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[研究 / research]

専門分野
古脊椎動物学、比較形態学

研究テーマ
・ 肉食性哺乳類の進化
    I. 四肢骨形態と運動行動との相関
    II. 肉歯類*の進化 *Creodonta; 暁新世から中新世に知られる肉食有胎盤類の目
・ 霊長類などの四肢骨の機能形態学
・ 古第三紀アジアの陸生哺乳類動物相

項目: 肉食性哺乳類の四肢骨の形態比較
    化石発掘研究調査への参加 I: 合衆国ワイオミング州
    化石発掘研究調査への参加 II: ミャンマー
    化石哺乳類についての体重値の推定




<肉食性哺乳類の四肢骨の形態比較>
 現生の肉食性哺乳類には,様々な運動様式(走行性や樹上性など)や食性(雑食から肉食,腐肉食など)が見られ,それらに対応して体の形態も多様である。また,肉食性哺乳類は食肉類や有袋類のオポッサム類といったように,幾つかの分類群にまたがって存在する。肉食性哺乳類で系統的には異なるグループで似たような形態を持つ種がいることは,生態的地位と形態との相関や収斂現象の例としてよく挙げられてきた。
 肉食性哺乳類での骨形態と運動様式や機能との対応を調べるため,現生肉食性哺乳類の四肢骨の比較を行っている。比較に用いているのは,小型〜中型の食肉類と肉食性有袋類で,樹上性・登攀性(地上と樹上の両方を使い分けるもの)・地上性・走行性といった運動様式を持つものが含まれている。形態比較では,長骨(上腕骨や大腿骨など)軸部での曲げや圧縮などの荷重に対する相対的な強度についての示数を求めるといった生工学的な方法を応用したり,形態測定学的方法(モルフォメトリックス)を使って関節面形態の相対的な定量化をするといったことを行っている。
  














  fig. 1: 食肉類の上腕骨と大腿骨のX線写真。左から樹上性食肉類の代表として
  アフリカキノボリジャコウネコ(Nandinia),登攀性のカコミスル(Bassariscus),半掘
  削型地上性のイタチアナグマ(Melogale),走行性のフェネックギツネ(Fennecus)。





<化石発掘研究調査への参加 I>
The United States Geological Survey - Johns Hopkins University Paleontological Expedition.
  参加年: 1995年,1996年,1997年
  米国ワイオミング州ビッグホーン盆地でWillwood層の前期始新世陸棲脊椎動物化石を発掘。
  研究代表者: Prof. K. D. Rose and Dr. T. M. Bown 

  Prof. Rose (Johns Hopkins University School of Medicine)による発掘調査の英文概要

『Willwood Formation』
 ビッグホーン盆地はアメリカ合衆国ワイオミング州の北西部に位置する。調査地域は約40km四方の荒野で,19世紀後半から現在に至るまで続けられている調査により,数百の脊椎動物化石サイトが知られている。この地域のWillwood層はほぼ水平に重なっていて(fig. 1),その総層厚は2000mを超え,約55百万年〜52百万年(始新世最初期)の哺乳類層の変化や気候の変化が研究されている。陸棲脊椎動物の化石の採集は,表面採集(fig. 2; 出てきた化石 = figs. 4 & 5)や採掘(fig. 3; 出てきた化石 = fig. 6)によって行われている。現在までに200を超える化石哺乳類種が見つかっていて,その中には食肉目や現代型霊長類,奇蹄目,偶蹄目の最初期のメンバーや現在には生き残っていない紐歯類やカ節目,汎歯目,肉歯目などが含まれる。(参考文献: Rose KD. 2001. Natural History, 110 (3) 55-59; Wing SL. 2001. Natural History, 110 (3) 48-54)

    
  fig. 1: Willwood Formation                 fig. 2: Surface collection at WW12 site        fig. 3: Excarvation at the Drothy Quarry site

    
  fig. 4: Hyracotherium upper molars            fig. 5: Anacodon skull                   fig. 6: rodent mandible



<化石発掘研究調査への参加 II>
Myanmar - Japan Joint Paleontological Research at Pondaung.
  参加年: 1999年〜継続中
  ミャンマー中部ポンダウン地域でPondaung層(後期始新統)の哺乳類化石とを発掘調査・研究。
  及び,Lower Irrawady層(後期中新統〜鮮新統?),Upper Irrawaddy層(更新統?)の哺乳類化石とを発掘調査・研究。
  日本側調査代表者: 京都大学霊長類研究所 茂原信生教授 

