首から下がマヒして寝たきりになったチンパンジーの介護を続けてきた。今年で10年目になる。リハビリの結果、起き上がって両腕でぶらさがれるようになり、自分の足で歩くようになった。その経過を報告したい...
... ジェーン・グドールさんが3年ぶりに来日する。野生チンパンジーの長期観察を通じて、様々な生態を明らかにした霊長類研究者だ。彼女から学んだことを伝えたい...
1956年5月9日、ヒマラヤ山脈の未踏峰マナスル(8163メートル)に日本の山岳隊が登頂した。8000メートルを超す山は世界に14しかない。そのひとつを日本が占める快挙だった...
...米カリフォルニア工科大学のラルフ・アドルフス教授を第1回の講師に迎えた。京大の客員教授として日本に滞在している。神経科学と認知科学の融合領域が専門だ。彼がセミナーで話した脳と心の最新の研究成果を紹介したい...
アイというチンパンジーが私の研究のパートナーだ。アフリカで生まれ、1977年11月に京都大学霊長類研究所に着いたとき、ちょうど1歳くらいだった。いま39歳になる。2000年4月にアイは息子のアユムを産んだ。アユムは今年16歳の誕生日を迎えた...
14日以降、震度7や6強という非常に強い地震が相次いだ熊本県で被災された方々に思いをはせている。実は京都大学には野生動物研究センター「熊本サンクチュアリ」と呼ぶ施設があり、チンパンジー58人とボノボ6人が暮らしている...
4月初め、ブラジルに広がるアマゾン川とその熱帯林にすむ動物たちを見に行った。出会ったのは「新世界ザル」と呼ばれる霊長類で、ウアカリやウーリーモンキー、リスザル、ホエザル、タマリン、サキといった一般にはなじみのないサルたちだ。アマゾンの森から人間の進化を考えた...
3月末、南米ウルグアイの首都モンテビデオで開催された国際神経行動学会に招かれて講演した...
... 人間以外の霊長類をはじめ、多くの大型哺乳類が絶滅の危機に瀕している。彼らの暮らしを守るためには、自然保護を立案する行政官や現場の実践家、博物館や動物園などで情報を伝える科学コミュニケーター、途上国に地城貢献をする人材が不可欠だ...
... 高校と大学を結びつける試みの一環である。大学の研究現場を体験してもらい、科学を志向する心を育てるのが目的だ...
... 科学は偶然と必然の両方に導かれて進むものだと思う。大学に入る年、大学紛争のために東京大学の入試がなくなり、京大に行った。哲学を志し...
チンパンジーの子どもが、人間のおとなよりも知的に優れている面がある。それは、見たものを一瞬でおぼえる瞬間記憶の力だ。人間には到底おぼえきれないたくさんの数字を...
... 今では、アイは0から19までの数を理解できる。26字のアルファベットを識別し、なかまの人間やチンパンジーの名前をイニシャル1文字で表すこともできる...
... 霊長類は、四肢の末端で枝を握れるよう、親指がほかの指と向き合う形に変化した。地を歩く足に代えて、ものをつかむ手を得たのだ...
東京大学教授の諏訪元さんらが、2000年代半ばにエチオピアで発見したゴリラの祖先候補の化石が、約800万年前のものだと突きとめた。今月11日に...
... ヒマラヤは南極や深海と並ぶ、地球上の「第3の極地」である。8000メートルの高地の気圧は、平地のおよそ3分の1以下だ。それだけ酸素濃度も低いので...
... 比較認知科学という視点からのウマの研究が必要だろう。「サル学」や「イルカ学」があるように、「ウマ学」があるべきだ。昨年2度にわたって、ポルトガルの野生ウマを調査し、オオカミに捕食されている自然の暮らしを...
... 直径が1メートルもある巨木を森から運び出すには、道をつくらなくてはならない。既存の道路から巨木のある場所まで、ブルドーザーを使って道をつけていく。統計に表れるのは1本の丸太だけだが、それを切り出し...
昨年12月の半ばから今年の年初にかけて、西アフリカ、ギニアの野生チンパンジーを見てきた。ギニアではここ2年、エボラ出血熱が猛威を振るったが、新規患者がゼロになったことを見定めて渡航した...
今年の元旦を、アフリカ・ギニアにある世界自然遺産、「ニンバ山」の山頂で迎えた。毎年冬になると、ニンバ山西麓にあるボッソウで野生チンパンジーの調査をしている...
長年チンパンジーの子育てを見てきたが、人間は本来、どのように子育てをしていたのだろうか。その原点を見るために、アフリカの狩猟採集民を見に行った...
... 「学ぶ」という言葉は、まねる→まねぶ→まなぶ、と言葉が転化してきたという。まねることは、学ぶという行為の基礎である。チンパンジーたちはどうやって学んでいるのだろうか...
インド第3の都市、バンガロールにある国立高等研究所(NIAS)が今月開いた国際会議「意識・認知・文化」に招かれ、動物の認知機能の進化について講演した...
長年「チンパンジーから見た世界」を研究してきたが、新たに「ウマから見た世界」を調べてみようと考えた。ウマは人間と同じく、草原のように開けた環境に適応して進化してきた。だが...
... 那覇から飛行機で石垣島に渡り、フェリーで西表島の上原港に着いた。近くの高台に、琉球大学熱帯生物圏研究センターと宿泊所がある。先にきていた京都大学の教員と大学院生に合流し、島を見て回った。琉球大副学長の西田睦さんが...
