、FSHの投与期間と移植卵巣内の卵胞の成熟の程度を観察し、適切なFSH投与期間を検討している。併せて組織学的検討をすると共に、移植卵巣を体外培養し、マーモセット成熟卵胞から卵子を取得する方法を検討している。現在進めている方法により、マーモセットの移植卵巣がマウスに生着し、卵胞を成熟させることに成功している。今後も、中村克樹教授の研究室より卵巣の提供を希望しており、実験計画の通り、卵子の体外受精、顕微授精により受精卵の作成の段階へと研究を進展させたい。


(図1) マーモセット卵巣をnude mouseに移植し、卵胞刺激ホルモン投与により、マーモセットの成熟卵子が得られた。


H28-B10
代:関 和彦
協:大屋 知徹
協:梅田 達也
協:工藤 もゑこ
複数骨格筋への単シナプス性発散投射構造の解剖学的同定
複数骨格筋への単シナプス性発散投射構造の解剖学的同定

関 和彦 , 大屋 知徹, 梅田 達也, 工藤 もゑこ

脊髄運動ニューロンに投射するPremotor neuronは大脳皮質、脳幹、脊髄にそれぞれ偏在し、最近の申請者らの電気生理学的実験によってPremotor neuronの複数筋への機能的結合様式が筋活動の機能的モデュール(筋シナジー)を構成することが明らかになってきた。この神経解剖学的実体については全く明らかにされておらず、ヒトの運動制御の理解の発展と、運動失調に関わる筋、神経疾患の病態理解や新しい治療法の開発のためには喫緊の研究課題である。そこで本研究では上肢筋の脊髄運動ニューロンへ投射する細胞(Premotor neuron)の起始核である脊髄、赤核、大脳皮質からの発散性支配様式を解剖学的に明らかにすることによって、霊長類における巧緻性に関わる皮質脊髄路の脊髄運動ニューロンへの直接投射の機能的意義を解剖学的観点から検討する。
本年度は前年度行なった注入結果をもとに、新たなウィルスベクターの開発を継続して行なった。また、国立精神・神経医療研究センターにおいて、霊長類研究所から供給を受けたAAVベクターの機能評価をマーモセットを対象に行なった。



H28-B11
代:國松 豊
アフリカ中新世霊長類化石の形態学的研究

論文
Kunimatsu, Y., Nakatsukasa, M., Sakai, T., Saneyoshi, M., Sawada, Y., and Nakaya, H.(2017) A newly discovered galagid fossil from Nakali, an early Late Miocene locality of East Africa. Journal of Human Evolution 105:123-126. 謝辞あり
アフリカ中新世霊長類化石の形態学的研究

國松 豊

 1980年以来、京大を中心とした日本の調査隊がケニヤ共和国の乾燥地帯において中新世ヒト上科化石の発見を主眼とした野外発掘調査を継続して実施してきた。2000年代初頭まではケニヤ北部のナチョラ及びサンブルヒルズ地域において野外調査が行われ、その後は数十キロ南のナカリ地域において野外調査が始まって、現在に至るまで継続されている。ナチョラとナカリの中新世霊長類化石を順次、分析・記載しているが、本年度はナチョラ標本に関して、原猿化石をロリス科Mioeuoticus属の新種として記載をまとめた。この属は、従来、前期中新世からしか知られておらず、ナチョラ化石は中期中新世からの初めての報告である。ナカリ標本については、小型のガラゴ科化石を記載した。標本が断片的なため属や種は不明としたが、ほぼ同時代(後期中新世前半)のエジプトやナミビアで見つかっているガラゴ科化石とサイズや形態が非常によく似ている。歯のサイズに基づくと現生のガラゴ類の中では最小の部類に入るデミドフガラゴと同じくらいで、きわめて小型である。また、ナカリ出土の中新世小型「類人猿」のニャンザピテクス類の上顎小臼歯標本に関しても記載をまとめた。ニャンザピテクス類は中新世「類人猿」のなかでもきわめて特殊化したグループであり、従来、中期中新世前半以降は知られていなかった。ナカリ標本は後期中新世から初めてのニャンザピテクス類の報告であり、現在知られているかぎり、このグループの最後の生き残りである。


H28-B12
代:南本 敬史
協:平林 敏行
協:永井 裕司
協:堀 由紀子
協:藤本 淳
協:菊池 瑛理佳
イメージングと脳活動制御の融合技術開発

論文
Nagai Y, Kikuchi E, Lerchner W, Inoue KI, Ji B, Eldridge MAG, Kaneko H, Kimura Y, Oh-Nishi A, Hori Y, Kato Y, Hirabayashi T, Fujimoto A, Kumata K, Zhang MR, Aoki I, Suhara T, Higuchi M, Takada M, Richmond BJ, Minamimoto T.(2016) PET imaging-guided chemogenetic silencing reveals a critical role of primate rostromedial caudate in reward evaluation. Nat Commun. 7: :13605. 謝辞あり

Ji B, Kaneko H, Minamimoto T, Inoue H, Takeuchi H, Kumata K, Zhang MR, Aoki I, Seki C, Ono M, Tokunaga M, Tsukamoto S, Tanabe K, Shin RM, Minamihisamatsu T, Kito S, Richmond BJ, Suhara T, Higuchi M.(2016) DREADD-expressing neurons in living brain and their application to implantation of iPSC-derived neuroprogenitors. J Neurosci. 36(45):11544 ?11558.

学会発表
Minamimoto T. PET imaging-guided chemogenetic manipulation of primate neural circuits (2016.12.1) Non-human Primates Chemogenetic Workshop(National Institutes of Health, Bethesda).
イメージングと脳活動制御の融合技術開発

南本 敬史 , 平林 敏行, 永井 裕司, 堀 由紀子, 藤本 淳, 菊池 瑛理佳

本研究課題において,独自の技術であるDREADD受容体の生体PETイメージング法と所内対応者である高田らが有する霊長類のウイルスベクター開発技術を組み合わせることで,マカクサルの特定神経回路をターゲットとした化学遺伝学的操作の実現可能性を飛躍的に高めること目指した.H28年度はサル尾状核吻内側部に抑制性DREADDを発現させるウイルスベクターを投与し、その発現をPETによるイメージングで可視化できることを示すとともに、CNOの全身投与により報酬に基づく意思決定に障害が生じることを明らかにした(NagaiらNat Commun2016)。さらに、サル脳局所に発現させた興奮性DREADDをCNOで活性化させた時の活動変化をFDG-PETを用いて評価できることを明らかにした。


H28-B13
代:大石 元治
協:荻原 直道
大型類人猿の前腕における回内-回外運動機構の機能形態学的解析

学会発表
大石元治、荻原直道、宇根有美、添田聡、尼崎肇、市原伸恒 大型類人猿における肘関節の伸筋•屈筋の筋生理学的断面積について(2018年3月) 第123回日本解剖学会総会全国学術集会(東京都).
大型類人猿の前腕における回内-回外運動機構の機能形態学的解析

大石 元治 , 荻原 直道

前腕の回内-回外は橈骨と尺骨の2つの骨により形成される関節で起こる運動である。この関節は車軸関節に分類され、円回内筋などの前肢筋により橈骨が尺骨を軸にして“回転”する。回内-回外運動は手首の回転運動に関与し、三次元的に位置する支持基体を用いる樹上性ロコモーションや、手の器用さと関連が深い。大型類人猿は樹上環境で懸垂型ロコモーションを高頻度に行い、他の霊長類と比較して前腕の回内-回外運動に高い可動性を示す。一方で、大型類人猿内における典型的なロコモーションの種類や出現頻度に大きな違いが種間に存在することから、回内-回外の運動性も異なる可能性がある。そこで、本研究では大型類人猿の前肢における回内-回外運動の特性を明らかにすることを目的とした。本年度は、ゴリラ2個体の前腕のCT撮影を行うことができた。最大回内時、最大回外時のデータから三次元再構築を行うことで、尺骨を軸とした橈骨の運動を再現した(図)。今後は標本数を増やすとともに、他の大型類人猿との定量的な比較を予定している。


H28-B14
代:山下 俊英
協:貴島 晴彦
サル脊髄損傷モデルを用いた軸索再生阻害因子とその抗体による神経回路修復に関する研究

論文

学会発表
山下俊英、貴島晴彦、高田昌彦、福永雅喜、岡田知久 中枢神経回路の再編成を制御するBMI技術と生物学的手法の構築(2016.11.9) 平成28年度 脳と心の研究課進捗報告会( 東京).

関連サイト
研究室のホームページ http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molneu/index.html

中枢神経回路の再編成を制御するBMI技術と生物学的手法の構 http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molneu/researchr4.html
サル脊髄損傷モデルを用いた軸索再生阻害因子とその抗体による神経回路修復に関する研究

山下 俊英 , 貴島 晴彦

 これまで、霊長類モデルを用いて、軸索再生阻害因子と脊髄損傷後の神経回路網再形成による運動機能再建に焦点をあて研究を行ってきた。その結果、阻害因子のひとつであるRepulsive guidance molecule-a (RGMa)が脊髄損傷後損傷周囲部に増加することを突き止め、その責任細胞のひとつに免疫細胞の一種であるミクログリア/マクロファージを同定することができた。さらに、RGMaの作用を阻害する薬物を用いて脊髄損傷後の機能回復過程および神経回路網形成の有無を検討した。その結果、RGMa作用を阻害した群(RGMa群)は、コントロール群(薬物投与なし)に比べ、運動機能の回復が顕著にみられた。神経回路網形成については、順行性トレーサーでラベルされた皮質脊髄路の軸索枝の一部は、自然回復に伴って脊髄損傷部を越え、直接手や指の筋肉を制御する運動ニューロンへ結合していることが分かった。このような神経軸索枝は、RGMa群においてより多く観察された。次に、脊髄損傷部を越えた神経軸索枝が直接運動機能の回復に寄与しているか否かを、電気生理学手法と神経活動阻害実験を併用して確認した。その結果、直接運動機能の回復に寄与していることが明らかとなった。これらの結果から、脊髄損傷後の運動機能回復を促進させる治療法としてRGMaを分子ターゲットとした方法が有用であると考える。


H28-B15
代:渡辺 雅彦
協:今野 幸太郎
マーモセット脳機能研究に最適化した経路選択的操作とその基盤となる回路構造解析技術の開発
マーモセット脳機能研究に最適化した経路選択的操作とその基盤となる回路構造解析技術の開発

渡辺 雅彦 , 今野 幸太郎

平成28年度は、マーモセット脳の神経化学特性を可視化するための5種類のマーカー抗体(小胞膜グルタミン酸トランスポーターVGluT3, セロトニントランスポーターHTT, グリシントランスポーターGlyT2, ドーパミン合成酵素 DBH)に対する抗体開発を行い、供与を受けた成体マーモセット脳サンプルを用いて特異性を確認するとともに、タンパク質レベルでの神経化学データを収集することができた。従って3年間で9種類の抗体とリボプローブの開発を完了し、マーモセット脳での代表的な神経伝達物質経路のニューロンを可視化するためのツール開発を全て完成させることができた。また開発したリボプローブを用いたin situハイブリダイゼーション法により、マーモセット成体脳におけるVGluT1, VGluT2, VGluT3, GAD67, CHT, HTT, DBH, DATの8種類の分子のmRNA発現細胞マップ構築を完了し、その発現細胞マップがデータベース上で公開されている(https://gene-atlas.bminds.brain.riken.jp/)


H28-B16
代:島田 将喜
協:古瀬 浩史
協:坂田 大輔
奥多摩湖周辺の野生ニホンザル「山ふる群」の調査と環境教育

学会発表
豊川春香・加藤晋吾・関口和代・内藤将・島田将喜 奥多摩の野生のニホンザルにおける食性と遊動域(2016年7月15-17日) 日本霊長類学会第32回大会(鹿児島大学郡元キャンパス 鹿児島県鹿児島市).

加藤晋悟、豊川春香、島田将喜 奥多摩湖周辺に生息する野生ニホンザルのオニグルミ採食(2017年3月17日~18日) 第22回生態人類学会研究大会(ホテルロイヤルヒル福知山&スパ 京都府福知山市).
奥多摩湖周辺の野生ニホンザル「山ふる群」の調査と環境教育

島田 将喜 , 古瀬 浩史, 坂田 大輔

2016年度の調査で得られた山ふる群の推定最大頭数は84頭であった。通年で見た場合、観察された採食の回数の多かったのは、オニグルミの種子、草本類、サクラ属の果実、クズの葉、カキノキの果実、ハリエンジュの花、ヤマグワの葉である。前年度に引き続き、山ふる群のサルが民家付近の農作物や果樹などを採食する行動は、一度も観察されなかった。遊動域は山のふるさと村を中心とする狭い範囲に集中していた。95%カーネル法による年間の推定遊動域の全体は、奥多摩湖の南岸一帯をコアエリアとする、湖を大きく取り囲む領域であることがわかった。解放水域を除く遊動面積は15.0km2であった。2014、15年度に比べて狭く見積もられたとはいえ、人里に依存しない平均的な他地域の野生ニホンザルの遊動域面積に比べて広いと考えられる。2014年から16年度にかけての個体数は、80数頭で安定している。2011年2月時点での山ふる群の推定頭数は88頭であったことから、個体数は過去少なくとも6年間にわたって安定していると考えてよいだろう。現在の山ふる群の遊動域は、民家の多い湖北に向かって大きくなった事実はなく、むしろより自然林に近い南~南東に向かって広がったようだ。ただしデータポイント数の多寡が遊動面積推定に影響を与えている可能性があり、遊動域の変動についても今後の継続調査が必要である。


H28-B17
代:田中 真樹
協:鈴木 智貴
協:竹谷 隆司
協:亀田 将史
協:稲場 直子
協:弘中 愛
分子ツールを用いた皮質-皮質下ネットワークの機能解析

論文
Ohmae, S. & Tanaka, M.(2016) Two different mechanisms for the detection of stimulus omission. Sci. Rep. 6:20615.

Kunimatsu, J., Suzuki, T.W. & Tanaka, M.(2016) Implications of lateral cerebellum in proactive control of saccades. J. Neurosci. 36:7066-7074.

Suzuki, W.T., Kunimatsu, J. & Tanaka, M.(2016) Correlation between pupil size and subjective passage of time in non-human primates. J. Neurosci. 36:11331-11337.

Kunimatsu, J. & Tanaka, M.(2016) Striatal dopamine modulates timing of self-initiated saccades. Neuroscience 337:131-142.

学会発表
田中真樹 眼球運動で探る小脳の高次機能(2016.10.28) 第46回日本臨床神経生理学会(郡山).

田中真樹 皮質下ループによる時間情報処理(2016.12.7) 平成28年度生理研研究会「大脳皮質の機能原理を探る」(岡崎).

Suzuki TW., Kunimatsu J. & Tanaka M. Correlation between pupil size and self-timed saccade latency in non-human primates.(2016.11.12) 北米神経科学学会(San Diego).

Uematsu A. & Tanaka M. Temporal prediction signals in the cerebellar dentate nucleus are shaped by GABAergic inputs in behaving monkeys.(2016.11.16) 北米神経科学学会(San Diego).

亀田将史、田中真樹 Neuronal correlates of temporal prediction in the primate striatum.(2016.7.20-22) 日本神経科学大会(横浜).

竹谷隆司、亀田将史、田中真樹 サルとヒトの同期運動(2016.9.10) 日本生理学会北海道地方会(札幌).
分子ツールを用いた皮質-皮質下ネットワークの機能解析

田中 真樹 , 鈴木 智貴, 竹谷 隆司, 亀田 将史, 稲場 直子, 弘中 愛

前頭葉皮質の機能は視床を介した皮質下からの入力によって調節されている。本研究では分子ツールをニホンザルに適用した2つの実験を進めてきた。実験1では、小脳外側部の機能を調べるために、化学遺伝学的手法によって小脳の亜急性障害モデルを作成することを試みた。プルキンエ細胞特異的に変異型ヒトムスカリン性アセチルコリン受容体M4を発現するアデノ随伴ウイルスベクターを小脳外側部に注入し、CNO投与下で眼球運動課題を解析した。特異的な行動変化は見いだせず、むしろ同量のクロザピン投与でも行動が変化する傾向があり、今後の研究戦略の再考を迫られる結果となった。1頭の個体から免疫組織標本を作製したところ、遺伝子発現は好調であった。また、実験2では、大脳視床路を光遺伝学的に抑制することを試みた。補足眼野にハロロドプシンを発現するベクターを注入し、運動性視床で終末を光刺激することで運動関連応答への影響を調べている。これまでに、光刺激によって活動を変化させるニューロンを少数ながら同定することができている。これらの研究は平成29年度も継続して行う。


H28-B18
代:小林 和人
協:菅原 正晃
協:渡辺 雅彦
協:内ヶ島 基政
協:今野 幸太郎
協:伊原 寛一郎
ウイルスベクターを利用した霊長類脳への遺伝子導入と神経回路操作技術の開発

論文
Kobayashi, K., Kato, S., and Kobayashi, K.(2017) Genetic manipulation of specific neural circuits by use of a viral vector system. J. Neural Transm. in press.

学会発表
Sugawara, M., Tanabe, S., Uezono, S., Tsuge, H., Fujiwara, M., Miwa, M., Konoike, N., Kato, S., Nakamura, K., Inoue, K., Takada, M., and Kobayashi, K. Difference in efficiency of retrograde gene transfer and cytotoxicity between lentiviral vectors pseudotyped with FuG-E and FuG-B2 glycoproteins in primate brains. (12-14 December 2016) The 6th Annual Meeting of Japan Society for Marmoset Reseach. (Bunkyo-ku, Tokyo).
ウイルスベクターを利用した霊長類脳への遺伝子導入と神経回路操作技術の開発

小林 和人 , 菅原 正晃, 渡辺 雅彦, 内ヶ島 基政, 今野 幸太郎, 伊原 寛一郎

霊長類の高次脳機能の基盤となる脳内メカニズムの解明のためには、複雑な脳を構成する神経回路の構造とそこでの情報処理・調節の機構の理解が重要である。我々は、これまでに、高田教授の研究グループと共同し、マカクザル脳内のニューロンに高頻度な逆行性遺伝子導入を示すウイルスベクター (HiRet/NeuRetベクター)を開発するとともに、これらのベクターを用いて特定の神経路を切除する遺伝子操作技術を開発した。また、高田教授・中村教授との共同研究により、コモンマーモセットを用いた脳構造と機能のマップ作製の研究を推進するために、HiRet/NeuRetベクター技術を応用して脳内への効率的な遺伝子導入系の開発をおこなってきた。今回、マーモセット脳内での効率的な神経機能の操作を目指して、種々の導入遺伝子をコードするウイルスベクターを脳内に注入し、その発現パターンの解析を試みる計画であったが、その前段階としてFuG-E型ベクターの導入効率を定量的に解析した。本ベクターは、黒質緻密部(SNc)、視床(CM-Pf)、大脳皮質(area6D)のいずれの領域においてもFuG-B2型ベクターに比較して、1,4-2.3倍の高い効率で遺伝子導入され、ゲノム力価自身もFuG-EベクターがFuG-B2ベクターに比較して顕著に高いことが示された(GFP搭載の場合、7.2倍、RFP搭載の場合、5.0倍)。ベクター生産効率と導入効率ともに、FuG-Eベクターがマーモセット脳内への遺伝子導入には最適であることが明らかとなった。また、マカクザルのイムノトキシン標的分子であるインターロイキン受容体αサブユニット(rhIL-2Rα)に反応せず、マウスIL-2Rα(mIL-2Rα)に選択的に作用する新たなイムノトキシンの開発のため、以前に、作成したモノクローナル抗体2E4を基盤にしたイムノトキシン(2E4-PE38)がマウス細胞に選択的な殺傷作用を持つことを見出した。2E4-PE38の特性解析を進めるとともに、抗体価の高いモノクローナル抗体が得られる可能性が高いウサギを用いて、mIL-2Rαに対する新たなモノクローナル抗体を探索するための抗原の発現を精製を行った。マウスmIL-2Rαに対するイムノトキシン分子について特性解析の後、サル脳内での機能解析に応用する計画である。


H28-B19
代:藤山 文乃
協:苅部 冬紀
協:高橋 晋
協:中野 泰岳
協:水谷 和子
協:呉 胤美
霊長類の皮質ー基底核ー視床ループの形態学的解析
霊長類の皮質ー基底核ー視床ループの形態学的解析

藤山 文乃 , 苅部 冬紀, 高橋 晋, 中野 泰岳, 水谷 和子, 呉 胤美

ドーパミンは全ての哺乳類において、運動機能や認知機能の調整のみならず学習や報酬系にも深く関与しており、その制御の解明については重要課題である。近年、大脳基底核の淡蒼球外節細胞がドーパミン細胞群である黒質緻密部に投射することが報告されたが、淡蒼球外節のどのニューロンが投射し、どのように作用するかは明らかではなかった。
本研究では、最終的には霊長類での解明を目指すが、これまでPV-Creマウスを用いた研究しかなかったところ、所内対応者の高田昌彦教授との共同研究で、PV-Creラットを世界で初めて作成していただき、このラットを使用して、淡蒼球外節の中でもパルブアルブミンを持つ細胞だけを赤の蛍光タンパクで可視化することで、神経終末が黒質緻密部の特定の領域に優位に分布することを明らかにした。さらに、淡蒼球外節のパルブアルブミン細胞の活性化によって黒質緻密部のドーパミン細胞が強く抑制されることが電気生理学的に証明された(Oh, Karube et al., Brain Structure and Function, in press)。
このPV-Creラットの成功によって、次の段階として、マーモセットを用いた実験を予定している。この研究によって、運動や学習における大脳基底核の理解、黒質緻密部の変性疾患であるパーキンソン病の病態への理解の進歩が期待できる。



H28-B20
代:森光 由樹
遺伝情報によるニホンザル地域個体群の抽出と保全単位の検討

論文
鈴木克哉,江成広斗,山端直人,清野紘典,宇野壮春,森光由樹,滝口正明(2016) 人とマカクザルの軋轢解消にむけた統合的アプローチを目指して 哺乳類科学 56(2):241-249.

学会発表
森光由樹,浅田有美,川本芳 遺伝情報によるニホンザル絶滅地域個体群の保全単位の検討(H28年9月24日) 日本哺乳類学会(筑波大学・茨城県つくば市天王台).
遺伝情報によるニホンザル地域個体群の抽出と保全単位の検討

森光 由樹

兵庫県のニホンザルの分布は、生息している全ての群れが孤立しており、遺伝的多様性の消失及び絶滅が危惧されている。ニホンザルの管理を進めるには、早急に遺伝情報による保全単位を設定する必要がある。これまで進めてきた兵庫県内の地域個体群の遺伝情報を補足するため、今年度は新たな個体の糞および血液を採取した。計38個体の試料を採取した。採取した試料を用いて、常染色体マイクロサテライト計16座位(Kawamoto et al.2007)についてフラグメント分析を行い、遺伝子型を判定した。昨年までの遺伝データに追加し、平均へテロ接合率の期待値Heと観察値Hoを算出した。 各々の地域個体群は、美方n=26(He=0.724 Ho= 0.709)、城崎n=12 (He=0.703 Ho= 0.727)、篠山n=18( He=0.699 Ho=0.733)、大河内・生野n=23(He=0.713 Ho= 0.762)、船越山n=25(He=0.698 Ho= 0.741)であった。すべての個体群において、ヘテロ接合度並びにFst値を比較したところ有意差は認められなかった。 今後は、得られた遺伝データを用いて解析を進め保全単位の抽出作業を行う予定である。


H28-B21
代:鈴木 俊介
協:森 沙織
人類の進化と疾患におけるヒト特異的レトロ因子の役割
人類の進化と疾患におけるヒト特異的レトロ因子の役割

鈴木 俊介 , 森 沙織

現在までにヒト特異的に挿入されたレトロコピーを16箇所特定し、それらが実際に組織や細胞において発現し、うち4領域では上流遺伝子とのキメラ転写産物として発現することを明らかにした。培養細胞を用いた強制発現やノックダウン実験およびゲノム編集技術によるレトロコピー欠失実験等により、ヒトゲノムにおけるヒト特異的レトロコピーの獲得したゲノム機能を現在解析中である。また,ヒト特異的レトロ因子による内在性遺伝子の発現調節機能を解析するため,チンパンジーの培養細胞を用いたゲノム編集実験を計画したが,今回用いた細胞は単一細胞化した後に増殖しないことが明らかになり,計画した実験に適さないことがわかった。今後の研究計画の遂行には,まずゲノム編集実験が可能なチンパンジー細胞株の樹立が必要である。


H28-B22
代:橋本 均
協:中澤 敬信
協:笠井 淳司
霊長類脳の全細胞イメージングと神経回路の全脳解析

論文
Atsushi Kasai, Sora Kakihara, Hiroki Miura, Ryo Okada, Atsuko Hayata-Takano, Keisuke Hazama, Misaki Niu, Norihito Shintani, Takanobu Nakazawa, Hitoshi Hashimoto(2016) Double in situ hybridization for MicroRNAs and mRNAs in Brain Tissues Frontiers in Molecular Neuroscience 9:126.

Kaoru Seiriki, Atsushi Kasai, Takahiro Kuwaki, Takanobu Nakazawa, Shun Yamaguchi, Hitoshi Hashimoto(2016) Critical involvement of the orbitofrontal cortex in hyperlocomotion induced by NMDA receptor blockade in mice Biochmical and Biophysical Research Communications 480(4):558-563.

Takanobu Nakazawa, Ryota Hashimoto, Kazuto Sakoori, Yuki Sugaya, Asami Tanimura, Yuki Hashimotodani, Kazutaka Ohi, Hidenaga Yamamori, Yuka Yasuda, Satomi Umeda-Yano, Yuji Kiyama, Kohtarou Konno, Tkeshi Inoue, Kazumasa Yokoyama, Takafumi Inoue, Shusuke Numata, Tohru Ohnuma, Nakao Iwata, Norio Ozaki, Hitoshi Hashimoto, Masahiko Watanabe, Toshiya Manabe, Tadashi Yamamoto, Masatoshi Takeda, Masanobu Kano(2016) Emerging roles of ARHGAP33 in intracellular trafficking of TrkB and pathophysiology of neuropsychiatric disorders Nature Communications 7:10594.

学会発表
五十嵐久人、笠井淳司、勢力薫、丹生光咲、中雄一郎、山浦港生、山口瞬、中澤敬信、橋本均 社会的敗北ストレスによる社会的忌避行動時の全脳活動マッピング(2016年11月19日) 第130回日本薬理学会近畿部会(京都).

橋本均、勢力薫、丹生光咲、中雄一郎、笠井淳司 全脳イメージングによる脳機能・疾患機序の解析(2016年9月8日) 第38回日本生物学的精神医学会・第59回日本神経化学会大会合同年会(福岡).

橋本均 精神疾患の分子機構の解析と創薬に向けた疾患モデル研究(2016年8月20日) 第61回脳の医学・生物学研究会(名古屋).

丹生光咲、笠井淳司、勢力薫、五十嵐久人、山口瞬、山中章弘、中澤敬信、橋本均 精神的ストレスにより活性化する神経核の情動行動における役割(2017年3月25日) 日本薬学会第137年会(仙台).

笠井淳司、橋本均 ストレス性精神疾患の病態解明に向けた全脳細胞解析(2017年3月25日) 日本薬学会第137年会(仙台).

関連サイト
大阪大学大学院薬学研究科神経薬理学分野 http://molpharm.umin.jp/
霊長類脳の全細胞イメージングと神経回路の全脳解析

橋本 均 , 中澤 敬信, 笠井 淳司

本研究は、我々が最近開発した、サブミクロンの空間解像度の全脳イメージングを世界最速で行うことが可能な光学顕微鏡システムを用いて、高田教授グループが開発した神経回路の標識技術法により作製されたマーモセット脳の全イメージングを行った。今年度は、共感や情動等の認知機能に関わる後帯状皮質の接続領域と、この領域に対応するマウス脳領域の回路構造との共通性などを明らかにし、精神・神経疾患の病態解明に資する橋渡し研究の基盤情報を得ることを試みた。具体的には、成体マーモセットの後帯状皮質に、蛍光蛋白質tdTomatoを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV1-CMV-tdTomato)を注入し、長距離の神経投射を可視化するため3週間の発現期間を経た後に固定し、高精細の全脳画像を取得した。同様の実験をマウス脳でも行い、マーモセットとマウスの回路構造を比較した。その結果、マーモセット、マウスともに、注入領域に存在する神経細胞に加えて、本領域に投射する視床の神経細胞や尾状核の神経線維が標識されており、動物種間で類似する結果が得られた。その一方で、マーモセットにおいては、マウスには該当する領域が存在しない前頭皮質のブロードマン8野にも標識された細胞が検出され、動物種間で異なる神経回路の存在も明らかにした。


H28-B23
代:橋 香奈
サル類およびチンパンジーにおけるヘリコバクター感染に関する研究
サル類およびチンパンジーにおけるヘリコバクター感染に関する研究

橋 香奈

ヒト胃内に生息することが知られているピロリ菌の一部は、発がんタンパク質であるCagAを産生し、胃上皮細胞内に注入することが知られている。そこで本研究では、マカグザルにおけるCagA陽性ピロリ菌の感染の有無を検討した。
まず、霊長類研究所で飼育されているマカクザル個体の胃液からDNAを抽出し、PCRを行なった結果、ピロリ菌の発がんタンパク質CagAの遺伝子が検出された。更に胃液を寒天培地上にプレーティングした結果、CagA陽性ピロリ菌(サル由来ピロリ菌)が単離された。

更に、これまでの研究から、CagAの発がん活性は宿主の居住する地域により差が生じることが示唆されている。そこで次に、サル由来ピロリ菌CagAの遺伝的及び機能解析を目的とした実験を行なった。
具体的には、サル由来ピロリ菌CagAの遺伝子配列を解析し、分子生物学的手法を用いてそれらのCagAが胃上皮細胞にどのような影響を及ぼすかを検討した。また、次世代シーケンサーを用いてサル由来ピロリ菌の全ゲノム解析を行なった。

来年度は、更にピロリ菌の感染実験、および全ゲノム解析を行うことで、サル由来ピロリ菌の病原性を検討する。



H28-B25
代:松本 正幸
協:川合 隆嗣
協:佐藤 暢哉
報酬学習・罰学習における外側手綱核-前部帯状皮質ネットワークの役割
報酬学習・罰学習における外側手綱核-前部帯状皮質ネットワークの役割

松本 正幸 , 川合 隆嗣, 佐藤 暢哉

最近の研究の中で我々のグループは、嫌悪的な事象(報酬の消失や罰刺激の出現)に対して活動を上昇させる外側手綱核と前部帯状皮質の役割分担について報告した(Kawai et al & Matsumoto, Neuron, 2015)。外側手綱核が現在の嫌悪事象を素早く検出するのに対し、前部帯状皮質は現在だけでなく、過去に経験した嫌悪事象の情報も保持することを明らかにした。また、前部帯状皮質には、動物の回避行動に関係するニューロン活動も多く見られた。以上の結果から、我々のグループでは、前部帯状皮質は外側手綱核から嫌悪事象に関わるシグナルを受け、そのシグナルを回避行動を調節するためのシグナルに変換しているのではないかと考えている。平成28年度はその変換メカニズムを理解するため、前部帯状皮質内のローカルネットワークに注目し、ローカルネットワークを形成する興奮性の錐体細胞と抑制性の介在細胞がそれぞれどのような情報を伝達しているのか解析した。その結果、他の領域にシグナルを伝達する錐体細胞よりも、前部帯状皮質内部の情報処理に関わる介在細胞の方が報酬や回避行動に関係するシグナルを多く伝達していることが明らかになった。以上のデータをまとめた論文を投稿準備中であり、研究成果の図の提出は見送りたい。


H28-B26
代:荻原 直道
協:大石 元治
協:谷 瑞樹
ニホンザル二足歩行運動の生体力学的解析

論文

学会発表
谷 瑞樹、北川 巨樹、伊藤 幸太、Blickhan REINHARD、 平﨑 鋭矢、荻原 直道 ニホンザル二足歩行時の脚スティフネスの定量化(2016年10月8日) 第70回日本人類学会大会(新潟).

荻原直道 人類進化研究への機械工学的アプローチ(2016年11月11日) 精密工学会画像応用技術専門委員会2016年度第4回研究会(東京都文京区).

関連サイト
慶應義塾大学理工学部機械工学科 荻原研究室 www.ogihara.mech.keio.ac.jp/
ニホンザル二足歩行運動の生体力学的解析

荻原 直道 , 大石 元治, 谷 瑞樹

 生得的に四足歩行するニホンザルの二足歩行運動のメカニクスを、ヒトのそれと対比的に明らかにすることは、ヒトの二足歩行の起源と進化を明らかにする上で重要な示唆を提供する。本年は、昨年までに計測したニホンザルの二足歩行のスティフネスデータを、ヒトの二足歩行・走行・Grounded Running(両脚支持期があるにもかかわらず力学的には走行である移動様式)のそれと対比することを通して、ニホンザルの二足歩行が、ヒトに見られる倒立振子メカニクスを活用した二足歩行ではなく、Grounded Runningとなってしまう力学的要因を考察した。
 ヒト被検者7名に二足歩行・走行・Grounded Runningを行わせたときの3次元身体運動をモーションキャプチャシステムと床反力計を用いて計測した。その結果より歩行中の重心点の時間変化を求め、位置・運動エネルギーを算出した。また、その点と着力点を結ぶ脚軸の長さ変化と床反力データから、脚のスティフネス(脚の弾性特性)を算出した。その結果、ヒトの脚スティフネスは、走行時においても、ニホンザルの二足歩行時のそれと比較して大きいことが明らかとなった。ニホンザルの脚筋骨格構造はヒトと比較して相対的に柔らかく、立脚期時間が構造的に増大しやすいため、ヒトのような倒立振子メカニクスに基づく二足歩行を行うことができないことが示唆された。
 一方、ニホンザル屍体標本1個体の前肢から、歩行に関係する主要な筋の組織片を採取した。現在、クリオスタットで切片を作成し、免疫組織化学的染色によって筋線維型の比率を求め、速筋線維と遅筋線維の割合を求める作業を行っている。



H28-B28
代:小島 大輔
協:鳥居 雅樹
霊長類の光感覚システムに関わるタンパク質の解析
霊長類の光感覚システムに関わるタンパク質の解析

小島 大輔 , 鳥居 雅樹

脊椎動物において、視物質とは似て非なる光受容蛋白質(非視覚型オプシン)が数多く同定されている。私共は、マウスやヒトの非視覚型オプシンOPN5がUV感受性の光受容蛋白質であることを見出し(Kojima et al., 2011)、従来UV光受容能がないとされていた霊長類にも、UV感受性の光シグナル経路が存在するという仮説を提唱した。本研究では、OPN5を介した光受容が霊長類においてどのような生理的役割を担うのかを推定するため、霊長類におけるOPN5の発現パターンや分子機能を解析してきたが、これまでの霊長類の組織試料を用いた解析から、ニホンザルなど霊長類OPN5遺伝子には、他のオプシン遺伝子との類似性からは予測できないエクソンが存在することを見出している。本年度は、このような特異なエクソンをもつスプライスバリアントが、どのような動物種で発現しているのかを実験的に検証した。霊長類以外の哺乳類としてマウスOPN5遺伝子由来のスプライス産物について調べたところ、同様のスプライスバリアントは発現しているが、ニホンザルなどに比べると発現量は非常に少ないことがわかった。また、哺乳類以外の脊椎動物(ニワトリやゼブラフィッシュ)では、このようなスプライスバリアントは全く検出されなかった。このOPN5スプライスバリアントは通常型mRNAとは異なり、光受容タンパク質はコードしておらず、霊長類においてどのような機能・存在意義があるのかは興味深い問題である。


H28-B29
代:星 英司
協:石田 裕昭
高次脳機能を支える越シナプスネットワークの解析

論文

学会発表
Ishida H, Inoue K, Takada M, Hoshi E Origin of multisynaptic projections from the amygdala to the forelimb region of the ventral premotor cortex in macaque monkeys(2016/7/21) The 39th Annual Meeting of Japan Neuroscience Society.

高次脳機能を支える越シナプスネットワークの解析

星 英司 , 石田 裕昭

注目が集まっているのも関わらずその機能が依然として未知である視床網様核に焦点を当てた学際的研究を実施した。視床網様核は視床と大脳皮質の間に位置しており、両者から入力を受ける位置にある。視床網様核の細胞は抑制性の投射を視床に送っている。こうした特徴は、大脳皮質と視床という二つの重要な拠点をつなぐ神経回路において、視床網様核が鍵となる役割を担っていることを示唆する。そこで、運動機能の観点から視床網様核の関与について2つの観点からなる研究を実施した。第一に、狂犬病ウイルスを使った越シナプス性逆行性トレーシングを実施した。到達運動において中心的な役割をはたす運動前野腹側部にウイルスを注入し、この部位へ視床を介して投射する視床網様核細胞を同定した。その結果、視床網様核の前方背側部が視床を介して運動前野腹側部へ投射することが明らかとなった。第二に、到達運動を行っている動物の視床網様核の前方背側部より細胞活動記録を行った。運動前野腹側部と同様に、視覚応答活動、運動準備活動、運動実行活動が記録されたが、いずれも空間選択性が小さかった。この結果は、視床網様核は運動に関連する各種イベントに連関して、非選択性の抑制性シグナルを視床-大脳皮質系に送っていることを明らかとした。さらに、こうした特徴は、視床網様核が情報伝達のゲートウェイとして機能することを示唆する。


H28-B30
代:田村 大也
金華山のニホンザルにおける採食技術獲得の社会的影響

学会発表
田村大也 金華山島の野生ニホンザルにおけるオニグルミ採食技術の個体間バリエーション(2017年3月16日) 第64回日本生態学会大会(東京,早稲田).
金華山のニホンザルにおける採食技術獲得の社会的影響

田村 大也

宮城県金華山島に生息する野生ニホンザルを対象にオニグルミ採食行動の調査を実施した。オニグルミを自ら割って採食できる個体の性・年齢を調べた結果、7歳以上のオトナオスは全個体が採食可能であった。5歳以上のワカモノ・オトナメスでは11個体が採食可能であったが、6個体では採食場面が一度も観察されなかった。4歳以下の個体については、オス・メスともに採食場面は一度も見られなかった。以上のことから、オニグルミの採食が可能となる身体的強度には5歳程度で到達すると考えられる。一方で、5歳以上でも採食できないメスが存在したことから、オニグルミを採食するためには身体的強度に加え、採食技術の獲得が必要であると推測された。そこで、オニグルミの採食場面を詳細に観察した結果、外殻を割るための4つの割り型(「粉砕型」「半分型」「片半分型」「拡大型」)が確認された。4つの割り型について、採食時に行われる5つの採食操作を調べたところ、割り型によって操作要素の構成が異なっていた。以上のことから、オニグルミ採食という同一の目的に対し、個体によって異なる複数の採食技術のバリエーションが存在することが明らかになった。


H28-B31
代:南部 篤
協:畑中 伸彦
協:知見 聡美
協:佐野 裕美
大脳―小脳―大脳基底核連関の神経生理学的、神経解剖学的研究
大脳―小脳―大脳基底核連関の神経生理学的、神経解剖学的研究

南部 篤 , 畑中 伸彦, 知見 聡美, 佐野 裕美

 新世界サルであるマーモセットは、遺伝子改変動物の作製に適しているなど今後の実験動物として期待されている。しかに、その神経解剖学的、神経生理学的知見は十分に蓄積されているとは言い難い。そこで本研究では、マーモセットの大脳皮質運動野を中心とした線維連絡を調べることにした。
 マーモセット大脳皮質には脳溝などのランドマークが乏しく、領野の同定には機能マッピングが必須である。マーモセットの頭部を覚醒下で無痛的に固定し、皮質内微小電気刺激(ICMS)、神経活動記録を用いて、大脳皮質運動野を中心として機能マッピングを行った。次に、大脳皮質間、大脳皮質ー脳深部間の線維連絡を調べるために、これらの領域にFluoro-emerald, Fluoro-ruby, AAVベクターなどの神経レーサーを注入した。一次体性感覚野のうち3a野の皮質皮質間結合は、一次運動野(M1)とは異なり体部位を越えているものが多いこと、3a野への視床の起始核はM1と共通していること、M1から線条体への投射は主に被殻に終わることなどが明らかになった。



H28-B34
代:伊藤 浩介
サル類における聴覚事象関連電位の記録

学会発表
伊藤浩介、禰占雅史、鴻池菜保、中田力、中村克樹 無麻酔アカゲザルにおける頭皮上聴覚誘発電位の長潜時成分:記録法と成分同定(2016年10月29日) 第46回日本臨床神経生理学会学術大会(福島県郡山市).

K. Itoh, M. Nejime, N. Konoike, T. Nakada, K. Nakamura Evolutionary elongation of the time window of auditory cortical processing: Comparison of effects of stimulus time parameters on human and macaque scalp auditory evoked potentials(2016.12.30) 5th Joint Meeting of the Acoustical Society of America and the Acoustical Society of Japan( Honolulu, USA).
サル類における聴覚事象関連電位の記録

伊藤 浩介

明らかな適応的意義の見当たらない音楽は、何故どのように進化したのだろうか。本研究は、従来の行動指標の代わりに事象関連電位(ERP)や誘発電位(EP)を用いて、音楽の系統発生を探る試みである。これまでの研究で、マカクザルを対象に、無麻酔かつ無侵襲で頭皮上からERP/EPを記録するための方法論を確立した。これにより、頭皮上の最大19チャンネルから、純音刺激に対する聴覚EPの皮質成分を記録し、mP1, mN1, mP2, mN2, mSPの各成分を世界で初めて同定・命名した(Itoh et al., Hearing Research, 2015)。本年度は、これをもとに、マカクとヒトにおける聴覚処理の種差を違いを検討した。具体的には、純音刺激の持続時間を100ミリ秒から2ミリ秒まで短くしていった際のEP振幅への影響や、和音などの音楽的刺激に対する応答などについて調べた。並行して、マーモセットを対象とした、無麻酔かつ無侵襲の頭皮上脳波記録につき、保定法や電極の検討を行い、2頭から聴覚EPの記録に成功した。


H28-B36
代:東 超
霊長類の各種の組織の加齢変化
霊長類の各種の組織の加齢変化

東 超

加齢に伴う呼吸器系の内臓のカルシウム、燐、マグネシウム、硫黄、鉄、亜鉛など元素蓄積の特徴を明らかにするため、サルの肺の元素含量の加齢変化を調べた。用いたサルは19頭、年齢は新生児から30歳までである。サルより肺を乾燥重量100mg程度採取し、水洗後乾燥して、硝酸と過塩素酸を加えて、加熱して灰化し、高周波プラズマ発光分析装置(ICPS-7510、島津製)で元素含量を測定し、次のような結果が得られた。
① サルの肺の平均カルシウム含量は1.567mg/gであり、いずれも4mg/g以下で、カルシウム蓄積がほとんど生じない内臓であることが分かった。
② 年齢とカルシウム含量の相関係数は0.7135(p=0.0006)であり、有意な正の相関が認められた。この結果は加齢とともに肺のカルシウム含量が徐々に増加することを示している。
③ 年齢と亜鉛含量の相関係数は-0.4746(p=0.004)であり、有意な負の相関が認められた。この結果はサルの肺の抗酸化作用をもつ亜鉛が加齢ととも減少することを示している。



H28-B37
代:三浦 智行
協:水田 量太
協:阪脇 廣美
複合ワクチネーションによるSIVの感染防御効果の解析

論文
Ishida, Y., Yoneda, M., Otsuki, H., Watanabe, Y., Kato, F., Matsuura, K., Kikukawa, M., Matsushita, S., Hishiki, T., Igarashi, T., and Miura, T.(2016) Generation of a neutralization-resistant CCR5 tropic SHIV-MK38 molecular clone, a derivative of SHIV-89.6. J. Gen. Virol. 97:1249-1260.

三浦智行(2016) 霊長類モデルを用いたHIV感染症の予防・治療法開発 公益社団法人日本実験動物学会編: 実験動物感染症と感染症動物モデルの現状:99-105.

学会発表
志田壽利、加藤誠一、保富康宏、松尾和浩、三浦智行、五十嵐樹彦、張険峰、井上誠、成瀬妙子、木村彰方 HIV-1ワクチン開発とその課題(2016年10月22-24日) 第25回日本組織適合性学会(札幌).

姫野愛、石田裕樹、米田舞、松浦嘉奈子、菊川美奈子、三浦智行 中和抵抗性CCR5指向性サル/ヒト免疫不全ウイルス感染アカゲザル血漿における中和能の広域化(2016年10月23-25日) 第64回日本ウイルス学会学術集会(札幌).
複合ワクチネーションによるSIVの感染防御効果の解析

三浦 智行 , 水田 量太, 阪脇 廣美

我々は、エイズの原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の感染モデルとしてサル免疫不全ウイルス(SIV)や、それらの組換えウイルスであるサル/ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)のアカゲザルへの感染動態と免疫応答について長年研究してきた。一方、SIV遺伝子を発現するBCGベクターとワクシニアウイルスベクターを組み合わせて免疫することにより、SIVの感染防御効果が得られることを示唆する予備的結果を得た。平成28年度は、候補アカゲザルより採血し、免疫遺伝学的バックグラウンドの解析を行い、ワクチン候補の感染防御効果を確定する実験に適したアカゲザルを選定し(ワクチン群3頭、対照群3頭)、ウイルス・再生研に移送してワクチン実験を開始した。また、新規に開発した攻撃接種用SHIVとして、臨床分離株と同等レベルの中和抵抗性を有するCCR5親和性SHIVの感染実験のために6頭のアカゲザルを同様に選定しウイルス・再生研に移送して攻撃接種前の基礎データを取得した。ワクチン候補のSIV感染防御効果の確定および攻撃接種用SHIVの攻撃接種ウイルスとしての評価のために平成29年度も感染実験を継続する。


H28-B38
代:伊吹 謙太郎
協:関根 将
協:陣野 萌恵
サル化マウスを用いたサルレトロウイルス病原性の解析
サル化マウスを用いたサルレトロウイルス病原性の解析

伊吹 謙太郎 , 関根 将, 陣野 萌恵

ルレトロウイルスによるサルへの病原性を解析するためには個体レベルでの病態解析が重要となる。今回我々はサル個体の代替動物モデルとしてサル化マウスの利用を考えた。免疫不全マウス(NOGマウス)へ移入するサル造血幹細胞の供給源としてはサル胎盤の有効利用を考え、アカゲザルの胎盤から造血幹細胞(幹細胞)の分離を試み、組織に含まれる細胞群についてフローサイトメトリーにより解析し、幹細胞を含む胎盤細胞の移植によりサル化マウス作製を試みた。本年度、分与していただいたサル胎盤は、アカゲザルの帝王切開時に採取していただいた。この胎盤をコラゲナーゼ処理し得た胎盤細胞中にはCD34陽性細胞群が2.1%存在していることがわかった。さらに、この中には多能性幹細胞(CD38-HLA-DR+)群が5.8%含まれていることがわかった。そこで、NOGマウス3頭(6週令、雌)に胎盤細胞1.0x107個/頭を脛骨骨髄腔内に移植(IBMI法)し、経時的に採血しサル免疫細胞の生着の有無を確認した。移植後14週までの段階では、移植マウスの末梢血中にサル免疫細胞は認められておらず(図1)、胎盤の多能性幹細胞の移植によるサル化マウス作製の可能性については明らかにできなかった。


H28-B39
代:荒川 那海
協:颯田 葉子
協:寺井 洋平
霊長類におけるヒトの皮膚の表現型の特性について

学会発表
Nami Arakawa Comparative Study of Skin Gene Expression Patterns between Humans and Apes (Poster)(2016年7月4日) The annual meeting of the Society for Molecular Biology and Evolution(Queensland's Gold Coast, Australia).

荒川那海 類人猿と比較したヒト特異的皮膚形質の獲得について(2016年8月25日) 第18回日本進化学会(東京工業大学大岡山キャンパス).
霊長類におけるヒトの皮膚の表現型の特性について

荒川 那海 , 颯田 葉子, 寺井 洋平

 類人猿と比較してヒトの皮膚は特徴的である。例えば、表皮と真皮が厚く、またそれらを結合している基底膜の構造も特徴的な波型であり表皮と真皮の結合の強度を高めていると考えられる。これらはヒトで減少した体毛の代わりに皮膚の強度を増して外部の物理的な刺激から体内部を保護していると考えられている。本研究では、これらのようなヒト特異的皮膚形質が進化の過程でどのような遺伝的基盤によって獲得されてきたのか、発現量に焦点を当てた類人猿との種間比較から明らかにすることを目的としている。
 ヒト特異的な皮膚形質に関係している遺伝子を網羅的に把握するために、ヒト5個体、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン各種3個体ずつの皮膚を用いたRNA発現量解析(RNA-seq)を行った。ヒトと類人猿のゲノム配列を参照配列として各々に各個体のRNA-seq配列をマッピングし、どの参照配列でもヒト5個体と類人猿9個体の間で統計的に有意に発現量差のある遺伝子を抽出した。その結果、皮膚の張力や基底膜に関わる複数の遺伝子の発現量がヒト特異的に上がっていた。現在、発現量差を生み出しているヒト特異的変異を含む発現調節領域を分子進化学的解析により明らかにすることを試みている。



H28-B40
代:風張 喜子
野生ニホンザルにおける分派中の行動パターンと社会的・生態学的条件の関係

学会発表
風張喜子 金華山のニホンザルにおける分派の要因(2017/7/15-17) 第33回日本霊長類学会大会(福島市).
野生ニホンザルにおける分派中の行動パターンと社会的・生態学的条件の関係

風張 喜子

ニホンザルは、メンバーがひとまとまりで暮らす凝集性の高い群れを作る。これまでの研究によって、各個体が周囲の個体の動向を把握し自分の行動を調節することで、互いの近接が保たれていることが示唆されている。その一方で、群れの個体が一時的に2つ以上の集団に分かれて行動する分派も、季節や群れによっては頻繁に見られる。互いに近接しあうようにふるまうニホンザルが、なぜ分派するのか、明らかになっていることは少ない。そこで、本研究では、分派直前から合流までの群れ・分派集団の動向から、分派の要因を検討することを目的とした。1年のさまざまな時期に、宮城県金華山島の野生ニホンザルB1群を追跡し、群れ追跡中は、群れの凝集性、目視可能な個体名とその活動内容、音声コミュニケーションの内容などを定期的に把握した。分派が起こった場合はいずれかの集団を追跡し、同様のデータを収集した。2016年度は6例の分派を観察した。今後は、2014年以降の2年間に記録した20例と合わせて、分派開始前と分派中の活動内容や採食品目、音声コミュニケーションの内容を整理し、それぞれの事例について分派の要因を検討する予定である。


H28-B41
代:佐々木 えりか
協:井上 貴史
協:平川 玲子
霊長類における絶滅危惧種の保全技術の確立

論文

学会発表
平川玲子、三輪美樹、石割桂、井上貴史、中村克樹、佐々木えりか ワタボウシタマリンでの非侵襲的受精卵採取(2016年12月12日) 第6回日本マーモセット研究会大会(東京).

関連サイト
公益財団法人実験動物中央研究所 http://www.ciea.or.jp/
霊長類における絶滅危惧種の保全技術の確立

佐々木 えりか , 井上 貴史, 平川 玲子

米国では、動物園の絶滅危惧種である新世界ザルの遺伝資源保全のために動物を交換し、近交化を防ぎつつ個体数を増加させて野生に戻す取り組みが一定の成果を挙げている。しかしながら動物個体の移送、飼育環境の変化は、動物に大きなストレスを与える原因となる。我々は、コモンマーモセット(Callithrix jacchus)を用いて非侵襲的に子宮内から受精卵を回収する受精卵採取技術を開発した。この方法と受精卵の凍結技術、非侵襲的受精卵移植技術を組み合わせれば、動物交換をすること無く、絶滅危惧種である新世界ザルの繁殖を可能にし、近交化を防ぐ事ができるようになる。本研究では、京都大学霊長類研究所において飼育されているワタボウシタマリン(Saguinus oedipus)で非侵襲的受精卵採取技術の確立が可能かを検討した。
ワタボウシタマリンのつがい3ペア(メスの個体番号:So200, So213, So214)を用いた。血中プロゲステロン濃度を測定し、測定値が10ng/mlを超えた日を排卵日と予測した。排卵予測日から約10日後に非侵襲的受精卵採取を4回行った。
So200, So213, So214のいずれの個体もコモンマーモセットの受精卵を採取する際に用いる器具類で子宮内を潅流し、子宮内膜細胞などの潅流物が得られた。またSo213からは、昨年に引き続き脱出胚盤胞期の受精卵採卵1個を得る事ができた。この結果から、コモンマーモセットで確立された非侵襲的受精卵採卵法はワタボウシタマリンにも適応可能であることが示された。本来は、この受精卵の凍結を行なう予定であったが、脱出胚盤胞は、凍結が困難であるため、胚性幹細胞(ES)細胞の樹立を試みた。ワタボウシタマリンの受精卵は、マウス胎児繊維芽細胞上で一定期間の増殖を認めたが、ES細胞株の樹立には至らなかった。



H28-B42
代:森田 尭
言語を支えるルール創発に関する実験的研究
言語を支えるルール創発に関する実験的研究

森田 尭

本研究では、計算理論的複雑性とサルの学習可能性との関連について検討した。順化脱順化実験を用いた先行研究において、サルは2次マルコフモデルで表現可能な系列(例:ABAB)については学習可能だが、3次以上を必要とする系列(例:AABB)についての学習は困難であるという報告がなされている。本研究はサルにおける2・3次マルコフ系列学習の難易度差についてのより深い理解を得るため、タッチパネル上の視覚刺激を用いたオペラント学習実験を実施した。まずニホンザル6頭を3頭ずつ2つの群に分け、それぞれに2次マルコフ系列と3次マルコフ系列を訓練学習させた。系列はタッチパネル上の左右端に表示される正方図形の遷移で表現し、2次マルコフ群には図形を左右交互に提示(左右左右・右左右左)、3次マルコフ群には左左右右・右右左左を提示した。訓練後、学習内容を確かめるためプローブテストを実施した。まず、系列中3または4番目に図形を左右両側提示にし、予測に即した方を思わず触るかどうかを観察しようと試みた。しかし、この手法ではサルが接触動作を止めてしまい、予測動作の有無を検討できる結果は得られなかった。これを受け、系列中3または4番目の図形を予測とは逆側に提示し反応時間の遅延を観測するプローブテストを次に実施した。結果、2次マルコフ群ではプローブ時常に大きな反応時間の遅延(非プローブ時との比較)が見られたのに対し、3次マルコフ群ではそのような規則的な遅れは見られなかった。このことから2次マルコフ群は法則を学習し図形提示位置を正しく予測していたのに対し、3次マルコフ群は少なくとも2次マルコフ群ほどの精度での予測をできていなかったと結論づけられる。これは先行研究の結果と一致する。今後、比較のためにヒトに対する同様の実験を追加で行い、この結果と合わせた上で2017年度中の雑誌投稿を目指す。


H28-B43
代:井上 治久
協:沖田 圭介
協:今村 恵子
協:近藤 孝之
協:江浪 貴子
協:舟山 美里
霊長類神経系の解析とヒト疾患解析への応用
霊長類神経系の解析とヒト疾患解析への応用

井上 治久 , 沖田 圭介, 今村 恵子, 近藤 孝之, 江浪 貴子, 舟山 美里

昨年度は、霊長類神経系の解析とヒト疾患解析への応用の研究目的にむけて、iPS細胞の技術開発に取り組み、STOフィーダーを使用しない培養液が開発されてきたことをうけて、ヒトからフィーダーフリーで樹立したiPS細胞を、複数回継代後、常法により神経系へと分化させ、神経系細胞への分化効率はフィーダーを使用して樹立したiPS細胞と同等であること、STOフィーダーを使用しない条件でのiPS細胞樹立、その後の維持培養がiPS細胞の特性は維持されていることを見出していた。 
 本年度、フィーダーフリーでのチンパンジーiPS細胞樹立に成功した。同時に、フィーダーを使用して樹立されたチンパンジーiPS細胞を譲り受けた。
 今後は、フィーダーを使用して樹立されたチンパンジーiPS細胞のフィーダーフリー化、ヒトで使用できる各種抗体のチンパンジー細胞での検討、チンパンジーiPS細胞の神経系への分化誘導と解析等を行う予定。



H28-B44
代:中務 真人
協:森本 直記
協:野村 嘉孝
協:小林 諭史
大型類人猿における手首・大腿部の可動性の検証

論文
M. Nakatsukasa, S. Almecija, D.R. Begun(2016) The hands of Miocene hominoids In: The Evolution of the Primate Hand (eds.) T.L. Kivell, P. Lemelin, B.G. Richmond, D. Schmitt. New York, Springer:485-514. 謝辞なし

学会発表
中務真人、森本直記、小林聡史、西村剛、荻原直道、諏訪元 ラミダス猿人における手根中央関節の形態学的研究(2016年10月10日) 第70回日本人類学会大会(新潟).
大型類人猿における手首・大腿部の可動性の検証

中務 真人 , 森本 直記, 野村 嘉孝, 小林 諭史

アルディピテクス・ラミダスの有頭骨では、頭の位置が掌側に強く偏位している。このため、ラミダスの手根中央関節ではヒトや現生類人猿をこえる強い背屈が可能だったとする意見がある。残念ながら、骨格標本を用いた背屈域推定は、関節軟骨など軟組織がついた状態での実測値を超えてしまうため、別の視点から、現生、化石霊長類での手根中央関節の運動特徴を評価する試みを行った。CT撮影によりデジタル化した有頭骨と有鈎骨を関節させ、手根中央関節面(月状骨舟状骨関節面:辺縁部は除く)を三次元的に放物曲面で近似した。近似面の主軸が向く方向から関節面の方向性を評価した。ゴリラとチンパンジーを比較すると、ゴリラの方がより手背側に向いた関節面を持つ。これは両者のナックル歩行時の姿勢の違いに対応するように見えるが、中新世類人猿も手背側に向く関節を持ち、これがヒト上科での祖先的状態である可能性が示唆された。撓側・尺側方向と手背・手掌方向への曲面の弯曲度を比較すると、これらは正の相関を示した。ヒトと現生の大型類人猿は化石ヒト上科よりも強い弯曲を示した。これは、現生種がそれぞれ異なる機能への特殊化を果たした結果だと考えられる。


H28-B45
代:木村 嘉孝
協:川出 比香里
飼育下ハヌマンラングールのメスにおける性ホルモン動態調査

学会発表
木村嘉孝・川出比香里・土屋知己・木下こづえ 飼育下ハヌマンラングールのメスにおける性ホルモン濃度動態調査(2017年1月28日) 第61回プリマーテス研究会(公益財団法人日本モンキーセンター(愛知県犬山市)).
飼育下ハヌマンラングールのメスにおける性ホルモン動態調査

木村 嘉孝 , 川出 比香里

宇部市ときわ動物園では、ハヌマンラングール(Semnopithecus entellus)のメス個体を4頭(成熟2・幼齢2)飼育している。当園では、メス個体の性ホルモン動態を把握し、オス個体との同居または人工授精による繁殖を検討している。そのため本研究では、採取が簡易な糞を用いて飼育下におけるハヌマンラングールの性ホルモン濃度動態を酵素免疫測定法によりモニタリングを行った。研究対象個体は宇部市ときわ動物園で飼育する成熟個体2頭(ソフィー:23歳、リンダ:18歳)と幼齢個体1頭(タラ:2歳)とした。その結果、エストラジオール17β(E2)については、成熟個体において100 ng/g~400 ng/g程度までの上昇値が複数回得られた。またプロジェステロン(P4)については、繁殖歴のあるリンダに24.3±0.5日(n=3)の周期的なピーク(4000 ng/g程度)がみられたが、繁殖歴のないソフィーにおいてはピークが見られるものの(6000 ng/g)リンダと類似の日数での周期性は見られなかった。また未成熟個体のタラについても、周期性は見られなかった。本研究ではリンダのP4濃度は、約25日間の周期性を示したが、本来見られるはずのP4濃度の上昇(黄体形成)前のE2濃度の上昇(卵胞形成)が、本研究の測定手法では捉える事ができなかった。これは、全個体のE2濃度動態から餌による影響等が考えられたため、今後詳細に検討していきたいと考える。本研究成果は、1月に開催されたプリマーテス研究会においてポスター発表を行った。


H28-B47
代:今野 歩
協:新田 啓介
マーモセットiPS細胞由来神経細胞を用いたプロモーター評価系の確立

論文

関連サイト
群馬大学大学院医学系研究科 脳神経再生医学分野 http://synapse.dept.med.gunma-u.ac.jp/
マーモセットiPS細胞由来神経細胞を用いたプロモーター評価系の確立

今野 歩 , 新田 啓介

マーモセットの繊維芽細胞から神経細胞を作成し、作成した神経細胞を用いてプロモーター評価系を確立することを目的とした共同研究である。2014年度の共同研究開始当初は繊維芽細胞からiPS細胞を作成し、神経細胞へ分化させる方法を検討していた。しかしマーモセット線維芽細胞由来のiPS細胞は樹立そのものが難しく、種々の条件を検討したが安定した培養には至らなかった。このため、2016年度途中からiPS細胞を介さずに直接繊維芽細胞から神経細胞を作成する方法(direct conversion法)へ戦略を変更した。ヒトの繊維芽細胞を用いたdirect conversion法の論文報告は数本あり、①培地に複数の低分子化合物を加えるだけの方法②繊維芽細胞に転写因子を導入した上で、培地に複数の低分子化合物を加える方法に大別できる。①②の方法とも2種類ずつ、計4種類の方法で神経細胞の作成を試みたところ、いずれの方法でも繊維芽細胞は形態的には神経細胞様に変化した(添付ファイル)。しかし、免疫染色や電気生理学的解析では神経細胞への分化を示す証拠は得られなかった。


H28-B48
代:西村 幸男
協:鈴木 迪諒
意欲が運動制御を支える因果律の解明
意欲が運動制御を支える因果律の解明

西村 幸男 , 鈴木 迪諒

越シナプス神経トレーサーにより、腹側中脳から二シナプス性に脊髄へ投射していることを見出した。その中継核は大脳皮質運動野であると仮説を立てた。腹側中脳を電気刺激すると上肢の筋群に筋活動が誘発された。一方で、一次運動野を薬理的に不活性化したところ、腹側中脳を電気刺激すると、それによって誘発される筋肉活動が減弱した。この結果から、腹側中脳は大脳皮質運動野を介して、脊髄運動ニューロンに投射していると結論付けられた。この成果にて、下記に示す2本の研究発表を行った。
1)Michiaki Suzuki, Ken-ichi Inoue, Hiroshi Nakagawa, Masahiko Takada, Tadashi Isa, Yukio Nishimura, Motivation center in the ventral midbrain directly activates the descending motor pathways via the primary motor cortex. 第39回日本神経科学大会
2)鈴木 迪諒, 井上 謙一, 中川 浩, 高田 昌彦, 伊佐 正, 西村 幸男腹側中脳は一次運動野を介して脊髄運動ニューロンの興奮性を促通する.第10回モーターコントロール研究会.この発表は優秀ポスター賞に選出された。



H28-B49
代:久保田 浩司
協:垣内 一恵
協:高橋 将大
霊長類精原幹細胞の解析
霊長類精原幹細胞の解析

久保田 浩司 , 垣内 一恵, 高橋 将大

 雄の生涯にわたって続けられる精子形成は造精細胞の中で最も未熟な精原細胞集団に含まれるごく一部の精原幹細胞の自己複製によって維持されている。幹細胞は自己複製と分化能という生物活性を有する未分化な細胞であり、その厳密な同定には生物活性を評価しなければならない。マウスの精原幹細胞の幹細胞活性は精子形成不全マウスの精細管内に移植することによって評価可能であるが、霊長類の精原幹細胞の解析において、同種の精子形成不全レシピエントを用いる実験系は技術的および経費的に困難である。異種間の精原幹細胞移植では分化能を評価することはできないものの、自己複製能を評価することができる。本研究は、マーモセットをモデルとして、免疫不全マウスへの精細管内移植による精原幹細胞の同定法を確立することを目的として行われた。霊長類研究所からの新鮮精巣試料は得られなかったため、実験動物中央研究所より供試されたマーモセット精巣試料を用いて、抗マーモセット抗体を作成した。得られた抗体はマウス精巣内でマーモセット精原細胞を特異的に同定した。


H28-B51
代:尾形 光昭
インドネシア国内飼育下テングザルの遺伝構造解析:よこはま動物園への導入個体の選定
インドネシア国内飼育下テングザルの遺伝構造解析:よこはま動物園への導入個体の選定

尾形 光昭

 ボルネオ島の固有種で絶滅危惧種であるテングザルについて、生息域外保全を促進することを目的に、飼育下個体群の遺伝的多様性の解析に取り組んだ。非侵襲的サンプリングによる個体識別および親子判定法の確立を目的に、よこはま動物園の飼育個体の糞便よりDNAを抽出し、Salgado et al (2010)のマイクロサテライトDNA増幅用のプライマーを再調整することで、19セットのマイクロサテライトDNAプライマーを3つのマルチプレックスPCRセットで効率的に解析することが可能となった。
 さらにより多くの飼育下の希少霊長類の遺伝的多様性解析を目的に、よこはま動物園飼育下の霊長類3種(フランソワルトン、アビシニアコロブス、ドゥクラングール)について、テングザルのマイクロサテライトprimerセットの適用を試みた。飼育下個体の糞便よりDNAを抽出、Salgado et alの8個のプライマーセットによるPCRを実施した結果、3個のプライマーセットにおいて、複数のアリルが同一種内から確認できたことから、遺伝的多様性解析に利用可能であることが明らかとなった。



H28-B52
代:栁川 洋二郎
協:永野 昌志
協:髙江洲 昇
協:菅野 智裕
協:田嶋 彩野
協:奥山 みなみ
マカク属における凍結融解精液性状の改善と人工授精技術開発

学会発表
柳川洋二郎、菅野智裕、兼子明久、印藤頼子、岡本宗裕、片桐成二、永野昌志 ペレット法による凍結保存が融解後のニホンザル精液の運動性に与える影響(2016.9.6-8) 第159回日本獣医学会学術集会(藤沢市).

印藤頼子、南晶子、兼子明久、佐藤容、木下こづえ、柳川洋二郎、永野昌志、岡本宗裕 定期的な超音波検査がニホンザル(Macaca fuscata)の性周期に与える影響(2016/7/15-17) 第32回日本霊長類学会大会(鹿児島市).

佐藤容、印藤頼子、木下こづえ、柳川洋二郎、外丸祐介、岡本宗裕 室内個別ケージ飼育下における雌ニホンザル(Macaca fuscata)の尿中ステロイドホルモン濃度について(2016/7/15-17) 第32回日本霊長類学会大会(鹿児島市).

佐藤容、印藤頼子、木下こづえ、柳川洋二郎、外丸祐介、岡本宗裕 室内飼育下の雌ニホンザル(Macaca fuscata)における性周期の特徴(2016/9/16-18) 第22回日本野生動物医学会(宮崎市).
マカク属における凍結融解精液性状の改善と人工授精技術開発

栁川 洋二郎 , 永野 昌志, 髙江洲 昇, 菅野 智裕, 田嶋 彩野, 奥山 みなみ

ニホンザルにおいては人工授精(AI)による妊娠率は低く、特に凍結精液を用いたAIによる産子獲得例がない。そのため、精液の凍結保存法改善とともに、メスの卵胞動態を把握したうえでAIプログラムの開発が必要である。
ニホンザル雄4頭から電気刺激により精液を採取し、Tes-Tris Egg-yolk液で希釈後2分割し、1時間で4℃に冷却しグリセリンを10%含む二次希釈液で2倍希釈後、もしくは二次希釈後に1時間で4℃に冷却後に凍結した。凍結は250 μlストローに精液を封入後液体窒素液面4cmで実施、もしくはドライアイス上に200、100、50、25 μlの精液を滴下して4種のペレットを作製した。融解直後および融解3時間後に運動精子率および高活力精子率を評価した。
融解後の運動性は凍結前の作業工程による差はなかった。融解直後の運動精子率は200および100 μlペレット(それぞれ20.6および20.0%)においてストローおよび25 μlペレット(それぞれ8.2および7.6%)に比べて高かった(p<0.05)が、高活力精子率に凍結方法間で差はなかった(1.4~5.8%)。融解3時間後の運動精子率に凍結方法間で差はなかったものの(1.0~6.1%)、高活力精子は200 μlペレット(1.6%)において高い傾向があった(p=0.05)。
一方、経産および未経産メス各1頭において月経後11日目に新鮮精液を用いたAIを実施した。今後妊娠の確認を実施予定である。



H28-B53
代:Dong-Pyo Jang
協:南本 敬史
Decoding Global Networks in Tourettism using PET and Electrophysiological methodologies
H28-B56
代:清水 貴美子
協:深田 吉孝
霊長類における概日時計と脳高次機能との連関

論文
Kimiko Shimizu, Yodai Kobayashi, Erika Nakatsuji, Maya Yamazaki, Shigeki Shimba, Kenji Sakimura& Yoshitaka Fukada1(2016) SCOP/PHLPP1b mediates circadian regulation of long-term recognition memory Nature communications 7:12926.

