独立行政法人日本学術振興会 研究拠点形成事業-B.アジア・アフリカ学術基盤形成型-


「ヒト科類人猿の環境適応機構の比較研究」 (2009年~2011年)

「チンパンジー属類人猿の孤立個体群の保全に関する研究」(2012年~2014年)

「類人猿地域個体群の遺伝学・感染症学的絶滅リスクの評価に関する研究」(2015年~2017年)


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[研究交流目標 2015年度-2017年度]

日本の霊長類学は、ヒトのルーツを探ることを目標に50 年以上前から類人猿の野外研究を続けてきた。とくにチンパンジーとボノボの研究では、アフリカにある15 カ所の長期調査地のうち6 カ所を京都大学の教員が中心になって運営しており、研究ばかりでなく保全計画の立案や実行にも大きな責任を負っている。
アフリカ各地に孤立して散在する類人猿の個体群の多くは、20 年後の存続すら危惧される状態にある。絶滅リスクとしては、森林伐採、農地開発、密猟など従来から重大問題とされているもののほか、孤立による遺伝的劣化や人から類人猿への病気の感染が近年大きな関心を集めている。本研究は、これまでの共同研究で培ってきたアフリカ3 国8 研究機関との協力のもと、各研究機関が管轄する地域個体群の遺伝学的・感染症学的絶滅リスクを評価する。また、それらのリスクを回避する対策についての研究を進め、その成果をそれぞれの国の類人猿保全政策に反映しさせる。
本計画は、これまで2期6年間、本経費の支援をいただいて進めてきた。3研究機関との協力で始まった研究交流は8研究機関を結ぶネットワークに拡大した。また、第1 期の総括会議でアフリカ側拠点機関からアフリカ霊長類学会を設立してほしいという要望が出され、第2 期でその実現にむけて研究者交流等を進めた結果、本年12 月にウガンダで開催するシンポジウムにおいて、「アフリカ霊長類研究・保全コンソーシアム」を設立する運びとなった。このコンソーシアムは、日本のリーダーシップのもとで類人猿の研究と保全を進める土台となり、日本とアフリカの若手研究者が共同研究を通して成長するための重要な土俵ともなる。将来的には資金的に自立して運営される予定だが、立ち上がりの3 年間については本経費で研究者の交流と年次総会の開催を支援し、将来にわたる発展にはずみをつけたい。本計画の集大成としてご支援をいただきたい。

[研究交流計画の概要 2015年度-2017年度]

①共同研究
各国のチンパンジーとボノボの地域個体群を対象として、
(1)生息の実態、(2)遺伝的多様性、(3)人獣共通感染症の実態について研究を行う。
(1)については、国際的NGO であるアフリカ野生動物保全基金の協力を得てサイバートラッカーとよばれる携帯型の観察記録端末を導入し、共通のフォーマットで類人猿の分布や密度に関する情報を収集する。
(2)については、1個体の糞から得られるDNAを全ゲノム解析し、その個体群の遺伝的多様性を推定するという新開発の手法を用いるほか、免疫系をつかさどるMHC 領域のDNA 多型を評価する新手法で、遺伝的多様性の低下がおよぼす影響について研究する。
(3)については、糞試料から病原体の免疫抗体を抽出する方法を用い、どの病原体がどの程度の個体に感染しているかを個体群ごとに調べる。これらの成果を総合して、それの地域の実情に即した保全対策を立案し、各国政府に提案する。

②セミナー
平成27 年はウガンダで、サイバートラッカーの利用と野生個体からの免疫・DNA試料の収集に関するセミナー、28 年は霊長類研究所で、収集した試料や情報の分析に関するセミナー、29 年にはコンゴで、得られた情報を総合して保全対策を立案するためのセミナーを開催する。これらのテクニックを参加各国の若手研究者が共有することで、この共同研究が将来にわたって継続するための素地を作る。

③研究者交流
ウガンダ、ギニア、コンゴの順で、本年度設立するアフリカ霊長類研究・保全コンソーシアムの年次総会が開催される予定だが、本事業の拠点研究機関の研究者を派遣してその開催を支援し、研究交流を図る。また、年次会合のあとそれぞれの国の研究地を視察し、各国の類人猿の生息実態に関する日本・アフリカの若手研究者間の相互理解を促進する。さらに、本計画の研究内容にとどまらず様々な共同研究のプランを募り、若手研究者の国際化と研究の発展を促す。

