創出育成領域 Section of Breeding and Rearing |
ヒト進化研究の適切なモデルとなる新世代のサルの創出研究、自然に近い生態環境と社会構成を持った繁殖集団の育成研究、サル類のコロニーの遺伝的素因を把握して遺伝的多様性を保持できる自家繁殖を継続するための育種研究などを担当する。
松林清明 Kiyoaki MATSUBAYASHI 教授
生殖器系の進化に関する組織学的研究、環境共生型大規模放飼場におけるサル類の繁殖育成システムの開発研究をおこなっています。菅原 亨 Toru Sugawara 研究員
チンパンジーやマカク類の味覚受容体について、比較ゲノム解析や機能解析をおこなっています。松林清明
研究内容
1)生殖器系の進化に関する組織学的研究
主として大型類人猿を対象に、オス生殖器系の組織学的検索を通じて、種ごとの生殖システムの進化の様態を検討している。
1)Histological study on evolution of reproductive system. Evolution of reproductive system of male primates is examined mainly in great apes through histological investigation.
Testicular figures of adult male Japanese macaques
1 Seminiferous tubule in March
2 June
3 September (Mating season)
4 December
2)環境共生型大規模放飼場におけるサル類の繁殖育成システムの開発研究
第2キャンパスに造営されたリサーチリソースステーション(RRS)において、樹木等の維持に必要な飼育方式やサル個体管理法の開発、セキュリティなどの試験と評価を進めている。
2)Development study on breeding system of non-human primates in environment-symbiosis corrals. Development and evaluation of raising system, animal management and security are conducted at Research Resource Station.
菅原 亨
研究内容
苦味受容体遺伝子の多型解析
哺乳類の味覚は、基本的に甘み・酸味・苦味・塩味・うま味の5つを認識することができます。その中で苦味は、有害物質の摂取に対する防御として進化してきたと考えられています。哺乳類において苦味は、7回膜貫通型構造を持つ典型的なG蛋白質共役型受容体の1種であるT2Rを介した経路で伝わることが最近の研究で明らかになりました。
近年、様々な生物においてゲノム配列が決定されています。T2Rを調べると、哺乳類ゲノム中にT2R遺伝子は20~40コピー存在していることがわかりました。特徴的なことは、その遺伝子コピーの数がそれぞれの生物種で異なることです。これらの種特異性は、採食行動の違いと関連があるかもしれません。
・チンパンジーにおけるT2Rの多型解析
現在までに同定されているヒトの36個のT2R遺伝子の相同遺伝子をチンパンジーゲノムから検索し、霊長類研究所のチンパンジーに加え、チンパンジー・サンクチュアリ・宇土の協力のもと、日本に生息するチンパンジーのおよそ30%に当たる93個体で苦味受容体遺伝子T2Rの多型解析をおこないました。結果、多くの多型サイトが見つかりました。現在これら多型サイトの違いと機能的な違いとの関連を明らかにしたいと考えています。
・マカク類におけるT2Rの多型解析
現在霊長類研究所内で飼育されているニホンザル・アカゲザルを対象に苦味受容体遺伝子T2Rの遺伝子多型を調べています。多型サイトの違いと機能的な違いとの関連や個体の食性との関連を明らかにしたいと考えています。
発表論文
Terai Y, Seehausen O, Sasaki T, Takahashi K, Mizoiri S, Sugawara T, Sato T, Watanabe M, Konijnendijk N, Mrosso HD, Tachida H, Imai H, Shichida Y, Okada N.Sugawara T, Terai Y, Imai H, Turner GF, Koblmuller S, Sturmbauer C, Shichida
Y, Okada N.
Parallelism of amino acid changes at the RH1 affecting spectral sensitivity
among deep-water cichlids from Lakes Tanganyika and Malawi. Proceedings of the
National Academy of Sciences of the United States of America Vol. 102, pp.
5448-5453, 2005
Sugawara T, Terai Y, Okada N.
Natural selection of the rhodopsin gene during the adaptive radiation of East
African Great Lakes cichlid fishes. Molecular Biology and Evolution Vol. 19,
pp.1807-11, 2002