Jun J. Nakano, Kimiko Shimizu, Shigeki Shimba & Yoshitaka Fukada(2016) SCOP/PHLPP1b in the basolateral amygdala regulates circadian expression of mouse anxiety-like behavior Scientific reports 6:33500.
霊長類における概日時計と脳高次機能との連関

清水 貴美子 , 深田 吉孝

 我々はこれまで、齧歯類を用いて海馬依存性の長期記憶形成効率に概日変動があることを見出し、SCOPという分子が概日時計と記憶を結びつける鍵因子であることを示してきた (Shimizu et al. Nat Commun 2016)。本研究では、ヒトにより近い脳構造・回路を持つサルを用いて、SCOPを介した概日時計と記憶との関係を明らかにすることを目的とする。
 ニホンザル6頭を用いて、苦い水と普通の水をそれぞれ飲み口の色が異なる2つのボトルにいれ、水の味と飲み口の色との連合学習による記憶効率の時刻依存性について実験をおこなっている。各個体あたり、朝/昼/夕の何れかに試験をおこない、学習から24時間後にテストを行う。それぞれのボトルの水を飲んだ回数をビデオ観察し、正解と不正解の回数の比により、記憶の判断をおこなった。各時刻3回ずつ6頭の記憶テストデータを解析した結果、昼に最も記憶効率が高く、夕方が最も記憶効率が低いという結果が得られた。記憶効率の時刻変動にSCOPが関わるかどうかを検討するため、6頭のうちの2頭を使って、SCOP shRNA発現レンチウイルスまたはコントロールレンチウイルスのいずれかを海馬に投与した。レンチウイルスの投与は、統合脳システム分野の高田昌彦教授・井上謙一助教のご協力により行った。投与手術からの回復を待ち、現在、記憶効率の測定を進めている。また、実験室内でのニホンザルの飲水行動パターンについて基礎的データを得るため、5分間隔で飲水量を数日間にわたり連続測定できる装置を導入した。この装置を用いて、飲水行動の日周リズムの解析を始めた。



H28-B57
代:林 真広
協:河村 正二
新世界ザル苦味受容体TAS2Rに対するリガンド感受性多様性の検証
新世界ザル苦味受容体TAS2Rに対するリガンド感受性多様性の検証

林 真広 , 河村 正二

味覚受容体遺伝子の進化は食性の影響を受けると考えられている。中でも苦味受容体(TAS2Rs)遺伝子群は有毒物の選択・忌避応答に関与すると考えられており、ヒト、チンパンジー、ニホンザルをはじめとする多くの狭鼻猿類で、TAS2Rsのリガンド感受性が評価・比較されている。新世界ザル類は食性が多様であるため、味覚受容体遺伝子の進化研究に適しているが、これまで多くの種での比較解析は行われてこなかった。そこで本研究は新世界ザル類のサキ亜科を除く他すべての亜科[セマダラタマリン(マーモセット亜科)、アザレヨザル(ヨザル亜科)、フサオマキザル(オマキザル亜科)、チュウベイクモザル(クモザル亜科)、マントホエザル(ホエザル亜科)、ダスキーティティ(ティティ亜科)]に対し、TAS2R16とTAS2R38のリガンド感受性を培養細胞発現系を用いたカルシウムイメージングにより評価した。その結果、TAS2R16はフサオマキザルのリガンド感受性が最も高い一方で、同じオマキザル科のマーモセット亜科では感受性がないことが明らかとなった。また、TAS2R38ではTAS2R16とは逆にマーモセット亜科のセマダラタマリンが最も高い感受性を持つ一方で、フサオマキザル、アザレヨザルでは感受性がなかった。さらに、種間でTAS2R16、TAS2R38のアミノ酸配列比較を行うことで、これまでの狭鼻猿類の研究からは報告されていなかったサイトがリガンド感受性に重要であることが示唆された。これらの結果は、苦味受容体の感受性が、近縁の種間でも大きく異なり、アミノ酸変化によってダイナミックに多様化しながら進化してきたことを示唆する。


H28-B58
代:山村 研一
協:荒木 喜美
協:松本 健
協:藤江 康光
チンパンジーNa?ve iPS細胞の作製
チンパンジーNa?ve iPS細胞の作製

山村 研一 , 荒木 喜美, 松本 健, 藤江 康光

本研究ではnaïve型の性状を有するciPS細胞とマウス胚との異種キメラの生着法の確立を目的とし、以下の2つの研究を進めた。
(1)naïve iPS細胞のインジェクションによる in vitro キメラアッセイ
 赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子を導入したnaïve ciPS細胞株(NF6, Kenny)を、培養用培地KSOM(Potassium[K] Simplex Optimized Medium)で培養しているマウス胚盤胞にインジェクションした。その後、培養を行い導入した細胞の挙動を観察した。24時間および48時間後の経過観察にて、内部細胞隗(ICM)と栄養外胚葉に赤色シグナルが認められた。しかし培養5日目までに全てのシグナルが消失した。これらの結果から、ciPS はマウス胚体内には組込まれず、生着能力は不十分であると考えられた。
(2)誘導型細胞接着因子(E-cadherin)の遺伝子導入における細胞生着の促進
チンパンジー細胞とマウス細胞との接着を促進させるため、Doxycycline (Dox)誘導型 E-cadherinトランスポゾンベクターをエレクトロポレーションを用いてciPSに導入した。現在ベクターが導入されたチンパンジーiPS細胞株を選出し、解析中である。



H28-B59
代:筒井 健夫
協:小林 朋子
協:松井 美紀子
マカク乳歯歯髄細胞移植による歯髄再生の評価
マカク乳歯歯髄細胞移植による歯髄再生の評価

筒井 健夫 , 小林 朋子, 松井 美紀子

 平成28年度は、ニホンザル3例に対して、歯髄細胞の採取および初代培養と継代培養を行い、その後同ニホンザルへ歯髄細胞三次元構築体を移植した。歯髄細胞は、上顎左右乳中切歯より歯冠側1/2から1/3の歯髄を採取し、生活歯髄切断法を応用し処置を行った。採取した歯髄は、初代培養および継代培養から歯髄細胞三次元構築体の作製を行い、約5ヶ月後に同個体の上下顎右側乳犬歯歯髄腔内へ移植した。その際、上下顎右側乳犬歯は歯質を切削し、歯冠側1/3程度の歯髄除去処置を行った。歯髄移植歯は、歯髄再生について解析を行うため移植2ヶ月後に抜歯し固定を行った。歯髄を採取した上顎左右乳中切歯と歯髄細胞三次元構築体の移植後、および抜歯前のエックス線撮影により歯冠側と歯髄腔にエックス線不透過像が確認され、現在解析を進めている。また、ニホンザル、アカゲザル、ヒトの乳歯およびヒト永久歯それぞれの歯髄細胞の細胞特性について細胞倍加時間、細胞周期、テロメラーゼ活性、石灰化能および脂肪分化能を比較検討した。アカゲザルの乳歯歯髄培養細胞では培養日数1000日以上でDoubling level(DL)が300以上まで継続培養され、約DL40と約DL80で増殖が停止するクライシスが観察された。細胞周期解析では、細胞倍加時間はそれぞれDL57が72時間 、DL303が38時間であり、ニホンザル乳歯歯髄培養細胞の細胞倍加時間は24時間と28時間、ヒト乳歯歯髄細胞で24時間、ヒト永久歯歯髄細胞では23時間であった。アカゲザル乳歯歯髄培養細胞のS期の細胞の割合がDL57では30.0%、DL303では13.7%であり、DL303では、DL57と比較してテロメラーゼの活性が高く、いずれの細胞も石灰化と脂肪分化両方の多分化能を示した。これらの結果は、日本口腔組織培養学会学術大会・総会にて発表した。


H28-B60
代:外丸 祐介
協:信清 麻子
協:畠山 照彦
協:吉岡 みゆき
一卵性多子ニホンザルの作製試験

学会発表
外丸祐介 霊長類における遺伝的相同個体の作製技術について(2016年5月20日) 日本実験動物学会総会(ミニシンポジウム5)(川崎).

外丸祐介, 信清麻子, 吉岡みゆき,畠山照彦,印藤頼子,兼子明久,岡本宗裕,今井啓雄,平井啓久 霊長類における受精卵と精子の凍結保存(ポスター)(2016年11月10日) Cryopreservation Conference 2016(岡崎).

外丸祐介, 信清麻子, 吉岡みゆき,畠山照彦,印藤頼子,兼子明久,岡本宗裕,今井啓雄,平井啓久 霊長類における受精卵と精子の凍結保存(口頭)(2016年11月11日) Cryopreservation Conference 2016(岡崎).

Sotomaru Y. Techniques for creating genetically identical animalsin the non-human primates(2016年3月16日) 2017 Asia-Oceania Regional Meeting for Marmoset Research(Seoul, Korea).
一卵性多子ニホンザルの作製試験

外丸 祐介 , 信清 麻子, 畠山 照彦, 吉岡 みゆき

本課題は、動物実験に有用な一卵性多子ニホンザルの作製を目指すものであり、これまでに体外培養系卵子・受精卵の操作・作製に関する手法の確認を進めながら、分離受精卵からの個体作製試験に取り組んできた。平成27年度には、凍結保存した分離受精卵の移植試験により、死産ではあったが妊娠満期のニホンザルを得ることに成功している。平成28年度では、生存産子を得ることを目標に引き続き移植試験を実施し、またカニクイザルについてニホンザル受精卵の移植レシピエントとしての有用性の検討を開始した。3回の実験実施により計6頭の雌ニホンザルについて採卵処置を行い、得られた卵子を用いて体外受精卵を作製した後、一部の受精卵を用いて2分離および4分離受精卵を作製した。これらの受精卵および分離受精卵について体外培養により桑実胚・胚盤胞まで発生させた後、霊長類研究所の雌ニホンザル1頭、ならびに滋賀医科大学の雌カニクイザル17頭をレシピエントとして移植試験を実施し、現在は経過観察中である。妊娠が成立すれば、平成29年度前半に妊娠満期を迎える予定である。


H28-B61
代:大橋 順
協:中 伊津美
霊長類におけるメラニン合成関連遺伝子の分子進化学的解析
霊長類におけるメラニン合成関連遺伝子の分子進化学的解析

大橋 順 , 中 伊津美

ヒトの皮膚色は、環境に適応すべく進化した最も多様な形質の一つである。出アフリカ以降、非アフリカ人(ヨーロッパ人やアジア人)の皮膚色は明るく変化したが、アフリカ人は暗い皮膚色を保っている。両者の祖先は5~7万年前に分岐しており、わずか数万年間でこれほどの違いを生んだ進化過程については十分に理解されてはいない。メラニン合成経路で働く分子をコードする幾つかのヒト遺伝子では、明るい皮膚色と関連するアミノ酸変異が同定されており、非アフリカ集団で正の自然選択が作用してきたことが分かっているが、これらの多くは機能喪失型変異であると推察される。我々は、ヒトを対象とした関連解析により、ATRN遺伝子中の多型と皮膚色との関連を見いだしている。そこで、チンパンジーATRN遺伝子の配列解析と種内多型探索を行い、ヒトとチンパンジーとの分岐後に、メラニン合成経路で働く分子をコードする遺伝子に作用してきた自然選択の有無と強度を調べたいと考え、本研究を計画した。ヒトとチンパンジーのATRN遺伝子の25個のエクソンを増幅するためのプライマーを設計したが、5個のエクソンが増幅しなかったため、現在はプライマーの改良を進めている。


H28-B62
代:Laurentia Henrieta Permita Sari Purba
Functional characterization of bitter taste receptors in Asian Leaf-eating Monkeys

論文
Laurentia Henrieta Permita Sari Purba, Kanthi Arum Widayati, Kei Tsutsui, Nami Suzuki-Hashido, Takashi Hayakawa, Sarah Nila, Bambang Suryobroto, Hiroo Imai(2017) Functional characterization of the TAS2R38 bitter taste receptor for phenylthiocarbamide (PTC) in colobine monkeys Biology Letters 13: 20160834.

学会発表
Laurentia Henrieta Permita Sari Purba, Kanthi Arum Widayati, Sarah Nila, Kei Tsutsui, Nami Suzuki-Hashido, Takashi Hayakawa, Bambang Suryobroto, Hiroo Imai Functional characterization of TAS2R38 bitter taste receptors to Phenylthiocarbamide (PTC) in Colobine Monkeys(5-9 June 2016) 17th International Symposium on Olfaction and Taste (Japan).

Laurentia Henrieta Permita Sari Purba, Kanthi Arum Widayati, Kei Tsutsui, Nami Suzuki-Hashido, Takashi Hayakawa, Sarah Nila, Bambang Suryobroto, Hiroo Imai Functional characterization of bitter taste perception in leaf-eating monkeys(30-31 January 2016) The 60th Primates Conference (Japan).
Functional characterization of bitter taste receptors in Asian Leaf-eating Monkeys

Laurentia Henrieta Permita Sari Purba

TAS2R38 is one of TAS2R multigene families that encode receptor to recognize bitter from several N-C=S compounds including PTC. TAS2R38 had been identified in many primates. TAS2R38 in human, chimpanzee, Japanese macaques exhibit intra-species polymorphism that lead to different behavioural response of individual. Taster individual show aversion to PTC, in contrast to tolerant in non-taster individuals.
Leaf-eating monkeys (Subfamily Colobines) are unique among primates because their diet mostly consisted of leaves that perceptually tasted bitter to human. We conducted preliminary behavioral experiments of PTC-tasting on leaf-eating monkeys kept in Ragunan Zoo. The result indicated that nine individuals of genera Trachypithecus, Presbytis and Nasalis were all less sensitive to PTC compared with macaque.
Genomic DNA of leaf-eating monkey was obtained from fecal samples. After DNA extraction, TAS2R38 gene region was specifically amplified using standard PCR reaction. The DNA sequences of amplicons showed that there are some polymorphisms in the TAS2R38 genes of the monkeys. By calcium imaging methods, we found the cell expressing TAS2R38 receptors of leaf-eating monkeys have lower respond to PTC compared to macaque. Direct mutations in four amino acids of TAS2R38 of macaque to mimic colobines confirmed that those mutations in colobines are responsible to the decreased sensitivities to PTC.



H28-B63
代:益田 岳
サーモグラフィーによる上空からのマカク個体の位置推定技術開発
サーモグラフィーによる上空からのマカク個体の位置推定技術開発

益田 岳

小型無人機内蔵GPSからリアルタイム位置情報(位置、高度など)を記録しながら搭載した安価なサーモグラフィーでマカクの個体の位置情報をフィールドにおいて簡便かつ俊足に得る手法を開発した。また本手法による調査がサルへ過剰なストレスを与えないかどうかを確認できた。結果、サル群への本手法の有効性が実験的に確認された。また、環境条件を整えた状態での知見を得ることができたので、今後の自然環境下での同手法による調査手法の先鋭化について、効率の良い開発の方向性をも得ることができた。

関連学会発表
Gaku MASUDA "Vector Borne Disease Control and Survey", Lecture at the National Institute of Malariology Paracitology and Epidemiology, Vietnam ,5th Dec 2016

益田岳 『樹上の感染者を追う 蚊媒介性感染症研究へのドローンの活用』ドローンのフィールド活用研究会、総合地球環境学研究所,2017年4月22日


H28-B65
代:William Sellers
The Comparative Biomechanics of the Primate Hand

学会発表
Sellers WI et al Lateral stability and footfall sequences in primate locomotion(2016) European Society for the Study of Human Evolution(Madrid, Spain).

Hirasaki E, Sellers WI. Markerless 3D motion capture for animal locomotion studies(30-31 Jan, 2017) The 50th Anniversary Symposium of KUPRI(Inuyama).
The Comparative Biomechanics of the Primate Hand

William Sellers

This project aimed to compare the functional biomechanical implications of the manipulation and locomotor uses of the hand in Japanese macaques. Building on the work we have carried out in previous years we used our markerless motion capture system in an 8 camera configuration to record the monkey's finger movements under laboratory conditions. We provided two locomotor tasks and a single tool use task, and used two monkeys as participants. The first locomotor task was horizontal walking on a flat surface to measure the finger movements in a situation where grip did not occur. The second locomotion task was horizontal walking on a rigid pole which the monkey needed to grasp firmly for stability. The tool use task required the monkey to pull on a small cylinder with the same diameter as the horizontal pole in order to retrieve a small food item. The orientation of the cylinder was altered during different repeats of the experiment. Building on previous experience we changed the camera configuration such that we had 2 groups of 4 cameras rather than a single arc of 8 cameras. This greatly increased the angular range of reconstruction which was necessary since we wanted to get measurements on as many fingers as possible in a single experiment. However the Agisoft Photoscan Pro software was unable to merge the data from the two sets of cameras automatically. The solution was to use printed markers within the experimental field of view. These were able to align the two camera groups with minimal manual intervention, and the end result was improved 3D coverage of the reconstruction volume. The monkeys were trained to perform all experiments and this aspect worked extremely well. Both animals were perfectly happy to make multiple repeats. More difficult was the requirement to zoom in tightly around the hand. In the tool use cases this was not a major problem since the position of the tool was defined by the experimenter. However for the locomotor cases this meant that the monkeys needed to touch the substrate in very specific locations that needed to be decided before the experiment began because all 8 cameras needed to be focussed in on the same place. On many occasions, the animals chose to put their hands down in different locations and thus these trials could not be used. However all in all we managed to collect a good amount of data for all the experimental conditions and analysis of this is ongoing. Initial results have been presented in papers at three conferences listed below, and the overall analysis will be published in a suitable journal when it has been completed.




H28-B66
代:Bambang Suryobroto
Genomic Evolution of Sulawesi Macaques
Genomic Evolution of Sulawesi Macaques

Bambang Suryobroto

The island of Sulawesi (Central Indonesia) lays on east of Borneo that is the easternmost limit of Asia/Oriental zoogeographic realm. It has never had permanent land-bridges with Sunda Land which necessitates the Oriental animals to cross Wallace Line in migrating to Sulawesi. The Sulawesi macaques are thought of as having an ancestor that was a member of the stock that will eventually lead to silenus-sylvanus species group. Having migrated into the three-arm peninsular Sulawesi Island, they differentiated to become seven morphologically distinct species in seven allopatric areas. There are three interrelated issues concerning the evolution of Sulawesi macaques; that is, taxonomic status, hybrid population problem and phylogenetic relationship. Specific status of the seven morphs was generally adopted; however, when hybrid specimens from borderland between contiguous species were found, their biological species delimitation (sensu Mayr 1964) was thought to be compromised. Furthermore, in the absence of fossil record, their phylogenetic relationship is not yet resolved. In contribution to these evolutionary questions, we determined the exome sequences of Macaca tonkeana and M. hecki that live side-by-side in the central area of the Island and had been recorded to have hybrid populations in their borderland. The evolutionary relationship of the two species may reflects the model of speciation with gene flow; that is, despite considerable gene flow, we may expect that there are "genomic speciation islands" that contain genes responsible for local adaptation and reproductive isolation. Specifically, we would like to know what are the genes in their genomic islands of speciation. In this preliminary analysis, we found that there are at least six genes that have fixed differences between the two species. The genes function in immune system, obesity risk and structural/growth characteristics that may be related to species differentiation.


H28-B67
代:浅川 満彦
協:萩原 克郎
福島県に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生虫症および感染症に関する疫学調査

論文
渡辺洋子,三觜 慶,石井奈穂美,名切幸枝,羽山伸一,中西せつ子,近江俊徳,岡本宗裕,浅川満彦(2016) 青森県下北半島に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生蠕虫保有状況 青森自然誌研究(21):87-90. 謝辞謝辞あり

三觜 慶, 渡辺洋子,石井奈穂美,名切幸枝,羽山伸一,中西せつ子,近江俊徳,岡本宗裕,浅川満彦(2017) 福島市に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生蠕虫保有状況-特に下北半島個体群との比較に注目して 青森自然誌研究 22:印刷中.

学会発表
立本完吾, 川村卓史,石井奈穂美,名切幸枝,羽山伸一,中西せつ子,近江俊徳,浅川満彦,萩原克郎 東北地方のニホンザル(Macaca fuscata)におけるボルナ病ウイルス抗体保有状況(2016年9月16日~18日) 第22回日本野生動物医学会大会(宮崎大学).

関連サイト
酪農学園大学リポリトジ高頻度DL著者 http://clover.rakuno.ac.jp/dspace/access-by-authorext
福島県に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生虫症および感染症に関する疫学調査

浅川 満彦 , 萩原 克郎

ニホンザル(Macaca fuscata)は、基幹作物である果樹への農業被害や家屋への侵入等、地域住民との軋轢が生じていることから、各地の保護管理計画などに基づき有害捕獲されている。そこで、演者らは捕獲個体を用い、特に、情報が極めて少なかった東日本における寄生蠕虫相の調査を実施し、青森県下北半島、福島県福島市および千葉県房総半島の結果が公表された(三觜ら, 2017; 里吉ら, 2004; 渡辺ら, 2016)。本発表ではこれまでに判明した蠕虫相の概要を紹介し、他地域における先行研究の結果と比較をしつつ東日本における構成種の特色にいて論考した。また、この国内に外来種として定着したタイワンザル(Macaca cyclopis)および輸入検疫時に斃死したカニクイザル Macaca fascicularisから検出された蠕虫検査の結果も勘案しつつ(浅川・巖城, 2011; 浅川ら, 印刷中)、ニホンザルにおける蠕虫相への国外産マカク属の人為的移入による影響についても言及した。興味深い特徴として、直接発育をする線虫類のTrichuris sp.とStrongyloides fuelleborniは上記3地域で検出されたこと、吸虫類 Ogmocotyle ailuriが東北地方2県でのみ見出されたこと、しかし、間接発育をする線虫類のStreptopharagus pigmentatusが東京都大島で定着したタイワンザルで認められ、東北では見出されなかったこと、直接発育をする線虫類のOesophagostomum属腸結節虫と条虫類Bertiella studeriは福島産ニホンザルと輸入されたカニクイザルで認められたことなどが判った。これら蠕虫類の地理的分布と生活史との関連性(中間宿主動物の生息状況など)は必ずしも明確には出来なかったので、別要因も含め今後の検討課題が浮き彫りにされた。


H28-B68
代:保坂 善真
協:割田 克彦
サル雌性生殖器由来幹細胞の分離とその機能解析の試み
サル雌性生殖器由来幹細胞の分離とその機能解析の試み

保坂 善真 , 割田 克彦

実験初年度の平成28年度は、月経血(ニホンザル6個体)と胎盤(アカゲザル1個体)を使用した。当初の計画では、麻酔をしたサルの腟部を洗浄したものを回収し使用する予定であったが、無麻酔下の採取(外陰部に現れた月経血をスポイトで吸って回収)が可能であることが分かった。回収した月経血は、培地(DMEM-2%FBS/2%抗生剤)に混和してから申請者の研究機関(鳥取大学)に常温で送付後(犬山-鳥取の輸送時間は1日以内)に播種した。播種後数日間、培地(DMEM-20%FBS/2%抗生剤)を交換しながら、培養皿に付着した細胞を月経血由来幹細胞として分離を試み、この条件で、非侵襲的かつ安定的に(コンタミなしで)細胞を分離可能であることを明らかにでき、スムーズに増殖させることが可能であった。初年度の実験計画は月経血由来幹細胞から細胞性状の検索と、複数の組織細胞への分化を試みる予定であったが、月経血から幹細胞の最適な分離条件の設定に時間を要したため、細胞の増殖能の検索と骨芽細胞と脂肪細胞への分化実験に留まった。


H28-B69
代:Kim Heui-Soo
協:Hee-Eun Lee
"Functional genomics of HERV-K,R LTR elements in primates"
"Functional genomics of HERV-K,R LTR elements in primates"

Kim Heui-Soo , Hee-Eun Lee

Human endogenous retrovirus (HERV) is classified as long terminal repeat (LTR) retrotransposons and they integrated into the genome during primate evolution. HERV-K is about 9.5kb long with two long terminal repeats (LTRs) and four main viral genes called Gag, Pro, Pol, and Env, and it is the most active family of HERV in human genome which is capable of encoding functional retroviral gene products. The mRNA expression of HERV-K differed between various tissues of all humans and primates. Additionally, the expression of protein level was checked to find out both expressions of mRNA and protein level matches. From this study, the results represents that even from various tissues of each species varies, and the expression between the various species’ tissues shows different expression patterns. Therefore, analyzing the epigenetic aspects from genomic level of various monkeys will be continued for the further study.


H28-B70
代:今村 拓也
種特異的ノンコーディングRNAによるほ乳類脳神経機能分化
種特異的ノンコーディングRNAによるほ乳類脳神経機能分化

今村 拓也

本課題は、ほ乳類脳のエピゲノム形成に関わるnon-coding RNA (ncRNA)制御メカニズムとその種間多様性を明らかにすることを目的としている。本年度は、チンパンジーiPS細胞と神経幹細胞のトランスクリプトーム及び、ゲノムのトポロジカルドメイン情報の取得に成功した。加えて、これまでの過年度の共同利用において既得の霊長類・げっ歯類ncRNA情報(DDBJアクセション番号DRA000861,DRA003227,DRA003228など)をもとにncRNAの霊長類進化における機能を解析し、獲得ncRNAが遺伝子発現スイッチオンに確かに寄与していることを明らかにした(Uesaka et al, BMC Genomics, 2017)。これらncRNAによるトポロジカルドメイン変化について現在解析中である。


H28-B71
代:中村 紳一朗
協:宮沢 孝幸
SRVのマカク属異種感染における病理組織学的研究

学会発表
吉川禄助、坂口翔一、中川 草、中村 紳一朗、阪脇廣美、兼子明久、三浦智行、鈴木樹理、岡本宗裕、宮沢 孝幸 サルレトロウイルス5型感染によるニホンザル血小板減少症(2016年9月8日) 第159回日本獣医学会(神奈川県藤沢市).

岡本宗裕、吉川禄助、阪脇廣美、鈴木樹理、坂口翔一、兼子明久、中村紳一朗、三浦智行、宮沢孝幸 サルレトロウイルス 5 型 (SRV-5) のニホンザルへの感染実験(2016年7月16日) 第32回日本霊長類学会大会(鹿児島県鹿児島市).
SRVのマカク属異種感染における病理組織学的研究

中村 紳一朗 , 宮沢 孝幸

サルレトロウイルス5型(SRV5)に感染したときのウイルスの組織学的分布は不明な点が多い。またSRV5のマカク属サル種の間での病態の違いが、ウイルスの組織間分布としてどのように出現するか、明らかではない。そこでSRV5の組織学的局在を明らかにするため、共同研究者である宮沢孝幸博士が作製したSRVのカプシドを認識する抗体(a-SRV-CA)、エンベロープを認識する抗体(a-SRV-ENV)を用いた免疫染色を行った。材料にはSRV5を実験感染したニホンザル2例、SRV5が自然感染したカニクイザル3例(リンパ腫、慢性肺炎、慢性腎炎を示す)の各種臓器を用いた。また陰性対照として滋賀医科大学で飼育されていたニホンザルおよびカニクイザル各1例の各種臓器を用いた。
 a-SRV-CAはSRV5陽性のニホンザルならびにカニクイザルの消化管、呼吸器の腺組織の細胞質に陽性像を認めたが、同時に陰性対照として用いたニホンザルとカニクイザルの腺組織にもやや弱い陽性像を認めた。a-SRV-ENVはいずれの例においても明瞭な陽性像を認めなかった。a-SRV-CAで確認された像は非特異反応と考え、現在、宮沢博士が抗原のデザインを改良した抗体を開発中であり、引き続き新規抗体を用いた分布、局在に関わる検討を進めていく予定である。



H28-B72
代:一柳 健司
霊長類におけるエピゲノム進化の解明
霊長類におけるエピゲノム進化の解明

一柳 健司

我々は霊長類におけるゲノム進化とエピゲノム進化の関係を解明するため、霊長類各種の組織におけるDNAメチル化の比較解析を行ってきた(Fukuda et al. 2013, J. Human Genet.58:446-454、Fukuda et al. 投稿中)。本年度は過年度に提供いただいたテナガザル、チンパンジー、ゴリラの精巣サンプルからRNAを抽出し、小分子RNAのライブラリーを作成し、シーケンシングを行った。ゴリラを除いて、それぞれ約1000万個ほどの配列を取得することができたので、現在、その詳細を解析しているところである。


H28-B73
代:長谷 和徳
協:伯田 哲矢
協:林 祐一郎
自律的に歩容遷移を行うマカク四足歩行モデルの開発

学会発表
伯田哲矢,長谷和徳,平崎鋭矢,林祐一郎 ニホンザル四足歩行シミュレーションによる歩行パターンの評価(2016年11月) 第37回バイオメカニズム学術講演会(富山県射水市).

吉田真,リザドープ,長谷和徳 想像上の二足歩行動物の歩容におけるスケール効果(2016年11月) 第37回バイオメカニズム学術講演会(富山県射水市).

的場斗吾,長谷和徳,林祐一郎,金承革,吉川輝 神経筋骨格モデルを用いた筋の力学特性と歩容の関係性の分析(2016年11月) 第37回バイオメカニズム学術講演会(富山県射水市).

Yang Feng; Kazunori Hase, Yuichiro Hayashi, Tatsuhiko Yano Biomechanical Analysis of Japanese Traditional Nanba-Style Walking Using A 3D Inverse Dynamics Model(2016年7月) XIV International Symposium on 3D Analysis of Human Movement(Taipei, Taiwan).
自律的に歩容遷移を行うマカク四足歩行モデルの開発

長谷 和徳 , 伯田 哲矢, 林 祐一郎

四足歩行を行う際,霊長類は一般的な四足哺乳類とは異なり,前方交叉型と呼ばれるロコモーション・パターンを示す.本研究では,関節動態や神経系の運動制御機構などを考慮し自律的に歩容遷移可能なマカク類の四足歩行のシミュレーションモデルを作成し,さらに斜面などの力学的環境変化についても計算モデルとして表し,身体力学系を含む力学的環境変化と歩行遷移との関係を計算論的に明らかにすることを試みた.霊長類研究所の放飼場等で収集したニホンザルのロコモーションデータや,歩容の特徴の知見を参照し,四足歩行の運動制御モデルの構築を行った.制御系モデルとして,従来の脚位相制御機構に体重心に応じた位相調整が可能な仕組みを導入した.また,地面の傾斜角度に応じて足先軌道の座標系の角度を変更できるようにした.その結果,四足歩行時の重心が他の哺乳類より後方に位置するというニホンザルの身体特性をモデルに与えた場合、後方交叉型歩行よりも前方交叉型歩行で移動仕事率が低くなることが明らかになった.また,前方交叉型歩行では,前肢よりも後肢の負担が大きくなることも示された.


H28-B74
代:久世 濃子
野生オランウータンの繁殖生理と栄養状態に関する生理学的研究

学会発表
久世濃子,金森朝子,山崎彩夏,田島知之,Renata Mendonca,Henry Bernard,Peter T. Malim,幸島司郎 野生ボルネオ・オランウータンの妊娠と果実生産量の関係(2016年7月17日) 第32回日本霊長類学会(鹿児島県鹿児島市).
野生オランウータンの繁殖生理と栄養状態に関する生理学的研究

久世 濃子

大型類人猿の一種、オランウータン(Pongo sp.)がどのような栄養状態で発情・妊娠しているのかを明らかにすることを目的に、尿中のホルモン代謝産物濃度を測定した。2009~2014年に、マレーシア国サバ州ダナムバレイ森林保護区(ボルネオ島)で採取し、冷凍保存したオランウータンの尿サンプル(計185検体うち28年度に測定したのは114検体)中のインスリン分泌能指標物質(C-Peptide)濃度について、エンザイムイムノアッセイ法(Mercodia社製 Ultrasensitive C-Peptide ELISAキット)を用いて測定した。測定の結果、フランジ雄(平均10.5 pmol/Crmg、N=20)や未成熟個体(平均22.8 pmol/Crmg、N=25)に比べて、授乳中(平均6.5 pmol/Crmg、N=39)や妊娠中(平均3.8 pmol/Crmg、N=11)の雌ではやや低い、という結果が得られた。発情している可能性があった非授乳中の雌では1サンプルしか測定できなかったが、C-Peptide濃度 は最も高い値だった(777.9 pmol/Crmg)。C-Peptideは個体の栄養状態を反映し、栄養状態が良いと高値となる。従って妊娠や授乳によって栄養的に負荷がかかっている雌よりも、発情中の雌は栄養状態が良い可能性がある。


H28-B75
代:齋藤 慈子
マーモセットにおける養育個体のオキシトシン濃度
マーモセットにおける養育個体のオキシトシン濃度

齋藤 慈子

神経ペプチドであるオキシトシンは、げっ歯類の研究から、社会的認知・行動に関わっていることが知られているが、いまだ霊長類の社会行動とオキシトシンの関係についての研究は数が少ない。本研究は、家族で群を形成し協同繁殖をおこなう、コモンマーモセットを対象に、母親だけでなく父親の、母親出産前後のオキシトシン濃度と養育行動との関連を調べることを目的とした。これまでに、マーモセット型のオキシトシンを合成し、市販のオキシトシ測定用EIAキットを用いて、マーモセット型のオキシトシンが測定可能であることを確認した。本年度も引き続き、初産個体を対象とした出産前後の採尿および、乳児回収テスト、背負い行動の観察を行うことを試みたが、コモンマーモセットの繁殖がうまく進まなかったため研究ができなかった。


H28-B76
代:植木 孝俊
協:尾内 康臣
協:間賀田 泰寛
協:岡戸 晴生
協:井上 浩一
協:森本 浩之
成体脳神経新生のin vivo動態解析技術の創出
成体脳神経新生のin vivo動態解析技術の創出

植木 孝俊 , 尾内 康臣, 間賀田 泰寛, 岡戸 晴生, 井上 浩一, 森本 浩之

 ここでは、マカクザルにてadult neurogenesis (AN)の脳内動態をin vivoで描出、評価することができるポジトロン断層法(PET)による分子イメージング技術を創出する他、マカクザルで神経幹細胞を特異的に障害するためのレンチウィルスによる遺伝子発現系を確立し、サルのAN障害モデルが呈する精神神経症状を解析することをねらいとした。
 ANの脳内動態のin vivoイメージングに当たっては、まず、カニクイザルのgenomic libraryより神経幹細胞特異的なnestinプロモーター及びエンハンサーをクローニングし、その発現の細胞特異性を、同エンハンサー/プロモーターにより中性アミノ酸トランスポーター/共役因子を共発現するレンチウィルスを調製し、それを脳室下帯に感染させた後に免疫組織化学的染色で確認した。次に、同ウィルスをANが継続するラットの海馬歯状回に感染させ、中性アミノ酸トランスポーター/共役因子の発現によるL-[3-18F]-alpha-methyl tyrosine ([18F]FMT)の取り込みをPETにより画像化した。
 また、AN障害モデル動物の作出に当たっては、nestinエンハンサー/プロモーターで神経幹細胞特異的に遺伝子を発現するレンチウィルスを、マーモセットの海馬歯状回に脳定位装置で顕微注入、感染させ、細胞障害遺伝子の発現を誘導した。ここでは予め、ラットで同ウィルスにより神経幹細胞特異的に細胞障害遺伝子を発現させた後、同遺伝子産物の基質薬剤を腹腔投与し、海馬歯状回のANを障害することを確認することで、将来のマカクザルAN障害モデル作製の備えとした。



H28-B78
代:藤本 明洋
全ゲノムシークエンスデータ解析に基づく解析困難領域の同定と遺伝的多様性の解析
全ゲノムシークエンスデータ解析に基づく解析困難領域の同定と遺伝的多様性の解析

藤本 明洋

 申請者は、日本人の全ゲノムシークエンスデータを用いて、(1)第2世代シークエンサーでは解析が困難な領域の特徴を明らかにする。また、(2)それらの領域のゲノム配列を読み取り長の長い第3世代シークエンサーを用いて決定することにより、解析困難領域の遺伝的多様性を解明する。現在は(2)の解析を行っている。
申請者らは、既に日本人108人の全ゲノムシークエンスデータより、解析困難な領域を抽出した(解析困難な領域は、ヒト標準ゲノム配列に存在しない配列と多様性が極めて高い領域より選出した)。それらの配列を濃縮するためのアレイ(解析困難領域アレイ)を作成した。また、日本人108人の解析困難領域を濃縮しPacBio RSを用いてシークエンスを行った。現在は、PacBio RSのデータ解析を行っている。第2世代のシークエンサーのデータをPacBioシークエンサーのリード配列に対してマッピングを行い、エラーを補正する手法の開発を行った。SRiMP2ソフトウエアを採用し、様々なマッピングパタメーターを試し、マッピングの偽陽性率と偽陰性率が低いマッピングパタメーターを見出した。さらに、マッピングされたリード配列よりコンセンサス配列を求めるプログラムを作成した。この手法を日本人サンプルのデータに適用している。



H28-B82
代:佐々木 基樹
協:近藤 大輔
霊長類後肢骨格の可動性
霊長類後肢骨格の可動性

佐々木 基樹 , 近藤 大輔

昨年、一昨年度とこれまでにニシローランドゴリラ計2個体の後肢のCT画像解析をおこなってきた。本年度もこれらの個体に加えて、新たに雌のニシローランドゴリラ1個体の後肢をCTスキャナーを用いて非破壊的に解析した。今回CT撮影をおこなったゴリラの趾の可動域を解析した結果、再現性のある特徴を確認することができた。そして、このゴリラの趾の特徴を、チンパンジー、ニホンザル、そしてスマトラオランウータンのものと比較した。趾の可動域の解析では、第一趾を最大限伸展および屈曲させた状態でCT画像撮影をおこない、得られたCT断層画像データを三次元立体構築した後、第一趾の可動状況を観察した。全てのニシローランドゴリラにおいて、第一趾の第一中足骨は足の背腹平面で可動しており、同じ背腹平面で第一趾を可動させているチンパンジーのものと比較すると、その可動域は明らかに大きかった。今回の解析では、ニシローランドゴリラの第一趾の可動域には個体間のばらつきが認められなかったことから、背腹平面での大きな趾の可動域は、ゴリラの種特異的な形態学的特徴であると推測される。


H28-B83
代:松岡 史朗
協:中山 裕理
下北半島脇野沢の野生ニホンザル群の分裂が個体群動態に与える影響
下北半島脇野沢の野生ニホンザル群の分裂が個体群動態に与える影響

松岡 史朗 , 中山 裕理

下北半島南西部のA87群は2012年に83頭に増加し、2013年4月に43頭(87A群)と22頭(87B群)の2群に分裂した。分裂4年目の2016年度の出産率は、87A群53%、87B群は57%、赤ん坊の死亡率は87A群で0%,(87B群は不明)と分裂前の高い出産率、低い死亡率の状態に戻った。分裂前(1984~2011年)分裂後(2013年以降)の群の増加率、出産率、0~3歳の死亡率、遊動距離を比較してみたが、今年度もどれも変化は見られなかった。87A群において10頭の1歳のうち3頭が秋~冬に消失した。この3頭はすべて連続出産の母親の子供であった。分裂前、年々増加傾向にあった群れの遊動面積は、分裂後も縮小は見られなかったが、昨年度に比して拡大は見られなかった。分裂以降の追跡結果から、季節によってよく利用する地域が異なり、遊動域を季節によって使い分けているような傾向が見られた。観察例が少なくまだ断言はできないが、今年度は87A群の遊動域内での87B群との遭遇が極めて少なく、87B群は遊動域を変えた可能性がある。


H28-B84
代:田中 ちぐさ
協:岡部 直樹
協:杉浦 直樹
ワオキツネザルの避妊薬投与によるホルモン動態の変化
ワオキツネザルの避妊薬投与によるホルモン動態の変化

田中 ちぐさ , 岡部 直樹, 杉浦 直樹

福祉的に動物を飼育するにあたり、スペース確保や血統管理のための繁殖制限は重要課題である。繁殖制限において、霊長類では避妊用インプラントが一般的に利用されているが、キツネザルではその効果が低いといわれている。そこで、(公財)日本モンキーセンターで飼育するワオキツネザル(lemur catta)雌6頭を対象に、ホルモン動態と避妊の効果について明らかにすることを目的とし研究を行った。10月下旬、6頭中4頭に避妊用インプラント(ジースインプラント, ASKA Animal Health Co., Ltd.)を1頭につき1本挿入した。非繁殖期の6~7月と繁殖期の10~12月に糞を採取し、発情ホルモンの一種であるエストロゲン(E2)、および排卵や妊娠に関するプロゲステロン(P4)の濃度を測定した(図1)。その結果、発情行動が見られた直後にP4濃度の上昇が得られ、正常に本種の生理状態の把握ができていることが確認できた。一方で、発情行動時に血中ではE2濃度の上昇があったと考えられるが、測定した糞中では確認できなかった。これは、本種のE2が糞に排泄されないか、または血中でも微量であるため、糞中に検出できないことが考えられた。本研究における避妊効果については、出産歴がある個体へのインプラント投与が1回目の発情行動後に遅延してしまったため、調べることができなかった。また、出産歴のない個体に関しては今季出産がみられていないが、インプラントの効果によるものか、当個体の繁殖能力によるものか不明であり、今後のモニタリングが必要であると考えられた。


H28-B85
代:檜森 弘志
ニホンザルの個体間距離と体の向きに関する地域間比較研究
ニホンザルの個体間距離と体の向きに関する地域間比較研究

檜森 弘志

 優劣スタイルの異なる2つのニホンザル群を対象に選び、また、競合の高まりやすい採食時でなく休息場面を観察することによって、近接時の潜在的な緊張を捉えることを試みた。淡路島モンキーセンターと嵐山モンキーパークいわたやまの2箇所の野猿公苑で餌付けされた群れを対象に、休息時の個体間距離と互いの体の向け方を観察した。ニホンザルは専制的な社会を持つマカクであるが、淡路島群は特異的に寛容な特徴を持つことが知られている。体の向きに注目した理由は、ニホンザルの間では他個体を凝視することが威嚇に当たることから、潜在的な緊張を反映して向き合いを避けている可能性があると考えたためである。
 嵐山群と比べ淡路島群では、グルーミングを伴わない休息時において他個体と接触している頻度が高く(嵐山 46.8%、淡路島 1.6%)、また接触していないときの個体間距離も短くなっていた。休息時における向き合い事例は、嵐山群では観察されなかったのに対して、淡路島群ではランダムよりも高い率(19.5%)で生じていた。両調査地においてオトナメス同士はほとんど向き合わなかったのに対して、淡路島のオトナメスは、コドモやオトナオスとはより高い頻度で向き合っていた。
 以上のように個体間距離と向き合いの頻度に、地域および性年齢クラスによる違いがあることが示された。この結果は、他個体との近接自体に緊張が伴うこと、個体間距離だけでなく他個体との体の向きも緊張の度合いに影響することを示唆するものである。



H28-B86
代:時田 幸之輔
広鼻猿類脊髄神経後枝の形態的特徴

学会発表
 時田幸之輔 平崎鋭矢 アカテタマリン胸腰神経後枝内側枝の観察(2016年7月16日) 第32回日本霊長類学会大会(鹿児島県).

時田幸之輔 平崎鋭矢 脊髄神経後枝内側枝の比較解剖学(2016年10月9日) 第70回日本人類学会大会(新潟県新潟市).
広鼻猿類脊髄神経後枝の形態的特徴

時田 幸之輔

脊髄神経後枝の分布領域である背部は本質的に最初に形成された体幹の最も古い部分であるとされており, 種や部位による分化の違いが少なく, 一様な分節的構成を持つとされている(山田,1985). しかし, ヒト・ニホンザル(平成27年度霊長類研究所共同利用研究)脊髄神経後枝内側枝の起始,走行経路,分布を固有背筋との位置関係に注意して,詳細に観察した結果, ヒト・ ニホンザルともに胸神経後枝内側枝と腰神経後枝内側枝では走行経路が異なることを明らかにした(2013布施・時田, 2015時田). しかし, ブタ胎仔標本での観察では, 胸神経後枝と腰神経後枝に走行経路に違いは無かった(2014,2015時田). ヒト・ニホンザルでの腰神経後枝内側枝の特異化は, 狭鼻猿類または霊長類に特有な形態ではないかと推察している. この議論には四足動物における脊髄神経後枝の形態との比較観察が不可欠であるが, 四足動物脊髄神経後枝の詳細な観察は行われていない. そこで, 今回は広鼻猿類のアカテタマリンとリスザルを対象として, 脊髄神経後枝の起始, 走行経路, 分布を固有背筋との位置関係に注意して, 詳細に観察を行った. その結果, アカテタマリン・リスザルともに後枝内側枝の形態は大きく3つに分類できた.a:皮枝・筋枝共に横突棘筋群の第1層(半棘筋)と第2層(多裂筋)の間を走行する(Th1-Th9). b:横突棘筋群の第2層(多裂筋)とさらに深層の回旋筋の間を走行(Th10-Th11). c:回旋筋の深層を走行(Th12以下). 以上より,腰神経後枝内側枝の特異化はヒト・ニホンザルに固有の特徴ではなく, アカテタマリン・リスザルにも共通する特徴であるとことが示唆された.
これらの成果は, 第32回日本霊長類学会大会, 第70回日本人類学会大会にて発表した.



H28-B87
代:岡澤 均
協:陳 西貴
協:田村 拓也
協:藤田 慶大
協:本木 和美
協:田川 一彦
協:泰羅 雅登
協:勝山 成美
マーモセット疾患モデルを用いた神経回路障害ならびに分子病態の解析および治療法の開発
マーモセット疾患モデルを用いた神経回路障害ならびに分子病態の解析および治療法の開発

岡澤 均 , 陳 西貴, 田村 拓也, 藤田 慶大, 本木 和美, 田川 一彦, 泰羅 雅登, 勝山 成美

平成28年度は、正常マーモセット脳へ神経変性誘発因子X(4歳齢、1頭 )あるいは溶媒(PBS)(6歳齢,1頭)を頭頂葉に継続注入(2週間に一回、合計4回)した。最終注入から一週間後にマーモセットを灌流固定し、脳切片を製作した。Xにより分子変化が誘導される神経変性関連因子Yについて免疫染色したところ、Xの注入によりYにおける神経変性特異的な修飾の増加を確認した。今後はこの神経変性疾患モデルマーモセットについてXの注入前後の認知機能を行動学的に比較した解析を行う必要がある。現在、Xを注入する前の認知機能解析(4頭、4歳齢~6歳齢)を行っており、Xを注入した後に再度認知機能解析を行う予定である。


H28-B89
代:島田 朋美
金崋山野生ニホンザルにおけるInfant Handlingについて
金崋山野生ニホンザルにおけるInfant Handlingについて

島田 朋美

ニホンザルでは、母親以外の個体がアカンボウを抱いたり毛づくろいをするinfant handling(IH)が知られている。飼育下での研究から、ワカモノメスがアカンボウの世話をし、将来の自身の育児に役立てるのではないかと考えられてきた。申請者は2014-2016年に金華山B1群のアカンボウ計13頭(生後0〜90日)を対象に個体追跡による観察を行い、351回のIHを観察した。
IHした個体(ハンドラー)は、オトナメスが圧倒的に多い年もあれば、コドモメスとオトナメスが半々の年もあるというように、年による違いが見られ、ワカモノメスはほとんど行わなかった。IHの内容は、オトナメスでは抱擁・運搬・グルーミング、コドモメスでは仲間遊び、と大きく異なっており、コドモによるIHは遊びの一環として捉えられた。コドモの仲間遊びを除くと、IHの65%以上がその年に非出産のオトナメスによるものであり、さらにその90%以上が特定の1頭の高順位個体によるものだった。
このオトナメスは高順位ゆえにアカンボウにアクセスしやすく、頻繁にIHするのでアカンボウから抵抗を示されることもあったが、致死的なIHはなくハラスメントとは考えられなかった。先行研究でもIHを好むオトナメスは観察されているが、いずれも例外的な事例として扱われてきた。高順位のオトナメスで妊娠出産しにくいという条件が揃えば、同様の現象が起こり得る、一般的な現象である可能性が考えられた。本研究により、アカンボウは様々な個体にとって魅力的であり、群れのその時々の構成によってハンドラーもIHの内容も多様であることが明らかとなった。



H28-B90
代:Adrian Barnett
"Bornean and Brazilian flooded forest primates: patterns, parallels and prospects"
"Bornean and Brazilian flooded forest primates: patterns, parallels and prospects"

Adrian Barnett

A presentation ("Uacaris [Cacajao Pitheciidae] and the fruits of seasonally-flooded forests: an unexpectedly subtle set of interactions") was made at the 7th. International Symposium on Primatology and Wildlife Science in March 2017.

Meetings were held with professors of Kyoto University, notably Dr. Takakazu Yumoto, and the possibilities discussed of Brazilian students coming to Kyoto to undertake PhDs and of Kyoto students coming to work on projects with Amazonian mammals while linked to INPA (National Institute of Amazon Research, Manaus, Amazonas, Brazi). Potential projects were also discussed with Kyoto-based students.

In addition at the Japan Monkey Centre, with the kind cooperation of Dr. Tomo Takano, I was able to measure the teeth of the three specimens of Cacajao in their collection, so gaining data that will form part of an up-coming theses by my Master's studetn Renann Paiva and, then soon, a publication.

Furthermore, I had discussions with Dr. Ikki Matsuda, Chubu University, concerning the methods for a mutual project on primate diets and food fragment size as well as a discussion on two books that we propose to submit to academic editors.

In addition, and quite unplanned, a comment by a student at the Primate Research Institute sparked a line of museum investigation which will almost certainly result in a note in a primatologial journal.



H28-B91
代:Luca Fiorenza
"Tooth function, ecology and diet in Primates"
"Tooth function, ecology and diet in Primates"

Luca Fiorenza

During my research visit at the Primate Research Institute in November 2016 I have collected over 250 primate specimens taking high-resolution dental negative impressions with A-silicone material: this includes, Gorilla gorilla (4), Pan troglodytes (16), Macaca f. fuscata (74), Macaca f. yakui (53), Macaca cyclopis (10), Macaca sinica (3), Macaca nigra (6), Macaca radiata (13), Macaca tibetana (3), Macaca assamensis (10), Macaca fascicularis (10), Macaca mulatta (10), Papio hamdryas (24), and hybrids of Macaca (26).I am in the process of creating positive replicas of teeth with die-stone material suitable for 3D scanning. I will then send the dental casts to the University of New England (Asutralia) where they will generate for me high-resolution 3D polygonal models of teeth. This, however, is an extremely time-consuming process that will require time.The 3D models will be analysed with our sophisticated method called Occlusal Fingerprint Analysis (Kullmer et al., 2009). Through the analysis of wear facets we will reconstruct the jwa movements responsible for their creation. Thus, we will be able to better understand the relationship between tooth morphology, diet and wear in non-human primate teeth.


H28-B92
代:前多 敬一郎
協:束村 博子
協:大蔵 聡
協:上野山 賀久
協:末富 祐太
協:岡部 修
野生ニホンザルの個体数抑制技術の開発
野生ニホンザルの個体数抑制技術の開発

前多 敬一郎 , 束村 博子, 大蔵 聡, 上野山 賀久, 末富 祐太, 岡部 修

本研究は、平成25年に採択された農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業シーズ創出ステージ「新規な繁殖中枢制御剤開発による家畜繁殖技術と野生害獣個体抑制技術の革新」の一環として、タキキニン類のひとつであるNeurokinin Bの受容体 (NK3R) 拮抗剤を用いた新たな野生ニホンザルの個体数抑制技術の開発の基盤となる知見を得ることを目的とした。ニホンザル雄3頭を用いた平成27年度の実験結果から、NK3R拮抗剤を複数回投与することにより、血中のNK3R拮抗剤濃度を高く維持し、テストステロン分泌を抑制できる可能性を示唆したが、その効果は限定的であった。マウスで報告されているように、他のタキキニン受容体 (NK1RおよびNK2R) の生殖機能への関与が考えられることから、平成28年度は繁殖期である2月に、雌ニホンザルの視床下部を採取し、NK3Rを含む3種類のタキキニン受容体のクローニングを行い、強制発現細胞を用いて、ニホンザルのタキキニン受容体に対するNK3R拮抗剤等の結合親和性を検討している。


H28-B93
代:郷 康広
ヒトの高次認知機能の分子基盤解明を目指した比較オミックス研究

論文
Yoshida K, Go Y, Kushima I, Toyoda A, Fujiyama A, Imai H, Saito N, Iriki A, Ozaki N, Isoda M. (2016) Single-neuron and genetic correlates of autistic behavior in macaque. Science Advances 2(9):e1600558. 謝辞あり

学会発表
Yasuhiro Go Spatiotemporal gene expression trajectory in the human and non-human ape brains(2016年10月11日) 6th Joint CIN–NIPS International Symposium(Tübingen, Germany).

郷康広 霊長類における精神・神経疾患関連遺伝子解析と認知ゲノミクスの展望(2017年3月18日) 平成28年度京都大学霊長類研究所共同利用研究会「霊長類脳科学の新しい展開とゲノム科学との融合」(犬山).

Yasuhiro Go Spatiotemporal brain transcriptome architecture in the common marmoset(2016年12月14日) 第6回日本マーモセット研究会・革新脳国際シンポジウム(東京).

郷康広 霊長類脳の構造・機能をささえる分子基盤解明にむけたマーモセット全脳遺伝子発現動態(2016年12月11日) 平成28年度第2回「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト・臨床研究グループ分科会」(東京).
ヒトの高次認知機能の分子基盤解明を目指した比較オミックス研究

郷 康広

脳神経回路の形成および発達のゲノム基盤を解明するために,生後1日齢から成体個体までのニホンザル・アカゲザルおよびマーモセットの脳を採取した.平成25-27年の3年間(霊長類のゲノム・トランスクリプトーム・エピゲノム研究、2013-175, 2014-097, 2015-093)で,合計21個体のマカクザルの脳を採取でき,RNA−seq法を用いた脳発達トランスクリプトーム解析を実施中である.また,マカクザル・マーモセットの血液からDNAを調製し,精神・神経疾患関連遺伝子(約500遺伝子)の配列決定を行った.得られた配列より遺伝子機能を喪失するような変異(挿入・欠失変異、アミノ酸配列中の終止コドンの挿入など)の検出を行った.配列解析よりヒトの高次認知機能や精神・神経疾患などとの関連が示唆される遺伝子に上記の変異を有する個体および家系を同定した.平成28年度は,マカクザルに関しては医薬基盤・健康・栄養研究所のカニクイザル,マーモセットに関しては日本クレア株式会社,大日本住友製薬,理化学研究所脳科学総合研究センター,国立精神・神経医療研究センターなどからもサンプルの提供を受け配列解析実験を推進した.平成28年度末時点で,マカクザル1141頭,マーモセット1202頭のDNAサンプルを取得済みであり,そのうちマカクザル985個体,マーモセット561個体に関しては約500遺伝子程度の精神・神経疾患関連遺伝子に関する多型解析を終了しており,すでにいくつかの有力な機能喪失変異を有する個体を同定している.両種群とも1000頭程度のデータが出揃った時点で論文化を行う予定である.


H28-B94
代:後藤 遼佑
霊長類の後肢リトラクターに関する機能形態学的研究―常習的な姿勢との関係
霊長類の後肢リトラクターに関する機能形態学的研究―常習的な姿勢との関係

後藤 遼佑

 股関節を伸展するリトラクターの活動によってロコモーション時に身体が推進する。股関節伸展の主動作筋は霊長類種間で、特にヒトと他の霊長類の間で異なる。この差異には体幹を常習的に直立させているか否かが関連すると考えられる。本研究の目的は、常習的に垂直しがみつきを行い、体幹を立てることに適応したマーモセットのリトラクターと、伏位姿勢をとるオマキザル、クモザル、ニホンザル、サル類とヒトの中間的な体幹姿勢をとる類人猿、そして常習的に体幹を直立させるヒトのリトラクターの形態を比較することであった。

 本年度はヒトのデータ収集を中心に行ったため、借用したマーモセットの数量的解析には至っていない。しかし、臀部周囲筋を他の霊長類と質的に比較すると、浅殿筋、中殿筋等の筋の配置はニホンザル等の伏位姿勢にて移動する霊長類と類似していた。このことから、垂直しがみつきといった体幹を直立させる姿勢を常習的に用いる種であっても、リトラクターの機能は他のサル類と共通している可能性が高いと考えられた。

 マーモセット標本の借用期間を延長し、今後数量的解析を行う予定である。



H28-B95
代:加賀谷 美幸
類人猿の前肢帯骨格の配置と可動域

学会発表
加賀谷美幸、青山裕彦 現生・化石類人猿の下位肋骨形態パターンと椎式(2017年3月) 第122回日本解剖学会全国学術集会(長崎県長崎市).
類人猿の前肢帯骨格の配置と可動域

加賀谷 美幸

胸郭に対する前肢帯骨格の位置とその可動域を明らかにするため、オマキザルを4個体、ニホンザル2個体を対象に計測を行い、実験利用が本年度限りとなったオマキザルは過去年度とあわせると7個体、ニホンザルについては13個体のデータを得た。麻酔下に肢位を変えて骨格ランドマークの三次元座標を取得し、CTデータから構築した骨格像をマッチングさせ、位置関係を復元して比較した。とくに負荷をかけず前肢を自然に下垂させて固定した肢位では、肩甲上腕関節の屈曲の程度が個体によって異なるものの内外転はほとんどみられず、前額面観で肩甲骨と上腕骨がおよそ一直線に並んでいた。このとき、オマキザル・ニホンザルとも、肩甲骨体は胸郭の背腹軸に対して30-45度の範囲であった。この肢位ではオマキザルの肩甲棘内側端はおよそ第1-3胸椎棘突起レベルにあり、ニホンザルに比べて棘上窩の位置が胸郭上口付近にあった。これらを含め、オマキザルにみられる胸郭-肩甲骨-鎖骨の位置関係や胸郭上口のシェイプはクモザル(2014年度に計測)もよく似ており、前肢の担う運動機能の違いにもかかわらず、系統的な要因が色濃くみられることが分かった。


H28-B96
代:小林 諭史
ヒト上科の成長に伴う骨格のプロポーション変化

学会発表
小林諭史 ヒトとチンパンジーの四肢プロポーション成長比較(2016年10月8日) 第70回日本人類学会大会(新潟).
ヒト上科の成長に伴う骨格のプロポーション変化

小林 諭史

ヒトを除けば、現生ヒト上科系統が互いに分岐をして以降、各系統の化石記録は著しく乏しいため、ヒト上科の進化史を考察するためには、現生ヒト上科を対象とした徹底的な分析が不可欠である。しかし、現状では類人猿の胎児を含めた成長によるプロポーション変化を大規模に調べた研究は非常に少ない。そこで、ヒト上科における胎児からオトナに至るまでの成長に伴った骨格のプロポーション変化を解明し、種間に見られる類似性の起源を明らかにすることを目的とした。平成28年度はX線CTを用いて、主にヒトとチンパンジーの四肢骨長の計測を行った.ヒトでは出生前も出生後も同程度に後肢が前肢に対し正の相対成長を示した。チンパンジーでは、出生後において前肢と後肢が等成長を示していたが、出生前では後肢が前肢に対しヒトよりも弱い正の相対成長を示した。また、いずれの成長段階においても、前肢を基準とした場合、ヒトの後肢はチンパンジーよりも長かった。この結果から、ヒトでは出生前から後肢の強い伸長を続けることで効率的な二足歩行と関連付けられる長い後肢を実現するのに対し、チンパンジーでは出生時に後肢の伸長を前肢と同程度まで高めることで、長い前肢を実現している可能性が示唆される。


H28-B97
代:NORLINDA MOHD DAUT
協:Badrul Munir Md. Zain
AGE RELATED DIFFERENCES IN POSITIONAL BEHAVIOR AND DIETARY ADAPTATION OF HABITUATED SILVERED LEAF MONKEY
AGE RELATED DIFFERENCES IN POSITIONAL BEHAVIOR AND DIETARY ADAPTATION OF HABITUATED SILVERED LEAF MONKEY

NORLINDA MOHD DAUT , Badrul Munir Md. Zain

I was at Primate Research Institute (PRI) of Kyoto University on 13th of September 2016 until 4th October 2016 under Cooperative Research Program. I stayed at the dorm for Center for International Collaboration and Advanced Studies in Primatology which is located adjacent to PRI. During my 20 days at Inuyama campus, I have done many things that contributes a lot to my study. Since my study is around age related differences in positional behavior and dietary adaptation of habituated Silvered leaf monkey (Trachypithecus cristatus), I had experienced in collecting and handling fecal samples, analyzing particle size and nutrition. My co-supervisor Assoc. Prof. Dr. Ikki Matsuda taught me on the particle size analysis. He also advised me on collecting and handling fecal samples of T. cristatus in captivity at Japan Monkey Centre. Assoc. Prof. Dr. Goro Hanya had trained me on laboratory work. He showed me how to run few nutritional assays including, assessing amount of ash and non-ash, measuring fiber and analyzing nitrogen and crude protein. Apparently, this project is still in progress and supervised by Prof. Dr. Badrul Munir bin Md-Zain and Assoc. Prof. Dr. Ikki Matsuda. Part of the study especially on the particle size of T. cristatus in captivity is completed. The data is important and useful especially in comparing with the free ranging populations in Malaysia. However, the research will be more comprehensive if I would have more time for sampling and laboratory testing. I would be also grateful if I could have more time to master the laboratory analysis a well.


H28-B98
代:Farhani Ruslin
協:Badrul Munir Md-Zain
"Diet, activity, home range and interspecific interactions of long-tailed macaques (Macaca fascicularis) and dusky leaf monkeys (Trachypithecus obscurus) in dipterocarp forest fragments, Malaysia"
"Diet, activity, home range and interspecific interactions of long-tailed macaques (Macaca fascicularis) and dusky leaf monkeys (Trachypithecus obscurus) in dipterocarp forest fragments, Malaysia"

Farhani Ruslin , Badrul Munir Md-Zain

I arrived at PRI on 13th September 2016 from Malaysia. I went to Japan Monkey Centre and Chubu University for couple of days and having a great time. Then, the analysis of ecological and behavioral data was conducted with Collaborator and Associate Professor of Wildlife Research Center of Kyoto University, Dr. Ikki Matsuda. I have experienced different environment in how Japan primatologist does scientific research and acquired valuable knowledge from the respected collaborators. More importantly, I have learnt to analyze the ecological data specifically on diet, food availability, activity budget and core area of Malaysian long-tailed macaques (Macaca fascicularis) and dusky langurs (Trachypithecus obscurus) in dipterocarp forest edges. I was be able to utilize the PRI journal library for references. I went back to Malaysia on 4th October 2016 after staying in PRI for 20 days. Currently, the project is still in progress with collaborator and my sensei/co-supervisor, Dr.Ikki Matsuda. A PhD thesis (under Universiti Kebangsaan Malaysia, Malaysia) is being written as one of the output of this research grant.


H28-B99
代:松原 幹
ヤクシマザルの頬袋散布種子および糞中種子の二次散布者調査

論文
松原 幹(2016年) シカはサルの近くで何をしているの?~森の生き物のつながりをカメラトラップで探る 屋久島通信 64:4-5. 謝辞屋久島環境文化村財団

学会発表
Miki Matsuabra Effects of seed removal in wild Japanese macaque (Macaca fuscata yakui) feces by coprophagyof sika deer (CervusNippon yakushimae) on Yakushima Island(August 21-27, 2016) Joint meeting of the International Primatological Society and the American Society of Primatologists(Chicago, Illinois, USA).

松原 幹 屋久島のニホンジカのサル糞食による糞中種子散布への影響(2016年6月25,26日) ニホンザル研究・若手とシニアのクロストーク(霊長類研究所).

