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平成25(2013)年度頭脳循環プログラム報告


派遣研究者:松田一希
研究内容:消化機能の研究
派遣先:シンガポール・シンガポール動物園
(2014/2/3〜2014/5/2)
     
「人間の多能性」を究明する端緒として、霊長類の中でも葉の消化に特化した胃を進化させたコロブス類のサルに焦点を当てて、その消化機能を解明することが、私の研究の目的です。飼育下のコロブス類のサルを対象に消化実験の実施に加え、野生下のサルが採食する植物や糞を収集し、国際共同研究機関の実験室にて消化効率等を測定することが具体的な活動内容です。また、霊長類の消化・生理に関する論文を、国際共同研究者と伴に執筆、出版することも重要な活動の一つです。

2014年2月3日よりシンガポール動物園(正式にはWildlife Reserve Singapore: WRS)に滞在しています。シンガポールといえば大都会のイメージですが、動物園は街の中心部からは数十キロも離れており、小さいながらも森に囲まれた静かな場所に位置しています。WRSは、動物園、リバーサファリ、ナイトサファリ、バードパークという4つ異なる施設を維持しています(写真1)。私はWRSの敷地内にある研究者用の宿泊施設に宿泊して、主に動物園の管轄であるPrimate Breeding Centre内で飼育されているサルたちを対象に、霊長類、特にコロブス類の消化機構を解明するための消化実験を開始しました。



写真1:左から動物園の入口、Primate Breeding Centre (PBC)の入口、PBC内にあるテングザルを飼育しているケージ

実験の対象としたのは、テングザル(Nasalis larvatus)、アカアシドゥクラングール(Pygathrix nemaeus)、カオムラサキラングール(Trachypithecus vetulus)、ジャワラングール(Trachypithecus auratus)の4種でした(写真2)。異なるサイズの固相マーカーと、液相のマーカーをサルに食べさせ、その後定期的に全ての糞を回収するという消化実験を実施しました。糞の定期的な回収だけではなく、サルの餌の摂取量と栄養成分も測定することで、回収した糞中に含まれるマーカーを分析して得られる、食物の消化管内滞留時間だけではなく、摂取した食物の消化速度や消化率を検討できるように実験を行いました。現在までに、合計で1500個以上の糞を回収し、その糞をオーブンで乾燥させている段階です(写真3)。全ての糞サンプルはチューリッヒ大学に郵送し、私が9月に渡航した際に分析を行う予定です。


写真2:左からテングザル、アカアシドゥクラングール、カオムラサキラングール、ジャワラングール


写真3:オーブンにて1500個の糞を乾燥させている

上記の活動に加えて、頭脳循環プログラムがきっかけとなり活発にコミュニケーションを重ねるようになった国際共同研究者と、霊長類の消化や採食リズムに関する論文2報を発表することができました。特にそのうちの一報では、霊長類で初めて観察されたテングザルにおける反芻行動の適応的意義を解明するための重要な証拠を提示しています。

今後は集めた糞の実験室での分析作業に加えて、フィールドでの野生霊長類を対象とした消化機構を解明するための行動観察等を実施していく予定です。