京都大学霊長類研究所>生態保全分野・研究プロジェクト

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更新日 2017年6月1日


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1. 霊長類と生息環境や他の生物との関係 (湯本、半谷、寺田)


 森林の構造や果実生産と霊長類群集との関係を調べることにより、とくに熱帯林や亜熱帯林の分断化や劣化が進行するなかで、適切な保全策を提案するための基礎研究を推進しています。

 湯本と寺田は、アフリカ熱帯林に生息する大型類人猿(チンパンジー、ボノボ、ゴリラ)が、植生の異なる多様な生息環境をどのように利用しているかについて調べています。

 半谷は共同研究者とともに、霊長類と同所的に生息する生物との種間関係の研究を行っています。具体的には、イチジクの果実を食べにやってくる動物相の季節変化や、ニホンザルがキノコ食を通じて、菌類の胞子散布を行っているかについて調べています。

  

左:  コンゴ民主共和国のボノボの生息地での植生調査、中:幸島のサルに対するキノコの給餌実験、右:アコウ(イチジク)の木にやってくる動物を観察




2. ニホンザルの行動生態、個体群生態、腸内細菌叢 (半谷、栗原、西川、本田、中村、Lee)


 人為的影響の少ない環境にすむ野生のニホンザルが自然環境から受ける影響に着目し、屋久島の海岸部から山頂部まで多様な環境において、個体群生態学、採食生態学、行動生態学などの観点から研究を進めています。

 半谷は、屋久島において個体群動態の継続調査を毎年実施しています。屋久島の瀬切川上流域では、森林伐採と果実の豊凶の年変動がニホンザル個体群に与える影響を明らかにする目的で、調査を継続しています。「ヤクザル調査隊」という学生などのボランティア調査グループを組織し、夏季に一斉調査を行って、人口学的資料を集めています。また、屋久島の上部域と海岸部の間で、食性、密度、活動時間配分、体温調節行動、採食中の攻撃的交渉の頻度、社会関係、食物選択の化学的基準などについての比較生態学的研究を行っています。

 本田は屋久島山頂部において、ニホンザルの土地利用と食性の季節性について研究を行っています。

 屋久島海岸部において、西川はグルーピングメカニズムと夜間にみられる行動、栗原は採食生態と群間関係、中村は果実選択の決定要因について研究を行っています。

 Leeは、ニホンザルと共生している腸内細菌叢が生息環境の影響をどのように受けているかを明らかにするため、屋久島の野生群、幸島の餌付け群、笹山の猿害群、霊長研の飼育群の腸内細菌を比較する研究を行っています。

  

左:「ヤクザル調査隊」集合写真、中:屋久島でのキャンプ風景、右:幸島の調査小屋




3. 東南アジア熱帯林の霊長類社会生態学 (半谷)


 マレーシア領ボルネオ島・サバ州で、多種の霊長類が共存する生態学的メカニズムと腸内細菌叢、レッドリーフモンキーの採食生態などについて、東南アジア熱帯林に特有の一斉開花結実現象に着目して研究を行っています。

  

左:マレーシア人アシスタントと、中:ボルネオオランウータン、右:レッドリーフモンキー




4. アフリカ熱帯林の霊長類生態学 (橋本、竹元、毛利、徳重、峠、本郷)


 人類が誕生し、現在も4種の類人猿を含む多様な霊長類が生息するアフリカ熱帯林において、生態学的研究を行っています。

 橋本は、ウガンダ共和国カリンズ森林とコンゴ民主共和国ワンバ地区において、それぞれチンパンジーとボノボの社会学的・生態学的研究を行っています。チンパンジーの遊動や行動のデータを収集するとともに、定量的な植生調査や果実量調査を平行して行い、チンパンジーの行動や社会関係が環境からどのような影響を受けているかという点に注目して、研究を行っています。また、糞や尿などの非侵襲的試料を用いた遺伝学的研究も行っています。竹元は西アフリカ,ボッソウのチンパンジー,中央アフリカ,ワンバのボノボ,東アフリカ,カリンズのチンパンジーの生態比較をおこなっています。森林内の空間利用や食性を森林気象や果実量と対比させ,三地域の類人猿の生態・行動の違いを生み出した要因を探っています。

 

左:ボノボ、右:チンパンジー


 また、カリンズ森林では、同所的に暮らす3種のグエノン(レッドテイルモンキー、ブルーモンキー、ロエストモンキー)を対象とした行動生態学的研究も行っています。徳重は、3種の寄生性線虫叢を比較するため、糞を採集・分析して研究をすすめています。峠は、3種の食性を比較するため、行動観察と糞中DNAの分析を組み合わせて研究をすすめています。


  

左:レッドテイルモンキー、中:ブルーモンキー、右:ロエストモンキー


 本郷はガボン共和国ムカラバ−ドゥドゥ国立公園において、数百頭の非常に大きな集団をつくるアフリカ熱帯林の霊長類マンドリルを対象に、彼らの社会構造と生態、そして性選択に関する研究を行っています。


 

左:マンドリルのオトナオス、右:ムカラバのマンドリル集団




5. 新世界ザルの採食生態学(西川、武、湯本)


 中南米に生息する新世界ザルを対象として、採食生態学的研究を行っています。

 新世界ザルの中には、同一種内に3色型色覚と2色型色覚の個体が混在する色覚多型を示す種が存在します。西川はコスタリカ共和国・サンタロサ国立公園に生息する野生のノドジロオマキザルを対象として、色覚型と採食行動に関する研究を行っています。

 

左:ノドジロオマキザル、右:ノドジロオマキザルが食べる Guettarda macrosperma の果実


 武と湯本は、京都大学とブラジル国立アマゾン研究所(INPA)が共同で行っているSATREPSフィールドミュージアムプロジェクト・森林研究班のメンバーとして、アマゾン地域に生息するサルの生態研究を行っています。とくに、アマゾン最大の都市・マナウスの都市孤立林に同所的に生息する3種の新世界ザル(フタイロタマリン、コモンリスザル、キンガオサキ)を対象にしています。人為的環境に対する彼らの適応能力を解明し保全の策につなげていくために、大都市の小さな森で3種のサルがそれぞれ何をどのくらい食べているか調べています。


  

左:フタイロタマリン、中:コモンリスザル、右:キンガオサキのオス




6. 霊長類の衛生行動と嫌悪の進化的背景 (Sarabian)


 霊長類は、寄生虫や病原体をどうやって回避しているのでしょうか?また、衛生観念と嫌悪感の進化的な起源とは何でしょうか?このような問題意識のもと、様々な霊長類を対象に行動と寄生虫感染の関係を研究しています。

 これまでに、@幸島のニホンザルの採食行動と糞を忌避する行動の研究、Aカニクイザル、マンドリル、チンパンジーにおける、強い嫌悪を引き起こす臭い刺激と寄生虫感染のリスク回避の研究、Bコンゴ民主共和国にあるサンクチュアリのボノボにおける汚染に対する感受性の研究、を進めてきました。野外実験、行動観察、寄生虫の同定と定量化を組み合わせて研究を行っています。

  

左:幸島のニホンザルに対する野外実験、中:コンゴ民主共和国、ロラヤ・ボノボサンクチュアリでのプレゼンテーション、右:ガボン、フランスビル国際医学研究センターのマンドリルに対する実験



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