松原 幹 屋久島のニホンザル糞中種子の二次散布(2016年7月15-17日) 第32回日本霊長類学会大会(鹿児島大学).
ヤクシマザルの頬袋散布種子および糞中種子の二次散布者調査

松原 幹

ヤクシカやげっ歯類などが、ニホンザルが糞散布した種子の生存率におよぼす影響を調べるため、2016年5-7月と10-12月に、屋久島西部地域のニホンザルの糞中種子、および頬袋散布種子に集まる生物を、自動撮影カメラで調べた。ヤマモモの種子は5月末から6月上旬の結実前半期において頬袋散布は極めて少なく、糞散布が中心であった。収集したサル糞からヤマモモ種子を摘出・水洗い・着色し、直径3mm以上の種子を除去して20gずつ小分けにした糞に100粒ずつ埋め直して人工サル糞を作成した。それらの人工サル糞に鉄製の覆い(シカ除けカゴ、小動物除けカゴ、センチコガネ類除けカゴ)を被せ、着色種子と無着色種子とともに林内の実験区に設置し、3日後、1週間後、1ヶ月後に実験区内に残った種子数を比較した。自動撮影カメラは1ヶ月間設置した。人工糞では設置から24時間以内に、ヤクシカが訪れてサル糞を食べる行動が、カメラトラップ場所の90%以上で確認され、森林性齧歯類による被食も撮影された。また、秋はイヌガシ、シロダモ、モッコク、リュウキュウマメガキの頬袋散布種子を収集し、同様の実験を行った。シロダモとイヌガシの頬袋散布種子は1ヶ月後の消失率が低く、シカによる被食は撮影されなかった。モッコクではサルが頬袋から出した直後の種子をシカが採食する行動が直接観察・ビデオ記録された。リュウキュウマメガキについては、現在映像を確認中である。


H28-B100
代:城戸 瑞穂
協:合島 怜央奈
口腔における感覚受容機構の解明
口腔における感覚受容機構の解明

城戸 瑞穂 , 合島 怜央奈

適切な口腔感覚は、哺乳・摂食・情報交換など多様な行動の基盤となっている。しかしながら、その機構についての理解はまだ限られたものである。私たちは、(狭義の)味覚とされる甘味・塩味・酸味・苦味・うまみ以外の口腔内の感覚、とくに、温度感覚や唐辛子や胡椒などのスパイスなどのへ感覚、触圧感覚などの機構の解明を目指し、こうした広義の味覚とされる感覚の分子基盤として、TRP チャネル(transient receptor potential channel)を想定し研究を進めてきた。そして、口腔粘膜上皮に、温度および機械受容への関与が報告されているTRPチャネルの霊長類における発現と感覚神経との関係を明らかにすることを目指し、本研究を実施している。平成28年度は研究室を異動し、さらに移動先の研究棟の改修工事のため実験が十分にできない環境にあった。顕微鏡の環境など思いの外体制整備に手間取った。ゆえに、試料の収集と実験条件の検討を主に行った。また新たな抗体作製を行ったので免疫染色のための条件検討を行った。抗体が標的タンパクを認識していると思われたが、バックグラウンドも高かったことから、さらに条件検討を進めているところである。


H28-C1
代:饗庭 正寛
分担:黒川 紘子
植物の機能形質に基づくニホンザルの食物選択メカニズムの解明
植物の機能形質に基づくニホンザルの食物選択メカニズムの解明

饗庭 正寛

辻ら(2011)に示された、野生ニホンザルの採食する木本植物リストと自然環境保全基礎調査植生調査、および代表研究者らが収集した日本の主要樹木の形質データを用いて、ニホンザルの生息域全域において、ニホンザルが好む樹種(採食の報告例4例以上)とそれ以外の樹種の形質を比較した。ニホンザルの樹種選択に影響しうる形質として、最大樹高、葉の面積あたり重量、葉の強度、葉の含水率、葉の窒素含量、葉のタンニン含量、葉のフェノール含量、葉のリグニン含量に着目した。落葉樹では、ほぼすべての気温帯で、サルが好む樹種の最大樹高はそうでない樹種より有意に高かった(図1)。ただし、この傾向がサルの嗜好性によるものか、観察のバイアスによるものかは、今回の解析では不明である。また、サルが好む樹種では、葉の面積あたり重量、葉の強度、葉の窒素含量、葉のタンニン含量が広い気温帯で有意に高かった。一方、常緑樹では、サルが好む樹種において、葉の面積あたり重量、葉の強度、葉のリグニン含量が高い傾向がしばしば見られた(図2)。葉の面積あたり重量は摂食効率、窒素含量は栄養価の面から嗜好性に影響している可能性が考えられるが、一般に被食防衛に関する形質である、タンニン含量や葉の強度に高い傾向が見られたのは以外な結果であった。


H28-C2
代:羽山 伸一
分担:近江 俊徳
協:中西 せつ子
協:名切 幸枝
協:石井 奈穂美
福島市に生息する野生ニホンザルの放射能被曝影響調査
福島市に生息する野生ニホンザルの放射能被曝影響調査

羽山 伸一 , 中西 せつ子, 名切 幸枝, 石井 奈穂美

 本研究グループでは、2007年から福島県ニホンザル特定鳥獣保護管理計画にもとづき福島市で個体数調整のために捕獲された野生個体を分析し、妊娠率の推定や遺伝子解析などを行ってきた。福島市にはおよそ20群、2000頭の野生群が生息しているが、2011年の福島第1原子力発電所の爆発により放射能で被曝した。2012年度に放射性セシウムの蓄積状況と血液性状の関係を調査し、血球数やヘモグロビン濃度などの低下を明らかにした。今年度は、その後の筋肉中放射性セシウムの蓄積状況と血液性状を調査し、放射性物質の減衰に伴う血液性状の変化を明らかにした。
 2016年度は、134個体のニホンザルを回収し、セシウム濃度および血液検査を実施した。セシウム濃度は、年々漸減傾向にはあるものの、冬季に数百ベクレル/kgと比較的高い数値を示す個体がいた。また、血液検査値は、昨年度同様に正常範囲を下回る個体が多く、2012年度に対照とした青森県のサルの平均値と比較して、有為に低下していることが今年度も確認された。
 また、将来における中長期的な影響評価を可能にするため、採取した臓器及び遺伝子等の標本保存を行った。



H28-C4
代:岡田 誠治
分担:俣野 哲朗
協:刈谷 龍昇
協:塚本 徹雄
サル造血免疫機能の解析とサル免疫不全ウイルス感染モデルマウスの樹立

論文

関連サイト
熊本大学エイズ学研究センター岡田研究室 http://www.caids.kumamoto-u.ac.jp/data/okada/default.html

ヒト化マウスを用いたエイズ関連悪性リンパ腫研究 http://ganshien.umin.jp/research/spotlight/okada/index.html

熊大NOW 研究紹介 http://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakujouhou/kouhou/kouhoushi/kumadainow/laboratory/k270223
サル造血免疫機能の解析とサル免疫不全ウイルス感染モデルマウスの樹立

岡田 誠治 , 刈谷 龍昇, 塚本 徹雄

 本研究の目的は、ニホンザルの造血・免疫系を解析し、その特徴を明らかにすること、その結果を元にニホンザルの造血免疫系を構築したマウスモデルとエイズモデルを構築することである。そこで、ニホンザルの骨髄を採取し、CD34の発現を様々な抗ヒトCD34抗体を用いて確認した。その結果、Clone561, 563はニホンザル骨髄では交差反応が認められたが、cloneQBEnd-10, 8G12では認められなかった。そこで、Clone561を用いてCD34陽性細胞をImmunomagnetic beads法により分離し、コロニーアッセイを行った。その結果、CD34陽性細胞からのコロニー形成が確認できた。また、CD34陽性細胞を放射線照射した高度免疫不全マウス(NOJマウス)新生仔肝に移植したが、ニホンザルによる造血系の再構築は認められなかった。一方、ニホンザル末梢血単核球をPHA-Pで刺激後、サル免疫不全ウイルス (Simian Immunodeficient virus: SIV)を感染させたところ、感染が成立した。


H28-C5
代:金子 新
分担:塩田 達雄
協:中山 英美
協:三浦 智行
協:入口 翔一
アカゲザルiPS細胞の免疫細胞への分化
アカゲザルiPS細胞の免疫細胞への分化

金子 新 , 中山 英美, 三浦 智行, 入口 翔一

本研究は、iPS細胞から各種免疫細胞への分化誘導方法を確立し、そしてそれらの免疫細胞の自家移植によりヒト免疫不全症候群などによる破綻した免疫機構を再構築することを、免疫学的にヒトに近縁な霊長類を用いて検討することを目的とした研究である。
 3頭のアカゲザル末梢血T細胞から樹立した10種のiPS細胞クローンから、OP9DL1細胞との共培養によりT細胞分化能ならびに増殖能およびエフェクター機能が確認できたクローンを各アカゲザルあたり1クローン選出した。自家移植を目的として、各種ウイルスベクターによるGFP遺伝子導入を検討し、ボルナウイルスベクターによるアカゲザルiPS細胞への効率の良いGFP遺伝子導入を確認した。(ボルナウイルスベクターは京都大学ウイルス研究所の朝永研究室から提供された。)
 HIV遺伝子の感染性に関与する標的遺伝子をノックアウトするためのiPS細胞上でのゲノム編集の準備を進め、またiPS細胞由来の造血細胞およびT細胞の自家移植に向けて、移植の前処置と投与経路に関する調査を行うなど、実験準備を進めた。



H28-C7
代:伊沢 紘生
分担:杉浦 秀樹
分担:藤田 志歩
分担:宇野 壮春
分担:川添 達朗
分担:関 健太郎
分担:三木 清雅
金華山島のサル・個体数の変動と6群間の生態社会学的比較
金華山島のサル・個体数の変動と12群間の生態社会学的比較

伊沢 紘生

 申請時の本研究の目的は6つで、その結果は以下の通りである。①個体数の一斉調査は申請通り2回、秋と冬に実施した。結果は秋が269頭、冬が266頭だった。②群れごとのアカンボウの出生数と死亡(消失)数は、春の調査を上記2回の一斉調査に加えて実施。出生数は6群で計39頭、死亡(消失)数は8頭、1年以内の死亡率は0.21だった。③家系図と④食物リスト作成は群れごとの担当者が随時実施した。⑤6群間の比較生態・社会学的調査は、群れの頭数が100頭を超えたD群を対象に分派行動や群れの分裂に関して集中的に実施した。⑥サル学を志す若手への可能な研究テーマの整理は、宮城のサル調査会の機関紙『宮城県のニホンザル』で、一昨年の第28号、昨年の第29号に引き続き、第30号を現在準備中である。
 ところで、上記の⑤および昨年度(2015年度)の報告書で述べたD群の分裂についてだが、分裂した小さい方(分裂群)は、これまでの金華山サル個体群での5回の分裂で見られた群れの遊動域を二分するという形でなく、島の北東部に新たな遊動域を構えているものと予測して追跡調査を実施した。しかし島の分裂群は存在せず、D群から分かれたメス4頭とコドモたちの小集団がB2群に半ば追随しながら生活していた。その詳細は目下整理中である。



H28-C8
代:大谷 洋介
分担:小川 均
ニホンザルを対象とした顔認識システムの開発
ニホンザルを対象とした顔認識システムの開発

大谷 洋介 , 小川 均

 本研究ではニホンザルを対象とした広範かつ簡便な個体識別・登録手法の実現により調査・保護管理・獣害対策等の効率的な実施に資することを目的として、画像取得による顔認識システムの開発を実施した。
 霊長類研究所で飼育されているニホンザル集団のうち、高浜群(57個体)、若桜群(45個体)、嵐山群(62個体)、椿群(47個体)を対象として、定期検診時に頭部を15種の角度から撮影した。撮影した動画から静止画を抽出しプログラムに登録するためのサンプル画像とした。
 画像中からニホンザルの顔領域を自動的に抽出するために、HOG特徴量を用いた強化学習(Real AdaBoost)を利用した識別器の作成を行った。抽出した顔画像から「標準化された顔の要素」の集合である固有顔(Eigenface)を作成し、固有顔と各画像との差分を既知の全個体のデータベースと照合することにより個体識別を行った。
実際に野生下で運用可能な、十分な精度および登録可能頭数を持ったシステムの構築のためにはさらなるサンプル画像が必要であり、今後追加の画像サンプルの取得を行うとともに、データベース登録手法の簡略化および識別精度向上のためのプログラム改良を実施していく。同時に、飼育個体を対象として「実際に野外で撮影される動画」を想定した撮影を行い、試作システムの検証・改善を行うとともに、算出された一致率がどの水準であれば同一個体と断定できるのか、基準の策定を行う。



H28-C9
代:牟田 佳那子
協:増井 健一
協:矢島 功
プロポフォールとフェンタニルによるコモンマーモセットの全静脈麻酔法の確立

学会発表
牟田佳那子、宮部貴子、増井健一、矢島功、飯塚智也、兼子明久、西村亮平 コモンマーモセットにおけるプロポフォールの薬物動態解析(2016年12月12-16日) 第6回日本マーモセット研究会大会(東京都文京区).

Kanako MUTA, Takako MIYABE-NISHIWAKI, Kenichi MASUI, Isao YAJIMA, Tomoya IIZUKA, Fumiaki KANEKO, Ryohei NISHIMURA. Pharmacokinetic analysis of propofol in common marmosets: a preliminary study.(19-20, Feb, 2017) The 8th Joint Symposium of veterinary Research in East Asia(Taichung, Taiwan).
プロポフォールとフェンタニルによるコモンマーモセットの全静脈麻酔法の確立

牟田 佳那子 , 増井 健一, 矢島 功

 静脈麻酔薬のプロポフォールとオピオイド系鎮痛薬とを静脈投与し、全身麻酔状態と鎮痛を得る全静脈麻酔法である。揮発性麻酔薬と比較して頭蓋内圧や循環動態に与える影響が小さく、脳機能研究に供される機会の多いコモンマーモセットに同麻酔法は有益であると予想し、今回実施に必要な薬物動態学的情報を得るためプロポフォールの薬物動態解析を実施した。
 1-3歳齢のオスのコモンマーモセット6頭を使用した。セボフルラン鎮静下で尾静脈から8mg/kgのプロポフォールを4mg/kg/minの速度で静脈投与し、投与後2、5、15、30、60、90、120、180分に大腿静脈から0.6mlの採血を実施した。血漿から液体高速クロマトグラフィー蛍光検出法で血中濃度を測定し、薬物動態解析ソフトウェアを用い薬物動態解析を実施した。採血は1回の実験で上記8時点のうちいずれか2点でのみ実施し、2ヶ月毎に計4回繰り返すことで実験動物倫理規定を遵守した。
 本報告書作成時点で血中濃度の測定が終了している24点で薬物動態を実施したところ、薬物動態モデルは2コンパートメントモデルが最も適していた。今回の投与量では有意な呼吸抑制が認められたが、心拍数への影響は認められなかった。全ての血中濃度の測定が終了し次第、再度薬物動態解析を実施、得られた情報を基に全身麻酔のための投与速度や投与量等をシミュレーションする予定である。



H28-C10
代:松尾 光一
分担:山海 直
分担:Suchinda Malaivijitnond
協:森川 誠
分担:Pomchote Porrawee
マカクにおける繁殖季節性と運動のおよぼす骨格加齢への影響

学会発表
Makoto Morikawa, Porrawee Pomchote, Tadashi Sankai, Yuzuru Hamada, Koichi Matsuo. Seasonality in bone metabolism of auditory ossicles and long bones in the primate Macaca fuscata.(August 21-24, 2016) Australian and New Zealand Bone and Mineral Society (ANZBMS)(Queensland, Australia).

森川誠、Pomchote Porrawee、山海直、濱田穣、松尾光一 ニホンザルの骨密度は季節性変動を示す(2016年7月20-23日) 第34回日本骨代謝学会学術集会(大阪).
マカクにおける繁殖季節性と運動のおよぼす骨格加齢への影響

松尾 光一 , 森川 誠

ヒトは通年繁殖性であるのに対し、ニホンザルは季節繁殖性を示す。ニホンザルでは毎年、繁殖期と非繁殖期に性ホルモンが増減する。性ホルモン濃度の観点からは、ヒトでいえば、年ごとに若年と老年を行き来するような状態であるといえる。しかし、ニホンザルの骨密度が毎年増減するかどうかは知られていない。今回、我々はニホンザルにおいて、最小の骨である耳小骨と、最大の長管骨(大腿骨など)の骨密度が、季節に伴いどのように変動するかを解析した。
まず、個体ごとのさらし骨標本から、オス75頭分、メス71頭分の耳小骨と大腿骨を選別した。死亡時の骨量や骨密度は、骨の標本化を経て保存されていると仮定し、マイクロCTを使って骨量と骨密度を定量した。死亡時の日付や年齢から季節変化を解析したところ、オスでは、ツチ骨と大腿骨の骨密度が季節性変動を示した。次に、生体オス14頭の橈骨遠位端を、繁殖期と非繁殖期に末梢骨用の定量的CT装置(pQCT)で測定し、さらに12頭の血中テストステロン濃度および8頭の血中25-(OH)ビタミンD3も繁殖期・非繁殖期で定量した。これらから、オスのニホンザルでは、骨量や骨密度が「生殖と連動した季節性の変動」を示すことが示唆された。



H28-C11
代:中内 啓光
分担:長嶋 比呂志
分担:平林 真澄
協:正木 英樹
協:海野 あゆみ
協:佐藤 秀征
異種生体環境を用いたチンパンジーiPS細胞からの臓器作製
異種生体環境を用いたチンパンジーiPS細胞からの臓器作製

平林 真澄 , 正木 英樹, 海野 あゆみ, 佐藤 秀征

チンパンジー3個体の末梢血の提供を受け、それぞれについてセンダイウィルスを用いてtransgene-free iPSCを樹立した。樹立したiPS細胞にキメラ形成に望ましいと考えられる細胞死阻害処理あるいはナイーブ化処理を施し、マウス胚に移植検討を行った。ただし、ナイーブ化に関してはヒトiPSCに同様の処理を施した場合とは遺伝子発現プロファイルが異なる面があり、ナイーブ化が達成できていない可能性がある。ナイーブ化については多くの手法が報告されており、どの手法が適用できるかは今後も更に検討を続ける必要がある。これらの細胞株をマウス胚に移植し、どの株が高頻度にキメラ形成できるか検証を進めている段階である。また、ブタ胚への移植準備も整い、pilot studyを終えたところであり、平成29年度は本格的にチンパンジー細胞-ブタキメラ作製に取り組む予定である。これらの結果をまとめ、平成29年度中にも成果を論文発表・学会報告する予定である。


H28-C12
代:岩槻 健
分担:高橋 信之
協:佐藤 幸治
協:粟飯原 永太郎
協:大木 淳子
協:熊木 竣佑
霊長類由来ex vivo培養系を用いた消化管細胞機能の解析

学会発表
岩槻健 味幹細胞培養系の確立(2017年3月28日) 第94回日本生理学会大会(浜松).

岩槻健、難波みつき、熊木竣佑、大木淳子、今井啓雄、山根拓実、大石祐一 霊長類味蕾オルガノイド培養系の確立(2017年3月19日) 日本農芸化学会2017年度大会(京都).

熊木竣佑、大木淳子、山田夏実、奥田明日香、山根拓実、大石祐一、今井啓雄、粟飯原永太郎、岩槻健 消化管オルガノイドを用いた感覚細胞系譜への分化誘導(2016年12月3日) 第22回 Hindgut Club Japan(東京).
霊長類由来ex vivo培養系を用いた消化管細胞機能の解析

岩槻 健 , 高橋 信之, 佐藤 幸治, 粟飯原 永太郎, 大木 淳子, 熊木 竣佑

 本研究の目的は、霊長類から腸管オルガノイドを作製し、ex vivoにおいて食品因子などに対する腸管細胞の応答性を解析することである。霊長類から腸管オルガノイドを作製することにより、げっ歯類では解析不能であったヒトに近い細胞でのアッセイが可能となると考えられる。
 前年度までにアカゲザルの腸管よりオルガノイドの作製に成功したが、継代すると細胞は増えず、げっ歯類とは異なる培養条件や継代条件を確立する必要が生じていた。そこで、平成28年度では、ニホンザルの腸管を出発材料に様々な実験条件を設定することで、霊長類に適した培養方法や継代法を見いだすことに成功した。具体的には、培地に添加するWnt3aの活性やBSAの種類により、霊長類腸管オルガノイドの増殖活性が変化することが明らかとなった。げっ歯類腸管オルガノイドはWnt3aやBSAの添加を必要とせず、霊長類オルガノイドを培養する際に注意すべき点である。また、継代法に関しては、Trypsinを使い単一細胞にする方法にて継代が安定した。これもシリンジ等を使い物理的にクリプトを分離するするげっ歯類オルガノイドの継代法とは異なる点である。現在、増殖活性の強いオルガノイドから最終分化した細胞を効率よく誘導させるため様々な培養条件を検討している。



H28-D1
代:川合 伸幸
サルの脅威刺激検出に関する研究

論文
 川合伸幸( 2016)  コワイの認知科学  日本認知科学会(編) 認知科学のススメ シリーズ  第2巻: 130. 謝辞 なし

学会発表
Nobuyuki Kawai Why does snakes draw our attention more strongly than other animals?( (2018/10/7)) An international symposium "Evolution of Brain, Cognition, and Emotion"( Tokyo, Japan).
サルの脅威刺激検出に関する研究

川合 伸幸

ヒトがヘビやクモに対して恐怖を感じるのは生得的なものか経験によるのか長年議論が続けられてきた。我々は、ヘビ恐怖の生得性は認識されていることを示すために視覚探索課題を用いて、ヒト幼児や(ヘビを見たことのない)サルがヘビの写真をほかの動物の写真よりもすばやく検出することをあきらかにし、ヒトやサルが生得的にヘビに敏感であることを示した。しかし、ヘビをすばやく検出する視覚システムは、ヘビのカモフラージュを見破れるようにできているのかは不明である。我々はヒト成人は、ほかの動物に比べてノイズを混ぜた写真からヘビを正確に認識できることを示した。このことをサルで検証した。4頭で見本合わせ課題を習得させた。1頭はまだ見本合わせ課題の習得段階である。3頭でテストが終了した。見本刺激と2つの選択肢を対応させる課題で、プローブテストとして、見本刺激にさまざまな量(10-50%)のノイズを混ぜてどれだけ認識できるかを調べたところ、1頭はノイズが多くなってもヘビの認識がもっともすぐれたが、別の1頭はむしろヘビの認識がもっとも劣った。残りの1頭のヘビの認識率は中間であった。見本刺激と選択刺激を直接対応させる課題でははっきりした結果は得られなかった。そこで、H29年度は見本刺激を消した後に選択肢を提示し、記憶と照合する課題でヘビの認識がすぐれるかを検証する。


H28-D3
代:Julie Duboscq
Connecting the dots: linking host behavior to parasite transmission and infection risk
Connecting the dots: linking host behavior to parasite transmission and infection risk

Julie Duboscq

Investigating infectious disease dynamics is important for managing health of livestock, wildlife, and humans, as well as species/habitat conservation, public health and economic issues. For this project, we studied simian foamy virus (SFV) and Escherichia coli infection patterns in Japanese (and Rhesus) macaques to understand: 1/ factors determining intensity, prevalence and diversity of pathogens in relation to individual and social network characteristics, and 2/ infection risk and transmission pathways of pathogens within social networks. We focused on socially-transmissible parasites that are endemic and relatively host-specific. They are of low virulence but nevertheless monopolize host resources and are not without fitness consequences. These organisms further provide a good model to examine transmission dynamics. Initially, we planned to conduct the study at Koshima, but data collection proved too complicated for a one-year project. During a short visit, we collected a few fecal samples and have stored them at the Primate Research Institute for reference. Instead, we switched our focus to captive macaques at KUPRI where I collected behavioural and biological samples on two social groups. We are now establishing SFV and E. coli genetic profiles for each host, and matching them to individual (age, sex) and social (centrality in aggression and grooming networks) characteristics to determine transmission pathways. Preliminary data show that 56/58 adults (>4yo), 30/34 juveniles (1-4yo) and 7/22 infants (<1yo), as well as 63/75 females and 30/39 males tested positive for SFV. Preliminary data on 15 Rhesus and 16 Japanese macaques showed that dyads that groomed more and that were of similar age shared more similar virus strains than others, whereas aggression frequency, kinship, or dominance rank did not seem to affect strain similarity. These effects may be linked to 1/ a higher risk of transmission between individuals in frequent active body contact and 2/ natural viral strain evolution, some strains existing predominantly in some years but not in others. This research can inform animal population management and welfare as well as give insight into evolutionary pressures on sociality and parasitism in animal groups.


H28-D4
代:石野 史敏
協:金児?石野 知子
協:李 知英
協:入江 将仁
レトロエレメント由来の獲得遺伝子の霊長類における分布解析

論文
Masahito Irie, Akihiko Koga, Tomoko Kaneko-Ishino and Fumitoshi Ishino (2016) An LTR Retrotransposon-Derived Gene Displays Lineage-Specific Structural and Putative Species-Specific Functional Variations in Eutherians Frontiers in Chemistry 4:Article 26.

Masahito Irie, Akihiko Koga, Tomoko Kaneko-Ishino and Fumitoshi Ishino (2016) An LTR Retrotransposon-Derived Gene Displays Lineage-Specific Structural and Putative Species-Specific Functional Variations in Eutherians Frontiers in Chemistry 4:Article 26.

学会発表
Tomoko Kaneko-Ishino, Masahito Irie, Akihiko Koga and Fumitoshi Ishino An LTR retrotransposon derived SIRH11/ZCCHC16 gene involved in cognitive function displays lineage-specific structural and putative species-specific functional variations in eutherians.(September 20-23, 2016 ) The 20th Evolutionary Biology Meeting at Marseilles(CRDP, Marseilles, France).

石野(金児)知子、入江将仁、古賀章彦、石野史敏 脳で機能するレトロトランスポゾン由来の遺伝子SIRH11/ZCCHC16は真獣類において大きな構造・機能的バリエーションを示す(2016年12月1日) 第39回日本分子生物学会年会(パシフィコ横浜、横浜).

Tomoko Kaneko-Ishino, Masahito Irie, Akihiko Koga and Fumitoshi Ishino An LTR retrotransposon derived SIRH11/ZCCHC16 gene involved in cognitive function displays lineage-specific structural and putative species-specific functional variations in eutherians.(September 20-23, 2016 ) The 20th Evolutionary Biology Meeting at Marseilles(CRDP, Marseilles, France).
レトロエレメント由来の獲得遺伝子の霊長類における分布解析

石野 史敏 , 金児?石野 知子, 李 知英, 入江 将仁

ヒトゲノムにはレトロエレメント由来の獲得遺伝子群である11個のSIRH遺伝子が含まれる。これらの多くは真獣類特異的遺伝子であり、近年の研究から、ヒトやマウスを含む真獣類の個体発生機構の様々な特徴(胎生や高度の脳機能など)に深く関係する機能を持つことが明らかになってきた。そのため、真獣類の進化を促した遺伝子群である可能性が高いと考えている。脳で発現し行動に関係するSIRH11/ZCCHC16は、南米に生息する異節類において偽遺伝子化しているが(Irie et al. PLoS Genet 2015)、本年度の共同研究においては、異節類に加え、北方獣類でも系統特異的に大きな変異や欠失があることを明らかできた。その中で、霊長類では南米の新世界ザルではN末領域の大きな欠失、テナガザルの系統ではC末のRNA結合モチーフの欠失や遺伝子全体の欠質があることを明らかにした。Sirh11/Zcchc16は脳におけるノルアドレナリン量の調節を介して認知機能に関係していることから、霊長類の行動進化にも直接関係する可能性が高いと考えている(Irie et al. Front Chem 2016)。


H28-D5
代:杉田 昌彦
協:森田 大輔
脂質を標的としたサル免疫システムの解明
脂質を標的としたサル免疫システムの解明

杉田 昌彦 , 森田 大輔

本研究グループは、アカゲザルにおいて、サル免疫不全ウイルス由来のリポペプチドを特異的に認識するT細胞の存在を明らかにし、その分子機構の解明を目指した研究を展開してきた。まずリポペプチド特異的T細胞株の抗原認識を阻害するモノクローナル抗体を作出しその生化学的解析を進めた結果、その認識抗原がアカゲザルMHCクラス1分子であることを見出した。そこでアカゲザル末梢血単核球よりMHCクラス1遺伝子群を単離し、それぞれをトランスフェクトした細胞のリポペプチド抗原提示能を検証することにより、2種のリポペプチド提示アカゲザルMHCクラス1アリルを同定した。そのうちの一つについては、リポペプチドを結合させた複合体のX線結晶構造解析を昨年完了し、リポペプチド結合様式を解明した(Nature Communications. 7:10356, 2016)。本年度、もう一つのリポペプチド提示分子について、X線結晶構造の決定に成功した(投稿準備中)。さらに、この分子に結合する内因性リガンドとして非ペプチド小分子を同定した(投稿準備中)。アカゲザルの新たな免疫システムを解明した本研究成果は、免疫学の基本パラダイムの一つであるMHCクラス1分子によるペプチド抗原提示の固定的概念に修正を加える必要があることを示している。


H28-D6
代:日比野 久美
協:竹中 晃子
ヒト動脈硬化症のアカゲザルモデル作出のための基礎研究
ヒト動脈硬化症のアカゲザルモデル作出のための基礎研究

日比野 久美 , 竹中 晃子

低密度リポたんぱく質受容体(LDLR)のLDLとの結合部位であるエクソン3領域にCys61Tyr変異を有する家族性高コレステロール(Ch)血症を示すインド産アカゲザル家系(7頭)が動脈硬化症のモデル動物となりうるかを調べてきた。Chを含まない通常食においても血中総Ch(t-Ch)値、LDL値は有意に高いが、動脈硬化指数LDL/HDL>3.5、t-Ch/HDL>5.0とはならない。H25, H26年には0.1%Ch含有食を投与したところ、ヘテロ接合型♂#1784のみが投与7週目で動脈硬化指数を超えた。#1834はLDL値は同様に上昇したが、HDL値が若干高く指数に達しなかった。今年度はホモ個体を含む4頭に0.3%Chを投与したところ、#1834は11週目以降指数を超えた。したがって、ヘテロ接合型#1784 (♂)と#1834 (♂)はモデル動物となりうることが明らかとなった。しかし、唯一のホモ接合個体#2041(3歳)のLDL値は正常個体と変わらず、考察した結果、年齢の影響の可能性が示唆された。正常マカカ属サル500頭で調べた結果からは6~7歳までt-Ch値 (LDL値)が約2割低下し続けることを以前明らかにしているので、H29年度には4歳同年齢の正常、ヘテロ、ホモ接合型の3頭について0.3%Ch含有食を投与し、血中リポたんぱく質中に含まれるCh値を求め、ホモ接合型のLDL値が高いことを確認する予定である。ホモ接合型#2041は♀であり、HDL値は低く成長により変化しにくいことから、将来成熟した折には動脈硬化指数の高い個体の繁殖のための重要な一員となりうることを期待したい。


H28-D7
代:保坂 和彦
野生チンパンジーの老齢個体の行動及び社会的地位の研究
野生チンパンジーの老齢個体の行動及び社会的地位の研究

保坂 和彦

 本年度は前年度に実施したマハレ(タンザニア)のチンパンジー調査で得た資料の整理を進めつつ、霊長研図書室の協力を得て、関連文献を収集した。本課題を申請した時点で生存していた50歳超の老齢雌3頭は相次いで消失し、現在は40代の雌が2頭いるのみである。生存雄の最高齢は38歳である。50歳超の老齢個体に焦点を合わせることはできなくなったため、今後は広い年齢の成熟個体について生存率・社会行動・採食・繁殖等が加齢に伴ってどのように変化するかを研究していきたい。文献としては、ンゴゴ(ウガンダ)のチンパンジーに関する最新報告(Wood et al.2017)が重要である。ンゴゴにおける最長寿命は66歳を記録した。マハレにおける最長寿命記録は55歳であるが、これが過小評価である可能性(Hosaka & Huffman 2015)を考慮すれば、チンパンジーの潜在寿命は60代半ばを超えるものと結論できる。また、Woodらは、ンゴゴのチンパンジーが示す確率論的生存曲線のパターンが狩猟採集民のものとよく似ていることを示唆した。マハレについてNishidaら(2003)が示した生存曲線は若い世代の死亡率が高いことが特徴であったため、このような地域間の違いをもたらす要因が何であるか探ることが今後の課題と思われる。


写真1.推定55歳を記録してから消失したワクシ(中央、2015年8月撮影)。相互毛づくろいの相手は元アルファ雄の息子アロフ。


H28-D8
代:黒鳥 英俊
飼育下にあるオスオランウータンの第二次性徴におけるフランジ発達過程と性ホルモン濃度動態との関連性について
飼育下にあるオスオランウータンの第二次性徴におけるフランジ発達過程と性ホルモン濃度動態との関連性について

黒鳥 英俊

フランジ成長期の雄オランウータンのテストステロン、成長ホルモン、黄体形成ホルモン、およびジヒドロテストシテロン濃度はアンフランジ雄よりも高いことが知られている(Maggioncalda AN et al., 2000)。しかしフランジの成長過程におけるこれらホルモンの濃度動態は調べられていない。
そこで本研究では、フランジ成長期にあった1個体の雄の尿について、テストステロンおよびコルチゾール濃度を測定し、フランジ成長との関連性を調べた。その結果、特にテストステロンについて、フランジが成長するにつれて濃度上昇が認められた。また、アンフランジおよびフランジ雄の成長ホルモン濃度の測定を追加し、フランジ成長との関連性を検証した。成長ホルモン濃度測定には、ヒト用の市販測定キットを使用した。その結果、すでにフランジ雄であった個体では低濃度しか検出されず、測定キットの検出限界値以下を推移していた(<2.5 ng/ml)。一方、フランジ成長期にあった個体では、フランジ成長が認められてから約1年後以降から高濃度の値を連日で検出した(115.7-399.0 ng/ml)。ただし、それ以外の期間では、ほとんどの日でフランジ雄と同様に検出限界値以下の低値を示していた(<2.5 ng/ml)。本研究成果により、フランジ成長過程において、フランジ成長がある程度進んだ雄において、成長ホルモンの分泌が認められることが判明した。



H28-D9
代:荒川 高光
協:幅 大二郎
下肢骨格筋の形態と支配神経パターンの解析

論文
Watanabe Y, Arakawa T, Kageyama I, Aizawa Y, Kumaki K, Miki A, Terashima T.(2016) Gross anatomical study on the human myocardial bridges with special reference to the spatial relationship among coronary arteries, cardiac veins, and autonomic nerves. Clin Anat. 29(3):333-41..

Watanabe Y, Terashima T, Arakawa T.(2016) A rare arterial branch distributing the thymus, ectopic intrathymic parathyroid and thyroid glands which passed ventral to the right common carotid artery: a case report Surg Radiol Anat in press.

Haba D, MinamiC, Miyagawa M, Arakawa T, Miki A.(2016) Morphological study on the pressure ulcer-like dermal lesions formed in the rat heel skin after transection of the sciatic nerves Acta Histochem in press.

Emura K, Arakawa T, Terashima T.(2016) Anatomical study of the brachial plexus in the common marmoset (Callthrix jacchus) Anat Rec in press.

学会発表
鈴木あゆみ, 堂野牧人, 荒川高光, 三木明徳 コモンマーモセットの肩甲挙筋、菱形筋、腹側鋸筋の形態と支配神経について( 2016年5月27日) 第51回 日本理学療法学術大会(北海道札幌市).

荒川高光, 寺島俊雄, 三木明徳 上殿神経が大殿筋を支配する例における詳細な神経の走行について( 2016年5月27日) 第51回 日本理学療法学術大会(北海道札幌市).

Arakawa T Functional and clinical relevance of the plantar intrinsic muscles of the foot(2016/8/5) The 3rd Congress of the Asian Association of Clinical Anatomists(Jinan, China).
下肢骨格筋の形態と支配神経パターンの解析

荒川 高光 , 幅 大二郎

アカゲザル個体とチンパンジ-個体の下肢骨格筋、とくに足底筋とヒラメ筋の形態と支配神経の解析を引き続き行った。ヒトでの足底筋欠如例における足底筋支配神経はヒラメ筋への支配神経の前枝(ヒトで恒常的)に取り込まれた可能性を探るため、ヒラメ筋の支配神経の詳細な分類を試みた。その中で、ヒラメ筋の遠位部、踵骨腱周辺に入る神経が見つかっているため、詳細に実体顕微鏡下でその分布領域を観察した。すると、踵骨腱周辺の枝はほとんどが踵骨腱に分布する知覚枝ではないか、と思われた。なぜなら、その分布する領域には筋束がほとんどなく、神経が腱内で自由に放散している形態を観察したからである。今後も詳細に観察を続けていきたい。


H28-D10
代:Julia Arenson
協:Stephen Frost
協:Frances White
Bergmann’s rule and clinal variation in skull size and shape of wild vs. captive fascicularis-group macaques
Bergmann’s rule and clinal variation in skull size and shape of wild vs. captive fascicularis-group macaques

Julia Arenson , Stephen Frost, Frances White

The aim of this study was to explore geographic variation in skull shape and size in fascicularis-group macaques. I collected 45 3D landmark coordinates over the cranium and used multivariate statistics to explore the relationship between geographic and anatomical landmarks. In addition, I landmarked two populations of translocated captive macaques, in Puerto Rico and Beaverton, OR and compared them to the wild cline. Both cranial size and shape are correlated with latitude in the wild populations. The translocated captive macaques were larger than expected, but were similar in shape to the wild population of origin, suggesting the cline in shape is evolutionary while the size cline may be more plastic. I came to the Kyoto PRI to collect additional samples of Macaca fuscata, to increase my sample size and confirm the preliminary results of my project.


H28-D11
代:小林 純也
霊長類細胞におけるDNA損傷応答・細胞老化の解析
霊長類細胞におけるDNA損傷応答・細胞老化の解析

小林 純也

 放射線をはじめ様々な環境ストレスでゲノムDNAは損傷を受けるが、正常な遺伝情報を保つ(ゲノム安定性)ために生物は損傷したDNAを修復する能力を持つ。しかし、このような修復能力は加齢により減退し、その結果、DNA損傷が蓄積し細胞老化が起こると考えられる。一方で、遺伝子は常に正確に修復・複製されると進化に必要な遺伝子の多様性がうまれないことから、修復・複製の正確度にはある程度の幅があって、ゲノム安定性と遺伝的多様性の間でバランスがとられている可能性がある。このようなDNA損傷応答能・修復能と細胞老化、ゲノム安定性・遺伝的多様性の関係を探るために、本研究ではヒトを含む霊長類繊維芽細胞でDNA損傷応答能の差異を検討することを計画した。
 平成28年度は平井啓久先生の研究室からチンパンジー(大型類人猿)、アカゲザル(旧世界ザル)、コモンマーモセット(新世界ザル)、リスザル(新世界ザル)、オオガラゴ(原猿)由来初代培養繊維芽細胞を凍結ストックとして提供を受けた後、培養方法について検討を行い、安定して細胞を維持できる培養方法を確立した。また、確立した培養法を用いて、若い継代数(PDL)の細胞の凍結ストックの作製を行った。さらに、DNA損傷応答・DNA修復能の解析の多くは抗体を用いて行うが、我々のこれまでの研究に用いてきたヒトタンパクに対する抗体が他の霊長類種でも使用可能かを検討するために、ヒト及び旧世界ザル由来のトランスフォーム細胞株を用いて、抗体の交差性を検討した。その結果、DNA損傷応答キナーゼでリン酸化されるKAP1, Chk2, Chk1のリン酸化に対する抗体は旧世界ザル由来細胞でも使用可能であった。また、DNA損傷応答の中心因子、NBS1, MRE11, RAD50に関してもヒトタンパクに関する抗体が使用可能であることがわかった。平成29年度の共同利用・共同研究でこれらの抗体を用いて、霊長類細胞間でのDNA損傷応答の差異について、検討する計画である。



H28-D12
代:岸本 健
協:安藤 寿康
協:多々良 成紀
協:山田 信宏
二卵性ふたごチンパンジーの行動発達に関する比較認知発達研究
二卵性ふたごチンパンジーの行動発達に関する比較認知発達研究

岸本 健 , 安藤 寿康, 多々良 成紀, 山田 信宏

高知県立のいち動物公園では,2009年4月に,母親サンゴが二卵性(雌雄)のふたごチンパンジーである女児サクラと男児ダイヤを出産した。2017年2月、サクラが多摩動物公園へ移動するまでの約8年間,ふたごは母親サンゴにより養育された。本申請課題の目的は、母親によるふたごの養育とふたごの発達の経過について縦断的に検討することであった。
 7歳齢となったふたごの近接関係について検討するために,2016年度には33回のスキャンサンプリングを実施し,近接率(2者が手の届く範囲にいる割合)を算出した。この近接率を2011年度から2015年度までのものと比較した結果,ふたご同士の近接率は減少していたものの,ふたごと他のおとなとの近接率と比べ依然,高い値であった。また,ふたごと母親サンゴとの近接率は,サクラに関しては2015年度(6歳齢時)と同程度であったが,ダイヤに関しては減少していた。一方で,ふたごの父親であるロビンとふたごとの近接率が上昇していた。この傾向は,特に男児ダイヤに関して顕著であった。これらの結果は,ふたごのうち,特に男児ダイヤが,母親サンゴへの依存を減らし,ロビンとの間で,遊びなどの社会交渉に割く時間を増やしていたことを示唆する。



H28-D13
代:中川 草
協:上田 真保子
協:宮沢 孝幸
協:下出 紗弓
協:坂口 翔一
内在性レトロウイルスが関与する霊長類進化
内在性レトロウイルスが関与する霊長類進化

中川 草 , 上田 真保子, 宮沢 孝幸, 下出 紗弓, 坂口 翔一

本共同研究に基づき、今年度はアカゲザルの帝王切開時の胎児試料を中心に、下記のサンプルのRNAを抽出した:大脳、小脳、胎盤[母親側、中間、胎児側]、筋肉、肺、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、精巣、皮膚
本来は全てのサンプルを次世代シーケンサで転写産物のRNA-seqを行いたいと計画しているが、予算の関係で、現在大脳、小脳、胎盤(母・胎児側)、筋肉を次年度にそれぞれ2サンプルずつイルミナHiSeq4000を使って大規模シーケンスを行う予定である。その後、発現している内在性レトロウイルスに由来する配列を大規模に同定し、機能解析を行う予定である。



H28-D14
代:古川 貴久
協:大森 義裕
霊長類の網膜の形成と維持を制御する分子機能の解析
霊長類の網膜の形成と維持を制御する分子機能の解析

古川 貴久 , 大森 義裕

 黄斑は網膜の中央部に存在するキサントフィルという色素が豊富にある直径1.5-2mm程度の領域である。この部分は、角膜から入射した光がレンズで屈折し焦点を結ぶ位置となる。黄斑では、錐体視細胞の密度が高く黄斑部では解像度が高い。ヒトを含む霊長類には黄斑が存在し、高精度な視力を発揮することができる。また、黄斑の異常はヒトにおいて黄斑変性を含む網膜疾患の原因となる。マウスを含む霊長類以外の哺乳類では黄斑は存在せず、黄斑の発生・維持のメカニズムはほとんど明らかになっていない。アカゲザルまたは、ニホンザル、コモンマーモセットなどの霊長類の網膜をRNA-seq解析、蛍光免疫染色、in situハイブリダイゼーション解析等を行うことで、黄斑に発現する特異的な遺伝子群の同定を試みる。特に錐体細胞の発生・維持・機能に重要な役割を果たす遺伝子の同定を目指す。
 昨年度は、適当な年齢の個体がなく、動物実験は実施できなかったことから、研究の直接の進展はなかった。本年度は、サンプルを得て実験を進展させる予定である。



H28-D15
代:朝長 啓造
協:小嶋 将平
内在性ボルナウイルスによるウイルス感染抑制メカニズムの解明
内在性ボルナウイルスによるウイルス感染抑制メカニズムの解明

朝長 啓造 , 小嶋 将平

 本共同研究は、霊長類に内在しているボルナウイルス様配列(EBLs)の機能を明らかにすることを目的に行われた。ヒトゲノムに存在するEBLsは、臓器および培養細胞で発現し、抗ウイルス作用などの機能を有することが当研究室において明らかとなっている。しかし、ヒト以外の真猿亜目に属するサルにおいてその配列、発現、および機能はまだ明らかとなっていない。そこで本研究では、新世界ザル、および類人猿由来の培養細胞を用い、これらに内在化したEBLsの探索、配列決定、発現解析、および機能の解析を目的として行った。分与されたのチンパンジー、ゴリラならびにマーモセット由来の繊維芽細胞よりゲノムDNAを抽出し、EBLsの配列をPCR法により同定を行った。またRNAを抽出し、RT-PCR法によりEBLs領域からのRNA発現を確認した。また、それらの結果をもとに、EBLsの配列の保存やプロモーターの保存について進化学的解析を遂行した。その結果、分与された細胞においては、ヒトで見られるすべてのEBLsが同じ遺伝子局座に内在化していることが明らかとなった。また、その中でhsEBLN-3と名付けられたヒトEBLsの相同遺伝子は、これら真猿亜目の細胞においてmRNAを発現しいることが明らかとなり、機能を有している可能性が示された。現在、これら真猿亜目において検出されたhsEBLN-3相同遺伝子をクローニングすることにより、その機能解明を進めている。


H28-D16
代:小倉 淳郎
協:越後貫 成美
マーモセット幼若精細管のマウスへの移植後の精細胞発生の観察

論文

学会発表
越後貫 成美 発生工学的手法を用いたマーモセット世代短縮技術の開発(H28.12.12) 第6回日本マーモセット研究会大会(東京大学(東京本郷)).

関連サイト
理研バイオリソースセンター遺伝工学基盤技術室HP http://ja.brc.riken.jp/lab/kougaku/
マーモセット幼若精細管のマウスへの移植後の精細胞発生の観察

小倉 淳郎 , 越後貫 成美

最近我々は、顕微授精技術を用いることにより、マーモセット体内で自然発生した生後1年前後の精子・精子細胞(未成熟精子)から受精卵が得られること明らかにした。そこで本研究では、さらに早期に顕微授精を行う可能性を検討するために、性成熟の早いマウスへ新生仔マーモセット未成熟精細管を移植し、精祖細胞からの精子・精子細胞発生が加速するかどうかを確認した。生後5ヶ月齢の雄マーモセット1匹より手術にて片側精巣を摘出し、免疫不全マウスであるNOD/scidの雄2匹の陰嚢腔に移植を行った。1匹は移植後2週間で体重減少が確認され、安楽殺後、移植組織を摘出して再移植を試みた。レシピエントマウスを解剖した結果、胸腺肥大が確認された。再移植レシピエントも2ヶ月で体重の減少が認められ再び別のマウス個体へ移植変えを行った。最初の移植より約4ヶ月後に2匹のレシピエントを安楽殺して、移植組織の組織形態、精子細胞の発生程度の確認を行った。計3回の移植を行った組織はT細胞の増殖が確認された。また、4ヶ月間同一個体に移植した組織は、精巣としての形態サイズの変化は認められず、精細胞も移植時からほぼ発生していない状態であった。
今回の結果より、マーモセット組織の移植によりレシピエントマウスに免疫拒絶反応が起きたことが予想された。よってこれ以降はNOD/scidよりさらに重度の免疫不全を示し、異種組織の受容度が高いNOGあるいはNSG系統をレシピエントマウスとして利用することとした。生後7ヶ月齢の雄マーモセット1匹より手術にて片側精巣を摘出し、NSGの雄2匹の陰嚢腔に移植を行った。現時点で移植後6週を経過したが、レシピエントの体重・体調変化は認められていない。レシピエントマウスの体調によるが、移植後6ヶ月以降で移植組織を回収、組織標本を作製して精子発生の程度について、生体内での自然発生と比較する予定である。



H28-D17
代:和田 直己
哺乳類のモメントバランスとロコモーション
哺乳類のモメントバランスとロコモーション

和田 直己

肩甲骨に関する研究(研究タイトル:哺乳類の肩甲骨の材料力学的特徴および肩帯周辺筋のlocomotionとの関係)に用いられた番号No90009、9783、90008、10042、10042の標本については他の約160種の哺乳類のデータとともに現在、論文化の作業中です。肩甲骨、周辺筋肉のデータと動物のサイズ、系統、生息域(ロコモーション)との関係を明らかにするのが目的です。
寛骨に関する研究(研究タイトル:哺乳類の寛骨と脊柱(椎体)の形態と移動運動)に用いた番号90010、90010、90012、90012、10042の標本については現在、統計的作業中である。肩甲骨の研究と同様、多くの哺乳類のデータを収集し解析することで研究目標は達成される。寛骨についてはまだ改正された動物種は45であり、これから100種以上のデータ解析が必要となる。椎骨については頸椎から尾椎までのデータ収集が必要で作業が始まった段階である。
モメントバランスについての研究(研究タイトル:哺乳類のモメントバランスとロコモーション)に使用したNo. 10042, 90017の検体についても上記のデータと同様多くのデータが必要となる。モメントの算出には検体が必要であるがゴリラについては早期返却が要求されたために求められないが、現在データ収集中である。



H28-D18
代:五十嵐 由里子
協:久世 濃子
類人猿における骨盤の耳状面前溝の性差および種差
類人猿における骨盤の耳状面前溝の性差および種差

五十嵐 由里子 , 久世 濃子

ヒトでは、骨盤の仙腸関節耳状面前下部に溝状の圧痕が見られることがあり、特に妊娠・出産した女性では、深く不規則な圧痕(妊娠出産痕)ができる。直立二足歩行に適応して骨盤の形態が変化し、産道が狭くなった為にヒトは難産になった、と言われている。妊娠出産痕もこうしたヒトの難産を反映した、ヒト経産女性特有の形態的特徴であると考えられてきた。しかし、我々は、平成27年度までに京都大学霊長類研究所や国内の博物館、動物園等に収蔵されていた大型類人猿3属39個体の耳状面前下部を観察し、大型類人猿でも耳状面前下部に圧痕が見られることを確かめた(圧痕があった個体;ゴリラ:6、チンパンジー:6、オランウータン:0)。本研究では。圧痕の形成要因を調べる為に、類人猿の遺体を解剖し、耳状面に付着する筋肉や靭帯の状況を調べた。平成28年度はチンパンジー4個体(雄2、雌2)、ゴリラ1個体(雄)、オランウータン1個体(雌)の計6個体を観察した。その結果、3属ともに、耳状面にはヒトのように分厚い靱帯が付着することはなく、圧痕が形成されている場合は、筋肉や筋膜が直接、圧痕に入り込んでいることを確認した。以上から類人猿の圧痕の形成過程は、ヒトとは異なっている可能性がある。今後は更にサンプル数を増やし、類人猿での種間差を立証し、圧痕の形成要因を明らかにしたいと考えている。


H28-D19
代:森 幾啓
蛍光標識マルチプレックスPCRによる新規動物種識別法の開発
蛍光標識マルチプレックスPCRによる新規動物種識別法の開発

森 幾啓

 網羅的な動物種の同時識別法を開発するために、ミトコンドリアDNAをターゲットとした蛍光標識マルチプレックスPCRによるフラグメント解析を行った。
 哺乳類9種類について、ミトコンドリアゲノム中のCytochrome b遺伝子領域を用いて種特異プライマーを設計した。また、非コード領域であるHV (Hyper Variable) 領域の一部を増幅可能な、哺乳類および鳥類共通プライマーをそれぞれ設計した。各プライマーについてアニーリング温度および非特異増幅の有無を検討し、蛍光標識マルチプレックスPCRを行ったところ、一部のプライマーについては非特異増幅が確認され再設計が必要であると考えられたが、サンプルを入手できた動物24種については識別することが可能であった。また、遺伝的には同種であるブタ(西洋品種)とニホンイノシシをSNP(一塩基挿入)により識別できる可能性が示唆された。なお、本共同利用研究ではニホンザル6個体、アカゲザル6個体、タイワンザル2個体の試料を利用させていただいた。解析の結果、ヒト、ニホンザル、アカゲザルおよびタイワンザルについては、増幅産物長に大きな差はなかったものの、ヒト増幅産物に比べてニホンザルが2bp、アカゲザルが4bp、タイワンザルが5bp大きく、同一プライマーペアによって霊長類間を識別できると考えられた。



H28-D20
代:黒田 公美
協:齋藤 慈子
協:篠塚 一貴
協:矢野 沙織
マーモセット人工哺育個体の音声発達
H28-D21
代:佐藤 真伍
飼育下のニホンザルおよびアカゲザルにおけるBartonella quintanaの分布状況とその遺伝子系統
飼育下のニホンザルおよびアカゲザルにおけるBartonella quintanaの分布状況とその遺伝子系統

佐藤 真伍

 Bartonella菌は哺乳類の赤血球内に持続感染する細菌で,少なくとも14菌種2亜種が人に対して病原性を有する。これらのうち,Bartonella quintanaは,第一次・二次世界大戦時に兵士の間で流行した塹壕熱の原因菌として古くから知られている。近年では,中国や米国で実験用に飼育されていたアカゲザルやカニクイザルからもB. quintanaが分離されている。また,野生のニホンザルにもB. quintanaが分布していることが明らかとなっている(13.3%;6/45頭)。
 本研究では,京都大学霊長類研究所内で飼育されているニホンザル173頭およびアカゲザル101頭について,B. quintanaの保菌状況を細菌学的に検討した。その結果,和歌山県由来の椿群のニホンザル1頭(個体#:TB1)からBartonella菌が分離(添付図)され,菌種同定の結果,B. quintanaと同定された。一方,その他のサルから本菌は分離されなかった。
 今後,TB1から分離された株について,複数の遺伝子領域を用いて遺伝子型別するMulti-locus sequence typing(MLST)によって解析するとともに,同個体における持続感染の有無についても検討していく必要があると考えられた。



H28-D22
代:Jeanelle Uy
The relationship between gut size and torso anatomy
The relationship between gut size and torso anatomy

Jeanelle Uy

Humans have barrel-shaped ribcages and narrow pelves compared to great
apes, features which may have first appeared in early hominins. The purpose of this
project is to determine if gut size is related to torso morphology. It has been a
longstanding assumption that the ribcage and pelvis can predict gut size in fossil
species. However, no data has been published showing that gut volume can be reliably estimated from skeletal anatomy. This study will test if dimensions of the ribcage and ilium predict gut size in hominoids. Existing whole abdomen scans from humans were
obtained from my institution (UW-Madison) and existing scans of Pan were requested
from KUPRI. If gut size is related to the skeleton, this may allow the first prediction of gut size in extinct hominins supported by data. Last year, the feasibility of the project
was determined by measuring gut volume, lower ribcage depth, lower ribcage breadth,
and bi-iliac breadth on the CT scan of a chimpanzee provided by Dr. Miyabe-Nishiwaki and on the human scans before proceeding to larger sample sizes. Gut volume was calculated by measuring the surface area of the gut in each image slice, multiplied by the thickness of the slice, giving organ volume for that slice. The sum of each slice volume will be obtained to calculate the total gut volume. The method is feasible on the CT scan sent of the chimpanzee and on the CT scans of humans obtained through UWMadison.
Once more scans are measured as we continue the project, the null
hypothesis that ribcage and pelvic dimensions are unrelated to gut volume beyond their mutual relationship with body mass can be tested.



H28-D23
代:佐藤 佳
協:小柳 義夫
協:三沢 尚子
協:中野 雄介
協:中川 草
協:上田 真保子
霊長類ゲノム解析を通したウイルス感染制御遺伝子の進化に関する研究
霊長類ゲノム解析を通したウイルス感染制御遺伝子の進化に関する研究

佐藤 佳 , 小柳 義夫, 三沢 尚子, 中野 雄介, 中川 草, 上田 真保子

年度途中(12月)の採択であったため、使用できる試料を入手できなかった。
平成29年度より本格的に研究が始動すると思われる。使用できる試料が入手でき次第、解析を開始する。



H28-D24
代:奥村 文彦
中部地域における飼育チンパンジーの父系についての実態調査
中部地域における飼育チンパンジーの父系についての実態調査

奥村 文彦

 チンパンジーはIUCNが定める絶滅危惧種であり、飼育個体群を持続的に維持管理することは保全に直接貢献する。2016年10月現在、チンパンジー317個体が日本で飼育されており、これらは日本動物園水族館協会(JAZA)によって血統管理されている。血統登録台帳から、各個体が残した子孫の数を知ることができるものの、現在の飼育状態(どの個体と同居しているのか)や繁殖能力(交尾や育児に関する行動特性)が記載されていないために、今後繁殖する可能性があるのかどうかを判別できず、飼育個体群の動態予測は非常に難しい。特に、雌に比べて雄は一部の少数個体のみが繁殖しており、飼育個体群内の遺伝的多様性を保つためには子孫を残した父系の規模を明らかにする必要がある。そこで中部地域の飼育施設を対象に、繁殖の可能性がある雄の個体数および父系の数を明らかにすることを目的として飼育状況調査を行った。
 中部地域には10の飼育施設で63個体のチンパンジーが飼育されている。雄の総数は26個体で、繁殖実績のある個体は8施設で13個体であった。その年齢は19歳から50歳の範囲であり、平均年齢 (±SD) は34.5±8.4歳で雌と同居しているのは11個体であった。繁殖制限されていない個体はそのうち6個体である。他の2個体のうち1個体は雄同士で同居し、1個体は単独飼育となっている。ファウンダーとなる雄は6個体であった。繁殖実績はないが交尾が過去に確認されている、または成育歴や社会性から交尾可能と推測される雄は5施設に5個体であった。その年齢は2歳から19歳の範囲であり、平均年齢 (±SD) は9.8±6.6歳ですべて繁殖実績のある雄の子孫である。
今後は飼育下個体群の持続的管理のため,こうした情報を飼育施設間で積極的に交換し,未繁殖個体の遺伝子を次世代に残せるよう個体レベルでの繁殖計画の立案と着実な実行が急務である。



H28-D25
代:塩田 達雄
協:中山 英美
協:齊藤 暁
サル初代分離細胞における変異型サル免疫不全ウイルスの増殖
サル初代分離細胞における変異型サル免疫不全ウイルスの増殖

塩田 達雄 , 中山 英美, 齊藤 暁

本年度、3頭のカニクイザル血液から分離したCD4陽性T細胞において、カプシド領域に点変異を導入することで非分裂期細胞に感染しないよう変化させた変異型サル免疫不全ウイルス(SIV)の増殖特性を調べた。その結果、変異型SIVの増殖は野生型SIVとほぼ同程度であることがわかった。今回用いたCD4陽性T細胞はPHAおよびIL-2を用いて活性化状態を誘導してから感染に用いたことから、少なくとも活性化CD4陽性T細胞での増殖において変異の影響は限定的であることが示唆された。次年度以降は、マクロファージおよび静止期CD4陽性T細胞を用いた感染実験を行うことで、これらの細胞種における変異の影響を明らかにしていきたい。また、アカゲザルとカニクイザルではSIVに対する感受性が異なるという過去の報告があるため、それぞれの血液から採取した細胞を用いて、ウイルス感染実験を行い比較検討していきたい。


H28-D26
代:Elena Cattaneo
協:Giulio Paolo Formenti
Sequencing of huntingtin orthologs in several primate species
Sequencing of huntingtin orthologs in several primate species

Elena Cattaneo , Giulio Paolo Formenti

Within the framework of the project “Intermediate allele identification in non-human primates through Htt Exon1 sequencing”I have spent three weeks at Primate Research Institute with the general goal of sequencing Htt orthologs (rHtt – real Htt) and paralogs (pHtt) in up to 107 samples belonging to different individuals from 34 non-human primate species. These samples were available through PRI and their collaborators (essentially Japanese Monkey Center – JMC).
We are after the identification, if present, of a primate species with Htt genetic features similar to humans (i. e. high number of CAG repeats). Incidentally, the presence of an Htt pseudogene (pHtt) in the family of Callithricidae could also be investigated.

When at PRI, I immediately met the PRI collaborator from the Japanese Monkey Center at their annual meeting to establish a cooperative research effort that would have allowed samples retrieval. During the same meeting I have also presented in public our experimental plan.

After PRI 50th anniversary I have installed in the laboratory, verified the presence of all consumables that were previously ordered and started a series of preliminary experiments with the DNA already available.

While the preliminary experiments were on-going (PCR amplification, cloning, plasmid extraction and sequencing) I received a first batch of 12 from PRI tissues by Dr. Nagume Tani for DNA extraction, from which DNA was extracted and the samples were also processed. That week I have also presented our experimental plan to the weekly meeting of the Molecular Biology Section.

Finally, we could meet with Dr. Takashi Hayakawa from JMC to decide which samples to process from their tissue bank. We firstly decided to focus on New World Monkeys (100 samples): some of them harbour both rHtt and pHtt and represent a group of usually small primates, potentially suitable for disease modelling .

While I kept processing the first 12 samples from PRI I have prepared the first 21 tissue samples from JMC for DNA extraction. However I have noticed that when amplifying the Callithricidae samples, where both rHtt and pHtt is present, we get preferential amplification of pHtt over rHtt. So I designed a new strategy to selectively amplify the rHtt in those species. Despite this, amplification of rHtt in three new species (S. sciureus, A. trivirgatus, A. belzebuth) was achieved.
Results from sequencing of the samples from first 12 samples from PRI suffers the same issue reported above (i. e. preferential amplification of pHtt over rHtt) and moreover in JMC samples pHtt is present where it should not suggesting that there could have been some DNA contamination in the sample. This is possible since Dr. Hayakawa had reported that several of these samples were very old.

I have cloned and sent plasmid for sequencing from tissue samples of JMC, and started to apply the new strategy for assessing only rHtt.

Unexpected events related to personal matters forced me to return back to Italy ahead of time. At that point, results of sequencing for JMC samples were not conclusive. They suggested that some contamination is likely to be present but that it is also possible to sequence rHtt/pHtt from them. I was also unable to obtain results for the new strategy for assessing only rHtt in time. However I have applied it successfully once back in Italy, implying that it can be used also on the japanese samples.




H27
論文 45 報 学会発表 119 件
H27-A1
代:西岡 佑一郎
第四紀ニホンザル化石の標本記載と形態分析

論文

関連サイト
学と遊のロマン http://chicchaimon.blog.fc2.com/
第四紀ニホンザル化石の標本記載と形態分析

西岡 佑一郎

ニホンザルが第四紀の後期更新世から現在にかけて歯や骨の形態が変化したか明らかにするためには、化石標本個々の形態記載および現生種との比較が必要となる。霊長類研究所には、栃木県葛生産標本(顎歯5点)、岐阜県熊石洞産標本(頭骨2点、顎歯7点、体肢骨3点)、静岡県岩水寺産標本(顎歯2点)、静岡県白岩鉱山産標本(顎歯1点)、静岡県谷下採石場産標本(顎歯4点)、山口県秋吉台産標本(頭骨18点、顎歯37点、体肢骨214点)、高知県野田の竪穴産標本(頭骨1点)、高知県権現の穴産標本(顎歯1点)の合計295点の化石が所蔵されていることが判明した。また、その他の未報告資料として、滋賀県権現谷の蝶穴産標本(顎歯8点、体肢骨18点)、高知県猿田洞産標本(顎歯1点、体肢骨8点)、高知県穴岩の穴産標本(顎歯1点)を加え、標本の同定結果と産地・年代情報を整理してデータベース化した。標本の中には、現生ニホンザルよりもやや大型の個体や小型の個体が含まれている。今後、過去と現在のニホンザル間で形態差を定量的に比較し、個体変異、地域的な変異、年代的な変化を解析していく。


H27-A2
代:小林 和人
協:菅原 正晃
協:渡辺 雅彦
協:内ヶ島 基政
協:今野 幸太郎
協:伊原 寛一郎
ウイルスベクターを利用した霊長類モデル脳内への遺伝子導入と神経回路操作技術の開発

論文
Kobayashi, K., Kato, S., Inoue, K., Takada, M., and Kobayashi, K.(2016) Altering entry site preference of lentiviral vectors into neuronal cells by pseudotyping with envelope glycoproteins. Methods Mol. Biol. 1382:175-186.
ウイルスベクターを利用した霊長類モデル脳内への遺伝子導入と神経回路操作技術の開発

小林 和人 , 菅原 正晃, 渡辺 雅彦, 内ヶ島 基政, 今野 幸太郎, 伊原 寛一郎

霊長類の高次脳機能の基盤となる脳内メカニズムの解明とゲノム科学との融合のために、複雑な神経回路における情報処理とその調節の機構の理解が必要である。我々は、これまでに、高田教授の研究グループと共同し、マカクザル脳内のニューロンに高頻度な逆行性遺伝子導入を示すウイルスベクター (HiRet/NeuRetベクター)を開発するとともに、これらのベクターを用いて特定の神経路を切除する遺伝子操作技術を開発した。今回、コモンマーモセットを用いた脳構造と機能のマップ作製の研究を推進するために、HiRet/ NeuRetベクター技術を応用して経路選択的な神経機能の操作を行うとともに、その基盤となる神経回路構造の解析に取り組む。第一に、マーモセット脳内で効率的な神経機能の操作を目指して、導入遺伝子を効率的に逆行性導入するためのウィルスベクターを選択することを目指した。京都大学霊長類研究所の高田先生および中村先生のグループと共同し、FuG-B2を利用したHiRetベクターとFuG-Eを利用したNeuRetベクター(導入遺伝子としてGFPあるいはRFPを搭載)をマーモセットの脳内(線条体あるいは大脳皮質)に注入し、いくつかの入力経路(皮質線条体路、視床線条体路、黒質線条体路、皮質皮質路、視床皮質路)への逆行性遺伝子導入の効率を比較した。ベクター注入の4週間後に、GFPあるいはRFPに対する抗体を用いた免疫組織化学的手法により発現パターンの解析を行った。線条体へ注入した場合、FuG-Eを利用したNeuRetベクターの場合、FuG-B2を利用したHiRetベクターよりも、皮質線条体路、視床線条体路、黒質線条体路のいずれの投射路においても高い逆行性の遺伝子導入効率を示した。皮質に注入した場合には、FuG- Eベクターは皮質皮質路においてFuG-B2ベクターと同程度の導入効率を示したが、視床皮質路へはより高い導入効率を示すことが示された。これらの観察から、FuG-Eを利用したNeuRetベクターはより高い遺伝子導入効率を持つことが示された。また、FuG-Eベクターは、FuG-B2ベクターよりも数倍高い力価が得られるとともに、注入部位のグリア細胞への遺伝子導入が抑制されているため、組織損傷を軽減できるメリットがあることも確認できた。


H27-A3
代:深瀬 均
野生と飼育下のサル類における顎骨形態に関する研究
野生と飼育下のサル類における顎骨形態に関する研究

深瀬 均

本研究では、試料として、島根県・鳥取県・京都府・滋賀県・福井県の集団由来の成体のニホンザル(オス30体、メス26体)の下顎骨格標本を用いた。これらの試料を野生グループ・飼育導入世代グループ・飼育下3-4世代後グループの3グループに分け(各グループ、雄雌約10体ずつ)、「野生グループは飼育下のグループよりも下顎骨形態は頑丈である」という単純化した作業仮説を検証した。下顎骨計測器およびデジタルノギスを用いた各種外部形態計測の比較結果として、雌雄ともにグループ間に一貫した頑丈性に関わる形態差のパターンは見られなかった。さらに、マイクロCTスキャナとCT画像解析ソフトを用いて、下顎骨正中断面形状における骨質面積や断面二次モーメントなどの断面特性値を算出した。比較結果として、雄雌ともにグループ間での有意差は多くの項目において検出されなかった。サンプル数が限られており結論的ではないものの、本研究の予備的な結果は、霊長類研究所の所蔵標本に限った場合、野生と飼育下の顎骨形態には大きな差はみられないことを示唆するものである。また、種間比較を行う際に、野生・飼育下の標本をプールして使用することで結果に大きな影響は与えないことも示唆する。


H27-A4
代:Hao Luong Van
MtDNA phylogeograpy of slow lorises in Vietnam: conservation and reintroduction program

学会発表
Tanaka H, Luong V H Development of a mitochondrial marker for conservation genetics in the slow loris(17 October 2016) Generalization Meeting of Planned Research Program 2014-2016 "Evolution and Conservation of Asian Primates", Pre-symposium meeting for generalization meeting of cooperative Research Program of Primates Research Institute, Kyoto University( Sir Jayewardenepra University).
MtDNA phylogeograpy of slow lorises in Vietnam: conservation and reintroduction program

Hao Luong Van

The slow loris, including two species (Nycticebs bengalensis and N. pygmaeus) of Vietnam, is the vulnerable species in the IUCN Red List. In Vietnam, they are being overhunted for illegal pet trade, use for meat and materials of illegal traditional medicine. Center for Rescue and Conservative Organisms (CRCO) protects diverse organisms from the illegal trade, including the slow loris, and carry out the reintroduction of them to the wild. Although it is to be desired that such animals would be reintroduced into their original habitat, we don’t have the method to get information about it. In order to establish a system that can make clear the original habitat of the protected animals using DNA information, in this study we analyze the mtDNA sequence of the slow loris from known origin of habitat.
I examined 9 N. bengalensis and 5 N. pygmaeus, which included individuals without information of origin. DNA was extracted from hair samples. Firstly, I sequenced the cytochrome oxidase subunit 1 (COX1) gene of mtDNA and carried out the phylogenetic analysis together with dataset of Somura et al. (2012) to genetically check the species for my morphologically identified specimens. Next, I determined the 1.8 kb region including the whole length of cytochrome b gene and a partial sequence of D-loop, as a marker for analysis of original habitat of the slow loris. To avoid mis-amplifying mitochondria-like sequences integrated in the nuclear genome, I performed the 2 step PCR, consisting of the long accurate (LA-) PCR that amplify the region spanning 9 kb of mtDNA and the second PCR using the LA-PCR product as template to amplify the target region, and then, carried out DNA sequencing.
I could sequence the 1.8 kb region for all the samples examined. In N. bengalensis, 6-8 base substitutions were detected among 7 individuals from the northwestern region of Vietnam and 4 substitutions were found between 2 individuals from Soc Son Rescue Center, Hanoi (their origins were not known). There were 24-28 substitutions between the sample groups of the northwestern region and Soc Son Rescue Center. These results show that the 1.8 kb region is possible to be a good marker to analyze the origin of locality of N. bengalensis. Further study is necessary to accumulate the sequence data from the samples collected widely from their range in Indochina. As to N. pygmaeus, more samples should be examined. On the other hand, the utility of COX1 as a marker of species identification would be suspected because the COX1 phylogenetic tree did not clearly separate N. caucong from our N. bengalensis samples.



H27-A5
代:Aye San
Phylogenetic and population genetic studies for conservation of nonhuman primates in Myanmar
Phylogenetic and population genetic studies for conservation of nonhuman primates in Myanmar

Aye San

The purpose of the study is to extract phylogeographical information necessary for conservation of Myanmar’s nonhuman primates (NHP) by clarifying the phylogenetic relationship among the local populations and the phylogenetic status of Myanmar’s NHP within the range of each species. In 2015, the 2nd year of the planned research “International Cooperative Research on Evolution and Conservation of Asian Primates”, I examined new 4 populations of Myanmar’s endemic subspecies of the long-tailed macaque (Macaca fascicularis aurea; Mfa), and extended the phylogeographical research to other macaques. The present study is the first report of DNA analysis for inland populations of Mfa although the island populations of Mfa from southern Myanmar have already been examined (Bunlungsup et al. 2015). Firstly, I sequenced approx. 1200 bp of the whole length of mitochondrial D-loop region for all the individuals from 4 populations of Indian Single Rock Mountain (n=6), Bayin Nyi Cave (n=6), Mt. Zwekabin (n=1), and Kha Yon Cave (n=5). There was no mtDNA variation within each population while mtDNA sequences differed among 4 populations. As Bunlungsup et al. (2015) analyzed the partial sequence of cytochrome b (Cyt b) gene, I sequenced approx. 1.8 kb region that includes the whole length of Cyt b gene and hyper variable segment 1 of D-loop for further comparison. Similarly, I sequenced the 1.8 kb region for 3 individuals of M. leonina and one M. arctoides from Ye, Mon State and carried out phylogenetic analysis. The 3 sequence data of leonina obtained here was analyzed with another 7 data of leonina from different area in Myanmar. The result indicated that Myanmar’s M. leonina separated into at least 3 haplogroups; the first one formed a cluster with the Bangladesh sample, the second was related to the Thai South haplogroup, and the third was included in the cluster of Thai North and M. silenus. As to M. arctoides, more samples should be collected and examined in order to elucidate the phylogeography of the species in Myanmar.


H27-A7
代:星 英司
協:石田 裕昭
行動制御に関わる高次脳機能の解明に向けた神経ネットワークの解析

論文
Ishida H, Inoue K, Takada M, Hoshi E( 2016) Origins of multisynaptic projections from the basal ganglia to the forelimb region of the ventral premotor cortex in macaque monkeys Eur J Neurosci 43( 2): 258-69.

