ヒト科類人猿の比較研究

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アジア・アフリカ学術基盤形成事業

「ヒト科類人猿の環境適応機構の比較研究」

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研究交流の目標

チンパンジー(Pan) 属のチンパンジーとボノボは、系統的にもっともヒトに近い類人猿であり、我々ヒトとともにヒト科を構成する。彼らはアフリカの赤道を中心に、熱帯多雨林か らサバンナウッドランドにいたる多様な環境に生息しており、それぞれの地域で様々な社会構造や道具使用を発達させて食物環境とその年変動・季節変動に対応 している。これらの種の環境適応戦略の進化を地域間の比較を通じて解明することは、類人猿の進化の解明にとどまらず、Pan属との共通祖先から派生してより乾燥した地域で生き残り、そこから世界のあらゆる環境に進出したヒトの進化の出発点を探る上でも、きわめて重要である。

今 西錦司博士に始まって京都大学を中心として発展してきた霊長類学は、類人猿の進化の研究を通してヒトのルーツを探ることをひとつの大きな目標としてきた。 そのため、様々な類人猿種を長期にわたって調査する調査地をアフリカとアジアに多数もち、これが日本の霊長類学の世界に誇れる特色となっている。とくに京 都大学霊長類研究所は、その教員が代表を務めるPan属の長期調査地をギニア共和国のボッソウ、コンゴ民主共和国のワンバ、ウガンダ共 和国のカリンズと3カ所ももつ。これらは赤道沿いに西アフリカ、中央アフリカ、東アフリカの異なる環境をカバーしており、相手国の拠点機関との長年にわた る研究協力を通して様々な研究成果をあげてきている。

この研究交流の目標は、霊長類研究所の教員と相手国拠点機関との研究協力をより強固なものにするだけでなく、3国の拠点機関同士の研究交流も発展させ、Pan属の生態学的・進化学的な研究の世界的な核を形成することにある。このために、霊長類研究所で相手国の若手研究者のトレーニングを行い、各相手国拠点機関でセミナーなどをもって研究交流を深めるほか、2010年には日本で、2011年にはコンゴ民主共和国でPan属に関する国際シンポジウムを開き、その存在感を世界にアピールしていきたい。

 

研究交流計画の概要

@共同研究・研究者交流

霊 長類研究所と相手国拠点機関の間では、コンゴ民主共和国で1973年から、ギニア共和国で1975年から、ウガンダ共和国で1996年から共同研究を行っ てきている。それぞれの国の研究者と共同研究を行うことで、政治情勢の不安定なときでも長期にわたる継続調査が可能で、これまでに大きな研究成果を上げて きた。それぞれの研究は、科研費等個別の研究費によって支えられているが、本計画では、霊長類研究所と相手国拠点機関との研究者の相互訪問を実現すること によって共同研究を円滑に進め、かつ機関間の関係を強化することを目指す。具体的には、日本側研究者が各拠点機関を訪問して研究方法やデータの処理法の指 導を行うとともに、拠点機関の若手研究者を霊長類研究所に招聘し、研究方法等についてのトレーニングを行う。またこれらの交流に基づいて、日本を含めた4 国の研究者で共同研究・比較研究を立案し、科学研究費補助金などを用いて実施する。

Aセミナー等の学術会合

平成21年度には、相手国3ヶ国で、Pan属の研究に関するこれまでの成果の発表と今後の課題に関する議論を行うセミナーを開催する。日本側からは若手研究者を派遣し、相手国機関の若手研究者との交流を深める。

平成22年度には、京都大学が主催者となって、日本で国際霊長類学会の大会が開催される。この学会で、アフリカの東部・中部・西部のPan属の環境適応戦略の比較をテーマとしたシンポジウムを開催する。それぞれの調査地での研究実績を日本側参加研究者と相手機関の研究者が発表することにより、霊長類研究所とアフリカの拠点機関の研究ネットワークのもつ可能性を世界にむけてアピールする。

平 成23年度には、各調査地における3年間の共同研究と、調査地間の比較研究の成果を発表するシンポジウムを、コンゴ民主共和国で開催する。アフリカの研究 者が国の枠を超えて集まる機会は、きわめて限られている。このような場を持つことにより、各機関の間の関係を強め、比較研究の発展の礎を築く。

 

コンゴ民主共和国 1973年から共同研究を開始。生態森林研究センターを拠点として研究をおこなっている。生態森林研究センターは、同国中央部の 熱帯雨林帯の動植物の調査を管轄するとともに、多くの研究者をかかえて独自の研究活動を行っている。この研究センターとは、1973年に同国での研究を始めて以来の協力関係にあり、数多くの共同研究、共著論文の出版、同研究所研究者のトレーニングなどを行っている。

 

ギニア共和国 1975 年から共同研究を開始。科学調査技術局の協力のもと、ボッソウ環境研究所を拠点に研究をおこなっている。 野生チンパンジーのすむボッソウという村に拠点を置き、現地の研究者が常駐するユニークな組織である。ボッソウ環境研究所は、ギニア国内の大学で学ぶ若手 研究者の受け皿となりつつあり、日本人研究者とギニアの研究者が協力して野生生物の生態・保全について研究できる体制を整えている。協力機関の科学調査技 術局は、高等教育省直下の組織で、当該国での調査・研究・教育を直接的に監督する部署にあたる。30年を越える野生チンパンジーの継続調査において、研究 初期から協力関係を維持してきた。

 

ウガンダ共和国 1996 年から共同研究を開始。ムバララ科学技術大学を拠点に、この国最大のマケレレ大学とも協力して研究をおこなっている。 ムバララ科学技術大学は、チンパンジーの調査を行っているカリンズ森林の地元の大学で、同国森林局、カリンズ森林プロジェクト(日本人研究者が設立した NPO)と3者でプロジェクトチームを結成して研究、環境教育などを行っている。協力機関のマケレレ大学は、首都にある大学で、同国最高レベルの教育水準 を誇るほか、植物標本庫など研究のための資料や施設も充実している。これらの大学の教員や学生と過去10年間にわたって共同研究を行い、学位取得のための 研究指導も行っている。

 

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