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平成27(2015)年度頭脳循環プログラム報告


派遣研究者:足立幾磨
研究内容:認知機能の研究



認知機能の研究

感覚間一致の比較認知科学:
本研究では、米国、ヤーキス霊長類研究センターのRobert Hampton博士およびその学生2名と(Rachel Diamond、Thomas Hassett)と共同で、チンパンジー、オランウータン、アカゲザルを対象とした比較認知科学研究をおこなった。行動実験をとおしかれらの認知能力をあきらかにし、ヒトと比較することでヒトのことをよりよく知ろうという研究だ。具体的には、タッチスクリーンをもちいた認知課題をかれらに課すことで、その認知能力を分析した。なお、オランウータン、アカゲザルの研究は、それぞれアトランタ動物園、ヤーキス霊長類研究センターで実施し、チンパンジーの研究に関しては、Rachel Diamond氏を日本学術振興会のサマープログラム生として京都大学霊長類研究所で受け入れ、共同研究を実施した。

本研究では、特に感覚間一致という現象を切り口に研究をおこなった。感覚間一致とは、異なる処理ドメインを持つ情報間に類似性・一致性を感じ現象のことである。コミュニケーションのツールとして言語ラベルが機能するためには、他者と共有される必要がある。音と視覚刺激の無限の組み合わせの中から、他者と共有されやすい言語ラベルを生みだすことは困難だが、感覚間一致のように、ある音の特徴とある視覚特徴が結びつきやすいとすればどうであろうか。組み合わせの幅が狭まることになり、それに基づき生成されたラベルは、他者にとっても受け入れやすいものとなるであろう。こうしたことから、感覚間一致はヒトの言語進化にとって重要な役割を果たしていたと考えられてきた。それでは、ヒトはぜ感覚間一致を獲得したのだろうか。これは、言語の進化的基盤を考えるうえで重要な問いである。これまでに、言語との共進化、文化との相互作用、脳の情報処理様式や発達的な変化に由来する可能性、などが議論されてきたが、はっきりとは分かっていないのが現状だ。進化的な基盤を探究するうえで、特にヒトと動物の共通点・相違点を探る比較認知科学的なアプローチをおこなうことが重要である。ヒトの特徴は、他の動物種と比較することでより浮き彫りとなるからだ。しかしながら、これまでこうした感覚間一致や音象徴に関しては動物を対象にした研究はほぼ皆無であった。

そこで、本研究ではこの感覚間一致について比較認知科学的な分析を実施した。具体的には、①空間と序列の間の感覚間一致、②社会的順位と空間表象の感覚間一致、③音の高さと明るさの感覚間一致の3点について分析をおこなった。まず、①について述べる。多少の文化差はあるが、私たちヒトは、物の順序をとらえるときに、一般的には空間の左から右へと配置されることが広く報告されている。ヒトが物の順序を考える際に空間上になぞらえて考える傾向があることを示す研究である。本研究の結果、言語をもたないチンパンジー、オランウータン、アカゲザルもまた、ヒト同様に自発的に序列の早いものを空間上の左側に配置することを発見した。さらに、チンパンジーとオランウータンを対象におこなった追加実験では、実際に空間と順序を処理する認知資源が共有されている可能性を示唆する結果を得た。これは、これらの種が空間と系列の間の感覚間一致を持つだけでなく、その認知的基盤に至るまでヒトと共有している可能性を示唆している。

次に②について述べる。これは、社会的順位と空間表象の間の概念メタファー的なマッピングに関する実験である。ヒトでは社会的な順位は空間上の上下と結びついていることがわかっている。順位が「高い・低い」という表現があるのもその一例だ。この順位と空間の感覚間一致を分析するために、屋外の飼育場で大きな群れで飼育されているアカゲザルを実験する試みを始めた。まず、野外飼育施設における完全自動実験装置の開発整備をThomas Hassett 氏とともにおこなった。これにより、被験体は24時間この装置にアクセスできるようにした。全自動化するにあたり、報酬提示システムの整備、および、被験体情報の管理システムを構築した。現在は、実際にこのシステムをもちいて、アカゲザルの訓練を継続しているところである。

 次に③音の高さと明るさの感覚間一致について研究をおこなった。ヒトの場合高い音と明るい色の間、または低い音と暗い色の間に感覚間一致が生じることが知られている。これはまた、「明るい声」や「黄色い声」といった言語的な表現にも反映されている。これまでに自身の先行研究では、チンパンジーが同様の感覚間一致を持つことが分かっている。そこで、本研究では同様の感覚間一致をアカゲザルももつのかを分析した。その結果、複数の方法をもちいて詳細に分析したが、アカゲザルにおいてはこの音の高さと明るさの間の感覚間一致が存在するという結果は見いだせなかった。この種差をもとに、今後さらに研究を拡張することで、音の高さと明るさの間の感覚間一致を支える認知的基盤および進化的基盤を明らかにしていく足がかりとなると期待される。


写真1 ヤーキス国立霊長類研究センター


(写真2:左:実験装置。タッチスクリーン下部には報酬のえさを提示するためのトレイが付いている。右:アカゲザルがタッチスクリーン上に提示された写真刺激を選択肢問題に答えているところ)

著書・論文(査読あり)
*Corresponding Author
Adachi I *(2014) Spontaneous Spatial Mapping of Learned Sequence in Chimpanzees: Evidence for a SNARC-Like Effect. PLoS ONE 9(3): e90373. doi:10.1371/journal.pone.0090373

Adachi I* Tomonaga M (in press) Face Perception and Processing in Non-human Primates, APA Handbook of Comparative Psychology

論文(査読なし)

足立幾磨* (2014)ものの順序と空間のふしぎな関係. 科学,84,7,754-755.

足立幾磨*(印刷中) チンパンジーのこころの左右 心理学ワールド

分担執筆

足立幾磨* (2015)これもネコだし、あれもネコ...概念はもてる? 動物たちは何を考えている? -動物心理学の挑戦- (知りたい! サイエンス) 藤田和生編著 pp158-160

学会発表

Adachi I, Hampton RR (2014/4/15). Space-based representation of an acquired sequence in rhesus macaques. Annual International Conference on Comparative Cognition
, Florida

足立幾磨 (2014/07/19) Spatial mapping of orders in chimpanzees. The 74th Annual Meeting of Japanese Society for Animal Psychology.

講演

Adachi I. Spontaneous spatial mapping of orders in chimpanzees. The 106th Annual Meeting of the Southern Society for Philosophy and Psychology, Charleston, SC, USA, Feb 6th, 2014

足立幾磨 (2014/03/22). 感覚間一致の発達と進化, 発達心理学会第25回大会 京都大学

足立幾磨 (2014/09/13) 国際奨励賞記念講演:感覚間一致の比較認知科学. 第78回日本心理学会.

Adachi I. (2015/09/24-26) Primate origins of conceptual metaphors- Comparative cognitive approach to cross-modal correspondences. Protolang ~Ways to (proto) language conference series~ 4, invited session “Human cognition viewed from the study of chimpanzees”, Rome, Italy

Adachi I. (2016/03/03-06) Cross‐modal correspondences in non‐human primates. The 5th International Symposium on Primatology and Wildlife Science. Inuyama