学会発表
Ishida H, Inoue K-I, Takada M, Hoshi E Origins of multisynaptic projections from the basal ganglia to the ventral premotor cortex in macaque monkeys( 2015/7/30) 日本神経科学学会( 神戸コンベンションセンター).

行動制御に関わる高次脳機能の解明に向けた神経ネットワークの解析

星 英司 , 石田 裕昭

 高次運動野が大脳基底核や小脳と形成するネットワークは動作の企画や実行において重要な役割を果たすが、そのメカニズムは依然として不明である。そこで、本研究ではこのネットワークの構造的基盤を明らかとすることを目指して実施された。シナプスを越えて逆行性に伝播する性質がある狂犬病ウイルスをトレーサーとして用いることにより、複数のシナプスをまたいだネットワーク構築を解剖学的に解析することを行った。本年度は、採餌行動において重要な把持動作と摂食動作の企画と実行の過程で中心的な役割を果たす運動前野腹側部(PMv)のネットワークに注目した。PMvに狂犬病ウイルスを微量注入し、ウイルスの伝播を大脳基底核内で解析することにより、PMvへ越シナプス性に投射する大脳基底核細胞の分布を解析した。その結果、大脳基底核の高次運動野領域に加えて、一次運動野領域と辺縁系領域の細胞がPMvへ投射することが明らかとなった。以上の結果は、PMvが把持動作と摂食動作を企画する過程において、辺縁系から対象物の価値に関する情報や行動の動機付けに関する情報を受け取る可能性を示唆した。さらに、運動実行時には動作に関する情報を一次運動野領域から受け取ることを示唆した。


H27-A8
代:南本 敬史
協:堀 由紀子
協:菊池 瑛理佳
遺伝子発現の生体内可視化と脳機能制御技術の確立

論文
Eldridge MAG, Lerchner W, Saunders RC, Kaneko H, Krausz KW, Gonzalez FJ, Ji B, Higuchi M, Minamimoto T, Richmond BJ.(2016) Disruption of relative reward value by reversible disconnection of orbitofrontal and rhinal cortex using DREADDs in rhesus monkeys. Nat Neurosci. 9(1):37-39.

学会発表
Minamimoto T PETイメージングと化学遺伝学的手法の融合によるサル脳科学研究の展開( 2016.3.11) 平成27年度 京都大学霊長類研究所共同利用研究会「霊長類脳科学の新しい展開とゲノム科学との融合」(京都大学霊長類研究所).

Minamimoto T. 脳につくった「鍵穴」をみる(2015.12.11) ナショナルバイオリソースプロジェクト「ニホンザル」第12回公開シンポジウム「第4期に向かうニホンザルバイオリソース~成果と展望~」(東京).

Minamimoto T. PET imaging of DREADDs in monkeys(2015.10.4-7) What is needed to harness chemogenetics for the treatment of human brain disorders?(The Banbury Center, Cold Spring Harbor Laboratory).
遺伝子発現の生体内可視化と脳機能制御技術の確立

南本 敬史 , 堀 由紀子, 菊池 瑛理佳

本研究課題において,独自の技術であるDREADD受容体の生体PETイメージング法と所内対応者である高田らが有する霊長類のウイルスベクター開発技術を組み合わせることで,マカクサルの特定神経回路をターゲットとした化学遺伝学的操作の実現可能性を飛躍的に高めること目指した.H27年度は組織化学的に検証を可能とする目的で,蛍光タグを共発現する複数のDREADD発現ウイルスベクターを開発し,マカクサル脳に注入し発現レベルをPETで確認するとともに,機能性を行動やイメージングを用いて評価することで,最適なDREADD発現ウイルスベクターをスクリーニングできる実験系を確立した.今後,霊長類脳機能を解明するうえで,より汎用性の高いウイルスベクターの開発につなげる.


H27-A9
代:西村 幸男
協:鈴木 迪諒
意欲が運動制御を支える因果律の解明

論文

学会発表
Suzuki M, Inoue K, Nakagawa H, Takada M, Isa T and Nishimura Y Deep brain stimulation of the mesolimbic system induces cortical responses in limbic and sensorimotor areas in monkeys(2015年10月17-21日) Annual meeting of society for neuroscience 2015(Chicago).

関連サイト
研究室ホームページ http://www.nips.ac.jp/hbfp/
意欲が運動制御を支える因果律の解明

西村 幸男 , 鈴木 迪諒

我々の研究グループは、意欲が身体の運動制御を可能にする神経基盤を明らかとするために、意欲の生成に関与するとされる腹側被蓋野・黒質を電気刺激し、誘発される脳活動、筋活動を記録することを行なってきた。その結果、腹側被蓋野・黒質への電気刺激によって一次運動野の活動、さらには筋活動が誘発されること見出した。この電気生理学的手法により得られた結果は、腹側被蓋野が運動性下行路の興奮性を制御している可能性を示唆している。そこで、腹側被蓋野・黒質が脊髄運動ニューロンを制御する解剖学的神経回路の存在を検証することを本研究の目的とした。腹側被蓋野から脊髄へ直接投射する経路が存在しないことは先行研究などから想定されたため、経シナプス的な投射を検討することにした。2頭のマカクザルの脊髄頸膨大レベルで脊髄前角に逆行性経シナプストレーサーである狂犬病ウイルスを注入した。一定のウイルス生存期間(84-90時間)後に潅流固定し、中脳ドーパミンニューロンが豊富に存在する中脳腹側領域の染色ニューロンの分布を検証した。染色されたニューロンは腹側被蓋野だけでなく、黒質や赤核後部といったドーパミンニューロンが豊富に存在する領域にも同様に確認された。これにより、腹側被蓋野を含む中脳腹側領域が脊髄に対し経シナプスの投射をもっており、筋活動の制御に関与する神経経路の存在を解剖学的に証明することができた。


H27-A10
代:伊村 知子
チンパンジーとヒトにおける大域的な視覚情報処理に関する比較認知研究

学会発表
Imura, T., Kawakami, F., Shirai, N., Tomonaga, M. (2015). Visual processing of average size in chimpanzees.(2015年8月26日) 38th European Conference on Visual Perception(Liverpool, U.K.).

伊村知子・川上文人・白井述・友永雅己 チンパンジーとヒトにおける平均サイズの知覚.(2015年11月28日) 日本基礎心理学会第34回大会(大阪樟蔭女子大学).

伊村知子 チンパンジーにおける平均の大きさの知覚(2015年11月27日) 日本基礎心理学会第34回大会サテライトオーラルセッション(大阪樟蔭女子大学).
チンパンジーとヒトにおける大域的な視覚情報処理に関する比較認知研究

伊村 知子

チンパンジーとヒトの比較認知研究から、運動や形態の情報を統合して大域的に処理する能力は、ヒトの方が優れている可能性が示唆されてきた。一方、近年の研究から、ヒトの視覚システムは、網膜像の統計的な規則性を利用することで、場面全体の複数の物体の色や形、大きさなどの特徴の「平均」を抽出することが明らかにされてきた。しかしながら、このような大域的な情報を圧縮するメカニズムについての種間比較はおこなわれていない。そこで、 チンパンジー7個体とヒト20名を対象に、複数の物体の大きさの「平均」に関する情報処理の進化的基盤について検討した。実験では, 灰色背景上に1個または12個の白い円から構成されたパタンが左右に2つ、1000ms呈示された。2つのうち、円の平均の大きさが大きい方のパタンを選択すれば正解とした。12個の同じ大きさの円(Homo条件)、12個の異なる大きさの円(Hetero条件)、1個の円(Single条件)から成るパタンの3条件で、正答率を比較した。その結果、ヒト、チンパンジーともに、Single条件よりもHomo条件、Hetero条件の正答率の方が有意に高かった。この結果は、チンパンジーも、複数の物体の平均の大きさを知覚することを示唆するものである。


H27-A11
代:橋本 亮太
協:安田 由華
協:山森 英長
ゲノムによる霊長類における脳機能の多様性の解明

論文
Okada N, Fukunaga M, Yamashita F, Koshiyama D, Yamamori H, Ohi K, Yasuda Y, Fujimoto M, Watanabe Y, Yahata N, Nemoto K, Hibar D, van Erp T, Fujino H, Isobe M, Isomura S, Natsubori T, Narita H, Hashimoto N, Miyata J, Koike S, Takahashi T, Yamasue H, Matsuo K, Onitsuka T, Iidaka T, Kawasaki Y, Yoshimura R, Watanabe Y, Suzuki M, Turner J, Takeda M, Thompson P, Ozaki N, Kasai K, Hashimoto R, COCORO. (2015) Abnormal asymmetries in subcortical brain volume in schizophrenia Mol Psychiatry (e-pub ahead of print).

Hashimoto R, Nakazawa T, Tsurusaki Y, Yasuda Y, Nagayasu K, Matsumura K, Kawashima H, Yamamori H, Fujimoto M, Ohi K, Umeda-Yano S, Fukunaga M, Fujino H, Kasai A, Hayata-Takano A, Shintani N, Takeda M, Matsumoto N, Hashimoto H.(2016) Whole-exome sequencing and neurite outgrowth analysis in autism spectrum disorder Journal of Human Genetics 61(3):199-206.

Nakazawa T, Hashimoto R, Sakoori K, Sugaya Y, Tanimura A, Hashimotodani Y, Ohi K, Yamamori H, Yasuda Y, Umeda-Yano S, Kiyama Y, Konno K, Inoue T, Yokoyama K, Inoue T, Numata S, Ohnuma T, Iwata N, Ozaki N, Hashimoto H, Watanabe M, Manabe T, Yamamoto T, Takeda M, Kano M. (2016) Emerging Roles of ARHGAP33 in Intracellular Trafficking of TrkB and Pathophysiology of Neuropsychiatric Disorders Nat Commun 7:10594.

Yamamori H, Ishima T, Yasuda Y, Fujimoto M, Kudo N, Ohi K, Hashimoto K, Takeda M, Hashimoto R. (2015) Assessment of a multi-assay biological diagnostic test for mood disorders in a Japanesepopulation. Neurosci Lett 612(167-171).

Ohi K, Hashimoto R, Ikeda M, Yamamori H, Yasuda Y, Fujimoto M, Umeda-Yano S, Fukunaga M, Fujino H, Watanabe Y, Iwase M, Kazui H, Iwata N, Weinberger DR, Takeda M. (2015) Glutamate Networks Implicate Cognitive Impairments in Schizophrenia: Genome-Wide Association Studies of 52 Cognitive Phenotypes. Schizophr Bull 41(4):909-18.

ゲノムによる霊長類における脳機能の多様性の解明

橋本 亮太 , 安田 由華, 山森 英長

精神神経疾患は、その原因や病態が不明であり、病態を解明し創薬のためのモデル系を確立することが求められている。サルにおけるモデル系を創出するために必須な精神疾患研究について以下の成果を得た。
COCOROで収集した統合失調症884例と健常者1680例のMRIT1強調画像データを用いて、大脳皮質下領域構造の体積をFreeSurferを用いて解析してその違いを検討した。統合失調症で、両側の海馬、扁桃体、視床、側坐核、頭蓋内容積の体積減少、および両側の尾状核、被殻、淡蒼球、側脳室の体積増加を認めた。また統合失調症における淡蒼球の体積増加は、左側が右側に比して有意に大きかった。淡蒼球は、強調運動や報酬系に関連する部位と言われており、前頭葉との回路が報告されている。淡蒼球の左側優位の体積増加は、統合失調症における神経回路やコネクティビティの側性の異常を示唆する。
トリオ解析においては、自閉スペクトラム症30症例のエクソーム解析を行い、37遺伝子における新規変異を同定し、そのうち14遺伝子について神経突起伸長に対する影響をNeuro2a細胞にて検討すると、8遺伝子にて異常が見出されたため、自閉スペクトラム症遺伝子は神経突起発達に関与すると考えられた。このようにして見出された遺伝子について、サルに対して遺伝子改変を行うことにより、精神疾患のモデルを構築できるだけでなく、霊長類脳の多様性の解明にも役立つと考えられる。



H27-A12
代:Tshewang Norbu
Ecological and phylogeographical study on Assamese macaques in Bhutan
Ecological and phylogeographical study on Assamese macaques in Bhutan

Tshewang Norbu

 I have collaborated with Japanese primatologists, including the counterpart of this cooperative research program, in a government program for mitigation of agricultural damages and initiated a basic biological study on human-monkey conflicts in Bhutan. The aim of this cooperative research program was to learn the field and laboratory techniques that are commonly used in ecological and phylogeographical studies of the Japanese macaque in order to apply them for the basic research on the Assamese macaques (Macaca assamensis) in Bhutan. I visited a few spots of monkey habitats in Japan to learn the electric fencing system for the damage control. Methods of phylogeny assessment and genetic monitoring of populations were introduced by the counterpart then we discussed the plan for future population study of the Assamese macaque in Bhutan. I examined fecal samples to confirm the protocols of DNA extraction and PCR amplifications for sexing and mtDNA sequencing. The techniques and methods in fecal DNA analysis were transferred to Bhutan where animal genetics laboratory was recently established in a government institution. The taxonomy and evolutionary status of the Assamese macaque in Bhutan is controversial due to recent revision by discoveries of related new species in the neighboring countries of India (Arunachal Pradesh) and China (Tibet). I will continue field observation and sampling to apply the obtained knowledge to conduct ecological and phylogeographical study in Bhutan.


H27-A13
代:福田 真嗣
協:福田 紀子
協:村上 慎之介
協:伊藤 優太郎
協:石井 千晴
協:谷垣 龍哉
脳機能におよぼす腸内細菌叢の影響
脳機能におよぼす腸内細菌叢の影響

福田 真嗣 , 福田 紀子, 村上 慎之介, 伊藤 優太郎, 石井 千晴, 谷垣 龍哉

ヒトを含む動物の腸内には、数百種類以上でおよそ100兆個もの腸内細菌が生息しており、宿主腸管と緊密に相互作用することで、宿主の生体応答に様々な影響を及ぼしていることが知られている。近年マウスを用いた研究で、腸内細菌叢が脳の海馬や扁桃体における脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生量に大きな変動を与え、その結果マウスの行動にも変化が現れることが報告された(Heijtz, et al., PNAS, 108:3047, 2011)。これは迷走神経を介した脳腸相関に起因するものであることが示唆されているため、腸内細菌叢の組成が宿主の脳機能、特に情動反応や記憶力に影響することが示唆される。しかしながら、これら情動反応や記憶力と腸内細菌叢との関係を調べるには、マウスなどのげっ歯類では限界があると考えられたことから、本研究では小型霊長類であるコモンマーモセットに着目し、高次脳機能、特に情動反応や記憶力と腸内細菌叢との関係について解析を行うことを目的とした。腸内細菌叢を除去したコモンマーモセットモデルを構築するため、平成27年度は高次脳機能評価を行うための課題訓練を実施した。2頭のコモンマーモセットに図形弁別課題およびその逆転学習課題を訓練した。さらに、記憶機能を検討するため空間位置記憶課題も訓練した。次年度には腸内細菌叢と認知課題の成績との関係を検討する予定である。


H27-A14
代:南部 篤
協:畑中 伸彦
協:知見 聡美
協:金子 将也
大脳―小脳―基底核連関の構築に関する神経解剖学的研究
大脳―小脳―基底核連関の構築に関する神経解剖学的研究

南部 篤 , 畑中 伸彦, 知見 聡美, 金子 将也

 新世界サルであるマーモセットは、遺伝子改変動物の作製に適しているなど今後の実験動物として期待されている。しかに、その神経解剖学的、神経生理学的知見は十分に蓄積されているとは言い難い。そこで本研究では、マーモセットの大脳皮質運動野を中心とした線維連絡を調べることにした。
 マーモセット大脳皮質には脳溝などのランドマークが乏しく、領野の同定には機能マッピングが必須である。マーモセットの頭部を覚醒下で無痛的に固定し、皮質内微小電気刺激(ICMS)、神経活動記録を用いて、大脳皮質運動野を中心として機能マッピングを行った。その結果、以下のように各領野が同定できた。
一次運動野(M1):10µA前後の微弱なICMSで運動を誘発することができる領域が同定され、M1と考えられる。また、内側から外側にかけて下肢、上肢、口腔•顔面領域と明瞭な体部位局在が認められた。
一次体性感覚野:M1の後方にICMSの閾値が高く、また深部感覚に応ずる領域が同定された。これは3a 野に相当するものと思われる。より後方は、皮膚などの体表から入力を受け、ICMSではほとんど運動を誘発できない領域が広がっており、3b野に相当すると考えられる。
運動前野(PM)、補足運動野(SMA):M1の前方は、ICMSの閾値が高い領域が広がっており、体性感覚入力の同定も難しかった。この領域はPMに相当すると考えられる。また、PMの内側にも、後方から下肢、上肢の領域が同定できSMAと考えられる。
 大脳皮質間、大脳皮質-脳深部間の線維連絡を調べるために、これらの領域に神経レーサーを注入したので、今後、解析を行う予定である。



H27-A15
代:松本 正幸
協:川合 隆嗣
協:佐藤 暢哉
認知機能と行動制御における外側手綱核の役割

論文
2. Kawai T, Yamada H, Sato N, Takada M, Matsumoto M(2015) Roles of the lateral habenula and anterior cingulate cortex in negative outcome monitoring and behavioral adjustment in nonhuman primates. Neuron 88(4):792-804. 謝辞謝辞あり
認知機能と行動制御における外側手綱核の役割

松本 正幸 , 川合 隆嗣, 佐藤 暢哉

外側手綱核と前部帯状皮質は罰に関連した神経シグナルを伝達する脳領域である。本研究ではこれまで、それぞれのシグナルが脳内の学習プロセスに果たす役割を検討するため、マカクザル(ニホンザルとアカゲザル)を用いた電気生理学的研究を実施し、外側手綱核と前部帯状皮質の神経活動を記録・比較する実験をおこなってきた。そして、外側手綱核のニューロンが現在生じている嫌悪刺激を素早く検出しているのに対して、前部帯状皮質のニューロンは過去に生じた嫌悪刺激を記憶し、サルの行動を切り替えるためのシグナルを伝達していることが明らかになった。特に平成27年度は、前部帯状皮質局所回路の中で、興奮性の錐体ニューロンと抑制性の介在ニューロンの情報表現について研究を進め、錐体ニューロンよりも、介在ニューロンの方が嫌悪刺激の記憶情報や行動切り替えのためのシグナルをより伝達していることが明らかになった。これは、前部帯状皮質内部での情報処理プロセスを考える上で重要な知見となる。


H27-A16
代:関 和彦
協:大屋 知徹
協:梅田 達也
複数骨格筋への単シナプス性発散投射構造の解剖学的同定
複数骨格筋への単シナプス性発散投射構造の解剖学的同定

関 和彦 , 大屋 知徹, 梅田 達也

脊髄運動ニューロンに投射するPremotor neuronは大脳皮質、脳幹、脊髄にそれぞれ偏在し、最近の申請者らの電気生理学的実験によってPremotor neuronの複数筋への機能的結合様式が筋活動の機能的モデュール(筋シナジー)を構成することが明らかになってきた。この神経解剖学的実体については全く明らかにされておらず、ヒトの運動制御の理解の発展と、運動失調に関わる筋、神経疾患の病態理解や新しい治療法の開発のためには喫緊の研究課題である。そこで本研究では上肢筋の脊髄運動ニューロンへ投射する細胞(Premotor neuron)の起始核である脊髄、赤核、大脳皮質からの発散性支配様式を解剖学的に明らかにすることによって、霊長類における巧緻性に関わる皮質脊髄路の脊髄運動ニューロンへの直接投射の機能的意義を解剖学的観点から検討する。
本年度は前年度行なった注入結果をもとに、新たなウィルスベクターの開発を継続して行なった。また、国立精神・神経医療研究センターにおいて、霊長類研究所から供給を受けたAAVベクターの機能評価をマーモセットを対象に行なった。



H27-A17
代:岸本 健
協:安藤 寿康
協:多々良 成紀
協:山田 信宏
二卵性ふたごチンパンジーの行動発達に関する比較認知発達研究

学会発表
岸本健,安藤寿康,多々良成紀,山田信宏,友永雅己 高知県立のいち動物公園のチンパンジー集団における,二卵性のふたごとおとなの近接関係の4年間の変化(2016年1月30日) 第60回プリマーテス研究会(公益財団法人日本モンキーセンター).
二卵性ふたごチンパンジーの行動発達に関する比較認知発達研究

岸本 健 , 安藤 寿康, 多々良 成紀, 山田 信宏

高知県立のいち動物公園のチンパンジー集団では,2009年に1組の二卵性の雌雄の双子が誕生し,母親による養育が現在まで継続している。この集団では,母親以外のおとなが,2歳齢時の双子の女児に対し,背中に乗せて移動するなどの世話行動をとっていたことが確認されている (Kishimoto et al., 2014)。一方で,母親以外のおとなによる双子への世話行動が,双子の発達に伴ってどのように変化するのかについては明らかになっていない。そこで,双子が2歳齢であった2011年から,6歳齢にいたった2015年(写真)までの4年間における,母親を含むおとなと,双子との近接関係を分析し,双子とおとなたちとの関係性が,双子の発達に伴いどのように変化したか検討した。
分析の結果,母親以外のおとなで,双子の女児を世話していた個体と双子の女児との近接率は,2歳齢時には母親と同程度だったが,双子の発達とともに大きく減少した。一方,双子の女児と母親との近接率もまた,双子の女児の発達とともに減少したが,母親以外のおとなとの近接率と比較して減少が緩やかだった。この結果は,母親以外のおとなによる双子への世話行動が,双子の月齢が低く,母親による子育ての大変な時期に限定的に生じる可能性を示唆する。



H27-A18
代:植木 孝俊
協:尾内 康臣
協:間賀田 泰寛
協:小川 美香子
協:岡戸 晴生
成体脳神経新生のin vivo動態解析技術の創出
成体脳神経新生のin vivo動態解析技術の創出

植木 孝俊 , 尾内 康臣, 間賀田 泰寛, 小川 美香子, 岡戸 晴生

近年、ヒトを含む哺乳動物の脳で、成長後にもニューロンの新生が継続していることが確認されている。これまで成体脳神経新生の解析は、専らマウス、ラットなどのげっ歯類で行われ、ヒト、マカクザルなどの高等霊長類成体脳における神経幹細胞の動態解析、並びに、その生理学的機能の探究はほとんどなされていない。
ここでは、レンチウィルスにて中性アミノ酸トランスポータータンパク質を神経幹細胞で選択的に発現させ、O-18F-fluorometyltyrosine([18F]FMT)で標識した後、PETにより神経幹細胞をin vivoで描出する。初めに、ラットで成体脳神経新生動態のPETイメージングと神経幹細胞障害モデルの作出を行い、28年度以降のマカクザルにおける脳内神経幹細胞の動態描出と生理学的機能探究への応用を図ることとした。
成体脳神経新生動態のPETイメージングに当たっては、ラットにてレンチウィルスにより神経幹細胞特異的に中性アミノ酸トランスポーター/共役因子遺伝子を発現させ、[18F]FMTの集積をPETで画像化した。ここでは併せてマウスに強制水泳試験を課し作製した大うつ病病態モデルで、成体脳神経新生動態をPETにより描出し、神経新生障害が大うつ病病態生理に与ることを確認した。また、成体脳神経新生障害モデルの作出に当たっては、レンチウィルスをラットの脳室下帯もしくは海馬歯状回に感染させ、HSV1-sr39tk遺伝子の発現を誘導した後、ガンシクロビルを腹腔投与することにより、各neurogenic nicheにおける成体脳神経新生を障害した。そして、その認知、記憶などへの影響を種々の行動学的解析により評価した。さらにHSV1-sr39tk発現神経幹細胞を8-[18F]fluoropenciclovir(FPCV)を用いてPETで画像化し、その神経新生動態解析への応用の可能性を検討した。



H27-A19
代:岡本-Barth早苗
協:Robin M. Bernstein
'Chimpanzee milk bioactive factors and relationship to infant growth'チンパンジー母乳における生物活性因子と子供の成長との関係性
'Chimpanzee milk bioactive factors and relationship to infant growth'チンパンジー母乳における生物活性因子と子供の成長との関係性

岡本-Barth早苗 , Robin M. Bernstein

本研究は現在も継続中であり、28年度も引き続き、共同利用研究として継続希望が採択されている。本研究では2000年から数年に渡り思考言語分野において採取、冷凍保存されていたチンパンジーの母乳サンプルを調べることにより、ヒトとチンパンジーにおける代謝および免疫に関係する因子の比較をおこなう。またチンパンジーの授乳期間が長いことから、母乳中の因子と乳児の発達との関係性を調べる。さらに同様に採取された母子の糞尿サンプルもあわせて調べることにより、乳児の発達に伴った母子の生理学的変化を総合的に検討する。26年度に母乳サンプル輸出について、ワシントン条約に基づいたCITES手続きのためチンパンジー3個体各々の書類準備をおこなったが、個体履歴等の証明書類の完備が困難で手続きが長期化することが予想された。そのため、コロラド大学の研究協力者が来日して所内の実験室において、分析をおこなう方針に変更した。しかし、当初予定していた分析試薬の国内入手が困難であることが判明した。そこで27年度から新たに参加した研究協力者が異なる分析キットを用いて母乳の分析を開始する予定であったが、当人の所属異動(ハーバード大学からアリゾナ州立大学)に伴い来日しての分析を行うことが困難になったために、28年度に分析施行を予定している。27年度は、母乳サンプルの冷凍保管方法を更新するとともに、貴重な母乳サンプルを実際に利用するときに、他の成分分析にも多重利用が可能かどうかについて、所内の研究者らと検討をおこなった。


H27-A20
代:蔦谷 匠
飼育下チンパンジーにおける炭素・窒素安定同位体分析

論文
Tsutaya T, Fujimori Y, Hayashi M, Yoneda M, Miyabe-Nishiwaki T(2017) Carbon and nitrogen stable isotopic offsets between diet and hair/feces in captive chimpanzees Rapid Communications in Mass Spectrometry 31(1):59-67. 謝辞あり

関連サイト
チンパンジーでの同位体オフセットの推定 - TSUTAYA Takumi http://tsutatsuta.net/research/description/prich.html
飼育下チンパンジーにおける炭素・窒素安定同位体分析

蔦谷 匠

食物と体組織・排泄物のあいだの同位体比の差分を検討するため、霊長類研究所内に飼育されている13個体のチンパンジーを対象に、試料採取と同位体分析を実施した。炭素・窒素安定同位体分析は食生態の復元に用いられる手法であるが、野生動物の摂取食物を推定するためには、あらかじめ実験条件下で、食物と体組織・排泄物のあいだの同位体比の差分を算出しておかなければならない。
本研究では、2015年6月および2016年2月に実施されたチンパンジーの食事調査にあわせて、すべての採食品目、全個体の毛、アド・リブで得られた糞尿について、分析試料を採取し、6月の試料については炭素・窒素安定同位体分析を終わらせた。現在、データ解析を進めており、ここまでの結果について、2016年度中の論文化を目指している。
今までのところ、食物と毛の差分はヒトの場合と同様の値が得られている。尿については、同位体比や元素濃度が試料ごとにばらつく傾向があり、数日から数週程度の、短期間の栄養状態の変動を反映している可能性がある。



H27-A21
代:Kevin William McCairn
協:Masaki Isoda
Decoding Global Networks in Tourettism using PET and Electrophysiological methodologies
Decoding Global Networks in Tourettism using PET and Electrophysiological methodologies

Kevin William McCairn , Masaki Isoda

Objectives
Tourette syndrome (TS) is a childhood onset neurological disorder which manifests motor and vocal tics. Using a nonhuman primate model (NHP) of TS, the aim of this study was two-fold: (1) to quantify the behavioral effects of limbic (vocal tic) relative to sensorimotor (myoclonic tic) network striatal disinhibition; (2) to determine how differences in cortico-basal ganglia-thalamic (CBTC) and cerebella (Cb) activity, as assessed through PET imaging, single unit and LFP recording differentiate abnormal behavioral profiles.
Primary scientific findings
In order to disrupt physiological activity in the limbic and sensorimotor networks, we injected a small amount of the GABA antagonist bicuculline into the nucleus accumbens (NAc) (limbic) or the putamen (sensorimotor) in two monkeys, adding to a database of three other animals. Our injection protocol for the NAc successfully evoked repetitive vocalizations in all animals. The sound of their frequency spectrum is best described as a ‘grunt’. The site that caused vocal tics was consistently localized in the NAc across all the monkeys, i.e., approximately 4 mm rostral to the anterior commissure. To elicit motor tics, the bicuculline injections had to be placed in the dorsolateral sensorimotor putamen, caudal to the anterior commissure. In such cases where repetitive tics occurred in the orofacial region and/or the arm region, no vocal tics were ever observed. The localization of vocal tics to the NAc supports the premise that vocal tics emerge as a consequence of limbic network dysrhythmia.



Fig. 1. PET imaging reveals contrasting involvement of cortico-subcortical structures between vocal and motor tics. Structural MRIs (top), increased rCBF following NAc injection contrasted with putaminal injection (Vocal > Motor, middle), and increased rCBF following putaminal injection contrasted with NAc injection (Motor > Vocal, bottom). Each coronal section was obtained at the rostrocaudal level indicated by a corresponding blue line below.


H27-A22
代:森本 直記
マカクザルにおける出産様式に関する形態学的研究
マカクザルにおける出産様式に関する形態学的研究

森本 直記

ヒトにおける出産様式の進化に関する研究は、脳機能・歩行様式・生活史が関わる多面的な課題である。しかし、出産進化のメカニズムにおいて鍵となる新生児と骨盤の化石記録が乏しく、直接的な検証が極めて困難である。そのため、現生の霊長類をモデルとした研究が不可欠である。本共同研究では、マカクをモデルとし、出産メカニズムに関する生体データを取得・解析することを目的とした。アカゲザルとニホンザルをそれぞれ3組ずつに対しX線CT撮像を行い、母親と胎児の3次元データを取得した。予備的な結果にとどまるものの、計算機内で出産のシミュレーションを行い、マカクでは吻部が先に出てくる、つまりヒトとは異なる回転を行いながら胎児は産道を通ることが確認された。また、母親の骨盤形態と胎児の頭蓋骨形態の相関を統計的に検証する手法を検討中である。


H27-A26
代:Charmalie AD Nahallage
2) Molecular classification of the grey langur and purple-faced langur in Sri Lanka
2) Molecular classification of the grey langur and purple-faced langur in Sri Lanka

Charmalie AD Nahallage

The evolution of langurs and macaques in southern Asia is a topic of growing interest, and Sri Lanka is an important but understudied piece of this puzzle. Sri Lanka, situated southeast of India with a geological history of being connected to the sub-continent several times, is classified as one of the world biodiversity hot spots in terms of species, genetic, ecosystem, and geographical diversity. The three sub-species of the endemic toque macaque (TM), the four sub-species of the endemic purple-faced langur (PFL), and the Hanuman or grey langur (GL), a species found across the Indian subcontinent, are distributed across the diverse mosaic of climatic and ecological zones of Sri Lanka. We previously reported a disparity between the phenotypic and mtDNA diversity of toque macaques,whereby all three purported subspecies came under two major mtDNA haplogroups, segregated roughly into two different major elevation zones; mountainous and coastal regions. In this study we present preliminary results on the phylogeography of GL samples. Eighty-two Sri Lankan GL samples (64 feces, 20 blood) originating from 22 different populations across the species’ distribution were analyzed. DNA was extracted and the successfully amplified PCR product was sequenced for cytb and D-loop. GL clustered mainly into one large cluster, with 4 minor clusters. Further analysis and sample collection will be necessary before coming to firm conclusions, but PFL clustered with GL into the same haplotype in one small cluster where they live sympatrically, suggesting local hybridization.




H27-A27
代:浅原 正和
ニホンザル大臼歯形態における地理的変異とその適応的要因の解明

論文
Masakazu Asahara and Yuichiro Nishioka(2017) Geographic Variation of Absolute and Relative Lower Molar Sizes in the Japanese Macaque (Macaca fuscata: Primates, Mammalia) Zoological Science 34(1):35-41. 謝辞This study was financially supported in-part by the Cooperative Research Program of Primate Research Institute, Kyoto University (2015-A-27)
ニホンザル大臼歯形態における地理的変異とその適応的要因の解明

浅原 正和

ニホンザル大臼歯の形態における地理的変異を調査するため、霊長類研究所に収蔵されている各地のニホンザルの大臼歯を計測した。また、得られたデータと各地の気候データとを比較し、大臼歯の形態に影響する適応的要因を明らかにすることを試みた。得られたデータのうち、下顎大臼歯の近遠心径・頬舌径から歯の咬合面のサイズを計算し、第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯それぞれの相対的な咬合面のサイズ(以下、大臼歯相対サイズと称する)を地域間で比較した。その結果、年平均気温の低い地域では3つの臼歯のうち第一大臼歯が相対的に大きいのに対し、年平均気温が高い地域では3つの大臼歯のうち第三大臼歯が相対的に大きいという傾向がみられた。このような大臼歯相対サイズの地理的変異は食肉目タヌキなどで知られているが、ニホンザルの場合は食肉目であるタヌキと異なり、大臼歯列中に明瞭な機能分化が見られない。このことから、ニホンザルの大臼歯相対サイズの地理的変異は、まだ歯列が完成していない若齢期において咀嚼能力を強化することで生存確率を上昇させるといった、より寒冷で厳しい環境に対応するための成長パターンの適応ではないかと予測された。


H27-A28
代:藤山 文乃
協:苅部 冬紀
協:高橋 晋
協:中野 泰岳
協:水谷 和子
協:呉胤美
霊長類の皮質ー基底核ー視床ループの形態学的解析
霊長類の皮質ー基底核ー視床ループの形態学的解析

藤山 文乃 , 苅部 冬紀, 高橋 晋, 中野 泰岳, 水谷 和子, 呉胤美

中枢神経系の作動原理を理解するためには、その構造的基盤である局所神経回路の知識が不可欠である。従来、霊長類、特に皮質ー基底核ー視床回路においては齧歯類と霊長類の体部位特異性の違いなど機能面の比較が困難であった。本研究課題では、霊長類を用いて古典的なトレーサーやウイルスベクタを注入することで、囓歯類および霊長類の神経経路を詳細に比較することを目的としている。
昨年度は齧歯類を用いて、膜移行性シグナルをつけたウイルスベクタによる視床線条体投射の単一ニューロントレースを行った。その結果、束傍核はマトリックスに優位に、正中核群からはストリオソーム優位に、束傍核以外の髄板内核群からはストリオソームとマトリックスに同程度の投射があることが明らかになった。さらに、ストリオソームやマトリックスに特異的に投射する視床亜核の大脳皮質への投射先は、その視床亜核が投射している線条体のコンパートメントに優位に投射している皮質領域であることがわかった。つまり、線条体のストリオソーム・マトリックス構造は、視床と大脳皮質から、時間差で同質の情報を受け取っている可能性があることが示唆された。
今後は霊長類のサンプルを用いて、動物種による比較形態学解析を行い、種を超えて運動に基本的に必要な回路の抽出を目指したい。



H27-A29
代:小島 龍平
ニホンザル手指および足指先天的形態異常の肉眼解剖学的研究
ニホンザル手指および足指先天的形態異常の肉眼解剖学的研究

小島 龍平

肉眼解剖学においては,変異を詳細に観察することにより形態形成の過程やその背景にある法則や原則についての手がかりを得ようとする.先天的形態異常は発生において標準とは異なったイベントや要因が生じ,そのタイミングで起こるべき正常の発生過程やその後の発生過程が障害,修飾されて生じると考えられる.このような形態異常も広い意味で変異の一部と考え,詳細に観察し所見を整理することにより形態形成について考察する手がかりを与えてくれると考える.ここでは,左右の手および足に先天的形態異常を有するニホンザル1頭の前肢1側の所見を報告する.標本は淡路島より霊長類研究所に導入された雄の個体で年齢不詳,死亡時体重7.5kgである.1)対象手の指は2本であり,裂手症に相当する形態異常であると考えられた.2)対象肢においては肩帯〜上腕,肘関節周囲においては骨格,筋,末梢神経の構成や形態に異常は認められなかった.しかし,前腕遠位部の骨格構成や形態に異常が認められた.3)前腕においては屈側で12 個の,伸側で13 個の筋が区別できた.これらの筋について浅深の層構成,同一層での内側外側方向での配列,起始,停止,神経支配の特徴から標準的な構成における筋との対応関係について同定を試みた.4)屈筋においても伸筋においても,上腕骨から起こり前腕近位部に停止する筋は容易に同定できた.また,前腕遠位部および手根に停止する筋についても相当する筋を推定することは可能であった.5)しかし,手指に停止する筋には乱れがあり,標準的な筋構成との対比が困難な筋が多く認められた.6)前腕における末梢神経の構成や走行分岐パターンは標準的な形態に近いと思われた.7)手においては短掌筋と思われる筋の他には筋は認められなかった.9)手指の形態異常を起こさせる要因が生じた時期には,前肢の近位部(肘周辺まで)はすでに形成をされており,前腕の筋の原基も数としては形成をされていたが,停止となる手根や指の形成に異常が生じ,それらに停止すべき筋の形成に大きな乱れが生じたものと推測する.


H27-A30
代:河野 礼子
協:久世 濃子
オランウータン歯牙形状と採食生態をつなげる

論文

学会発表
久世濃子・金森朝子・山崎彩夏・田島知之・Renata Mendonca・Henry Bernard・Titol Peter Malim・河野礼子 野生ボルネオ・オランウータンの雌の妊娠と果実生産量の関係( 2016年3月20日) 動物園大学6( 犬山).

オランウータン歯牙形状と採食生態をつなげる

河野 礼子 , 久世 濃子

代表の河野は、国立科学博物館動物研究部が所蔵する現生オランウータン資料について、状態のよい大臼歯をマイクロCT撮影した。また、中国産オランウータン化石大臼歯約300点についてもマイクロCT撮影とレプリカ作製を実施した。さらに、マレーシアのマラヤ大学動物学博物館を訪問し、現生オランウータン資料を観察して、レプリカを作製した。レプリカ資料については三次元レーザースキャナーによるデータを一部採取し、これらのデータをもとに、形状特徴の計測項目について吟味し、食性との対応関係を検討する方向性を探った。協力者の久世は、現生オランウータンの採食生態についてより詳細な情報を得るために、ボルネオ島マレーシア領サバ州のダナム・バレイ森林保護区内の調査地で2005年~2014年に収集した、果実生産量とオランウータンの食性・繁殖に関するデータを月毎に分析した。その結果、2010年7~9月の大規模一斉結実期に、採食時間に占める果実の割合が90%に達し、6頭中4頭の雌がこの時期に妊娠していたことが明らかになった。また、果実生産量が低く、採食時間に占める果実の割合が小さい時期には、妊娠した雌はいなかった。この結果を、2015年3月に犬山市で開催された第6回動物園大学にてポスター発表した。


H27-A31
代:滝澤 恵美
協:矢野 航
協:長岡 朋人
チンパンジーの比較解剖学―乳様突起部と股関節を中心に―
チンパンジーの比較解剖学―乳様突起部と股関節を中心に―

滝澤 恵美 , 矢野 航, 長岡 朋人

1)


H27-A32
代:山下 友子
協:平松 千尋
協:上田 和夫
協:中島 祥好
霊長類における音声コミュニケーションの進化および発達過程の研究

学会発表
Tsuyoshi Sugino, Yoshitaka Nakajima, Yuko Yamashita, and Chihiro Hiramatsu A Cross-Species Analysis of Primate Vocalization(December 12th, 2015 ) The 2nd Annual Meeting of the Society for Bioacoustics(Kyushu University  ).
霊長類における音声コミュニケーションの進化および発達過程の研究

山下 友子 , 平松 千尋, 上田 和夫, 中島 祥好

霊長類における音声コミュニケーションは、種の特異性やヒト言語との連続性という観点からよく研究されている。これまでの研究により、発声方法や発声器官には、ヒトと他の種との共通性や、種の特殊性があることが指摘されている。2014年度以来の共同利用研究において、モンキーセンターにてテナガザル類3種、ワオキツネザル、ヤクニホンザル、リスザルの音声、また霊長類研究所にてチンパンジーの音声を録音した。明瞭に録音された音声に対し、まずケプストラム分析によって、音声から調波構造の影響を極力減らし、1/2 オクターブ程度の狭帯域フィルター群を用い、各フィルターにおけるパワー変化を変量として相関係数行列にもとづいた因子分析を行った。また、霊長類の音声における帯域ごとの相関係数行列について、各霊長類間でユークリッド距離を算出した。ヒト(成人および乳幼児)の音声から得られた因子構造と比較した結果、ヒト以外の霊長類から得た因子構造は、ヒトの因子構造とは異なることが明らかとなり、進化と発達とを共通の尺度で捉える可能性が示された。種の違いによりサイズの違う個体のあいだに共通点を明らかにする必要のあることから上記の多変量解析の方法について今後、数理的手法の改良を進めていく予定である。


H27-A34
代:清水 貴美子
協:深田 吉孝
霊長類における概日時計と脳高次機能との連関

学会発表
清水貴美子 物体認識記憶の概日制御を担う分子メカニズム(2015.11.21) 時間生物学会(東京).

Kimiko Shimizu SCOP mediated circadian regulation of recognition memory(2015.10.14-21) Society for Neuroscience annual meeting(Chicago).

Kimiko SHimizu,Erika Nakatsuji, Yodai Kobayashi, Yoshitaka Fukada Circadian regulation of recognition memory is mediated by SCOP in mouse hippocampus(2015.7.28-31) 神経科学会(神戸).
霊長類における概日時計と脳高次機能との連関

清水 貴美子 , 深田 吉孝

我々はこれまで、齧歯類を用いて海馬依存性の長期記憶形成効率に概日変動があることを見出し、SCOPという分子が概日時計と記憶を結びつける鍵因子であることを示してきた。本研究では、ヒトにより近い脳構造・回路を持つサルを用いて、SCOPを介した概日時計と記憶との関係を明らかにする。
 ニホンザル6頭を用いて、苦い水と普通の水をそれぞれ飲み口の色が異なる2つのボトルにいれ、水の味と飲み口の色との連合学習による記憶効率の時刻依存性を検討した。一回の試験につき各個体あたり、朝/昼/夕の何れかに試験をおこなう。学習から24時間後のテストでは苦みを入れずに、学習時と同じ色の両ボトルに普通の水を入れる。それぞれのボトルの水を飲んだ回数をビデオ観察し、正解と不正解の回数の比により、記憶できているかの判断をおこなった。各時刻一回ずつ6頭の記憶テストデータを解析した結果、夕方よりも、朝や昼に記憶効率がよいという傾向が見られた。しかし、個体差や実験間での差が大きいため、統計的有意差は見られていない。1頭あたりの実験回数を増やすなど、更なるデータ収集が必要である。記憶効率の時刻依存性の確実なデータを得た後に、SCOP shRNA発現レンチウイルスをもちいた海馬特異的なSCOPの発現抑制により、記憶の時刻依存性に対するSCOP の影響を検討する。



H27-A35
代:諏訪 元
協:佐々木 智彦
協:小籔 大輔
協:清水 大輔
人類出現期に関わる歯と頭蓋骨の形態進化的研究

論文
Katoh et al.(2016) New geological and paleontological age constraint for the gorilla-human lineage split Nature 530:215-218.

学会発表
清水大輔・佐々木智彦・諏訪 元 オナガザルの咬耗小面から顎運動を復元する(2015年10月10日) 日本人類学会(東京).

佐々木智彦 チンパンジー・ゴリラの年齢と歯髄腔の狭窄度合(2015年10月10日) 日本人類学会(東京).
人類出現期に関わる歯と頭蓋骨の形態進化的研究

諏訪 元 , 佐々木 智彦, 小籔 大輔, 清水 大輔

H27年度は1)チョローラ層の年代層序と動物相の評価、2)歯髄腔を用いた年齢推定法の類人猿への応用、および3)オナガザル類の摩耗小面から顎運動を推定する研究を進めた。チョローラの2015年の調査にて、オナガザル類の化石を若干数新たに発見した。それらの同定を行い、チョローラの哺乳動物相リストを更新し、大型類人猿チョローラピテクスを含む動物相が800万年前のものであることとその動物相の意義についてNature誌に発表した。特に、チョローラではこれまで確認されていなかったMicrocolobusと類似した種の存在を確認した。また、チョローラのオナガザル類としては、ややサイズが大きく臼歯ノッチが浅いコロブス亜科の種がdominantな種であるが、2015年調査でノッチがより深い臼歯が発見され、新たな系統が存在する可能性が浮かび上がった。この疑問を解決するため、現生コロブスの特にノッチ深さの種内変異を改めて調査することとし、CTデータを取得し、目下析中である。上記研究2)については、類人猿での応用がマクロ的なvolume評価だけではむつかしいことを確認し、今後の方針を検討した。上記研究3)については、現生のオナガザル類の方法を改善し、その結果を学会発表した。


H27-A36
代:Hsiu-hui Su
協:Hoi Ting Fok
The genetic profile of Taiwanese macaque groups
The genetic profile of Taiwanese macaque groups

Hsiu-hui Su , Hoi Ting Fok

This study was aimed to verify markers that can be applied to the genotyping of microsatellite DNA in the fecal samples collected from a Taiwanese macaque population located in southern Taiwan. A total of 16 microsatellite markers that have been tested on the Taiwanese macaque population in Oshima were chosen for the study. Among the 16 markers, 10 markers resulted in detectable polymorphism on the loci. The fecal samples used in the microsatellite genotyping were first screened by the C-myc test for the DNA quality. The HVR I of mtDNA was also sequenced and the result showed that the haplotype (740 bp) of two neighboring groups were different from each other by 31 bp of substitutions in this provisioned region. The 10 microsatellite markers will be applied to the paternity analysis in the Taiwanese macaque to investigate their reproductive strategies. This non-invasive method to study genetic structures also contributes to the conservation of the Taiwanese macaques in Taiwan by revealing the human impact on translocating macaque groups in the past.

Keywords: microsatellite marker, maternal inheritance, provisioning, translocation, Macaca cyclopis.



H27-A37
代:Mukesh Chalise
Study on phylogeography of macaques and langurs in Nepal
Study on phylogeography of macaques and langurs in Nepal

Mukesh Chalise

 The trade of DNA samples becomes difficult due to recent ratification and enforcement of international regulation Nagoya Protocol. This trend changed our collaboration in cooperative study on evolution and conservation of non-human primates in Nepal. In this fiscal year program, we start to establish a laboratory in Kathmandu where we can prepare DNA samples from fecal specimens and can perform DNA amplification by standard PCR procedure in order to continue phylogeographical study on macaques and laugurs in Nepal. We open the laboratory in December 2015 and conducted a feasibility study of mtDNA typing for non-human primates for the first time in the country. Firstly, we extracted DNA samples from fecal specimens preserved in lysis buffer based on the protocol developed in the last year program. Both Assamese macaques and grey langurs were examined for partial sequencing of control region, 16S ribosomal RNA and cytochrome b in the mitochondrial DNA genome. Of 26 specimens, consisting of 20 macaques and 6 langurs from 8 localities, 19 were successfully amplified by PCR. We also got good results in sexing with amelogenin primers for 19 samples. Obtained PCR products were sequenced in Japan to confirm the applicability of newly obtained PCR products for sequencing analysis. Our preliminary examination of cytochrome b fragments yielded fine results for four out of six samples of grey langurs. Obtained Nepalese sequences were compared with deposited DNA sequences in database. Nepalese samples formed a single cluster with high bootstrap value and a reported haplotype (N2) from Ramnagar (Karanth et al. 2010) was placed aside of the Nepalese cluster.


H27-B1
代:Cynthia Thompson
協:Chris Vinyard
協:Susan Williams
協:Sylvain Perez
Developing a model of cold- and heat-stressed primate thermoregulation from Japanese macaques (Macaca fuscata)
Developing a model of cold- and heat-stressed primate thermoregulation from Japanese macaques (Macaca fuscata)

Cynthia Thompson , Chris Vinyard , Susan Williams , Sylvain Perez

This project aims to assess how Japanese macaques (Macaca fuscata) utilize behavioral and physiological mechanisms during seasonal thermoregulation. During 2015, we conducted our second research season (summer; winter data collection occurred in 2014) at the Kyoto University Primate Research Institute from July 11-31. During this time we successfully collected data on thermoregulatory variables for five adult animals (n=2 males, n=3 females). We gathered a total of 1,048 observation hours. These behavioral data are currently being used to calculate the effects of temperature, solar radiation, humidity, and wind speed on the time spent moving, body position, and choice of sunny vs. shaded location. During this past data collection season we also collected 94 fecal samples. These were lyophilized, extracted, and assayed via ELISA to determine levels of the thermoregulatory thyroid hormone fT3. We found significantly lower levels of fT3 in the summer compared to the winter (ANCOVA: F= 41.5, p<0.001), with summer samples having fT3 levels, on average, 2.87pg/ml lower than winter samples. Additionally, season explained 45.9% of the variance in fT3 levels; for comparison sex explained only 2.2% of the variation in fT3. These results suggest that Japanese macaques significantly boost thyroid hormone levels during the winter, likely to increase basal metabolic rate and generate heat. Since fT3 levels are linked to energy expenditure, lower fT3 levels in the summer likely reflect a strategy to lower not only heat generation, but also to conserve energy. Our results indicate that these animals utilize thyroid hormones, a relatively expensive and longer-term physiological pathway, as a mechanism of seasonal thermoregulation.




H27-B2
代:中村 浩幸
1次視覚野をバイパスする頭頂連合野への視覚入力の解明
1次視覚野をバイパスする頭頂連合野への視覚入力の解明

中村 浩幸

霊長類の高次視覚野へ,1次視覚野を経由しない,短潜時の視覚入力を,形態学的に解明する。本年度は,頭頂連合野へ直接の視覚入力を送るV3A野への外側膝状体からの投射を研究した。
アカゲザル1頭のV3A野へトレーサーを注入し,外側膝状体層間細胞の逆行性標識を観察した。トレーサー注入に先立って、1mm間隔のスライスで厚1mmの頭部MRI画像を撮像した。画像をCaret 5(Van Essen, http://brainmap.wustl.edu, 1995)に取り込み,前額断画像の脳表の形状をとレースして,脳表の3次元画像を作成し,トレーサー注入用の微小ピペットを垂直にV3A野に刺入する際の刺入部位を確認した。ファーストブルー(2%)。ディアミディノイエロー(4%)、ビオチン化デキストランアミン(20%)をそれぞれ異なる微小ピペットに充填し、左右のV3A野を目標に3カ所ずつ微量注入した。左のV3A野には,ファーストブルーとディアミディのイエローが注入されており,白質やLOP野へは広がっていなかった。右では、ファーストブルーとディアミディノイエローが、V3A野とLOP野に注入されていた。逆行性に標識された外側膝状体層間細胞の分布は現在検討中である。



H27-B3
代:伊藤浩介
サル類における聴覚事象関連電位の記録
サル類における聴覚事象関連電位の記録

伊藤浩介

明らかな適応的意義の見当たらない音楽は、何故どのように進化したのだろうか。本研究は、従来の行動指標の代わりに事象関連電位(ERP)や誘発電位(EP)を用いて、音楽の系統発生を探る試みである。昨年度までの研究で、マカクザルを対象に、無麻酔かつ無侵襲で頭皮上からERP/EPを記録するための方法論を確立した(Itoh et al., Hearing Research, 2015)。これにより、頭皮上の最大19チャンネルから、純音刺激に対する聴覚EPの後期成分を記録し、mP1, mN1, mP2, mN2, mSPの各成分を世界で初めて同定・命名することに成功した。本年度は、これらのEP成分が、純音刺激提示の時間特性(刺激持続時間、刺激間無音間隔)にどのように影響を受けるか検討したところ、とくにmN1以降の成分について、ヒトとアカゲザルで顕著な種差があることが分かった。ヒトで聴覚処理の時間窓が延長していると解釈が出来る結果であり、成果をまとめている(Itoh et al., in preparation)。また並行して、マーモセットを対象とした、無麻酔かつ無侵襲の頭皮上脳波記録につき、方法論の検討を行った。


H27-B4
代:河村 正二
協:松下 裕香
新世界ザル苦味受容体TAS2Rに対するリガンド感受性多様性の検証

論文
Kawamura, S. and Melin, A. D.(2016) Evolution of genes for color vision and the chemical senses in primates In: Evolution of the Human Genome Volume I: The Genome and Genes (Saitou, N. ed.), In Press, Springer, Tokyo.

学会発表
河村正二 多様性豊かな新世界ザルのケミカルセンサーと採食果実のケミカルシグナルから探る霊長類の感覚生態の進化(2015年11月13-15日) 第3回ケモビ研究会(Chemosensation and Behavior Workshop 2015)(KKR 箱根 宮ノ下、箱根・木賀温泉).

関連サイト
河村正二研究室ホームページ http://www.jinrui.ib.k.u-tokyo.ac.jp/kawamura-home.html
新世界ザル苦味受容体TAS2Rに対するリガンド感受性多様性の検証

河村 正二 , 松下 裕香

新世界ザル類は高度な色覚変異を示すことが報告されているが、ケミカルセンス遺伝子の進化多様性については知見が乏しく感覚進化の全体像は不明な部分が多い。そこで他の霊長類で比較的研究の進展している苦味受容体TAS2R遺伝子に焦点を当て、ゲノムプロジェクトの進展しているマーモセット(Callithrix jacchus)、リスザル(Saimiri boliviensis)、ヨザル(Aotus nancymaae)のTAS2R遺伝子配列からPCRプライマーを設計し、所属研究室現有のノドジロオマキザル(Cebus capucinus)とチュウベイクモザル(Ateles geoffroyi)の血液等由来高純度ゲノムDNAと野生群の糞由来DNAに対して遺伝子塩基配列の決定を試みた。その結果TAS2R3,5,10,38の4遺伝子について高純度サンプルから配列を決定し、糞由来の集団サンプルについて7~42個体について配列決定を行った。しかし、配列決定に時間を要したため当初予定した分子進化・集団遺伝学解析及びクローン化遺伝子のリガンドアッセイに至ることはできなかった。今後解析遺伝子数・サンプル数を増やすとともに、進化・機能解析を進展させる。


H27-B5
代:東 超
霊長類の各種の組織の加齢変化
霊長類の各種の組織の加齢変化

東 超

加齢に伴う呼吸筋である肋間筋(骨格筋)のカルシウム、燐、マグネシウム、硫黄、鉄、亜鉛の蓄積の特徴を明らかにするため、サルの肋間筋の元素含量の加齢変化を調べた。用いたサルは16頭、年齢は流産児から26歳である。サルより肋間筋を乾燥重量100mg程度採取し、水洗後乾燥して、硝酸と過塩素酸を加えて、加熱して灰化し、高周波プラズマ発光分析装置(ICPS-7510、島津製)で元素含量を測定し、次のような結果が得られた。
①サルの肋間筋の主な元素はカルシウム、燐、マグネシウム、および硫黄である。
②サルの肋間筋のカルシウム含量はすべて10mg/g以下で、さらに、加齢とともに減少傾向にあった。この結果から肋間筋は加齢とともに石灰化しにくい呼吸筋であることが分かった。
③サルの肋間筋においてはカルシウム、燐とマグネシウム含量の間に非常に高い有意な正の相関が認められ、カルシウム、燐、マグネシウムが一定の比率でサルの肋間筋に蓄積されることを示している。



H27-B6
代:風張 喜子
行動の時間配分バランスと分派行動の起こりやすさの関係
行動の時間配分バランスと分派行動の起こりやすさの関係

風張 喜子

ニホンザルは、基本的には群れのメンバーがひとまとまりで暮らすが、季節によっては頻繁に分派する。個体間の近接・群れのまとまりは、時に採食時間を削減してまで他個体の動きを視覚的に確認することで保たれる。一方で、食物条件によっては、他個体の動きの確認に時間を割くことが難しく、分派が起こりやすくなることも考えられ、これが季節的な分派の要因となっているかもしれない。そこで、宮城県金華山島に生息する野生ニホンザルを対象として、食物条件の異なる時期に個体追跡による行動観察を行い、分派の起こる状況を検討した。その結果、移動および探索に時間がかかる食物の利用中に分派が起こりやすかったが、それらの食物の利用中の見まわしは少なくなかった。そのため、行動の時間配分上の制約が分派の要因である可能性は低い。その一方で、見まわし間隔が長い場合が稀にあり、分派はその前後に始まっていた。また、移動・探索型食物のまばらな分布の影響で視覚内の個体が少なく、群れとしての移動の方向を把握しにくい状況だと考えられた。その状況で、見まわしを行わない時間があることで、互いの動きに引きずられたメンバーがたまたま群れの移動の方向を見誤り、分派した可能性がある。


H27-B7
代:加藤 彰子
協:Tanya Smith
ニホンザルにおける歯の組織構造と成長
ニホンザルにおける歯の組織構造と成長

加藤 彰子 , Tanya Smith

本研究課題は、生息環境の異なるマカク種の歯の成長について明らかにする目的で、ニホンザルを含むマカク6種類の大臼歯歯冠エナメル質の厚みについてX線CT画像解析により調査を行ってきた。
本年度は、歯の微細構造の解析を行うために、大臼歯の薄切研磨標本を用いて、歯冠エナメル質に認められる成長線の解析を進めている。具体的には、偏光顕微鏡を用いて大臼歯の咬頭頂付近および歯頸部付近に認められる成長線を解析する。これまでに認められた所見では、ニホンザルの歯冠エナメル質に観察される成長線は、他のマカク種とは異なり特異的なパターンを示した。今後は、さらに解析を進め、各種マカクの歯の形成に関する特徴を明らかにし、食性や生息環境との関係を調査していく予定である。



H27-B8
代:齋藤 慈子
マーモセットにおける養育個体のオキシトシン濃度
マーモセットにおける養育個体のオキシトシン濃度

齋藤 慈子

神経ペプチドであるオキシトシンは、げっ歯類の研究から、社会的認知・行動に関わっていることが知られているが、いまだ霊長類の社会行動とオキシトシンの関係についての研究は数が少ない。本研究は、家族で群を形成し協同繁殖をおこなう、コモンマーモセットを対象に、母親だけでなく父親の、母親出産前後のオキシトシン濃度と養育行動との関連を調べることを目的とした。前年度までに、マーモセット型のオキシトシンを合成し、市販のオキシトシ測定用EIAキットを用いて、マーモセット型のオキシトシンが測定可能であることを確認した。本年度も前年度に続き、初産個体を対象とした出産前後の採尿および、乳児回収テスト、背負い行動の観察を行うことを試みたが、出産数が少なった上、飼育室におけるケージ・個体の移動等にともない、十分なデータの採取を行うことができなかった。引き続きサンプル数を増やしていく予定である。


H27-B9
代:國松 豊
アフリカ中新世霊長類化石の形態学的研究

論文
Kunimatsu, Y., Nakatsukasa, M., Sawada, Y., Sakai, T., Saneyoshi, M., Nakaya, H., Yamamoto, A., and Mbua, E.(2016) A second hominoid species in the early Late Miocene fauna of Nakali (Kenya). Anthropological Science 124(2):75-83. 謝辞あり
アフリカ中新世霊長類化石の形態学的研究

國松 豊

現生ヒト上科とオナガザル上科の初期進化は中新世のアフリカで起きたと考えられており、これらのグループの進化過程を解明するには、アフリカ中新世の霊長類化石の研究が欠かせない。1980年以来、京大を中心とした日本調査隊がケニヤ共和国において野外発掘調査を継続して実施してきており、ケニヤ北部のナチョラ、サンブルヒルズ、ナカリから中新世の大型ヒト上科を始めとして、小型「類人猿」や旧世界ザル、原猿など多様な霊長類化石が発見されてきた。本研究ではこれらの霊長類化石の分析を目的としている。2015年度は、2016年2〜3月にケニヤ国立博物館で主としてナカリ出土のオリジナル化石標本を調査した。霊長類研究所では、比較のために現生霊長類の骨格標本や霊長類化石レプリカコレクションの観察、計測をおこなった。ナカリの小型「類人猿」の研究を中心に作業を進めた。現在までに採集されたナカリの霊長類化石の中には4種類の小型「類人猿」が含まれており、これまであまり実態が知られていなかったアフリカ中新世後期初頭において、予想外に大きな多様性が保たれていた事を示唆するものである。


H27-B10
代:牛田 一成
協:土田 さやか
屋久島のニホンザルの腸内細菌の消化能力についての研究

論文
Ushida K, Tsuchida S, Ogura Y, Hayashi T, Sawada A, Hanya G(2016) Draft genome sequences of Sarcina ventriculi isolated from wild Japanese macaques in Yakushima island Genome Announcements 4:e01694-15. 謝辞あり
屋久島のニホンザルの腸内細菌の消化能力についての研究

牛田 一成 , 土田 さやか

屋久島の上部に棲息する個体群は、冬季に樹皮など消化が困難な食物に依存する割合が高いと想定される。その場合、腸内細菌が宿主の栄養にもたらす貢献は、より高いと推測できる。本研究は、2014年度の共同研究(2014-B-27)において、大川林道周辺の上部個体群から分離後、純粋化できたSarcina ventriculi(現在分類群変更のためClostridium ventriculi)2株について、全ゲノム解析を実施した。また、これまで西部林道および大川上流域の個体群の調査を行ってきたため、東部のヤクスギ林地帯に生息する個体群からも採材を試みた。
 世界で初めてS. ventriculiのゲノム構造を明らかにした。本種のゲノムサイズは、約2.5 Mbあり、GC含量は約27%であった。系統的にはC. perfringensに近縁であったが、両種の平均ゲノム一致度(ANI)は、78%であった。
 特徴的な遺伝子群として、パラクマル酸脱炭酸酵素や青酸化合物代謝系が含まれており、野生の食物に含まれる反栄養物質に対抗するための機能を,ヤクシマザル腸内細菌が提供していることが示唆された。
 東部個体群からは、西部林道個体群と同様の菌種が分離されている。毒物分解などに有効と予想される菌種につきいては、今後詳細解析を行う予定である。



H27-B12
代:長谷 和徳
協:林 祐一郎
協:伯田 哲矢
自律的に歩容遷移を行うマカク四足歩行モデルの開発

論文
林祐一郎,長谷和徳,内藤尚,西澤教之(2015) 神経振動子のフィードバック式変化によるナンバ歩行様式の生成と評価 日本機械学会論文集 81(824):14-00644.

学会発表
伯田哲矢,長谷和徳,平崎鋭矢,林祐一郎 環境を考慮したニホンザルの四足ロコモーションモデル(2015年1128日) 第36回バイオメカニズム学術講演会(長野県上田市).

伯田哲矢,長谷和徳,平﨑鋭矢,林祐一郎 足先軌道形成と位相振動子に基づくニホンザル四足歩行モデル(2015年10月11日) 第69回日本人類学会大会(東京都江東区).

中川拓也,長谷和徳,青村茂,林祐一郎 一般化逆動力学と逐次軌道計画による身体運動シミュレーションの構築(2015年11月28日) 第36回バイオメカニズム学術講演会(長野県上田市).

馮洋,長谷和徳,林祐一郎 運動速度・勾配や歩行姿勢の違いを考慮したヒトの歩行の生体力学解析(2015年11月28日) 第36回バイオメカニズム学術講演会(長野県上田市).
自律的に歩容遷移を行うマカク四足歩行モデルの開発

長谷 和徳 , 林 祐一郎, 伯田 哲矢

一般的な四足動物は後方交叉型と呼ばれる四肢の運動パターンによってロコモーションを行うが,ニホンザルなどのマカクは前方交叉型と呼ばれるロコモーション・パターンを持つ.本研究では,関節動態や神経系の運動制御機構などを考慮し自律的に歩容遷移可能なマカク類の四足歩行のシミュレーションモデルを作成し,さらに斜面などの力学的環境変化についても計算モデルとして表し,身体力学系を含む力学的環境変化と歩行遷移との関係を計算論的に明らかにすることを試みた.霊長類研で撮影したニホンザルのロコモーションデータや,歩容の特徴の知見を参照し,四足歩行の運動制御モデルの構築を行った.制御系モデルとして,従来の脚位相制御機構に体重心に応じた位相調整が可能な仕組みを導入した.また,地面の傾斜角度に応じて足先軌道の座標系の角度を変更できるようにした.これらの仕組みを導入することで,比較的緩やかな傾斜ではあるが,地面の傾斜角度に応じた歩行運動を実現できるようになった.ただし,現在の運動遷移には体重心の位置を明示的に入力するようになっており,制御の自律性は必ずしも高くない.今後はモデルの妥当性の検証と運動制御の自律性の更なる向上を目指す.


H27-B13
代:荒川 高光
協:渡邊 優子
協:幅大 二郎
下肢骨格筋の形態と支配神経パターンの解析

論文
Tsutsumi M, Arakawa T, Terashima T, Miki A(2015) Intramuscular nerve distribution pattern in the human tibialis posterior muscle Anat Sci Int 90( 2): 104-112.

学会発表
荒川高光, 月生達矢 足底筋とヒラメ筋における支配神経の比較解剖学的解析( 2015年7月20日) 第31回 日本霊長類学会(京都市左京区).

江村健児, 荒川高光, 寺島俊雄 コモンマーモセットの肩甲挙筋、菱形筋、腹側鋸筋の形態と支配神経について( 2016年3月28日) 第121回 日本解剖学会総会・全国学術集会(福島県郡山市).

渡邊優子, 荒川高光, 寺島俊雄 胸腺、胸腺内異所性上皮小体、甲状腺に分布する稀な動脈枝の一例( 2016年3月28日) 第121回 日本解剖学会総会・全国学術集会(福島県郡山市).

幅大二郎, 渡邊優子, 荒川高光, 寺島俊雄, 三木明徳 錐体筋欠如例における恥骨付近に分布する知覚枝( 2016年3月28日) 第121回 日本解剖学会総会・全国学術集会(福島県郡山市).

荒川高光, 寺島俊雄, 三木明徳 上殿神経が大殿筋を支配する一例( 2016年3月28日) 第121回 日本解剖学会総会・全国学術集会(福島県郡山市).

荒川高光, 月生達矢 足底筋とヒラメ筋の支配神経パターン比較解剖学( 2015年10月11日) 第69回 日本人類学会(東京都江東区).
下肢骨格筋の形態と支配神経パターンの解析

荒川 高光 , 渡邊 優子, 幅大 二郎

前年度に続きアカゲザルとチンパンジーの下肢、とくに下腿の骨格筋とその支配神経の解析を行った。大腿部後面から皮膚剥離し、脛骨神経と総腓骨神経、そしてその支配筋群を肉眼で剖出、記録し、今回は足底筋とともにヒラメ筋の支配神経のパターンに着目した。支配神経パターンの神経束解析を行った。神経外膜を除去した神経束レベルでは、アカゲザルの足底筋は下腿の深層屈筋群と近く、ヒラメ筋は腓腹筋に近いとわかった。チンパンジーでは、足底筋はアカゲザルと同様であった。3例中1例でヒラメ筋に前から入る筋枝が見いだされた。すなわちチンパンジーでは、全例でアカゲザルと同様のヒラメ筋枝を有すると同時に、ときに、ヒラメ筋に前から入る枝を持っており、それは下腿深層屈筋群と近い位置から分岐するものであった。踵骨腱付近に分布する枝も見つかったが、本枝は腱への知覚枝であろうと考えられた。ヒトではヒラメ筋に前から入る枝が恒常的に発見されるため、ヒトの直立二足歩行の採用にともなう系統発生において、ヒラメ筋の発達と足底筋の退縮に関係し、本神経支配パターンの種間差は重要な示唆を与えると考えられた。


H27-B14
代:松岡 雅雄
協:安永 純一朗
協:菅田 謙治
協:馬 広勇
ニホンザルにおけるサルT細胞白血病ウイルスの動態の解析・免疫治療

論文
Sugata K, Yasunaga JI, Miura M, Akari H, Utsunomiya A, Nosaka K, Watanabe Y, Suzushima H, Koh K, Nakagawa M, Kohara M, and Matsuoka M.(2016) Enhancement of anti-STLV-1/HTLV-1 immune responses through multimodal effects of anti-CCR4 antibody. Scientific Reports Scientific Reports 未定(in press). 謝辞あり
ニホンザルにおけるサルT細胞白血病ウイルスの動態の解析・免疫治療

松岡 雅雄 , 安永 純一朗, 菅田 謙治, 馬 広勇

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)、炎症性疾患の原因ウイルスである。サルT細胞白血病ウイルス1型(STLV-1)はHTLV-1に近縁のレトロウイルスであり、同様の病原性、複製機構を持っているため、HTLV-1の新規治療法開発に有用な動物モデルである。CCR4はHTLV-1感染細胞、STLV-1感染細胞に高発現するケモカインレセプターであり、抗CCR4抗体モガムリズマブはSTLV-1感染ニホンザルのプロウイルス量を減少させる。CCR4は制御性Tリンパ球にも発現し、モガムリズマブの免疫賦活効果も注目されている。本研究は、モガムリズマブとSTLV-1 bZIP factor (SBZ)及び Taxワクチンの併用による、より効果的な抗STLV-1 (HTLV-1)免疫療法の開発を目的とした。モガムリズマブ投与後にSBZ及び Taxを発現するワクシニアウイルスを5回接種し、プロウイルス量、Tax発現細胞数を解析したところ、モガムリズマブ投与直後と比較してTax発現細胞はさらに減少傾向となり、Taxに対する免疫応答の増強による効果と考えられた。本研究結果は国際雑誌Scientific Reportsに掲載された(Sugata K,et al. Enhancement of anti-STLV-1/HTLV-1 immune responses through multimodal effects of anti-CCR4 antibody. Scientific Reports, in press.)。


H27-B15
代:草山 太一
ひも引き協力課題を用いたマーモセットの協力行動

学会発表
Taichi Kusayama Cooperative behaviors of common marmosets: opening the food container task(2015年9月10日?12日) 日本動物心理学会第75回大会(日本女子大学).

