第1回(2002年4月8日)の講義への質問に対する回答


Q.屋久島のサルの食物の研究が人類学と関係があるのか?
A.おそらく直接はありません。最初の講義で私自身の屋久島での研究を紹介したのは、あくまで自己紹介の代わりであって、これも人類学だというつもりはありません。サルの研究は人類学としての興味から出発しましたが、そういう観点を抜きにしても、サルはサルとして面白い生き物で、研究する価値があります。しかし、霊長類の一員であるヒトというものを考えるときに、そういう一見何の関係もないようなことの積み重ねが基礎になっている、ということは言えると思います。


Q.やはり狼少女はオオカミに育てられたのではないか?
A.私の意見は、狼少女が狼に育てられた可能性は非常に低いということで、完全にゼロだとは、やはり言いきれないところがあります。結局は実際にオオカミの母親に人間の子供を育てさせるという実験をしなければ分からないでしょう。私が言いたいのは、非常に可能性の低いことを、たいした根拠もなく信じ、それで何かを分かったような気になることのは危険だということです。


Q.オオカミ少女はどうやって育ったのか?
A.これはもうまったくわかりません。もともと脳や身体機能に異常を持って生まれ、かなり早い時期に母親から剥奪されたのでしょう。


Q.芸術活動はヒト以外にあるか?
A.飼育されたチンパンジーに絵を書かせたりする人たちがいます。ひいきめに見れば抽象画ですが、まったく無意味な行為だといってしまえばそれまででしょう。芸術の起源はせいぜい数万年前、ほとんど現代人になってからのようです。


Q.屋久島の人口とサルの数はどのくらいか
A.屋久島には二つの町(上屋久町と屋久町)があって、現在の人口は13000人ほどです。サルの数はまだはっきりとはわかりませんが、1万頭前後だと思います。


Q.サルにはどんな名前をつけるのか。サルの名前は番号でもよいのではないか
A.サルの名前はその群れを調査している人が勝手につけます。私はメスはお菓子の名前、オスは酒の名前をつけていました。メスならポッキー、ウイロ、コロン、オスならアワモリ、シラナミといった具合です。屋久島の研究者でロシア文学の登場人物の名前をつけている人がおり、その人の群れにはスタヴローギンだとか、ラスコーリニコフとかいうサルがいました。名前を番号でつけているところもありますが、それでは気分が出ないので、あまりはやりません。


Q.サルをどうやって馴れさせるのか?
A.ひたすらサルについていくと、自然に人を恐れなくなります。私の調査では2ヶ月くらいかかりました。サルが狩猟されていて人を極端に恐れているような場合は、3年たってもできないということもあります。


Q.屋久島の山はなぜ高いのか?
A.この質問は私の守備範囲を超えています。私が知っているのは屋久島は1400万年前に花崗岩が隆起してできた島だということです。詳しいことは地質学の本で調べてください。


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<文責: 半谷吾郎 (hanya<atmark>pri.kyoto-u.ac.jp)>
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<最終改変日: 2004年11月24日>