[研究交流目標 2014年度まで]
 日本の霊長類学は、ヒトのルーツを探ることを目標として、50 年以上前から類人猿の野外研究を続けてきた。とくに京都大学霊長類研究所は、ヒトにもっとも近いチンパンジー(Pan)属のチンパンジーとボノボの長期調査地を3 か所もかかえ(チンパンジー:ギニア共和国・ボッソウ、ウガンダ共和国・カリンズ、ボノボ:コンゴ民主共和国・ワンバ)、霊長類学の国際的センターとなっている。しかし現在、これらの調査地の個体群は、森林伐採や農地開発などによって孤立し、地域住民の森林資源の利用による植生の質の低下、密猟等の違法行為、孤立による遺伝的多様性の低下、ヒトから類人猿への病気の感染など様々な要因によって、存続上の危機にさらされている。本計画では、これらのリスク要因を回避するための自然科学・社会科学的調査・研究を行ってその成果をそれぞれの調査地での保全の実践に生かし、さらにその手法を同様の問題をかかえるアジア・アフリカの様々な類人猿生息地に発信していくことを目標とする。
 当研究所は、平成21~23 年度にアジア・アフリカ学術基盤形成事業の支援を受けて、 コンゴの生態森林研究センター、ギニアのボッソウ環境研究所、ウガンダのムバララ科学技術大学とネットワーク型の研究基盤を築いて類人猿の環境適応機構についての比較研究を行ってきた。この結果、日本・アフリカ間のみならずアフリカ側拠点機関の間の交流も深まり、アフリカ側研究者の学術的意識と研究能力も飛躍的に高まった。本計画では、新たに3 つの拠点機関を加えてネットワークの拡充と強化を図り、本研究課題のみならず、将来、様々なテーマの類人猿の比較研究をアフリカ側研究者と協力して行える土俵としたい。また、23年8 月にコンゴで行った締めくくりの国際シンポジウムでは、アフリカ側拠点機関から、このネットワークをもとにアフリカ霊長類学会の設立を目指すべきだとの提言があった。日本の主導によってアフリカ霊長類学会を設立するというこの長年の夢についても、本計画の3 年間に実現にむけた道筋をつけたい。


[研究交流計画の概要 2014年度まで]
①共同研究 本研究では、類人猿の孤立集団の存続にかかるリスク要因のうち、(1)孤立による遺伝的劣化、(2)ヒトから類人猿への病気感染、(3)地域住民による森林資源の利用に関する研究を行う。(1)と(2)については、環境省の助成による研究で、糞サンプルを用いたDNA と病原抗体の分析手法を確立した。本研究ではこの手法を用い、各国の複数の地域個体群の遺伝的多様性を調べ、個体群のサイズや孤立からの年数と遺伝的多様性との関係を調べる。感染症については、同上の個体群で病原抗体のモニタリングを継続的に行い、ヒトから類人猿に感染する病原体の種類と影響を調べる。(3)については、トヨタ財団の助成による研究で、住民による森林資源利用の実態を定量的に評価する手法を確立した。本研究ではそれを用いて同上の個体群周辺でモニタリング調査を行い、森林資源の利用と類人猿の保全の両立を可能にする計画の立案に用いる。
②セミナー 平成24 年度は、各海外拠点機関の研究者を1 ヵ月間霊長類研究所に招き、上記(1)~(3)の分析手法に関するトレーニングと、GIS(地理情報システム)による情報分析、保全計画立案の方法等についてのセミナーを開催し、その成果を持ち帰って各研究機関の研究者に伝えてもらう。現行の計画で23 年度にコンゴの拠点機関で総括セミナーを開いたため、25、26 年度は、ギニアとウガンダの拠点機関でセミナーを開催する。そこではまず、各拠点機関周辺の類人猿保護区を視察し、それぞれの地域のかかえる保全上の問題と対応策についての知識を4 国の研究者で共有する。またそれに続く研究発表会で、本研究課題の進行状況と成果について発表し、各国の経験を持ち寄って保全計画の立案についての議論を深める。また26年度の総括セミナーでは、アフリカ霊長類学会の設立に向けたロードマップを定める。
③研究者交流 アフリカ側拠点機関間の連携を強化するため、各拠点機関の研究員を24 年度はコンゴ、25年度はギニア、26 年度はウガンダの研究機関に派遣し、それぞれの調査地や研究体制の視察、研究成果の報告、将来の共同研究に向けた相談などを行う。