草山太一 コモンマーモセットとオカメインコにおける蓋開け協力課題(2015年11月20日?22日) 日本動物行動学会第34回大会(東京海洋大学).
ひも引き協力課題を用いたマーモセットの協力行動

草山 太一

他者と協力作業を行うためには、相手の行動を正確にモニターし、それに合わせて自己の行動を調整する必要がある。比較認知的視点より霊長類での検討が欠かせないことから、コモンマーモセットを対象に協力行動の成立要件について実験的に検討した。今年度は実験計画の2年目として、昨年度に生じた実験遂行上の問題解決も含め、3つの実験装置を用いて協力行動の生起について調べた。すでにチンパンジーなどで成功が報じられている、2個体が同時にひもを引くことで報酬の入った容器を手元まで引き寄せられる仕掛けになっている装置を利用した「ひも引き協力課題」では個体同士がタイミングよく装置前に座ることは全く観察されなかった。また、「ひも引き」という行動指標は変えずに、2個体の反応にズレが生じても課題解決できる別の装置を用いても、協力するような場面は認められなかった。2個体が同時にレバーを押すことで報酬の入った容器の蓋が開く仕掛けの装置をセットし、協力行動が生起するかビデオ観察をおこなったところ、この課題では2個体による同時レバー押し反応が認められた。「他者との協力が必要である」という課題解決のための条件をマーモセットが理解できていたかについては慎重に答えを見つける必要がある。しかし、昨年度に引き続き、課題遂行時に2個体の距離が近いと、優位個体が装置を独占する行動が認められたことから、他者との目的(報酬)を共有することは難しいことが考えられる。


H27-B16
代:山下 俊英
サル脊髄損傷モデルを用いた軸索再生阻害因子とその抗体による神経回路修復に関する研究

論文
Nakagawa, H., Ninomiya, T., Yamashita, T. and Takada, M(2015) Reorganization of corticospinal tract fibers after spinal cord injury in adult macaques. Sci. Rep 5:11986.
サル脊髄損傷モデルを用いた軸索再生阻害因子とその抗体による神経回路修復に関する研究

山下 俊英

霊長類モデルを用いて、軸索再生阻害因子と脊髄損傷後の神経回路網再形成による運動機能再建に焦点をあて研究を行ってきた。これまで、脊髄損傷後に軸索再生阻害因子のひとつであるRGMaを阻害することによって、運動機能の回復および神経回路網再形成が促進されるという予備的な結果を得ている。今年度は、個体数を増やして再現性の検証を行った。その結果、RGMa作用を阻害した群は、コントロール群(薬物投与なし)に比べ、運動機能の回復および神経回路網形成が促進されるという再現を得ることができた。さらに、新たに形成した神経回路網が機能的な神経回路であるか否かを確かめるため、電気生理学手法と神経活動阻害実験を併用して確認した。その結果、直接運動機能の回復に寄与する神経回路網が形成されていることが分かった。これらの結果は、サル脊髄損傷において、RGMaが治療法として有用である可能性を示唆するものであると考える。


H27-B17
代:Kim Heui-Soo
協:Jungwoo Eo
協:Hee-Eun Lee
Identification and Promoter/enhancer analysis of HERV-K LTR elements in primates

論文
Hee-Eun Lee, Selvam Ayarpadikannan, Heui-Soo Kim(2015) Role of transposable elements in genomic rearrangement, evolution, gene regulation and epigenetics in primates Genes & Genetic Systems 90(5):245-257. 謝辞あり
Identification and Promoter/enhancer analysis of HERV-K LTR elements in primates

Kim Heui-Soo , Jungwoo Eo , Hee-Eun Lee

Human endogenous retroviruses (HERVs) and related sequences account for ~8% of the human genome. It is thought that HERVs are derived from exogenous retrovirus infections early in the evolution of primates. Among the three HERV classes, class II HERVs exist in the lowest frequency in the human genome, but they include the HERV-K family, which is the youngest family and is known to have actively mobilized since the divergence of humans and chimpanzees. For better understanding the regulatory mechanism, HERV-K expression in four primates was performed. First we tried RT-PCR with human reference gene; GAPDH, chimpanzee reference gene; EEF2, and HERV-K env. As the figure 1 shows, all four species’ tissue has expression of HERV-K. In addition, the western blot was performed to check the protein expression of HERV-K and R env protein in various tissues of four kinds of primates. Each sample is labeled in the figure 1. The expression of HERV-K env protein shows expression in most of tissues except for pancreas, tongue, and testis (fig.2). Also, the orangutan ileum shows no expression. For HERV-R env protein, the expression pattern shows similar as HERV-K env protein. The HERV Env proteins were observed moderate to high levels in each tissue, showing tissue-specific or species-specific expression patterns. In addition, transcription factor binding sites for HERV-K102 was detected by the program called TRANSFAC v8.0 (fig.3). The primers were designed into 4 sets, with fixed reverse primer as shown in the figure 3. As a result of the luciferase assay, LTR primer (F4) shows the highest promoter activity from all four primers in both A549 and HCT116 cell lines. These data suggest a biologically important role for the retroviral proteins in a variety of the healthy tissues of primates.


H27-B18
代:関澤 麻伊沙
ニホンザル野生群におけるInfant handlingの意義

学会発表
関澤 麻伊沙、沓掛 展之 ニホンザル野生群におけるinfant handling: Biological Market理論の検証(2017年3月15日) 第64回日本生態学会大会(東京).

Maisa Sekizawa, Nobuyuki Kutsukake The significance of infant handling in wild Japanese macaques( 2017年12月12日~2017年12月15日) Gottinger Freilandtage. Social complexity: patterns, processes and evolution( ドイツ).

関澤 麻伊沙、沓掛 展之 ニホンザル野生群におけるinfant handlingの意義:母子とハンドラー双方の視点から(2018年3月15日) 第65回日本生態学会大会(札幌).

関澤 麻伊沙、沓掛 展之 ニホンザル野生群における母子間交渉がinfant handlingを受ける頻度に及ぼす影響(2018年7月14日) 第34回日本霊長類学会大会(東京).
ニホンザル野生群におけるInfant handlingの意義

関澤 麻伊沙

群れで生活する霊長類では、他個体の産んだ新生児へ接触する行動(Infant Handling、以下、略してIH)が日常的にみられる。しかし、新生児へ接触を試みる個体(以下、ハンドラー)・母子双方にとってどのような意義があるのかは未だ明らかになっていない。本研究では、未だ研究例のないニホンザル野生群におけるIHの意義を明らかにすることを目的とする。昨年度に引き続き、宮城県金華山に生息する野生ニホンザルA群において、今年生まれたアカンボウ2頭とその母親を対象として、出産日から生後3ヵ月齢を超えるまで個体追跡による行動観察を行った。ハンドラー、IHの内容、母子の反応、母親とハンドラーの交渉について、計217.5時間分のデータを収集した。現在はデータ入力を行っている。アカンボウの数は昨年度17頭、今年度2頭と大きく異なっているため、入力が終わり次第、昨年度のデータと併せ、アカンボウの数の増減がハンドラーと母親間での交渉に影響を及ぼしているのかどうかを検証する。特に毛づくろい交渉に注目をし、アカンボウの数に依存してハンドラーによる母親への毛づくろい量が変化するかどうかを検証する予定である。


H27-B19
代:Srichan Bunlungsup
協:Suchinda Malaivijitnond
Population genetics of M. fascicularis (long-tailed macaque) throughout Thailand: mainly focus on their hybridization range with M. mulatta (rhesus macaque)

論文
Bunlungsup, S., Imai, H., Hamada, Y., Matsudaira, K., and Malaivijitnond, S.( 2016) Mitochondrial DNA and two Y-chromosome genes of common long-tailed macaques (Macaca fascicularis fascicularis) throughout Thailand and vicinity American Journal of Primatology : doi:10.1002/ajp.22596. 謝辞 Acknowledged

学会発表
Bunlungsup, S., Imai, H., Hamada, Y., Matsudaira, K., and Malaivijitnond, S. Genetic diversity of long-tailed macaque and the impact of geographical barrier on the hybridization( 15 December 2015) Symposium on Primate Diversity in East and Southeast Asia( Bangkok, Thailand).
Population genetics of M. fascicularis (long-tailed macaque) throughout Thailand: mainly focus on their hybridization range with M. mulatta (rhesus macaque)

Srichan Bunlungsup , Suchinda Malaivijitnond

The aim of this study is to investigate the impact of zoogeographical barriers in Thailand on the genetic structure of long-tailed macaques (Macaca fascicularis) and their hybridization with rhesus macaques (M. mulatta). mtDNA and Y-chromosome (SRY and TSPY) genes of long-tailed and rhesus macaque living in Thailand and vicinity were analyzed. Based on mtDNA analysis, all monkeys were divided into five clades; Sundaic insular, Sundaic Thai Gulf, Vietnam, Sundaic Andaman Sea coast and Indochina, respectively. Interestingly, monkeys lived at the Sundaic peninsular were separated into Thai Gulf and Andaman sea side, and the latter was grouped with Indochinese population. We supposed that during the glacial period, some monkeys from South-easternmost Indochina (Southern Cambodia/Vietnam) migrated across the land bridge westward to peninsular Malaysia, moved northward along Andaman Sea coast and inhabited the areas. From Y-chromosome analysis, the limited gene flow from male rhesus macaques southward to long-tailed population was detected around the Isthmus of Kra. Though, our findings support the previous reports, the more complex results are found.


H27-B20
代:今村 拓也
種特異的ノンコーディングRNAによるほ乳類脳神経機能分化

論文

学会発表
Masahiro Uesaka, Kinichi Nakashima, Kiyokazu Agata, Takuya Imamura Species-specific repertories of promoter-associated non-coding RNAs may contribute to the diversification of gene expression profile(2015年5月25日) 第9回エピジェネティクス研究会年会(学術総合センター(東京都千代田区)).

Masahiro Uesaka, Kinichi Nakashima, Kiyokazu Agata, Takuya Imamura Species-specific repertories of promoter-associated non-coding RNAs may contribute to the diversification of gene expression profile(2015年6月3日) 第48回 日本発生生物学会年会.

種特異的ノンコーディングRNAによるほ乳類脳神経機能分化

今村 拓也

本課題は、ほ乳類脳のエピゲノム形成に関わるnon-coding RNA (ncRNA)制御メカニズムとその種間多様性を明らかにすることを目的としている。チンパンジーを含むほ乳類5種の5組織を用いた比較トランスクリプトーム解析の結果、プロモーターncRNAであるpancRNAは発現プロファイルと塩基配列の点で生物多様性が高いということ、pancRNAを持つ遺伝子は組織特異的な発現を示す傾向にあること、数百の生物種特異的pancRNAが存在しているということが明らかになった。最も大事な発見は、生物種特異的pancRNAを獲得した遺伝子の発現が、pancRNAがないオーソログに比べて、その組織特異性が強まっている傾向が顕著であったことであり、この現象はエピゲノム変化と良い相関を示した。さらに、マウス大脳皮質特異的発現を示すpancRNAの機能解析から、実際に種特異的pancRNAが遺伝子発現活性化に寄与し、表現型発現に結びついていることを示した。したがって、種特異的pancRNAが獲得され、配列特異的エピゲノム修飾パターン形成を介して、種特異的遺伝子発現スイッチの獲得に至ることが考えられた。現在、エンハンサーRNAの解析を進行中であり、pancRNAとの機能相関を調べているところである。


H27-B21
代:稲用博史
協:関 幸夫
数学モデルを用いた霊長類大腿骨形態の解析
数学モデルを用いた霊長類大腿骨形態の解析

稲用博史 , 関 幸夫

Wolffの法則によれば、骨は力学的ストレス(荷重)を受け、力学的に最適な形状となる。この最適化理論を数式で表現し有限要素法を用いて数値的に解を求めると骨に対する力学的条件を推定することが出来る。
ヒトとチンパンジーを比較すると、ヒトは直立二足歩行し、ヒトには、Bicondylar Angle と呼ばれる大腿骨の傾きがある。Tardieuによれば、ヒトのBicondylar Angle は10度、チンパンジーのBicondylar Angle は1~2度である。
ヒトにおいては、大殿筋力が大きく、大殿筋によって緊張を高められた腸脛靭帯は外側から大転子を強く圧迫することにより、圧迫力は大腿骨骨幹部を通じて内顆に伝わる。この力に対応して、内顆においては大腿四頭筋内側広筋による内側からの圧迫力が生じる。
他方、チンパンジーにおいては大殿筋による腸脛靭帯の大転子への圧迫力はない。また、同時に内顆における大腿四頭筋内側広筋による圧迫力も生じない。
骨形状の力学的最適性理論を用い、上記の力学的条件による形状の解を数値計算により求めると、ヒトでは10度のBicondylar Angle を持つのに対し、チンパンジーの大腿骨ではBicondylar Angle は2度となる。これは、Tardieuによる報告に近い。
これ等の比較により、大腿骨近位部における外力が、大腿骨遠位部における外力と釣り合うことによって顆間角が形成されることが証明できる。



H27-B22
代:荒川 那海
協:颯田 葉子
協:寺井 洋平
霊長類におけるヒトの皮膚の表現型の特性について

学会発表
Nami Arakawa Comparative Study of Gene Expression Patterns in Skins between Humans and Other Primates (Poster)(2015年7月13日) The annual meeting of the Society for Molecular Biology and Evolution(Vienna, Austria).

荒川那海 霊長類におけるヒトの皮膚の 表現型の特性について(2015年8月21日) 第17回日本進化学会(中央大学後楽園キャンパス).
霊長類におけるヒトの皮膚の表現型の特性について

荒川 那海 , 颯田 葉子, 寺井 洋平

ヒト特異的な形質は多く知られており、皮膚での体毛の減少や汗腺の増大はその例として挙げられる。本研究では、ヒト特異的な皮膚の形態的および生理的な表現型がどのような遺伝的基盤によって生み出されているのか、ヒトと類人猿間の皮膚での遺伝子発現量比較から明らかにすることを目的としている。
ヒト特異的な皮膚の形質に関係している遺伝子を網羅的に把握するために、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン各種3個体ずつの皮膚サンプルを用いたRNA発現量解析(RNA-Seq)を行った。ヒトのゲノム配列を参照配列として、全ての遺伝子の発現量をそれぞれの個体ごとに算出し、ヒトと類人猿の間で統計的に有意に発現量差のある遺伝子を抽出したところ、ヒト特異的な皮膚形質に関わる複数の遺伝子が検出された。
また、ヒトと類人猿の遺伝子発現量差を生み出している発現調節領域を特定するために、ルシフェラーゼをリポーター遺伝子としたプロモーターアッセイの系を立ち上げた。今後、ヒトと類人猿の皮膚の形質の違いに関する文献情報と合わせることで、ヒト系統で起きた変異によってヒト特異的な形質が獲得されていった進化の過程を示唆できると考えている。



H27-B23
代:今野 歩
協:高橋 伸卓
マーモセットiPS細胞由来神経細胞を用いたプロモーター評価系の確立

論文

関連サイト
群馬大学大学院医学系研究科 脳神経再生医学分野 http://synapse.dept.med.gunma-u.ac.jp/
マーモセットiPS細胞由来神経細胞を用いたプロモーター評価系の確立

今野 歩 , 高橋 伸卓

我々は、小型の霊長類であるマーモセット脳内で、ニューロン種特異的に発現誘導するプロモーターの開発を行っている。しかし、これまで齧歯類で実施していたようにプロモーター活性や特異性の検討を動物脳内で実施することは、マーモセットの購入費用(1頭あたり約50万)や動物倫理的観点などから、現実的ではない。そこで、動物個体内でのアッセイに代替し、マーモセットiPS細胞由来の培養神経細胞を用いたプロモーター活性の検討を行う系の確立を目指した。
平成27年度は、マーモセット由来のプロモーターとしてVGAT、VAChTプロモーター等のクローニングを実施し、レンチウイルスベクターによってGFPを発現するベクターへの搭載を完了した。一方、マーモセット由来iPS細胞の作成に関しては、マーモセット線維芽細胞へのリポフェクションによって初期化6因子を導入する「霊長研メソッド」を実施した。リポフェクション後、3~4週間程度で、iPS細胞様のコロニーが得られ、多能性の指標であるアルカリホスファターゼ染色(AP染色)陽性のコロニーが確認された(図参照)。しかしながら、その後の培養がうまくいかず、自然と分化し始めてしまう細胞が多く確認された。今後、培養条件のさらなる検討を行う予定である。



H27-B24
代:姉帯 飛高
マカク属内腸骨動脈分枝の形態学的特徴と周辺構造物との相互関係

学会発表
Hidaka Anetai,Kounosuke Tokita,Ryuuhei Kojima Relation of segmental variation in the lumbosacral plexus to length of the 12th rib in macaque specimens.(平成27年3月21~23日) 第120回日本解剖学会総会・全国学術集会・第92回日本生理学会大会合同大会(神戸コンベンションセンター).

姉帯飛高,時田幸之輔,小島龍平 マカク属骨盤内動脈系において観察された動脈輪形成と形態学的意義(平成27年7月18~20日) 第31回日本霊長類学会大会(京都大学).

姉帯飛高,時田幸之輔,小島龍平,影山幾男,相澤幸夫,熊木克治 内腸骨動脈分枝の比較解剖学~普遍性と特殊性から形態形成の特殊性を探る試み~(平成27年9月26日) コ・メディカル形態機能学会 第14回学術集会・総会(埼玉医科大学).

姉帯飛高,時田幸之輔,小島龍平 マカク属内腸骨動脈分枝,特に壁側枝の形態学的特徴(平成27年,10~12日) 第69回日本人類学会大会(産業技術総合研究所).
マカク属内腸骨動脈分枝の形態学的特徴と周辺構造物との相互関係

姉帯 飛高

内腸骨動脈分枝のうち下肢帯へ分布する壁側枝は上殿動脈(Gs)や下殿動脈(Gi)等があり, 起始や走行が多様である. 壁側枝を含む内腸骨動脈の多様性はQuain(1844)はじめ古くから調査されているが, 比較解剖学的資料は乏しい. 研究代表者はニホンザルとカニクイザルの内腸骨動脈壁側枝とその周辺構造物を調査した.
 ニホンザルはGiがGsまたは内陰部動脈と共同幹を形成し仙骨神経叢のS1/S1間を貫き, カニクイザルはGsとGiが共同幹を形成し腰仙骨神経叢L7/L7またはL7/S1間を貫く傾向があった. またニホンザル・カニクイザル両種において, Gsが神経叢を貫く位置が神経叢の分節変動に影響される傾向は共通していた. しかし, 同じマカク属でありながら内腸骨動脈の分岐型, 特にGiの分岐位置に明らかな差が見られた.
Giは主に浅殿筋を栄養する動脈であり, 浅殿筋は運動様式に応じた形態適応が明らかな筋の1つである. ニホンザルとカニクイザルの運動様式は一部異なり, 浅殿筋の形態に差がみられる可能性がある. 運動様式の差と筋骨格系の適応変化に, 血管系も何らかの適応をみせる可能性が示唆された. 今後Giの形態について浅殿筋の形態を含めて調査を進める必要がある.



H27-B25
代:島田 将喜
協:古瀬 浩史
協:坂田 大輔
奥多摩湖周辺の野生ニホンザル「山ふる群」の調査と環境教育

論文
島田将喜(2016) 平成27年度 山ふる群調査報告書:20. 謝辞謝辞あり

学会発表
島田将喜 奥多摩の野生ニホンザルの長期研究の試み(2015年10月24日) 霊長類研究所共同利用研究会「ニホンザル研究のこれまでと、今後の展開を考える」(京都大学霊長類研究所 愛知県犬山市).

Masaru NAITO, Masaki SHIMADA Ranging behavior of Japanese macaques (Macaca fuscata) invading “uninhabited area”: The relationship between vegetation and travel speed around Lake Okutama, Tokyo.( 26-30, July, 2015. ) The 5th International Wildlife Management Congress(Sapporo, Japan).
奥多摩湖周辺の野生ニホンザル「山ふる群」の調査と環境教育

島田 将喜 , 古瀬 浩史, 坂田 大輔

2015年度の調査で得られた山ふる群の推定最大頭数は88頭であった。2013年度以降2015年10月までの調査で、1度でも採食が認められた食物は、同定できた植物が77種(122部位)であった。これに種不明のマメ科(3部位)、種不明のつる性植物(3部位)、種不明の草本類(1部位)、昆虫類、キノコ類である。通年で見た場合、観察された採食の回数の多かったのは、オニグルミの種子、サクラ属の果実、草本類、カキノキの果実、クズの葉、サクラ属の葉、ヤマグワの葉である。2015年度の調査中、山ふる群のサルが民家付近の農作物や果樹などを採食する行動は、一度も観察されなかった。年間の推定遊動域の全体は、奥多摩湖の南岸一帯をコアエリアとする、湖を大きく取り囲む領域であることがわかった。解放水域を除く遊動面積は33.0km2であった。山ふる群は遊動域内に存在するきわめて多様な植物性資源を利用しているが、もっとも強く依存する食物資源は、かつて山のふるさと村周辺地域に暮らしていた人々が放棄した植物である。しかし遊動域内の植生の生産量が十分な年には、山ふる群のサルたちは民家のカキノキなどを食べるようなリスクを負わないことが示唆された。


H27-B26
代:赤座 久明
中部山岳地域の遺伝子モニタリング
中部山岳地域の遺伝子モニタリング

赤座 久明

遺伝子解析により、中部地方に生息するニホンザルの群れや地域集団の類縁関係を明らかにし、地域個体群の成立過程を検討することを目的にして、DNA試料の野外採集と分析を行った。
2015年6月から11月にかけて、滋賀県杉野川、岐阜県揖斐川流域でDNA試料の糞を採集した。分析の結果、ミトコンドリアDNA調節領域(mtDNA-CR)(1015塩基対)から、Aタイプ(杉野川、揖斐川)、Bタイプ(揖斐川)、2つのハプロタイプを検出した。2タイプの第二可変域に注目して、ハプロタイプを分類(Kawamoto et al 2007)すると、AはJN21タイプ、BはJN30タイプであった。JN21タイプは、第一可変域に10種類のハプロタイプを持っており、揖斐川のJN21集団は先行研究により石川県白山の集団や岐阜県長良川の集団と共通のタイプであることが分かっていたが、今回の調査で、同じタイプが滋賀県杉野川流域にも分布する可能性が考えられた。JN21集団は近畿地方から中部地方にかけて広域に分布している集団であるが、このうち日本海沿い分布している4タイプの集団(西からA:京都、B滋賀・福井、C石川・岐阜、D富山)について、mtDNAハプロタイプのネットワーク解析(TCS解析)を行った結果、遺伝的な近縁関係は、A→B→D→Cの順に並び、必ずしも地理的位置関係と一致しないことが分かった。研究成果を2015年10月25日に霊長類研究所で開催された共同利用研究会「ニホンザル研究のこれまでと、今後の展開を考える」で公表した。



H27-B27
代:佐々木 基樹
協:近藤 大輔
霊長類後肢骨格の可動性

学会発表
上岡実直, 佐々木基樹, 山田一孝, 遠藤秀紀, 大石元治, 柚原和敏, 冨川創平, 杉本美紀, 押田龍夫, 近藤大輔, 北村延夫 アライグマ、タヌキおよびレッサーパンダの前腕骨格可動域に関するCT画像解析(2015年7月31日) 第21回日本野生動物医学会大会(江別).
霊長類後肢骨格の可動性

佐々木 基樹 , 近藤 大輔

昨年度解析したニシローランドゴリラの個体に加えて、新たに雄のニシローランドゴリラ1個体の後肢を、CTスキャナーを用いて非破壊的に解析し趾の可動域を前年度の個体の結果と比較した。さらに、これらのデータをチンパンジー、ニホンザル、そしてスマトラオランウータンの可動域と比較検討した。これまでの解析方法と同様に、第一趾を最大限伸展および屈曲させた状態でCT画像撮影をおこなった。得られたCT断層画像データを三次元立体構築して、第一趾の可動状況を観察した。今回解析したニシローランドゴリラの第一趾の第一中足骨は上下斜め方向に可動面を持つニホンザルやチンパンジーとは違って足の背腹平面で可動しており、その可動域は同じ背腹平面で第一趾を可動させているチンパンジー3個体のものと比較すると顕著に大きかった。このことから、ニシローランドゴリラの背腹平面における大きな第一趾の可動域は、個体差ではなく種特異的な形態学的特徴である可能性が高いと考えられる。


ニシローランドゴリラ左後肢のCT画像(第一趾伸展時)


H27-B29
代:守屋 敬子
新世界ザルに保存された鋤鼻器の機能を探る

論文
Keiko Moriya-Ito, Takashi Hayakawa, Hikoyu Suzuki, Kimiko Hagino-Yamagishi, Masato Nikaido(2018) Evolution of vomeronasal receptor 1 (V1R) genes in the common marmoset (Callithrix jacchus) Gene 642:343-353.

学会発表
守屋敬子、早川卓志、鈴木彦有、山岸公子、徳野博信、二階堂雅人 コモンマーモセット鋤鼻受容体(V1R)の発現と分子進化(2016年1月27日) 第5回 日本マーモセット研究会(東京慈恵会医科大学).
新世界ザルに保存された鋤鼻器の機能を探る

守屋 敬子

 鋤鼻器はフェロモンなどの化学物質を受容する器官として機能しているが、ヒトを含む狭鼻猿類では痕跡化している。しかし、鋤鼻器の感覚センサーである鋤鼻受容体は僅かに保存されており、ヒトで3遺伝子、他の狭鼻猿類で0〜4遺伝子存在する。一方、原猿類は齧歯類並みの発達した鋤鼻器を持ち、鋤鼻受容体も多様である。その中間に位置するのが広鼻猿類で、鋤鼻器を持つが、ゲノム上の機能的な鋤鼻受容体数は大幅に減少しており、コモンマーモセットでは7遺伝子のみである。霊長類における鋤鼻器退化および鋤鼻受容体数の減少の歴史をひもとくには,広鼻猿類が保有している鋤鼻器の機能を理解する事で推測出来ると考え、コモンマーモセットを対象に研究を行った。
 コモンマーモセット鋤鼻受容体のin situハイブリダイゼーションを行ったところ,鋤鼻で発現しているものは5遺伝子であった。そのうち2遺伝子は嗅上皮でも発現が確認された。残りの3遺伝子は鋤鼻特異的に発現していた。分子進化的解析よりこの3遺伝子は広鼻猿類の中で遺伝子重複を起こしたと分かった。それ以外の遺伝子は他の哺乳類鋤鼻受容体との相同性が高かった。それらは、鋤鼻以外の臓器にも発現している事から機能については更なる研究が必要である。



H27-B31
代:島田 朋美
金崋山におけるワカモノメスのアロマザリングの個体差と自身のアカンボウへの育児行動との関連
金崋山におけるワカモノメスのアロマザリングの個体差と自身のアカンボウへの育児行動との関連

島田 朋美

ニホンザルにおけるアロマザリング(母親以外の個体による育児行動)の研究は飼育下や餌付け群で多く行われており、1~2歳のコドモ、未経産のワカモノメスによくみられる。そこで本研究では野生ニホンザルのアカンボウの視点から母親以外がどのように関わるのか、アロマザリングに注目し検討を行った。金華山島のニホンザルB1群(群れの頭数は2014年35頭、2015年33頭)を対象とし、そこで生まれたアカンボウ(2014年11頭、2015年2頭)を対象個体として、2014年、2015年の4~7月に計138時間の個体追跡を行い、対象個体の行動、対象個体への社会交渉の相手と内容について記録した。その結果、アカンボウへのアロマザリング頻度が最も高いのは2014年ではオトナメスの2.5回/h、2015年ではコドモからの2.8回/h であった。しかしオトナメスは2015年では0.8回/h、コドモは2014年では0.3回/hと年によって頻度に差があった。これは年によってコドモの数が違うことに大きく影響を受けていると考えられる。また抱擁・運搬・グルーミングについて個体ごとに分析を行った結果、ほとんどの個体が10回未満なのに対し、オトナメス(経産メス・高順位)が122回、次点ではワカモノメス(未経産・中順位)の48回であった。そこからアカンボウとの血縁関係に注目して分析するとオトナメスは血縁に対し13回、非血縁に対しては109回、次点のワカモノメスは血縁43回、非血縁に5回であった。先行研究でコドモやワカモノメスに多くみられたのは、血縁者のアカンボウが多かったのではないかと考えられる。また育児行動の回数が多かったオトナメスは2歳以下のコドモをもっておらず、高順位なのも要因の1つであると考えられる。


H27-B32
代:那波 宏之
協:難波 寿明
霊長類における神経栄養因子の精神機能発達に与える影響
霊長類における神経栄養因子の精神機能発達に与える影響

那波 宏之 , 難波 寿明

神経発達障害を病因とする統合失調症などのヒト精神疾患をモデル化するには、よりヒトに遺伝子や行動パターンが類似する霊長類が最適と考えられる。共同研究者らは、新生仔ネズミの皮下に神経栄養性サイトカインである上皮成長因子(EGF)やニューレグリン1などを投与することで、思秋期以降に種々の認知行動異常を呈する統合失調症モデルを樹立しているが、実際、ヒト霊長類でも再現されるかは不明であった。本共同利用研究課題では、サル霊長類でもサイトカインの新生児投与で発達依存性の認知行動変化が起こせるかどうか、マーモセットおよびアカゲザルを用いて検討している。
これまでにマーモセット新生児4頭へのEGF投与を実施してきているが、2010年にEGF投与を皮下投与されたマーモセットは、3歳を越えた段階で、活動量の上昇やアイコンタクトの頻度低下を示し、逆転学習課題等の認知行動課題においてその能力が著しく低下していることが判明した。満3歳を迎えるマーモセットは、ビデオによる行動観察に加え、MRIを用いた構造およびDTIのデータ取得を行った。また、2012年と2014年に合計マカク新生児3頭へEGF投与も実施している。2頭は飼育担当者から行動がおかしいと報告があり、個別飼育のケージに移したところ、ヒトに対して恐怖反応を示さないなど情動行動の異常が観察されている。



H27-B34
代:William Sellers
The Comparative Biomechanics of the Primate Hand.

学会発表
Sellers WI, Brassey CA, O'Mahoney T, Yoxhall A, Hirasaki E Measuring 3D primate finger movements: the application of video photogrammetry( 24th - 26th June 2015) The Anthropology of Hands Conference( Kent, Canterbury, UK).
The Comparative Biomechanics of the Primate Hand.

William Sellers

This project was focused primarily on the acquisition of a range of comparative biomechanical data in order to better understand the evolution of manual dexterity among the primates. Our primary dataset was obtained by filming individual animals held at PRI. This entailed extensive preparation work at PRI ensuring access to the enclosures and adequate space for setting up the cameras and lights needed for the experiments as well as designing suitable arrangements for allowing the subject animal to interact manually with various food items. The filming itself was carried out over a 2 week period in August 2015 and was in general very successful. For the first time we used 8 synchronised cameras and this allowed us to cover a larger angular range for better 3D reconstruction. However this innovation was not without its difficulties since it meant that we generated a great deal of raw data and the time taken for data transfer and archive is appreciable. The extra cameras also produced a number of hardware challenges with reliable synchronisation that had to be overcome. We also trialed new software for 3D photogrammetric reconstruction and this, coupled with the extra cameras, means that we have achieved our basic objective of capturing the 3D finger movements in Japanese macaques, capuchin monkeys, and a spider monkey in manual feeding tasks involving different sized food items. This is a major achievement and is the first time such data have been obtained. However we are still at the stage of data analysis. Our current system captures the 3D outlines automatically but the underlying skeletal movements that are an essential part of understanding the musculoskeletal processes need to be calculated based on surface anatomical feature. This calculation process requires considerable operator intervention in its current form and it extremely time consuming. We are therefore currently working on automatically fitting hand outlines to the point cloud data so that the skeletal movements can be extracted both more accurately and much more rapidly. We are similarly working on how to best present this complex, multidimensional dataset in a form suitable for publication since this is the first time such data has been examined in this way. At the same time it has become clear from our initial analysis that we need to improve some aspects of our experimental design. It is likely that the camera placement used with 8 cameras could be improved and we wish to trial different camera arrangements to improved the directional coverage, and reduce the issues associated with fine finger movements being obscured. In addition we need to extend the range of hand use tasks to cover a wider range of grip styles. The monkeys have strong grip preferences and the current tasks only allow subtle differences associated with different sized food items. We therefore need to experiment with a larger range of manual tasks including locomotor hand use so that we can measure the major classes of hand use that have been described in the literature.


H27-B35
代:久保田 浩司
協:垣内 一恵
協:高橋 将大
霊長類精原幹細胞の解析
霊長類精原幹細胞の解析

久保田 浩司 , 垣内 一恵, 高橋 将大

雄の生涯に渡る精子形成は精原幹細胞の自己複製によって維持されている。しかし霊長類の精原幹細胞の実体はほとんど明らかにされていない。本研究はこれまで申請者が明らかにしてきたマウス、ラット、ラビット精原幹細胞の性状および開発したそれら精原幹細胞の自己複製を促す無血清培養系をもとに霊長類精原幹細胞の性状解析と長期培養系の確立を目指している。霊長類研究所からの新鮮精巣試料は得られなかったため、実験動物中央研究所より供試されたマーモセット精巣試料を用いて、フローサイトメトリー、免疫組織化学解析、及び培養細胞の免疫細胞化学解析を行った。未だマーモセット精原幹細胞の同定には至っていないが、齧歯類・ラビットの精原幹細胞培養系においてマーモセット精原細胞の維持が可能であることが示唆された(図)。現在、継続して解析を進めているが、並行して新鮮精巣及び培養細胞におけるマーモセット精原幹細胞活性の評価系の開発を進めている。


H27-B37
代:Henry Bernard
"Determining the correlation between primate abundance and habitat quality index based on the application of protein-to-fiber ratio analysis of mature leaves of dominant tree species in logged forests in Sabah, Malaysia"
"Determining the correlation between primate abundance and habitat quality index based on the application of protein-to-fiber ratio analysis of mature leaves of dominant tree species in logged forests in Sabah, Malaysia"

Henry Bernard

Discussons have been made with my local research collaborator (DR. Ikki Matsuda) during the short term visit to PRI on the potential of using habitat quality index, measured as mature leaves protein-to-fiber ratio, to predict primate population abundance at local spatial scales in Sabah. The analysis was further extended to include not only research sites in Sabah, but also sites elsewhere in Kalimantan, Sumatera and Peninsula Malaysia. All raw data on crude protein and fiber (ADF) from 6 diferent sites on Borneo (i.e., 5 sites in Sabah and 1 site in Kalimantan) and 1 site in Sumatera have been integrated. In addition, secondary data form 1 site in peninsular Malaysia were obtained and included in the overall data pool. Altogether, the data set combined represented the crude protein and ADF of mature leaves of dominant tree species from Abai, Sukau, Danum Valley, Kalabakan, Klias, Sebangau, Pangandaran and Kuala Lompat. However, the main issue with regard to estimating folivores primate biomass at the different sites remains unresolve, due to differences in the methods used to estimate the primate biomass at the different sites. Moreover, there were sites where primate biomass estimates are non-available. Therefore the analysis between habitat quality index and primate biomass for the different sites is still pending. It was envisaged, however, that this issue will be settled in the near future. A discussion was also held on how to write the paper in connection with the obtained data and intensive literature research was made based on available resources at PRI. All chemical analysis of leave samples have been completed and a simple laboratory procedure to assess particle size of primate feces have been observed. The primate particle size analysis may become useful in the future in connection with dietary studies of primates which is a topic related to the current data analysis on leaf quality index. During the visit, a draft paper co-authored by Dr. Ikki Matsuda and other collegues, was produced which has been submitted for potential publication. Lastly, we have discussed concerning future research collaboration between ITBC,UMS and PRI.


H27-B38
代:高田 達之
協:檜垣 彰吾
協:三ツ石弥 千代
"霊長類ES,iPS細胞分化に与える環境化学物質の影響"

論文
Okamoto Y, Yoshida N, Asami M Shimozawa N, Matsuda T, Kojima N, Perry A.F.P., Takada T(2016 Jan 11) NA methylation dynamics in mouse preimplantation embryos revealed by mass spectrometry Sci Rep.(doi: 10.1038/srep19134.).

学会発表
Okamoto Y, Yoshida N, Asami M Shimozawa N, Matsuda T, Kojima N, Perry A.F.P., Takada T DNA methylation dynamics in mouse preimplantation embryos revealed by mass spectrometry(Feb. 17-19, 2016) International Symposium on Epigenome Dynamics and Regulation in Germ Cells(Kyoto, Japan).

高田達之 幹細胞生物学を利用した固有魚種保存と環境科学研究 Application of stem cell biology to the conservation of endangered endemic fish and environmental science(2016/2/29) 鹿児島大学大学院連合農学研究科 分野別セミナー(那覇 琉球大学).
"霊長類ES,iPS細胞分化に与える環境化学物質の影響"

高田 達之 , 檜垣 彰吾, 三ツ石弥 千代

ヒトiPS細胞を使用し、レチノイン酸存在下において分化培養を行った。この際、様々な環境化学物質を培地に添加し、未分化マーカー遺伝子、細胞分化マーカー遺伝子・レチノイン酸応答遺伝子の発現変化をreal-time PCRを用いて解析した。その結果、ビスフェノールAおよびノニルフェノールが未分化マーカー遺伝子およびレチノイン酸応答遺伝子発現に与える影響することがわかった。現在そのシグナル伝達経路を解明すべく、マイクロアレイを用い、gene set enrichment解析を行っている。
 また化学物質がエピジェネシスに与える影響を明らかにするため、LC/MS/MSによる、メチルシトシン(mC)、5ヒドロキシメチルシトシン(hmC)の微量定量法を開発し、まずカニクイザル組織中のmC,hmCの定量を行った。霊長類においても脳組織に高いhmC(0.8%/G)が検出され、中枢神経系におけるhmCの機能が示唆された。次にマウス卵において受精後のDNAの脱メチル化の微量定量解析を行った。これにより、リプログラミング過程におけるDNAメチル化動態を初めて定量的に解析することができた。その結果、父方ゲノムにおいては、DNA複製前から急激な脱メチル化が生じ、受精10時間後には約40%低下すること、受精後10-48時間(2-cell から8-cell)はメチル化レベルがほとんど変化せず、その後再び低下し、胚盤胞期胚ではmC量は約1%となることが明らかとなった。また5hmCレベルは常に低く、特に受精後3-6時間においては5mCの低下と5hmCの生産は相関していないこと、雄性発生胚でのみ5hmCが高いレベルで検出され、母方ゲノムとの関連性が示唆された。



H27-B39
代:城戸 瑞穂
協:合島 怜央奈
協:木附 智子
口腔における感覚受容機構の解明
口腔における感覚受容機構の解明

城戸 瑞穂 , 合島 怜央奈, 木附 智子

適切な口腔感覚は、哺乳類において哺乳・摂食・情報交換など多様な行動の基盤となっている。しかしながら、その機構についての理解はまだ限られたものである。私たちは、(狭義の)味覚とされる甘味・塩味・酸味・苦味・うまみ以外の口腔内の感覚、とくに、温度感覚や唐辛子や胡椒などのスパイスなどのへ感覚、触圧感覚などの機構の解明を目指し、こうした広義の味覚とされる感覚の分子基盤として、TRP チャネル(transient receptor potential channel)を想定し研究を進めている。そして、ヒトにより近いサルにおける発現および機能的側面を調べ、これまでにげっ歯類にて得た結果と比較することを目的とした。
今年度は、新たに作製したTRPチャネル抗体がサル組織を認識するかを調べ、特異的な標識を得るための条件検討を行った。今までの結果では、非特異反応も混在しているようであるため、今後、試料採取や保存等の条件も含め検討を行う予定である。



H27-B40
代:松岡 史朗
協:中山 裕理
下北半島脇野沢の野生ニホンザル群の分裂が個体群動態に与える影響

学会発表
Yuri Nakayama,Shiro Matsuoka,Yutaka Watanuki Increase of size and division of a troop of Japanese monkey : affect demography ?(2015.7.26-30) Vth International Wildlife Management Congress(札幌).
下北半島脇野沢の野生ニホンザル群の分裂が個体群動態に与える影響

松岡 史朗 , 中山 裕理

個体数増加傾向にあった下北半島南西部のA87群は2012年に83頭に増加し、2013年4月に43頭(87A群)と22頭(87B群)の2群に分裂した。分裂3年目の2015年度の出産率、赤ん坊の死亡率は各々、87A群37%、0%と分裂前の高い出産率、低い死亡率の状態に戻った。分裂前(1984~2011年)分裂後(2013年以降)の群の増加率、出産率、0~3歳の死亡率、遊動距離を比較してみたが、どれも変化は見られなかった。分裂年度2012年に見られた0~3歳の高い死亡率はこのときのみの現象であった。分裂前、年々増加傾向にあった群れの遊動面積は、分裂後も縮小は見られず、今年度は、さらに新たな地域への遊動が観察された。これは、隣接する84群の捕獲による個体数の減少、遊動域の変化の影響も考えられるが、明確なデータはいまのところない。


H27-B41
代:中務 真人
協:森本 直記
大型類人猿における手首・大腿部の可動性の検証

学会発表
中務真人,森本直記、西村剛 ヒト上科の中手指節関節に見られる種子骨について(2015年7月19日) 第31回日本霊長類学会(京都).
大型類人猿における手首・大腿部の可動性の検証

中務 真人 , 森本 直記

化石から過去の人類がどのような歩行様式を有していたかを推定するには、歩行に関連する関節の可動域推定が重要である。化石標本における関節の可動域を推定するために、霊長類研究所所蔵大型類人猿標本(冷凍、液浸)について、X線CT撮像を行った。今年度はチンパンジー5個体、ゴリラ1個体を新たに追加した。現在、アルディピテクスの手根の運動機能を正確に復元する試みに集中し、チンパンジーのデータを元に軟部組織がついた状態での最大背屈姿勢をPC内で骨のみから正確に再現するための方法を検討中である。また、手根関節での関節軟骨の厚さがチンパンジーでは予想以上に厚いため、関節軟骨の有無が化石標本におけるこうした推定に及ぼす影響も検討している。また、このデータ収集に関した派生的プロジェクトとして、手の中手基節関節における種子骨の出現頻度を検討した。この特徴(喪失)は大型類人猿の派生的形質として考えられているが、報告例が不十分であった。これまでの結果とあわせ評価を行ったところ、大型類人猿で母指列の種子骨が高頻度で失われている結果を得た。この成果は日本霊長類学会において発表した。


H27-B42
代:柏木 健司
豪雪地域のニホンザルによる洞窟利用のモニタリング

論文
柏木健司(2015) ニホンザルによる洞窟利用から観た黒部峡谷の魅力 立山自然保護ネットワークだより(19):5-7.

学会発表
柏木健司 ニホンザルによる洞窟利用から観た黒部峡谷の魅力(2015年5月24日) NPO法人立山自然保護ネットワーク2015年度総会(富山市).

柏木健司 厳冬期 サルのお宿は鍾乳洞(2015年5月27日) 北日本新聞(富山).

柏木健司 ニホンザルの洞窟利用(2015年06月25日) 北日本ラジオ とれたてワイド朝生(富山市).

柏木健司 パネル展「干支のサル」にて「サルの洞窟利用の紹介」での紹介記事と写真提供(2015年12月1日-2016年2月29日) 富山市ファミリーパーク(富山市).
豪雪地域のニホンザルによる洞窟利用のモニタリング

柏木 健司

 「豪雪地域に棲息するニホンザルは、防寒のために洞窟を利用する」、この生態は富山県東部の黒部峡谷で2010年に初めて確認され、継続的な現地調査と自動センサーカメラによる観察により、より詳しい生態の解明が進められている。一方、この生態が黒部峡谷に棲息するニホンザルが獲得した特異な生態なのか、それとも日本列島各地の豪雪地域に棲息するニホンザルに共通するものなのかは、それを判断するに足りる情報に絶対的に不足している状況であった。
 栃木県日光市野門の山腹斜面には、野門鉱山の坑道跡が知られている。また、野門周辺は冬期間、定常的な積雪が観測される地域であり、ニホンザルの洞窟利用の検証に適した地域の一つである。今回、野門鉱山の坑道跡において、冬季排泄のニホンザルの糞を確認した。糞は、洞口付近で数百個と多量であり、さらに洞口から5 m強の地点に於いても、100個強の糞が密集している。胡桃大の糞は、しばしば繊維質の物質で数個が連結し、糞表面には植物起源の破片が多量に見られる。辻 大和博士による糞内容物の検討によると、ほぼ100 %に近い割合で樹皮から構成される。野門地域のニホンザルは、厳冬期、防寒のために坑道に入り、サル団子を形作り寒さをしのいだ。「ニホンザルの洞窟利用は、豪雪地域におけるニホンザルに共通する生態である」という仮説を立証するための、新たなデータが加わった。



H27-B43
代:外丸 祐介
協:信清 麻子
協:畠山 照彦
協:吉岡 みゆき
一卵性多子ニホンザルの作製試験

学会発表
外丸祐介, 信清麻子, 吉岡みゆき,畠山照彦,印藤頼子,兼子明久,岡本宗裕,岡原純子,佐々木えりか 霊長類受精卵のガラス化保存(2015年10月28-29日) Cryopreservation Conference 2015(岡崎).
一卵性多子ニホンザルの作製試験

外丸 祐介 , 信清 麻子, 畠山 照彦, 吉岡 みゆき

本課題は、動物実験に有用な一卵性多子ニホンザルの作製を目指すものであり、これまでに体外培養系卵子・受精卵の操作・作製に関する手法の確認を進めながら、分割受精卵の作製試験に取り組んできた。平成27年度は、6頭の雌から採卵試験を行い、体外受精卵の作製と凍結保存の検討を行った。凍結保存の手段としてガラス化法を用いて保存する受精卵のステージを検討した結果、胚盤胞に比べて8細胞期〜桑実胚の場合に高い生存率が得られることがわかった。また、平成26年度末以降に、2頭のレシピエント雌に凍結保存した分割受精卵の移植試験を実施した結果、1/2例で妊娠が確認された。最終的には死産ではあったが妊娠満期の産仔を得ることに成功し、体外受精→受精卵分割→凍結保存を経た受精卵が個体発生能を持つことが確認できた。今後は更に移植試験を継続することで、一卵性多子ニホンザルの作製を達成したいと考えている。


H27-B44
代:藤本 明洋
全ゲノムシークエンスデータ解析に基づく解析困難領域の同定と遺伝的多様性の解析
全ゲノムシークエンスデータ解析に基づく解析困難領域の同定と遺伝的多様性の解析

藤本 明洋

申請者らは、日本人108人の全ゲノムシークエンスデータより、解析困難な領域を抽出した(解析困難な領域は、ヒト標準ゲノム配列に存在しない配列と多様性が極めて高い領域より選出した)。また、それらの配列を濃縮するためのアレイ(解析困難領域アレイ)を作成した。
 共同利用で提供を受けたチンパンジーのゲノムDNAをアレイで濃縮し、平均サイズ2080bpの解析困難領域由来のDNAを得た。両側にアダプターを付加し、第3世代シークエンサー用のライブラリを作成した。このライブラリをPacBio RSを用いてシークエンスし、59,994本のリード(総塩基数 1Gbp)を得た。PacBio RSはシークエンス長が長いものの、エラー率が極めて高い。エラーの補正のため、同じライブラリを第2世代のシークエンサーMiSeqでシークエンスした。MiSeqによるシークエンスの結果、11,587,746本のリード(総塩基数 1.7Gbp)を得た。
 現在は、MiSeqによりシークエンスされた配列をPacBio RSでシークエンスされた配列にマッピングし、エラーの補正を行う解析パイプラインを構築している。マッピングプログラムとして、多型性が高い領域に対するマッピングを得意とするSHRiMP2ソフトウエアを選出した。様々なパラメーターで、第3世代シークエンサーのデータに対して、第2世代シークエンサーのリード配列をマッピングし、マッピング率の比較を行っている。



H27-B45
代:筒井 健夫
協:小林 朋子
協:松井 美紀子
マカク歯髄幹細胞による歯髄再生法の開発
マカク歯髄幹細胞による歯髄再生法の開発

筒井 健夫 , 小林 朋子, 松井 美紀子

平成27年度は、前年度にニホンザル2例の下顎左側乳犬歯と下顎左側第一乳臼歯それぞれの歯髄腔へ歯髄細胞の三次元構築体を9ヶ月間移植し、抜歯後にX線解析と組織学的解析を行った。新たに、ニホンザル2例について三次元構築体を下顎右側乳犬歯と下顎右側第一乳臼歯それぞれの歯髄腔へ3ヶ月間移植し、抜歯後脱灰を行っている。また、移植した乳歯歯髄細胞についての細胞特性解析は、ヒト乳歯歯髄細胞との比較検討を行った。ニホンザル乳歯歯髄細はヒト乳歯歯髄細胞と比較し位相差顕微鏡による形態学的観察では、ニホンザルでは線維芽細胞様形態が観察され、ヒトではより紡錘形の線維芽細胞様形態であった。細胞増殖曲線において、ニホンザル1例ではヒトと比較し同程度の増殖能がみられ、また細胞周期解析においては、ニホンザルではヒトと比較しG0/G1期の減少およびG2/M期の増加が解析された。石灰化誘導によりニホンザルでは、誘導後3週目にアリザリンレッド染色において陽性像が観察され、ヒトでは誘導後2週目に陽性像が観察された。さらに脂肪分化誘導によりニホンザルでは17日目に、またヒトにおいては2週目に陽性像が観察された。9ヶ月間移植を行った乳歯のX線像には、乳歯歯冠歯頸部と歯髄腔内にX線不透過像が観察された。組織学的解析では、歯髄腔内に修復象牙質様組織像および象牙質粒様組織像の形成が認められた。


H27-B46
代:浅川 満彦
協:萩原 克郎
福島県に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生虫症および感染症に関する疫学調査

学会発表
浅川満彦 北限のサルの感染症と保全(2015年9月7日) 第158回日本獣医学会 公衆衛生学/野生動物学分科会合同シンポジウム(北里大学, 十和田市).
福島県に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生虫症および感染症に関する疫学調査

浅川 満彦 , 萩原 克郎

福島県に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の個体群は、管理の不十分さから、現在、そのサイズを急増させ、周辺地域で悩ましい問題が包含される。すなわち、地元住民の生活を農産物の害獣として圧迫すること、あるいはサル・人との極めて接近した状態は感染症というバイオリスクも併存するなどである。このような異なった性質を具有する個体群であるが、双方に関わるのが感染性病原体agentsである。前者では個体群の急増は感染論的に非常に危機的である。後者の場合、ヒトへの感染リスクも当然であるが、結核菌・ヒト蟯虫のようにヒトからサルへの感染があり、それがagentsの新たなソースになる可能性もあろう。このような複合した問題に、申請者と共同研究者がこれまで実施した技術を用い、共同して網羅的なagents侵淫状況の疫学調査を実施し、ヒト・動物双方の感染症予防施策の基盤とすることを目的としてきて。昨年7月は福島で有害捕獲されたニホンザル個体の蠕虫検査を継続するとともに、捕獲されている地点の一つ、摺上川など共同研究者である日本獣医生命科学大学の羽山伸一教授が拠点とするフィールドを実見した(下記写真集参照;申請者、摺上川ダム、ダム周辺は人気キャンプサイト-ヒトへの感染症の脅威、近くの畑に設置されたワナ、ニホンザルの往来、新鮮便、餌やり禁止の立て看板)。蠕虫感染の生態学を目的とした調査であるので、こういった踏査は不可欠で、実際、助成頂いた研究費もこの踏査源泉とさせて頂いた。しかし、当日は台風11号の最中で、天候が悪く、危険を伴うもので、必ずしも十分ではなかった。帰任にあたり、この地域の森林も管理する林業試験場でも情報入手を試みた。蠕虫のうち、腸結節虫類について、対応者の岡本教授が分子解析を継続中である。しかし、DNA抽出が困難なようで、新たな材料入手が必要となっている。また、ウイルス病については、分担者の萩原教授が分析を進めており、2016年に学会報告予定であるとの連絡を受けた。なお、2015年は獣医学会で「浅川満彦. 2015. 北限のサルの感染症と保全. 第158回日本獣医学会公衆衛生学/野生動物学分科会合同シンポジウム「ニホンザルの保全」,北里大学, 9月7日(第158回日本獣医学会プログラム・講演要旨集, 北里大学, p. 251)」を行い、その報告は2016年度、その基盤となる内容は原著論文として刊行の予定である。


H27-B47
代:井上 治久
協:沖田 圭介
協:今村 恵子
協:近藤 孝之
協:江浪 貴子
協:舟山 美里
霊長類神経系の解析とヒト疾患解析への応用
霊長類神経系の解析とヒト疾患解析への応用

井上 治久 , 沖田 圭介, 今村 恵子, 近藤 孝之, 江浪 貴子, 舟山 美里

 本年度は、霊長類神経系の解析とヒト疾患解析への応用の研究目的にむけて、iPS細胞の技術開発に取り組んだ。具体的には、STOフィーダーを使用しない培養液が開発されてきたことをうけて、フィーダーを用いて樹立したiPS細胞がフィーダーフリーに移行できるかどうか、フィーダーフリーでのiPS細胞樹立、その後の維持培養がiPS細胞の特性は維持されるのかを、まずヒトiPS細胞を用いて検討した。
 STOフィーダーを使用して樹立した樹立したiPS細胞株を、STOフィーダー上の培養からフィーダーを使用しない培養への移行は以下の手順で行った。CTK液処理でフィーダーを取り除いた後、ピペッティングでiPS細胞コロニーをクランプ化、リコンビナントラミニン(iMatrix-511、ニッピ社)でコートを施したプレートに、Onフィーダー用途培地(霊長類ES/iPS細胞用培地、リプロセル社)と、フィーダーレス培地(StemFit AK01もしくはAK03、味の素社)を1:1で混合したものを使用し継代した。48時間後に全量をフィーダーレス培地で置換して移行させた。最終的に全てが、フィーダーレス培養系に移行できた。結果、全ての株が、フィーダーフリー培養系に移行できることを確認した。さらに、ヒトからフィーダーフリーで樹立したiPS細胞を、複数回継代後、常法により神経系へと分化させた。神経系細胞への分化効率はフィーダーを使用して樹立したiPS細胞と同等であった。STOフィーダーを使用しない条件でのiPS細胞樹立、その後の維持培養がiPS細胞の特性は維持されていた。 
 今後、上記、条件を元に、フィーダーを使用して樹立されたチンパンジーiPS細胞をフィーダーフリーに移行する。もし、移行ができなかった場合には、フィーダーフリーでの樹立を行う。



H27-B48
代:Bambang Suryobroto
Genomic Evolution of Sulawesi Macaques

学会発表
Bambang Suryobroto External Morphological Characteristics of Sulawesi Macaques(7 月 18 日~7 月 20 日) 第 31 回日本霊長類学会大会(京都).
Genomic Evolution of Sulawesi Macaques

Bambang Suryobroto

Sulawesi macaques are exceptional as the seven species evolved allopatrically in an island that is less than 5% of the whole coverage area of the genus Macaca. The island itself is part of the zoogeographical realm called Wallacea that is highly endemic. There are three issues regarding the evolution of Sulawesi macaques. The first is taxonomic status, the second phylogenetic relationship, and the third hybrid population problem. Recent development in DNA technology (next generation sequencing, NGS) leads to the ability to read the whole genome of an individual. This immense genomic data provide an opportunity to find the most taxonomically informative loci to base the phylogenetic hypotheses and also to observe the gene dynamics of hybrid population. Dr. Yohei Terai (Soken-dai) and I went to Palu in Sulawesi, near the boundary of the distribution of two macaque species, Macaca tonkeana and M. hecki. We sampled DNA from nine individuals of M. tonkeana and ten of M. hecki. We constructed genomic DNA libraries from all 19 samples, and subsequently captured the exon sequences using exon capturing kit. The average size of libraries were 550 bp. We will determine the exon sequences from the libraries.


H27-B49
代:Kanthi Arum Widayati
Greater sensitivity in yellow-blue (YB) color of dichromat monkeys

学会発表
Widayati KA, Suryobroto B, Saito A, Mikami A, Koida K Ability of Female Color Blind Gene Carrier Monkeys in Breaking Color Camouflage and Discriminating Colors((2015.7.3-7)) 23rd Symposium of International Color Vision Society(Sakura Hall in Katahira campus, Tohoku university).

Widayati KA, Tanaka K, Saito A, Mikami A, Suryobroto B, Koida K? THE STORY OF COLOR BLIND MACAQUES ?(2015-7.21-22) The 4th International Symposium on Primatology and Wildlife Science (Science Seminar House, North Campus of Yoshida Campus, Kyoto University).
Greater sensitivity in yellow-blue (YB) color of dichromat monkeys

Kanthi Arum Widayati

Macaque monkeys have trichromatic color vision homologous to that in humans. However, through molecular genetic analysis, previous study demonstrated the existence of a dichromatic genotype among the crab-eating macaques. Previous research showed that dichromat monkey could not discriminate colors along the protanopic (colorblind) confusion line, though trichromats could.
Present study aims to study sensitivity in yellow-blue (YB) color and luminance of colorblind monkey and compare it with colorblind-gene carrier and trichromat monkeys. We used several blue and yellow colors with three levels of contrast and six levels of luminance to paint dots arranged to be discernible as a global pattern. Visual stimuli are presented on screens of two iPods, and each was placed on top of a reward hole. Monkeys were trained to choose target from distractors to get the reward by sliding the appropriate device. So far we found that there are no differences between dichromat, trichromat and carrier monkeys in detecting the target. We need to introduce lower contrast stimuli to find the threshold. Now we are doing experiment with additional fund other than kyodoryo.



H27-B50
代:Laurentia Henrieta Permita Sari Purba
Variation of Gene Encoding Receptor of PTC bitter taste Compound in Leaf-eating Monkeys

学会発表
iroo Imai, Takashi Hayakawa, Nami Suzuki, Yamato Tsuji, Hiroshisa Hirai, Laurentia Henrieta, Sarah Nila, Kanthi Arum Widayati, Bambang Suryobroto Functional characteristic of gene encoding receptor of PTC bitter taste compound in leaf-eating monkeys(18-20 July 2015) Program of 31st Congress of The Primate Society of Japan(Japan).
Variation of Gene Encoding Receptor of PTC bitter taste Compound in Leaf-eating Monkeys

Laurentia Henrieta Permita Sari Purba

TAS2R38 is one of TAS2R multigene families that encode receptor to recognize bitter from PTC compound. TAS2R38 had been identified in many primates. TAS2R38 in human, chimpanzee, Japanese macaques exhibit intra-species polymorphism that lead to different behavioural response of individual. Taster individual show aversion to PTC, in contrast to tolerant in non-taster individuals.
Leaf-eating monkeys (Subfamily Colobines) are unique among primates because their diet mostly consisted of leaves that perceptually tasted bitter to human. Based on behavioral experiment, Chiarelli (1963) found that five individuals of three species of Colobines have non-taster phenotype. Thus, we conducted preliminary behavioral experiments of PTC-tasting on leaf-eating monkeys kept in Ragunan Zoo. The result indicated that nine individuals of genus Trachypithecus, Presbytis and Nasalis were all less sensitive to PTC compared with macaque.
Genomic DNA of leaf-eating monkey was obtained from fecal samples. After DNA extraction, TAS2R38 gene region was specifically amplified using standard PCR reaction. The result showed that there are some polymorphisms in the TAS2R38 genes of the monkeys. By calcium imaging methods, we found the cell expressing TAS2R38 receptor of leaf-eating monkeys have lower respond to PTC compared to macaque similar with the behavioral respond of the monkeys against PTC.



H27-B51
代:八木 創
ニホンザル劣位オスの性行動にみられる戦術的欺き

論文

関連サイト
京都大学人類進化論研究室 http://jinrui.zool.kyoto-u.ac.jp/index.php
ニホンザル劣位オスの性行動にみられる戦術的欺き

八木 創

本研究では嵐山モンキーパークいわたやまのニホンザル餌付け群を対象に、1)野外においても非αオスによる交尾隠蔽が戦術的に行われていること、2)聴覚的隠蔽が行われていること、3)交尾隠蔽が他者の心的状態を理解して行われていること、を明らかにすることを目的とした。その結果、非αオスは交尾中、αオスだけでなく自分より優位なオスから離れることが分かった。しかも、ただ単純に群れから距離を取るのではなく、広さ約1500平方メートル程のパーク内において自分より優位なオスとの近接を避けながら交尾していた。また、コンソート中のメスが発情音を発している場合、オスは自分より優位なオスとの近接を避けるために行動を調整していることが示唆された。他者の心的状態を操作したように考えられる事例は2事例観察できたが、それらが本当に意図的なものなのかは今後の調査が必要である。調査群として選んだ嵐山E群は、放飼場と違い、自由に餌場を離れて遊動ができる環境にある。野生群との違いが、餌という良質で豊富な資源が集中的に存在していることが主だと考えれば、本研究の結果は、野生下と同様の現象を、2次志向性を有する可能性を示唆する戦術的欺きとして、より鮮やかに示せたものである。


H27-B53
代:塩見 春彦
協:齋藤 都暁
協:岩崎 由香
協:山中 総一郎
協:蓮輪 英殻
協:櫻井 みなみ
霊長類生殖細胞における小分子RNAの解析
霊長類生殖細胞における小分子RNAの解析

塩見 春彦 , 齋藤 都暁, 岩崎 由香, 山中 総一郎, 蓮輪 英殻, 櫻井 みなみ

我々の研究室では、マーモセットPIWIタンパク質の一つであるPIWIL3 (MARW3) が卵巣で発現することを見出した。マウスには存在しないPIWIであるPIWIL3に対する抗体を用い、マーモセットを用いて発現解析を行った。その結果、PIWIL3は精巣では発現がみられない一方で、卵巣における卵胞形成後の卵細胞(原始卵胞、一次・二次卵胞及び胞状卵胞)において発現することを明らかにした。 また、コモン・マーモセットの卵巣においてPIWIL3に結合するpiRNAの単離を試みた。しかし、抗PIWIL3抗体による免疫沈降法ではPIWIL3結合piRNAを得ることができなかった。これは卵巣全体におけるPIWIL3発現細胞の量が極めて限られているためであると考えられる。さらに、コモン・マーモセット卵巣由来のpiRNAの同定を全小分子RNA(15-40塩基長分画)を用いて進めてが、現在のところ検出できない。これは出発材料、つまり、コモン・マーモセットの卵巣の量が少なすぎるためであると考えている。


VASA : 生殖細胞マーカー


H27-B54
代:大橋 順
協:中 伊津美
協:安河内 彦輝
霊長類におけるマラリア感染関連遺伝子の分子進化学的解析
霊長類におけるマラリア感染関連遺伝子の分子進化学的解析

大橋 順 , 中 伊津美, 安河内 彦輝

熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)は、自身のEBA175分子をリガンド、ヒトのGYPA分子をレセプターとして利用し赤血球へ侵入する。ヒトとチンパンジーのGYPA分子のアミノ酸配列を比較すると、12個の連続するアミノ酸の挿入欠失置換(チンパンジーで挿入、ヒトでは欠失)がみられる。この部位がヒトに感染する熱帯熱マラリアとチンパンジーに感染するマラリア(P. reichenowi)の宿主特異性に影響しているとすると、GYPA遺伝子には強い正の自然選択が作用してきた可能性が考えられる。現在、マラリア患者16名と西チンパンジー3匹について、GYPA遺伝子の全コード領域の塩基配列決定を試みている。配列がデータが得られれば、多型サイトと固定サイトの同義置換数と非同義置換数とを比較する(McDonald–Kreitman検定)予定である。


H27-B55
代:久世 濃子
野生オランウータンの繁殖生理と栄養状態に関する生理学的研究

学会発表
久世濃子 野生ボルネオ・オランウータンの雌の妊娠と果実生産量の関係(2016年3月20日) 第6回動物園大学ず~だなも(愛知県犬山市).

久世濃子,金森朝子,山崎彩夏,田島知之,Renata Mendonca,Henry Bernard,Peter T. Malim,幸島司郎 野生ボルネオ・オランウータンの妊娠と果実生産量の関係(2016年7月17日) 第32回日本霊長類学会(鹿児島県鹿児島市).
野生オランウータンの繁殖生理と栄養状態に関する生理学的研究

久世 濃子

大型類人猿の一種、オランウータン(Pongo sp.)がどのような栄養状態で発情・妊娠しているのかを明らかにすることを目的に、尿中のホルモン代謝産物濃度を測定した。2009~2014年に、マレーシア国サバ州ダナムバレイ森林保護区(ボルネオ島)で採取し、冷凍保存したオランウータンの尿サンプル(雌7頭・雄2頭から採取した計41サンプル)中のインスリン分泌能指標物質(C-Peptide)について、エンザイムイムノアッセイ法(Mercodia社製 Ultrasensitive C-Peptide ELISAキット)を用いて測定した。測定の結果、非授乳中の雌でC-Peptideが最も高く(平均2.94 pmol/Crmg、N=8)授乳中(平均0.56pmol/Crmg、N=20)や妊娠中(平均0.35pmol/Crmg、N=11)の雌では低い、という結果が得られた。また雄の測定値は21.30 pmol/Crmgと0.32pmol/Crmgであった。C-Peptideは個体の栄養状態を反映し、栄養状態が良いと高値となる。従って(非妊娠・非授乳で)発情している可能性のある雌は、妊娠や授乳によって栄養的に負荷がかかっている雌よりも、栄養状態が良いことが確かめられた。


H27-B56
代:森光 由樹
遺伝情報によるニホンザル地域個体群の抽出と保全単位の検討

学会発表
Yoshiki Morimitsu Study on Conservation Unit of Japanese Macaques Using Genetic Information.(July 27,2015) Vth International Wildlife Management Congress IWMC2015(Sapporo Japan).
遺伝情報によるニホンザル地域個体群の抽出と保全単位の検討

森光 由樹

ニホンザルの分布は、連続分布している地域、モザイク状分布している地域、連続分布から著しく孤立している地域と様々である。特に孤立している地域個体群は、遺伝的多様性の消失及び絶滅が危惧される地域個体群である。地域個体群の保全にむけて、早急な遺伝情報の収集が必要である。そこで報告者は、兵庫県内で孤立している地域個体群、篠山地域個体群(18個体)および大河内・生野地域個体群(13個体)の血液サンプル及び皮膚DNAサンプルを用いて常染色体マイクロサテライト計16座位(D19S582,D3S1768,D1S548,D6S493,D4S2365,D13S765,D18S537,D20S484,D7S821, D10S611,D14S306,D8S1106,D12S375,D15S644,D5S1457,D17S1290)について分析を進めた。フラグメント分析で、個体のマイクロサテライト領域の遺伝子型を判定した。地域個体群のヘテロ接合率を求め多様性の違いを比較した。平均へテロ接合率の期待値Heと観察値Hoでは,篠山地域個体群は, He=0.698, Ho=0.732 であった。大河内群はHe=0.713, Ho= 0.762であった。今後は、サンプル数を増やし、兵庫県北部の絶滅危惧個体群、および佐用船越山個体群の分析を進める。また、糞DNAの分析方法についても開発を行う予定でいる。


H27-B57
代:荻原 直道
協:大石 元治
ニホンザル二足歩行運動の生体力学的解析

論文
垣内田翔子,橋爪善光,荻原直道,西井淳(2015) 脚関節間シナジーの視点によるニホンザルとヒトの二足歩行制御戦略の比較 電子情報通信学会論文誌 D J98-D(8):1171-1179.

