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Research

社会進化分野では、霊長類の行動と生態の分析を通して、霊長類社会の進化とホミニゼーション課程を解明する研究を行っています。世界各地の野生霊長類個体群を対象に、長期にわたって研究を継続しています。メンバーの最近のおもな研究は以下のとおりです。

Targeting wild primates in the world, we are continuing to research over a long period of time.
Recent major study of the members are as follows.

A) ボノボとチンパンジーの攻撃性と集団間関係についての研究
古市剛史, 橋本千絵, 坂巻哲也, 柳興鎮, 徳山奈帆子, 戸田和弥,石塚真太郎
コンゴ民主共和国ルオー学術保護区のボノボ3集団,ウガンダ共和国カリンズ森林保護区のチンパンジー2集団を対象に,GPSを用いて遊動ルートを記録しつつ集団のメンバー構成,社会行動,性行動を記録し,2つの集団が接近したときの動き,出会った場合の双方の個体の行動などについて分析した。また,集団間の出会いが敵対的,あるいは親和的になる要因や,集団間のメスの移籍について,さまざまな角度から分析した。

B) ボノボのメスの社会関係に関する研究
古市剛史, 坂巻哲也、柳興鎮、戸田和也、山本真也
ボノボは他集団から移入してきたメスたちが中心となって、平和的な社会を作ることで知られている。しかしそのメスたちも、自分の息子が順位を巡る争いに突入すると、それぞれの息子をサポートして攻撃的な行動を見せる。ルオー学術保護区のE1集団では、2013年来続いたワカモノオスによる第1位オスへの挑戦で、メスたちがそれぞれの母親を中心とする2つのグループに分かれ、しばしば激しい攻撃交渉が見られるようになった。行動観察と映像記録を元に、ボノボのメスの社会関係の2つの側面を描き出した。

C) スリランカに生息する霊長類の行動生態学的研究
M.A. Huffman, C.A.D. Nahallage (University of Sri Jayewardenepura)
2004年末に開始した,スリランカに生息する野生霊長類の分布調査を継続した。スリランカ全土における分布を確かめるために各県,地区レベルのアンケート調査を継続した。採集した試料のDNA解析を実施し,結果の一部を公表した。

D) ベトナムにおけるマラリア伝播環境の変容と人獣共通感染性マラリアの出現の理解に向けた学際的研究
M.A. Huffman, 中澤秀介, R. Culleton (長崎大学), 前野芳正 (藤田保健衛生大学), 川合覚 (獨協医科大学), Q. Nguyen Yuyen, R. Marchand (Khanh Phu Malaria Research Center, Medical Committee Netherlands-Vietnam)
2010年から開始した,ベトナム・中南部にあるカンフー村の丘陵部に棲息する野生霊長類の調査を行い、ヒトとサルの間で伝播し,人畜共通感染を引き起こすマラリア原虫について調査した。調査地で採集した野生マカク由来のサンプルを分析した結果,アカゲザルがサルマラリア原虫に罹患していることを確認した。

E) ネアンデルタール人の食生活と薬草利用に関する研究
K. Hardy (Universitat Autonoma de Barcelona), M.A. Huffman
近年,ネアンデルタール人の生活について,遺伝学など学際的な方法を取り入れた研究が進んできた。化石の歯から採れるcalculusという物質を分析して,食性を推定する過程で,ネアンデルタール人が非食用植物の薬理的利用をしているデータが得られた。野生チンパンジーの薬草利用を基盤として,ネアンデルタール人の薬草利用について論文を出版した。

F) インドネシアに生息する野生哺乳類の採食生態に関する研究
辻大和, B. Suryobroto, K.A. Widayathi (ボゴール農科大学), Rizaldi (アンダラス大学)
インドネシア西ジャワ州・パンガンダラン自然保護区でジャワルトン,カニクイザル,マレーヒヨケザルの基礎生態に関する調査を行い,食性,活動時間配分,他種との関係などのデータを収集した。西スマトラ島パダンの調査地を訪問し,研究連絡を行った。

G)霊長類の基礎生態の地域変異に関する研究
辻大和,伊藤健彦 (鳥取大学)
マカク類、コロブス類、ヒヒ類、オナガザル類を対象に、各種行動データと環境情報との関連付けを行い,高緯度地域・乾燥地域への進出を可能にした行動形質を推定した。金華山島では,昨年度に引き続き種子トラップの内容物の回収を行った。