... 講演は日曜日だったにも関わらず、多くの聴衆に恵まれた。考えてみると、中国10億の民のなかに、チンパンジー研究者は1人もいない...
野生チンパンジーの社会でも、人間社会と同様、時として障害をもって生まれてくる子どもがいる。そんなとき母親や兄姉、なかまはどのように振る舞うのだろうか...
10月に韓国を訪れた。北にあるソウルから入り、西海岸の舒川(ソチョン)、南部の大邱(テグ)の大学などで講演する韓国縦断の旅である...
... 最初はペネダ・ジェレシュ国立公園の東部にある高原だ。緩やかな起伏の丘に、トゲのあるヒースが生えている。朝霧の中に一群がいた。スタリオンと呼ばれるおとなの雄を中心に...
... 現在、飼育下の大型類人猿が抱える問題は、テレビ番組やショーでの利用である。子育てがうまくできない母親から、子の命の優先という耳に心地よいことばで子を取り上げ、その子を使って商売している。だが、母と子の関係を人間が断ち切ってはいけない。霊長類の子どもの成長には母親が必須だ...
京大といえばブータン、ブータンといえば京大。そう言われるユニークな国際協力の試みを、京都大学は長年進めてきた。日本とブータンをつなぐ歴史を紹介したい...
高校3年生の夏休みに、一念発起して受験勉強を始めた。そのときに考案した時間管理法が2つある。実は心理学や動物行動学の研究でも使われている方法であることを、後になって知った...
... ノーベル賞といえば、アルバート・アインシュタインも受賞した。1922年、日本への船旅の途中でその知らせを受けたという。今ほどの社会現象にはなっていなかったが、1カ月半におよぶ日本滞在の間...
たった一度しか見ていないドラマでも、われわれ人間は、主人公がいつどこで何をどうしたか記憶できる。人間に一番近い種であるチンパンジーやボノボは...
... 今月初め、東京で開かれた学会大会で英国リンカーン大学のアンナ・ウィルキンソン博士が講演した。2011年にイグ・ノーベル賞を受賞した、まだ若い女性研究者だ...
... こうして1956年、犬山に、財団法人日本モンキーセンターができた。世界のサル類を一堂に展示する博物館であり、動物園だ。今西ら京大の学者たちは、ここを拠点にアフリカ探検に出かけた...
... 野生ニホンザルの研究で、欧米で最も広く知られているのは、宮崎県の幸島にすむ野生サルのイモ洗いだ。ちょうど50年前の1965年に、河合雅雄が『プリマーテス』という英文の国際学術誌に...
朝から晩まで3日間、英語で集中講義をした。京都大学では、教養・共通教育の140科目が英語で提供されており、その一環だ。この体験をきっかけに、国際化とは何かを考えてみた...
... 6月最後の日曜日、法然院が開いた「夜の森の教室」で話をした。さまざまな分野の研究者が、研究や社会とのかかわりについて講演する。13年前に始まったときに第1回を担当し、以来毎年1回...
スマトラ島に続いて、ボルネオ島の野生のオランウータンを見に行った。指導している大学院生のリナータ・メンドーサさんが15ヵ月間の野外調査を終え...
ドイツのマックスプランク進化人類学研究所を率いる5人のうちの1人で旧友のスバンテ・ペーボ博士が7月、「京都賞シンポジウム」で講演するために来日した...
... 私は京大山岳部のOBで作る京大学士山岳会の第14代会長をつとめている。第3代は仏文学者の桑原武夫さん、第4代は生態学者の今西錦司さんだ...
... かつて馬は最速かつ最強の移動手段だった。約800年前のモンゴル帝国の隆盛は、馬を自在に使いこなしたことにある。ヨーロッパでは乗馬が今も人気のスポーツだ。だが...
ポーランドの古都クラクフで開催された科学祭「コペルニクス・フェスティバル」で講演した。かつてこの街の大学で学んだ天文学者コペルニクス...
チンパンジーと並んで、人間に最も近いのはボノボである。日本の動物園にはいないので、あまりなじみがないかもしれないが、チンパンジーより細身で、小顔で、唇がぽってりしている...
5月、ポーランドを再訪した。最初の旅は一昨年、2週間かけ北から南まで講演してまわった。自然の豊かな国である...
... 相手に必要なものを想像して渡す。チンパンジーは、他者に共感する力を持っている。だがそれは、人間の共感とは異なっている。それを明らかにする実験は...
京都大学に「生物学のフロンティア」と題した授業がある。生物分野の教員が、一人一回だけ授業をする...
野生のチンパンジーが酒を飲む。西アフリカ・ギニアのボッソウでの17年間の調査でそれが明らかになり、今月、英国王立協会の科学誌に報告した...
... スマトラ島と日本はよく似ている。スマトラ島の面積は47万平方キロメートルで、日本より少し大きい程度。最高峰のクリンチ山は、富士山より30メートル...
... 4月、野生オランウータンの調査のために、インドネシアのスマトラ島を訪れた。旧知のマレーシア科学大学のマショール・マンサー教授と...
... マロニエの花咲くパリを歩いた。いつもは冬に来るので、マロニエは枯葉と丸い実しか見覚えがない。毎年12月から1月にかけて...
... チンパンジー研究でもオランダの存在感は大きい。アムステルダムの大学で開かれた小さな学会で講演したとき、聴衆の中にユトレヒト大学の名誉教授、ヤン・ファンホーフ博士がいた...
「こちらチンパンジーの松沢さんです」。そう紹介されることがある。チンパンジーを研究している、と言うべきところが省略されている。最初は苦笑したが、今は、言い得て妙だと思うようになった...