学会発表
荻原直道 足部筋骨格構造の機能形態学とヒトの直立二足歩行の進化(Oct 29, 2015) 学術集会(千葉県浦安市).

荻原直道 サルの二足「走行」とヒトの二足「歩行」(Oct 15, 2015) 2015年度第4回ヒューマンロコモーション評価技術協議会(東京都江東区).

関連サイト
慶應義塾大学理工学部機械工学科 荻原研究室 www.ogihara.mech.keio.ac.jp/
ニホンザル二足歩行運動の生体力学的解析

荻原 直道 , 大石 元治

生得的に四足歩行するニホンザルの二足歩行運動のメカニクスを、ヒトのそれと対比的に明らかにすることは、ヒトの二足歩行の起源と進化を明らかにする上で重要な示唆を提供する。本研究では、ニホンザルの二足歩行運動の床反力と脚のスティフネスに着目し、その移動様式の力学原理を再検証することを目的とした。
ニホンザル二頭を実験室内の歩行路の上を歩行させ、歩行路に設置した床反力計を用いてニホンザル2頭の二足歩行中の床反力を計測した。このとき歩行中の身体運動を計4台のビデオカメラで撮影し、関節点をフレーム毎にデジタイズした。その結果より歩行中の重心点の時間変化を求め、位置・運動エネルギーを算出した。また、その点と着力点を結ぶ脚軸の長さ変化と床反力データから、脚のスティフネス(脚の弾性特性)を算出した。脚スティフネスを体質量と脚長を用いて無次元化を行い、ヒトの二足歩行・走行時の脚スティフネスを比較した。その結果、ヒトの走行時よりもニホンザルの二足歩行の脚スティフネスは小さいことが明らかとなり、ニホンザルの二足歩行は両脚支持期があるにもかかわらず力学的には走行、すなわちgrounded runningとなっていることが明らかとなった。また、ニホンザル屍体標本から、歩行に関係する主要な筋の速筋線維と遅筋線維の割合を組織学的手法によって計測する準備を行った。



H27-B58
代:佐々木えりか
協:井上 貴史
協:平川 玲子
協:島田 亜樹子
協:高橋 司
協:田中 真佐惠
霊長類における絶滅危惧種の保全技術の確立

論文

関連サイト
公益財団法人実験動物中央研究所 http://www.ciea.or.jp/
霊長類における絶滅危惧種の保全技術の確立

佐々木えりか , 井上 貴史, 平川 玲子, 島田 亜樹子, 高橋 司, 田中 真佐惠

米国では絶滅危惧種のゴールデンライオンタマリン(Leontopithecus rosalia)の保全を目的に、米国内の動物園の動物を交換し、近交化を防ぎつつ個体数を増加させて野生に戻す取り組みが一定の成果を挙げていが、動物個体の移送、飼育環境の変化は、動物に大きなストレスを与える原因となる。本研究では、京都大学霊長類研究所において飼育されているワタボウシタマリンにコモンマーモセット(Callithrix jacchus)で開発された非侵襲的受精卵採取をはじめとする発生工学技術を応用することで、他の絶滅危惧種の霊長類の遺伝資源保全が可能かを検討する。
前年度は、プロゲステロンの血中濃度を測定することで、性周期の把握が可能となった。そこで平成27年度は、ワタボウシタマリンを雄雌ペアで飼育を行い、血中プロゲステロン濃度から排卵日を予測し、排卵日予測日から約10日後に非侵襲的受精卵採取を3回行った。その結果、コモンマーモセットの受精卵を採取する際に用いる器具類は、ワタボウシタマリンの受精卵採卵に適応可能であること、前麻酔にメデトミジン、ミダゾラム、ブトルファノールの三種混合麻酔、麻酔維持にセボフルラン吸入麻酔を用いたが、麻酔覚醒に時間がかかるため更なる検討を要することが明かとなった。本方法により、ワタボウシタマリン脱出胚盤胞期の受精卵採卵1個を得る事に成功した。



H27-B59
代:栁川 洋二郎
協:永野 昌志
協:髙江洲 昇
協:菅野 智裕
協:杉本 幸介
マカク属の月経周期における卵巣動態の解明と人工授精技術の開発

学会発表
栁川洋二郎、杉本幸介、菅野智裕、高江州昇、印藤頼子、兼子明久、木下こづえ、今井啓雄、岡本宗裕、片桐成二、永野昌志 凍結前精液の一時保存方法および冷却方法が融解後のマカク属精子の性状に与える影響(2015/10/28-29) Cryopreservation Conference 2015(岡崎).

杉本幸介、栁川洋二郎、菅野智裕、髙江洲昇、兼子明久、印藤頼子、岡本宗裕、片桐成二、永野昌志 ニホンザルにおける電気刺激時の電圧が精子採取に与える影響および精子凍結保存法の改善について(2015/9/7-9) 第158回日本獣医学会学術集会(十和田市).
マカク属の月経周期における卵巣動態の解明と人工授精技術の開発

栁川 洋二郎 , 永野 昌志, 髙江洲 昇, 菅野 智裕, 杉本 幸介

マカク属において凍結精液を用いた人工授精(AI)による妊娠率は低く、特にニホンザルでは産子獲得例がない。そのため、精液の凍結保存法改善とともに、メスの卵胞動態を把握したうえでAIプログラムの開発が必要である。
ニホンザル、オス4頭から精液を採取しTes-Tris Egg-yolk液を基礎としてストロー法とペレット法で凍結した。凍結融解後の精子運動性指数はストロー法では1.1±0.7であったのに対し、ペレット法では10.9±4.6と有意に高かった。また、ペレット法で凍結した精液においては融解3時間後においても高活力精子を確認することができた。蛍光染色により精子性状を評価したところ、融解直後に先体に損傷がある精子の割合がストロー法ではペレット法よりも高かった(52.5±15.0% 対19.4±6.8%)。
一方、経産メス1頭においてのべ2回、月経後7日目および8日目に新鮮精液を用いたAIを実施した。AI時の卵胞直径はそれぞれ6.2mm、7.7mmであり、100μgの性腺刺激ホルモン放出ホルモンを投与することで排卵したが妊娠には至らなかった。AI実施が内因性エストロジェン濃度上昇前であったため、卵子の成熟が不完全であったと考えられた。
さらに色盲の遺伝子を有するカニクイザル、オス4頭より精液を採取、凍結保存しその遺伝資源の保存を行った。



H27-B60
代:郷 康広
霊長類のゲノム・トランスクリプトーム・エピゲノム研究

論文
Suzuki-Hashido N, Hayakawa T, Matsui A, Go Y, Ishimaru Y, Misaka T, Abe K, Hirai H, Satta Y, Imai H.(2015) Rapid expansion of phenylthiocarbamide non-tasters among Japanese macaques. PLOS ONE 10(7):e0132016.

Carelli FN, Hayakawa T, Go Y, Imai H, Warnefors M, Kaessmann H.(2016) The life history of retrocopies illuminates the evolution of new mammalian genes. Genome Research 26(3):301-314.

学会発表
郷 康広,Qian Li、Liu He、大石高生、鵜殿俊史、重信秀治、柿田明美、那波宏之、Philipp Khaitovich ヒト脳と類人猿脳における時空間的比較トランスクリプトーム解析(2015年7月1日) NGS現場の会第4回研究会(つくば国際会議場).

郷 康広,Qian Li、Liu He、大石高生、鵜殿俊史、重信秀治、柿田明美、那波宏之、Philipp Khaitovich ヒト脳と類人猿脳における時空間的比較トランスクリプトーム解析(2015年7月19日) 第31回日本霊長類学会学術大会(京都).

:郷 康広,Qian Li、Liu He、大石高生、鵜殿俊史、重信秀治、柿田明美、那波宏之、Philipp Khaitovich ヒト脳と類人猿脳における時空間的比較トランスクリプトーム解析(2015年8月20日) 第17回日本進化学会大会(東京).

郷康広 ゲノムを通して我が身を知る?ヒトとサルの間にあるもの?(2015年5月22日) 東北大学脳神経科学コアセミナー(招待講演)(仙台(東北大学)).

辰本将司、郷康広、Qian Li、Liu He、大石高生、鵜殿俊史、重信秀治、柿田明美、那波宏之、Philipp Khaitovich ヒト脳と類人猿脳における時空間的比較トランスクリプトーム解析学会名:日本遺伝学会第87回大会(ワークショップ「ゲノムの進化と多様性研究の最前線」:招待講演) 日本遺伝学会第87回大会(ワークショップ「ゲノムの進化と多様性研究の最前線」:招待講演)年月日:2015年9月25日(仙台(東北大学)).

Yasuhiro Go, Qian Li, Shoji Tatsumoto, Philipp Khaitovich Spatiotemporal gene expression trajectory in the human and non-human ape brains(2015年11月19日) Cold Spring Harbor Symposium ~Behavior & Neurogenetics of Nonhuman Primates~(Cold Spring Harbor, NY, USA).

郷康広 ゲノムを通して我が身を知る?ヒトとサルの間にあるもの?(2015年11月24日) 第64回インシリコ・メガバンク研究会(招待講演)(仙台(東北大学)).

郷康広 マーモセットにおける精神・神経疾患関連遺伝子多様性解析(2016年1月27日) 第5回日本マーモセット研究会(ワークショップ「マーモセットゲノム解析の展望」:招待講演)(東京).

郷康広 霊長類における精神・神経疾患関連遺伝子解析と認知ゲノミクスの展望(2016年3月11日) 京都大学霊長類研究所共同利用研究会「霊長類脳科学の新しい展開とゲノム科学との融合」(犬山).
霊長類のゲノム・トランスクリプトーム・エピゲノム研究

郷 康広

平成28年度は693個体のマカクザル、369個体のマーモセットの血液から調整したDNAを用いて、ヒトの精神・神経疾患関連遺伝子(約500遺伝子)と相同遺伝子の全エキソン領域の配列決定を行い、マカクザル・マーモセット集団において、稀な機能喪失型変異(Loss-of-Functional mutation)を保有する個体の同定を行った。その結果、精神・神経疾患との関連が強く示唆される57遺伝子(マカクザル)、10遺伝子(マーモセット)に稀な(5%以下)機能喪失型変異を同定した。また、マカクザル類の発達における脳内発現動態解析を行うために、1日齢から1歳までのマカクザル脳12領野を対象とした発達脳発現解析を行った結果、皮質、線条体、視床、黒質、海馬、小脳が明瞭なクラスターを形成することが分かった。さらに、GAINにより類人猿の脳試料の提供を受け、ヒトと主にチンパンジーにおける脳内発現動態を解析した結果、マカクザルの解析で得られた結果と同様に、大脳と小脳でクラスターを形成することが分かったと同時に、ヒトとチンパンジーの種間でも明瞭なクラスターが形成されることを明らかにした。


H27-B61
代:橘 裕司
協:小林 正規
ニホンザルのアメーバ感染に関する疫学研究
ニホンザルのアメーバ感染に関する疫学研究

橘 裕司 , 小林 正規

近年、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)と形態的には鑑別できない新種のアメーバ(E. nuttalli)がサル類から見つかっている。本研究の目的は、ニホンザルにおける腸管寄生アメーバの感染実態を明らかにすることである。今年度は、岡山県真庭市に生息する野生ニホンザルの糞便27検体について解析した。糞便からDNAを抽出し、赤痢アメーバ、E. dispar、E. nuttalli、E. chattoni、大腸アメーバ(E. coli)、E. moshkovskiiについて、PCR法による検出を試みた。その結果、E. chattoniが25検体(93%)、大腸アメーバが21検体(78%)において陽性であった。また、E. nuttalliも20検体(74%)が陽性であった。赤痢アメーバ、E. dispar、E. moshkovskiiは検出されなかった。これまでの他地域における調査でも、E. chattoni感染は高率に認められ、赤痢アメーバは検出されていない。一方で、E. dispar、E. nuttalli、大腸アメーバの感染の有無については地域差がある。今回初めて、中国地方以西の野生ニホンザルにおいてE. nuttalli感染が確認された。


H27-B62
代:時田 幸之輔
ニホンザル脊髄神経後枝の形態的特徴

学会発表
時田幸之輔 ニホンザル胸・腰神経後枝内側枝の観察(2015年7月19日) 第31回日本霊長類学会大会(京都市).

時田幸之輔 頸神経後枝の比較解剖学(2015年9月26日) コ・メディカル形態機能学会 第14回学術集会(埼玉県毛呂山町).

時田幸之輔 ニホンザル脊髄神経後枝内側枝の観察(2016年3月28日) 第121回日本解剖学会総会・全国学術集会(福島県郡山市).
ニホンザル脊髄神経後枝の形態的特徴

時田 幸之輔

神経後枝の分布領域である背部は本質的に最初に形成された体幹の最も古い部分であるとされており,種や部位による分化の違いが少なく,一様な分節的構成を持つとされている(山田). 今回,ニホンザル液浸標本を対象として,頚・胸・腰神経後枝内側枝の起始,経路,分布を固有背筋との位置関係に注意して詳細に観察を行った.
 ニホンザル頚神経後枝内側枝(C2~C4)は頭半棘筋と頚半棘筋の間を走行し,頭板状筋正中起始部の筋束への筋枝も持っていた. ニホンザル頭板状筋は,ヒト頭板状筋に比べ正中起始が高く,停止部の幅も広い. 脊髄神経後枝内側枝からの枝が, 筋の裏側から,頭板状筋正中起始部の筋束へ分布していた.
 ニホンザル胸・腰神経後枝内側枝の形態は大きく2つに分類できた.①内側皮枝を持つもの(Th1-Th7),②内側皮枝を持たないもの.さらに②については,a:筋構成が胸部の様式であるもの(Th8-Th9),b:胸腰部移行領域(Th10-Th11),c:筋構成が腰部の様式であるもの(Th12以下)の3つに細分化できた.それぞれの走行経路は①:皮枝・筋枝共に横突棘筋群の第1層(半棘筋)と第2層(多裂筋)の間を走行する. ②-a:①と同じく半棘筋と多裂筋の間を走行. ②-b:横突棘筋群の第2層(多裂筋)とさらに深層の回旋筋の間を走行. ②-c:回旋筋の深層を走行.
 佐藤(1973)はヒトの胸部と腰部では後枝内側枝の走行様式が異なるとしている. 布施(2014)は,ヒトにおいて,下位分節の胸神経に,胸神経と腰神経との移行型と言える走行経路をとる神経が存在することを指摘している. ニホンザル及びヒトにおける腰神経後枝内側枝の特異化は, 狭鼻猿類または霊長類に特有な形態ではないかと推察している.
これらの成果は, 第31回日本霊長類学会大会, コ・メディカル形態機能学会 第14回学術集会, 第121回日本解剖学会総会・全国学術集会にて発表した.



H27-B63
代:岩永 譲
協:山木 宏一
協:嵯峨 堅
協:渡部 功一
協:田平 陽子
霊長類におけるオトガイ部の骨格と支配神経の分布様式に関する研究

論文
Iwanaga J, Watanabe K, Saga T, Tabira Y, Hirasaki E, Fisahn C, Tubbs S, Kusukawa J, Yamaki K. (2017) Radiological and microsurgical anatomy for variation of the mandible: comparative study of human and Macaca fascicularis. The Anatomical Record 300(8):1464-1471. 謝辞あり
霊長類におけるオトガイ部の骨格と支配神経の分布様式に関する研究

岩永 譲 , 山木 宏一, 嵯峨 堅, 渡部 功一, 田平 陽子

われわれはヒト下顎骨において、副オトガイ孔の大きさや位置と副オトガイ神経が分布する領域の関連を明らかにした(Iwanaga et al. (2015) Clinical Anatomy.)。2015年度の共同利用研究では、下顎骨の形態がヒトと異なるカニクイザルを3D-CTで観察したところ、5体中3体に両側性に副オトガイ孔が存在した。実体顕微鏡下で剖出を行ったところ、5体中4体に副オトガイ孔を見つけ、そこから分布する神経の走行を追った。ヒトと違いカニクイザルのオトガイ孔や副オトガイ孔から出る神経束のうち、一部は後方に向かう太い枝があることが判明した。ヒトよりもオトガイ部の骨格が突出しているため、後方への神経支配が必要だった結果と考えられた。また、最近の研究で、ヒト下顎骨において通常は存在し得ない下顎骨正中の貫通孔が1つの個体において見つかった(論文投稿中)が、カニクイザルの3D-CT所見では5体全例において存在した。通過する構造物は動脈と考えられるが、今後調査を進めることで、カニクイザルとヒトでの下顎骨の発生過程における血管系の関わり合いを解明する糸口になると考えられる。本研究結果は、英文雑誌に投稿予定である。


H27-B64
代:関谷 伸一
霊長類腓腹神経の比較解剖学的研究
霊長類腓腹神経の比較解剖学的研究

関谷 伸一

京大霊長類研究所所蔵のチンパンジー胎児2頭、2側の下肢を用いて、腓腹神経(NS)の起始と足背分布を手術用実体顕微鏡の下で解剖して調べた。
第1例(PRI 7993、左):NSは脛骨神経の外側面からヒラメ筋の筋枝(SolN)、腓腹筋外側頭の筋枝(LGN)とともに共同幹をなして分岐した。NSは腓腹筋内側頭と外側頭の間を通り、外果上方1㎝程の部位で皮下に現れ、外果後方を回って第5中足骨外側縁まで達した。その先の第10趾縁には浅腓骨神経(NPS)の枝が分布した。
第2例(PRI 8507、右):NSの起始は第1例と同じであった。また足背分布もヒトをはじめ他の動物と同じく第10趾縁に達していた。
チンパンジー胎児のNSの起始が、いずれもSolNとLGNと共同幹をなしていたことは、見方を変えればNSが主幹でSolNとLGNがその枝であるとも言える。このことは著者が主張してきたNSが上肢の尺骨神経に相同であるという説を裏付ける所見である。また第1例の第10趾縁分布皮神経がNSではなくNPSの枝であったことは、チンパンジーにおいてはNSの足背分布が縮小傾向にあることを示し、NSが必ずしも第10趾縁に分布する絶対的な皮神経ではないことを示している。



H27-B65
代:緑川 沙織
比較解剖学に基づく体幹-上肢移行領域の形態学的特徴

学会発表
緑川沙織,時田幸之輔, 小島龍平, 影山幾男, 相澤幸夫, 熊木克治 霊長類における内側上腕皮神経の比較解剖学(2015年7月18?20日) 第31回日本霊長類学会大会(京都大学百周年時計台記念館).

緑川沙織,時田幸之輔, 小島龍平, 影山幾男, 相澤幸夫, 熊木克治 内側上腕皮神経から考えるヒト上肢の形態学的特徴(2015年9月26日) コ・メディカル形態機能学会 第14回学術集会(埼玉医科大学川角キャンパス).

緑川沙織, 時田幸之輔, 小島龍平, 影山幾男, 相澤幸夫, 熊木克治 比較解剖学に基づく体幹-上肢境界領域の神経分布(2015年10月10~12日) 第69回日本人類学会(産業技術総合研究所 臨海副都心センター 別館11階).

緑川沙織, 平崎鋭矢 体幹・上肢境界領域の末梢神経についての比較解剖学的考察(2015年11月21日) 京都大学霊長類研究所共同利用研究会 第3回ヒトを含めた霊長類比較解剖学?四肢の基本構成と特殊化を探る(京都大学霊長類研究所・大会議室).

緑川沙織, 時田幸之輔, 小島龍平, 影山幾男, 相澤幸夫, 熊木克治 内側上腕皮神経の形態的意義(2016年3月28?30日) 第121回日本解剖学会総会全国学術集会(ビッグパレット福島).

緑川沙織,時田幸之輔, 小島龍平, 影山幾男, 相澤幸夫, 熊木克治 体幹 ? 上肢移行領域における末梢神経比較解剖学(2016年10月8?10日) 日本人類学会大会(NSG 学生総合プラザ STEP).

緑川沙織, 時田幸之輔, 小島龍平 ブタ胎仔肩帯筋およびその支配神経の観察(2017年3月28~30日) 日本解剖学会総会全国学術集会(長崎大学坂本キャンパス).

緑川沙織 マクロ神経解析に基づく新世界ザル上肢?体幹移行領域の形態学的特徴(2017年7月15日) 第33回日本霊長類学会大会(コラッセ福島).

緑川沙織, 時田幸之輔, 小島龍平 ブタ胎仔腹鋸筋の支配神経(2017年9月2~3日) コ・メディカル形態機能学会第16回学術集会・総会(名古屋大学 大幸キャンパス).

緑川沙織 腹(前)鋸筋の比較解剖学(2017年12月16日) 京都大学霊長類研究所共同利用研究会 第4回ヒトを含めた霊長類比較解剖学?体幹の基本構成と特殊化を探る?(京都大学霊長類研究所・大会議室).
比較解剖学に基づく体幹-上肢移行領域の形態学的特徴

緑川 沙織

 内側上腕皮神経(Cbm)は,内側神経束の背側より分岐し上腕後面に分布する.Cbmは第2肋間神経外側皮枝(Rcl-2)と吻合する為,これらを体幹と上肢の境界領域と考えている.本研究の目的は,Cbmの形態的意義を比較解剖学的に明らかにすることである.
 昨年度までに狭鼻下目チンパンジー,ニホンザル,カニクイザル,広鼻下目クモザルの調査を終えており,本年度は広鼻下目リスザル,タマリンを追加借用し調査を行った.
 上記の霊長類中,ヒト,チンパンジー,クモザル,リスザルではCbmが観察されたが,その他では観察されず,相当する分布域にはRcl-2,3が分布していた.狭鼻下目と広鼻下目それぞれにCbmの有無が見られたことから,系統差ではないといえる.ヒトCbmがRcl-1と相同(佐藤)とすると,Cbm消失はRcl-2,3への移行と考えられる.腕神経叢はRcl系列の神経が上肢形成に対応し発達を遂げたものと考えられており,RclからCbmへの移行とする方が妥当である.ヒト,チンパンジー,クモザルは腕渡りという移動様式をとり肩関節可動域が広い.また,リスザルなど樹上性の強いものも肩関節可動域が広いとされ,これらの種にCbmが存在していた.よってCbmは,胸壁から上腕へ分布していたRclが,肩関節可動域拡大に伴い腕神経叢として特殊化を遂げたものと考えられた.



H27-B67
代:伊藤 毅
協:木村 亮介
霊長類の種間交雑に関する集団ゲノミクスおよび数理形態解析
霊長類の種間交雑に関する集団ゲノミクスおよび数理形態解析

伊藤 毅 , 木村 亮介

霊長類のような大型野生動物を対象に大規模な交配実験を行うことは不可能なため,交雑によるゲノムと表現型の進化に関する理解は十分に得られていない.本研究は,マカク種間交雑群にゲノムワイドSNP解析を適用することで,交雑進行のプロセスを詳細に推定することを目的とした.外来種タイワンザルと在来種ニホンザルの種間交雑群(和歌山群)に由来する約300個体を対象に当初の予定通りRAD-Seq解析を適用し,マーカーの探索とジェノタイプ判定を行った.平行して,対応する個体の骨格標本を対象に,頭蓋形態のノギス計測とCTを用いたデジタルデータの取得を行った.RAD-Seq解析の結果,9割以上の個体でジェノタイプデータが得られたSNPは3000以上となった.このうち両親種間で分化する約350座位(δ>0.9)を用いて,各個体の交雑指数と種間へテロ接合率を算出した.これら2変数の分布は,和歌山群に雑種第1代,複数代,戻し交雑個体が混在することを示唆した.今後,シーケンスデータを追加してジェノタイプを拡充させると共に,座位特異的な遺伝子型の偏りやゲノムの混合パターンと形態変異との関連について調べていく予定である.


H27-B68
代:廣川 百恵
協:中尾 汐莉
協:新宅 勇太
協:田中 ちぐさ
遺伝子分析を利用したワオキツネザルの父系判定の研究
遺伝子分析を利用したワオキツネザルの父系判定の研究

廣川 百恵 , 中尾 汐莉, 新宅 勇太, 田中 ちぐさ

本年度は、精度の向上と分析法の簡略化を目的として、Lc5,Lc8,69HDZ035,69HDZ091,69HDZ208に加え、Lc7,Lc9,Lc10,69HDZ225,69HDZ232の5マーカーについて新たにテストを行った。
Lc7,Lc9,Lc10については、この3マーカーを混合する2段階のMultiPlexPCRで分析した。しかし、Lc7,Lc10についてこの手法を用いると、結果の安定性に不安が示唆されたため、マーカーごとに解析する方法を採用した。
 69HDZ225,69HDZ232の2つのマーカーについては、今まで使用してきたHDZのマーカーについてシグナルが弱く解析ができなかったマーカーもあり、1度PCR増幅させた産物を解析したデータと、その産物にもう一度KOD-FXの酵素を加えPCR増幅させ解析したデータと比較した。その結果、この2マーカーについては、1回の増幅で十分解析が可能なシグナル強度を得られた。
 5種類のマーカーの結果からソフトウェアGenAlex6.5で計算したところ、一般父権否定確率は0.967だが、以前より安定した解析結果を得られるLc5,Lc6,Lc8を加え再計算したところ0.999となった。この8種類のマーカーを利用すれば、より高い精度でワオキツネザルの父親判定が進められると考えられる。現在はこれらのマーカーを利用し、データの解析を進めている。



H27-B70
代:渡部 功一
協:山木 宏一
協:嵯峨 堅
協:田平 陽子
協:岩永 譲
霊長類の顔面軟部組織の支持組織の研究
霊長類の顔面軟部組織の支持組織の研究

渡部 功一 , 山木 宏一, 嵯峨 堅, 田平 陽子, 岩永 譲

カニクイザル屍体5体の頭部に対して肉眼解剖学的剖出および組織学的な研究を行い、ヒトとの比較を行った。頬部から側頭部において、浅層の筋膜 (ヒトでいうSMAS層)と深層の筋膜(側頭筋膜、咬筋筋膜)の間に数か所強く癒着する部位が観察された。側頭部では頬骨弓の直上、頬部では咬筋筋膜上に3か所程度観察された。これらの部位には全て顔面神経の末梢の枝が存在していた。また、咬筋前方では浅層の結合組織が下顎枝に強く癒着するように深層に向かって走行しており、ヒトではこの部位で通常観察される頬脂肪体はほとんど観察されなかった。これらの事より、ヒトに存在する顔面軟部組織を支持すると考えられているretaining ligamentはサルにおいても存在していると考えられるが、その役割は顔面神経を物理的外力から保護する役割が強いと考えられた。ヒトにおいても顔面神経の枝が中を走行しているretaining ligamentが存在しており、これらのligamentは元来顔面神経を保護するものであったと考察された。また、咬筋前面の癒着部位はヒトではサル程はっきりはしないが類似の構造が存在しており、下顎枝の幅や脂肪組織の量の違いなどによる影響でヒトでは退縮したのではないかと考えられた。


H27-B72
代:大西 暁士
網膜神経細胞のサブタイプ形成を担う分子群の霊長類における発現パターンの解析
網膜神経細胞のサブタイプ形成を担う分子群の霊長類における発現パターンの解析

大西 暁士

ヒトを含む多くの霊長類の多くは赤・緑・青色感受性の錐体視細胞に起因する3色性色覚を持つが、これら錐体視細胞のサブタイプを決定するための分子機構は不明な点が多い。マウス網膜において青・緑錐体視細胞サブタイプ決定を担う転写制御因子Pias3の発現調節に関与する因子として1型レチノアルデヒド脱水素酵素を同定した。同酵素は、Pias3発現に関与するレチノイン酸受容体であるRXRgammaのリガンドであるレチノイン酸を合成する。
マウス網膜における上記遺伝子のLOF解析において錐体視細胞サブタイプに有意な表現型が認められなかった。そこで、機能を相補する分子の探索を行ったところ、マウス網膜においてチトクロームP450のサブタイプが1型レチノアルデヒド脱水素酵素と発現パターンが重なる事が分かった。培養細胞系においてRXRgammaの活性化能を測定したところ、マウス型に比べ霊長類型の酵素が高い活性化能を示した。即ち、霊長類型のチトクロームP450分子はマウス型に比べて錐体視細胞サブタイプの分化に寄与する事が示唆された。



H27-B73
代:宗近 功
マダガスカル産稀少原猿類の遺伝子判定による血統管理法の確立
マダガスカル産稀少原猿類の遺伝子判定による血統管理法の確立

宗近 功

 本年は日本動物園水族館協会種保存拡大会議が熊本で開催され、血統登録に遺伝子データの導入の必要性を説き、了解された。クロキツネザルの残りの個体のサンプルリングは種保存会議の登録担当者に協力してもらえることとなった。しかし。収集期間が短く、間に合ったのが伊豆サボテン公園と甲府市動物園の2施設にとどまり、クロキツネザル7個体(伊豆サボテン公園♂3♀3, 甲府市動物園♀1)、クロシロエリマキキツネザルは3個体(甲府市動物園♂1♀1とその間の子供1)であった。
 マイクロサテライト遺伝子座位の増幅はマルチプレックス法でおこなった。この際、高性能酵素(KODO FX:TOYOBO)を使うとアニーリング温度の異なる4遺伝子座位を同時に同一温度で増幅することが可能であった。これは非常に効率的で、今後はこの手法を用いれば時間と経費の削減ができる。
 国内に飼育されている個体群の遺伝的評価は全個体のマイクロサテライト解析が終了後実施する予定であるが、今回の7個体のクロキツネザルはマイクロサテライト 10 座位を正常に増幅でき、血統登録検討資料として加えた。また、クロシロエリマキキツネザルの3個体の血縁関係は台帳記録と同じ結果を示した。



H27-B74
代:横山 慧
嵐山E群ニホンザルにおける血縁認識について
嵐山E群ニホンザルにおける血縁認識について

横山 慧

霊長類では、母系血縁者間で親和的行動を行うことが多く、コドモの頃の親密さに基づいて血縁者を識別していると考えられているが、父系血縁者を識別するメカニズムについてはよく分かっていない。
本研究は、嵐山ニホンザル餌付け集団のほぼ全個体に当たる110頭ついてDNA解析を試みるとともに0-2歳のメスの行動観察を通じて、親和的行動の多寡と関係している要因を調査し、父系血縁者の識別メカニズムを探ることを目的に行われた。
3歳未満の個体との関係において、非血縁者に比べ母系血縁者、父系姉妹と、また年齢の近い個体との近接率、および遊びの生起確率が有意に高かった。3歳以上の個体との関係において、非血縁者に比べ母親と母系血縁者、父親との近接率、およびグルーミングの生起確率は有意に高かったが、父系姉妹との間には有意な差は認められなかいった。
以上のことから、父系血縁者の識別メカニズムについても母系血縁者と同様、コドモの頃の親和的な関係が効いていると示唆された。しかし嵐山集団においては雌雄間の特異的近接関係が知られているため、コドモの頃に母親を介して父子が、父親を介して父系キョウダイ同士が親密になることによって、一部の父系血縁者を識別しているかもしれない。



H27-B75
代:桑田 岳夫
協:俣野 哲朗
協:三浦 智行
サルエイズモデルにおける中和抗体の誘導過程の解明
サルエイズモデルにおける中和抗体の誘導過程の解明

桑田 岳夫 , 俣野 哲朗, 三浦 智行

 近年、サブタイプを超えた多くのHIV-1株に有効な中和抗体として、BNAb(broadly-reactive neutralizing antibody)がHIV-1感染患者から分離されてきたが、その誘導メカニズムはよく分かっていない。本研究では新たにSIVsmH635FC株を接種したアカゲザル6頭から定期的に血液、リンパ節を採取し、中和抗体上昇を確認した感染約1年後に殺処分して、中和抗体の誘導過程を解析するための試料を採取した。
 得られた試料から抗体ライブラリを作成し、ファージ・ディスプレイ法によりSIV Env特異的抗体を選別し、SIV感染12週のサルMM617より1種類、MM618から4種類の中和抗体を得た。遺伝子解析の結果、これらの中和抗体は、以前に分離した中和抗体B404とは異なる系統であることが示された。一方、SIV感染サルで誘導されている抗体全体を解析するため、抗体の重鎖遺伝子の次世代シーケンサーによる予備的な解析を行った。今後、経時的な試料を用いて中和抗体の分離と遺伝子解析を進め、HIV-1感染では解析できていない、感染初期の中和抗体の成熟過程をあきらかにしていきたい。



H27-B76
代:栗田 博之
ニホンザル群における食物摂取と栄養状態および繁殖成績の関係について:幸島群と高崎山群の比較
ニホンザル群における食物摂取と栄養状態および繁殖成績の関係について:幸島群と高崎山群の比較

栗田 博之

これまで報告者は、ニホンザル餌付け個体群である宮崎県串間市の幸島個体群と大分県大分市の高崎山個体群との間で、食物摂取・栄養状態・繁殖成績の関係の比較を行ってきた。これまでにわかったことは、高崎山群では幸島群に比べ、給餌量が多いために体重が重く、出産可能齢が長く、ほぼすべての年齢で出産率が高いこと等である。2015年度については、体重・体長データの追加収集を行うとともに、幸島群における食物摂取に着目した調査を行った。
幸島主群では、原則として週に3日、京都大学野生動物研究センター幸島観察所職員によって砂浜でコムギが投与されているが、それを食べる際、舌で舐め取る行動と指で摘み上げて口に運ぶ行動とを同一個体が織り交ぜることがわかっている(高崎山個体群では、塊状にコムギが落ちている場合を除くほとんどの場合において、指で摘み上げて口に運ぶ方法でコムギを食べる)。そして、コムギ投与開始直後は、相対的に舌で舐め取る行動の生起頻度が高いが、時間経過とともに指で摘み上げて口に運ぶ行動の生起頻度が高くなっていくことがわかった。また、コムギの分布条件を人為的に操作した実験により、コムギが落ちている砂浜の表面の形状やコムギの分布密度によって、2つの行動の生起頻度が異なることがわかった。今後は、採餌行動の種類と採餌速度について2個体群間で比較し、栄養状態の群内順位格差との関係等を明らかにしたい。



H27-B79
代:宮沢 孝幸
協:吉川 禄助
協:下出 紗弓
協:宮穗 里江
協:坂口 翔一
ニホンザルフォーミウイルスとニホンザルとの共進化の可能性
ニホンザルフォーミウイルスとニホンザルとの共進化の可能性

宮沢 孝幸 , 吉川 禄助, 下出 紗弓, 宮穗 里江, 坂口 翔一

 ヒト以外の霊長類は独自のフォーミーウイルス(Foamy Virus:FV)を保有しており、宿主とFVは共進化してきた(Science (2009) 325: 1512)。ニホンザルは我が国で独自に進化してきたマカク属のサルであり、広範な地域に生息し、地域ごとに特色のある集団を形成している。我々はミトコンドリアよりも変位速度が速いFVに着目し、ニホンザルの集団形成過程の解明を試みている。これまでに、京都府嵐山由来のニホンザルならびに鳥取県若桜由来のニホンザルよりFVを分離し、若桜由来のFVの全長配列を決定し系統樹解析した。さらに鹿児島県屋久島に棲息するニホンザル(ヤクシマザル)4頭からFVを分離し、部分遺伝子配列を決定している。本年度は、ヤクザル由来のFVと霊長類研究所が保有しているタイワンザルからFVを分離し、塩基配列を決定し、解析を行った。その結果、ヤクシマザルのFVは本土のニホンザルのFVとは大きく遺伝子配列が異なり、すべてのFV遺伝子領域で、ニホンザルよりもむしろタイワンザルに近かった。この結果は「ヤクシマザルを含めたすべてのニホンザルの起源は朝鮮半島経由で日本に侵入した」というこれまでの通説と異なるものであった。今後は、タイワンザルならびにホンドザル由来のFVの解析数を増やすとともに、常染色体遺伝子のイントロン配列を用いた解析を行う予定である。


H27-B80
代:六波羅 聡
協:鈴木 義久
遺伝子解析による三重県内のニホンザルの個体群調査
遺伝子解析による三重県内のニホンザルの個体群調査

六波羅 聡 , 鈴木 義久

三重県内のニホンザルは地理的に連続分布しているが、昨年度までにメスと若いオス(群れ出自個体)103個体のミトコンドリアDNA (mtDNA)のD-loop第1可変域の塩基配列の分析により、亀山市周辺を境にした大きく南北2系統の分類と滋賀県で確認されている1系統が確認されていた。また、オス106個体のY-STR検査については、15タイプに分類され同じタイプが県内各地に広域に分布していることが確認されていた。
現存する群れの遺伝的構造をより詳細に把握するため、ミトコンドリアDNA (mtDNA)で大きく分かれた2系統(南北)から各32個体を選び、常染色体のマイクロサテライトDNA変異について16マーカーを用いて分析した。
結果、1世代あたりの移住個体数(Nm)やAMOVAによる分析、Hardy-Weinber testにより、ミトコンドリアDNA (mtDNA)では大きく2系統に分かれた南北間においても、核DNAの交流は頻繁に行われていることが確認された。
今後、ミトコンドリアDNA (mtDNA)のD-loop第1可変域の塩基配列の分析結果・Y-STR検査・常染色体マイクロサテライトDNA変異分析の結果を詳細に検討することにより、三重県内の群れの状況をさらに細かく明らかにしていき、国の法律改正に伴う特定鳥獣保護管理計画の改訂に際し、遺伝的な観点を保護管理計画に反映できるよう、管理単位となる個体群についても検討する予定である。



H27-B82
代:加賀谷 美幸
霊長類の生体と固定標本を用いた前肢帯骨格の可動域の種間比較

学会発表
加賀谷美幸、青山裕彦、濱田穣 肩甲骨・鎖骨の立体配置と上腕の可動域:旧世界ザルと新世界ザルの4種比較(2015年7月) 第31回日本霊長類学会大会(京都大学百周年時計台記念館).

加賀谷美幸 前肢帯の立体配置と可動域:生体計測とCT骨格モデルによる霊長類4種の比較(2015年11月21日) 京都大学霊長類研究所共同利用研究会 第3回ヒトを含めた霊長類比較解剖学-四肢の基本構成と特殊化を探る-(京都大学霊長類研究所).
霊長類の生体と固定標本を用いた前肢帯骨格の可動域の種間比較

加賀谷 美幸

ポジショナルビヘイビアの異なる霊長類の種間で、前肢帯の立体配置がどのように異なり、この位置変化と前肢の運動がいかに連動しているか明らかにするため、昨年度にひきつづき、接触型三次元デジタイザとCT撮影を併用した計測を行った。獣医師の協力のもと、ニホンザル、ヒヒ、オマキザルの生体を対象として、麻酔下に前肢の肢位を変えて前肢や前肢帯骨格の位置を示す座標を取得し、CTデータから抽出した骨格形状を重ね合わせ、骨格の位置関係を復元した。また、大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)により導入されたテナガザル冷凍標本1個体(左側の開胸部を縫合し、右側で計測)と、マカク個体のThiel法固定標本の計測を行った。胸郭背腹軸に対する肩甲骨位置の指標として、肩甲棘内側端-関節窩中心ラインのなす角を比べると、腕の挙上に従い角度が増し肩甲骨が背側に移動する傾向はどの種も共通していたが、ヒヒでは33度までの値、クモザルやテナガザルはこれより大きくおよそ90度までの値、ニホンザルやオマキザルは両者の中間で推移することが分かり、樹上性が強い種ほど肩甲骨の背側化傾向が強いことが明らかとなった。



H27-B83
代:三浦 智行
複合ワクチネーションによるSIVの感染防御効果の解析

論文
Kakizoe, Y., Nakaoka, S., Catherine A. A. Beauchemin, C. A. A., Morita, S., Mori, H., Igarashi, T., Aihara, K., Miura, T., and Iwami, S.(2015) A method to determine the duration of the eclipse phase for in vitro infection with a highly pathogenic SHIV strain. Sci. Rep. 5:10371.

Kakizoe, Y., Morita, S., Nakaoka, S., Takeuchi, Y., Sato, K., Miura, T., Beauchemin, C. A., Iwami, S.(2015) A conservation law for virus infection kinetics in vitro. J. Theor. Biol. 376:39-47.

学会発表
三浦智行 霊長類モデルを用いたHIV感染症の予防・治療法開発(2015年5月28-30日) 第62回日本実験動物学会シンポジウム2「感染症の予防と治療に貢献する動物実験」(京都).

Ishida, Y., Yoneda, M., Otsuki, H., Hishiki, T., Igarashi, T., Miura, T. Generation of CCR5 tropic and neutralization–resistant SHIV(2015年11月22-24日) 第63回日本ウイルス学会学術集会(福岡).

Watanabe, Y., Iwami, S., Matsuura, K., Mori, H., Hishiki, T., Miura, T., Akari, H., Igarashi, T. 高病原性SHIV感染サルにおいてウイルス感染CD163陽性マクロファージは様々な半減期を持つ集団から構成され、最も半減期の長い集団はART下のリザーバーとなり得る(2015年11月22-24日) 第63回日本ウイルス学会学術集会(福岡).

渡部祐司、岩見真吾、松浦嘉奈子、森ひろみ、日紫喜隆行、三浦智行、明里宏文、五十嵐樹彦 CD163陽性細胞は高病原性SHIV感染サルの治療下におけるウイルスRNA陽性細胞である(2015年11月30-12月1日) 第29回日本エイズ学会学術集会(東京).
複合ワクチネーションによるSIVの感染防御効果の解析

三浦 智行

京都大学霊長類研究所のアカゲザル11頭の血液を提供して頂き、当研究室のP3実験室内で比重遠心法により単核細胞を分離した。そこから適切な培養方法を用いることにより、リンパ球やマクロファージの培養系にもってゆき、ワクチン評価のための攻撃接種用ウイルスSIV及びSHIVを感染させた。感染後、培養上清中のウイルスRNA量、逆転写酵素活性、感染力価や感染細胞中のウイルス抗原、アポトーシスマーカーあるいは細胞の生存率等を調べることにより、それぞれのアカゲザルにおけるウイルスの感染性、増殖能、細胞障害活性などの性状を明らかにした。また、それぞれの血液からメッセンジャーRNAを抽出し、逆転写酵素反応によりcDNAを調整した。このcDNA試料を用いてMHC遺伝子のバックグラウンドを調べることによって、これまでに報告されているウイルス抵抗性のMHC遺伝子を保有しているかどうかを個々のアカゲザルについて明らかにした。このようにして得られた基礎情報をもとに、ウイルス研究所のサル感染実験施設でエイズワクチン評価のためのウイルス感染実験を行うために6頭のアカゲザルを11頭の中から選定した。また、当研究施設で既に先行して行っている感染実験サルからのウイルスの再分離や、そのin vitroでの性状解析も提供して頂いた血液を用いて行った。


H27-B84
代:和田 直己
協:松尾 大貴
哺乳類の寛骨と脊柱(椎骨)の形態と移動運動
哺乳類の寛骨と脊柱(椎骨)の形態と移動運動

和田 直己 , 松尾 大貴

1、


H27-B85
代:小島 大輔
協:鳥居 雅樹
霊長類の光感覚システムに関わるタンパク質の解析
霊長類の光感覚システムに関わるタンパク質の解析

小島 大輔 , 鳥居 雅樹

脊椎動物において、視物質とは似て非なる光受容蛋白質(非視覚型オプシン)が数多く同定されている。私共は、マウスやヒトの非視覚型オプシンOPN5がUV感受性の光受容蛋白質であることを見出し(Kojima et al., 2011)、従来UV光受容能がないとされていた霊長類にも、UV感受性の光シグナル経路が存在するという仮説を提唱した。そこで本研究では、OPN5を介した光受容が霊長類においてどのような生理的役割を担うのかを推定するため、霊長類におけるOPN5の発現パターンや分子機能を解析している。これまでのニホンザル組織試料を用いた解析から、ニホンザルOPN5遺伝子には哺乳類以外のOPN5遺伝子には見られないエクソンが存在することが明らかになっている。そこで本年度はニホンザル・アカゲザル・マーモセット由来の各組織において、このエクソンを含む新奇転写産物を定量し、これまで同定されていた通常型OPN5転写産物と比較した。その結果、これらの転写産物の量比が組織によって異なることを見出した。この新たなOPN5転写産物の機能や存在意義に着目して今後も研究を進めたい。


H27-B86
代:大石 元治
協:荻原 直道
協:小薮 大輔
オランウータンにおける胸郭の形態学的研究

論文
Bastir M, Garcia-Martinez D, Williams SA, Recheis W, Torres-Sanchez I, Rioe FG, Oishi M, Ogihara N(2017) 3D geometric morphometrics of thorax variation in Hominoidea Journal of Human Evolution 113:10-23. 謝辞あり

学会発表
大石元治 相対重量値からみた大型類人猿の肩関節周囲の筋(2016年10月) 第70回日本人類学会大会(新潟県).
オランウータンにおける胸郭の形態学的研究

大石 元治 , 荻原 直道, 小薮 大輔

類人猿の胸郭は横に広がった形状をもち、肩甲骨が胸郭の背側面において側方から上方に回転することができる。この運動は類人猿に認められる懸垂運動と密接に関係しているが、類人猿間で特徴的な懸垂運動の種類や出現頻度に大きな違いが認められ、胸郭の形状にも影響を与えると考えられる。懸垂運動はヒトと大型類人猿の共通祖先のロコモーションを考察する上でも重要であり、懸垂運動への適応的形質を明らかにすることは人類進化を理解するために有用な情報となる。しかし、大型類人猿における胸郭の形状に関する種間差についてはほとんど報告されていない。そこで、本研究では大型類人猿のなかでも懸垂運動を多用することで知られているオランウータン(1個体)の胸郭のCT撮影を行い、三次元再構築を行うことで、胸郭の形状を観察した。Schultz(1950)の報告にあるチンパンジーとテナガザルの胸郭と比較すると、オランウータンはテナガザルと類似しているように思われた。すなわち、オランウータンの胸郭の頭側部がチンパンジーに比べて幅が広い傾向が認められた。今後は標本数を増やすとともに、他の大型類人猿との定量的な比較が必要である。


H27-B87
代:Zhang Peng
協:Chengfeng Wu
協:Yuanmengran Chu
DNA analysis of wild rhesus macaques in Southern China

論文
Peng ZHANG, Mu-yang LYV, Cheng-feng WU, Yuan-meng-ran CHU, Ning HAN, Danhe YANG,Kaijin HU(2016) Variation in body mass and morphological traits in Macaca mulatta brevicaudus from Hainan, China. American Journal of Primatology 10.1002/ajp.22534 In Press.. 謝辞あり

ZHANG Peng, WU Chengfeng; CHU Yuanmengran(2016) Do Non-human Primates Avoid Inbreeding? Acta Anthropologica Sinica In press 1000-3193(2015)00-0000-13. 謝辞あり
DNA analysis of wild rhesus macaques in Southern China

Zhang Peng , Chengfeng Wu , Yuanmengran Chu

I and my student Miss Xiaochan Yan cooperated with Dr. Imai Hiroo, Primate Research Institute of Kyoto University. Based on amplifying, sequencing and other molecular techniques, we successfully selected a set of microsatellite loci for the study group, and we found it was high homology among Rhesus macaque in Neilingding Island. As a result, we successfully selected 4 high polymorphism microsatellite locus of 10 candidate locus to establishing kinship network and compared to affiliative behavior network. We found it was significant correlation between kinship network and affiliative behavior network, which supported to kin selection theory. The result also suggests that with amplification several times, fecal sample is a suitable DNA source for wildlife genetic research. In 22 Nov, 2015, we invited Prof. Matsuzawa Tetsuro to visit my lab in Sun Yat-sen university, China, he gave an impressive lecture to students. From March 3-6, I attended the 5th International Symposium at Primatology and Wildlife Science in Inuyama. I thanks Dr. Imai and his colleagues at PRI for their great advice and helps, and hope to have more chances for such cooperation.


Figure 1. Measuring macaque's body mass. The digital display was recorded while the monkey was standing or sitting on the scale for more than 3 seconds (units:kg)


H27-B88
代:松原 幹
屋久島における動物の果実食と種子の二次散布の関係
屋久島における動物の果実食と種子の二次散布の関係

松原 幹

ヤクシカやげっ歯類などが、ニホンザルが糞散布した種子の生存率におよぼす影響を調べるため、2015年10~12月に、屋久島西部地域のニホンザルの糞中種子に集まる生物を、自動撮影カメラで調べた。新鮮なサル糞を採集し、糞から直径3mm以上の種子を取り除いた後、着色した種子(カラスザンショウ、ハゼノキ、モッコク、シラタマカズラ)を各糞につき1種ずつ、100個を混ぜた。鉄製の覆い(シカ除けカゴ、小動物除けカゴ、センチコガネ類除けカゴ)を被せたサル糞や、カゴなしのサル糞、果皮を除き着色した種子、無着色種子を、林内の実験区に設置し、3日後、1週間後、1ヶ月後に実験区内に残った種子数を比較した。自動撮影カメラは1ヶ月間設置した。糞設置から24時間以内に、ヤクシカが訪れてサル糞を食べる行動が、カメラトラップ場所の90%以上で確認された。植物種による違いは確認されなかった。サル糞に混ぜ込まなかった種子の半数以上は、1ヶ月後、実験区域内で再発見された。このことから、この地域のサルによって糞散布される種子は、サル糞というシカ誘引物質の付着により、シカ被食率が増加すると推測された。


H27-B89
代:井口 基
協:小林 和宏
協:小林 綾
東京都、埼玉県、山梨県のニホンザル地域個体群の遺伝的解析
東京都、埼玉県、山梨県のニホンザル地域個体群の遺伝的解析

井口 基 , 小林 和宏, 小林 綾

 平成27年度の研究では、新たに共同利用研究に参加した小林らが糞試料の分析方法を習得し、井口が調査地で採取した糞試料とともに東京都、埼玉県、山梨県に生息するニホンザルがもつミトコンドリアDNA(mtDNA)のタイピングを進めた。小林らが採取した秩父市の糞試料では、非コード領域のほぼ全域の配列が解読でき、既知のmtDNAハプロタイプと照合できた。この結果、以前に同所で井口が発見していたタイプと同じであることが判定でき、方法の再現性が確認できた。この技術習得により今後さらに調査が広げられる目処がたった。一方、井口が採取した糞試料82検体についてもmtDNAのタイピングを行い、74検体のタイプが決定できた。従来のデータと比較した結果、これらの中には調査地域外から移入したと考えられる個体が含まれていた。また、井口が確認していたオスグループの構成個体の出自について、mtDNAハプロタイプの母系特異性を地図にプロットし、オスグループのメンバーのもつタイプと比較する作業を開始した。東京都、埼玉県、山梨県のサルに関し、母系で推定する出自来歴の検討が可能になりつつある。


H27-B90
代:前多 敬一郎
協:束村 博子
協:大蔵 聡
協:上野山 賀久
協:渡辺 雄貴
協:末富 祐太
野生ニホンザルの個体数抑制技術の開発
野生ニホンザルの個体数抑制技術の開発

前多 敬一郎 , 束村 博子, 大蔵 聡, 上野山 賀久, 渡辺 雄貴, 末富 祐太

本研究は、平成25年に採択された農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業シーズ創出ステージ「新規な繁殖中枢制御剤開発による家畜繁殖技術と野生害獣個体抑制技術の革新」の一環として、Neurokinin B受容体 (NK3R) 拮抗剤を用いた新たな野生ニホンザルの個体数抑制技術の開発の基盤となる知見を得ることを目的とした。ニホンザル雄3頭を用いて、繁殖 (交尾) 期にNK3R拮抗剤 (SB223412) をバナナに充填し、20 あるいは40 mg/kgになるように単回あるいは複数回経口投与した。薬剤投与直前に1回、薬剤投与の3、6、12、24、36、48および60時間後に上腕静脈から採血を行い、LC-MSにより血中SB223412濃度を、酵素免疫測定法により血中テストステロン濃度を測定した。その結果、複数回投与により、血中SB223412濃度を実験期間中、高い値で維持することに成功し、これらの個体の血中テストステロン濃度は、プラセボ投与対照群に比較して、有意に低い値となった。このことからNK3受容体拮抗剤の経口投与は、雄ニホンザルにおいて性腺機能抑制効果を持つことが示唆された。


H27-B91
代:伊吹 謙太郎
協:藤田 悠平
サル免疫細胞を体内に持つマウス作製の試み
サル免疫細胞を体内に持つマウス作製の試み

伊吹 謙太郎 , 藤田 悠平

昨年度に引き続き、サル胎盤由来造血幹細胞(幹細胞)のサル化マウス作製への有用性検討のため、アカゲザル、ニホンザルの胎盤組織に含まれる細胞群についてフローサイトメトリーにより解析し、幹細胞を含む胎盤細胞のNOGマウスへの移植によりサル化マウス作製を試みた。我々は胎盤内にCD34、HLA-DR発現陽性でCD45、CD3、CD14発現陰性、かつ細胞密度の小さな多能性幹細胞を示唆する細胞群が3.6±0.6%存在していること見出しており、本年度も分与された胎盤からこの細胞群を分取した。また、昨年度は幹細胞を移植したNOGマウスが移植後1週を経ずに死亡し、この原因が採取、輸送および分離時の細菌等増殖による胎盤汚染と考え、輸送方法の変更および抗生物質含有培地での洗浄回数増加等分離方法の改良を行った。本年度はアカゲザル4頭、ニホンザル2頭の計6頭の胎盤を分与いただき、そのうちのアカゲザル2頭、ニホンザル1頭分の胎盤においてサル多能性幹細胞の分離を行った。NOGマウス3頭に胎盤より分離した幹細胞と考えられる細胞群を移植したが、観察期間を通してマウス末梢血中にサル免疫細胞は認められず、胎盤の多能性幹細胞がマウスに生着しサル免疫細胞として分化できるのかは明らかにできなかった。


H27-B92
代:東原 和成
協:松井 淳
霊長類の嗅覚・フェロモン受容体の多様性と進化

論文
Sato-Akuhara, N. Horio, N. Kato-Namba, A. Yoshikawa,K. Niimura, Y. Ihara, S. Shirasu, M.* and Touhara, K.(2016) Ligand specificity and evolution of mammalian musk odor receptors: the effect of single receptor deletion on odor detection The Journal of Neuroscience (in press). 謝辞あり

学会発表
佐藤 成見、白須 未香、伊原 さよ子、東原 和成 嗅覚受容体におけるムスクの香りの認識機構(2015年3月28日) 農芸化学会(岡山).

佐藤 成見、白須 未香、加藤 綾、吉川 敬一、新村 芳人、伊原 さよ子、東原 和成 Structure-activity relationship and evolution of musk odor receptors in mammals(2015年4月25日) Association for Chemoreception Sciences (AChemS) 37th Annual Meeting(Florida).

白須未香、佐藤成見、東原和成 ムスク(じゃ香)の香り~マウスから霊長類まで保存されたその認識メカニズム~(2015年8月20日) 日本進化学会第17回大会(東京).

Mika Shirasu, Kazushige Touhara Specific olfactory receptors mediate musk odor perception(2015年9月3日) International Conference of European Chemoreception Research Organization (ECRO)(Turkey).

佐藤 成見、白須 未香、新村 芳人、伊原 さよ子、東原 和成 ムスク香を感知する嗅覚受容体の匂い応答性と進化(2015年9月25日) 日本味と匂学会第49回大会(岐阜).
霊長類の嗅覚・フェロモン受容体の多様性と進化

東原 和成 , 松井 淳

日常生活において、香りは生活の質を高める重要な要素のひとつとなっている。そして、多々ある香りの成分の中でも、ムスク系香料は、香粧品に広く用いられる魅惑的な香気をもち、動物種を越えてフェロモン様の生理作用をもつという興味深い性質がある。さらに、これまでに数多く合成されてきたムスク系香料は、構造が全く異なるにも関わらず同じ質の匂いを呈することが知られており、これは香料業界における長年の謎とされてきた。
しかし、ムスク系香料がどのような嗅覚受容体レパートリーで認識されるのかは全く解明されていなかった。今回我々は、マウスとヒトを含む5種の霊長類のムスコン(天然ムスク香料の代表的なもの)に対する受容体同定に成功し、これらの受容体の匂い応答特異性を解析することで、ムスク系香料の受容体レベルでの感知メカニズムを明らかにした。さらに、ムスクの香りを感知する際には、キーとなるただ一つの嗅覚受容体の働きが重要であることを明らかにした。本研究の成果は、ムスクの香りの感知メカニズムを解明すると共に、ムスコン受容体の匂い応答特性を評価系とする新たなムスク香料開発に繋がると期待される。



H27-B93
代:一柳 健司
霊長類におけるエピゲノム進化の解明
霊長類におけるエピゲノム進化の解明

一柳 健司

我々は霊長類におけるゲノム進化とエピゲノム進化の関係を解明するため、霊長類各種の組織におけるDNAメチル化の比較解析を行ってきた(Fukuda et al. 2013, J. Human Genet.58:446-454)。GAINより提供いただいたニホンザル精子サンプルについて、全ゲノムレベルでDNAメチル化状態を決定し、既に公表されているヒトとチンパンジーのデータを含め、精子メチル化状態の3種比較を行った。興味深いことに、大きな低メチル化領域(数十kb以上)がヒト特異的に多数出現していることが分かった。さらに、これらの低メチル化領域はヒト特異的なコピー数多型や染色体再編成の領域に頻出していた。すなわち、精子でのDNAメチル化レベルの変化がゲノム安定性の変化医に寄与していると考えられる(論文投稿中)。
また、GAINよりテナガザル精巣サンプルを頂き、RNAを抽出した。過年度に霊長研から提供いただいたチンパンジー精巣や別に入手したヒト精巣サンプルと合わせて、精巣内小分子RNA(主にpiRNA)の種間比較解析を進めている(未発表)。



H27-C1
代:岩槻 健
分担:高橋 信之
分担:佐藤 幸治
協:粟飯原 永太郎
霊長類由来ex vivo培養系を用いた消化管細胞機能の解析

学会発表
岩槻健 「三次元幹細胞培養系を用いた味蕾および消化管の機能解析(2015.10.26) 日本味と匂学会第49回年会(岐阜).

岩槻健 消化管上皮幹細胞および味蕾幹細胞の三次元培養(2015.12.5) Hindgut Club Japan 2015(東京).

岩槻健 オルガノイド培養系を用いた味蕾および消化管の機能解析(2016.3.30) 日本農芸化学会2016年度大会シンポジウム(札幌).
霊長類由来ex vivo培養系を用いた消化管細胞機能の解析

岩槻 健 , 粟飯原 永太郎

本研究の目的は、これまでに報告例がないサルの腸管からオルガノイドを作製し、消化管上皮細胞の機能解析のツールとして使用する事である。
当該年度では、霊長類研究所にてアカゲザルより腸管(十二指腸、回腸、盲腸、大腸)を採取し、オルガノイドの作製を試みた。安楽死後、腸管を取り出し内容物を数回PBSにて洗浄後、抗生物質入りのPBSにて洗浄。腸管上皮細胞取得の際は、筋層が厚いため上皮の部分のみ眼下ハサミで切り出し、EDTAによりクリプトと絨毛部分を分離した後、メッシュに通しクリプトのみを分画した。大腸だけは、上皮が剥がれずオルガノイド作製を断念した。次に分画されたクリプトをマトリゲルに分散させた後、Wntアゴニストを含む培地にて培養したところ、球体状に成長する細胞群を得た。これら球体状の細胞群を免疫染色した結果、セロトニン陽性細胞を確認する事ができ、オルガノイド培養が成功したと確認した。今後は、得られたサルオルガノイドを用いて、腸管機能を解析する予定である。



H27-C2
代:松本 晶子
分担:高橋 建造
協:内海 大介
ヒトを含む霊長類における創傷治癒機序の進化
ヒトを含む霊長類における創傷治癒機序の進化

松本 晶子 , 内海 大介

 本研究の目的は、皮膚の厚さが霊長類の創傷治癒速度を決定する要因であるかどうかを調べるものである。共同利用及びGAINの協力により、2015年11月に、大型類人猿3種(チンパンジー、ゴリラ、オランウータン)の皮膚組織試料の提供を受けた。試料はホルマリン液とRNAlater保存溶液を用い保存した。試料は、琉球大学医学部皮膚科学教室で切り出し、皮膚の厚さ(表皮と真皮を合わせた厚さ)を測定した。
 結果、ゴリラ、チンパンジー、オランウータンの順に皮膚が厚いことが明らかとなった(図1)。本年度は試料数が各1個であったため、皮膚の厚さの種差を検討するには至らなかった。今後も継続して試料の収集し、創傷治癒に及ぼす皮膚の厚さの影響を検討していく。



H27-C3
代:松尾 光一
分担:山海 直
分担:Suchinda Malaivijitnond
協:森川 誠
マカクにおける繁殖季節性と運動のおよぼす骨格加齢への影響

学会発表
森川誠、Porrawee Pomchote, 山海直、濱田穣、松尾光一 霊長類(Macaca fuscata)の耳小骨と長管骨の骨密度は季節性の変動を示す(2015年7月23-25日) 第33回日本骨代謝学会学術集会(東京).

Morikawa Makoto, Pomchote Porrawee, Sankai Tadashi, Hamada Yuzuru, Matsuo Koichi Seasonality in Bone Mineralization of Auditory Ossicles and Long Bones in the Primate Macaca fuscata(October 9-12, 2015) Annual Meeting of the American Society for Bone and Mineral Research(Seattle, Washington, USA).
マカクにおける繁殖季節性と運動のおよぼす骨格加齢への影響

松尾 光一 , 森川 誠

季節繁殖性をもつ霊長類(ニホンザル)において、骨密度が季節に応じて変化するという仮説を検証した。鼓膜から蝸牛へ音を伝える「耳小骨」と、体重を支え運動を担う長管骨である「大腿骨」の2種類のさらし骨を解析対象とし、平成26年度からのサンプルに加えて新たな骨を解析し、これまでの解析個体総数をオス75個体、メス71個体とした。これらの個体から得た骨の骨量や骨密度を、マイクロCTを用いて定量した。ツチ骨とキヌタ骨はそれぞれ全体を10 µm/pixelの解像度で、大腿骨は遠位端を120 µm/pixelの解像度で撮影した。性別や死亡時の年齢、日付を基に解析を行ったところ、オスでは季節によって骨密度に変化が見られた。そこで、オスの生体ニホンザル14頭を用いて、橈骨遠位端の骨密度を年2回、繁殖期と非繁殖期にpQCTを用いて定量し、このうち、13頭の血中テストステロン濃度を測定した。その結果、骨密度の変化量が季節によって増減する時期が見出され、血中テストステロン濃度も骨密度変化と類似したパターンを示した。さらに、血中25-(OH)ビタミンD3濃度変化との関係も解析した。これらのデータは骨が、いわば加齢と若返りを毎年繰り返していることを示唆する。



H27-C4
代:伊沢 紘生
分担:杉浦 秀樹
協:藤田 志歩
協:宇野 壮春
協:川添 達朗
協:関 健太郎
協:三木 清雅
金華山島のさる・個体数の変動と6群間の生態社会学的比較

論文
藤田志歩(2015) 防鹿柵の有刺鉄線に引っかかったアカンボウ 宮城県のニホンザル(28):36-39.

藤田志歩(2015) A群の特徴と今後の展望 宮城県のニホンザル(29):3-14.

藤田志歩、座馬耕一郎、竹ノ下祐二、和田一雄、市来よし子(2015) 大隅半島に生息する野生ニホンザルの群れサイズ : 屋久 島との比較 南太平洋海域調査研究報告(56):33-35.

杉浦秀樹(2015) 金華山島のニホンザルの特徴 宮城県のニホンザル 28:2-9.

川添達朗(2015) C2群の特徴と今後の研究の展望 宮城県のニホンザル 29:15?24.

三木清雅(2015) 他の5群には見られないC1群の特徴 宮城県のニホンザル(28):21-25.

学会発表
杉浦秀樹 屋久島の低地一次林と二次林におけるニホンザルの密度の比較(2015年7月20日) 第31回日本霊長類学会大会(京都).

金華山島のさる・個体数の変動と6群間の生態社会学的比較

伊沢 紘生 , 藤田 志歩, 宇野 壮春, 川添 達朗, 関 健太郎, 三木 清雅

申請時の本研究の目的は6つである。①個体数の一斉調査は申請通り2回、秋と冬に実施した。結果は秋が277頭、冬が281頭だった。冬の方がわずかに多いのは、秋の調査時には華やかな交尾期を反映して、群間をうろつき回る群れ外オスのカウントが完璧でなかったことにもよる。②群れごとのアカンボウの出産数と死亡(消失)数は、春の調査を上記2回の一斉調査に加えて実施し、出生数は6群で計8頭、死亡(消失)数は1頭のみだった。③家系図と④食物リスト作成は、群れごとの担当者が随時実施し、現在まで確実に継続されている。⑤6群間の比較生態・社会学的調査は、修士の学生によるオニグルミ割り採食行動の性・年齢別比較研究をサポートした。⑥サル学を志す若手への可能な研究テーマの整理は、宮城のサル調査会の機関紙『宮城県のニホンザル』第29号を刊行し、昨年度の第28号と併せ、群れごとに整理した。
 以上述べた、申請時の研究目的を着実にクリアしていく過程で、金華山ニホンザル個体群で大きな変化が起こった。南部に生息する群れ(D群)が分裂したのである。D群は、戦後1群であったものが1964年前後に分裂して誕生して以来、半世紀を超えて群れのまとまりを維持し続け、遊動域もほとんど変えることがなかった。しかも、分裂した小さい方の群れ(D2群)は、これまでの分裂によく見られていた群れの遊動域を二分するという形でなく、北東部に新たな遊動域を構えた。それでなくともこの地域は、3群(B2群、C1群、C2群)の主要遊動域であり、残りの2群(A群、B1群)も、主稜を西から東へ越えて進出してくる地域であり、島で最も群れが込み合っている地域である。おそらく、そこに新たな遊動域を構えたということは、上記5群に大きな影響を与えるものと考えられ、どのような生態学的・社会学的な影響を与えるのかは、本研究課題からしてもきわめて重要である。


H27-C5
代:金子 新
分担:塩田 達雄
協:中山 英美
協:田谷 かほる
協:入口 翔一
アカゲザルiPS細胞樹立および免疫細胞への分化
アカゲザルiPS細胞樹立および免疫細胞への分化

金子 新 , 中山 英美, 田谷 かほる, 入口 翔一

 本研究では、iPS細胞から各種免疫細胞への分化誘導方法を確立し、そしてそれらの免疫細胞の自家移植によりヒト免疫不全症候群などによる破綻した免疫機構を再構築することを、免疫学的にヒトに近縁な霊長類を用いて検討することを目的とした研究である。
 本年度は、免疫細胞誘導のためのソースとして3頭のアカゲザル末梢血から単核球を分離・活性化しiPS細胞樹立を試みた。前年までの条件検討により、いずれのアカゲザルからも複数のiPS細胞が得られた。樹立したiPS細胞は、未分化マーカーにより未分化性を、奇形腫形成により多分化能を確認した。次に、種々のサイトカインを用いてCD34陽性細胞への分化誘導を行い、フローサイトメトリーで表面マーカーの確認を行った。また、分化誘導で得られたCD34陽性細胞を用いてコロニーアッセイを行い、血球分化能も確認した。さらにはCD34陽性細胞とOP9DL1細胞との共培養によりT細胞分化能を有することが確認できたiPS細胞株について、自家移植を目的に、再生T細胞の拡大培養実験と遺伝子マーキング実験を行うなど、移植実験の準備を進めた。



H27-D1
代:川合 伸幸
サルの脅威刺激検出に関する研究

論文
 Kawai, N. & Koda, H.( 2016) Japanese monkeys (Macaca fuscata) quickly detect snakes but not spiders: Evolutionary origins of fear-relevant animals Journal of Comparative Psychology 130( 3): 299-303. 謝辞 あり

学会発表
Nobuyuki Kawai Evolutionarily predisposed snake fear: Comparative, Developmental, and Electrophysiological studies(2016年3月5日) The 5th International Symposium on Primatology and Wildlife Science(Inuyama, Aichi, JAPAN).
サルの脅威刺激検出に関する研究

川合 伸幸

ヒトがヘビやクモに対して恐怖を感じるのは生得的なものか経験によるのか長年議論が続けられてきた。しかし今では現在は、ヘビ恐怖の生得性は認識されているが、クモ恐怖の生得的は議論がわかれる。ヒト乳児ではクモ様の図形に敏感に反応するようだが、成人では再現できない。そこで前年度に引き続いて、課題のデータを収集することができなかった2頭を対象に、毒グモがいない地域に生息するニホンザルが視覚探索課題においてクモをほかの動物よりもすばやく検出するかを検討した。すでに基本的な視覚探索の訓練と、ヘビとコアラを用いた実験はH26年度に実施していたので、クモとコアラの刺激を用いた視覚探索課題を実施した。この課題で安定して反応できるようになったため(90%以上の正答率が3日以上連続)、反応時間を測定したところ、前年度の1頭と同様に、2頭ともヘビを見つけるまでの時間のほうが早くかったが、クモとコアラでは、クモを見つける時間とコアラを見つける時間で有意な差はみられなかった。この結果は、前年度の1個体と一致していた。これらの結果はサルはクモに対する優先的な視覚情報処理を行わないことを示唆する。ただし、視覚探索課題には手続き上の問題が指摘しているため、サルがヘビに対する注意バイアスがあることを示すには、ノイズのなかからほかの動物よりも効率的にヘビを検出できることを示すなどの必要がある。


H27-D2
代:尾崎 紀夫
協:Aleksic Branko
協:久島 周
ニホンザルを対象とした高解像度CNVスクリーニング解析
ニホンザルを対象とした高解像度CNVスクリーニング解析

尾崎 紀夫 , Aleksic Branko, 久島 周

自閉スペクトラム症、統合失調症の発症に強く関与する稀なゲノムコピー数変異(copy number variant; CNV)が多数同定されている。本研究では、妥当性の高い精神疾患の霊長類モデルを見つけ出すことを企図して、ニホンザルを対象とした全ゲノムCNV解析を実施した。具体的には、ニホンザル379頭を対象にarray CGH (comparative genomic hybridization)を用いて高解像度の解析を実施し、多数のCNVを同定した。その1つに、10番染色体のADORA2A遺伝子(adenosine A2a receptor)を含む598kbの重複を見出した。ADORA2Aを含む重複は、発達障害や統合失調症との関連が示唆されていることから、本個体の行動観察を実施したが、現在までのところ、行動上の異常は見出していない。


H27-D3
代:杉田 昌彦
協:森田 大輔
脂質を標的としたサル免疫システムの解明

論文
Morita D, Yamamoto Y, Mizutani T, Ishikawa T, Suzuki J, Igarashi T, Mori N, Shiina T, Inoko H, Fujita H, Iwai K, Tanaka Y, Mikami B, Sugita M.(2016) Crystal structure of the N-myristoylated lipopeptide-bound MHC class I complex. Nature Communications 7:10356. 謝辞あり

関連サイト
京都大学ウイルス研究所細胞制御研究分野(杉田研究室) http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/SugitaLab.html
脂質を標的としたサル免疫システムの解明

杉田 昌彦 , 森田 大輔

本研究グループは、アカゲザルにおいて、サル免疫不全ウイルス由来のリポペプチドを特異的に認識するT細胞の存在を明らかにし、その分子機構の解明を目指した研究を展開してきた。まずリポペプチド特異的T細胞株(2N5.1)の抗原認識を阻害する2種のモノクローナル抗体を作出しその生化学的解析を進めた結果、その認識抗原がアカゲザルMHCクラス1分子であることを見出した。そこでアカゲザル末梢血単核球よりMHCクラス1遺伝子群を単離し、それぞれをトランスフェクトした細胞を用いてT細胞株の応答を検証したところ、アカゲザルMamu-B*098アリルを発現した細胞がリポペプチド抗原提示能を有することが判明した。その遺伝子を大腸菌に発現させ、得られたリコンビナントタンパク質にリポペプチドを結合させた複合体のX線結晶構造解析を行い、リポペプチド結合様式を解明した(Nature Communications. 7:10356, 2016)。Mamu-B*098分子の全体的な分子構築はペプチドを提示する旧来のMHCクラス1アリルと同様であったが、抗原結合溝はペプチドではなくリポペプチドの収納に最適の構造を有していた。これらの成果は、免疫学の基本パラダイムの一つであるMHCクラス1分子によるペプチド抗原提示の固定的概念に修正を加える必要があることを示している。


H27-D4
代:保坂 和彦
野生チンパンジーの老齢個体の行動及び社会的地位の研究

論文
Hosaka, Kazuhiko; Huffman, Michael A.(2015) Gerontology In: Mahale Chimpanzees: 50 Years of Research (eds. Nakamura M, Hosaka K, Itoh N, Zamma K), Cambridge University Press, Cambridge, UK.:326?339.