H) 日本産食肉類の種子散布に関する研究
辻大和, 森大輔,村井仁 (富山市ファミリーパーク)
飼育下のホンドテンを対象に給餌実験を実施し,種子の飲み込みが発芽率に与える影響を評価した。

I) ボノボの進化
竹元博幸, 川本芳, 古市剛史
最新の地質学的情報から、コンゴ川の成立は従来考えられていた第四紀初頭(180-260万年前)ではなく、漸新世(3400万年前)に遡るという一つのモデルを提唱した。このモデルに基づき、チンパンジーとボノボの共通祖先はコンゴ川の北側に生息しており,100万年前の乾燥期に小集団が浅くなったコンゴ川を渡って南側に入り込んで進化したのがボノボであるという,ボノボの起源についての新しい仮説を発表した。コンゴ盆地に進入した後のボノボ個体群の拡散過程についても解析し、寒冷期の森林レフュージアが重要な役割を果たしていることを発見した。

J) ボノボとチンパンジーの生態比較
竹元博幸
ボノボとチンパンジーの生息地の環境および森林内空間利用について比較した。西アフリカ、ボッソウ(チンパンジーの生息地)の森の果実量や気温などは季節により大きく変化するのに対し、中央アフリカ、ワンバ(ボノボの生息地)の森の気候と果実量の季節変化は小さい。両種の地上利用頻度は異なるが、種差ではなく、環境気温の違いによる影響が強かった。ヒトの祖先が経験してきた後期中新世の気候変動、つまりかつて広く分布していたアフリカ熱帯林が乾燥化によって縮小していく過程を推測する上で、アフリカ熱帯林の中央部と辺縁部の類人猿生息地の比較は重要な意義を持つだろう。

K) ニホンザルとオランウータンにおける,ステロイドホルモン動態を統制する要因の評価
R.S.C. Takeshita, M.A. Huffman
ヒト以外の霊長類の繁殖生理や生理的な応答を研究する上で,繁殖やストレスに関係するホルモンの分泌パターンを評価することは重要である。餌付け条件化のニホンザルとオランウータンを対象に糞中のホルモン分析を実施し,年齢・性・社会的ステータス・繁殖状態・飼育環境の違いがホルモン動態に及ぼす影響を評価した。

L) タイ王国カオクラプック保護区に生息する野生ベニガオザルの社会生態学的調査
豊田有
2015年9月から2016年3月末まで、タイ王国カオクラプック保護区に生息する野生ベニガオザルを対象に、性行動と繁殖生態の解明のための行動データ、DNA分析による父子判定のためのDNA試料の採取を目的とした野外調査を実施した。本種特有の性行動に関する詳細なデータを記録したほか、調査中に見られた興味深い観察事例の一部を第5回東南アジア霊長類多様性シンポジウムで発表した。

M) 野生ボノボの父系型社会におけるメスの移籍要因に関連する未成熟個体の社会関係の研究
戸田和弥
コンゴ民主共和国のワンバ村に生息する野生のボノボを対象に、個体追跡法を用いて未成熟個体の行動及び近接個体を記録した。記録した社会交渉と個体間の近接に関するデータから、未成熟個体の社会的な結びつきを分析した。

N) エンクロージャで飼育されているオスニホンザルのストレスに関する研究
J. S. Alejandro
飼育環境の違いが動物の凝集性ならびに福祉に与える影響を評価するため、緑の多いエンクロージャで飼育されているサルは、緑の少ないエンクロージャで飼育されている個体に比べて休息時間が長く、攻撃的交渉の頻度が低く、ステレオタイプの行動が少ないと予想した。また、前者ではストレスレベルが低いため毛の状態が良く、コルチゾルレベルが低い、と予想した。本研究は飼育個体のストレスをモニタリングする有効な方法であり、非侵襲的な方法として他所でも応用可能と考えられる。

O) 野生ボノボ地域個体群における血縁構造の解明
石塚真太郎
コンゴ民主共和国ルオー学術保護区ワンバ村周辺に生息する野生ボノボ3集団を対象に、集団内および隣接集団の個体間の血縁度を算出することを目的とした遺伝学的解析を行った。


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