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伊藤 毅

京都大学霊長類研究所 進化系統研究部門 助教

Stump tailed macaque geographic variation and modularity of skulls in Japanese macaques Gray langur Ecogeographic variation of skulls Japanese macaque T. Ito Sigiriya, natural habitat of Toque macaque

研究

自然史と生物多様性に広い関心を持っています.現在,霊長類の形態的多様性進化のメカニズムとプロセスを明らかにすることを目的としています.形態進化は,自然選択だけではなく遺伝的浮動や遺伝子浸透といった偶然の作用によっても引き起こされます.また,形態が進化する方向と程度は,遺伝的・発生的統合性の拘束下にあります.私は,これらの進化要因の全体像を理解するために,形態学・遺伝学・系統学・生物地理学・古生物学のアプローチを採用しています.とくに,マカクザルを対象にして,以下のサブテーマに取り組んでいます.

これらの研究の多くは,琉球大学・龍谷大学・チュラロンコーン大学・京都大学霊長類研究所の他研究室(系統発生分野・人類進化モデル研究センター・ワイルドライフサイエンス)などとの共同研究です.また,試資料の収集・保管に携わってこられた多くの方々の協力によって成り立っています.K-CONNEX (MEXT), 科研費 (JSPS; 11J00120, 15J00134),藤原ナチュラルヒストリー振興財団,琉球大学,京都大学霊長類研究所などから支援を受けています(ました).

交雑と遺伝子浸透

ヒトを含めた霊長類の進化は,枝分かれだけの過程ではなく網目状であることがわかってきています.交雑は新しい遺伝子の組み合わせを生み出し,表現型の新規性や多様性の創出に貢献したと考えられます.私たちは,ゲノムワイドマーカーを用いることで,交雑がどのように進行し,形態にどのような影響を与えたのかについて研究しています.この研究は,進化生物学の一般的な興味に端を発していますが,こうした基礎的知見は,侵入種のモニタリングなど保全生態学にも貢献しうると考えています.

モジュール性と進化可能性

進化の方向と程度は,遺伝的・発生的統合性の拘束下にあります.私は,幾何学的形態測定学と量的遺伝学的アプローチを用いることで,これらの拘束が霊長類の頭蓋の多様化にどのような制約を与えたのか,またこの拘束性自体(進化可能性)がどのように進化したのかを明らかにすることを目的にしています.

遺伝子型-表現型の関係

表現型の進化の多くは,遺伝子型の変化によって引き起こされます.ただし,表現型と遺伝子型の関係は,一対一対応であることは稀です.ふつう,一つの遺伝子は複数の形質に作用し(多面発現),一つの形質は複数の遺伝子のパラレルな効果またはそれらの相互作用(エピスタシス)に影響されます. 私たちは,関連解析と比較/集団ゲノミクスを用いて,これらの複雑な遺伝子型-表現型の関係(多対多)を明らかにし,形態進化の遺伝的基盤を理解することを目指しています.

系統的・生物地理的多様性

分子系統学は,現生種の系統仮説の構築に大きく貢献しましたが,DNAを抽出できない化石に適用することはできません.化石は,過去の生物のいた場所と形を直接的に知る唯一の情報源であり,進化や系統地理を理解する上ではなくてはならない存在です.私は,分子情報と形態データを統合することで,絶滅種を含めた霊長類の体系を構築する試みを進めています.

業績

Google Scholar Citations

データ

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資料管理

私たちは,脊椎動物(とくに霊長類)の博物学的試資料(骨格・液浸標本や遺伝試料)の収集・作成・管理に携わっています.私の研究も含め博物学や進化学の成果には,長い歳月をかけて多くの人々が試資料を後世に残してきたからこそ,成し得たものが多くあります.私も,次の世代のために質の高い試資料を残していきたいと思います.

アウトリーチ

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