学会発表
保坂和彦 チンパンジーに『お年寄り』はいるのか?―個体“一生”追跡のすすめ(話題提供)(2015年7月18日) 第31回日本霊長類学会大会、自由集会4:野生チンパンジー研究の50年―長期研究の重要性と今後の展望(京都大学百周年時計台記念館).

保坂和彦 カルンデ50年の生涯(ポスター発表)(2015年9月19日) マハレ50周年記念展・公開シンポジウム「野生チンパンジー学の50年」(東京大学弥生講堂一条ホール).

野生チンパンジーの老齢個体の行動及び社会的地位の研究

保坂 和彦

本年度はマハレのチンパンジー研究50周年を記念して、第31回日本霊長類学会大会の自由集会(7月、京都大学)やマハレ50周年記念展・公開シンポジウム(9月、東京大学)を企画し、自ら本共同研究のテーマに関連する発表をおこなった。とくに近年、複数調査地で明らかになりつつある野生チンパンジーの50歳を超える寿命及び高い繁殖年齢について、マハレのデモグラフィー資料や老齢個体の事例を紹介しながら話題提供した。長期調査によりチンパンジーの生活史を明らかにすることが、繁殖停止後の老年期の長さに特徴があるヒトの生活史戦略の進化の理解に役立つことを主張した。また、9月には、調査地を同じくする共同研究者とともに、学術論文集“Mahale Chimpanzees: 50 Years of Research”をケンブリッジ大学出版局から出版した。23章“Gerontology(老年学)”は所内対応者との共著であり、上述したチンパンジーの生活史戦略に関する内容に加え、老齢個体に特徴的な身体・行動及び社会的地位の変化があるのかという問題(具体的には、一方的に受ける毛づくろい関係、アルファ雄の同盟者としての地位、他個体が示す寛容性と敬意の顕著化といった側面)について、未出版の観察記録や先行研究を例示しながら論じた。


H27-D5
代:山村 研一
協:荒木 喜美
協:松本 健
チンパンジーNaive iPS細胞の作製
チンパンジーNaive iPS細胞の作製

山村 研一 , 荒木 喜美, 松本 健

Naïve 型iPS細胞(Naïve iPSC)はPrimed型iPS細胞(Primed iPSC)と比較して,より始原的な分化段階に位置し、全能性の性質を保持するため、再生医学の観点から着目されている。しかし未だにその作製法が安定していない為、本研究では、チンパンジー Primed iPSCからNaïve iPSCへの転換法の確立を目的とし、以下の2つの研究を進めた。
(1)シグナル阻害剤処理による転換法
市販のシグナル阻害剤を含むRepro NaïveTM培地の交換のみで、Primed iPSCからNaïve iPSC様の細胞を作製した。これらの細胞が、Naïve iPSCに特有のドーム型状コロニーを形成し、さらに、OCT3/4,NANOG等の幹細胞マーカーを発現することを見出した。
(2)遺伝子強制発現とシグナル阻害剤処理を組み合わせた転換法
ドキシサイクリン(Dox)に依存してhNANOG及びhKLF4を発現するPrimed iPSC株とシグナル阻害剤を含む培地(t2iL+Dox)による培養を組み合わせて、Naïve iPSC様細胞を作製した。現在、これらの細胞の性状を解析中である。



H27-D6
代:宇田川 潤
協:玉川 俊広
協:日野 広大
手指のtriple-ratioを用いた霊長類の把握機能の解析

学会発表
玉川俊広、椎野顯彦、犬伏俊郎、本間智、木村智子、日野広大、新田哲久、牛尾哲敏、重歳憲治、小森優、森川茂廣、仲成幸、宇田川潤 霊長類における手の構造と機能(2016年3月28日) 第121回日本解剖学会総会・学術集会(郡山市).
手指のtriple-ratioを用いた霊長類の把握機能の解析

宇田川 潤 , 玉川 俊広, 日野 広大

申請者らは、これまでに各指の中手骨および指節骨長から求められたtriple-ratioにより、霊長類が樹上性、半樹上性および地上性に分類できることを示してきた。そこで、triple-ratioと把握機能との関連を調べるため、樹上性霊長類のテナガザルと地上性のマントヒヒ前肢の標本のMRI撮影を行い、把握時のMP, PIP, DIP関節の角度とモーメントアーム長との関係から、各関節に発生するトルクとそれを保持するための浅・深指屈筋、手内在筋の牽引力について検討した。モーメントアーム長は両種間で差は認められなかったが、各指長で関節中心間距離およびモーメントアーム長を正規化すると、パワーグリップ時に関節に発生するトルクの保持に要する筋力はヒヒよりテナガザルで大きく、トルク発生効率が悪いことが明らかとなった。テナガザルは体を細くし体重を軽減しつつ、指を長くしてモーメントアーム長を大きくすることで関節に発生するトルクを大きくし、腕渡りなど樹上生活に適応している可能性が考えられた。一方、ヒヒの手はテナガザルに比較して強力な握力を発生可能な構造をしていることが明らかとなった。


H27-D7
代:舛本 寛
協:久郷 和人
セントロメアの構造と機能の進化

学会発表
Aorarat Suntronpong、久郷和人、舛本寛、平井啓久、古賀章彦 CENP-B box is likely to confer selective advantage on its host organism(2015/9/25) 第87回日本遺伝学会大会(仙台市(東北大学)).
セントロメアの構造と機能の進化

舛本 寛 , 久郷 和人

 セントロメアの形成に関与するタンパクであるcentromere protein B(CENP-B)は、DNA結合ドメインをもち、17塩基対からなるモチーフを認識してDNAに結合する。このモチーフはCENP-B boxとよばれ、20年以上前に舛本が中心となってヒトとマウスで発見したものである。すぐ後に、ゴリラ等の大型類人猿にもあることが報告された。しかし、近年のゲノム情報の膨大な蓄積にも関わらず、これ以外の生物種での同定の報告はない。我々は「適切な検出法がないために同定に至らないのであって、CENP-B boxは広い範囲の生物種に存在する」との仮説を立てた。
 この仮説を検証するために、霊長類の中でヒトからさらに遠い関係にある新世界ザルを対象とし、また検出法を工夫して、探索を行った。まず6種の培養細胞に対して免疫染色を行い、4種でセントロメアにCENP-Bの結合があるとの結果を得た。続いてセントロメアDNAの塩基配列を解読し、この4種のうちの3種(マーモセット、リスザル、タマリン)で、候補となるモチーフを見出した。続いてクロマチン免疫沈降を行い、同定したモチーフがCENP-B boxとして機能することを確認した。
 少なくとも新世界ザルでは、仮説は証明されたことになる。この仮説がより広範囲の生物種で正しいとすると、「CENP-B boxはホストの長期的な生存に有利に作用する」との新たな仮説が成り立つ。この共同研究で、CENP-B boxの進化的な意義の追求が進展した。



H27-D8
代:渡辺 雅彦
協:今野 幸太郎
マーモセット脳機能研究に最適化した経路選択的操作とその基盤となる回路構造解析技術の開発
マーモセット脳機能研究に最適化した経路選択的操作とその基盤となる回路構造解析技術の開発

渡辺 雅彦 , 今野 幸太郎

本研究課題は、文部科学省「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」の技術開発個別課題「経路選択的な神経回路解析基盤技術の開発とマーモセット脳解析への最適化」(平成26~28年度;代表機関福島県立医科大学、代表研究者小林和人教授)を、参画機関である霊長類研究所と協力して遂行する共同利用・共同研究として行った。具体的には、霊長研で繁殖・飼育されたマーモセットの固定脳とマーモセットcDNAに対するリボプローブを用いて、9種類の神経化学特性決定のためのマーカー遺伝子(グルタミン酸にはVGluT1, VGluT2, VGluT3;GABAにはGAD67;グリシンにはGlyT2;アセチルコリンにはCHTもしくはVAChT;ドパミンにはDAT;ノルアドレナリン・アドレナリンにはDBH;セロトニンにはHTT)のin situハイブリダイゼーション解析技術を確立した。さらに、マーモセット脳に適用可能なVGluT1~3, GAD67, CHT, HTT, GlyT2, DBH抗体を作製し、マーモセットの固定脳組織切片を用いてその特異性を検証することができた。


H27-D9
代:松村 研哉
協:大島 一彦
霊長類のみに存在する新規遺伝子PIPSLの進化や機能の解明

論文
Kenya Matsumura, Hiroo Imai, Yasuhiro Go, Masatoshi Kusuhara, Ken Yamaguchi, Tsuyoshi Shirai, Kazuhiko Ohshima(2018) Transcriptional activation of a chimeric retrogene PIPSL in a hominoid ancestor Gene 679(30 December):318-323. 謝辞あり
霊長類のみに存在する新規遺伝子PIPSLの進化や機能の解明

松村 研哉 , 大島 一彦

研究対象であるPIPSLは、プロセシング済み偽遺伝子と共通の過程を経て誕生したレトロ遺伝子である。PIPSLはリン脂質キナーゼPIP5K1Aと26SプロテアソームサブユニットS5a/PSMD4を起源遺伝子とする。両遺伝子のフレームを維持したまま連結したキメラmRNAが逆転写され、ゲノムに再挿入されて誕生したと考えられている。先行研究において、ヒト・チンパンジーでRNA発現が確認されているが、その転写制御機構は明らかになっていない。
 類人猿5系統で保存されているレトロ遺伝子PIPSLがどのように転写制御機構を獲得したのかを明らかにするため、培養細胞HepG2やHeLa、及び精巣癌由来細胞株を用いたプロモーターアッセイを行い、ヒトPIPSL上流配列の転写活性を測定した。ヒトPIPSLの転写開始点近傍に存在するTATA様配列を欠失すると、転写量が約70%低下することも明らかになった。これらの結果より、PIPSLの基本プロモーターを特定したと考えている。また、PIPSL誕生後に最初に分岐した系統であるテナガザルの精巣から、内在性PIPSL RNAを今回初めて検出した。ヒト・チンパンジーに至る系統とテナガザルでは、PIPSLの転写制御が異なる可能性が考えられる。



H27-D10
代:五十嵐 由里子
協:近藤 信太郎
協:久世 濃子
霊長類の頭骨と骨盤の形態における性差の関係

学会発表
五十嵐由里子・久世濃子 大型類人猿の骨盤上の耳状面前溝(2015年7月20日) 日本霊長類学会(京都大学).
霊長類の頭骨と骨盤の形態における性差の関係

五十嵐 由里子 , 近藤 信太郎, 久世 濃子

【1】頭骨の性差
(1)個体数を調査した結果、対象とする種はニホンザルとした
(2)Ecogeographical and Phylogenetic Effects on Craniofacial Variation in Macaques(Ito et al.2014)に基づく
【2】骨盤の性差
(1)個体数を調査した結果、対象とする種はニホンザルとした
(2)Allometric Scaling and Locomotor Function in the Primate Pelvis (Lewton 2015)に基づく
(3)大型霊長類の骨盤における耳状面前溝
霊長類における妊娠・分娩の淘汰圧を推定する参考のために、ゴリラ、チンパンジー、オランウータンの骨盤の仙腸関節部骨表面を肉眼観察した。その結果、ゴリラにおいて、メスでは妊娠・分娩の回数を反映した耳状面前溝が見られたが、オスでは、妊娠・分娩とは無関係ながら顕著な耳状面前溝が現れた。一方、オランウータンでは、妊娠・分娩の有無にかかわらず耳状面前溝が全く現れなかった。チンパンジーでは、妊娠・分娩の回数を反映した耳状面前溝が見られた。これらの結果より、霊長類の妊娠・分娩が骨盤に与える負荷を解明するためには、骨盤と胎児のサイズの関係以外の要因(ロコモーション様式など、仙腸関節部にかかる負荷)も考慮する必要があることがわかった。



H27-D12
代:日暮 泰男
ニホンザルの中手骨と中足骨に関する機能形態学的研究
ニホンザルの中手骨と中足骨に関する機能形態学的研究

日暮 泰男

骨格形態は動物が生存中にうける機械的荷重におうじて変化すると一般的に考えられている。しかしながら、この考えは、おもに、上腕骨や大腿骨など大型の長骨についての知見にもとづいたものであり、小型の長骨である中手骨と中足骨に関する知見はほとんど報告されていない。本研究では、機械的荷重に対する霊長類の骨格形態の適応についての理解を深めるために、ニホンザルの中手骨と中足骨の外部形態および内部構造を定量化した。本研究は2013年度から継続している研究課題であり、今年度は、ニホンザル1個体(霊長類研究所に所蔵)について、骨の骨幹中央部の横断面をpQCT装置(霊長類研究所進化形態分野に設置)により撮像し、pQCT画像から、断面二次極モーメント等の断面性能を算出した。第1~5中手骨を、標準化した断面二次極モーメントの大きい順に並べると、3-4-2-1-5となり、中足骨は1-3-2-4-5となった。こうした中手骨および中足骨の頑丈性のパターンを、それぞれの骨が地上歩行時にうける機械的荷重の大きさのパターンと比較すると、両者は正確に対応するわけではないことがわかった。このことから、骨格形態がどのような行動に対する適応なのかを予測することはかならずしも簡単ではないことがわかる。今後は、樹上移動といった他の行動時の機械的荷重との対応関係も検討する必要がある。


H27-D13
代:森 沙織
人類の進化と疾患におけるヒト特異的レトロ因子の役割
H27-D14
代:長田 直樹
協:范 振?
タイワンザルとニホンザルの全ゲノム解析による進化史の解明
タイワンザルとニホンザルの全ゲノム解析による進化史の解明

長田 直樹 , 范 振?

東アジアに生息するマカク属のサルについての進化史を解明するために,ニホンザル二個体,タイワンザル二個体について,血液サンプルを共同利用計画に基づき使用させていただいた.得られた血液からDNAを抽出し,DNAシークエンス用ライブラリを作成,Illumina社HiSeq2000を用いてそれぞれおよそ30倍の被覆度を持つリード配列を得ることができた.リード配列のクオリティは良好であり,アカゲザル参照配列にマッピングすることができた.今後,全ゲノムレベルでの変異解析を行い,それを他のマカクにおけるデータと比較することにより,両種が過去どのような歴史をたどって進化してきたかを明らかにし,その成果を発表したいと考えている.


H27-D15
代:斎藤 成也
協:Nilmini Hettiarachchi
協:長田 直樹
トクモンキーのゲノム進化
トクモンキーのゲノム進化

斎藤 成也 , Nilmini Hettiarachchi, 長田 直樹

日本モンキーセンターより、トクモンキー組織標本(エタノール浸潤)から抽出されたDNAサンプルを分与され、それをつかって、国立遺伝学研究所人類遺伝研究部門(井ノ上逸郎教授)で使われているヒトのエクソーム解析プラットフォームを利用して、トクモンキーのエクソーム配列データを生成した。現在配列を解析中だが、ヒトとトクモンキーは2500万年前後の分岐年代があるので、およそ80%ほどのトクモンキーエクソンが得られたもようである。今後、カニクイザルのエクソームデータ(未発表)やゲノムデータ(既発表)と比較して、トクモンキーの系統的位置を推定する予定である。


H27-D16
代:和田 一雄
志賀高原のニホンザルの生息地に関する定量的データの整備
志賀高原のニホンザルの生息地に関する定量的データの整備

和田 一雄

これまで未発表であった、1978年に実施した志賀高原横湯川流域の植生調査のまとめを行った。調査地内に44地点の調査区を設け、各調査区に付き10x10mのクオドラートを6-8ヵ所設定して、中にある胸高直径1cm以上の木全てを計測した。各調査区分は、優先種に基づいてミズナラ、ブナ、ミズキなど12種の森林タイプに分類した。また、1970-80年代に同流域を利用していたB2・C群のニホンザルの遊動域を1haに区切り、植生調査で得た森林タイプから遊動域の植生を9タイプの森林に分類した。
 ついで、1978-87年の10年間、同流域に5ヵ所設定したシードトラップの資料を分析した。1ヶ所につき1x1mのシードトラップを地上1mに6-17個設置し、9-12月にトラップ中の果実を毎月回収し、ブナ、ミズナラ、ミズキ、サワグルミ、カエデ類、サルナシ、ヤマブドウ、その他の生産量の経年変化を計測した。これらの資料に基づき、森林タイプごとの面積当たりの果実生産量を推定した。
 B2・C群は1970-80年代、9-11月には同流域の中流部分を同時に利用したが、カンバ林とアカマツ・コメツガ林は避けて、他の6森林タイプを主に使用した。両群の秋の果実の利用量はそれぞれ年間2.7t、2.4tであった。両群が同時利用した中流部内では、B2群は下流側、C群は上流側を優先的に利用した。両群が消費した果実の推定値は、B2群が下流側の生産量(10.6t)の18%、C群が上流側の生産量(7.5t)の20%だった。以上のことから、両群は同流域を同時に利用するが、部分的に使い分けて、食物をめぐる競合を避けていると推定した。



H27-D17
代:鈴木 久代
嵐山のニホンザルの個体間の認識について
嵐山のニホンザルの個体間の認識について

鈴木 久代

嵐山B群のニホンザルは1986年、なぜ、どのような過程を経て分裂したのか?分裂の前から高い精度で収集されていた、群れを構成する各個体の血縁関係の情報に、直接観察によって得られた、交尾行動やそれ以外の日常行動における個体間の結びつき、分裂の進行に伴ったこれらの行動の変化に関する情報を加え分析した。特に群れ内での順位や家系の優劣、親子(特に母・娘の)関係、交尾関係の履歴、加齢に伴う個体の体力の変化といった要素が、分裂に際しての個体の挙動にどう影響したかを明らかにしたい。1985年の交尾期、嵐山B群の上位オス4頭は、ともに23~22歳と高齢であった。1頭が死亡し、1位オスはメス頭の後を、2位オスは特定の上位メスの後を、ほぼ常時ついてまわった。3位オスは赤ん坊を抱いていた。この分裂で、結果的には、オスの世代が交代した。分裂は、オスとメスの交尾関係やメスの血縁関係など、普段の個体間の関係に即した形で行われたと考えられる。このことは、群れが安定している普段ではよくわからない個体間の関係性が、分裂により顕著になった点で重要である。分裂後、群れ落ちしたメス8頭は、群れの中に血縁個体が少なかった。今後は、メスの血縁度や血縁個体数の大小、分裂によるメスとオスの繁殖成功度への影響などについても検討する。今後も、受け入れ教員と密な連絡を取り、ニホンザルの他の分裂の場合と比較し、個体間の認識について論議を深める。


H27-D18
代:Neysa Grider-Potter
協:Ryosuke Goto
協:Kenji Oka
Functional Morphology of the Head and Neck of Hylobates lar
Functional Morphology of the Head and Neck of Hylobates lar

Neysa Grider-Potter , Ryosuke Goto, Kenji Oka

One of the neck’s primary function is to provide head mobility. This mobility is essential in mammalian locomotion, balance, feeding, and predator vigilance but should be especially critical for primates, who engage in diverse ranges of postural and locomotor repertoires. Very little is known about variation in mobility among primates, and even less is known about how cervical vertebrae morphology affects neck range of motion (ROM). The goal of this study is to explore how cervical skeletal features correlate with range of motion of the neck.
We predict: 1) tall vertebral bodies facilitate greater ranges of flexion, 2) long, inferiorly oriented spinous processes inhibit extension, and 3) tall uncinate processes and long transverse processes inhibit lateral flexion.
Gibbon ranges of maximum flexion, extension, and lateral flexion were collected through radiographs (n=1). Radiographs were digitized and joint ROM were measured using ImageJ. Human ROM was obtained from the literature. Human (n=4) and gibbon (n=7) cervical vertebrae were digitized using a Microscribe 3DS. Angular and linear measurements were taken from these data using Rhinoceros 3DM. Vertebral morphology and intervertebral ROM within the vertebral column were investigated using OLS regression
The negative relationship between lateral flexion and transverse process length approaches significance (p<0.1) and regressions have moderate fit (r^2hu=0.48, r^2gi=0.52). In both species, the positive relationship between lateral flexion and uncinate process height approaches significance (p<0.1) with moderate fit (r^2hu=0.66, r^2gi=0.63). Contrary to the predictions, uncinate height increases with interverteral range of lateral flexion. No other significant relationships were found between intervertebral range of motion and morphology.
There are weak relationships between intervertebral range of motion and morphology within the ape cervical spine. It is possible that selection on mobility is secondary to other aspects of neck function, such as postural maintenance. Soft tissues may more strongly influence mobility. It is likely that intraspinal differences are too minute to show a statistically significant pattern. An interspecific comparison may elucidate a relationship between cervical form and mobility.



H27-D19
代:Elena Cattaneo
協:Giulio Paolo Formenti
Sequencing of huntingtin orthologs in macaca fuscata
Sequencing of huntingtin orthologs in macaca fuscata

Elena Cattaneo , Giulio Paolo Formenti

Our Italian laboratory of is focussed on the study of a severe neurological disorder, Huntington Disease (HD). More specifically, my group is investigating the evolutionary background under which the genetic mutation causative of the disease, a CAG trinucleotide repeat longer than 35 repeats within Huntingtin (Htt), has emerged. Our principal aims are: 1) the sequencing in several Non-Human Primate (NHP) species of HTT Exon 1 in order to gather a vast collection of sequencing data including Single Nucleotide Polymorphisms (SNPs) and CAG length polymorphisms; 2) the reconstruction of HTT Exon 1 ancestral states along the human evolutionary lineage; 3) the identification of NHPs carrying long CAG repeats for disease modelling purposes.
Using the DNA samples, we have used a self-established High-Throughput protocol (Figure 1), which allowed me to correctly PCR-amplify, clone into plasmids and Sanger-sequence the Htt exon 1 in 82 different samples from Macaca fuscata. In particular, after PCR amplification using High-Fidelity Taq (Figure 2), products were cloned into sequencing vector PCR 4.0 and transformed into TOP10 competent bacterial cells, which were subsequently grown in 6 well Multiwell plates (Figure 3). The single colonies were plated in 96 well plates for HT plasmid DNA extraction (Figure 4).
Our hosts at PRI provided full support throughout the entire process (Figure 5). These data have shed light on the CAG length variability within this species and will be used to plan further experiments.



H27-D20
代:三坂 巧
協:石丸 喜朗
協:戸田 安香
霊長類における旨味受容体T1R1/T1R3のアミノ酸応答性の評価
霊長類における旨味受容体T1R1/T1R5のアミノ酸応答性の評価

三坂 巧 , 石丸 喜朗, 戸田 安香

旨味受容体T1R1/T1R3はアミノ酸の味の受容体であるが、ヒトとマウスでは受け取るアミノ酸の種類が異なる。本研究では、味覚受容体発現細胞を用いた味の評価技術を用いて、霊長類間における旨味受容体のアミノ酸選択性の違いを評価し、食性の違いと比較検討することを目的としている。
昨年度までに、ゴリラ、オランウータン、ニホンザル、アカゲザル、カニクイザル、ブタオザル、コモンマーモセット、アイアイ、キツネザルの旨味受容体遺伝子Tas1r1およびTas1r3の配列解析を完了し、機能解析に用いる哺乳類細胞用発現ベクターの作製も行った。今年度は、細胞評価系を用いて、これらの旨味受容体のアミノ酸応答性の評価を行った。結果、これらの霊長類の間でもアミノ酸選択性に種差があることが明らかになった。特にグルタミン酸受容能に大きな違いが認められたことから、今後は変異体解析を用いて、グルタミン酸受容能に影響を与える残基の検証を行う予定である。
本研究成果は、霊長類における味覚受容体遺伝子と食物選択との相関性を示す上で非常に興味深い知見を与え得るものである。



H27-D21
代:Laura Buck
協:Jay Stock
協:Isabelle De Groote
Skeletal adaptation in Japanese macaques (Macaca fuscata) in response to environmental variation across the Japanese Archipelago
Skeletal adaptation in Japanese macaques (Macaca fuscata) in response to environmental variation across the Japanese Archipelago

Laura Buck , Jay Stock, Isabelle De Groote

This project addresses the question of skeletal plasticity to climate. We will compare skeletal shape between groups of Japanese macaques from different environments and contrast this with climate-correlated skeletal shape differences between Jomon groups from matched regions. We seek to determine whether monkeys, and by inference other non-human primates, adapt to climatic stimuli in the same way as humans do.

We are using a combination of CT scanning and traditional osteometry to collect 3D landmark, cross-sectional geometric and traditional morphometric data. We will analyse characteristics such as the globularity of the neurocranium, facial prognathism and cheek projection, nasal and orbital shape in the cranium, limb and autopod proportions, limb bone curvature and robusticity (via cross-sectional geometry), body breadth, body size and body mass in the postcrania. Laura Buck arrived at the PRI on 4th April to begin data collection. This comprises traditional osteometrics and CT scans collected by Dr Buck using the medical CT scanner at the PRI following training by Dr Ito (PRI). Eighty macaque skeletons have been chosen from the PRI collections, ten adult males and ten adult females from each of four sites with different environments (north to south: Shimokita, Nagano, Shimane and Yakushima). To date 35 skeletons have been measured and CT scanned. Analyses of scan and morphometric data will be conducted at the University of Cambridge on Dr Buck’s return, to examine relationships between macaque morphology and climatic data.

From 16th March t0 3rd April, Drs Buck and De Groote visited the National Museum of Science and Nature (Tsukuba), University of Kyoto and Sapporo Medical School to evaluate the Jomon sample with which to compare the macaque data being collected at PRI. We have ascertained that there is a good potential sample from sites in Hokkaido and Honshu and a number of specimens from Kyushu (see table below). We are currently contacting institutions in Kyushu with the hope of extending the sample from that region. We hope to collect data from 20 individuals from each of the four regional matches for the macaques and also 20 from Hokkaido, which Japanese macaques have never inhabited.



humerus, radius, ulna, femur, tibia, first metatarsal, first metacarpal, clavicle and second rib


skull


os coxae and sacrum


Table of potential Jomon sample


H27-D22
代:塚本 徹雄
協:岡田 誠治
ニホンザルの造血系および造血幹細胞にエイズウイルスが与える影響の解析
ニホンザルの造血系および造血幹細胞にエイズウイルスが与える影響の解析

塚本 徹雄 , 岡田 誠治

本研究では、ニホンザルのエイズモデルとしての可能性検証を目的とし、サル末梢血単核球(PBMC)の解析を行った。まず、NIH Nonhuman Primate Reagent Resource (www.nhpreagents.org)と代表研究者の過去データを基に、サルでの交差反応性が見られるものを中心に抗ヒト抗体をニホンザルPBMCで試験したところ、多数の抗体クローンの交差反応性が確認された(CD3, CD4, CD8, CD27, CD28, CD45RA, CD95, CCR5, CD25, PD-1, HLA-DR, CD20, CD56, CD16, CD11b, CD14, CD1c, CD11c, CD123, CD163)。さらに、PBMCをPHA-Pで48時間刺激したのちサル免疫不全ウイルスSIV (分子クローン SIVmac239)を感染させ(力価はMOI=0.001) 10日間培養したところ、細胞内SIV p27染色にてウイルス増殖を確認した。このことから、ニホンザルはSIVに感受性であり、エイズモデルに相応しいこと、SIV感染がニホンザル造血系細胞に与える影響を解析するための抗体が幅広く利用可能であることが明らかになった。


H27-D23
代:酒井 朋子
協:畑 純一
協:太田 裕貴
協:小川 優樹
協:新宅 勇太
協:大石 健一
協:森 進
協:岡野 ジェイムス 洋尚
協:岡野 栄之
高磁場MRIシステムによる霊長類の脳神経回路構造の比較研究

論文

学会発表
Tomoko Sakai Mapping Evolution and Development of the Primate Brain by Neuroimaging Techniques(2016/03/28) 文部科学省平成27年科学技術人材育成費補助事業ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)How Humans Evolved Supersize Brains -The Growth of the Brain-(Toyama).

酒井朋子 ヒトの大脳化の由来:霊長類の脳の進化・発達の観点から(2015/08/20-21) 富山大学大学院医学薬学研究部(医学)生命融合科学教育部大学院セミナー(富山大学(富山)).

酒井朋子, 三上章允, 小牧裕司, 畑純一, 畑純一, 松井三枝, 岡原純子, 岡原則夫, 井上貴司, 佐々木えりか, 濱田穣, 鈴木樹理, 宮部貴子, 松沢哲郎,岡野栄之 ヒト,チンパンジー,コモンマーモセットにおける脳梁発達の比較研究:ヒト特異的な脳構造の発達機構の解明に向けて(2015/7/20) 第31回日本霊長類学会大会(京都大学(京都)).

酒井朋子、畑純一、太田裕貴、小川優樹、新宅勇太、大石健一、森進、岡野ジェイムス洋尚、濱田穣、岡野栄之 高磁場MRIによる霊長類の脳神経回路構造の比較研究(優秀口頭発表賞を受賞)(2016/1/30) 第60回プリマーテス研究会2016/1/30(日本モンキーセンター(愛知)).

高磁場MRIシステムによる霊長類の脳神経回路構造の比較研究

酒井 朋子 , 畑 純一, 太田 裕貴, 小川 優樹, 新宅 勇太, 大石 健一, 森 進, 岡野 ジェイムス 洋尚, 岡野 栄之

本研究では、3次元の脳解剖画像および拡散MRI画像を非破壊的に撮像することで、従来のMRI撮像技術では不可能であった、より高精細な脳構造全体の再構築(解像度20〜50μm)を行うことができた。本年度対象とした脳標本は、日本モンキーセンターが所有するマーモセット、ヨザル、ヤクシマザル、テナガザルの脳標本、GAIN経由で貴研究所が所有するシロテテナガザルの頭部標本であった。さらに、これらのデータをもとに、ヒトの高度な心的機能である「共感性」に着目し、この機能に重要な役割を担っていると考えられている鈎状束に関する描写的特徴を表現に成功した。これらの研究成果は、国内の研究会および国際シンポジウム等で発表を行った。第60回プリマーテス研究会では優秀口頭発表賞を受賞した。現在、学術雑誌への投稿に向けての準備を進めている。


H27-D24
代:岡澤 均
協:陳 西貴
協:田村 拓也
協:藤田 慶大
協:田川 一彦
協:泰羅 雅登
協:勝山 成美
マーモセット疾患モデルを用いた神経回路障害ならびに分子病態の解析および治療法の開発
マーモセット疾患モデルを用いた神経回路障害ならびに分子病態の解析および治療法の開発

岡澤 均 , 陳 西貴, 田村 拓也, 藤田 慶大, 田川 一彦, 泰羅 雅登, 勝山 成美

正常マーモセット脳へアミロイドβ、タウなど神経変性疾患タンパク質あるいは関連物質を注入し、認知症モデルの作出を試みる。平成27年度は、脳内局所への物質注入の方法について検討した。マーモセット2頭を用いて、適切なカニューレの選択、脳内のターゲット位置に埋め込み法、注入法を確立した。
また、マーモセットの認知症における神経変性関連物質の投与の前後で認知機能を比較するための準備をおこなった。上記において想定する神経変性疾患はADとFTLDをはじめとする認知症であり、記憶、認知等に広汎な障害が現れるとされている。平成27年度は、4頭のマーモセットに視覚弁別課題・逆転学習課題、および空間位置記憶課題を訓練した。



H27-D25
代:森 健人
オランウータンの大腿骨頭靱帯に関する研究
オランウータンの大腿骨頭靱帯に関する研究

森 健人

哺乳類のなかでもいくつかの種は大腿骨頭靱帯をもたないとされており,霊長類の中ではオランウータンがその一種である (Endo et al., 2004).しかしながら,過去の文献では大腿骨頭靱帯の存在を肯定したものもあり(Crelin, 1988),真偽のほどは未だ不明確である.本研究では過去の文献では辿っていなかった大腿骨頭靱帯から大腿骨頭を栄養する血管を剖出し,改めて大腿骨頭靱帯の有無を調べる.大腿骨頭動脈は大腿骨を栄養する血管として大腿骨頭靱帯内を走行していると言われている.オランウータンの股関節の靱帯について,血管の走行を知ることで,当該の靱帯が大腿骨頭動脈かどうかを知ることができると考える.
オランウータンの死体について肉眼解剖を行い,閉鎖動脈から寛骨臼切痕を通る寛骨臼枝を剖出した.大腿骨頭靱帯の遺残のような線維は観察されたが,血管の走行は観察できず,観察された遺残が大腿骨頭靱帯であるかどうかは判然としない.ヒトにおいては大腿骨頭靱帯が加齢とともに消失する例が知られている.今回のサンプルは老齢であり,後天的に大腿骨頭靱帯が消失している可能性は依然として残る.今後も継続して調査を続けたい.



H27-D27
代:古川 貴久
協:大森 義裕
霊長類の網膜の形成と維持を制御する分子機能の解析
霊長類の網膜の形成と維持を制御する分子機能の解析

古川 貴久 , 大森 義裕

ヒトを含む霊長類の網膜には視野の中心部に黄斑と呼ばれる黄色味を帯びた部分があり、この部分には、色覚を司る錐体細胞が高密度で存在している。黄斑では、双極細胞・神経節細胞も高密度で存在し、視細胞1細胞当たりの双極細胞や神経節細胞の接続比率が高いため高解像度の視覚情報を得ることができる。また、黄斑の中心部には中心窩と呼ばれる窪んだ構造が存在し、この部分には血管や視細胞以外の細胞の核が存在せず光を遮る構造をできるだけ除外する仕組みとなっている。ヒトにおいて黄斑は加齢黄斑変性を含む失明に至る疾患の病変部位であり、その形成メカニズムの解明が期待されている。黄斑はマウスを含む霊長類以外の哺乳類では発達しないため、黄斑部形成の分子メカニズムはほとんど明らかになっていない。そこで、私たちはサルの網膜を用いてこの黄斑部の研究を進めている。本年度は6か月齢のアカゲザル網膜をRNA laterに保存した組織からトリゾールを用いたAGPC (Acid Guanidine thiocyanate Phenol Chloroform)法によりRNAを精製した。今後、このRNAを用いて遺伝子発現を解析する予定である。


H27-D26
代:中内 啓光
協:正木 英樹
協:長嶋 比呂志
協:平林 真澄
協:海野 あゆみ
協:佐藤 秀征
異種生体環境を用いたチンパンジーiPS細胞からの臓器作製
異種生体環境を用いたチンパンジーiPS細胞からの臓器作製

中内 啓光 , 正木 英樹, 長嶋 比呂志, 平林 真澄, 海野 あゆみ, 佐藤 秀征

本課題は平成27年度に臨時募集研究として採択され、霊長類研究所よりチンパンジーの線維芽細胞およびiPS細胞の提供を受けた。医科学研究所にてチンパンジー線維芽細胞にリプログラミング因子を発現するセンダイウイルスベクターを導入し、iPS細胞を樹立した。センダイウイルスはRNAウィルスであるためにチンパンジーゲノムに挿入されないことから、外来性遺伝子を有さない(transgene free)チンパンジーiPS細胞を得ることができた。本課題は引き続き2016年の一般研究に採択されたため、今後も同様に複数のチンパンジー個体からtransgene free-iPS細胞を作製し、異種動物とのキメラ形成能評価に用いる予定である。



H26
論文 58 報 学会発表 162 件
H26-A1
代:関 和彦
協:大屋 知徹
協:Sandra Puentes Martinez Milena
協:梅田 達也
複数骨格筋への単シナプス性発散投射構造の解剖学的同定
複数骨格筋への単シナプス性発散投射構造の解剖学的同定

関 和彦 , 大屋 知徹, Sandra Puentes Martinez Milena , 梅田 達也

 脊髄運動ニューロンに投射するPremotor neuronは大脳皮質、脳幹、脊髄にそれぞれ偏在し、最近の申請者らの電気生理学的実験によってPremotor neuronの複数筋への機能的結合様式が筋活動の機能的モデュール(筋シナジー)を構成することが明らかになってきた。この神経解剖学的実体については全く明らかにされておらず、ヒトの運動制御の理解の発展と、運動失調に関わる筋、神経疾患の病態理解や新しい治療法の開発のためには喫緊の研究課題である。そこで本研究では上肢筋の脊髄運動ニューロンへ投射する細胞(Premotor neuron)の起始核である脊髄、赤核、大脳皮質からの発散性支配様式を解剖学的に明らかにすることによって、霊長類における巧緻性に関わる皮質脊髄路の脊髄運動ニューロンへの直接投射の機能的意義を解剖学的観点から検討する。本年度は第一に、霊長類の筋肉への注入によって、手指筋運動ニューロンへ逆行性に最も高い選択性を持って遺伝子を発現させるウィルスベクターの同定を目指した。そのために様々なマーカー遺伝子をつけたAAV 及びレンチウィルスベクターを、サルの手固有筋及び手首筋に注入し、ラベルされる脊髄ニューロンの組織学的解析を行なった。現在解析中である。また、神経終末を注入中に同定するため、電気刺激による新たな方法を開発した。一方、本研究の目的が達成した際には、当該ニューロン活動を光遺伝学的に修飾することが可能になる。そのため、末梢神経の特定の求心神経に選択的に遺伝子発現を誘導するウィルスベクターの同定とその検証のための電気生理学的実験を行なった。


H26-A2
代:磯田 昌岐
協:松本 正幸
協:Kevin McCairn
運動異常症の霊長類モデルにおける脳活動異常の電気生理学的解析

学会発表
McCairn KW, Nagai Y, Kimura K, Go Y, Inoue K, Isoda M, Minamimoto T, Matsumoto M, Takada M. Spontaneously Emerging Parkinsonism-Cerebellar Syndrome in a Subspecies of Japanese Macaque (Macaca fuscata yakui): A Potential Analogue of Multiple System Atrophy.(September 12, 2014) The 37th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society.(Yokohama, Japan).

McCairn KW, Nagai Y, Hori Y, Iriki A, Takada M, T Minamimoto, Isoda M, Matsumoto M. Distinct cortical and subcortical networks drive myoclonic and vocal tics in the nonhuman primate model of Tourette syndrome: A PET and electrophysiological study(November 18, 2014) The 44th Annual Meeting of the Society for Neuroscience(Washington DC, USA).
運動異常症の霊長類モデルにおける脳活動異常の電気生理学的解析

磯田 昌岐 , 松本 正幸, Kevin McCairn

トゥレット症候群は,運動チックと発声チックを主徴とする運動異常疾患である。本研究では各チック症状の病態生理学的機構を明らかにするため,同疾患の霊長類モデルを薬理学的手法により作出し,大脳皮質と大脳基底核の神経活動を電気生理学的に解析した。まず,GABA-A受容体の拮抗薬であるbicucullineをマカクザルの被殻と側坐核に微量注入し,それぞれ運動チックと発声チックを誘発することに成功した。次いで,大脳皮質運動野,前部帯状皮質,被殻,側坐核より局所電場電位local field potentialsを記録し,各チック症状出現後の神経活動を比較した。その結果,運動チックの発現時には大脳皮質運動野と被殻において顕著な異常活動が記録され,発声チックの発現時には前部帯状皮質と側坐核において顕著な異常活動が記録された。本研究の実施により,トゥレット症候群の運動チックと発声チックの発現には,大脳皮質・基底核系の異なるネットワークが関与することが示唆された。


H26-A3
代:星 英司
行動制御に関わる高次脳機能の解明に向けた神経ネットワークの解析

論文
Hoshi E(2014) Neural mechanisms underlying visually guided action Brain Nerve 66(4):439-50.

学会発表
Hoshi E Structural and functional organization of the frontal association cortex for goal-directed behavior(2014.07) 9th FENS Forum of Neuroscience(Milan, Italy).

Hoshi E Cortico-basal ganglia networks subserving goal-directed behavior mediated by conditional visuo-goal association(2014/09) NIPS International Workshop and Satellite Symposium of Neuroscience2014(Okazaki, Japan).

星 英司 ゴール指向的アクションの生成における大脳皮質―大脳基底核回路の役割(2014.09) 第37回日本神経科学大会(横浜).
行動制御に関わる高次脳機能の解明に向けた神経ネットワークの解析

星 英司

 認知的な行動制御において重要な役割を果たす霊長類の前頭葉には複数の運動関連領野がある。特異的な機能を営む複数の領野の機能連携のもと、滑らかで目的にかなった動作が達成されるが、それらの神経基盤は依然として不明である。そこで、本共同研究では、その構造的基盤を解明することを目指して実施された。シナプスを越えて逆行性に伝播する性質がある狂犬病ウイルスをトレーサーとして用いることにより、越シナプス性のネットワーク構築を解剖学的に解析した。本年度は、運動の企画と実行の過程において重要な役割を果たす高次運動野の二領域に、異なる蛍光色素を発現する狂犬病ウイルスベクターを打ち分けることを行った。数日の生存期間の後に脳標本を作製したところ、注入部位に入力を送っていると思われる脳部位に強い蛍光が観察された。これは、今回用いた狂犬病ウイルスベクターが霊長類の脳においてシナプス特異的に伝播する性質を有しており、強力なトレーシングツールとなることを示す。今後、顕微鏡下で細胞レベルの分布の解析を進めることにより、複数の運動関連領野から構成されるネットワーク構築の理解が深まることが期待される。


H26-A4
代:Aye San
Phylogenetic and population genetic studies for conservation of nonhuman primates in Myanmar.
Phylogenetic and population genetic studies for conservation of nonhuman primates in Myanmar.

Aye San

Myanmar is located in the center of Continental Southeast Asia, and holds a variety of habitat environment for nonhuman primates. Hence, high diversity of nonhuman primates are described: 3 species of gibbons, 7 species of leaf monkeys, 5 species of macaques and one species of the slow loris. This research aims to see phylogenetic relationship among the local populations of Myanmar non-human primates by analyzing DNA sequences of highly variable region of mtDNA, as well as to confirm phylogenetic status of Myanmar monkeys by constructing phylogenetic trees together with DNA sequence data of monkeys from other countries. In 2014, the 1st year of the planned research “International Cooperative Research on Evolution and Conservation of Asian Primates”, I conducted those examinations on the Myanmar subspecies of the long-tailed monkey (Macaca fascicularis aurea). To see mtDNA phylogeography, I sequenced the D-loop region for the samples collected in 11 localities and infer phylogenetic tree using approximate 560 bp of hyper variable region 1 of D-loop. The result suggested a relatively large genetic differentiation among local populations of M. f. aurea in Myanmar. However, in one case transportation of monkey by humans was suspected. Next, I sequenced approximate 1470 bp of the 12S-16S region for 5 samples of M. f aurea and 12 individuals representing 9 species (M. arctoides, M. assamensis, M. fascicularis, M. fuscata, M. leonina, M. mulatta, M. nemestrina, M. silenus and M. thibetana). All the 5 samples of aurea, including 3 pets and 2 fecal DNA samples from Indian Single Rock Mountain (Southern Myanmar) showed an identical sequence for this region. In the species-level phylogenetic tree, M. f. aurea was placed at the basal position, not forming a cluster with other subspecies of M. fascicularis from Laos and Sumatra. These results will be helpful to find evolutionary significant units for conservation of Myanmar’s endemic subspecies of the long-tailed monkey.


H26-A5
代:松本 正幸
協:川合 隆嗣
協:佐藤 暢哉
認知機能と行動制御における外側手綱核の役割

論文
川合隆嗣、山田洋、佐藤暢哉、高田昌彦、松本正幸(2015) “嫌な出来事を避ける”ための神経基盤:外側手綱核と前部帯状皮質の役割 生体の科学 66(1):24-28.

学会発表
川合隆嗣、山田洋、佐藤暢哉、高田昌彦、松本正幸 マカクザル前部帯状皮質と外側手綱核における行動切替えと報酬履歴の神経表現(2014年8月8日) 第8回Motor Control研究会(つくば).

Takashi Kawai, Hiroshi Yamada, Nobuya Sato, Masahiko Takada, Masayuki Matsumoto The lateral habenula and anterior cingulate cortex in primates differentially represent past negative outcome and subsequent behavioral shift(2014年9月11日) 第37回日本神経科学大会(横浜).

Takashi Kawai, Hiroshi Yamada, Nobuya Sato, Masahiko Takada, Masayuki Matsumoto Representation of past negative outcome and subsequent behavioral shift in the primate lateral habenula and anterior cingulate cortex(2014年11月16日) 44th annual meeting of Society for Neuroscience(Washington DC).

Takashi Kawai, Hiroshi Yamada, Nobuya Sato, Masahiko Takada, Masayuki Matsumoto Past outcome monitoring and subsequent behavioral adjustment in the primate lateral habenula and anterior cingulate cortex during a reversal learning task(2014年12月6日) VMT2014”Vision, Memory, Thought: how cognition emerges from neural network”(東京).

川合隆嗣、山田洋、佐藤暢哉、高田昌彦、松本正幸 前部帯状皮質と外側手綱核における報酬履歴と行動切替えの神経表現(2015年1月10日) 行動システム脳科学の新展開(岡崎).
認知機能と行動制御における外側手綱核の役割

松本 正幸 , 川合 隆嗣, 佐藤 暢哉

外側手綱核と前部帯状皮質は罰に関連した神経シグナルを伝達する脳領域である。昨年度から引き続き、それぞれのシグナルが脳内の学習プロセスに果たす役割を検討するため、マカクザル(ニホンザルとアカゲザル)を用いた電気生理学的研究を実施した。まず、二頭のサルに逆転学習課題を訓練した。この課題では、サルに二つの選択肢を呈示し、一方を選ぶと50%の確率で報酬が得られるが、もう一方を選択しても報酬は得られない。報酬が得られる選択肢は数十試行の間固定され、その後、明示的なインストラクション無しに入れ換わる。サルは、一方を選んで報酬が得られない試行が続いたとき、もう一方に選択を切り替える必要がある。課題遂行中のサルの外側手綱核と前部帯状皮質から神経活動を記録したところ、両方の脳領域で報酬が得られなかったときに活動を上昇させる神経細胞が多数見つかった。特に、前部帯状皮質の神経活動は、現在だけではなく、過去に報酬が得られなかった情報も保持しており、サルの将来の選択行動の調節に深く関わっていた。一方、外側手綱核では選択行動に関連した神経活動は見られなかったが、前部帯状皮質よりも早いタイミングで神経活動が上昇していた。以上の結果から、まず外側手綱核で無報酬が検出され、その後、前部帯状皮質でサルの選択行動が決定されると示唆される。2頭のサルから十分なデータを得ることができたので、現在、論文投稿の準備を進めている。


H26-A6
代:清水 貴美子
協:深田 吉孝
協:中辻 英里香
霊長類における概日時計と脳高次機能との連関
霊長類における概日時計と脳高次機能との連関

清水 貴美子 , 深田 吉孝, 中辻 英里香

 我々はこれまで、齧歯類を用いて海馬依存性の長期記憶形成効率の概日変動を見出し、SCOPという分子が概日時計と記憶を結びつける鍵因子である可能性を示す結果を得てきた。本研究では、ヒトにより近い脳構造・回路を持つサルを用いて、SCOPを中心とした概日時計と記憶との関係を明らかにする。
 ニホンザル6頭を用いて、苦い水と普通の水をそれぞれ飲み口の色が異なるボトルにいれ、水の味と飲み口の色との連合学習を行う。さらに、記憶効率の時刻依存性を検討する。記憶測定の前段階として、水の味と飲み口の色が連合する事をサルに覚えさせるための前学習(学習/テストに用いるものとは別の目印)を1日1回3日間、同じ時刻におこなった。前学習の次に、学習とその24時間後に記憶テストをおこなう。記憶テストでは普通の水を入れた2つのボトルに学習時と同じ飲み口の色を用いる。どちらのボトルを選ぶかをビデオ観察し、記憶できているかの判断をおこなう。この方法において、時刻による記憶の変化が見られたが、1時刻につき2頭のデータしか取れていないため、更に例数を増やす予定である。各時刻6頭の記憶テストデータが揃い次第、SCOPshRNA発現レンチウイルスをもちいた海馬特異的なSCOPの発現抑制により、記憶の時刻依存性に対するSCOP の影響を検討する。



H26-A7
代:岸本 健
協:安藤 寿康
協:多々良 成紀
協:山田 信宏
協:小西 克也
二卵性ふたごチンパンジーの行動発達に関する比較認知発達研究

論文
Kishimoto, T., Ando, J., Tatara, S., Yamada, N., Konishi, K., Kimura, N., Fukumori, A. & Tomonaga, M. (2014) Alloparenting for chimpanzee twins. Scientific reports 4(6306). 謝辞あり
二卵性ふたごチンパンジーの行動発達に関する比較認知発達研究

岸本 健 , 安藤 寿康, 多々良 成紀, 山田 信宏, 小西 克也

高知県立のいち動物公園のチンパンジー集団では,2009年に1組の二卵性の雌雄の双子が誕生し,母親による養育が現在まで継続している。チンパンジーでは母親の自然哺育によって双子が育った例はほとんどなく,母親独りで双子を養育することは困難であると考えられてきた。このため,のいち動物公園では,母親以外のメンバーも双子を世話している可能性があった。この可能性を検討するために,この双子とその母親,父親,非血縁者(すべて成体のメス)の9人を現在まで,それぞれ個体追跡法で観察しつづけている。得られたデータを解析した結果,母親以外の非血縁者が,双子を背中に乗せて移動するなどの世話行動を行っていたことが確認された。この成果はScientific Report誌に掲載され,また滋賀県立大学において開催された「子育ちと子育ての比較発達文化研究会第1回フォーラム」で披露された。
2014年度に入り,双子は5歳齢となった。非血縁者による双子に対する世話行動の量は大きく減少した一方,双子たちが非血縁者を叩いた際に反撃を受けることが多くなっていることが観察より見てとれた。双子の成長とともに,非血縁者の双子に対する行動に変化が生じていることがうかがえた。



H26-A8
代:橋本 亮太
協:安田 由華
協:山森 英長
ゲノムによる霊長類における脳機能の多様性の解明

論文
Ohi K, Hashimoto R, Ikeda M, Yamamori H, Yasuda Y, Fujimoto M, Umeda-Yano S, Fukunaga M, Fujino H, Watanabe Y, Iwase M, Kazui H, Iwata N, Weinberger DR, Takeda M. (2015) Glutamate Networks Implicate Cognitive Impairments in Schizophrenia; Genome-Wide Association Studies of 52 Cognitive Phenotypes. Schizophrenia Bulletin 41(4):909-18.

Hashimoto R, Ikeda M, Yamashita F, Ohi K, Yamamori H, Yasuda Y, Fujimoto M, Fukunaga M, Nemoto K, Takahashi T, Ochigi M, Onitsuka T, Yamasue H, Matsuo K, Iidaka T, Iwata N, Suzuki M, Takeda M, Kasai K, Ozaki N.(2014) Common variants at 1q36 are associated with superior frontal gyrus volume. Translational Psychiatry 4:e472.

Iwata R, Ohi K, Kobayashi Y, Masuda A, Masuda A, Iwama M, Yasuda Y, Yamamori H, Tanaka M, Hashimoto R, Itohara S, Iwasato T.(2014) RacGAP α2-chimaerin function in development adjusts cognitive ability in adulthood. Cell Report 8(5):1257-64.

Nishizawa D, Ohi K, Hashimoto R, Yamamori H, Yasuda Y, Fujimoto M, Umeda-Yano S, Takeda M, Ikeda K. (2014) Association between genetic polymorphism rs2952768, close to the METTL21A and CREB1 genes, and intellectual ability in healthy subjects. Journal of Addiction Research & Therapy 5(2):1000178.

Yasuda Y, Hashimoto R, Ohi K, Yamamori H, Fujimoto M, Umeda-Yano S, Fujino H, Horiguchi M, Takeda M, Ichinose H. (2014) A functional polymorphism of the GTP cyclohydrolase I gene predicts attention performance. Neurosci Lett 566(2014):46?49.

Toriumi K, Kondo M, Nagai T, Hashimoto R, Ohi K, Song Z, Tanaka J, Mouri A, Koseki T, Yamamori H, Furukawa-Hibi Y, Mamiya T, Fukushima T, Takeda M, Nitta A, Yamada K, Nabeshima T.(2014) Deletion of SHATI/NAT8L increases dopamine D1 receptor on the cell surface in the nucleus accumbens, accelerating methamphetamine dependence. Int J Neuropsychopharmacol, 17:443-453.

ゲノムによる霊長類における脳機能の多様性の解明

橋本 亮太 , 安田 由華, 山森 英長

 統合失調症、うつ病、自閉スペクトラム症などの精神神経疾患は、その原因や病態が不明である症候群であり、未だ十分な治療法が確立しておらず、病態を解明し創薬のためのモデル系を確立することが求められている。そこで、ヒトにおける脳病態ゲノム多型の発現をサルにおいて検索し、サルを用いたヒトの精神神経疾患のモデル系を作成する。
サルにおけるモデル系を創出するために必須な精神疾患のゲノム研究について、認知機能や脳神経画像などの中間表現型解析や新規の原因変異を同定するトリオ解析を行った。ゲノム研究により遺伝子が同定されるとその遺伝子改変をサルにおいて行うことができ、今まで困難であった精神疾患の動物モデルを作成することが出来ると考えられる。
中間表現型解析としては、52の認知機能表現型の全ゲノム関連解析(GWAS)を行い、グルタミン酸ネットワークや免疫系のネットワークが関与していることを示し、上前頭回皮質体積の全ゲノム関連解析(GWAS)を行い、転写因子であるEIF4G3が関連していることを見出した。さらに、前頭葉機能に関わるCOMT遺伝子のサルにおける新規機能多型を発見し、種間による頻度の違いを見出した。
今後は、ヒトの精神疾患遺伝子異常をサル脳に導入し、トランスレーショナルに研究を進めていく予定である。



H26-A10
代:桃井 保子
協:花田 信弘
協:小川 匠
協:野村 義明
協:今井 奨
協:岡本 公彰
協:井川 知子
協:齋藤 渉
協:宮之原 真由
協:菅原 豊太郎
チンパンジーの口腔内状態の調査:う蝕・歯の摩耗・歯周炎・噛み合わせの評価を中心に

論文

学会発表
岡本公彰,今井奬,花田信弘 新ミュータンスレンサ球菌Streptococcus troglodytae TKU31の全遺伝子解析( 2014.9.25-27) 第56回歯科基礎医学会学術大会( 福岡国際会議場).

関連サイト
鶴見大学歯学部 探索歯学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/basic/343

鶴見大学歯学部 クラウンブリッジ補綴学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/clinic/285

鶴見大学歯学部 口腔微生物学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/basic/337

鶴見大学歯学部 保存修復学講座 講座案内 http://dent.tsurumi-u.ac.jp/guide/course/clinic/270
チンパンジーの口腔内状態の調査:う蝕・歯の摩耗・歯周炎・噛み合わせの評価を中心に

桃井 保子 , 花田 信弘, 小川 匠, 野村 義明, 今井 奨, 岡本 公彰, 井川 知子, 齋藤 渉, 宮之原 真由 , 菅原 豊太郎

う蝕は人類が農耕を始め、糖および炭水化物の摂取により人類が新たに起こした疾患とも考えられ、その起源を推定することは重要と思われる (Gibbons,A., Science 2013)。我々は、チンパンジー口腔より新菌種を見つけ、Streptococcus troglodytaeと命名した (2013, IJSEM)。この菌は系統学的にミュータンスレンサ球菌群の中で、ヒトう蝕病原菌のS. mutansに最も近縁であり、コンゴで捕獲された野生のチンパンジー口腔にも存在することが報告されている (PLoS One. 2013)。平成26年度には、病原遺伝子グルコシルトランスフェラーゼ (GTF) を含む、この細菌の全遺伝子解析が終了し、第56回歯科基礎医学会学術大会で報告した。更に、チンパンジー口腔細菌叢解析の結果、オオコウモリから分離された菌 (Streptococcus dentirousetii) も存在することを論文に発表した (Microbiol. Immunol. 2013)。次世代シーケンサーを用いるピロシーケンシング法により口腔細菌叢解析を解析した結果、う蝕、歯周疾患と関連する細菌が検出されたにも拘わらず、口腔内診査で比較的健全であることが判明し、今後の検討課題と考えられる。                 
また、診査により所内1個体 (33y, ♀)の上顎右側中切歯に外傷による歯の破折に起因した歯髄炎を認めたため、ヒト歯科治療と同様の手技で根管治療 (歯の根の治療)を行った。



H26-A11
代:田中 真樹
協:國松 淳
協:植松 明子
協:松山 圭
協:鈴木 智貴
小脳失調症の病態解析と霊長類モデルの開発

論文
Matsushima, A. & Tanaka, M.(2014) Different neuronal computations of spatial working memory for multiple locations within versus across visual hemifields. J. Neurosci. 34:5621-5626..

Matsushima, A. & Tanaka, M.(2014) Differential neuronal representation of spatial attention dependent on relative target locations during multiple object tracking. J. Neurosci. 34:9963-9969.

Yoshida, A. & Tanaka, M.( in press) Two types of neurons in the primate globus pallidus external segment play distinct roles in antisaccade generation. Cereb. Cortex in press.

植松明子、田中真樹(2015) 高次脳機能と小脳 Annual Review神経2015:107-114.

学会発表
田中真樹 Neural mechanisms of temporal monitoring and prediction(2014.12.13) 2014年度包括型脳科学研究推進支援ネットワーク冬のシンポジウム(東京).

田中真樹 計時と予測の神経機構(2014.11.2) 日本神経回路学会オータムスクール(ASCONE)(諏訪市).

伊藤健史、田中真樹 眼球運動における時空間予測の学習(2014. 8. 8) 第8回Motor control研究会(つくば市).

伊藤健史、田中真樹 予測性眼球運動の空間および時間学習(2014.8.30) 日本生理学会北海道地方会(札幌).

Kunimatsu J., Suzuki T & Tanaka M. Anti-saccade signals in the primate cerebellar dentate nucleus.(2014.9.11) 日本神経科学大会(横浜).

Matsuyama K. & Tanaka M. Neuronal correlates of temporal prediction in the primate central thalamus.(2014.9.11) 日本神経科学大会(横浜).

Kunimatsu J., Suzuki T & Tanaka M. Contribution of the cerebellar dentate nucleus to the generation of anti-saccades.(2014.11.15) 北米神経科学学会(ワシントンDC).

Matsuyama K. & Tanaka M. Neurons in the primate central thalamus predicting the timing of periodic stimulus.(2014.11.18) 北米神経科学学会(ワシントンDC).

Matsuyama K. & Tanaka M. Role of the primate thalamus in temporal prediction.(2014.12.6) nternational Symposium “Vision, Memory, Thought” (organized by Yasushi Miyashita)(東京).

伊藤健史、田中真樹 Spatiotemporal adaptation of predictive saccades in monkeys.(2015.3.21) 第92回日本生理学会(神戸).

植松明子、田中真樹 Effects of electrical microstimulation to the primate cerebellar dentate nucleus on the detection of stimulus omission in the missing oddball paradigm.(2015.3.23) 第92回日本生理学会(神戸).
小脳失調症の病態解析と霊長類モデルの開発

田中 真樹 , 國松 淳, 植松 明子, 松山 圭, 鈴木 智貴

小脳外側部と前頭・頭頂連合野との強い解剖学的結合が明らかにされており、運動を伴わない高次脳機能への小脳の関与が示唆されている。実際、脳機能画像や神経心理学研究によって、これを支持する結果が報告されている。本共同研究では、ウイルスベクターを用いて小脳半月小葉に遺伝子導入を行うことで小脳による高次脳機能の制御機構を具体的に探るとともに、小脳変性症のモデル動物を作製してその病態生理を明らかにすることを目指している。H26年度は霊長研でウイルスベクターの開発を進めるとともに、北大で行動課題の開発と訓練をおこなった。軌道予測課題では、一定速度で動く光点が遮蔽物の後ろから再出現する場所とタイミングを眼球運動で答えさせた。アンチサッカード課題では、事前に与えられたルールに従って視標と同側または反対側に眼球運動を行わせた。いずれの課題でも小脳外側核に課題に関連したニューロン活動が認められ、これらの課題を用いて小脳機能の評価ができることを確認した。今後は随時申請による霊長研共同利用・共同研究や、H25年度から続けている民間助成による共同研究を通じて、霊長研の共同研究者が開発したウイルスベクターによる遺伝子導入を行う。


H26-A12
代:南部 篤
協:畑中 伸彦
協:知見 聡美
協:纐纈 大輔
協:金子 将也
大脳―小脳―基底核連関の構築に関する神経解剖学的研究

学会発表
知見聡美、高田昌彦、南部篤 パーキンソン病モデルサルにおける大脳皮質-大脳基底核情報伝達異常(2014.8.21) 日本大脳基底核研究会(青森).
大脳―小脳―基底核連関の構築に関する神経解剖学的研究

南部 篤 , 畑中 伸彦, 知見 聡美, 纐纈 大輔, 金子 将也

 小脳および大脳基底核からの出力が、どの領域の視床に対して、どのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とし、覚醒下のサルにおいて、小脳の出力部である小脳核(CN)と大脳基底核の出力部である淡蒼球内節(GPi)に電気刺激を加えた際の、視床-大脳皮質投射ニューロンの応答様式を解析した。
 視床の外側腹側核(VL)、後外側腹側核(VPL)から単一ニューロン活動を記録した。大脳皮質運動野の電気刺激に対する逆行性応答によって視床-大脳皮質投射ニューロンを同定し、CNおよびGPiの電気刺激に対する応答を調べた。大脳皮質に投射する視床ニューロンの多くは、数Hzから10 Hz 程度の低頻度の自発発火を示した。CNの単発刺激は、興奮とそれに続く抑制という2相性の応答を惹起した。また、50-100 Hzの連続刺激を加えると、各刺激パルスに対応する興奮と抑制が繰り返し観察された。一方、GPiの単発刺激は、単相性の抑制、あるいは抑制とそれに続く弱い興奮という2相性の応答を惹起した。また、50 z-100 Hzの連続刺激を加えると、刺激期間中に強い興奮が生じる例が多く観察された。GPi-視床投射は、GABA作動性投射であることから、抑制はGABAによるもの、それに続く興奮はリバウンドによるものと考えられる。また、CN刺激に応じるニューロンは視床VL/VPLの中でより後方に、GPi刺激に応じるニューロンはより前方に位置し、両者の重なりは殆どなかった。



H26-A13
代:小林 和人
協:加藤 成樹
協:伊原 寛一郎
霊長類に特異的なイムノトキシン神経路標的法の開発

論文
Kato, S., Kobayashi, K., and Kobayashi, K.(2014) Improved transduction efficiency of a lentiviral vector for neuron-specific retrograde gene transfer by optimizing the junction of fusion envelope glycoprotein. J. Neurosci. Methods 227:151-158.

学会発表
加藤成樹、小林憲太、小林和人 神経細胞特異的な逆行性遺伝子導入を示すレンチウイルスベクターにおける融合糖タンパク質ジャンクションの最適化(2014年9月11日) 第37回日本神経科学大会(横浜).