  発掘調査の概要(京都大学霊長類研究所HP)へのリンク: 内容発掘地の位置写真

『Pondaung Formation』
 ミャンマー(旧ビルマ)では,イラワジ川やチンドウィン川といった大きな河川が流れる中部地域に第三紀の堆積層が露出している。ポンダウン(Pondaung)層は中部始新統の地層であり,このうち上部の陸成から汽水成堆積相になっている層準から哺乳類化石が知られている。この哺乳類化石相は,初期真猿類の可能性がある霊長類が見つかっていることから有名である(fig. 4はそのうちの1種のアンフィピテクス)。化石サイトは30km四方の区域に散らばっており,数十の化石サイトのうち幾つかからは火山性堆積物が見つかって,化石層の地質年代が中期始新世末であることがわかった(fig. 1; Tsubamoto et al., 2001)。脊椎動物(哺乳類,ワニ・カメなどの爬虫類,鳥類,魚類)の化石の採集は,主に表面採集(fig. 2)によって行っているが,良い化石が見つかった場合はそのまわりの表層土を集めて,screen-washingを行っている(水につけて,細かい砂・泥をふるい流したのち,細かい化石片を選りだす方法; fig. 3)。2003年の調査までで,霊長目(fig. 4),奇蹄目(fig. 5 ブロントテリウム類),偶蹄目(fig. 6 アントラコテリウム),げっ歯目(fig.7),肉歯目(figs. 8 & 9),食肉目を含む50種近い哺乳類が見つかっている(Tsubamoto et al., 2005)。哺乳類相としては,固有種が多く,属レベルでは同時代の南部中国のものと比較的類似性が見られる(Tsubamoto et al., 2004)が,科・亜科レベルでは後期始新世〜漸新世エジプトやヨーロッパとの交流も考えられる(Dawson et al., 2003; Egi et al., 2004)。

    
  fig. 1: Pk1 site (The white tuff layer = 37.2 Ma)    fig. 2: Surface collection at Mta3 site         fig. 3: Screen-washing

    
  fig. 4: Amphipithecus (primate) mandible        fig. 5: Brontothere (perissodactyl) lower molars   fig. 6: Anthracotherium (artiodactyl) mandible

    
  fig. 7: rodent                         fig. 8: creodont palate                   fig. 9: "Pterodon" (creodont) mandible

『Irrawaddy Formation』
 イラワジ層(累層)はミャンマー中部の様々な場所で露出している。上部中新統から下部更新統までの地層が含まれていると言われており,哺乳類化石は少なくとも2つの動物群に分かれると考えられている(Colbert EH. 1938. Bull.Am.Mus.Nat.Hist. 74: 255-436)が,それぞれの時代や境界は定かではない。現在までに,長鼻目(fig. 1),ウシ科(fig. 2)やカバ科(fig. 3),ブタ科などの偶蹄目,ウマ科・サイ科の奇蹄目などの報告がある。京都大学の調査隊ではイラワジ川周辺の幾つかのサイトで予備調査を行ない,標本を収集した。

    
  fig. 1: proboscideans                    fig. 2: bovids                         fig. 3: hippopotamus skull

   
  fig. 4: Irrawaddy Formation at Gbn1 site        fig. 5: Irrawaddy Formation at CHZ15 site




<化石哺乳類についての体重値の推定>
 体の大きさは,動物がどのようであったかの説明に大概加えられるように,生物についての印象を決定する重要な項目である。実際,体サイズは,様々な体の生理学的な働きや構造的な制約と関係し,また食物の量・質や採取方法,運動様式,棲み分けなどの生態的な事象に深く関わり、生物学的に重要である。
 絶滅した生物で数量的に体のサイズ(体重)を求めることは,様々な形で行われてきた。哺乳類で一般的なのは,現生種での大臼歯の歯冠の咬合面面積と体重との関係を求め,化石種での体重を推定する方法である。歯は骨より化石に残り易いので,応用幅が大きくなる。臼歯の歯冠面積が動物を維持するのに必要な食物の量に関係があるとすると,四肢骨は動物の体重を支えることと関係する。長骨軸部の太さや関節部の容積といった四肢骨計測値は,体重との相関が高く,より精度の良い推定値が得られる傾向にある。頬歯歯冠面積を使った体重推定としては,始新世霊長類のアンフィピテクス科とエオシミアス科について行っている。これらの霊長類は原猿から真猿が生じてくる段階にあると指摘されていたので,原猿・真猿それぞれの体重−歯冠面積モデルで体重推定を行った(figs.1&2)。大腿骨や上腕骨の計測値を用いた体重推定としては,始新世〜漸新世の北アメリカでのヒエノドン科肉歯類についてのものを行っており,北米グレートプレーン地域動物相でのヒエノドン科肉歯類の体サイズの時代的な推移を評価した(fig.3)。

   
  fig. 1(left): 原猿モデル(左)と真猿モデル(右)にもとづくアンフィピテクス科(上)とエオシミアス科(下)の頬歯歯冠面積値による体重推定。(江木他, 2002)
  fig. 2(right): 中期始新世ミャンマーのポンダウン動物相から出るアンフィピテクス科とエオシミアス科についての体重推定値。(Egi et al., 2004)

  
  fig. 3: 北米始新世〜漸新世北米でのヒエノドン科肉歯類の体サイズの時代的な推移。(Egi, 2001)



<文責: 江木直子>