Kobayashi, K., Kato, S., and Kobayashi, K. Improvement of gene transduction efficiency for neuron-specific retrograde gene transfer lentiviral vector with a novel fusion envelope glycoprotein. (November 18, 2014) 44th Annual Meeting of Society for Neuroscience(Washington DC).
霊長類に特異的なイムノトキシン神経路標的法の開発

小林 和人 , 加藤 成樹, 伊原 寛一郎

霊長類の高次脳機能の基盤となる脳内メカニズムの解明とゲノム科学との融合のために、複雑な神経回路における情報処理とその調節の機構の理解が必要である。我々は、これまでに、高田教授の研究グループと共同し、高頻度な逆行性遺伝子導入を示すウイルスベクター(HiRet/NeuRetベクター)を用いて特定の神経路を切除する遺伝子操作技術を開発した。この神経路標的法では、ヒトインターロイキン-2受容体αサブユニット(hIL-2Rα)遺伝子を発現するNeuRetベクターを脳に注入することにより、そこへ入力する神経路にhIL-2Rα遺伝子を発現させ、その後特定脳領域にhIL-2Rαに対して選択的に作用する組換え体イムノトキシンを投与することによって、目的の神経路の選択的除去を誘導する(Inoue et al., 2012)。しかし、このイムノトキシンはサルIL-2Rαに交差反応する可能性があり、標的細胞への選択性を高めるために、サルIL-2Rαに反応せず、マウスIL-2Rα(mIL-2Rα)に選択的に作用する新たなイムノトキシン(anti-mCD25-PE38)の開発を試みた。mIL-2Rαを用いて免疫化したラットより調製された3種類の抗体(3C7, 2E4, PC61)について、ハイブリドーマから得た遺伝子配列に基づきVHとVL領域を単一ペプチドとして連結し、緑膿菌体外毒素の膜貫通・触媒ドメインに融合したイムノトキシンを発大腸菌で発現させ、精製し、イムノトキシンの性能をin vitroの結合実験により評価した。しかし、これらのタンパク質のmIL-2Rαに対する結合親和性が従来のイムノトキシンに比較して高くないことが判明した。したがって、今後は、VHとVL領域をさらに改変し、新たなイムノトキシン分子を開発する必要がある。他のモノクローナル抗体を入手し、この領域について別の配列を利用する計画である。また、マカクザル脳内おける各種融合糖タンパク質(FuG-B2, FuG-C, FuG-E型)のウイルスベクター導入効率を比較するために、それぞれのベクターをマカクザルの線条体に注入した。今後、各経路への導入の頻度を組織学的に解析する予定である。また、マーモセット脳内での導入効率を調べるための同様の実験を計画した。これについても、今後、注入実験を進める計画である。


H26-A14
代:伊村 知子
チンパンジーにおける質感認知に関する比較認知科学研究
チンパンジーにおける質感認知に関する比較認知科学研究

伊村 知子

色覚は、熟した果実や若葉を見分けるために有利だと考えられてきたが、ヒトは野菜や果物の画像から鮮度を判断する際に、輝度分布の偏り(標準偏差、歪度)などの統計情報も利用する。しかしながら、輝度分布がヒト以外の霊長類の食物の鮮度知覚に及ぼす効果については検討されていない。そこで、本研究では、キャベツの葉の表面が劣化していく様子を撮影した1時間後から32時間後までの画像を対提示し、チンパンジー3個体を対象に鮮度弁別課題をおこなった。その結果、チンパンジーは、1,2,3,5,8,時間後の画像の全ての組み合わせで、カラー条件、モノクロ条件ともに鮮度の高いキャベツを選択することができた。さらに、新奇なキャベツ、ホウレンソウ、イチゴの1時間後と32時間後の画像を6種類ずつ用いた鮮度弁別課題をおこない、輝度の統計情報(平均、標準偏差、歪度、尖度)と成績の相関を解析したところ、3個体中2個体で、輝度分布の平均、歪度と課題成績の間にそれぞれ有意な相関が見られた。以上の結果は、ヒトの鮮度判断の結果とも一致するものであり、ヒト以外の霊長類においても輝度分布の統計情報に基づく食物の鮮度知覚が可能であることが示された。


H26-A15
代:Hsiu-hui Su
協:Fok Hoi Ting
The genetic profile of Taiwanese macaque groups
The genetic profile of Taiwanese macaque groups

Hsiu-hui Su , Hoi Ting Fok

This study was aimed to investigate the genetic structure of an isolated population of Taiwanese macaques located at the mountain range in central Taiwan, in order to examine how human activities impact the gene flow. The HVR I of mtDNA was sequenced and analyzed from fecal samples of social group members as well as out-side group males collected at this site. The haplotypes (650 bp) of 3 neighboring groups (F1, F2 and F3 groups) at a highly provisioned trail were different from each other by 11, 42 and 38 bp of substitutions, respectively. However, F1 group may be the group that was original at the trail when the provisioning had not occurred. We found that the F1 haplotype was 0-3 bp different from haplotypes of other social groups inhabited in the same region. F2 and F3 groups could move to this area due to human provisioning activity, or be translocated to this area. Six adult male samples collected at the highly provisioned trail were successfully sequenced on the HVRI. Four males carried the same haplotypes carried by 2 of the 3 neighboring groups at this trail, among which 2 males transferred to neighboring groups and the other two may make a short distance dispersal in the same region. The other two males that carried different haplotypes may disperse from other regions that need to be verified in the future. The preliminary results suggested that the genetic structure of this isolated population of Taiwanese macaques may be highly impacted by human activities.
Keywords: mtDNA, provisioning, male dispersal, Macaca cyclopis



H26-A16
代:平松 千尋
協:山下 友子
協:上田 和夫
協:中島 祥好
協:嶋田 容子
霊長類における音声コミュニケーションの進化および発達過程の研究

論文
杉野強(2015) 霊長類における音声の多変量解析 九州大学芸術工学部音響設計学科卒業研究:1-26. 謝辞本研究は、京都大学霊長類研究所との共同利用・共同研究(課題番号:2014-A-16)において、日本モンキーセンターとの連携研究『番号:2014004』として行なわれました 。
霊長類における音声コミュニケーションの進化および発達過程の研究

平松 千尋 , 山下 友子, 上田 和夫, 中島 祥好, 嶋田 容子

音声コミュニケーションの進化および発達の理解に貢献することを目的として音響分析の種間比較に着手した。ヒトは複雑な音声を連続的に発することができる。これには、喉頭下降現象による声道形状の変化および、喉頭での発声(音源)と声道での調音(フィルタ)を独立に制御できるようになったことが関連すると考えられている。そこで、まずは声道での調音に着目して分析することにした。霊長類研究所のチンパンジー、日本モンキーセンターとの連携研究によりテナガザル類3種から音声を録音した。その後、微細に変化する音源信号をケプストラム分析により取り除き、帯域フィルタを用いて各フィルタにおけるパワー変化を変量とし因子分析を行った。ヒト成人および幼児の発声から得られた因子構造と比較した結果、ヒト以外の霊長類から得た因子構造は様々となり、成人の因子構造とは異なることが明らかとなった。さらに、パワー変化の相関から得られた類似度より多次元尺度構成法を用いて各音声間の距離を可視化したところ、系統や発達段階を反映していると見られる配置となった。今後、さらに多くの種の様々な発達段階から音声を記録し、詳しく比較していく予定である。


H26-A17
代:植木 孝俊
協:尾内 康臣
協:間賀田 泰寛
協:小川 美香子
協:岡戸 晴生
成体脳神経新生のin vivo動態解析技術の創出
成体脳神経新生のin vivo動態解析技術の創出

植木 孝俊 , 尾内 康臣, 間賀田 泰寛, 小川 美香子, 岡戸 晴生

 本研究では、最近、大鬱病等の精神疾患の早期診断・治療のための治療標的と目されている神経幹細胞の脳内動態を、マカクザルでポジトロン断層法(PET)を用いリアルタイムに描出し、成体脳神経新生を定量解析することができるin vivo評価系を創出することをねらいとした。
 ここでは初めに、神経幹細胞中間径線維nestinのエンハンサー・プロモーターにて中性アミノ酸トランスポーターと、その共役因子の遺伝子を、神経幹細胞特異的に発現するレンチウィルスを調製した。それを成獣ラット海馬歯状回に感染させることにより、PETトレーサー O-18F-fluorometyltyrosine ([18F]FMT)を神経幹細胞に集積させ、成体脳神経新生動態を、PETを用いin vivoで画像化した。哺乳動物脳で内因する神経幹細胞をin vivoで画像化する技術は、これまでに類例がなく、旧来は、死後脳組織にて免疫組織学的染色による形態学的解析を行うのみであった。次に、本研究では、マウスにて強制水泳による大鬱病病態モデルを作製した後、当該マウスの海馬歯状回にレンチウィルスを感染させ、PETで神経幹細胞障害を定量的に評価した。その結果、抑鬱症状を呈するマウスにて神経幹細胞の著明な減少が観察された。一方で、抗鬱薬Prozacは、大鬱病病態モデルマウスにて成体脳神経新生障害を回復させ、これまでに報告された通り、神経幹細胞障害が大鬱病の病態生理に与ることが改めて示唆された。



H26-A18
代:岡本 早苗
協:Robin M. Bernstein
協:Rob Knight
協:Carlito Lebrilla
チンパンジー母乳における生物活性因子と子供の成長との関係性

論文

関連サイト
岡本の大学内でのページ http://www.maastrichtuniversity.nl/web/Profiel/s.barth.htm

研究協力者代表のRobin Bernsteinのページ http://www.colorado.edu/anthropology/people/bios/bernstein.html
チンパンジー母乳における生物活性因子と子供の成長との関係性

岡本-Barth 早苗 , Robin M. Bernstein, Rob Knight, Carlito Lebrilla

本研究は現在も継続中であり、27年度も引き続き、共同利用研究として継続希望が採択されている。本研究では2000年から数年に渡り思考言語分野において採取、冷凍保存されていたチンパンジーの母乳サンプルを調べることにより、ヒトとチンパンジーにおける代謝および免疫に関係する因子の比較をおこなう。またチンパンジーの授乳期間が長いことから、母乳中の因子と乳児の発達との関係性を調べる。さらに同様に採取された母子の糞尿サンプルもあわせて調べることにより、乳児の発達に伴った母子の生理学的変化を総合的に検討する。26年度は、母乳サンプル輸出について、ワシントン条約に基づいたCITES(Convention on International Trade in Endangered Species)手続きのためチンパンジー3個体各々の書類準備をおこなったが、個体履歴等の証明書類の完備が困難で手続きが長期化することが予想された。そのため、コロラド大学の研究協力者が来日して所内の実験室において、分析をおこなう方針に変更した。しかし、当初予定していた分析試薬の国内入手が困難であることが判明した。そこで、27年度にはハーバード大学の研究協力者を新たに追加して、異なる分析キットを用いて母乳の分析を開始することを予定している。


H26-A19
代:南本 敬史
遺伝子発現の生体内可視化と脳機能制御技術の確立

学会発表
Yuji Nagai, Erika Kikuchi, Walter Lerchner, Ken-ichi Inoue, Arata Oh-Nishi, Hiroyuki Kaneko, Yoko Kato, Yukiko Hori, Bin Ji, Katsushi Kumata, Ming-Rong Zhang, Ichio Aoki, Tetsuya Suhara, Masahiko Takada, Makoto Higuchi, Barry J Richmond, Takafumi Minamimoto In vivo PET imaging of the behaviorally active designer receptor in macaques (2014.9.13) 日本神経科学学会(横浜).

Yuji Nagai, Erika Kikuchi, Walter Lerchner, Ken-ichi Inoue, Arata Oh-Nishi, Hiroyuki Kaneko, Yoko Kato, Yukiko Hori, Bin Ji, Katsushi Kumata, Ming-Rong Zhang, Ichio Aoki, Tetsuya Suhara, Masahiko Takada, Makoto Higuchi, Barry J Richmond, Takafumi Minamimoto In vivo PET imaging of the behaviorally active designer receptor in macaque monkeys (2014.11.17) Society for Neuroscience(Washington DC).

Yuji Nagai, Erika Kikuchi, Walter Lerchner, Ken-ichi Inoue, Arata Oh-Nishi, Hiroyuki Kaneko, Yoko Kato, Yukiko Hori, Bin Ji, Katsushi Kumata, Ming-Rong Zhang, Ichio Aoki, Tetsuya Suhara, Masahiko Takada, Makoto Higuchi, Barry J Richmond, Takafumi Minamimoto In vivo imaging of designer receptor that enables to modify reward-related behavior in monkeys(2014.12.13) 包括脳ネットワーク冬のシンポジウム(東京医科歯科大学).
遺伝子発現の生体内可視化と脳機能制御技術の確立

南本 敬史

DREADD(Designer Receptor Exclusively Activated by Designer Drug)は化学遺伝学的手法のひとつであり,変異型ムスカリン受容体が選択的リガンドclozapine-n-oxide(CNO)により活性化されることで,発現している神経細胞を抑制(あるいは興奮)させる.我々はこれまでにDREADD受容体の発現を生体で可視化する方法として,選択的放射性PETリガンド[11C]CLZを見出し,DREADDの生体PETイメージング法を開発した.この基礎技術と所内対応者である高田らが有する経路選択的な遺伝子導入法などウイルスベクター開発技術を組み合わせることで,より汎用な脳内遺伝子発現の経時的かつ非侵襲的なモニタリング技術を開発し,霊長類における特定神経回路の薬物による操作技術を確立することを目的とした.
平成26年度は,サル線条体に局所注入したレンチウィルスベクターによるhM4Di-DREADDの発現の位置と発現レベルを生きたまま追跡可能となるPETイメージング法を確立した.また同イメージング法により,発現したDREADDを占有するのに十分なCNO投与量を推定した.実際に推定したCNO投与により,抑制性DREADD(hM4Di)を両側の内側尾状核に発現させた2頭のマカクサルの報酬獲得行動に障害を引き起すことが繰り返し確認できた.これらの結果は,開発したイメージング法とDREADDを用いた脳機能制御法がサル脳機能研究において非常に有効であることを示す.



H26-A20
代:村井 千寿子
霊長類における時空間的な対象関係の理解に関する比較研究

学会発表
Chizuko Murai, Michiko Miyazaki, Masaki Tomonaga, Hiroyuki Okada, Mutsumi Imai The origin of a uniquely human thinking bias: The symmetry inference bias in human infants and chimpanzees (July 3-5) Proceedings of the 20th international conference on infant studies(Berlin).

Chizuko Murai, Michiko Miyazaki, Masaki Tomonaga, Hiroyuki Okada, Mutsumi Imai THE ORIGIN OF A HUMAN-UNIQUE INFERENCE BIAS: THE SYMMETRY INFERENCE BIAS IN HUMAN INFANTS AND CHIMPANZEES(August11-16) The 25 th Congress of the International Primatological Society(Vietnum).

村井千寿子・宮崎美智子・友永雅己・岡田浩之・今井むつみ 認知バイアスの進化的・認知的基盤に関する検討(1/31-2/1) 第59回プリマーテス研究会(犬山).
霊長類における時空間的な対象関係の理解に関する比較研究

村井 千寿子

ヒトの推論における認知バイアスのひとつである対称性バイアスについて検討した。対称性バイアスとは「AならばB」を経験すると、おのずと逆方向の、論理的には正しくない「BならばA」の関係を予測してしまう傾向のことで、ヒト以外の動物では報告がまれである。昨年度までの研究では、動物先行研究の手続き的問題を考慮した選好注視課題によりチンパンジーとヒト乳児を直接比較した。その結果、当該バイアスはチンパンジーには見られずヒト乳児だけに特異的に見られた。今年度の研究では、この種特異性の可能性についての更なる検討のため、選好注視課題よりも主体の能動的反応を評価できる選択的な予測注視を指標とした課題の開発を行った。具体的には、「対象Aが提示された場合、複数の刺激の中から対象Bが連動して動く」ことを経験させ、結果が提示されるよりも早い対象Bへの予測注視を学習成立の証拠として視線計測装置によりオンラインで評価した。学習成立した後の対称性テストでは、「対象Bが出現したならば、どの対象が連動して動くのか」という選択問題を与え、ここでも正答刺激(この場合、対象A)への注視を計測し、対称性バイアスに基づく反応が起きるかをみた。現在、ヒト乳児でのパイロット実験から課題を作成し終え、今後はヒト乳児とチンパンジー双方での実験実施を予定している。


H26-A21
代:福田 真嗣
協:福田 紀子
協:村上 慎之介
協:伊藤 優太郎
協:石井 千晴
協:谷垣 龍哉
脳機能におよぼす腸内細菌叢の影響
脳機能におよぼす腸内細菌叢の影響

福田 真嗣 , 福田 紀子, 村上 慎之介, 伊藤 優太郎, 石井 千晴, 谷垣 龍哉

ヒトを含む動物の腸内には、数百種類以上で100兆個もの腸内細菌が生息しており、宿主腸管と緊密に相互作用することで、宿主の生体応答に様々な影響を及ぼしていることが知られている。近年マウスを用いた研究で、腸内細菌叢が脳の海馬や扁桃体における脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生量に大きな変動を与え、その結果マウスの行動にも変化が現れることが報告された(Heijtz, et al., PNAS, 108:3047, 2011)。これは迷走神経を介した脳腸相関に起因するものであることが示唆されているため、腸内細菌叢の組成が宿主の脳機能、特に情動反応や記憶力に影響することが示唆される。しかしながら、これら情動反応や記憶力と腸内細菌叢との関係を調べるには、マウスなどのげっ歯類では限界があると考えられたことから、本研究では小型霊長類であるコモンマーモセットに着目し、高次脳機能、特に情動反応や記憶力と腸内細菌叢との関係について解析を行うことを目的とした。平成26年度は、腸内細菌叢を除去したコモンマーモセットモデルを構築するための条件検討として、4種類の抗生物質を混合した抗生物質溶液を作成し、コモンマーモセットにカテーテルを用いて3日間連続胃内投与を実施することで、腸内細菌叢が除去できることを確認した。今後は、本モデルマーモセットを用いて高次脳機能評価を行う予定である。


H26-A22
代:牛谷 智一
協:後藤 和宏
チンパンジーの視覚・注意の発達変化に関する比較認知研究
チンパンジーの視覚・注意の発達変化に関する比較認知研究

牛谷 智一 , 後藤 和宏

本研究は,複数要素の「まとまり」を認識する視覚情報処理過程をチンパンジーとヒトとで比較し,その共通点と相違点から視覚の進化的要因を解明するべく実施した。今年度は,2つの異なるパターンを弁別するときに,それらのパターンとは無関係の文脈を付加することで弁別が促進される効果(パターン優位性効果)の検討に重点を置き,チンパンジー3個体とヒト成人20名を被験者として,「まとまり」を認識する際に生じる創発的特徴について実験的検討を行った。文脈なし条件では顔の一部(目や口)だけを見本刺激として呈示し,文脈あり条件ではそれらの部分を部分とは別の個体の顔に配置したものを見本刺激として呈示し,比較刺激の中から見本刺激と同じものを選択することを訓練した。顔刺激には,チンパンジーとヒトの顔,それぞれ3種類を用い,それらの刺激は正立,倒立の2方向で呈示された。3個体中2個体のチンパンジーは,文脈なし条件よりも文脈あり条件で正答率が低く,この傾向は,顔の呈示方向(正立,倒立)やチンパンジーの顔,ヒトの顔に関わらず一貫していた。さらに,ヒト成人の結果もチンパンジー2個体の結果と一致していた。これらの結果から,ヒトとチンパンジーでは共通して,目や口といった特徴の弁別に対して顔文脈がパターン優位性効果を持たないことが明らかになった。


H26-A23
代:MUKESH CHALISE
Study on phylogeography of macaques and langurs in Nepal
Study on phylogeography of macaques and langurs in Nepal

Mukesh Chalise

We planned to conduct a population genetic assessment on Nepalese wildlife. We continue ecological observations and have collected fecal samples of non-human primates in Nepal for the phylogeographical study. The aim of this program is to increase geographical information to evaluate ecological and evolutionary status of rhesus and Assamese macaques and Himalayan langurs from DNA analysis. In this year’s program, we increased samples of primates from Inner Tarai, Mid-hills and upper mountain regions of Nepal. We have gone through some analysis. However, still we want to cover the wider areas of Nepal where primates are observed by local collaborator.
We had used the facilities and deposited samples in a laboratory of KUPRI to do PCR, DNA sequencing and computer analysis, then could establish a protocol of the DNA analysis which is applicable to the primate populations living in Himalayan region. Using the sampling method, samples were collected from different localities in Nepal. We also set up a small facility in Kathmandu to extract DNA from collected fecal specimens in 2014. We have compared mtDNA variations of macaques and langurs in Nepal. Parts of mtDNA (16S rRNA, cyt b, non-coding region) were subjected to the sequencing by a standard procedure and phylogeographical relationship was assessed by molecular phylogenetic and population genetic analyses. Our preliminary data suggested evolutionary proximity of local populations of Himalayan langurs in the sequence comparisons. This kind of close relationship was also observed in the populations of Assamese macaques in Nepal and Bhutan.
Taxonomic status of South Asian primates is controversial for both macaques and langurs. Many of previous studies used zoo samples but available information are increasing in recent for wild populations. We hope that we can continue cooperative research to provide reliable information to test evolutionary hypotheses and to measure biological diversity of macaques and langurs in Asia. This program on Himalayan primates can be linked to corresponding programs of the planned research program which covers macaques and langurs in India and Sri Lanka.

Keywords: macaques (M. assamensis; M. mulatta), langurs (Semnopithecus entellus), Nepal.



H26-A24
代:Charmalie AD Nahallage
Study of ecology and phylogeography of primates in Sri Lanka
Study of ecology and phylogeography of primates in Sri Lanka

Charmalie AD Nahallage

The evolution and phylogeny of endemic primates in Sri Lanka are not well understood due to a paucity of comparative studies of their ecology and genetics. The long-term goals of my study are to elucidate aspects of the ecology and phylogeny of the toque macaque and two species of langurs, the gray langur and the purple-face langur in Sri Lanka.
Towards this goal we collected 50 fecal samples from toque macaques (N= 11), purple face langurs (N= 3) and grey langurs (N= 36) from 14 populations across Sri Lanka. The samples were preserved in lyses buffer in the field. Samples were transported back to the laboratory at the University of Sri Jayawardenepura and the fecal DNA was extracted at the University of Sri Jayawardenepura. The successfully amplified PCR product was sequenced back in Japan at PRI.
Further analyses are currently underway. We hope evaluate their relation with haplotypes in the bonnet macaque to test evolutionary relationship between sinica-group macaques in Sri Lanka and India. We will observe the condition of boundary between the two haplogroups to assess evolutionary change of habitat distribution. For langurs, four subspecies are described in the purple-faced langur but the gray langur is monotypic. MtDNA diversity within and between those taxa will be at first compared using fecal DNA samples. Molecular phylogenetic and phylogeographic relationships among observed haplotypes will be analyzed to test the convergence hypothesis.
Field observations are currently being conducted, and based on the obtained results from our molecular DNA analysis we will intensify our search for the possibility of introgression or recent hybridization in candidate habitats targeted from the forthcoming results.



H26-A25
代:Ceridwen Boel
"Integrated studies on development and aging of cognition, physiology and morphology in Primates"
Integrated studies on development and aging of cognition, physiology and morphology in Primates

Ceridwen Boel

155個体の交雑マカク個体に関して、頭蓋・下顎骨と歯牙に見られる非計測的特徴(発生学的微細異常に注目して)の肉眼とCTによる観察、および接触型3次元座標計測装置を用いて頭蓋骨で66の下顎骨で21のランドマーク座標値を取得し、計量的特徴の解析を行った。CT観察によって、骨内にある歯根や形成中の歯の観察から、歯の形成異常を観察した。この中でもっとも意義ある発見は、交雑個体メスで上顎犬歯の2分歯根の頻度が高いことである。この特徴は、これまで低頻度でニホンザルのメスに見出されている。これに加えて骨と歯の非計測的特徴では、前上顎骨(premaxilla)に過剰縫合が出現すること、インターコニュール(interconulusとinterconulid)の出現、および下顎第3大臼歯の咬頭数の変異が認められた。一方で、他の発生学的異常の頻度が低下することも見出され、ヘテローシス(雑種強勢)の影響も推測された。頭蓋・下顎の計量的な解析の結果から、形状特徴指標で交雑個体は明瞭なクラスターをなし、二つの親種の間にあるが、一方の種にいくらか偏る傾向が見られた。このような形態異常の出現や形状特徴が、これまでに得られている遺伝子解析による交雑度とどう関連するかについて、検討を行う。


H26-B1
代:山下 俊英
協:中川 浩
協:Naig Chenais
サル脊髄損傷モデルを用いた軸索再生阻害因子とその抗体による神経回路修復に関する研究

学会発表
中川浩、二宮太平、高田昌彦、山下俊英 Role of RGMa inhibition in recovery of motor functions and axonal regeneration after spinal cord injury in macaques(2014.9.11) Neuroscience2014.

 中川浩、二宮太平、山下俊英、高田昌彦 サル脊髄損傷後の機能回復におけるRGMaの役割(2014.9.26) CREST成果報告会(犬山).

 中川浩、二宮太平、山下俊英、高田昌彦 サル脊髄損傷モデルにおける皮質脊髄路線維投射の再編様式(2015.2.22) CREST「脳神経回路の形成・動作原理の解明と制御技術の創出」研究領域 平成26年度領域ミーティング(東京).
サル脊髄損傷モデルを用いた軸索再生阻害因子とその抗体による神経回路修復に関する研究

山下 俊英 , 中川 浩 , Naig Chenais

これまで、霊長類モデルを用いて、軸索再生阻害因子と脊髄損傷後の神経回路網再形成による運動機能再建に焦点をあて研究を行ってきた。その結果、阻害因子のひとつであるRGMaが脊髄損傷後損傷周囲部に増加することを突き止め、その責任細胞のひとつにミクログリアを同定することができた。さらに、RGMaの作用を阻害する薬物を用いて脊髄損傷後の機能回復過程および神経回路網形成の有無を検討した。その結果、RGMa作用を阻害した群(RGMa群)は、コントロール群(薬物投与なし)に比べ、運動機能の回復が顕著にみられた。神経回路網形成については、大脳皮質運動野と脊髄を直接連絡する神経路である皮質脊髄路を順行性トレーサーでラベルして解析を行った。順行性トレーサーでラベルされた皮質脊髄路の軸索枝の一部は、自然回復に伴って脊髄損傷部を越え、直接手や指の筋肉を制御する運動ニューロンへ結合していることが分かった。このような神経軸索枝は、RGMa群においてより多く観察された。次に、脊髄損傷部を越えた神経軸索枝が直接運動機能の回復に寄与しているか否かを、電気生理学手法と神経活動阻害実験を併用して確認した。その結果、直接運動機能の回復に寄与している可能性を示す結果を得ることができた。これらの結果は、今後の脊髄損傷治療に役立つ知見であると考える。


H26-B2
代:鍔本 武久
現生ニホンタヌキの歯および骨格における種内変異

論文
Takehisa Tsubamoto(2015) Rare anomalous dental morphologies found in raccoon dog (Nyctereutes procyonoides) and their implication to dental morphology of fossil mammals Journal of the Geological Society of Japan 121(6):185-189. 謝辞あり

学会発表
鍔本武久 タヌキの歯に見られる異常形態とそれが化石哺乳類の歯牙形態の解釈に与える影響(2015年6月27日) 日本古生物学会2015年年会(茨城県つくば市).

Takehisa Tsubamoto Dental anomalies found in living raccoon dog (Nyctereutes procyonoides) and their implication to dental morphology of Eocene mammals(2017年8月26日) Society of Vertebrate Paleontology(Calgary, Alberta, Canada).

関連サイト
doi http://dx.doi.org/10.5575/geosoc.2015.0015
現生ニホンタヌキの歯および骨格における種内変異

鍔本 武久

化石の研究に応用するために,霊長類研究所に所蔵されている現生ニホンタヌキの歯および骨格標本の形態変異を調べたところ,一部の標本の歯に特異な形態が見られた.同様の特異な形態が化石偶蹄類でも見られており,化石哺乳類の形態変異と種の同定に関して,今回のタヌキの歯の形態のデータは重要な情報を与えることがわかった.タヌキのP3は通常二根であるが,KUPRIZ 239の上顎P3は三根である.また,タヌキのP4は通常,近遠心方向に伸びた裂肉歯状をしているが,KUPRIZ 141の上顎P4は近遠心方向にあまり伸びておらず,また頬舌方向にふくれており,三角形の咬合面観をしている.始新世偶蹄類のEntelodon属の上顎P3は通常タヌキと同様に二根であるが,Entelodon viensisの唯一の上顎P3の標本は,KUPRIZ 239と同様の三根の形態をしている.また,Entelodon属の下顎p4は通常,近遠心方向に伸びて頬舌方向に薄い形態をしているが,Entelodon trofimoviの唯一の下顎p4の標本は,KUPRIZ 141の上顎P4に類似した,近遠心方向に短く,頬舌方向にふくれた,三角形の咬合面観をしている.上記のEntelodon 属の特異な形態は,属内でその種を他の種と区別する特徴(diagnosis)の一つとなっている.したがって,今回検討した霊長類研究所の現生ニホンタヌキ標本は,上記のEntelodon属内の種のdiagnosisの一部が単なる異常形態である可能性を示している.


H26-B3
代:佐藤 毅
協:榎木 祐一郎
協:林 直樹
腱および骨組織の効率的再生に向けた基礎研究
腱および骨組織の効率的再生に向けた基礎研究

佐藤 毅 , 榎木 祐一郎, 林 直樹

咀嚼筋腱腱膜過形成症は、側頭筋の腱や咬筋の腱膜などが異常に肥厚し開口制限を呈する疾患であり、2005年に口腔外科学会で認められた新しい疾患である。本疾患の病態は、顎関節や顎骨には異常がなく両側咀嚼筋の腱または腱膜の過形成であると考えられているが、発症要因は不明である。治療法は過形成した腱・腱膜の切除である。我々は、本疾患に発現する特異的なタンパク質を同定すること、腱組織の特性を解析することを目的として本研究を立案した。サルのアキレス腱、咬筋腱膜および側頭筋腱より腱組織を採取し、一部を組織学的解析およびプロテオーム解析に供し、残りについて腱細胞の単離を行い咀嚼筋腱の特性を調べる。
今回は2009年5月5日生のニホンザル(♂)のアキレス腱、咬筋腱膜および側頭筋腱を採取し、1㎤の組織をマイナス80℃で保存、1㎤の組織をホルマリンにて固定した。また、残りの組織から腱細胞を単離してT25フラスコにて培養した。



H26-B4
代:森光 由樹
野生ニホンザル絶滅危惧孤立個体群のMHC遺伝子の解析
野生ニホンザル絶滅危惧孤立個体群のMHC遺伝子の解析

森光 由樹

兵庫県に生息しているニホンザルの地域個体群は、それぞれに分布が孤立しており遺伝的多様性の消失及び絶滅が危惧されている。地域個体群の保全にむけて、早急な遺伝的評価・診断が必要である。MHC(主要組織適合抗原複合体)の遺伝子領域内には免疫機構を司る遺伝子や進化を反映した情報が保存されている。個体の病気に関わる、免疫や抗病性を支配する機能遺伝子が集まる領域と考えられている。しかし、野外に生息しているニホンザル集団、特に絶滅が危惧されている孤立個体群のMHCの研究は進んでいない。そこで兵庫県北部に生息している絶滅孤立個体群(美方群、7個体)兵庫県中部に生息している個体群(大河内群、7個体、船越山群5個体)と島嶼隔離個体群(淡路島個体群7個体)の血液サンプルを用いてMHCクラスⅠ領域にあるマイクロサテライトDNA 4座位(MHC座位)を分析した。フラグメント分析で、個体の遺伝子型を判定した。ヘテロ接合率(H)を求め多様性の違いを比較した。へテロ接合率は、平均値では,淡路島個体群は,0.334であったが、絶滅危惧個体群の美方群では、0.818、大河内群では、0.719、船越群では、0.738であった。本州に生息している群れよりも島嶼隔離された淡路島個体群の方が低い多様性を示した。今後は、他のゲノム領域にある座位(non-MHC座位)を対象に、分析を進め、野生ニホンザル個体群の遺伝的多様性変化と絶滅リスクの関係について分析を行う予定である。


H26-B5
代:東 超
霊長類の各種の組織の加齢変化

論文
Yoshiyuki Tohno & Setsuko Tohno & Takao Oishi & Takeshi Minami & Pongsak Khanpetch & Cho Azuma & Ranida Quiggins(2014) Age-Related Decrease of the Phosphorus Contentin the Ligamentum Capitis Femoris of Monkeys Biol Trace Elem Res 161:78-81. 謝辞Yes

学会発表
Cho Azuma,Takao Oishi,Yoshiyuki Tohno,Setsuko Tohno,Takeshi Minami,Mayumi Nishi Different Accumulation of Elements in the Tracheal and Bronchial Cartilage of Monkey(2014年3月27日~29日) 第119回日本解剖学会総会・全国学術集会(栃木).
霊長類の各種の組織の加齢変化

東 超

加齢に伴う泌尿器系の内臓のカルシウム、燐、マグネシウム、硫黄、鉄、亜鉛の蓄積の特徴を明らかにするため、サルの腎臓の元素含量の加齢変化を調べた。用いたサルは28頭、年齢は新生児から30歳である。サルより腎臓を乾燥重量100mg程度採取し、水洗後乾燥して、硝酸と過塩素酸を加えて、加熱して灰化し、高周波プラズマ発光分析装置(ICPS-7510、島津製)で元素含量を測定し、次のような結果が得られた。
①サルの腎臓においてはカルシウム、燐、マグネシウム、硫黄、鉄、亜鉛含量は加齢とともに減少傾向にあった。特に燐含量が加齢とともに有意な減少が認められた(P=0.0173)。
②サルの腎臓のカルシウム含量はすべて2mg/g以下で、石灰化しにくい内臓であることが分かった。
③サルの腎臓においては燐とマグネシウム含量の間に有意な相関が認められ、燐、マグネシウムが一定の比率でサルの腎臓に蓄積されることを示している。



H26-B6
代:守屋 敬子
協:徳野 博信
新世界ザルに保存された鋤鼻器の機能を探る

学会発表
守屋敬子、早川卓志、鈴木彦有、田中いく子、若林嘉浩、二階堂雅人、山岸公子、徳野博信 コモンマーモセット鋤鼻器の形態的特徴と鋤鼻受容体(V1R)の分子進化(2015年7月29日) 第38回日本神経科学大会(神戸国際会議場).
新世界ザルに保存された鋤鼻器の機能を探る

守屋 敬子 , 徳野 博信

鋤鼻器は、鼻腔の嗅粘膜とは独立して存在する化学感覚器官である。多くの哺乳類の鋤鼻器は感覚器として機能しているが、霊長類においては、色覚の発達した旧世界ザルや類人猿では痕跡化している。 一方、新世界ザルには鋤鼻器が存在することが知られている。しかし、鋤鼻器の感覚受容体である鋤鼻受容体の数は少なく、鋤鼻器の機能もよくわかっていない。本研究では、比較的固定標本の入手可能なコモンマーモセットを用いて、鋤鼻器の形態学的解析を行った。コモンマーモセットの鋤鼻器は、鼻腔と口腔を結ぶ切歯管に開口していた。ヒトの切歯管の口腔側は生後発達に伴って閉塞するのに対し、コモンマーモセットは成体でも開口していた。また、鋤鼻器には成熟鋤鼻ニューロンが確認され、切歯管経由でなんらかの化学物質を受容していると推察された。 更にin situ ハイブリダイゼーションにて鋤鼻受容体の発現を解析したところ、機能的に保存されている鋤鼻受容体7つのうち、5つは顕著な発現が見られたものの、残り2つはわずかに発現細胞が存在するだけであった。今後はこれら鋤鼻受容体の進化的解析を行う予定である。


H26-B7
代:河野 礼子
狭鼻猿類の大臼歯形状の比較分析

論文
Zhang Y, Kono RT, Wang W, Harrison T, Takai M, Ciochon RL, Jin C (2015) Evolutionary trend in dental size in Gigantopithecus blacki revisited. Journal of Human Evolution 83:91-100. 謝辞あり

Zhang Y, Jin C, Kono RT, Harrison T, Wang W.(2016) A fourth mandible and associated dental remains of Gigantopithecus blacki from the Early Pleistocene Yanliang Cave, Fusui, Guangxi, South China. Historical Biology 28:95-104.

学会発表
河野礼子・張穎奇・金昌柱・高井正成・王?・Terry Harrison ギガントピテクス臼歯サイズの時代変化(2014年11月1日) 第68回日本人類学会大会(浜松).

Kono RT, Zhang Y, Jin C, Takai M, Wang W, Harrison T Size trend of the Gigantopithecus blacki tooth fossils from the Pleistocene cave deposits in southern China.(2014年10月23日) International Symposium on Paleoanthropology in Commemoration of the 85th Anniversary of the Discovery of the First Skull of Peking Man(Beijing,China).

Kono RT, Zhang Y, Jin C, Takai M, Wang W, Harrison T Size trend of the large hominoid tooth fossils from the Pleistocene cave deposits in southern China.(2014年8月15日) International Primatological Society XXV Congress(Hanoi, Vietnam).

狭鼻猿類の大臼歯形状の比較分析

河野 礼子

本研究は狭鼻猿類のさまざまな種類について、大臼歯の大きさや形状を分析することにより、化石資料の系統的位置づけや、機能的特徴を検討することを目指して実施してきた。本年は中国産の化石霊長類資料を中心にさまざまな分析を進めた。中国産のマカク類とコロブス類の遊離歯化石の区別を行うために、中国産化石サル類の大臼歯資料、および現生のマカク類・コロブス類の大臼歯資料について、CTスキャンを実施し、データの分析を進めた。またギガントピテクスについては、大臼歯の大きさの時代変化についての研究をとりまとめた。従来から知られていた資料に加えて、最近になって発見された12のギガントピテクス化石の産出遺跡とそこから出土した化石資料について、地質年代を通じたサイズ変化を検討したところ、後の時代になるほどギガントピテクス大臼歯はサイズが大きくなるとの先行研究の結果が追認された。さらに広西チワン族自治区の岩亮洞から出土した4例目のギガントピテクス下顎骨標本、および遊離歯資料についても、記載論文を投稿した。

Zhang Y, Kono RT, Wang W, Harrison T, Takai M, Ciochon RL, Jin C (in press) Evolutionary trend in dental size in Gigantopithecus blacki revisited. JHE.



H26-B8
代:中村 浩幸
1次視覚野をバイバスする頭頂連合野への視覚入力の解明
1次視覚野をバイバスする頭頂連合野への視覚入力の解明

中村 浩幸

霊長類の外側膝状体は、2層の大細胞層と4層の小細胞層、これらの層の間のkoniocellular layerから成る。大および小細胞層から1次視覚野(V1)を経由して視覚連合野に至る神経回路は詳しく調べられているが、koniocellular layerの神経回路は不明な点が多い。本研究では、koniocellular layerからV1を経由せず頭頂葉へ至る神経回路の存在を明らかにする目的で、1頭のアカゲザルのV3A野にペントバルビタール麻酔下で数種類の神経トレーサーを微量注入した。9日後に、ペントバルビタール深麻酔下でリン酸バッファーと4%パラフォルムアルデヒドを経心的に灌流し脳を固定した。V3A野にビオチン化デキストランアミンを限局注入すると、同側のkoniocellular layerに逆行性に標識された神経細胞が見出された。これらの神経細胞は、外側膝状体の内側約4分の1の部位で、1層と2層、3層と4層、4層と5層の間に位置しており、吻尾1mm以内に分布していた。この結果は、外側膝状体koniocellular layerからV3A野へ直接投射が存在することを示している。


H26-B9
代:稲用 博史
協:関 幸夫
数学モデルを用いた霊長類大腿骨形態の解析

学会発表
稲用博史 濱田穣 平崎鋭矢 他 Wolffの法則の数学的表現 :ヒトとチンパンジーの力学的条件と大腿骨形状の比較(2014年11月21日) 第41回日本臨床バイオメカニクス学会(奈良市).
数学モデルを用いた霊長類大腿骨形態の解析

稲用 博史 , 関 幸夫

研究の目的は、ヒトとヒト以外の霊長類の骨形状の違いと行動様式の違いを比較し、
骨形状の力学的条件を求める事にある。
Wolffの法則に従えば、骨は力学的ストレス(荷重)を受け、力学的に最適な形状になっている。この法則を最適化理論と考え数式で表現し有限要素法を用いて数値的に解を求めると骨に対する力学的条件を推定することが出来る。
ヒトとチンパンジーの大腿骨の形状を比較すると、ヒトは直立二足歩行しヒトには、Bicondylar Angle と呼ばれる大腿骨の傾きがある。Tardieuによれば、ヒトのBicondylar Angle は10度、チンパンジーのBicondylar Angle は1~2度である。
平成25年度の共同利用・共同研究では、以下の結果を得ていた。
ヒトの骨盤の形状は内臓を支えるために短く幅広くなった。同時に、ヒトは直立することにより大臀筋を発達させた。発達した大臀筋は腸脛靭帯の緊張を高め、チンパンジーと比べて、より外方から大転子を強く圧迫するようになった。
ヒトとチンパンジーの骨形状を求めるために、初期形状と力学的条件を設定し有限要素法を用いて計算し形状を求めた。これにより、Bicondylar Angle は大臀筋力が大きいことにより形成されることが推定された。
平成26年度の共同利用・共同研究では、大腿骨遠位部の形状に注目した。大殿筋によって緊張を高められた腸脛靭帯は大転子を強く圧迫する。大転子に加えられた圧迫力は、大腿骨骨幹部を通じて内顆に伝わる。このようにして、内顆において、大腿四頭筋内側広筋による圧迫力が生じることにより大腿骨遠位部における傾きを作ることが証明された。
他方、チンパンジーにおいては大臀筋による腸頚靭帯の緊張は無く、従って腸頚靭帯による大転子への圧迫もない。同時に内顆における大腿四頭筋内側広筋による圧迫も生じない。この事により、チンパンジーの大腿骨ではBicondylar Angle は小さくなる事が分かる。



H26-B10
代:和田 直己
協:松尾 大貴
哺乳類の寛骨と脊柱(椎骨)の形態と移動運動
哺乳類の寛骨と脊柱(椎骨)の形態と移動運動

和田 直己 , 松尾 大貴

後肢は特に前方(頭の方向)への運動における主な推進力の発生部位である。後肢と体中心のある体幹を貫く脊柱との力のやり取りが寛骨の役割である。寛骨の研究は外形形状に限定されており、断面形状に関する研究が極めて少なく、その機能についてはよく理解されていない。本研究課題では、さまざまな動物種の寛骨の外形および断面形状と動物種、動物のサイズ、ロコモーションとの関係を明らかにすることである。検体は京都大学霊長類研究所、国立科学博物館、大阪市自然史博物館、北九州命の旅博物館、関東以西の動物園、水族館から提供された。骨盤の形状解析にはCT、またμCT撮影によるデータを用いる。これまでは250種を超える標本のCT撮影を行った。このデータを用いて現在3次元構築の作業を行っている。現時点で35種の動物の寛骨の3次元構築を行った。外形, 断面の解析は継続中である。これまでの解析結果により、坐骨長、腸骨長は体重と強い相関を示し、腸骨長と坐骨長の比は動物種によって異なることが明らかとなった。さらに解析を継続し、寛骨の形態と動物の生態の関係を明らかにする。


H26-B11
代:風張 喜子
行動の時間配分バランスと分派行動の起こりやすさの関係

学会発表
風張喜子 野生ニホンザルにおける行動の時間配分と分派行動の関係(2015/7/18-20) 第31回日本霊長類学会大会(京都市).
行動の時間配分バランスと分派行動の起こりやすさの関係

風張 喜子

ニホンザルは、基本的にはメンバーがひとまとまりで暮らす凝集性の高い群れを作る。ただし、季節や群れによっては頻繁に分派行動が見られることもある。これまで、ニホンザルの群れのメンバーは、採食活動中に採食時間を削減しながら互いの動きを確認し、群れ生活を維持していることが示唆されている。群れがひとまとまりで行動するのを難しくする一因として、採食行動と互いの動きを把握する行動との時間配分上のトレードオフの関係に着目した。食物条件によって採食に偏った時間配分が行われれば、群れのまとまりを保つのが難しく、分派が起こりやすくなるだろう。このことを検証するために、宮城県金華山島に生息する野生ニホンザルを対象として、行動観察を行った。調査は、食物条件の異なるさまざまな時期(春・初夏・夏・秋・冬)に計5回、2週間ずつ行った。食物を探し歩くのに多くの時間を取られる夏には、確認行動の頻度が低い傾向がうかがわれ、他の時期よりも頻繁な分派行動が観察された。引き続き、行動観察を継続し、採食行動と互いの動きの確認行動のトレードオフの関係や確認行動と分派の起こりやすさの関係ついて詳細な分析を行う予定である。


H26-B12
代:浅田 有美
野生ニホンザルの絶滅危惧個体群における遺伝的交流の解明

学会発表
浅田有美 野生ニホンザルの絶滅危惧個体群における遺伝的交流の解明(2014年9月5日) 哺乳類学会(京都大学).
野生ニホンザルの絶滅危惧個体群における遺伝的交流の解明

浅田 有美

本研究は,絶滅が危惧されている兵庫県の野生ニホンザル地域個体群間(美方群,城崎群,大河内群)で,遺伝的交流の有無を明らかにすることを目的に行った. まず,オスに特有なY染色体遺伝子のマイクロサテライト3座位について変異を特定し,その組み合わせにより個体のYハプロタイプを決定した.そして,地域個体群ごとのYハプロタイプの出現頻度により交流の有無を検討し,ハプロタイプリッチネスにより,個体群間の遺伝的交流の程度を調べた. また,個体群の特徴を反映した結果を得るために,ミトコンドリアDNA分析により分析個体を出生群により分類し解析を行った.その結果,3地域個体群間でYハプロタイプの出現頻度に差は見られず,遺伝的交流が行われていることが示唆された.また,遺伝的交流の程度は,孤立の程度が大きい下北や,連続分布している三重県の個体群と比較した結果,美方群と城崎群では程度が小さく,大河内群は程度が大きいことが示唆された.以上の結果から,現在のところ遺伝的劣化による個体群の消滅の可能性は低く,危機的な状況ではないと考えられる.しかし,交流の程度が小さい美方群や城崎群では,今後遺伝的多様性の低下が進む可能性もあるため,遺伝情報についての継続したモニタリングが必要だと思われる.


H26-B13
代:日下部 裕子
霊長類における甘味受容体の膜移行機序の解析
霊長類における甘味受容体の膜移行機序の解析

日下部 裕子

味覚は、他の末梢感覚と同様に、刺激に対する感受性が進化により変化することが知られている。例えば齧歯類は一部の人工甘味料を甘味と認識できないことが知られている。我々は、齧歯類とヒトでは、甘味の感受性が異なるばかりでなく、甘味受容体を構成する分子の1つであるT1r3の細胞膜上に移動する仕組み(膜移行性)が齧歯類とヒトでは異なることを最近見出した。そこで、進化過程と甘味受容体の膜移行性の関係を明らかにすることを目的に、人工甘味料に対する感受性が進化過程に伴い異なることが知られている霊長類とヒトのT1r3の膜移行性を比較した。具体的には、チンパンジー、アカゲザル、マーモセットのT1r3のN端に目印となるタグを付加した変異体を作製して培養細胞に導入し、タグ対する抗体染色を行うことで細胞膜上に移行したT1r3を検出した。その結果、チンパンジー、アカゲザル、マーモセットのT1r3は、いずれもヒトT1r3と同様、単独では細胞膜に移動できないことが明らかになった。また、これらのT1r3はヒトT1r2と共存させた場合は膜移行できることが示された。よって、霊長類のT1r3の膜移行機序は、甘味感受性の進化とは関係性が低いことが示唆された。


図:ヒトおよび霊長類T1r3の膜移行能の評価


H26-B14
代:Zhang Peng
協:Wu Chengfeng
協:Xia Xunxiang
DNA analysis of wild rhesus macaques in Southern China

論文
Peng Zhang, Kunio Watanabe( 2014) Intra-species Variation in dominance style of Macaca fuscata Primates 55:69-79. 謝辞あり

Peng Zhang(2014) Do non-human primates avoid inbreeding Acta Anthropologica Sinica:In press. 謝辞あり
DNA analysis of wild rhesus macaques in Southern China

Peng Zhang , Chengfeng Wu, Xia Xunxiang

From September 1st to 20th, I visited Japan and had cooperative researches with Dr. Imai Hiroo, my counterpart at Primate Research Institute of Kyoto University. During my stay at Dr. Imai's lab, I learned the basic techniques to extract DNA from feces and amplify bar-cording regions (mtDNA) by PCR, and to estimate ratio of plant species taken by rhesus macaques in Hainan Province of China. As the results, I improved my method on DNA analysis and successfully extracted genomic DNA from feces samples of wild rhesus macaques. We also tested possible method to determine kin relationship of the study group using microsatellite markers from DNA from feces and fur samplings. I published one book in Chinese and two papers based on the funding supports. From August 11-17 of 2014, I attended the 25th congress of the International Primatological Society at Vietnam and the Bogor Symposium for Asian Primate Research in Indonesia. From 28 June-3 July, 2014, we Invited Prof. Michael A Huffman to visit my primate lab of Sun Yat-sen university, China.


H26-B15
代:外丸 祐介
協:信清 麻子
協:畠山 照彦
協:吉岡 みゆき
一卵性多子ニホンザルの作製試験

学会発表
外丸祐介、信清麻子、畠山照彦、吉岡みゆき、印藤頼子、兼子明久高江洲昇、柳川洋二郎、永野昌志、岡本宗裕 ニホンザルにおける体外培養系受精卵の作製(2014年5月15-17日) 日本実験動物学会(札幌).

信清麻子、印藤頼子、兼子明久、石上暁代、山中淳史、畠山照彦、吉岡みゆき、岡本宗裕、外丸祐介 ニホンザルにおける卵巣刺激処置の効果について(2014年5月15-17日) 日本実験動物技術者協会(札幌).

外丸祐介、信清麻子、畠山照彦、吉岡みゆき、神田暁史、印藤頼子、兼子明久、永野昌志、柳川洋二郎、高江洲昇、岡本宗裕 ニホンザル凍結保存精子の体外受精能(2014年10月23-24日) Cryopreservation Conference 2014(岡崎).

印藤頼子、外丸祐介、信清麻子、畠山照彦、吉岡みゆき、兼子明久、岡本宗裕 ニホンザル卵子のガラス化保存(2014年10月23-24日) Cryopreservation Conference 2014(岡崎).

今井啓雄、岡本宗裕、印藤頼子、外丸祐介、信清麻子、神田暁史、伊佐正、永野昌志、柳川洋二郎、高江洲昇、北島龍之介、今村公紀、平井啓久 希少霊長類遺伝資源の保存方法の確立(2014年10月23-24日) Cryopreservation Conference 2014(岡崎).

外丸祐介 霊長類における体外受精卵作製に関わる生殖工学技術について(2015年1月22-23日) 日本マーモセット研究会(犬山).

外丸祐介 霊長類の体外培養系卵子について(2014年8月26-27日) 京都大学霊長類研究所研究会「霊長類への展開に向けた幹細胞・生殖細胞・エピゲノム研究」(犬山).
一卵性多子ニホンザルの作製試験

外丸 祐介 , 信清 麻子, 畠山 照彦, 吉岡 みゆき

遺伝的に均一な霊長類個体を得る為に一卵性多子ニホンザルの作製を目指し、関連する生殖工学技術の検討と受精卵の移植試験を行った。①卵子採取の効率化の為、卵巣刺激処置におけるホルモン投与量を検討し、既報の半量に減じることでよりクオリティの高い卵子が得られる傾向が確認できた。②精子の凍結保存について検討し、保存液としてテストヨークバッファーを用い、融解後に1mM Caffeine および1mM dbcAMPを含むBO液で処理することで、顕微授精等の受精補助を伴わずに体外受精卵を作製できる手法を確立した。また、受精補助処置として体外受精に先立って卵子の透明帯の一部を切開することで、受精率の向上をはかることができた。③ニホンザルの繁殖期に合わせ、体外受精卵について1頭、分割受精卵について2頭の受胚雌に移植試験を実施したが、いずれも妊娠を確認するには至らなかった。今後は、関連技術の高度化に取り組みながら、移植試験を継続する予定である。


H26-B16
代:和田 一雄
志賀高原横湯川流域のニホンザル生態の長期変化の評価

論文
Tsuji Y., Ito T.Y., Wada K., and Watanabe K. Mamm. Rev.(2015) Spatial patterns in the diet of the Japanese macaque, Macaca fuscata, and their environmental determinants Mammal Review in press.

学会発表
Tsuji Y., Ito T., Wada K., Watanabe K. Adaptation to a snowy environment: biogeographical patterns in the diet of the Japanese macaque, Macaca fuscata, and their environmental determinants. (2015年7月 (予定)) Vth International Wildlife Management Congress(札幌).
志賀高原横湯川流域のニホンザル生態の長期変化の評価

和田 一雄

  第一の目的である横湯川流域の群れ数についてであるが、今回の調査では、最下流域に餌付けされたA2群と最上流域のC群が発見された。1960-70年代には下流から上流に向けてA・B・Cの3群がいた。B群は1967年にB1・B2群に分裂し、B1群は1971年に焼額山を越えて雑魚川に移動してB2群が残った。1963年に餌付けされたA群は1979年にA1・A2群に分裂して、A2群はA1とB2の間に遊動域を形成した。和田は1990年代初期まで調査をしたがそれ以降、研究は行われなかった。
 今回、横湯川下流域のリンゴ園を猿害に関して聞き込みを行ったが、リンゴ園は1980年代後半に 猿害を受け、1995年に山ノ内町でサル28頭駆除した。おそらく1990年代にB2, 続いてA2群が里近くに下りてきて、駆除されたと推測される。C群は横湯川最上流域で、志賀高原スキー場のリフトの1つ付近に居付いていたことから見て、おそらくスキー客がサルに餌を与えた結果だろうと思われた。
 春の若葉、秋の果実類、冬の樹皮・冬芽を採集のためにそれぞれ5月、11月、3月に現地調査を行ったが、春と冬には目標の食物をほぼ採集できたが、果実類はほとんど見つけられず、凶作だった。現在、採集した食物類の栄養分析を行っている。
 1960―90年代の3群の遊動と土地利用様式の関係について、コドラート法による横湯川流域の植生資料と、10年に及ぶシードトラップ法による果実生産量の変化の関係から現在分析中である。



H26-B17
代:河村 正二
協:松下 裕香
新世界ザル苦味受容体TAS2Rに対するリガンド感受性多様性の検証

論文

学会発表
今井啓雄、筒井圭、尾頭雅大、櫻井児太摩、鈴木-橋戸南美、早川卓志、Aureli, F.、Schaffner, C. M.、Fedigan, L. M.、河村正二 新世界ザル苦味受容体機能の種間差(2014年7月4-6日) 第30回日本霊長類学会(大阪大学・大阪科学技術センター、吹田市・大阪市).

Tsutsui, K., Otoh, M., Sakurai, K., Suzuki-Hashido, N., Hayakawa, T., Welker, B. J., Aureli, F., Schaffner, C. M., Fedigan, L. M., Kawamura, S. and Imai, H. Functional diversity of bitter taste receptors in new world monkeys(August 11-16, 2014) The 25th Congress of the International Primatological Society (IPS 2014)(Melia Hotel, Hanoi, Vietnam).

Kawamura, S., Tsutsui, K., Otoh, M., Matsushita, Y., Sakurai, K., Suzuki-Hashido, N., Hayakawa, T., Shirasu, M., Melin A. D., Bergstrom M. L., Welker B. J., Schaffner, C. M., Aureli, F., Fedigan, L. M., Touhara, K. and Imai, H. Towards understanding evolutionary diversity of chemical sensors in New World monkeys with polymorphic color vision(August 11-16, 2014) The 25th Congress of the International Primatological Society (IPS 2014)(Melia Hotel, Hanoi, Vietnam).

Tsutsui, K., Otoh, M., Sakurai, K., Suzuki-Hashido, N., Hayakawa, T., Welker, B. J., Aureli, F., Schaffner, C. M., Fedigan, L. M., Kawamura, S. and Imai, H. Interspecific variation of ligand sensitivity and evolution of bitter taste receptors TAS2R1 and TAS2R4 in New World monkeys(September 25-27, 2014) The 52nd Annual Meeting of the Biophysical Society of Japan(Sapporo Convention Center, Sapporo, Japan).

Tsutsui, K., Otoh, M., Sakurai, K., Suzuki-Hashido, N., Hayakawa, T., Welker, B. J., Aureli, F., Schaffner, C. M., Fedigan, L. M., Kawamura, S. and Imai, H. Interspecific variation in ligand sensitivity of G-protein-coupled bitter taste receptors in New World monkeys.(October 5-10, 2014) 16th International Conference on Retinal Proteins(Nagahama Royal Hotel, Nagahama, Japan).

Tsutsui, K., Otoh, M., Sakurai, K., Suzuki-Hashido, N., Hayakawa, T., Welker, B. J., Aureli, F., Schaffner, C. M., Fedigan, L. M., Kawamura, S. and Imai, H. Interspecific variation of ligand sensitivity and evolution of bitter taste receptors TAS2R1 and TAS2R4 in New World monkeys(November 2-3, 2014) 12th International Symposium on Molecular and Neural Mechanisms ofTaste and Olfactory Perception(Kyushu University, Fukuoka, Japan).

筒井圭、尾頭雅大、櫻井児太摩、鈴木-橋戸南美、早川卓志、Welker, B. J., Aureli, F.、Schaffner, C. M.、Fedigan, L. M.、河村正二、今井啓雄 新世界ザルの苦味受容体応答の種間差(2015年1月31日) 第59回プリマーテス研究会(日本モンキーセンター、犬山).

関連サイト
河村正二研究室ホームページ http://www.jinrui.ib.k.u-tokyo.ac.jp/kawamura-home.html
新世界ザル苦味受容体TAS2Rに対するリガンド感受性多様性の検証

河村 正二 , 松下 裕香

苦味受容体(TAS2R)は舌の味蕾に発現し苦味感覚を担っている。含まれる苦味物質の種類や量は食物によって異なるため、TAS2Rの応答特性(どのような苦味物質をどれくらいの感度で受容するか)は動物種間の食性の違いに応じて異なっている可能性が考えられる。しかし、実際にそのような違いが存在するのかはほとんど分かっていない。そこで、近縁な種間でTAS2Rの応答特性が異なっている可能性を検討するため、種間で食性が異なることが知られている新世界ザル(マーモセット、オマキザル、ヨザル、クモザル、ホエザル)のTAS2R1およびTAS2R4を培養細胞に発現させ、様々な苦味物質に対する応答をカルシウムイメージングにより比較した。その結果、TAS2R1に関してはショウノウに対する応答の感受性が、TAS2R4に関してはコルヒチンに対する応答の大きさが種間で異なることが明らかとなった。これらの結果から、新世界ザル種間の食性の違いがTAS2Rの応答特性の違いと関連していることが示唆された。


H26-B18
代:Kim Heui-Soo
協:Eo Jungwoo
協:Hee-Eun Lee
Molecular characterization of HERV-Y family in primates
Molecular characterization of HERV-Y family in primates

Heui-Soo Kim , Jungwoo Eo , Hee-Eun Lee

Endogenous retroviruses (ERVs) inserted into the genome early in primate evolution. Human ERVs (HERVs) occupy about 8% of the human genome. In this study, we identified novel HERV-Y elements among 31 families. The full-length HERV-Y is located on chr8 and chr13 (HERV-Y101, -Y102, and -Y103; Table 1), and clustered with HERV-I,-T,-E, and –R in the pol-based phylogenetic relationship. HERV-Y pol were ubiquitously transcribed in human tissues, and also highly expressed in rhesus monkey. In addition, we observed high expression patterns in tissues from African green moneky and cotton-top tamarin, suggesting biologically important roles of HERV-Y gene products in primates.


H26-B19
代:小島 大輔
協:鳥居 雅樹
霊長類の光感覚システムに関わるタンパク質の解析
霊長類の光感覚システムに関わるタンパク質の解析

小島 大輔 , 鳥居 雅樹

脊椎動物において、視物質とは似て非なる光受容蛋白質(非視覚型オプシン)が数多く同定されている。これまでに私共は、マウスやヒトの非視覚型オプシンOPN5がUV感受性の光受容蛋白質であることを見出し(Kojima et al., 2011)、従来UV光受容能がないとされていた霊長類にも、UV感受性の光シグナル経路が存在することが示唆された。そこで本研究では、OPN5を介した光受容が霊長類においてどのような生理的役割を担うのかを推定するため、霊長類におけるOPN5の発現パターンや分子機能を解析している。本年度は、ニホンザル組織よりクローニングしたOPN5 cDNAの分子機能を調べるため、哺乳類培養細胞系を用いたCaイメージング解析を行った。ニホンザルOPN5 cDNAを強制発現させた培養細胞に11シス型レチナールを添加した後、近紫外光パルス(387 nm)を照射したところ、細胞内Ca++濃度の一過的な上昇が観察された。このニホンザルOPN5 cDNAは、近紫外光受容体をコードすると考えられる。


H26-B20
代:Srichan Bunlungsup
協:Suchinda Malaivijitnond
Genetic diversity of long-tailed macaque Macaca fascicularis and rhesus macaque M. mulatta: mainly focus on their hybridization range

論文
BUNLUNGSUP, S., IMAI, H., HAMADA, Y., GUMERT, M.D., SAN, A.M., MALAIVIJITNOND, S.( 2016) Morphological Characteristics and Genetic Diversity of Burmese Long-TailedMacaques (Macaca fascicularis aurea) American Journal of Primatology 78: 441-455. 謝辞 Acknowledged

学会発表
Bunlungsup S, Imai H, Hamada Y, Krudthong P, Gumert M, Malaivijitnond S. What is different about the Burmese long-tailed macaques?(20 August 2014) Kyoto University and Bogor Agricultural University International Symposium: Diversity and Conservation of Asian Primates(Bogor, Indonesia).

Genetic diversity of long-tailed macaque Macaca fascicularis and rhesus macaque M. mulatta: mainly focus on their hybridization range

Srichan Bunlungsup , Suchinda Malaivijitnond

To determine the hybridization between M. f. fascicularis and M. f. aurea, blood and fecal samples of these two subspecies and the hybrid throughout Thailand and Myanmar in total 16 populations were collected. The species and subspecies of monkeys were first identified in regard to their morphological characteristics. HVSI on D-loop region was amplified to trace the genetic structure in macaque populations. SRY and TSPY genes were analyzed to trace the migration pattern. Then, mtDNA and Y-chromosome trees were constructed with 1000 bootstraps using Neighbor joining method. From our result, we proposed two hypothesized about their migration routes. Firstly, aurea population migrated southward along the Mergui Archipelago towards the southwestern Thailand, probably during the glacial period. After that, some of them may migrate north eastward across the low altitude of Tanasserim Hills towards mainland Thailand and islands on Thai Gulf respectively.


H26-B21
代:佐々木 基樹
霊長類後肢骨格の可動性
霊長類後肢骨格の可動性

佐々木 基樹

ニシローランドゴリラの後肢を、CTスキャナーを用いて非破壊的に解析し、その足根関節と趾の可動域をチンパンジー、ニホンザル、スマトラオランウータンの可動域と比較検討した。まず、第一趾を最大限伸展および屈曲させた状態でCT画像撮影をおこなった。さらに脛骨長軸と足底面が垂直な状態およびその位置から足を可能な限り回外させた状態の2通りの条件において足根関節部の撮影をおこなった。得られたCT断層画像データを三次元立体構築して、足根関節と第一趾の可動状況を観察した。観察した全ての霊長類において足根関節部の顕著な回旋運動が観察された。さらに第一趾の屈曲と伸展に伴う第一中足骨の内転と外転が確認され、オランウータンでその可動域が最も大きく、次いでゴリラ、ニホンザル、チンパンジーの順であった。ゴリラやチンパンジーでは第一中足骨は足の背腹平面で可動しており、 上下斜め方向に可動面を持つ他の2種の可動様式とは異なっていた。ゴリラやチンパンジーは半地上性を示しており、この中足骨の可動様式と可動範囲の違いは地上への行動圏の拡大に伴う霊長類進化の過程における形態適応の一つであるかもしれない。 


H26-B22
代:高田 達之
協:檜垣 彰吾
協:白井 恵美
協:小野 友梨子
"霊長類ES,iPS細胞分化に与える環境化学物質の影響"

論文
Okashita N., Kumaki Y., Ebi K., Nishi M., Okamoto Y., Nakayama M., Hashimoto S., Nakamura, T., Sugasawa K., Kojima K., Takada T., Okano M., and Seki, Y.(2014) PRDM14 promotes active DNA demethylation through the Ten-eleven translocation (TET) mediated base excision repair pathway Development 141:269-280.

学会発表
Takada T., Shimozawa N., Shirai E., Higaki S., Ono Y., Suemori H., Narita K., Takeda S., Ohta Y. Labeling of motile multiple-flagellated cells differentiated from non-human primate ES and iPS cells(15-17 2015) The 18th Takeda Science Foundation Symposium on BioscienceiPS cells for Regenerative medicine, CiRA International Symposium(Osaka).

高田達之 非ヒト霊長類ES,iPS細胞分化におけるTEKTIN1発現細胞の解析(2014 (8/26)) 霊長類への展開に向けた幹細胞・生殖細胞・エピゲノム研究(京都大学霊長類研究所).
霊長類ES,iPS細胞分化に与える環境化学物質の影響

高田 達之 , 檜垣 彰吾, 白井 恵美, 小野 友梨子

 TEKT1発現細胞を詳細に解析するため、TEKT1プロモーター制御下でVenusを発現するカニクイザルES細胞を用いてEB形成を行い、Venus発現を継時的に観察した。その結果、約6週目からEB表面においてVenus発現細胞が出現し、その後時間経過に伴い、Venus発現細胞は集結し、特徴的な管状構造を形成することが確認された。またこの管状構造の表面では活発に運動する多くの繊毛が観察された。さらに電子顕微鏡を用いてこの繊毛断面を観察したところ、運動性繊毛に特徴的な9+2構造を有する微小管が認められた。また細胞形態は円柱状で、細胞内部に多くの分泌顆粒が観察されたことから、上皮性の細胞であると考えられた。すなわちTEKT1発現細胞はその表面に多くの繊毛を有することから、TEKT1は運動性の繊毛を有する細胞のマーカーとして利用可能であることが示された。またこれらの繊毛を繊毛特異的なマーカー(アセチル化チューブリン等)で染色すると精子の鞭毛とは異なる染色パターンを示した。TEKT1はこれまで生殖細胞分化において精子マーカーとして利用されてきたが、必ずしも精子の存在を示差ないことが明らかとなった。


H26-B23
代:井口 基
東京都、埼玉県、山梨県のニホンザル地域個体群の遺伝的な解析
東京都、埼玉県、山梨県のニホンザル地域個体群の遺伝的な解析

井口 基

東京都及び隣接域の埼玉県、山梨県、神奈川県に生息する個体群は、mtDNA解析(Kawamoto et al,2007)により、関東でありながら遺伝子タイプは西日本タイプに近く、最終氷河期の遺存個体群である可能性が予想されている。
これらの個体群は1980年から生息状況調査を実施しており、生息群の内58群を特定している。また、オスの群間移動のデータも蓄積されつつある。だが、いずれも観察に基づくものであり、遺伝学調査についての蓄積はない。
 2014年は共同利用研究により、mtDNAとY染色体に見られる変異からこれらの地域に生息するニホンザルの成立過程及び地域内の遺伝子構成を解明する基盤として東京都、埼玉県、山梨県の生息群から糞試料149検体(2013年も含む)、群れオスと群れ外のオスグループから糞試料14検体を採取した。
試料は特定群ごとにまとめ、mtDNAの塩基配列分析とamelogenin標識遺伝子による性判別の実験をおこない、群れに固有のタイプを特定して、その分布図を作成した。
 この結果、調査地域内のサルは他地域から大きく分化したmtDNAタイプを有すること、地域内においてもmtDNAの多様性が大きいこと、タイプの分布に地理的構造が予想されることが観察されはじめている。また、オスを介した地域間交流についても遺伝子データが蓄積されつつある。
 2015年については、東京都、神奈川県を含めて検体の採取数を増加させて地域内の遺伝子構成を密に解明するとともに、オスの検体を採取してオスを介した地域間交流の実態解明をおこなう。



H26-B24
代:澤野 啓一
霊長類における眼窩骨壁の構造と眼球開眼領域の形態との関連性に関する研究

学会発表
Sawano K1,4,10, Yokoyama T2, Yoshikawa S2, Tanaka T3, Kato T3, Takahashi T1,, Dodo Y5, Suzuki T6, Sawada H7, Hamada Y8, Kawada S9, Hagiwara H4, Inoue T4, Kawahara N2 Morphological studies on the inner orbital wall in the extant Catarrhini including humans. A Comparison of CO, FOS, FOI, FGL, and FSL.(2014年11月2日) The 68th Annual Meeting of the Anthropological Society of Nippon(静岡県浜松市).
霊長類における眼窩骨壁の構造と眼球開眼領域の形態との関連性に関する研究

澤野 啓一

 Fissura orbitalis superior(FOS)は、Homo ではCanalis opticus(CO)の何倍もの大きさが有り、「くの字型」に屈曲している。しかしPongo, Pan, Gorilla では、FOS の横断面形状はFissura と言うよりも、むしろ歪んだ円形もしくは四角形に近い状態であり、Homo とは大いに異なる。 Fissura orbitalis inferior (FOI)は、Homo ではOrbita の外側下方に最大口径を持つ大型水滴状の断面形状によって側頭窩・側頭下窩に開口し、その断面積は個人差が大きいものの、少なくともFOS と同等か、更にそれを上回る。このように相対的に大型のFOI を持つのは、現生Catarrhini ではHomo だけであり、それに準ずるのがHylobatesである。 それに反して、Papio, Mandrillus等では、FOIは非常に狭く小さくて、1〜2 mm程度の細い電線を挿入できる程度である。Macacaの場合にもそ